説明

ルーフキャリア取付構造

【課題】 小さな締め付け力であっても、車両急加減速時のルーフキャリアの移動量を少なくすることができるルーフキャリア取付構造。
【解決手段】 ルーフキャリアのクランプに形成された収容凹部38にフローティングブレーキ44が収容される。フローティングブレーキ44には前方側傾斜面46及び後方側傾斜面48が形成され、それぞれ収容凹部38の前方側傾斜壁40及び後方側傾斜壁42の上面と面接触している。車両急減速時にルーフキャリアに作用した慣性力によって、後方側傾斜壁42から後方側傾斜面48に対して前方への押圧力Fが作用する。この押圧力Fの後方側傾斜面48に垂直な成分F・sin(θ)が、フローティングブレーキ44をルーフレール16に押しつける力として作用するので全体での締め付け力が大きくなり、ルーフキャリア10は慣性力が作用しても、ルーフレール16に対して前方に相対移動しない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のルーフレールやルーフパネル等の被取付部材にルーフキャリアを取り付けるためのルーフキャリア取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図29には、従来のルーフキャリア取付構造(屋根荷物支持装置100)の一例が示されている(特開平7−2025号公報参照)。
【0003】この屋根荷物支持装置100は、横ビーム102と、締め付け装置104とで構成されており、締め付け装置104の支持ジョー106と締め付けジョー108とによって、サイドレール110を締め付けて挟持するようになっている。
【0004】しかし、このように、単にサイドレール110を締め付けるだけの構造では、十分な締め付け力を得ようとすると締め付け装置104が大型になり、重量も増大する。しかも、例えば、車両急加速時や急減速時等(以下、これらをまとめて「車両急加減速時」という)に生じた慣性力で積荷及び屋根荷物支持装置100が車両前後方向に大きく移動してしまうと、サイドレール110の端部に支持ジョー106や締め付けジョー108が当たって破損するおそれがあり、このような破損を防止するためには、締め付け装置104の締め付け力を十分大きく設定しておく必要がある。すなわち、図30R>0に矢印Jで示すように、積荷やルーフキャリアの移動量を少なくするためには、締め付け力(締め付けトルク)を大きくしなければならず、締め付け装置104のさらなる大型化や重量増を招く。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事実を考慮し、小さな締め付け力であっても、車両急加減速時のルーフキャリアの移動量を少なくすることができるルーフキャリア取付構造を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明では、車両の被取付部材にルーフキャリアを取り付けるためのルーフキャリア取付構造であって、前記ルーフキャリアを保持すると共に前記被取付部材を挟持する取付部材と、前記車両の前後方向に向かって次第に前記被取付部材に接近又は離間するように傾斜して前記取付部材に形成され、車両に作用した前後方向の慣性力を取付部材が被取付部材を締め付ける締め付け力に変換する傾斜部と、を有することを特徴とする。
【0007】従って、ルーフキャリアを保持した取付部材が被取付部材を挟持することで、ルーフキャリアが被取付部材に取り付けられる。そして、通常時、すなわち車両に加速度又は減速度が作用していないか、若しくは作用していてもその大きさが所定値以下の場合には、取付部材が被取付部材を確実に挟持し、不用意にルーフキャリアが車両前後方向へ移動してしまうことはない。
【0008】取付部材には、車両の前後方向に向かって次第に被取付部材に接近又は離間するように傾斜する傾斜部が形成されている。車両急加減速時にルーフキャリア及び積荷に車両前後方向への大きな慣性力が作用すると、この傾斜部によって、車両前後方向の慣性力が、取付部材が被取付部材を締め付ける締め付け力に変換される。これにより、取付部材は、本来的な挟持力に加えて、車両急加減速時に作用した新たな締め付け力によって被取付部材を挟持する。このように、取付部材が被取付部材を挟持する挟持力が結果的に大きくなるので、ルーフキャリアの移動の抵抗が大きくなり、慣性力によるルーフキャリア及び積荷の移動量が少なくなる。
【0009】このように、車両急加減速時にルーフキャリア及び積荷に作用した慣性力の一部を利用し、取付部材が被取付部材を挟持する挟持力をより大きくするようにしたので、取付部材自体の挟持力が小さくても、車両急加減速時のルーフキャリアの移動量を従来のものよりも少なくすることができる。取付部材自体の挟持力を大きくする必要がないので、取付部材の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0010】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記取付部材が、前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材に設けられ、保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記被取付部材に当接可能に前記保持部材及び前記挟持部材の少なくとも一方に取り付けられ、少なくとも被取付部材に当接する部分が弾性変形可能とされたフローティングブレーキと、を有し、前記傾斜部が、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の前方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第1傾斜面と、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の後方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第2傾斜面と、で構成されていることを特徴とする。
【0011】従って、通常時、すなわち、車両に加速度又は減速度が作用していないか、若しくは作用していてもその大きさが所定値以下の場合には、フローティングブレーキが被取付部材に当接した状態で、保持部材と挟持部材とによってフローティングブレーキと被取付部材とが挟持され、フローティングブレーキのうち少なくとも被取付部材に当接する部分が弾性変形して圧着されているので、不用意にルーフキャリア及び積荷が被取付部材に対して移動してしまうことはない。
【0012】車両急加速時等に、ルーフキャリア及び積荷に車両後方への大きな慣性力が作用すると、フローティングブレーキが取り付けられた部材(保持部材又は挟持部材)は第1傾斜部を車両後方側に押圧する。第1傾斜部は、車両の前方に向かって次第に被取付部材に接近しているので、保持部材又は挟持部材が第1傾斜部を押圧する力の一部が、フローティングブレーキを被取付部材に向かって押しつける力に変換される。これにより、フローティングブレーキと被取付部材とを挟持する挟持力が大きくなるので、ルーフキャリアの移動の抵抗が大きくなり、慣性力による移動量が少なくなる。
【0013】同様に、車両急減速時等にルーフキャリア及び積荷に車両前方への大きな慣性力が作用すると、保持部材又は挟持部材は第2傾斜部を車両前方側に押圧する。第2傾斜部は、車両の後方に向かって次第に被取付部材に接近しているので、挟持部材が第2傾斜部を押圧する力の一部が、フローティングブレーキを被取付部材に向かって押しつける力に変換される。これにより、フローティングブレーキと被取付部材とを挟持する挟持力が大きくなるので、ルーフキャリアの移動の抵抗が大きくなり、慣性力による移動量が少なくなる。
【0014】このように、少なくとも被取付部材に当接する部分が弾性変形可能とされたフローティングブレーキを用いることで、このフローティングブレーキを弾性変形させて、取付部材と挟持部材との間で被取付部材を確実に挟持することができる。
【0015】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記フローティングブレーキと前記挟持部材との間に、フローティングブレーキを挟持部材に対して相対移動可能とする空隙が構成されていることを特徴とする。
【0016】従って、車両急加減速時に挟持部材が第1傾斜部又は第2傾斜部を押圧すると、フローティングブレーキと挟持部材との間に構成された空隙によって、フローティングブレーキが被取付部材に向かって移動する。このように、フローティングブレーキが被取付部材へ移動することにより、十分大きな挟持力を得ることが可能となる。
【0017】請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記挟持部材が、前記フローティングブレーキを収容する収容部と、前記収容部に設けられ、前記フローティングブレーキに設けられた被係合部に係合してフローティングブレーキを収容部から離脱不能とする係合部と、を有することを特徴とする。
【0018】このように、挟持部材に設けた収容部にフローティングブレーキを収容し、係合部と被係合部との係合によって、フローティングブレーキを収容部から離脱不能に挟持部材に取り付けるようにしたので、フローティングブレーキの挟持部材への組み付けを簡単に行うことができる。また、組み付け時に、接着剤等の接着手段が不要となる。
