説明

ループ材供給装置

【課題】 ループ材を縫い付ける縫製物本体にしわが発生するのを防止することができるとともに、意図した位置にループ材を確実に供給することにより、ループ材を縫製物本体に縫い付けた場合の縫製不良の発生を防止する。
【解決手段】 下方へ向けて配設され伸縮自在とされたロッドシャフト31bを有し、駆動手段の駆動により前記ロッドシャフト31bを伸長させてその先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接可能とされた浮き押さえ手段を備え、制御手段の制御により、ループ材20を挟持した挟持手段3を移動させて縫製物本体21に縫い付けた縫製箇所を覆うようにループ材20を折り返す際に、ロッドシャフト31bを伸長させ、前記ループ材20の折り返し部分近傍に当接させて、前記ループ材20を縫製物本体21に押し付け、縫製物本体の浮き上がりと皺の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトループを構成するループ材の縫製箇所を縫製物本体の縫い付け位置に供給するとともに、ミシンの縫製位置に配置するループ材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、パンツやスカートの腰部、さらにはコートの腰部や袖部等の種々の縫製物本体にベルトを挿通するためのベルトループを形成するために、ベルトループを構成する長尺のループ材を縫製物本体に縫い付けるミシンが用いられているとともに、このミシンの縫製位置に長尺状のループ材を供給するループ材供給装置が用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
このようなループ材供給装置は、ループ材を挟持する挟持手段を有し、挟持手段によってループ材の所定の部分を挟持しながら、ループ材の縫製箇所をミシンの縫製位置に配置させたり、ループ材の非縫製箇所を縫製位置から退避させるように挟持手段を移動するようになっている。
【0004】
図6に示すような、一端部20aがZ字状に折曲され、他端部20bが直線状に延出するようにループ材20を縫製物本体21に縫い付ける場合の工程を図7(a)〜(f)に示す。
【0005】
先ず前述のループ材供給装置は、ループ材20の長手方向の一端部20a近傍を挟持した状態の挟持手段3を、ループ材20の一端部20aがミシンの縫製位置に位置するように移動する(図7(a))。
【0006】
そして、ミシンの押さえ23が下降しループ材20の一端部20aが押さえられると、ループ材供給装置は、挟持手段3を他端部側へ縫製物本体21から浮かせるように(図7(b)矢印A方向)移動させ、縫製位置から離間させる。この移動に合わせて、ループ材20を挟持手段3に対して滑らせることにより、ループ材20における挟持手段3のループ挟持位置が、ループ材の一端部20aの近傍から他端部20bの近傍に移動する(図7(b))。この状態で、ミシンは、ループ材20の一端部20aを縫製物本体21に縫い付ける(第1閂止めS1の縫製)。この第1閂止めS1の縫製中に縫製物本体21および押さえ23は縫い目の形成方向に移動するが、挟持手段3は同方向に移動不可能なため、ループ材20が挟持手段3に対して適度に滑り、ループ材20における挟持手段3のループ挟持位置が移動し、ループ材20が縫製物本体21とともに移動するようにしておく。
【0007】
第1閂止めS1の縫製後、ループ材供給装置は押さえ23を上昇し、他端部20bを挟持した挟持手段3を押さえ23の下を潜らせて、第1閂止めS1を越えて図7(c)における矢印B方向に移動させる(図7(c))。これにより、ループ材20は、第1閂止めS1を覆うように折り返される。この移動間もループ材20は挟持手段3に対してわずかに滑ることでループ挟持位置を移動させる。
【0008】
次にミシンは、挟持手段3を下降させ、ループ材20を縫製物本体21に重ねる。さらに、ループ材20の一端部20aの近傍上面に押さえ23を下降し、ループ材20を押付けた後、第2閂止めS2の縫製を行うことにより、第1閂止めS1の近傍(図7(d)における第1閂止めS1の右側)に第2閂止めS2を形成する(図7(d))。そして、押さえ23を上昇した後、挟持手段3を再び押さえ23の下を潜らせて第2閂止めS2および第1閂止めS1を越えて、図7(e)における矢印C方向に移動させる(図7(e))。これにより、ループ材20は第2閂止めS2を覆うように折り返され、一端部20aはZ字状に折曲される。この移動間もループ材20は挟持手段3に対してわずかに滑ることでループ挟持位置をループ材20の他端部へ移動させる。
