説明

レスベラトロールを含むニュートラシューティカル組成物の新規な使用

動物、特にヒトを含む哺乳類における、加齢の遅延および/または加齢に伴う疾病の治療もしくは予防のためのニュートラシューティカル組成物の製造における、EGCG、コエンザイムQ−10、ゲニステイン、リコピン、ヒドロキシチロソールおよび多価不飽和脂肪酸から選択される少なくとも1種の追加成分と組み合わせた、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体の使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、有効成分として、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体、並びに、EGCG、コエンザイムQ−10、ゲニステイン、リコピン、ヒドロキシチロソールおよび多価不飽和脂肪酸から選択される少なくとも1種の追加成分を含むニュートラシューティカル組成物の新規な使用に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、動物、特にヒトを含む哺乳類における、加齢の遅延および/または加齢に伴う疾病の治療もしくは予防のための、そのようなニュートラシューティカル組成物の使用に関する。
【0003】
用語「ニュートラシューティカル」は、本明細書で使用される際に、栄養学分野および薬学分野双方の応用に有用であることを意味する。したがって、新規なニュートラシューティカル組成物は、食品および飲料に加える栄養補助食品、健康補助食品として、また経口もしくは非経口用薬剤(カプセルもしくは錠剤などの固形製剤、溶液もしくは懸濁液などの液体製剤のいずれであってもよい)として使用することができる。上記のことから明らかなように、ニュートラシューティカル組成物という用語には、上記の特定の有効成分を含有する食品および飲料も含まれる。
【0004】
用語「レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体」は、本明細書で使用される際に、一般式
【化1】


(式中、Aは炭素−炭素単結合または二重結合を示し、二重結合はトランスであってもシスであってもよく、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は互いに独立して水素、水酸基、エーテル化された水酸基またはエステル化された水酸基を示す)に包含される化合物を含む。Aが二重結合(−CH=CH−)である化合物Iが好ましい。
【0005】
エーテル化またはエステル化された水酸基は、炭素原子1〜26個を有する直鎖もしくは分岐鎖状の非置換もしくは置換アルキル基、または、炭素原子1〜26個を有する直鎖もしくは分岐鎖状の非置換もしくは置換脂肪族、アリール脂肪族もしくは芳香族カルボン酸から誘導することができる。エーテル化された水酸基は、さらにグリコシド基であってもよく、エステル化された水酸基は、さらにグルクロニド基または硫酸基であってもよい。Aが−CH=CH−である式Iで示される化合物の例としては、レスベラトロール(R1、R3およびR5=水素、R2、R4およびR6=水酸基);ピセアタンノール(R3およびR5=水素、R1、R2、R4およびR6=水酸基)、並びにラポンティゲニン(R5=水素、R1、R3、R4およびR6=水酸基、並びにR2=メトキシ基)が挙げられる。Aが−CH−CH−である式Iで示される化合物の例としては、ジヒドロレスベラトロール(R1、R3およびR5=水素;R2、R4およびR6=水酸基)、ジヒドロピセアタンノール(R3およびR5=水素;R1、R2、R4およびR6=水酸基)、並びにトリスチン(R3およびR5=水素;R2、R4およびR6=水酸基、並びにR1=メトキシ基)が挙げられる。これらの化合物はよく知られており、商業的に入手可能であるか、または、当該技術分野で知られている方法により得ることができる。
【0006】