【0019】請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記取付部材が、 前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記車両の前後方向に所定値以上の加速度又は減速度が作用すると、前記保持部材と前記挟持部材とを車両前後方向へ相対移動可能となるように固定する固定用部材と、を有し、前記傾斜部が、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両前方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第3傾斜面と、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両後方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第4傾斜面と、を有することを特徴とする。
【0020】従って、通常時、すなわち、車両に加速度又は減速度が作用していないか、若しくは作用していてもその大きさが所定値以下の場合には、保持部材と挟持部材とは車両前後方向に相対移動しない。そして、保持部材と挟持部材とによって被取付部材が挟持されているので、不用意にルーフキャリア及び積荷が被取付部材に対して移動してしまうことはない。
【0021】車両急加速時等に、ルーフキャリア及び積荷に車両後方への大きな慣性力が作用し、保持部材が挟持部材に対して車両前方へ相対的に移動すると、第3傾斜面が、挟持部材を保持部材に向かって移動させる。これにより、保持部材と挟持部材とが被取付部材を挟持する挟持力が大きくるので、ルーフキャリアの移動の抵抗が大きくなり、慣性力による移動量が少なくなる。
【0022】同様に、車両急減速時等にルーフキャリア及び積荷に車両前方への大きな慣性力が作用し、保持部材が挟持部材に対して車両後方へ相対的に移動すると第4傾斜面が、挟持部材を保持部材に向かって移動させる。これにより、保持部材と挟持部材とが被取付部材を挟持する挟持力が大きくるので、ルーフキャリアの移動の抵抗が大きくなり、慣性力による移動量が少なくなる。
【0023】このように、車両急加減速時に積荷及びルーフキャリアに作用した慣性力の一部を利用して、挟持部材を保持部材に向かって移動させるようにしたので、保持部材と挟持部材との本来的な挟持力が小さくても、車両急加減速時の積荷及びルーフキャリアの移動を従来のものより少なくすることが可能となる。
【0024】しかも、第3傾斜面及び第4傾斜面が形成された固定用部材を設けるだけなので、構造が複雑になることもない。
【0025】
【発明の実施の形態】図1〜図3には、本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によって取り付けられるルーフキャリア10の主要部が示されている。また、図4には、このルーフキャリア10が取り付けられた自動車12が示されている。以下、図面において、車両前方を矢印Fで、車両幅方向を矢印Wで、上方を矢印Uでそれぞれ示す。また、以下の説明において、単に「前方」、「後方」及び「幅方向」というときは、それぞれ、「車両前方」、「車両後方」及び「車両幅方向」を意味する。
【0026】図4に示すように、自動車12のルーフ14の幅方向両端には、車両前後方向(矢印F方向及びその反対方向)に沿って2本の平行なルーフレール16が取り付けられている。ルーフレール16の長手方向両端には、ルーフ14から斜めに立ち上がるルーフレールレッグ18が取り付けられており、ルーフレール16とルーフ14との間には所定の間隔20(図3参照)が構成されている。
【0027】左右のルーフレール16の間には、2本のロードバー22が平行にかけ渡されれおり、ロードバー22がルーフレール16に対してそれぞれ2つずつ、合計4つのルーフキャリア10によって取り付けられている。なお、4つのルーフキャリア10は全て同一構造とされており、取り付け位置の前後、左右を問わず同じルーフキャリア10が使用される。
【0028】図1〜図3に示すように、ルーフキャリア10は、それぞれのロードバー22の両端近傍に取り付けられるケーシング24を有している。ケーシング24は、略箱状に形成されると共に、幅方向両面及び下面に開口26及び開口28が形成されている。開口26に、それぞれのロードバー22の両端近傍の部分が挿通されて取り付けられている。そして、ルーフ14上に平行に配置されたこれら2本のロードバー22の間に、例えば荷物積載用の積載用部材68(図3参照)等を固定し、この積載用部材68に積荷を積むことができる。もちろん、ロードバー22に直接積荷を固定してもよい。
【0029】図1及び図2に示すように、ケーシング24の下面側には、幅方向略中央の位置に、上方に向かって部分的にケーシング24の前壁24A及び後壁24Bを凹ませてルーフレール収容部30が形成されている。図2からも分かるように、このルーフレール収容部30にルーフレール16が収容される。ルーフレール収容部30の上辺からは前方及び後方に向かってフランジ32が形成されており、ルーフレール収容部30が補強されている。
【0030】また、ケーシング24の幅方向内側近傍の位置(図1及び図2では右側位置)には、前壁24Aと後壁24Bにピン34がかけ渡されており、このピン34に、クランプ36が回転可能に取り付けられている。クランプ36は、ケーシング24の下面の開口28を覆うように略板状に形成されると共に、その幅方向中央を部分的に下方に屈曲させて、収容凹部38が形成されている。
【0031】図3(A)、(B)及び図5に示すように、収容凹部38は、後述するフローティングブレーキ44の形状に対応して、側面視にて逆山形状に形成されている。そして、前後方向中央(中心線Cで示す)よりも前方側に、前方に向かうに従って次第にルーフレール16に接近する前方側傾斜壁40が形成されている。同様に、前後方向中央よりも後方側に、後方に向かうに従って次第にルーフレール16に接近する後方側傾斜壁42が形成されている。また、図2からも分かるように、収容凹部38は、幅方向へは同一の形状(断面形状)を有している。
【0032】収容凹部38には、ゴム製のフローティングブレーキ44が収容されている。図3(A)からも分かるように、フローティングブレーキ44は側面視にて、中心線Cを対称軸として前後に対称な逆山形状に形成されており、前後方向中央よりも前方側に、前方に向かうに従ってルーフレール16に接近する前方側傾斜面46が形成されている。この前方側傾斜面46は、収容凹部38の前方側傾斜壁40の上面と面接触している。同様に、前後方向中央よりも後方側に、後方に向かうに従ってルーフレール16に接近する後方側傾斜面48が形成されている。この後方側傾斜面48は、収容凹部38の後方側傾斜壁42の上面と面接触している。図5に示すように、これらの前方側傾斜面46及び後方側傾斜面48がルーフレール16の下面との間に所定の傾斜角θをなしている。
【0033】フローティングブレーキ44の前後長は、収容凹部38よりも短くされており、フローティングブレーキ44と収容凹部38との間に、所定の間隙45(図5参照)が構成されている。この間隙45及び後述する間隙56によって、フローティングブレーキ44が収容凹部38に対して車両先後方向及び上方向に一定範囲内で相対移動可能となっている。
【0034】また、フローティングブレーキ44の上面は平面状に形成されており、ルーフレール16の下面と面接触する接触面50となっている。そして、図1に示すように(図2においても二点鎖線で示す)、通常は、フローティングブレーキ44の上部が収容凹部38よりも上方に突出しているが、取付状態ではフローティングブレーキ44の接触面50がルーフレール16の下面に圧着されてフローティングブレーキ44が弾性的に凹むので、収容凹部38からの突出量が少なくなる。なお、図2から分かるように、フローティングブレーキ44も幅方向へは同一の形状(断面形状)を有している。
【0035】フローティングブレーキ44の側面は、前後方向に沿ってそれぞれ平行に形成されており、これら側面から、ブロック状の係合片52が突出されている。一方、収容凹部38の側面には、この係合片52に対応して係合凹部54が形成されている。このため、フローティングブレーキ44を弾性変形させて、係合片52を係合凹部54に収容でき、フローティングブレーキ44を収容凹部38へ容易に組み付けできるようになっている。収容後は、フローティングブレーキ44の弾性復元によって係合片52と係合凹部54とが係合し、フローティングブレーキ44は収容凹部38から不用意に分離しない。また、組み付けに接着剤等も必要としない。
【0036】また、図2及び図5からも分かるように、係合凹部54は係合片52の長さよりも所定量だけ長く、且つ高く形成されており、係合片52と係合凹部54との間には、長手方向(車両前後方向)両側及び上方に所定の間隙56が構成されている。この間隙56により、フローティングブレーキ44が収容凹部38に対して一定範囲内で相対移動可能となっている。
【0037】図1及び図2に示すように、ケーシング24の幅方向外側近傍の位置には、前壁24Aと後壁24Bにピン58が回転可能に掛け渡されている。このピン58からは、径方向外側に向かって、ボルト60が突出されている。ボルト60の先端近傍には雄ねじ62が形成され、この雄ねじ62にナット64が螺合されている。