【0009】
続いてミシンは、ループ材20の長手方向の他端部20bを挟持した状態の挟持手段3を、ループ材20の他端部20bがミシンの縫製位置に位置するように移動する(図7(f))。そして、ミシンの押さえ23が下降しループ材20の他端部20bが押さえられると、ループ材供給装置は、挟持手段3を縫製位置から退避させ(図7(f))、この状態で、ミシンは、ループ材20の他端部20bを縫製物本体21に縫い付ける(第3閂止めS3の縫製)。
【0010】
【非特許文献1】”MHA−B400A,B500A,B600A オートベルター(JUKI頭部モデル)”、ハムス株式会社、[平成20年10月24日検索]、インターネット〈http://www.hams-jp.com/mha-b400.htm〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、前述したループ材20の供給工程において、図7(c)から図7(d)へ移行する際、挟持手段はループ材20をわずかに滑らせ、ループ挟持位置を移動させるが、それでもなお、図8に示すように、移動する挟持手段によってループ材とともに縫製物本体21が過剰に引っ張られ、縫製物本体21に皺が発生してしまうことがあった。このままの状態で第2閂止めS2が形成されると、ループ材20を縫い付けると見栄えが悪く、意図した位置にループ材20を縫い付けることができず、ベルトループも指定の長さに仕上がらないといった問題も生じる。
【0012】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ループ材を縫い付ける縫製物本体に皺が発生するのを防止することができるとともに、意図した位置にループ材を確実に供給することにより、ループ材を縫製物本体に縫い付けた場合の縫製不良の発生を防止することができるループ材供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るループ材供給装置の特徴は、ベルトループを構成するループ材を挟持する挟持手段と、前記ループ材の各縫製箇所を縫製物本体に対して移動させるために前記挟持手段を移動する移動手段と、少なくとも前記挟持手段および前記移動手段の駆動制御を行う制御手段とを備えたベルトループ縫い付けミシンのループ材供給装置において、下方へ向けて配設され伸縮自在とされたロッドシャフトを有し、駆動手段の駆動により前記ロッドシャフトを伸長させてその先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接可能とされた浮き押さえ手段を備え、前記制御手段は、ループ材を挟持した挟持手段を移動させて縫製物本体に縫い付けた縫製箇所を覆うようにループ材を折り返す際に、前記ロッドシャフトを伸長させて前記ループ材の折り返し部分近傍に当接させて、前記ループ材を縫製物本体に押し付けるように、前記駆動手段を制御する点にある。
【0014】
本発明のループ材供給装置によれば、前記ロッドシャフトを伸長させ、前記ループ材の折り返し部分に当接させて、前記ループ材を縫製物本体に押し付けることで、ループ材が縫製物本体を引っ張って、皺にしてしまうことを防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明に係るループ材供給装置の特徴は、請求項1に記載の発明に係るループ材供給装置において、前記ロッドシャフトの先端部には、縫製物本体に縫い付けられたベルトループの長手方向に回転自在とされた回転部材が配設されている点にある。
【0016】
本発明のループ材供給装置によれば、前記ロッドの先端部に前記回転部材を配設することで、前記ロッドを伸長させた際に、前記回転部材を前記ループ材の折り返し部分に当接させて前記ループ材を縫製物本体に押し付けることが可能となる。前記回転部材は少なくともループ材の折り曲げ方向に沿って自転可能とされているので、仮に、回転部材がループ材に当接した状態で、ループ材が挟持部材により引っ張られることがあっても、ループ材と回転部材との間の摩擦係数を前記回転部材が回転することで軽減させて、ループ材の縫製箇所をミシンの縫製位置に配置させたり、ループ材の非縫製箇所を縫製位置から退避させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明に係るループ材供給装置の特徴は、請求項1または請求項2に記載の発明に係るループ材供給装置において、前記浮き押さえ手段の駆動手段は、ロッドシャフトの伸長動作を行なうモータであり、前記制御手段は、前記浮き押さえ手段における前記ロッドシャフトのストローク長を調整し、ロッドシャフトの先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接させる下降位置および最も上昇させた待機位置の他、移動する挟持手段と干渉しない範囲における最も前記下降位置に近い下降準備位置において停止させるようにモータを駆動制御する点にある。
