説明

レンズアンテナ

【課題】 受信アンテナの過入力を防止する。
【解決手段】 誘電体レンズ20の中心軸線上にパッチアンテナ部10が位置する。パッチアンテナ部10は、誘電体レンズ20を介して所定周波数の電波を送信または受信する。本体部8内にパッチアンテナ部10が収容され、誘電体レンズ20は、それの保持部22が本体部8内に収容されている。中心軸線に沿って本体部8に対する保持部22の位置を変化させることによって、誘電体レンズ20の焦点位置をパッチアンテナ部10に通過させて、誘電体レンズ20とアンテナ10とを、相対移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体レンズと、アンテナ部とを含むレンズアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したようなレンズアンテナは、例えばミリ波信号の送受信のために、ミリ波送信機、ミリ波受信機に設置されることがある。ミリ波送信機の場合、誘電体レンズの焦点位置にアンテナ部を設け、このアンテナ部から送信されたミリ波信号が誘電体レンズを介して送信される。このような誘電体レンズアンテナが特許文献1に開示されている。なお、アンテナの可逆性により、受信機にレンズアンテナを設置する場合にも、アンテナ部を誘電体レンズの焦点位置に配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−094939号公報
【特許文献2】特開昭61−238108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようなミリ波送信機とミリ波受信機とを設置する場合、設置位置の制約等により、両者が比較的接近して配置されることがある。このような場合、ミリ波受信機のレンズアンテナのアンテナ部が過入力となり,ミリ波受信機のレンズアンテナのアンテナ部からの出力に歪みが発生し、通信品質を劣化させることがある。
【0005】
この過入力は、例えばミリ波送信機の送信電力を減少させることによって解消できるが、そのための調整が非常に面倒である。例えば、特許文献2に開示されているパラボラアンテナの一次放射器の開口部に誘電体からなる減衰器を設置するという技術を応用して、例えばミリ波受信機のレンズアンテナのアンテナ部の前に減衰器を設置することも考えられるが、過入力を解消できるように誘電体からなる減衰器を調整することも、やはり非常に面倒である。
【0006】
本発明は、受信機での過入力を容易に解消することができる誘電体レンズアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の誘電体レンズアンテナは、誘電体レンズを有している。誘電体レンズとしては、凸レンズ型のものも凹レンズ型のものも使用することができる。この誘電体レンズの中心軸線上に、前記誘電体レンズを介して所定周波数、例えばミリ波帯の電波を送信または受信するアンテナ部が設けられている。このアンテナ部としては、例えばプローブ型のものを使用することができるし、基板上に形成するパッチ式のものも使用することもできる。前記誘電体レンズの焦点位置を前記アンテナ部に通過させて、前記誘電体レンズと前記アンテナ部とを、中心軸線に沿って相対移動手段が相対移動させる。
【0008】
このように構成された誘電体レンズアンテナを、例えば受信アンテナとして使用している場合、その受信出力が過入力となると、相対移動手段によってアンテナ部と誘電体レンズとを相対移動させることによって、アンテナ部を誘電体レンズの焦点位置とは異なる位置に配置させると、アンテナ部への入力は、誘電体レンズアンテナの焦点位置にアンテナ部が位置する場合よりも小さくすることができ、過入力を防止することができる。しかも、相対移動させるという簡単な作業だけで過入力を防止することができる。なお、送信アンテナにおいても相対移動手段によって誘電体レンズとアンテナ部との位置関係を変化させることによって送信出力を調整することができ、この送信アンテナからの送信信号を受信する受信アンテナでの過入力を防止することができる。
【0009】
前記相対移動手段は、前記アンテナ部を内部に収容した筒状の本体部を有するものとできる。この場合、前記誘電体レンズの後部に保持部が設けられる。保持部は、前記中心軸線に沿って設けられた筒状で、前記本体部の先端側と面接触し、前記中心軸線に沿って移動可能である。保持部と本体部との面接触は、例えば本体部の内周面に保持部の外周面が面接触するように本体部内に保持部を挿通する場合と、本体部の外周面に保持部の内周面が接触するように保持部内に本体部を挿通する場合とがある。さらに、前記本体部と前記保持部とを、両者の所望の相対位置で固定する固定手段が設けられる。固定手段としては、ネジや、本体部と保持部との一方に設けた係合部と、本体部と保持部との他方に設けた係合部を係止する係止部とを備えるものを使用したりすることができる。