用語「EGCG」は、本明細書で使用される際に、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)および/または、その1種以上の誘導体(エステル化物、グリコシド、硫酸塩)を含むものである。EGCGは、緑茶に含まれる主要なカテキンである。緑茶に健康に良い効果があるのは、主にカテキンによるとされている。マウスでは、茶カテキンは血漿レプチン値、トリグリセリド値および血糖値ばかりでなく食餌性体重増加や内臓脂肪量を低減させた。茶カテキンは、また、ラットでエネルギー消費を増大させることが知られている。ヒトでは、茶カテキンが、体重、内臓脂肪量、血漿コレステロール値、インシュリン濃度および血糖値を低下させることが示されている。健康な男子では、緑茶抽出物が、エネルギー消費および脂肪燃焼をかなり増大させることが示されている。さらに、ラットの褐色脂肪組織では、EGCGが代謝活性および酸素消費を促進させることが示されている。また、いくつかの動物実験で、カテキンがコレステロールの吸収を抑制し、血漿コレステロール値を低下させることが実証されている。さらに、エピカテキンは、コレステロールおよび総脂質の糞便中への排出を増加させる。
【0007】
コエンザイムQ−10(6−デカプレニル−2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン)は、構造がビタミンKに類似の脂溶性キノンである。コエンザイムQ−10(CoQ10)の健康に良い効果は、2つの主要な生化学的作用と関連付けられている。CoQ10は、アデノシン三リン酸(ATP)の合成と密接に関係しているミトコンドリア電子伝達系の必須共同因子である。したがって、それは、細胞のエネルギー生産に繋がる生化学的経路で、触媒として作用する。このCoQ10のバイオエネルギー作用は、心筋細胞などの高い代謝要求を有する細胞で特に重要である。また、CoQ10は、ミトコンドリアおよび脂質膜の両者に対する重要な抗酸化剤である。CoQ10は、ビタミンEの節約に役立ち、膜を安定化させる特性を有する。いくつかの研究により、CoQ10の補給後、LDLの酸化が低減されることが示された。このように、CoQ10はエネルギー代謝を亢進させ、糖尿病および循環器疾患において酸化ストレスから保護する。
【0008】
用語「ゲニステイン」は、本明細書で使用される際に、アグリコン(4’,5,7−トリヒドロキシイソフラボン)およびその誘導体、例えば、ゲニステイングリコシド、ゲニステインスルフェート、ゲニステイングルクロニドを含む。ゲニステインは、フラボノイドのイソフラボンのクラスに属する植物性エストロゲンである。それは大豆に豊富に含まれ、抗酸化作用を有することが報告されている。
【0009】
リコピン(ψ,ψカロテン;C4056;CAS番号:502−65−8)は、カロテノイドの群に属し、11個の共役二重結合と、さらに2個の非共役炭素−炭素二重結合とを有する。リコピンは主要な食餌性カロテノイドの1種であり、種々の果物および野菜、特にトマトおよびトマト製品に含まれる。それは、また、スイカ、ピンクグレープフルーツ、グァバにも含まれる。
【0010】
用語「ヒドロキシチロソール」は、本明細書で使用される際に、ヒドロキシチロソール(3,4−ジヒドロキシフェニルエタノール)および/または、1種以上のその誘導体(エステル化物、グリコシド、硫酸塩)、あるいは、例えば、エレノン酸とヒドロキシチロソールとのヘテロシドエステルであるオレウロペイン、またはオレウロペインアグリコンまたはベルバスコシド((カフェ酸−グルコース−(ラムノース)−ヒドロキシチロソール)などのヒドロキシチロソールを含有する分子を含む。ヒドロキシチロソール、または、その誘導体もしくは類似体の1つは、精製した植物抽出物、特にオリーブの抽出物の形態である。ヒドロキシチロソールは、オリーブに含まれる主要なポリフェノールである。ヒドロキシチロソールは、最も高いフリーラジカル捕捉能(ケルセチンの2倍、エピカテキンの3倍超)を有する抗酸化剤であると考えられている。オリーブの加工過程で発生した排水には、高濃度のヒドロキシチロソールが含まれており、その大部分を回収して、ヒドロキシチロソール抽出物を製造することができる。ヒドロキシチロソールは、他のポリフェノールと同じ健康増進作用、すなわちアテローム性動脈硬化症の予防、腸および呼吸器の健康増進、並びに癌の予防の作用を有する。ヒドロキシチロソールは、また、喫煙に起因する酸化ストレスを軽減する。
【0011】
用語「多価不飽和脂肪酸」(本明細書でPUFAともいう)は、本明細書で使用される際に、エステル化形態(例えば、トリグリセリドまたはエチルエステルとして)、または遊離形態の多価不飽和脂肪酸、特に、エイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、EPA)およびドコサヘキサエン酸(4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、DHA)などのオメガ−3多価不飽和脂肪酸、またはγ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカトリエン酸、GLA)などのオメガ−6−多価不飽和脂肪酸を意味する。