【0038】図2に示すように、フローティングブレーキ44がルーフレール16に接触する方向(矢印A方向)へとクランプ36を回転させると共に、ボルト60もルーフレール16に接触する方向(矢印B方向)へとピン58回りに回転させると、ボルト60がクランプ36の先端側に形成された収容孔66(図1参照)内に収容される。そして、クランプ36は、ピン34とナット64とにより、幅方向両側で支持される(いわゆる両持ちタイプ)。この状態でナット64を締め込んでいくと、ナット64によってクランプ36が矢印A方向に押されるため、フローティングブレーキ44もルーフレール16に向かって強く押され、ルーフレール収容部30と収容凹部38との間でフローティングブレーキ44がルーフレール16に所定の締め付け力Q(図3(A)及び図5参照)で密着した状態に挟持される。
【0039】なお、第1の実施の形態に係るルーフキャリア10においては、上記した両持ちタイプだけでなく、いわゆる片持ちタイプとすることもできる。すなわち、図6に示すように、クランプ36を幅方向外側の位置(図6では左側の位置)で、ピン34によって回転可能に支持すると共に、このピン34とルーフレール収容部30との間の位置でボルト60を収容孔に挿通する。そして、ナット64を締め込んで、フローティングブレーキ44をルーフレール収容部30と収容凹部38の間でルーフレール16に密着させるようにしてもよい。
【0040】次に、本実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフキャリア10をルーフレール16に取り付ける方法及び、ルーフキャリア取付構造の作用を説明する。
【0041】ルーフキャリア10をルーフレール16に取り付けるには、まず、図1に示すように(図2においても二点鎖線で示す)、ボルト60を収容孔66から抜き出した状態で、クランプ36を矢印Aと反対方向に回転させ、フローティングブレーキ44とルーフレール収容部30との間に十分な間隙を構成しておく。そして、ルーフレール収容部30にルーフレール16が位置すると共に、フローティングブレーキ44がルーフ14とルーフレール16との隙間20(図3参照)に位置するように、ケーシング24及びクランプ36をルーフレール16に対してそれぞれ所定の位置に配置する。
【0042】次に、図2に実線で示すように、クランプ36を矢印A方向に回転させて、フローティングブレーキ44の接触面50をルーフレール16の下面に接触させると共に、ボルト60を矢印B方向に回転させて、収容孔66に収容させる。この状態でナット64をねじ込んでいくと、クランプ36がナット64によって下方から押され、矢印A方向にさらに回転する。そして、フローティングブレーキ44が弾性変形しつつ、ルーフレール16の下面に強く圧着する。これにより、図3(A)及び図5に示すように、収容凹部38の前方側傾斜壁40及び後方側傾斜壁42から、これらの傾斜壁に対して垂直方向の締め付け力Qがフローティングブレーキ44に作用する。これにより、ルーフレール収容部30と収容凹部38との間でフローティングブレーキ44がルーフレール16に密着した状態で挟持されるので、ルーフキャリア10はルーフレール16に対して前後方向に移動しなくなる。
【0043】車両に、所定値以上の大きな加速度又は減速度が作用すると、ルーフキャリア10に大きな慣性力が作用する。この慣性力が、上記した締め付け力Qによってフローティングブレーキ44とルーフレール16とに作用する摩擦力よりも小さい場合には、ルーフキャリア10はルーフレール16に対して移動しない。一方、慣性力がこの摩擦力よりも大きい場合には、ルーフキャリア10が車両に対して相対的に、慣性力の方向に移動しようとする。しかし、この場合であっても、本実施の形態のルーフキャリア取付構造では、ルーフキャリア10の車両に対する相対移動量が、従来のルーフキャリア取付構造と比較して少なくなる。この点につき、詳述する。
【0044】例えば車両急減速時では、図3(B)に示すように、ルーフキャリア10に前方側への大きな慣性力が作用すると、ケーシング24とクランプ36とは固定されているので、ケーシング24とクランプ36とが一体で前方に慣性移動しようとする。そして、図5に示すように、クランプ36の後方側傾斜壁42から、フローティングブレーキ44の後方側傾斜面48に対して、前方への押圧力Fが作用する。後方側傾斜壁42は、このルーフレール16の下面に対して所定の傾斜角θで傾斜しており、しかも、フローティングブレーキ44はクランプ36に対して前後方向に移動可能となっているので、押圧力Fは、後方側傾斜面48に垂直な成分F・sin(θ)と、平行な成分F・cos(θ)に分散する。そして、垂直成分F・sin(θ)が、フローティングブレーキ44をルーフレール16に押しつける力として作用する。この結果、通常状態(車両に所定値以上の加速度又は減速度が作用していない状態)での締め付け力Qに加えて、新たな締め付け力F・sin(θ)がさらに作用することになり、全体での締め付け力は、図5R>5に矢印Pで示すように、通常状態よりも大きくなる。このため、ルーフレール16に対してルーフキャリア10が強固に固定されることになり、ルーフキャリア10は慣性力が作用しても、ルーフレール16に対する前方への相対移動量が少なくなる。
【0045】しかも、上記説明から明らかなように、車両急減速時に新たに締め付け力として作用する押圧力の成分F・sin(θ)は、慣性力に比例して大きくなる。すなわち、大きな慣性力が作用するほど、締め付け力も全体として大きくなるので、ルーフキャリア10の移動を効果的に少なくすることができる。
【0046】なお、上記説明では、車両急減速時を例として説明したが、車両急加速時においても、後方側への慣性力がクランプ36の前方側傾斜壁40から、フローティングブレーキ44の前方側傾斜面46に対して、後方への押圧力Fとして作用し、押圧力Fのうちの前方側傾斜面46に垂直な成分F・sin(θ)が、フローティングブレーキ44をルーフレール16に押しつける力として加わる。このため、車両急減速時と同様に、全体での締め付け力が通常状態よりも大きくなり、ルーフキャリア10のルーフレール16に対する後方への相対移動量が少なくなる。
【0047】図7には、本発明のルーフキャリア取付構造において、上記した両持ちタイプのルーフキャリアと片持ちタイプのルーフキャリアとで傾斜角θの値を変えて測定した、締め付けトルクとルーフキャリアの平均最大移動量との関係が示されている。なお、ここでいう「平均最大移動量」とは、ルーフレール16に取り付けられる4つのルーフキャリア10について、車両急減速時(又は急加速時)のルーフレール16に対する最大移動量を平均したものをいう。また、ルーフレール16に対するルーフキャリア10の相対移動量は、車両急減速直後に一時的に最も大きくなり、その後、ルーフキャリア10が初期位置に僅かに戻るようにして移動量が減少し、この相対移動が止まる。このため、ルーフキャリア10がルーフレール16に対して最も移動したときの移動量(最大移動量)を測定している。以下、単に「移動量」というときには、この最大平均移動量をいうものとする。
【0048】また、本実施の形態のルーフキャリア10では、クランプ36がピン34回りに回転してルーフレール16とフローティングブレーキ44とを締め付ける構造であり、実際には締め付けトルクを測定するため、図7のグラフでは横軸を締め付けトルクとしているが、この締め付けトルクは、ルーフレール16とフローティングブレーキ44とを締め付ける締め付け力に比例する。
【0049】このグラフからも分かるように、本実施の形態のルーフキャリア取付構造では、両持ちタイプと片持ちタイプとで移動量に差はあるものの、いずれのタイプ及び傾斜角であっても移動量を70mm以下とすることができる。
【0050】また、片持ちタイプの場合には、傾斜角θ=17°の場合が移動量が最も少なくなり、次に、傾斜角θ=12°の場合、22°の場合の順に、移動量が少なくなることが分かる。
【0051】そして、移動量を少なくするという観点からは、傾斜角θの条件として、5°≦θ≦45° (1)
の範囲とすることが好ましい。すなわち、5°以上とすることでフローティングブレーキ44に所定の厚みが確保できるため、フローティングブレーキ44を厚み方向に十分に弾性変形させることができる。また、45°以下とすることにより、慣性力Fの垂直成分F・sin(θ)が水平成分F・cos(θ)よりも大きくなるので、締め付け力を増大させる効果が大きくなる。
【0052】もちろん、傾斜角θの範囲は上記式(1)の範囲に限定されるものではない。すなわち、本実施の形態のルーフキャリア取付構造では、従来よりも小さな締め付けトルクであってもルーフキャリア10の移動量を少なくすることができるため、ルーフキャリア10を取り付ける部位の形状やスペースに合わせて、傾斜角θを適宜設定することができる。例えば、傾斜角θを小さくしてフローティングブレーキ44を薄く形成することにより、十分な締め付け力を得ると共に、ルーフ14とルーフレール16との間の間隔20が狭い場合であっても取付け可能とすることができる。
【0053】加えて、両持ちタイプと片持ちタイプとの違いや、傾斜角θの値によって移動量に差はあるものの、同じタイプ及び傾斜角θでは、締め付けトルクが大きくても小さくても、車両急加減速時の移動量の変化は少ない。すなわち、大きな締め付けトルクで締め付けても、小さな締め付けトルクで締め付けても、ほぼ同じ効果を得ることができる。
【0054】このように、第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造では、小さな締め付け力(締め付けトルク)であっても、車両急加減速時のルーフキャリア10の移動量を、従来よりも少なくすることができる。すなわち、従来のルーフキャリア取付構造では、図30のグラフにおいて「●」で示すように、コストや、重量及び取り付け易さの観点から、構造上、車両急加減速時のルーフキャリア10の移動量を低減させるためには、締め付けトルクを大きく設定しなければならなかった(グラフ上の矢印J参照)。これに対し、本実施の形態のルーフキャリア取付構造では、「★」で示すように、小さな締め付けトルク(締め付け力)であっても、ルーフキャリア10の移動量を低減させることができる(グラフ上のプロットが白抜き矢印Kで示す方向へと移動する)。