【0018】
この請求項3に記載の発明によれば、ループ材供給装置は、ロッドシャフトの先端位置を移動する挟持手段と干渉しない範囲において最も前記下降位置に近い下降準備位置において停止、待機させることで、ロッドシャフトの伸長に係る所要時間を短くし、適切なタイミングで確実にループ材を縫製物本体に押し付けることが可能となる。よって、ループ材を縫い付ける縫製物本体を引っ張って皺にしてしまうことをより確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明に係るループ材供給装置によれば、ループ材の引っ張りすぎを抑えて、縫製物本体を皺にしてしまうのを防止することができる。この結果、このループ材供給装置によってループ材を供給されるミシンにおいては、ループ材を縫製物本体に縫い付けた場合の縫製不良の発生を防止し、高品質のループ材を縫製物本体に縫い付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るループ材供給装置の2つの実施形態を図1乃至図5を参照して説明する。なお、従来のループ材供給装置と同一の構成については、同一の符号を用いる。
【0021】
図1は、第1実施形態に係るループ材供給装置1とこのループ材供給装置1が配設されるミシン2の要部を示す拡大斜視図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るループ材供給装置1は、ミシン2にベルトループを構成するループ材20を供給するために、ループ材20の上面に当接する第1挟持部材5と、ループ材20の下面に当接する第2挟持部材6とによってループ材20を挟持する挟持手段3を有している。
【0023】
挟持手段3には、第1挟持手段5と第2挟持手段6とを相互に接離する方向に駆動する駆動手段としてエアシリンダ9が取り付けられており、エアシリンダ9は、エアシリンダ9に圧力を供給するための空圧回路に連結されている。
【0024】
また、ループ材供給装置1は、ループ材20の縫製箇所をミシン2の縫製位置に供給したり、ループ材20の非縫製箇所を前記縫製位置から退避させるように挟持手段3を移動する移動機構を有している。ループ材供給装置1は、この移動機構として、挟持手段3をループ材20を縫製物本体21に縫い付ける時に形成される縫い目に沿った方向に移動するX方向移動機構(不図示)と、挟持手段3を縫い目と直交する方向に移動するY方向移動機構(不図示)と、挟持手段3を縫製物本体に対して上下方向に移動するZ方向移動機構(不図示)とを備えている。このX方向移動機構、Y方向移動機構およびZ方向移動機構はそれぞれ、X方向移動手段としてのX軸モータ(不図示)、Y方向移動手段としてのY軸モータ(不図示)およびZ軸方向移動手段としてのZ軸モータ(不図示)を備えており、その駆動を制御手段により制御するようになっている。
【0025】
そして、ループ材供給装置1は、ロッドを駆動手段によって伸縮駆動とするシャフト部材を有し、ロッドの伸延時にはその先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接可能とされた浮き押さえ手段を有している。具体的には、浮き押さえ手段30は駆動手段を備えたシャフト部材としてのエアシリンダ31を有しており、エアシリンダ31のシリンダ本体31aは、シリンダロッド31bの先端部をミシン2の縫製位置となる針落ち位置近傍へ向けた状態で、ミシン2の針棒が収容されるミシン頭部2aにおける面板部2bに固定部材33を介して取り付けられている。シリンダロッド31bの先端部には、縫製物本体に縫い付けられたベルトループの長手方向に回転自在とされた回転部材34が配設されている。具体的には、シリンダロッド31bの先端部には、図1に示すように、円筒状のコロ34aを支軸34bによりループ材20の折り曲げ方向に沿って回転自在に支持した支持金具34cからなる回転部材34が配設されている。なお、前記回転部材34としては、縫製物本体に縫い付けられたベルトループの長手方向に回転自在に支持されていればこの構成にかぎることなく、例えば公知のボールキャスターを配設してもよい。
【0026】