【0012】
加齢は、最終的に死の可能性を増大させる、生命体における細胞過程および生理機能の進行性の劣化および喪失を伴う。高齢人口の割合は、世界的に増大しつつある。したがって、加齢および加齢に伴う疾病を遅延させる治療法(これにより、ある種の身体機能の低下が抑制され、高齢者の生活の質および平均余命が向上する)の開発に対する緊急のニーズがある。加齢の過程には、酸化ストレス、抗細胞ストレス、神経内分泌系、栄養物質感知系およびインスリン情報伝達などの多くの分子経路が関与する。最近の研究で、栄養物質感知系およびインスリン情報伝達経路が、加齢過程で重要な役割を果たすことが示唆されている。さらに、インスリン情報伝達経路および栄養物質感知系を調節することによって、加齢に伴う疾病の進行を遅らせることができる。最後に、栄養物質感知系およびインスリン情報伝達経路はともに、進化を通して、かつ酵母からヒトまで広く種を超えて保存されるものと考えられる。インスリン情報伝達経路は、異なる種の、寿命の調節において、そしてまた成長や大きさの調節においても、極めて重要な役割を果たすことが示されている。さらに、インスリン感受性は、糖尿病や癌などのいくつかの加齢に伴う疾病の進行と関連している。このように、インスリン経路を調節することによって、ショウジョウバエおよびマウスの寿命を延ばすことが可能であり、それは様々な種の寿命に影響する。最後に、100歳以上の人は、一般に、インスリン応答効率が高いことが、最新の研究で示された。栄養物質感知系もまた、単細胞酵母から哺乳類まで保存されており、加齢工程および糖尿病や癌などの加齢に伴う疾病と関連している。
【0013】
エネルギーおよび代謝状況を検知し、豊富時には同化表現型を、および/または、欠乏時には異化表現型を亢進させることによって栄養フラックスを調節する、栄養物質感知系には複数の系が存在する。哺乳類ラパマイシン標的S6キナーゼ(mTOR−S6K)経路は、栄養物質感知系の1つである。タンパク質S6キナーゼ(S6K1)は、タンパク質翻訳の制御と、細胞の成長および増殖の調節に関与する。S6キナーゼを抑制すると、ショウジョウバエの寿命は長くなった。逆に、S6キナーゼを過剰発現させると、ショウジョウバエの寿命は短くなった。最近、マウスでS6K1をノックアウトすると、加齢または食餌による肥満からマウスが保護され、インスリン感受性が亢進されることが示された。さらに、高脂肪食餌マウスおよび肥満ob/obマウスはS6K1活性が著しく亢進していた。S6K1の活性化により、高脂肪食のいくつかの影響が調節され、加齢とともに人のインスリンに対する感受性が低下していくことが示唆されている。S6K1はインスリン情報伝達を調節するとともに、栄養物質感知経路でも一定の役割を果たしている。S6K1を抑制することにより、過食の有害な影響から生命体を保護することができると考えられる。したがって、S6K1を標的にすることは、加齢や、神経変性疾患(アルツハイマー病、認知症)、アテローム性動脈硬化症、循環器疾患、癌、糖尿病および肥満などの加齢に伴う疾病を抑制する方法となり得る。
【0014】
1950年代には、人が100歳を超えて生きる可能性は非常に低く、90歳でさえその可能性は低かった。当時、35歳は中年と考えられていた。しかしながら、半世紀も経ないうちに、米国では、85歳以上の年齢群の人口増加が最も著しくなっている。人々がより長く生きれば、高齢者人口の中により多くの病気や他の障害が発生する。それ故、加齢過程を遅延させ、加齢に伴う病気の発生を減少させるための健康増進手段に対する緊急のニーズが生じている。食習慣およびライフスタイルを健康的なものへと変化させることによって、高齢者人口の健康状態と生活の質は大きく改善される。加齢に伴う病理学的変化に効果のあるニュートラシューティカル組成物は、加齢を抑制し、かつ、急激に増加する高齢者人口によって引き起こされる医学上の問題を解決する一助となり得る。
【0015】
高齢者人口における病気や他の障害は、次のように分類することができる。
【0016】