【0055】図8〜図10には、本発明の第2の実施の形態に係るルーフキャリア80が示されている。このルーフキャリア10では、第1の実施の形態のルーフキャリア10と比較して、収容凹部38にフローティングブレーキ44を組み付ける構造のみが異なっている。以下、第1の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0056】このルーフキャリア80では、フローティングブレーキ44及び収容凹部38に、第1の実施の形態の係合片52及び係合凹部54は形成されておらず、これらに代えて、フローティングブレーキ44に係合突起82が、収容凹部38に長孔84がそれぞれ形成されている。
【0057】係合突起82は、フローティングブレーキ44の下端、且つ幅方向中央から下方に向かって突設されており、円柱状に形成された円柱部85と、その先端(下端)において、部分的に拡径された拡径部86と、で構成されている。拡径部86の先端側には半球面88が、後端側には円柱部85と垂直な係止面90がそれぞれ形成されている。
【0058】長孔84は、係合突起82に対応した位置、すなわち、収容凹部38の下端、且つ幅方向中央に、その長手方向が前後方向と一致するように形成されている。長孔84の幅は、係合突起82の拡径部86の径よりも狭く、かつ、円柱部85の径よりも僅かに広くなるように、所定の幅とされている。
【0059】このルーフキャリア80では、フローティングブレーキ44を収容凹部38に配置して組み付けるとき、係合突起82の拡径部86を長孔84に当てて押しこむ。拡径部86の半球面88が長孔84の孔壁に当たるが、フローティングブレーキ44を押し込んでいくと、拡径部86が長孔84の孔壁に押されて弾性的に縮径され、拡径部86が長孔84を貫通して、収容凹部38の下面側に抜ける。この状態では、拡径部86は弾性復元するので、係合突起82に引き抜き方向(上方向)の力が作用しても、係止面90が長孔84の周囲の壁面に当り、係合突起82は長孔84から抜けない。このため、フローティングブレーキ44が収容凹部38に収容された状態が維持される。
【0060】また、この状態で、図10に示すように、係合突起82の円柱部85と、長孔84との間には、前後方向に所定の間隙92が構成されている。この間隙92と、フローティングブレーキ44と収容凹部38との間の間隙45とによって、フローティングブレーキ44は、収容凹部38に対して前後方向に移動可能となっている。そして、このように前後方向に移動可能となることで、結果的に、フローティングブレーキ44の傾斜面(前方側傾斜面46又は後方側傾斜面48)が、収容凹部38の傾斜壁(前方側傾斜壁40又は後方側傾斜壁42)に押されたとき、ルーフレール16に向かって移動でき、フローティングブレーキ44はルーフレール16に対して強く圧着されるので、締め付け力が大きくなる。
【0061】このように、第2の実施の形態のルーフキャリア80では、係合突起82を長孔84に当てて押し込んでいくだけで、フローティングブレーキ44を収容凹部38内に配置して、容易に組み付けることができる。
【0062】また、第1の実施の形態のルーフキャリア10と同様に、車両急加減速時には、ルーフキャリア80に作用する慣性力の一部を利用して、フローティングブレーキ44がルーフキャリア10にさらに強く押しつけられて挟持されるので、ルーフキャリア80の移動量を少なくすることができる。
【0063】図12〜図14には、本発明の第3の実施の形態に係るルーフキャリア130が示されている。このルーフキャリア130は、ルーフレールが取り付けられていないタイプの自動車(図12〜図14では自動車の全体像は図示省略)において、ルーフパネル136に直接取り付けできるようになっている。以下、第1の実施の形態のルーフキャリア10と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0064】このルーフキャリア130では、図13及び図14に示すように、略箱状に形成されたケーシング134の上部に、幅方向内側に向かって開口したロードバー収容部132が構成されている。ロードバー収容部132には、ロードバー22の端部が収容されて保持(固定)されている。
【0065】図14に示すように、ケーシング134の底壁は、前後方向中央が上方に向かって傾斜しており、前後方向中央よりも前方側及び後方側にそれぞれ前方側傾斜壁140及び後方側傾斜壁142が構成されている。また、ケーシング134の底壁の幅方向中央には、前後方向が長手方向とされた長孔154が形成されている。長孔154には、後述する係合突起162が挿通されている。
【0066】ケーシング134の底壁の下方は収容凹部138とされており、この収容凹部138にフローティングブレーキ144が収容されている。図14に示すように、フローティングブレーキ144は側面視にて略山形状(二等辺三角形状)に形成されており、前方側傾斜面146が前方側傾斜壁140の下面に、後方側傾斜面148が後方側傾斜壁142の下面に、それぞれ面接触している。これらの前方側傾斜面146及び後方側傾斜面148が、ルーフパネル136の上面との間に所定の傾斜角θをなしている。また、フローティングブレーキ144の下部はケーシング134の下端よりも僅かに下方に膨出している。フローティングブレーキ144の底面は平面状に形成された接触面150とされており、ルーフキャリア130の取付状態では、接触面150がルーフパネル136に面接触する。
【0067】フローティングブレーキ144の上端、且つ幅方向中央からは、上方に向かって係合突起162が突設されている。この係合突起162は第2の実施の形態の係合突起82と同様に、円柱状に形成された円柱部164と、その先端(上端)において部分的に拡径された拡径部166と、で構成されている。拡径部166には半球面168と係止面170とがそれぞれ形成されている。そして、拡径部166を長孔154及び保持ブロック152の下端にあてがい、弾性的に縮径させて挿入することができる。挿入後は係合突起162が、保持ブロック152に形成された突起収容凹部172に収容されると共に弾性復元し、係止面170が突起収容凹部172の壁面に当たるので、不用意に抜けない。また、この状態で円柱部164と長孔154及び突起収容凹部172との間に所定の間隙174が構成されており、フローティングブレーキ144はケーシング134に対して前後方向に移動可能となっている。
【0068】ケーシング134の底壁の中央からは、上方に向かって保持ブロック152が立設され、ケーシング134内に配置されている。図13に詳細に示すように、保持ブロック152にはボルト160が、その頭部を幅方向外側(図13では左側)に向けるようにして螺合されている。また、ボルト160は、クランプ156の上端近傍に形成された挿通孔158に挿通されている。
【0069】クランプ156は略板状に形成されると共に、ルーフパネル136の形状に合わせて所定位置で屈曲されている。特に、クランプ156の下端は車両幅方向内側に向かって屈曲された鉤片176とされており、この鉤片176が、ルーフパネル136の幅方向端部に係合するようになっている。そして、係合状態でボルト160を締め込んでいくと、クランプ156の鉤片176がフローティングブレーキ144の接触面150との間でルーフパネル136を挟持する。
【0070】このような構成とされた第3の実施の形態のルーフキャリア130においても、第1の実施の形態のルーフキャリア10や、第2の実施の形態のルーフキャリア80と同様、車両急加減速時には、通常状態で作用する締め付け力Qに加えて、慣性力Fの分力F・sin(θ)が、フローティングブレーキ144をルーフパネル136に押しつける力として作用する。これにより、ルーフキャリア130に慣性力Fが作用しても、ルーフパネル136に対するルーフキャリア130の前後方向への相対移動量が少なくなる。
【0071】図15及び図16には、本発明の第4の実施の形態に係るルーフキャリア190が示されている。このルーフキャリア190は、第3の実施の形態のルーフキャリア130と略同様の構成とされているが、収容凹部138にフローティングブレーキ144を組み付ける構造のみが異なっている。第4の実施の形態において、第1の実施の形態又は第3の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0072】このルーフキャリア190では、フローティングブレーキ144及び収容凹部138に、第3の実施の形態の係合突起162及び長孔154は形成されておらず、これらに代えて、第1の実施の形態と同様に、フローティングブレーキ144に係合片192が、収容凹部138の側面に係合凹部194が、それぞれ形成されている。係合片192と係合凹部194との間には、前後方向両側及び下方に所定の間隙196が構成されている。この間隙196により、フローティングブレーキ144が収容凹部138に対して一定範囲内で相対移動可能になっている。
【0073】従って、第4の実施の形態のルーフキャリア190においても第1の実施の形態のルーフキャリア10と同様、フローティングブレーキ144を弾性変形させて係合片192を係合凹部194に収容でき、フローティングブレーキ144を収容凹部138に容易に組み付けできる。収容後はフローティングブレーキ144の弾性復元によって係合片192と係合凹部194とが係合し、不用意に分離しなくなる。