エアシリンダ31は、エアシリンダ31に圧力を供給するための空圧回路(不図示)に連結されており、この空圧回路は、制御手段からの電気信号によりエアシリンダ31に供給する圧力を調整可能な電空レギュレータ(不図示)と電磁弁(不図示)とを有している。また、エアシリンダ31は、シリンダロッド31bの軸を中心とした回転に対する回り止め機構(不図示)を備えている。そして、エアシリンダ31は、シリンダロッド31bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aが縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接させる下降位置と、挟持手段やミシンの押さえの動作を妨げないように最も上昇させた待機位置(図1参照)との間を往復可能に前記シリンダロッド31bのストローク長が設定されている。
【0027】
また、ループ材供給装置1の電磁弁、電空レギュレータおよび各移動機構の各移動手段等の各部の駆動を制御する制御手段は、ループ材供給装置1の各動作のプログラム等を記憶する記憶手段を備えている。そして、制御手段は、記憶手段に記憶されたプログラムや各種パラメータに基づき、ループ材20における縫製箇所をミシン2の縫製位置に供給するように各移動機構の移動手段(モータ)を駆動して挟持手段3を移動するようになっている。
【0028】
さらに、制御手段は、浮き押さえ手段30に配設された電磁弁を制御してシリンダロッド31bの伸長量を調整し、シリンダロッド31bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aが、図2に実線で示すように、縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接する下降位置と、図2に破線で示すように、挟持手段3やミシンの押さえ23の動作を妨げないように上昇させた待機位置(図1参照)との間で移動するように制御するようになっている。そして、制御手段は、シリンダロッド31bが最長に伸長した際、すなわち、シリンダロッド31bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aが下降位置にあるときに、電空レギュレータを制御することにより、エアシリンダ9へのエア供給圧力を調整し、ループ材上面に対する当接圧(推圧)を設定することができるようになっている。
【0029】
続いて、図6に示すような、一端部20aがZ字状に折曲され、他端部20bがまっすぐに伸長するようにループ材20を縫製物本体21に縫い付ける場合において第1閂止めS1の形成後、第2閂止めS2を形成するべく挟持手段3が移動する際(図7(c)参照)に、本実施形態のループ材供給装置1の浮き押さえ手段30により、ループ材20の曲げ部分を押さえる際の制御動作を図3のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
前述のように、第1閂止めS1の縫製後、ループ材供給装置1は、押さえ23を上昇し、ループ材20の一端部20aよりも少しループ材20の長さ方向における中央側である一端部20aの近傍がミシン2の縫製位置に位置するように、ループ材20が縫い付けられた縫製物本体21を搬送する。このとき、ループ材供給装置1の制御手段は、エアシリンダ31の駆動を制御して、図2に示すように浮き押さえ手段30のシリンダロッド31bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aを待機位置に位置させておく(ST1)。
【0031】
そして、制御手段は、挟持手段のY軸移動手段を駆動させて(ST2)、他端部20bを挟持した挟持手段3を、第1閂止めS1を越えて移動させる。そして、制御手段は、挟持手段3を下降させて、ループ材20を縫製物本体21に重ねる。これにより、ループ材20は、第1閂止めS1を覆うように折り返される。
【0032】
この挟持手段3の移動の間、ループ材20は挟持手段3に対してわずかに滑ることでループ挟持位置が一端部20aの際端部側に移動する。その際、縫製物本体21はミシン針板27上に戴置された身頃押さえ下板24と身頃押さえ25との間に挟まれて保持されており、この身頃押さえ下板24と身頃押さえ25がミシン2の身頃移動機構26の駆動によって、第1閂止めS1と第2閂止めS2との間の距離分だけ移動することにより、挟まれている縫製物本体21も同様に移動する。
【0033】