中枢神経系障害:加齢過程では、しばしば、脳に萎縮変化が生じる。脳機能の加齢に伴う実質的減退、すなわち、ノルエピネフリンおよびドーパミンの合成減少がある。脳内の神経細胞のいくらかが徐々に死滅する。しかしながら、海馬で起きていることと同様に、別のものが成長し、加齢に伴う近隣の死を補償する。アルツハイマー病やうつ病などの、加齢に伴う神経障害および精神障害もある。
【0017】
自律神経系障害:高齢期では、恒常性維持機構が遅くかつ弱いので、変化は交感神経および副交感神経の応答の変化、すなわち、圧受容器の感度の低下および体温調節の変化に反映される。したがって、起立性低血圧症および起立性失神は高齢者に共通の問題であり、病気、特に糖尿病性自律神経機能障害によってのみ悪化する。
【0018】
眼および耳の障害:眼の障害−老眼および水晶体の混濁という生理学的な変化は、その後、視力調節能の低下および眩しい光に対する感受性の増大をもたらす。これらの生理学的変化は、視力を低下させるだけでなく失明に至らすこともしばしばである。耳の障害−耳に関しては、生理学的変化は、高周波聴力の減退であり、バックグラウンドにノイズが存在すると言葉の識別が困難になる。したがって、難聴および聴力の低下がある。
【0019】
高齢者人口の病気および障害の他のグループには、次のものがある。
−循環器系障害(疾病としては、高血圧、冠動脈疾患、うっ血性心疾患の他、心臓ブロックまたは不整脈が挙げられる)
−呼吸器系障害(呼吸器疾患としては、肺気腫、呼吸困難および低酸素症が挙げられる);
−胃腸系障害(高齢者は、肝硬変、便秘、宿便、便失禁、骨粗しょう症または、吸収不全によるビタミンB12欠乏症を患うことがある);
−内分泌系障害(糖尿病、甲状腺機能異常の進行が挙げられる);
−血液および免疫系障害(貧血症および自己免疫疾患の進行);
−筋肉および骨格系障害(骨粗しょう症);
−癌
【0020】
意外にも、有効成分、すなわち、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体と、EGCG、コエンザイムQ−10、ゲニステイン、リコピン、ヒドロキシチロソールまたは多価不飽和脂肪酸から選択される少なくとも1種の追加成分を含有する組成物が、動物、特にヒトを含む哺乳類の加齢過程の遅延および/または加齢に伴う疾病の治療もしくは予防に有用であることが判った。
【0021】
本発明に関連して、哺乳類およびヒトは別にして、特に興味深い動物の群としては、例えば、馬、ラクダ、ヒトコブラクダ、犬、猫および鳥などの家畜や、動物園で飼育されている動物が挙げられる。
【0022】
家畜、ペットおよび動物園の動物は、飲み水を含め、餌、例えばペットフードから、有効成分を摂取することが好ましい。
【0023】
さらに、本組成物は、加齢に関与している複数の異なる重要な情報伝達経路に作用し、したがって、個々の成分よりより強く、加齢および加齢に伴う疾病を遅延させることが判った。したがって、本組成物は、加齢および寿命と関連している栄養物質感知経路およびインスリン情報伝達経路に作用することによって、加齢過程をある程度遅延させることができる。特に、本組成物はmTOR−S6K1経路を調節し、したがって、栄養物質感知系およびインスリン情報伝達経路を変更することによって、細胞または生命体の加齢を遅延させる。
【0024】
本発明のニュートラシューティカル組成物は、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体を、成人(体重約70kg)に約0.5mg/日〜約2000mg/日、好ましくは約5mg/日〜約500mg/日投与できるだけの量、含有する。したがって、ニュートラシューティカル組成物が食品または飲料であれば、それに含まれるレスベラトロール化合物の量は、1サービング当たり約0.2mg〜約500mgの範囲が適当である。ニュートラシューティカル組成物が薬剤処方であれば、そうした処方には、1固形投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり、約0.5mg〜約500mg、あるいは、液体製剤の1日量当たり約0.5mg〜約2000mg含有させることができる。
【0025】