【0074】そして、車両急加減速時には、通常状態の締め付け力Qに加えて、慣性力Fの分力F・sin(θ)がフローティングブレーキ144をルーフパネル136に押しつける力として加わり、全体として、通常状態よりも大きな締め付け力Pが作用する。このため、通常状態の締め付け力Qが小さくても、ルーフパネル136に対するルーフキャリア190の前後方向への相対移動量を少なくすることができる。
【0075】図17には、本発明の第5の実施の形態のルーフキャリアに適用されるフローティングブレーキ204が拡大して示されている。第5の実施の形態のルーフキャリアでは、このフローティングブレーキ204の形状のみが、第1の実施の形態のルーフキャリア10と異なっているため、全体的構成は図示を省略する(図1〜図3参照)。また、第1の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0076】第5の実施の形態のフローティングブレーキ204は、断面(幅方向に視た端面)が、楕円状(より厳密には、楕円の長軸が前後方向と一致する向きで、かつ、この長軸よりも下側の部分の形状)とされている。このフローティングブレーキ204においても、第1の実施の形態と同様、中心線Cよりも前方側に、前方に向かうに従って次第にルーフレール16に接近する前方側傾斜面206が形成され、同様に、中心線Cよりも後方側に、後方へ向かうに従って次第にルーフレール16に接近する後方側傾斜面208がぞれぞれ形成されている(但し、これらの前方側傾斜面206及び後方側傾斜面208がルーフレール16の下面と成す角は、前後方向の位置に応じて異なった値となる)。
【0077】また、フローティングブレーキ204の形状に対応して、クランプ36(図1及び図2参照)の収容凹部38も略楕円状に形成されている。フローティングブレーキ204の前後には、収容凹部38との間に間隙45が構成されている。
【0078】フローティングブレーキ204の側面からは係合片52が突設され、これに対応して収容凹部38の側面に係合凹部54が形成されている。係合片52と係合凹部54との間には、車両前後方向両側及び上方に所定の間隙56が構成されている。
【0079】このような構成とされた第5の実施の形態のルーフキャリアにおいても、第1の実施の形態のルーフキャリア10と同様、フローティングブレーキ204を弾性変形させて係合片52を係合凹部54に収容でき、フローティングブレーキ204を収容凹部38に容易に組み付けできる。収容後はフローティングブレーキ204の弾性復元によって係合片52と係合凹部54とが係合し、不用意に分離しなくなる。
【0080】そして、車両急加減速時には、通常状態の締め付け力Qに加えて、慣性力Fの分力F・sin(θ)がフローティングブレーキ204をルーフレール16に押し付ける力として加わり、全体として、通常状態よりも大きな締め付け力Pが作用する。このため、通常状態の締め付け力Qが小さくても、ルーフレール16に対するルーフキャリアの前後方向への相対移動量を少なくすることができる。特に、空隙45、56を構成したことにより、フローティングブレーキ204が収容凹部38に対して相対移動するので、締め付け力Pをより効果的に作用させることができる。
【0081】なお、第5の実施の形態のルーフキャリアにおいて、係合片52及び係合凹部54に代えて、第2の実施の形態のルーフキャリア80と同様、フローティングブレーキ204に係合突起82を、収容凹部38に長孔84をそれぞれ形成してもよい(図18参照)。このような構成であっても、係合突起82を長孔84にあてがい、弾性変形させて長孔84内に収容することにより、容易にフローティングブレーキ204を収容凹部38に組み付けることができる。
【0082】図19には、本発明の第6の実施の形態のルーフキャリアに適用されるフローティングブレーキ224が拡大して示されている。第6の実施の形態のルーフキャリアも第5の実施の形態のルーフキャリアと同様、このフローティングブレーキ224の形状のみが第1の実施の形態のルーフキャリア10と異なっているため、全体的構成は図示を省略する(図1〜図3参照)。また、第1の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0083】第6の実施の形態のフローティングブレーキ224は、その下面が断面視にて、中心線Cの近傍では下に凸で、中心線Cから一定距離以上離間した位置では上に凸の、略カム状とされている。このフローティングブレーキ224においても、中心線Cよりも前方側に、前方に向かうに従って次第にルーフレール16に接近する前方側傾斜面226が形成され、同様に、中心線Cよりも後方側に、後方へ向かうに従って次第にルーフレール16に接近する後方側傾斜面228がぞれぞれ形成されている(但し、これらの前方側傾斜面226及び後方側傾斜面228がルーフレール16の下面と成す角は、前後方向の位置に応じて異なった値となる)。
【0084】また、フローティングブレーキ224の形状に対応して、クランプ36(図1及び図2参照)の収容凹部38も略カム状に形成されている。フローティングブレーキ224の前後には、収容凹部38との間に間隙45が構成されている。
【0085】フローティングブレーキ224の側面からは係合片52が突設され、これに対応して収容凹部38の側面に係合凹部54が形成されている。係合片52と係合凹部54との間には、車両前後方向両側及び上方に所定の間隙56が構成されている。
【0086】このような構成とされた第6の実施の形態のルーフキャリアにおいても、第1の実施の形態のルーフキャリア10や第5の実施の形態のルーフキャリアと同様、フローティングブレーキ224を弾性変形させて係合片52を係合凹部54に収容でき、フローティングブレーキ224を収容凹部38に容易に組み付けできる。収容後はフローティングブレーキ224の弾性復元によって係合片52と係合凹部54とが係合し、不用意に分離しなくなる。
【0087】そして、車両急加減速時には、通常状態の締め付け力Qに加えて、慣性力Fの分力F・sin(θ)がフローティングブレーキ224をルーフレール16に押し付ける力として加わり、全体として、通常状態よりも大きな締めつけ力Pが作用する。このため、通常状態の締め付け力Qが小さくても、ルーフレール16に対するルーフキャリアの前後方向への相対移動量を少なくすることができる。特に、空隙45、56を構成したことにより、フローティングブレーキ224が収容凹部38に対して相対移動するので、締め付け力Pをより効果的に作用させることができる。
【0088】なお、第6の実施の形態のルーフキャリアにおいても、係合片52及び係合凹部54に代えて、第2の実施の形態のルーフキャリア80や第5の実施の形態のルーフキャリアと同様、フローティングブレーキ224に係合突起82を、収容凹部38に長孔84をそれぞれ形成してもよい(図20参照)。このような構成であっても、係合突起82を長孔84にあてがい、弾性変形させて長孔84内に収容することにより、容易にフローティングブレーキ224を収容凹部38に組み付けることができる。
【0089】図21〜図23には、本発明の第7の実施の形態に係るルーフキャリア240が示されている。第7の実施の形態のルーフキャリア240も、第3の実施の形態に係るルーフキャリア130と同様、ルーフレールが取り付けられていないタイプの自動車において、ルーフパネル136に直接取り付けできるようになっており、基本的構成は同一とされている。以下、第3の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0090】このルーフキャリア240では、ケーシング134に一体的に固定された保持ブロック152に、側面視にて扁平V字状のスリット242が形成されている。スリット242はこのようにV字状とされることで、中央よりも前方側に、前方へ向かうに従ってルーフパネル136から次第に離間する前方側傾斜面244が形成されている。同様に、中央よりも後方側に、後方へ向かうに従ってルーフパネル136から次第に離間する後方側傾斜面246が形成されている。前方側傾斜面244及び後方側傾斜面246はいずれも、ルーフレール136の上面に対して所定の傾斜角θとなるように設定されている。
【0091】このスリット242にはボルト160が挿通されており、ボルト160はスリット242に沿って車両前後方向へ移動可能となっている。この移動により、ボルト160は、前方側傾斜面244又は後方側傾斜面246に沿って上方へも移動する。また、ボルト160の頭部には、クランプ156の上部が固定されている。従って、クランプ156もボルト160と一体で、保持ブロック152に対して車両前後方向へ移動可能となっている。
【0092】また、ケーシング134の下部には、ゴム製の弾性部材248が収容されている。この弾性部材248は第1〜第6の実施形態のフローティングブレーキと異なって略直方体状に形成されており、車両前後方向に沿ってルーフパネル136に接近する傾斜面(第1傾斜面及び第2傾斜面)は形成されていないが、底面は平面状に形成され、ルーフパネル136に接触する接触面248Aとなっている。
【0093】このような構成とされた第7の実施の形態のルーフキャリア240では、通常状態では図21に示すように、ボルト160がスリット242の中央、すなわちルーフパネル136に最も近い位置にあり、弾性部材248が弾性変形することで、弾性部材248の接触面248Aとクランプ156の鉤片176とによって所定の締め付け力Q(図22参照)でルーフパネル136を挟持している。
