説明

レンズシートの製造装置及び製造方法

【課題】レンズシートの定長切断を確実に実現することができるレンズシートの製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のレンズシート製造装置1は、回転式のレンズ金型30と、このレンズ金型の回転周期を検出する近接センサ35と、を備えた重合賦型部6と、このレンズ賦型部から送られるレンズシートの弛み量を検出する第2ダンサー部14が検出した弛み量に応じて送り速度を変化させてレンズシートを連続的に送り出す連続送り部16と、この連続送り部から送られたレンズシートを間欠的に送り出す間欠送り部20と、近接センサが検出したレンズ金型の回転周期の間に連続送り部が送り出した連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて間欠送り部の送り量を所定送り量に補正する送り量補正手段を有する送り量補正部と、間欠送り部から送られたレンズシートを切断して所定長さのレンズシートにする切断部22と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズム列、レンチキュラーレンズやフレネルレンズ等のレンズシートの製造装置及び製造方法に係り、特に、液晶表示装置等に使用されるレンズシートの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置等に使用されるバックライトの導光板の出射面等には、表面にプリズム列等のレンズを多数形成したレンズシートが配置されている。このようなレンズシートの製造では、長尺の基材シートと円筒状のレンズ金型の間に紫外線硬化性組成物を介在させた状態で紫外線を照射して、紫外線硬化性組成物を硬化させ、基材シートの表面にレンズ金型の表面形状と相補的なレンズ形状を形成することによって連続的に製造した長尺状のレンズシートを所定長に切断している。
【0003】
さらに、使用するバックライトの形状に対応した形状を有する最終製品のレンズシートが、この所定長のレンズシートから打ち抜かれる。この打ち抜きの際、所定長のレンズシートにキズ等が欠陥を有するときには、最終製品のレンズシートが欠陥を含まないように、欠陥を有する領域を避けて打ち抜きが行われる。
【0004】
このような製造方法では、レンズ金型の表面にキズ等の欠陥がある場合には、長尺のレンズシート上に、レンズ金型の外周長に相当する長さ間隔で金型の欠陥に対応するキズ等の欠陥が生ずることになる。したがって、切断部でレンズ金型の外周長の整数倍に相当する長さ毎に長尺のレンズシートを切断することにより、所定長のレンズシートに金型に起因する欠陥が発生したとしても、その位置を全ての所定長のレンズシート中で同じ位置に配置させ、最終製品の打ち抜きの際には、全ての所定長のレンズシートで同じ位置を打ち抜けば、最終製品のレンズシートがキズを含まないようにして、作業効率と歩留まりの向上を図っている。
【0005】
したがって、長尺のレンズシートを、確実に、金型外周の整数倍の長さで切断していくことが、作業効率および歩留まりの向上の観点から極めて重要である。
【0006】
例えば、特許文献1に記載されているレンズシートの製造装置では、レンズ金型の回転角度を検出し、この検出結果に基づいて切断部のカッター22を間欠的に作動させることによって、長尺のレンズシートをレンズ金型外周の整数倍の長さで切断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−67058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような構成のレンズシートの製造装置では、レンズ形状が付与されるレンズ金型からレンズシートが一定長に切断される切断部までの搬送経路中に、原反フィルムのたわみやテンションを調節するアキューム工程、レンズシートに印字や表面処理を施したりする表面処理工程等が追加されると、製造ラインおよび製造ラインを走行するフィルムシートの全長が長くなる。
【0009】
このため、製造ライン中でフィルムシートのテンションが変動し、フィルムシートを駆動する送りローラ等とフィルムシートとの間に滑りが生じ、切断部に実際に送り込まれるレンズシートの送り量が、特許文献1のようにレンズ金型の回転角度から算出した値と異なってくることになる。このような送り量のずれは、1回毎の切断ではわずかな量であったとしても切断回数の増加と共に次第に累積することになるので、切断された所定長のレンズシート上におけるレンズ金型に起因するの表面のキズの位置が、次第にずれてくることになる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、製造ラインが長く、ライン走行中のレンズシートのテンションの変動が著しい条件下であっても、レンズシートを所定長で確実に切断することができるレンズシートの製造装置及び製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、透明フィルムシートの少なくとも一方の面にレンズを賦型して所定長さのレンズシートを製造するレンズシート製造装置であって、ほぼ円筒状の外周面に沿って上記レンズを賦形するためのパターンが形成された回転式のレンズ型と、