【0010】
このように構成すると、本体部または保持部を中心軸線に沿って摺動させることによって、アンテナ部と誘電体レンズとの位置を、容易に調整することができる。また、調整後には、両者の位置関係が変化することを、固定手段によって阻止することができる。
【0011】
更に、前記本体部と前記保持部との面接触部分に螺合手段を設けることもできる。螺合手段は、例えば雄ねじ部と雌ねじ部とからなり、本体部の内周面に保持部の外周面が面接触するように本体部内に保持部を挿通する場合には、本体部に雌ねじ部を設け、保持部に雄ねじ部を設ける。本体部の外周面に保持部の内周面が接触するように保持部内に本体部を挿通する場合には、本体部に雄ねじ部を設け、保持部に雌ねじ部を設ける。
【0012】
このように構成すると、本体部または保持部を回転させることによって、本体部及び保持部の一方を上記中心軸線に沿って摺動させて、誘電体レンズとアンテナ部との相対位置関係を調整することができる。また、アンテナ部と誘電体レンズとの相対位置の微調整も容易に行うことができる。
【0013】
さらに、前記螺合手段は、前記本体部内に設けた取付部に形成した雌ねじ部を有するものとすることができる。この場合、前記保持部の外周面に雄ねじ部が設けられ、この雄ねじ部が前記雌ねじ部と螺合する。取付部は、本体部とは別個に形成したものを、本体部内に挿入してある。このように構成すると、取付部の取付位置を適切に選択することによって、本体部または保持部を回転させる量を少なくして、アンテナ部と誘電体レンズとの相対位置を容易に調整することができる。
【0014】
上記の態様において、前記相対移動手段は、支持体を有するものとすることができる。この場合、先端に前記誘電体レンズが設けられた本体部の内周面に、支持体は面接触しており、支持体の前記誘電体レンズ側の面に前記アンテナ部を支持している。しかも、前記中心軸線に沿って支持体は摺動可能である。この支持体を前記本体部に固定手段が固定する。
【0015】
このように構成すると、アンテナ部の位置を中心軸線に沿って移動させることができ、その移動後の位置に固定手段によって固定される。従って、アンテナ部の位置を移動させることによっても過入力を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、近接して配置されるような送信アンテナと受信アンテナとの一方に使用して、受信アンテナでの過入力を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態のレンズアンテナにおいて誘電体レンズの焦点位置がパッチアンテナ部上にある状態と、無い状態とを示す縦断面図である。
【図2】図1のレンズアンテナを使用した送信機と受信機との配置状態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態のレンズアンテナの縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態のレンズアンテナの縦断面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態のレンズアンテナの縦断面図である。
【図6】本発明の第5の実施形態のレンズアンテナの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態のレンズアンテナ2は、図2に示すように、送信機4及び受信機6いずれにも使用されるものである。これら送信機4及び受信機6は、超高周波信号、例えばミリ波帯の信号を送受信するものである。これら送信機4及び受信機6は、互いに対向して配置されるが、設置場所の関係上、接近して配置され、受信機6で過入力となる可能性のあるものである。
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、レンズアンテナ2は、相対移動手段、例えば本体部8を有している。本体部8は、例えば先端部が開口された円筒状に構成され、その内部の奥に送信または受信用のアンテナ部、例えばパッチアンテナ部10が配置されている。このパッチアンテナ部10は、送信または受信回路が構成されている回路基板12に設けられている。このパッチアンテナ部10が本体部8の中心軸線上に位置するように、回路基板12が配置されている。本体部8内におけるパッチアンテナ部10の前面に壁14が形成され、この壁14には、パッチアンテナ部10から送受信されたミリ波帯の信号が通過するための窓16が形成されている。
【0020】
壁14の前方の内周面には、螺合手段の一方をなす例えば雌ねじ部18が、壁14の近傍から本体部8の前端部の近傍にまで形成されている。
【0021】