EGCGは、成人(体重約70kg)の1日の消費量が10mg/日〜2000mg/日の範囲となるような濃度で使用することが好ましい。食品または飲料では、1サービング当たり約2mg〜約500mgのEGCGを含有させることが好ましい。ニュートラシューティカル組成物が薬剤処方であれば、そうした処方には、1投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり約5mg〜約500mg、あるいは、液体製剤の1日量当たり約10mg〜約2000mgの量のEGCGを含有させることができる。
【0026】
この組成物中のヒドリキシチロソールの量は、1日の投与量が、投与する対象の体重1kg当たり約0.01mg〜約60mgとなるようにすることができる。食品または飲料には、1サービング当たり約0.3mg〜約1250mgのヒドロキシチロソールを含有させることが適当である。ニュートラシューティカル組成物が薬剤処方であれば、そうした処方には、1投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり、約1mg〜約4000mg、あるいは、液体製剤の1日量当たり約1mg〜約4000mgの量のヒドロキシチロソールを含有させることができる。
【0027】
PUFAは、成人(体重約70kg)の1日の消費量が10mg/日〜4000mg/日の範囲となるような濃度で使用することが好ましい。食品または飲料には、1サービング当たり約5mg〜約1000mgのPUFAを含有させることが適当である。ニュートラシューティカル組成物が薬剤処方であれば、そうした処方には、1投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり、約10mg〜約1000mg、あるいは、液体製剤の1日量当たり約10mg〜約4000mgの量のPUFAを含有させることができる。
【0028】
ゲニステインは、成人(体重約70kg)の1日の消費量が0.5mg/日〜2000mg/日の範囲となるような濃度で使用することが好ましい。食品または飲料では、1サービング当たり約0.2mg〜約500mgのゲニステインを含有させることが適当である。ニュートラシューティカル組成物が薬剤処方であれば、そうした処方には、1投与単位当たり、例えば1カプセルまたは1錠当たり、約0.5mg〜約500mg、あるいは、液体製剤の1日量当たり約0.5mg〜約2000mgの量のゲニステインを含有させることができる。
【0029】
リコピンは、ヒトを含む動物(例えば、体重約70kg)の1日の消費量が0.05mg/日〜50mg/日(1日の投与量、約0.0007〜約0.7mg/kg体重に相当)、より好ましくは0.5mg/日〜30mg/日の範囲となるような濃度で使用することが好ましい。ニュートラシューティカル組成物は、1サービング当たり0.05mg〜50mgのリコピンを含有することが好ましい。組成物が薬剤組成物であれば、そうした組成物には、1投与単位当たり、例えば1カプセルもしくは1錠当たり、または1液体製剤単位当たり、0.5mg〜50mgの量のリコピンを含有させることが好ましい。
【0030】
用語「サービング」は、本明細書で使用される際に、成人が1回の食事で通常摂取する食品または飲料の量を意味し、例えば、約100g〜約500gの範囲である。
【0031】
上で定義された組成物の有効成分は異なる作用機序を有しているので、加齢に伴う疾病の予防に相乗効果を発揮する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、組成物は、EGCGとレスベラトロールとの組み合わせ、または、ヒドロキシチロソールとレスベラトロールの組み合わせを含む。さらに、ある種の食習慣では不足する必須栄養素を十分に摂取するために、本発明のニュートラシューティカル組成物に各種のビタミンおよびミネラルを含んだ補助食品を加えてもよい。各種ビタミンおよびミネラルを含んだ補助食品は、病気の予防や、生活パターンから来る栄養損失および栄養不足の予防にも有用である。
【0033】
本発明の1つの態様では、本組成物は、栄養補助食品として、例えば、正常な代謝機能の維持には必須であるが、体内では合成されないビタミンおよびミネラルを含むマルチビタミン調製物に添加する添加物として、特に加齢に伴う疾病の治療または予防用のものとして、使用することができる。
【0034】
本発明の組成物における具体的な有効成分の組み合わせとしては、
レスベラトロールとEGCG、
レスベラトロールとヒドロキシチロソール、
レスベラトロールと、少なくとも1種のPUFA(EPA、DHA、GLAなど)、
レスベラトロールとゲニステイン、
レスベラトロールとリコピン、