このレンズ型の回転周期を検出する回転周期検出手段と、上記レンズ型に供給される上記透明フィルムシートに光硬化樹脂を供給する光硬化樹脂供給手段と、この光硬化樹脂が供給された透明フィルムシートに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備え、上記透明フィルムシートにレンズを賦型して長尺のレンズシートを形成するレンズ賦型部と、このレンズ賦型部から送られるレンズシートの弛み量を検出する弛み量検出手段を備え、この弛み量検出手段が検出した弛み量に応じて送り速度を変化させてレンズシートを下流側へ連続的に送り出すレンズシート連続送り部と、この連続送り部から送られた長尺のレンズシートを下流側へ間欠的に送り出す間欠送り部と、上記回転周期検出手段が検出した上記レンズ金型の回転周期と、この回転周期の間に上記連続送り部が送り出した連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて上記間欠送り部の送り量が所定送り量になるように補正する送り量補正手段を有する送り量補正部と、上記間欠送り部から所定送り量で送られたレンズシートを切断して所定長さのレンズシートにする切断部と、を有することを特徴としている。
【0012】
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、送り量補正手段が、回転周期検出手段が検出したレンズ型の回転周期と、この回転周期の間に連続送り部が送り出した連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて間欠送り部の送り量が所定送り量になるように補正し、切断部で間欠送り部から所定送り量で送られたレンズシートが切断されるため、比較的製造ラインが長く、ライン走行中のレンズシートのテンションの変動が著しい条件下でもレンズシートの定長切断を確実に実現することができる。
【0013】
本発明において、送り量補正手段は、連続して計測した複数の位相差に基づいて計算処理した位相差平均に基づいて間欠送り部の送り量を補正することが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように正確かつ効率よく補正することができる。
【0014】
本発明において、送り量補正手段は、位相差平均を計算処理した回数をカウントするカウント手段を備えていることが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように正確かつ効率よく補正することができる。
【0015】
本発明において、送り量補正手段は、位相差平均が所定値以下であるどうかを判断する位相差平均値判断手段を備えていることが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように正確かつ効率よく補正することができる。
【0016】
本発明において、送り量補正手段は、位相差平均値判断手段が位相差平均が所定値以下であると判断した場合には、その位相差平均の基準値を定める基準値設定手段を備えていることが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように効率よく補正することができる。
【0017】
本発明において、送り量補正手段は、カウント手段がカウントした数が所定未満である場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正することが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように効率よく補正することができる。
【0018】
本発明において、送り量補正手段は、カウント手段がカウントした数が所定以上である場合には、基準値設定手段が定めた位相差平均の基準値と位相差平均の今回値との偏差に基づいて間欠送り部の送り量を補正することが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように効率よく補正することができる。
【0019】
本発明において、送り量補正手段は、位相差平均値判断手段が位相差平均が所定値を超えていると判断した場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正することが好ましい。
このように構成された本発明のレンズシート製造装置においては、間欠送り部の送り量が所定送り量になるように正確かつ効率よく補正することができる。
【0020】
本発明は、透明フィルムシートの少なくとも一方の面にレンズを賦型して所定長さのレンズシートを製造するレンズシート製造方法であって、ほぼ円筒状の外周面に沿って上記レンズを賦形するためのパターンが形成された回転式のレンズ型と、このレンズ型の回転周期を検出する回転周期検出手段と、上記レンズ型に供給される上記透明フィルムシートに光硬化樹脂を供給する光硬化樹脂供給手段と、この光硬化樹脂が供給された透明フィルムシートに紫外線を照射する紫外線照射手段とを用いて、上記透明フィルムシートにレンズを賦型して長尺のレンズシートを形成するレンズ賦型工程と、このレンズ賦型工程で形成された長尺のレンズシートの弛み量を検出し、この弛み量に応じて送り速度を変化させて下流側へ連続的に送り出す連続送り工程と、この連続送り工程によって送られた長尺のレンズシートを下流側へ間欠的に送り出す間欠送り工程と、上記回転周期検出手段が検出した上記レンズ金型の回転周期と、この回転周期の間に上記連続送り工程によって送り出された連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて上記間欠送り部の送り量が所定送り量になるように補正する送り量補正工程と、上記間欠送り工程によって所定送り量で送られたレンズシートを切断して所定長さのレンズシートにする切断工程と、を有することを特徴としている。