【0094】車両急減速時には、積荷の慣性力によってケーシング134が車両前方へ移動しようとするが、クランプ156にはこの慣性力が直接作用しないので、ルーフパネル136に対して一定の位置を維持する。これにより、図22に示すように、ボルト160がスリット242内を相対的に車両後方へ向かって移動する(この慣性力をFとする)。この移動により、ボルト160は、後方側傾斜面246に沿って上方へ移動しようとし、クランプ156に、慣性力Fの後方側傾斜面246と垂直な成分F・sin(θ)が作用する。この結果、通常状態での締め付け力Qに加えて、新たな締め付け力F・sin(θ)がさらに作用することになり、全体での締め付け力は、図22に矢印Pで示すように、通常状態よりも大きくなる。このため、ルーフパネル136に対してルーフキャリア240が強固に固定されることになり、ルーフキャリア240は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。しかも、積荷に大きな慣性力が作用するほど、全体での締め付け力も大きくなるので、ルーフキャリア240の移動をより効果的に少なくすることができる。
【0095】なお、上記説明では車両急減速時を例として説明したが、車両急加速時においても、ボルト160がスリット242内を相対的に車両前方へ向かって移動し、クランプ156に、慣性力Fの後方側傾斜面246に垂直な成分F・sin(θ)が作用する。これにより、全体での締め付け力が通常状態よりも大きくなるので、ルーフキャリア240は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。
【0096】図24には、本発明の第8の実施の形態に係るルーフキャリア260が示されている。このルーフキャリア260は、第7の実施の形態に係るルーフキャリア240と略同様の構成とされているが、ポルト160が保持ブロック152に対して移動不能に固定されると共に、クランプ156の上部に、扁平逆V字上のVスリット262が形成されている点が異なっている。Vスリット262には、中央より前方側に向かって、ルーフパネル136に次第に接近する前方側傾斜面264と、中央より後方側に向かって、ルーフパネル136に次第に接近する後方側傾斜面266とが形成されている。Vスリット262には、ボルト160の頭部が挿通されている。
【0097】第9の実施の形態に係るルーフキャリア260において、通常状態では、図24に示すように、ボルト160がVスリット262の中央に位置するようクランプ156が固定される。この状態で弾性部材248が弾性変形し、弾性部材248の接触面248Aとクランプ156の鉤片176とによって、所定の締め付け力Qでルーフパネル136を挟持している。
【0098】車両急減速時には、積荷の慣性力によってケーシング134が車両前方へ移動しようとするが、クランプ156にはこの慣性力が直接作用しないので、ルーフパネル136に対して一定の位置を維持する。これにより、ボルト160がVスリット262内を車両前方へ向かって移動する(この慣性力をFとする)。この移動によりボルト160が前方側傾斜面244に当たり、第8の実施の形態の場合と同様、クランプ156に、慣性力Fの前方側傾斜面264に垂直な成分F・sin(θ)が作用する。この結果、通常状態での締め付け力Qに加えて、新たな締め付け力F・sin(θ)(図22R>2参照)がさらに作用することになり、全体での締め付け力は、通常状態よりも大きくなる。このため、ルーフパネル136に対してルーフキャリア260が強固に固定されることになり、ルーフキャリア260は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。しかも、積荷に大きな慣性力が作用するほど、全体での締め付け力も大きくなるので、ルーフキャリア260の移動をより効果的に少なくすることができる。
【0099】なお、上記説明では車両急減速時を例として説明したが、車両急加速時においても、ボルト160がスリット242内を車両前方へ向かって移動し、クランプ156に、慣性力Fの後方側傾斜面266に垂直な成分F・sin(θ)が作用する。これにより、全体での締め付け力が通常状態よりも大きくなるので、ルーフキャリア260は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。
【0100】また、上記説明から分かるように、Vスリットを形成する部材は特に限定されず、要するに車両急加減速時に慣性力Fによってケーシング134とクランプ156とが相対移動すると、慣性力Fの一部を締め付け力に変換するように構成されていればよい。第8の実施の形態のように、ケーシング134(保持ブロック152)側に形成した場合には、スリット242がクランプ156によって覆われて外部から見えなくなるので、ルーフキャリア240の見栄えが良くなる。スリット242を覆うための部材(カバー等)も不用となり、部品点数が増加しない。これに対し、第8の実施の形態のように、クランプ156に形成する場合には、既存のルーフキャリアに対して、クランプのみを第8の実施の形態のクランプ156に交換することで、本発明の効果を得ることが可能となる。
【0101】また、スリット242、262の形状も上記したV字状に限られない。例えば、図25及び図26に示すように、略楕円状に湾曲した形状であってもよい。
【0102】図27及び図28には、本発明の第9の実施の形態に係るルーフキャリア280が示されている。第9の実施の形態のルーフキャリア280も、第3の実施の形態に係るルーフキャリア130と同様、ルーフレールが取り付けられていないタイプの自動車において、ルーフパネル136に直接取り付けできるようになっており、基本的構成は同一とされている。以下、第3の実施の形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して説明を省略する。
【0103】このルーフキャリア280では、第3の実施の形態の保持ブロック152に代えて、側面視にて扁平V字状に形成された傾斜壁282が、ケーシング134内に設けられている。傾斜壁282は、車両前後方向一端(図面では左側)に形成された支軸288によって回動可能にケーシング134に取り付けられている。また、ケーシング134には、支軸288と対向する位置で回動可能に、クランク型のレバー290が取り付けられている。レバー290は傾斜壁282の自由端側を下側から支持しており、レバー290を回動させることで、図27に実線で示すように、傾斜壁282が上方へ回動した位置と、一点鎖線で示すように下方へ回動した位置との間を、移動できるようになっている。
【0104】傾斜壁282の中央よりも車両前方側には、前方へ向かうに従って次第にルーフパネル136から離間する前方側傾斜面284が形成されている。同様に、車両後方側には、後方へ向かうに従って次第にルーフパネル136から離間する後方側傾斜面286が形成されている。
【0105】傾斜壁282には、車両前後方向に沿って長孔292が形成されており、この長孔292に、ボルト160が頭部を下にして挿通されている。また、ボルト160に螺合されたナット161が、ゴム製の弾性部材294を介して前方側傾斜面284又は後方側傾斜面286の少なくとも一方に接触している、これにより、ボルト160は長孔292から離脱不能に、且つ長孔292に沿って車両前後方向に移動可能となっている。そして、ボルト160が車両前後方向に移動すると、前方側傾斜面284又は後方側傾斜面286に沿って上方へ移動するようになっている。また、ボルト160の頭部には、クランプ156の上端が固定されている。
【0106】このような構成とされた第9の実施の形態のルーフキャリア280では、ルーフパネル136への取り付けに当たって、まず、図27に一点鎖線で示すように、傾斜壁282が下方に回動した位置となるように、レバー290を操作する。これにより、クランプ156も下方へ移動して、弾性部材294とクランプ156との間に十分な間隙が構成されるので、取り付け作業が容易になる。
【0107】弾性部材294とクランプ156との間の間隙にルーフパネル136が位置するようにルーフキャリア280を配置した後、レバー290を操作して、図2727に実線で示すように、傾斜壁282を上方へ回動させる。これにより、クランプ156が上方へ移動して、弾性部材294との間隙が狭くなり、クランプ156と弾性部材294とが、一定の締め付け力Qでルーフパネル136を挟持する。このため、ルーフキャリア280がルーフパネル136に対して車両前後方向へ移動しなくなる。
【0108】車両急減速時には、積荷の慣性力によってケーシング134が車両前方へ移動しようとするが、クランプ156にはこの慣性力が直接作用しないので、ルーフパネル136に対して一定の位置を維持する。これにより、図28に示すように、ボルト160が長孔292内を相対的に車両後方へ向かって移動する(この慣性力をFとする)。この移動により、ボルト160は、後方側傾斜面286に沿って上方へ移動しようとし、クランプ156に、慣性力Fの後方側傾斜面286と垂直な成分F・sin(θ)が作用する。この結果、通常状態での締め付け力Qに加えて、新たな締め付け力F・sin(θ)がさらに作用することになり、全体での締め付け力は、図28に矢印Pで示すように、通常状態よりも大きくなる。このため、ルーフパネル136に対してルーフキャリア280が強固に固定されることになり、ルーフキャリア280は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。しかも、積荷に大きな慣性力が作用するほど、全体での締め付け力も大きくなるので、ルーフキャリア280の移動をより効果的に少なくすることができる。