レンズアンテナ2は、この他に誘電体レンズ20も有している。誘電体レンズ20は、後面が平坦な片凸レンズ状に形成され、その直径が本体部8の内径よりも幾分小さいものである。この誘電体レンズ20は、その中心軸(光軸)が本体部8の中心軸線と一致するように、後面が本体部8内を向くように本体部8の先端部に配置されている。この誘電体レンズ20は、ミリ波帯の所定の周波数の電波がその前面側から入射した場合、その電波を図1(a)に破線で示すように誘電体レンズ20の後面側にある焦点位置に収束させるものである。また、誘電体レンズ20の可逆性により、焦点位置から誘電体レンズ20に向けて放射された上記ミリ波帯の所定周波数の電波を互いに平行として放射することができるものである。この誘電体レンズ20を中心軸線に沿って移動させることによって、図1(a)に示すように、誘電体レンズ20の焦点位置がパッチアンテナ部10上に位置する。
【0022】
この誘電体レンズ20の後面全域から誘電体レンズ20の中心軸に沿って相対移動手段、例えば支持体、より具体的には保持部22が本体部8内に伸びている。保持部22も円筒状に形成され、その外周面の後端部から中途まで、螺合手段の他方、例えば雄ねじ部24が形成されている。この雄ねじ部24は、雌ねじ部18と螺合している。その結果、誘電体レンズ20を回転させることによって、誘電体レンズ20及び保持部22が本体部8の中心軸線(これは誘電体レンズ20の中心軸と一致している。)に沿って本体部8内を進退する。
【0023】
本体部8の先端部の外周面には、中心軸線の回りに所定角度、例えば90度ごとに複数、例えば4つのねじ孔が形成されている。これらねじ孔に固定手段、例えば雄ねじ26がそれぞれ螺合され、それらの先端が本体部8を貫通して保持部22の外周面に当接し、保持部22及び誘電体レンズ20が本体部8の中心軸線に沿って移動するのを阻止している。
【0024】
このようなレンズアンテナ2は、通常には図1(a)に示すように、誘電体レンズ20の焦点位置がパッチアンテナ部10上に位置するように誘電体レンズ20の位置が調整されている。このレンズアンテナ2を例えば受信機6に使用している場合を考える。設置場所の制約等により、送信機4を受信機6の比較的近くにしか設置できない結果、パッチアンテナ部10へミリ波帯の所定周波数の電波が多く入射し、パッチアンテナ部10が過入力となっているような場合、雄ねじ26を緩めて、誘電体レンズ20を回転させる。これによって、雄ねじ部24の雌ねじ部18に対する螺合位置が変化し、本体部8の中心軸線上に沿って保持部22及び誘電体レンズ20が本体部8の前端部側またはパッチアンテナ部10側に移動する。
【0025】
例えば図1(b)に示すように誘電体レンズ20を本体部8の前端部側に移動させると、焦点位置は、パッチアンテナ部10の前方側に移動する。その結果、パッチアンテナ部10に入射する電波の量が、パッチアンテナ部10上に誘電体レンズ20の焦点位置が位置する場合よりも減少し、過入力状態を解消することができる。この状態で雄ねじ26をねじ孔に螺合させて、保持部22及び誘電体レンズ20の位置が、変化することを阻止している。雄ねじ部24と雌ねじ部18との螺合位置を調整することによって、誘電体レンズ20の焦点位置を調整することができるので、焦点位置の変化の微調整が容易に行える。
【0026】
なお、図1(a)の位置から保持部22及び誘電体レンズ20をパッチアンテナ部10に近づけて、焦点位置をパッチアンテナ部10よりも後方に位置させて、過入力を防止することもできる。また、受信機6のレンズアンテナとして、このレンズアンテナ2を使用する場合について説明したが、送信機4のレンズアンテナとして、このレンズアンテナ2を使用することも可能である。この場合も、通常にはパッチアンテナ部10上に誘電体レンズ20の焦点位置が位置するように誘電体レンズ20及び保持部22の位置を調整しているが、受信機6で過入力が生じている場合、上述したのと同様にして、焦点位置がパッチアンテナ部10とは異なる位置に移動するように誘電体レンズ20を回転させる。また、受信アンテナとしての使用の場合でも、送信アンテナとしての使用の場合でも、誘電体レンズ20を回転させる代わりに、本体部8を回転させて、パッチアンテナ部10の位置を変化させることも可能である。
【0027】
第2の実施形態のレンズアンテナ2aを図3に示す。このレンズアンテナ2aは、保持部22と本体部8との関係が異なる以外、第1の実施形態のレンズアンテナ2と同様に構成されている。同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
レンズアンテナ2aでは、保持部22の内部に本体部8が挿通されている。即ち、保持部22の内周面に、本体部8の内周面が面接触し、その接触面である保持部22の内周面に雌ねじ部18aが形成され、同じく接触面である本体部8の内周面に雄ねじ部24aが形成され、両者が螺合している。雄ねじ26は、保持部22の後端部付近に設けられている。