このとき、制御手段は、挟持手段3が浮き押さえ手段30のシリンダロッド31bの干渉域から完全に域外へ移動したことを確認し(ST3のYes)、電磁弁を制御してシリンダロッド31bを伸長させる(ST4)。すなわち、Y軸方向移動手段としてのY軸モータの駆動量を監視して挟持手段3の位置を特定し、挟持手段3が、部材同士の干渉を防止するために予め設定された干渉域からY軸方向に外れるまで待って(ST3のNo)、電磁弁を制御し、シリンダロッド31bを伸長させる。そして、待機位置にあるシリンダロッド31bの先端部を下降位置まで下降させ、その先端部に配設された回転部材20のコロ34aを縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接させて、ループ材20および縫製物本体21を第1閂止めS1の近傍で下方に押し付ける。コロ34aがループ材20に当接したときに、身頃移動機構26や挟持手段3が移動中であっても、コロ34aがループ材20の移動方向に回転可能に形成されているので、引っ張られるループ材20の移動に従動して回転する。よって、ループ材20の移動供給にも支障なく作動するので、縫製物本体21のミシン針板27上からの浮き上がりを押さえて、ベルトループ縫製後の縫製物本体21の皺を発生を防止することができる。
【0034】
そして、ミシン2がループ材20の一端部20aの近傍上面に押さえ23を下降させてループ材20を押さえたら(ST5)、制御手段は、電磁弁を制御してシリンダロッド31bを短縮させ、シリンダロッド31bの先端部を待機位置に位置させて、次の縫製に備える(ST4)。また、ミシンは第2閂止めS2の縫製を行い、第2閂止めS2を形成する。
【0035】
なお、前述の制御において、コロ34aをループ材20に当接させて縫製物本体21の皺の発生を効果的に防止するためには、なるべく早い段階でループ材20を介して縫製物本体21を押さえつけることが望ましい。よって、シリンダロッド31bが干渉域に到達するまでの時間を考慮して、制御手段により、挟持手段3が干渉域から外れる前に、シリンダロッド31bの駆動を開始するように駆動開始タイミングを制御してもよい。
【0036】
また、エアシリンダ31のループ材20の上面に対する当接圧(推圧)は、空圧回路上に配設された電空レギュレータを制御することにより調整する。例えば、縫製物本体21の素材の特性の硬いか柔らかいか、伸びるか伸びないか等を考慮して最適に設定する。
【0037】
このようなエアシリンダ21を用いた浮き押さえ手段30を備えた本実施形態のループ材供給装置1においては、その先端部に配設された回転部材34のコロ34aを縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接させてループ材20および縫製物本体21を第1閂止めS1の近傍で下方に押し付けることで、縫製物本体21のミシン針板27上からの浮き上がりを押さえて、縫製物本体21に皺が発生するのを防止することができるとともに、意図した位置にループ材20を確実に供給することにより、ループ材20を縫製物本体21に縫い付けた場合の縫製不良の発生を防止することができる。
【0038】
なお、前述の第1実施形態のループ材供給装置1においては、浮き押さえ手段30の駆動手段としてエアシリンダ31を備え、制御手段はそのエアシリンダ31の電磁弁の駆動を調整してシリンダロッド31bを伸縮させていたが、駆動手段としてのパルスモータを駆動させることにより、ピニオンとラックを用いてシリンダロッド32bを伸縮自在とする公知の構成のシリンダを採用することも可能である(第2実施形態)。
【0039】
このようにパルスモータを浮き押さえ手段30の駆動源として備えた場合、制御手段は、パルスモータの動作量を制御してロッドシャフト32bの伸長量を調整し、シリンダロッド32bの先端部に配設された回転部材のコロ34aが縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接する下降位置と、図4に破線で示す、挟持手段3やミシン2の押さえ23の動作を妨げないように最も上昇させた待機位置との他、図4に実線で示す、移動する挟持手段3と干渉しない範囲、すなわち干渉域外において最も前記下降位置に近い下降準備位置との3箇所にシリンダロッド32bの先端部に配設された回転部材のコロ34aが停止するように制御する。
【0040】
シリンダロッド32bは、縫製物本体21がミシン2の針板27上にセットされるまでは、その作業の邪魔にならないように、シリンダロッド32bの先端部に配設されたコロ34aを待機位置に位置させておき、ベルトループの縫製作業が開始された段階でコロ34aを下降準備位置に位置させる。そして、第1閂止めS1の形成後、第2閂止めS2を形成するべく挟持手段3が移動する際に、コロ34aを下降準備位置から下降位置へ移動させるようにする。