【0109】なお、上記説明では車両急減速時を例として説明したが、車両急加速時においても、ボルト160が長孔292内を相対的に車両前方へ向かって移動し、クランプ156に、慣性力Fの後方側傾斜面286に垂直な成分F・sin(θ)が作用する。これにより、全体での締め付け力が通常状態よりも大きくなるので、ルーフキャリア280は慣性力が作用しても、ルーフパネル136に対する相対移動量が少なくなる。
【0110】以上説明したように、本発明のルーフキャリア取付構造では、車両急加減速時に作用する慣性力の一部を利用し、ルーフレール16又はルーフパネル136に対してフローティングブレーキ44、144、204、224を押し付ける締め付け力(締め付けトルク)、又はケーシング134とクランプ156との締め付け力(挟持力)を増大させるようにしたので、通常状態での締め付け力(締め付けトルク)を従来より小さく設定しても、車両急加減速時のルーフキャリアのルーフレール16又はルーフパネル136に対する相対移動量を少なくすることができる。そして、通常状態での締め付け力(締め付けトルク)を小さく設定することにより、ルーフキャリア10、80、130、240、260、280の小型化、軽量化を図ることが可能となる。
【0111】なお、このように、車両急加減速時に作用する慣性力の一部を利用し、締め付け力(締め付けトルク)を増大させる構造であれば、本発明は上記した構造に限られない。例えば、図11に示すように、フローティングブレーキ44に、前方側に向かうに従ってルーフレール16に接近する後方側傾斜面95と、後方側に向かうに従ってルーフレール16に接近する前方側傾斜面94をそれぞれ形成してもよい。そして、収容凹部38も、このフローティングブレーキ44の前方側傾斜面94及び後方側傾斜面95に面接触するように、前後方向中央を上方に膨出させて、前方側傾斜壁96及び後方側傾斜壁97を形成しておく。この構造では、図3及び図5R>5に示す形状のフローティングブレーキ44や、図14に示す形状のフローティングブレーキ144等と比較して、前方側傾斜面と後方側傾斜面の役割が入れ代わっている。すなわち、車両急減速時に、フローティングブレーキ44の前方側傾斜面94が収容凹部38の前方側傾斜壁96に押され、車両急加速時に、フローティングブレーキ44の後方側傾斜面95が収容凹部38の後方側傾斜壁97に押される。しかし、これによっても、図3及び図5に示すフローティングブレーキ44や、図14に示すフローティングブレーキ144等と同様に、車両急加減速時に作用する慣性力の一部を、締め付け力(締め付けトルク)として作用させることができる。
【0112】また、図17〜図20示した構造のフローティングブレーキ204、224を、図12〜図14に示したタイプのルーフキャリア(ルーフパネル136に直接取り付けできるタイプ)に適用してもよい。
【0113】また、フローティングブレーキ44、144、204、224の材質としても上記したゴムに限定されず、要するに弾性変形して、ルーフレール16に圧着されるものであればよい。例えば、少なくともルーフレール16に当接する部分が、一定の弾性を有する樹脂等の弾性材料によって形成されていればよく、この場合には、ルーフレール16に当接する部分以外は、弾性の小さい材料(金属等)で構成することができる。
【0114】このように、フローティングブレーキを弾性の小さい材料で構成した場合には、係合片52、192や係合突起82、162を弾性変形可能な材料で形成して、フローティングブレーキに後付けして固定してもよい。すなわち、これによって係合片52、192や係合突起82、162に所定の弾性が確保されるので、フローティングブレーキを収容凹部へ容易に組み付けることができる。
【0115】フローティングブレーキと、前方側傾斜壁40、140、後方側傾斜壁42、142及びルーフレール16やルーフパネル136との摩擦係数(摩擦力の大きさ)は特に限定されないが、前方側傾斜壁40、140、後方側傾斜壁42、142、との摩擦係数が、ルーフレール16やルーフパネル136との摩擦係数よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。すなわち、このように摩擦係数を設定することで、フローティングブレーキが前方側傾斜壁40、140や後方側傾斜壁42、142に対して相対的に滑りやすくなるので、フローティングブレーキがルーフレール16やルーフパネル136に向かってより強く押しつけられこととなり、大きな締め付け力を作用させることができる。
【0116】
【発明の効果】請求項1に記載の発明では、車両の被取付部材にルーフキャリアを取り付けるためのルーフキャリア取付構造であって、前記ルーフキャリアを保持すると共に前記被取付部材を挟持する取付部材と、前記車両の前後方向に向かって次第に前記被取付部材に接近又は離間するように傾斜して前記取付部材に形成され、車両に作用した前後方向の慣性力を取付部材が被取付部材を締め付ける締め付け力に変換する傾斜部と、を有するので、小さな締め付け力であっても、車両急加減速時のルーフキャリアの移動量を少なくすることができ、取付部材の小型化、軽量化を図ることが可能となる。
【0117】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記取付部材が、前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材に設けられ、保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記被取付部材に当接可能に前記保持部材及び前記挟持部材の少なくとも一方に取り付けられ、少なくとも被取付部材に当接する部分が弾性変形可能とされたフローティングブレーキと、を有し、前記傾斜部が、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の前方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第1傾斜面と、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の後方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第2傾斜面と、で構成されているので、フローティングブレーキを弾性変形させて、取付部材と挟持部材との間で被取付部材を確実に挟持することができる。
【0118】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記フローティングブレーキと前記挟持部材との間に、フローティングブレーキを挟持部材に対して相対移動可能とする空隙が構成されているので、十分大きな挟持力を得ることが可能となる。
【0119】請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記挟持部材が、前記フローティングブレーキを収容する収容部と、前記収容部に設けられ、前記フローティングブレーキに設けられた被係合部に係合してフローティングブレーキを収容部から離脱不能とする係合部と、を有するので、フローティングブレーキの挟持部材への組み付けを簡単に行うことができる。
【0120】請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記取付部材が、 前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記車両の前後方向に所定値以上の加速度又は減速度が作用すると、前記保持部材と前記挟持部材とを車両前後方向へ相対移動可能となるように固定する固定用部材と、を有し、前記傾斜部が、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両前方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第3傾斜面と、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両後方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第4傾斜面と、を有するので、保持部材と挟持部材との本来的な挟持力が小さくても、車両急加減速時の積荷及びルーフキャリアの移動を従来のものより少なくすることが可能となり、構造が複雑になることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられるルーフキャリアを示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられたルーフキャリアを示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられたルーフキャリアを示す概略的側面図であり、(A)は通常状態、(B)は車両急減速時を示す。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフキャリアが取り付けられた自動車を示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられたルーフキャリアを部分的に拡大して示す車両急減速時の側面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられた片持ちタイプのルーフキャリアを示す正面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造による締め付けトルクとルーフキャリアのルーフレールに対する平均最大移動量との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられるルーフキャリアを示す斜視図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられたルーフキャリアを示す正面図である。