【0029】
本発明の第3の実施形態のレンズアンテナ2bを図4に示す。このレンズアンテナ2bは、第1の実施形態のレンズアンテナ2のように本体部8の内周面に雌ねじ18を形成するのではなく、本体部8の内周面に接するように設けられた厚手の板状体、例えば円板状体28に雌ねじ部18を設けてある。円板状体28は、その設置位置を本体部8内において自由に変更でき、図示しない固定手段によって固定されている。この円板状体28の雌ねじ部18に保持部22の雄ねじ部24が螺合している。また、雄ねじ26は、保持部22の後部に当接するように配置されている。これら以外、第1の実施形態のレンズアンテナ2と同様に構成されている。同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
このように円板状体28に雌ねじ部18を設け、この円板状体28を本体部8内に設置しているので、適切な位置に円板状体28を設置することによって誘電体レンズ20の焦点位置をパッチアンテナ部10上にほぼ一致させることが容易にでき、誘電体レンズ20を回転させる微調整によってパッチアンテナ部10上に誘電体レンズ20の焦点位置を合わせることができる。この一致状態において、誘電体レンズ20を回転させることによって、容易に焦点位置をパッチアンテナ部10と異なる位置とすることができる。
【0031】
本発明の第4の実施形態のレンズアンテナ2cを図5に示す。このレンズアンテナ2cでは、本体部8の内周面の雌ねじ部18及び保持部22の外周面の雄ねじ部24が除去されて、保持部22が本体部8の内周面を本体部8の中心軸線に沿って摺動する。その代わりに本体部8の外周面には本体部8の中心軸線の回りに所定角度、例えば90度ごとに複数、例えば4つの雄ねじ挿通孔30が設けられ、これら4つの雄ねじ挿通孔30の組が、本体部8の中心軸線に沿って所定間隔ごとに複数列先端部側から後端部側に向けて形成されている。これら雄ねじ挿通孔30に挿通された雄ねじ26が保持部22に形成したねじ孔に螺合して、保持部及び誘電体レンズ20を、本体部8の中心軸線方向に移動不能に固定している。他の構成は、第1の実施形態のレンズアンテナ2と同一である。同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
このレンズアンテナ2cでは、誘電体レンズ20の焦点位置がパッチアンテナ部10上にある状態から、焦点位置をパッチアンテナ部10と異なる位置とする場合、まず雄ねじ26を緩める。次に、保持部22を本体部8の中心軸線に沿ってパッチアンテナ部10側または本体部8の前端側に摺動させ、過入力を解消することができる誘電体レンズの所望の位置を決定し、この位置において保持部22のねじ孔に一致する雄ねじ挿通孔30が存在すれば、その雄ねじ挿通孔30を介してねじ孔に雄ねじ26を螺合させ、また保持部22のねじ孔に一致する雄ねじ挿通孔30が存在しない場合、最も近い位置にあるネジ挿通孔30を介して雄ねじ26をねじ孔に螺合させる。
【0033】
このように構成されたレンズアンテナ2では、誘電体レンズ20の焦点位置を一定間隔ごとにしか調整できないが、雄ねじ部24及び雌ねじ部18を設ける必要が無く、構成を簡略化することができる。
【0034】
本発明の第5の実施形態の誘電体レンズ2dを図6に示す。このレンズアンテナ2dは、パッチアンテナ部10及び回路基板12が本体部8の中心軸線に沿って摺動するものである。このレンズアンテナ2dでは、誘電体レンズ20の保持部22は、本体部8の前端部に固定されている。回路基板12は、支持体、例えば円板状部36の誘電体レンズ20側の面の中心に取り付けられている。この円板状部36の周面は本体部8の内周面と面接触している。この円板状部36の周面から本体部8の先端側に向かって筒状部、例えば円筒状部32が突出し、その先端はパッチアンテナ部10よりも前方に突出し、周囲から不要な電波がパッチアンテナ部10に進入することを防止している。この円筒状部32も本体部8の内周面に面接触している。
【0035】
本体部8の内外を貫通して、本体部8の中心軸線に沿って案内孔34が形成されている。この案内孔34は、誘電体レンズ20の焦点位置がパッチアンテナ部10上に位置する状態において円板状部36及び円筒状部32が位置する場所の前後に、本体部8の中心軸線に沿って形成されている。これら案内孔34は、本体部8の中心軸線の回りに所定角度、例えば90度間隔に複数個、例えば4個形成されている。これら案内孔34を介して円板状部36に設けた複数、例えば4つのねじ孔に、4つの雄ねじ26がそれぞれ螺合して、円板状部36、円筒状部32、回路基板12及びパッチアンテナ部10が、本体部8の中心軸線に沿って移動することを阻止されている。
【0036】