【0041】
ここで、前述の第1実施形態と同様に、第1閂止めS1の形成後、第2閂止めS2を形成するべく挟持手段が移動する際に、第2実施形態のループ材供給装置1の浮き押さえ手段30により、ループ材20の曲げ部分を押さえる際の制御動作を図5のフローチャートを用いて説明する。
【0042】
本実施形態においては、前述のように縫製開始操作がされるまでの間、制御手段はパルスモータの動作量を制御して図4に示すように浮き押さえ手段30のシリンダロッド32bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aを待機位置に位置させ(ST11)、縫製物本体の配置作業等の邪魔にならないようにしてベルトループの縫製作業が開始されるまで待機する(ST12)。
【0043】
ベルトループの縫製作業が開始されたところで、制御手段はパルスモータの動作量を制御して、シリンダロッド31bを少し伸長させ、シリンダロッド31bの先端部に配設された回転部材34のコロ34aが移動する挟持手段3と干渉しない範囲において最も下降位置に近い下降準備位置に位置するように制御する(ST13)。この状態で、前述のようにして、第1閂止めS1を形成する。
【0044】
そして、第1閂止めS1の縫製後、ループ材供給装置1は、押さえ23を上昇し、ループ材20の一端部20aよりも少しループ材20の長さ方向における中央側である一端部20aの近傍がミシン2の縫製位置に位置するように、ループ材20が縫い付けられた縫製物本体21を搬送する。このとき、ループ材供給装置1の制御手段は、挟持手段2のY軸方向移動手段を駆動させて(ST14)、他端部20bを挟持した挟持手段3を、第1閂止めS1を越えて移動させ、さらに、挟持手段3を下降させて、ループ材20を縫製物本体21に重ねる。これにより、ループ材20は、第1閂止めS1を覆うように折り返される。その際、縫製物本体21はミシンの針板27上に戴置された身頃押さえ25下板24と身頃押さえ25との間に挟まれて保持されており、この身頃押さえ下板24と身頃押さえ25がミシンの身頃移動機構の駆動によって、第1閂止めS1と第2閂止めS2との間の距離分だけ移動することにより、挟まれている縫製物本体21も同様に移動する。
【0045】
このとき、制御手段は、挟持手段3が浮き押さえ手段30のシリンダロッド32bの干渉域から完全に域外へ移動したことを確認し(ST14のYes)、パルスモータの動作量を制御してシリンダロッド31bを伸長させる(ST15)、下降準備位置にあるシリンダロッド31bの先端部を下降位置に移動させ、その先端部に配設された回転部材34のコロ34aを縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接させてループ材20を第1閂止めS1の近傍で下方に押し付ける。すなわち、Y軸方向移動手段の移動量を監視して挟持手段3の位置を特定し、挟持手段3が予め設定された干渉域から外れたところで(ST2のNo)、パルスモータの回転を制御してシリンダロッド32bを伸長させる。
【0046】
そして、ミシン2がループ材20の一端部20aの近傍上面に押さえ23を下降させてループ材20を押さえたら(ST16)、制御手段は、パルスモータの回転を制御してシリンダロッド32bを短縮させ、シリンダロッド32bの先端部を待機位置に位置させる(ST17)。また、ミシンは第2閂止めS2の縫製を行い、第1閂止めS1の近傍に第2閂止めS2を形成する。
【0047】
このように、本実施形態のループ材供給装置1によれば、パルスモータを用い、シリンダロッド32bの停止位置として下降準備位置を設け、制御手段によりこの下降準備位置から実際のループ材20の押さえ動作を開始することで、前述のようにシリンダロッド31bの動作時間を考慮して早めの下降タイミングとなるようにタイミング調整するといった作業をすることなく、早い段階で縫製物本体21とループ材20とを押さえることができ、容易に縫製物本体20の浮き上がりと皺の発生の問題を解消することが可能となる。また、シリンダロッド32bのループ材20の上面に対する当接圧(推圧)は、電空レギュレータのような別部材を備えなくても、パルスモータの動作量を制御することにより調整することができるので簡便である。
【0048】