【図10】(A)は本発明の第2の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフレールに取り付けられたルーフキャリアを示す概略的側面図であり、(B)は車両急減速時のルーフキャリアを部分的に拡大して示す側面図である。
【図11】本発明のフローティングブレーキの他の例を示す説明図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す概略的側面図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す概略的側面図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを部分的に拡大して示す正面図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアの図17に示すものとは異なるタイプを部分的に拡大して示す正面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを部分的に拡大して示す正面図である。
【図20】本発明の第6の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアの図19に示すものとは異なるタイプを部分的に拡大して示す正面図である。
【図21】本発明の第7の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図22】本発明の第7の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図23】本発明の第7の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図24】本発明の第8の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す側面図である。
【図25】本発明の第7の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアのさらに別の例を示す断面図である。
【図26】本発明の第8の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアのさらに別の例を示す側面図である。
【図27】本発明の第9の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図28】本発明の第8の実施の形態に係るルーフキャリア取付構造によってルーフパネルに取り付けられたルーフキャリアを示す断面図である。
【図29】従来のルーフキャリア取付構造を示す断面図である。
【図30】ルーフキャリア取付構造における締め付けトルクとルーフキャリアのルーフレールに対する移動量との一般的な関係を従来及び本発明の場合において示すグラフである。
【符号の説明】
10 ルーフキャリア
12 自動車(車両)
16 ルーフレール(被取付部材)
24 ケーシング(保持部材、取付部材)
36 クランプ(挟持部材、取付部材)
38 収容凹部(収容部)
44 フローティングブレーキ
46 前方側傾斜面(第1傾斜面、傾斜部)
48 後方側傾斜面(第2傾斜面、傾斜部)
52 係合片(被係合部)
54 係合凹部(係合部)
56 間隙(空隙)
80 ルーフキャリア
82 係合突起(被係合部)
84 長孔(係合部)
92 間隙(空隙)
94 前方側傾斜面(第2傾斜面、傾斜部)
95 後方側傾斜面(第1傾斜面、傾斜部)
130 ルーフキャリア
134 ケーシング(保持部材、取付部材)
136 ルーフパネル(被取付部材)
138 収容凹部(収容部)
144 フローティングブレーキ
146 前方側傾斜面(第1傾斜面、傾斜部)
148 後方側傾斜面(第2傾斜面、傾斜部)
154 長孔(係合部)
156 クランプ(挟持部材、取付部材)
162 係合突起(被係合部)
190 ルーフキャリア
192 係合片(被係合部)
194 係合凹部(係合部)
196 間隙(空隙)
204 フローティングブレーキ
206 前方側傾斜面(第1傾斜面、傾斜部)
208 後方側傾斜面(第2傾斜面、傾斜部)
224 フローティングブレーキ
226 前方側傾斜面(第1傾斜面、傾斜部)
228 後方側傾斜面(第2傾斜面、傾斜部)
240 ルーフキャリア
242 スリット(固定用部材)
244 前方側傾斜面(第4傾斜面、傾斜部)
246 後方側傾斜面(第3傾斜面、傾斜部)
260 ルーフキャリア
262 スリット(固定用部材)
264 前方側傾斜面(第3傾斜面、傾斜部)
266 後方側傾斜面(第4傾斜面、傾斜部)
280 ルーフキャリア
282 傾斜壁(固定用部材)
284 前方側傾斜面(第4傾斜面、傾斜部)
286 後方側傾斜面(第3傾斜面、傾斜部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の被取付部材にルーフキャリアを取り付けるためのルーフキャリア取付構造であって、前記ルーフキャリアを保持すると共に前記被取付部材を挟持する取付部材と、前記車両の前後方向に向かって次第に前記被取付部材に接近又は離間するように傾斜して前記取付部材に形成され、車両に作用した前後方向の慣性力を取付部材が被取付部材を締め付ける締め付け力に変換する傾斜部と、を有することを特徴とするルーフキャリア取付構造。
【請求項2】 前記取付部材が、前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材に設けられ、保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記被取付部材に当接可能に前記保持部材及び前記挟持部材の少なくとも一方に取り付けられ、少なくとも被取付部材に当接する部分が弾性変形可能とされたフローティングブレーキと、を有し、前記傾斜部が、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の前方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第1傾斜面と、前記フローティングブレーキに形成され前記車両の後方に向かって次第に前記被取付部材に接近する第2傾斜面と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のルーフキャリア取付構造。
【請求項3】 前記フローティングブレーキと前記挟持部材との間に、フローティングブレーキを挟持部材に対して相対移動可能とする空隙が構成されていることを特徴とする請求項2に記載のルーフキャリア取付構造。
【請求項4】 前記挟持部材が、前記フローティングブレーキを収容する収容部と、前記収容部に設けられ、前記フローティングブレーキに設けられた被係合部に係合してフローティングブレーキを収容部から離脱不能とする係合部と、を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のルーフキャリア取付構造。
【請求項5】 前記取付部材が、前記ルーフキャリアを保持する保持部材と、前記保持部材との間で前記被取付部材を挟持する挟持部材と、前記車両の前後方向に所定値以上の加速度又は減速度が作用すると、前記保持部材と前記挟持部材とを車両前後方向へ相対移動可能となるように固定する固定用部材と、を有し、前記傾斜部が、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両前方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第3傾斜面と、前記固定用部材に形成され、前記保持部材が前記挟持部材に対して車両後方へ相対的に移動すると挟持部材を保持部材に向かって移動させる第4傾斜面と、を有することを特徴とする請求項1に記載のルーフキャリア取付構造。

【図2】
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【図26】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図22】
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【図18】
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【図19】
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【図29】
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【図30】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図27】
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【図28】
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