このレンズアンテナ2dにおいて、誘電体レンズ20の焦点位置がパッチアンテナ部10上にある状態から、パッチアンテナ部10と誘電体レンズ20の焦点位置とをずらせる場合、雄ねじ26を緩めて、円板状部36を中心軸線に沿って本体部8の前端部側またはその反対側に摺動させる。このとき、緩めた雄ねじ26が案内孔34によって案内される。そして、過入力が生じない位置までパッチアンテナ部10を移動させることができた後、その位置で雄ねじ26を円板状部36のねじ孔に強固に螺合させて、パッチアンテナ部10、回路基板12、円筒状部32及び円板状部36が移動するのを阻止する。
【0037】
このレンズアンテナ2dでは、パッチアンテナ部10を移動させることによってパッチアンテナ部10上から誘電体レンズ20の焦点位置をずらせることができ、案内孔34の使用により無段階に位置の調整ができ、微調整が容易に行える。なお、円筒状部32から案内孔34を通過して外部に突出する案内部材を設けて、その案内部材を手で操作できるように構成すると、操作性が更に向上する。
【0038】
上記の各実施形態では、アンテナとしてパッチアンテナ部10を使用したがこれに限ったものではなく、例えばプローブ型のアンテナ部を使用することもできる。また、誘電体レンズ20としては、片凸レンズ型式のものを使用したが、これに限ったものではなく、例えば両凸レンズ型式のものを使用することもできる。
【0039】
誘電体レンズ20とパッチアンテナ部10とを相対移動させる構成としては、上述したもの以外にも種々のものを使用することができる。例えば図5において、可撓性を有する材料で保持部22を形成し、その外周面を中心軸線の回りに一周して本体部8側に突出した一条の突条を設け、各ボルト挿通孔30に対応する本体部8の内周面位置それぞれに、上述した突条と面接触可能な凹所を形成したものを使用することができる。この構成では、誘電体レンズ20に若干大きな力を加えて、本体部8の中心軸線に沿って進退させることによって、突条が現在面接触している凹所から脱出し、そのとき保持部22がその弾性に抗して本体部8の中心軸線側に撓み、その撓んだ状態で隣接する凹所にまで突条が移動する。隣接する凹所に突条が到達したときに、保持部22の弾性によってその隣接する凹所に突条が面接触する状態となる。これによって、パッチアンテナ部10と誘電体レンズ20の焦点位置とがずれる。このように誘電体レンズ20を進退させることを複数回繰り返して、パッチアンテナ部10と誘電体レンズ20の焦点位置とを所望の位置関係とする。
【符号の説明】
【0040】
2 2a、2b、2c、2d レンズアンテナ
8 本体部(相対移動手段)
10 パッチアンテナ部(アンテナ部)
20 誘電体レンズ
22 保持部(相対移動手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体レンズと、
この誘電体レンズの中心軸線上に位置し、前記誘電体レンズを介して所定周波数の電波を送信または受信するアンテナ部と、
前記誘電体レンズの焦点位置を前記アンテナ部に通過させて、前記誘電体レンズと前記アンテナ部とを、前記中心軸線に沿って相対移動させる相対移動手段とを、
具備するレンズアンテナ。
【請求項2】
請求項1記載のレンズアンテナにおいて、前記相対移動手段が、
前記アンテナ部を内部に収容した筒状の本体部と、
前記誘電体レンズの後部に前記中心軸線に沿って設けられた筒状で、前記本体部の先端側と面接触し、前記中心軸線に沿って移動可能な保持部と、
前記本体部と前記保持部とを、両者の所望の相対位置で固定する固定手段とを、
具備するレンズアンテナ。
【請求項3】
請求項2記載のレンズアンテナにおいて、前記本体部と前記保持部との面接触部分に螺合手段を設けたレンズアンテナ。
【請求項4】
請求項3記載のレンズアンテナにおいて、前記螺合手段は、前記本体部とは別個に形成して前記本体部内に設けた取付部に形成した雌ねじ部と、前記保持部の外周面に設けられ、前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部とからなるレンズアンテナ。
【請求項5】
請求項1記載のレンズアンテナにおいて、前記相対移動手段が、先端に前記誘電体レンズが設けられた本体部の内周面に支持体が面接触し、前記支持体が前記中心軸線に沿って摺動可能であり、前記支持体の前記誘電体レンズ側の面に前記アンテナ部が支持され、前記支持体を前記本体部に固定手段が固定する構成であるレンズアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−90242(P2012−90242A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237688(P2010−237688)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】