レスベラトロールとCoQ10
が挙げられる。
【0035】
以下の実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0036】
[A.薬剤組成物は、下記に示す成分を使用して、従来の製剤方法により調製することができる:]
[実施例1]
[ソフトゼラチンカプセル]
ソフトゼラチンカプセルを、下記に示す成分を使用して従来の方法により調製する。
有効成分:レスベラトロール10mg、EPA200mg、ビタミンE50mg
他の成分:グリセロール、水、ゼラチン、植物油
【0037】
[実施例2]
[ハードゼラチンカプセル]
ハードゼラチンカプセルを、下記に示す成分を使用して従来の方法により調製する。
有効成分:レスベラトロール10mg、EGCG100mg、ゲニステイン5mg、ビタミンE50mg、ビタミンK1mg
他の成分:充填剤:ラクトースまたはセルロースもしくはセルロース誘導体、潤滑剤:必要に応じてステアリン酸マグネシウム(0.5%)
【0038】
[実施例3]
[錠剤]
錠剤を、下記に示す成分を使用して従来の方法により調製する。
有効成分:レスベラトロール5mg、EGCG50mg、ビタミンE20mg
他の成分:微結晶性セルロース、二酸化ケイ素(SiO)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム
【0039】
[B.食品は、下記に示す成分を使用して、従来の方法により調製することができる:]
[実施例4]
ジュース30%含有ソフトドリンク
有効成分:レスベラトロール、並びに、EGCG、PUFA(EPA、DHA、GLA)、ゲニステイン、ビタミンEおよびビタミンKから選択される1種類以上の追加成分がこの食品に含まれる。
レスベラトロール:0.2〜200mg/サービング
EGCG:2〜200mg/サービング
PUFA(EPA、DHA、GLA):5〜500mg/サービング
ゲニステイン:0.2〜50mg/サービング
ビタミンE:5〜100mg/サービング
ビタミンK:0.01〜5mg/サービング
通常のサービング:240ml
【0040】
[I:ソフトドリンク配合物を以下の成分から調製する:]
【0041】
【表1】

【0042】
[1.6有効成分]
上記濃縮物中の有効成分(これは、上記有効成分:レスベラトロールと、以下のEGCG、PUFA(EPA、DHA、GLA)、ゲニステイン、ビタミンEおよびビタミンKの内の1種以上、を意味する)。
【0043】
濃縮フルーツジュースと水溶性香料を、空気を混入させずに混合する。着色剤を脱イオン水に溶解させる。アスコルビン酸とクエン酸を水に溶解させる。安息香酸ナトリウムを水に溶解させる。攪拌しながらペクチンを加え、沸騰させて溶解させる。溶液を冷却する。オレンジオイルおよび油溶性香料を予備混合する。1.6に記載した有効成分を乾式混合し、その後、攪拌しながら濃縮フルーツジュース混合物(1.1)に加えることが好ましい。
【0044】
ソフトドリンク配合物を調製するために、3.1.1〜3.1.6の全ての成分を混合し、その後、Turrax、次いで高圧ホモジナイザー(p=200bar、p=50bar)を使用して均質化する。
【0045】
[II.ボトリングシロップを以下の成分から調製する:]
【0046】
【表2】

【0047】
ボトリングシロップの成分を混合する。ボトリングシロップを水で希釈し、1リットルのそのまま飲めるタイプの飲料とする。
【0048】
[変形:]
安息香酸ナトリウムを使用する代わりに、飲料を殺菌処理してもよい。また、飲料を炭化してもよい。
【0049】
[実施例5]
[ミラノタイプのクッキー]
有効成分:レスベラトロール、並びに、EGCG、PUFA(EPA;DHA;GLA)、ゲニステイン、ビタミンEおよびビタミンKから選択される1種以上の追加成分がこの食品に含まれる。
レスベラトロール:0.2〜100mg/サービング
EGCG:2〜100mg/サービング
PUFA(EPA;DHA、GLA):5〜200mg/サービング
ゲニステイン:0.2〜20mg/サービング
ビタミンE:5〜100mg/サービング
ビタミンK:0.01〜5mg/サービング
通常のサービング:30g
【0050】
【表3】

【0051】
全ての成分を攪拌しながら徐々に加え、甘いショートペストリーを作る。
【0052】
その後、ペストリーを少なくとも2時間冷しておき(4℃)、約5mmの厚さに延ばす。小片を切り出し、表面に卵黄をブラシで塗った後、ベーキングする。