このように、モータにより駆動するシリンダを用いた浮き押さえ手段30を備えた本実施形態のループ材供給装置においても、その先端部に配設された回転部材34のコロ34aを縫製物本体21に重ねたループ材20の上面に当接させてループ材を第1閂止めS1の近傍で下方に押し付けることで、縫製物本体のミシン針板27上からの浮き上がりを押さえて、縫製物本体21に皺が発生するのを防止することができるとともに、意図した位置にループ材20を確実に供給することにより、ループ材20を縫製物本体に縫い付けた場合の縫製不良の発生を防止することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更するこ
とが可能である。例えば、シリンダロッド自体の先端を直接にループ材に当接させることも可能であり、その場合には回転部材は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るループ材供給装置の第1実施形態とこのループ材供給装置によって供給されるループ材を縫製物本体に縫い付けるミシンの要部をを示す斜視図
【図2】第1実施形態に示すループ材供給装置における浮き押さえ手段の動作位置を示す説明図
【図3】第1実施形態に示すループ材供給装置における浮き押さえ手段の動作制御のフローチャート
【図4】第2実施形態に示すループ材供給装置における浮き押さえ手段の動作位置を示す説明図
【図5】第2実施形態に示すループ材供給装置における浮き押さえ手段の動作制御のフローチャート
【図6】本発明に係るループ材供給装置を用いて縫製するベルトループの形状を示す斜視図
【図7】(a)〜(f)は、従来のループ材供給装置におけるループ材の各供給工程を示す概略側面図
【図8】従来のループ材供給装置におけるループ材の供給工程(図7(c))における問題点を説明するための概略側面図
【符号の説明】
【0051】
1 ループ供給装置
2 ミシン
2a 頭部
2b 面板部
3 挟持手段
5 第1挟持部材
5c 取付部
6 第2挟持部材
7 フレーム部材
9 駆動手段(エアシリンダ)
9a シリンダ本体
9b シリンダロッド
17 制御手段
20 ループ材
21 被縫製物本体
23 押さえ
24 身頃押さえ下板
25 身頃押さえ
26 身頃移動機構
27 針板
30 浮き押さえ手段
31 エアシリンダ
31a シリンダ本体
31b シリンダロッド
32 シリンダ
32b シリンダロッド
33 持ち出し部材
34 回転部材
34a コロ
34b 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトループを構成するループ材を挟持する挟持手段と、
前記ループ材の各縫製箇所を縫製物本体に対して移動させるために前記挟持手段を移動する移動手段と、
少なくとも前記挟持手段および前記移動手段の駆動制御を行う制御手段と
を備えたベルトループ縫い付けミシンのループ材供給装置において、
下方へ向けて配設され伸縮自在とされたロッドシャフトを有し、駆動手段の駆動により前記ロッドシャフトを伸長させてその先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接可能とされた浮き押さえ手段を備え、
前記制御手段は、ループ材を挟持した挟持手段を移動させて縫製物本体に縫い付けた縫製箇所を覆うようにループ材を折り返す際に、前記ロッドシャフトを伸長させて前記ループ材の折り返し部分近傍に当接させて、前記ループ材を縫製物本体に押し付けるように、前記駆動手段を制御することを特徴とするループ材供給装置。
【請求項2】
前記ロッドシャフトの先端部には、縫製物本体に縫い付けられたベルトループの長手方向に回転自在とされた回転部材が配設されていることを特徴とする請求項1に記載のループ材供給装置。
【請求項3】
前記浮き押さえ手段の駆動手段は、ロッドシャフトの伸長動作を行なうモータであり、
前記制御手段は、前記浮き押さえ手段における前記ロッドシャフトのストローク長を調整し、ロッドシャフトの先端部を縫製物本体に重ねたループ材の上面に当接させる下降位置および最も上昇させた待機位置の他、移動する挟持手段と干渉しない範囲における最も前記下降位置に近い下降準備位置において停止させるようにモータを駆動制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のループ材供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−99394(P2010−99394A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275471(P2008−275471)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】