【0053】
【表4】

【0054】
[C.C3H101/2細胞におけるEGCGおよびレスベラトロールの効果:]
マウスの胚間葉系幹細胞C3H10T1/2細胞(ATCC、米国(USA)、#CCL−226)を、FBS10%およびL−グルタミン(Gibco)2mMを添加したDMEM(低グルコース1g/ml、Gibco)で培養した。6ウェルプレートに細胞2×10個/ウェルを接種し、密集度80%まで増殖させた。細胞を、100nMのラパマイシン(Tocris、英国(UK)、#1292)、10マイクロMのEGCG(テアビゴ(TEAVIGO(登録商標)、DSM Nutritional Product ltd.、スイス(Switzerland))、0.1、1、10μMのレスベラトロール(DSM Nutritional Products Ltd.、スイス)、または、EGCG(10マイクロM)とレスベラトロール(0.1、1、10μM)の組み合わせで、30分間処理し、その後、100nMのインスリン(Sigma、スイス)で30分間刺激した。細胞をPBSで2回洗浄し、0.4mlのNETT緩衝液(0.1MNaCl、10mMトリス−HCL(pH7.6)、1mMEDTA、1%Triton X−100、pH7.6)中に収集した。細胞溶解物を超音波で分解し、14,000rpmで、2分間、遠心分離した。タンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce、米国、#23223)を使用して測定した。10マイクログラムの全細胞抽出物を、SDSゲル(10〜20%トリシン勾配ゲル)にかけ、ニトロセルロース膜(0.2μmの細孔、インビトロジェン(Invitrogen)、#LC2000)にブロットした。ブロットを、まず、モノクローナル抗体のホスホル−p70S6キナーゼ(Thr389)(1A5)マウスmAb(Cell signaling technology、#9206)の1:2000希釈物で、次いで、第2の抗体、ヤギ抗マウスIgG HPR(Santa Cruz、米国、#SC2055)の1:10000希釈物で培養した。タンパク質負荷を、抗マウスβ−アクチン(Sigma、スイス、#A−5441)を使用し、β−アクチンを測定することによりコントロールした。シグナルを、ECL plus Western Blotting Detection System(Amersham Biosciences、RPN2132)を使用して検知した。膜をX−線フィルム(Hyperfilm ECL;ハイパフォーマンス化学発光フィルム、Amersham Biosciences;RPN1674)に30分間露光し、フィルムをChemiGenius 2 machine(Syngene、英国)でスキャンした。GeneTools software(Syngene、英国)を使用してシグナルを数値化した。リン酸化したp70S6Kのシグナルを、タンパク質負荷コントロールβ−アクチンに対して正規化し、賦形剤を100%に設定した。
【0055】
[結果]
哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)は、栄養物質感知経路の一部であり、アミノ酸および成長因子に応答して複数の細胞機能をコントロールする。それは、アミノ酸の欠乏による以外にも、インスリン、IGF−IおよびIGF−IIなどのインスリンによって活性化され、細胞周期の進行および細胞増殖を調節する。栄養物質およびマイトジェンが存在すると、mTORは、4E−BP12(真核生物開始因子4E−結合タンパク質)およびS6Kキナーゼを含む下流標的を介して、タンパク質合成および細胞増殖を刺激する。p70S6Kは、リボソームS6サブユニットをリン酸化するタンパク質セリン−スレオニンキナーゼであり、したがって、タンパク質合成および細胞増殖において重要な役割を果たす。インスリンは、その下流標的であり、次にmTORおよびp70S6kを活性化するAktを介してp70S6Kを制御し、これが今度はmTORおよびp70S6Kを活性化する。p70S6Kは細胞の増殖も制御する。mTOR−S6Kはエネルギー状態の感知に重要な役割を果たし、アミノ酸とグルコースとの燃料使用のバランスを維持するとされていた。マウスでは、mTORの活性が増大すると、癌、糖尿病および肥満が進行する。インスリン耐性肥満ラットの肝臓および骨格筋では、mTOR経路のシグナル伝達がかなり増加する。mTORの下流標的のp70S6kをノックアウトすると、マウスの食餌性肥満が抑制され、インスリン感受性が改善される。mTOR−S6Kシグナル伝達の減少によって、酵母、ショウジョウバエおよびC.エレガンスの寿命もまた延びる。
【0056】
【表5】

【0057】
mTOR−p70S6K経路上の、天然ポリフェノール、EGCGおよびレスベラトロールの効果を、C3H101/2細胞で調べた。陽性対照として、mTOR阻害物質として知られるラパマイシンを使用した。100nMのラパマイシンの処理で、リン酸化p70S6K(Thr389)が完全になくなることが観察された。10マイクロMという少量のEGCGによる処理では、リン酸化p70S6Kの量に関して殆ど効果はなかった。0.1、1および10マイクロMのレスベラトロールによる処理でも、リン酸化p70S6Kの量に影響を及ぼすことはなく、仮にあったとしても、使用量に応じたp70S6K(Thr389)の増加であった。意外にも、EGCG(10マイクロM)およびレスベラトロール(0.1、1、10マイクロM)の組み合わせは、相乗効果以上にリン酸化p70S6Kの量を減少させた。mTOR−p70S6Kシグナル伝達の減少は、酵母、ショウジョウバエおよびC.エレガンスの長寿命化ばかりでなく、マウスにおける食餌性肥満のリスクの減少およびインスリン感受性の改善を伴った。リン酸化p70S6Kの阻害に対するEGCGとレスベラトロールの相乗効果、したがって、mTOR−S6K経路のシグナル伝達の減少は、これら2つの天然ポリフェノールが加齢過程に良い影響を及ぼすとともに、加齢に伴う病理学的変化を予防することを意味するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物、特にヒトを含む哺乳類における、加齢の遅延および/または加齢に伴う疾病の治療もしくは予防のためのニュートラシューティカル組成物の製造における、EGCG、コエンザイムQ−10、ゲニステイン、リコピン、ヒドロキシチロソールおよび多価不飽和脂肪酸から選択される少なくとも1種の追加成分と組み合わせた、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体の使用。
【請求項2】
哺乳類、特にヒトにおける、加齢の遅延および/または加齢に伴う疾病の治療もしくは予防のためのニュートラシューティカル組成物の製造における、EGCG、コエンザイムQ−10、ゲニステイン、ヒドロキシチロソールおよび多価不飽和脂肪酸から選択される少なくとも1種の追加成分と組み合わせた、レスベラトロール、その誘導体、代謝物または類似体の使用。
【請求項3】
前記レスベラトロールが、投与する対象の体重1kg当たり0.03mg〜約10mgの1日量を投与するのに十分な量で使用され、前記EGCGが、投与する対象の体重1kg当たり0.1mg〜約10mgの1日量を投与するのに十分な量で使用され、前記リコピンが、投与する対象の体重1kg当たり0.0007mg〜約0.7mgの1日量を投与するのに十分な量で使用され;前記多価不飽和脂肪酸が、投与する対象の体重1kg当たり1.0mg〜約50mgの1日量を投与するのに十分な量で使用され、前記ゲニステインが、投与する対象の体重1kg当たり0.03mg〜約10mgの1日量を投与するのに十分な量で使用される請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記ニュートラシューティカル組成物が、食品もしくは飲料、または、食品もしくは飲料用栄養補助食品組成物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記ニュートラシューティカル組成物が、薬剤組成物である請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2009−511523(P2009−511523A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534924(P2008−534924)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009815
【国際公開番号】WO2007/042272
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】