【0021】
このように構成された本発明のレンズシート製造方法においては、送り量補正工程において、回転周期検出手段が検出したレンズ型の回転周期と、この回転周期の間に連続送り部が送り出した連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて間欠送り工程における送り量が所定送り量になるように補正し、切断工程において間欠送り工程から所定送り量で送られたレンズシートが切断されるため、比較的製造ラインが長く、ライン走行中のレンズシートのテンションの変動が著しい条件下でもレンズシートの定長切断を確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレンズシートの製造装置及び製造方法によれば、比較的製造ラインが長く、ライン走行中のレンズシートのテンションの変動が著しい条件下で、レンズシートの定長切断を確実に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるレンズシート製造装置の全体構成を示す全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態のレンズシート製造装置において、作動が開始してから演算補正値ΔLを決定してレンズシートが所定長さに切断されるまでの一連の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態のレンズシート製造装置の構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態のレンズシート製造装置1の概略的な構成を示す模式的な構成図である。図1に示すように、本実施形態のレンズシート製造装置1は、製造工程の上流側から下流側の順に、原反フィルム巻出し部2、アキューム部4、重合賦型部6、第1保護フィルムラミネート部8、第1ダンサー部10と第1駆動部11を含む第2保護フィルムラミネート部12、第2ダンサー部14と第2駆動部15を含む連続送り部16、第3ダンサー部18と第3駆動部19を含む間欠送り部20、切断部22を備えている。
【0025】
原反フィルム巻出し部2は、原反フィルムロール24を備え、この原反フィルムロール24から巻き出された長尺の透光性の基材フィルム26は、アキューム部4を経て重合賦型部6へ送られるようになっている。
【0026】
アキューム部4は、複数のアキュームダンサーロール28を備え、これらの複数のアキュームダンサーロール28が上下することにより、重合賦型部6へ送られる基材フィルム26の張力を調整するように構成されている。
【0027】
重合賦型部6は、ほぼ円筒形状のレンズ金型30、モノマー供給ノズル32、紫外線照射装置34を備えている。
レンズ金型30は、その外周面の全体にレンズシートに賦型されるプリズム形状と相補的な形状のプリズム列が連続的に形成された回転式金型であり、常に一定の回転速度で回転するようになっている。このレンズ金型30の周囲近傍には、レンズ金型30の回転周期(1回転当りの回転時間)t1を検出する近接センサ35が配置されている。
【0028】
重合賦型部6に送られた基材フィルム26は、回転するレンズ金型30の外周面に沿って走行する。基材フィルム26がレンズ金型30に接触する上流側の位置で、基材フィルム26とレンズ金型30の間に、モノマー供給ノズル32から紫外線硬化材料であるモノマー36が供給されるようになっている。
【0029】
レンズ金型30と基材フィルム26との接触により、レンズ金型の表面形状に沿って配置されたモノマー36は、レンズ金型30の回転によって、基材フィルム26と共に紫外線照射装置34の前を通過し紫外線の照射を受け硬化する。この結果、基材フィルム26の片面に、硬化したモノマー36によるプリズム状のレンズ形状が連続的に形成される。
【0030】
第1保護フィルムラミネート部8は、重合賦型部6から送られた長尺のレンズシート38のレンズ面にポリエチレン等で形成された第1保護フィルム39が剥離可能に付着されるように構成される。レンズ面に第1保護フィルム39が付着された長尺のレンズシート40は、第1ダンサーロール42を含む第1ダンサー部10を経て、第2保護フィルムラミネート部12へ送られるようになっている。
【0031】
第2保護フィルムラミネート部12は、長尺のレンズシート40のレンズ面とは異なるもう一方の面に第2保護フィルム43が剥離可能に付着され、両面の各々に第1及び第2保護フィルム39,43がそれぞれ付着された長尺のレンズシート44が形成されるようになっている。また、第2保護フィルムラミネート部12の第1駆動部11は、長尺のレンズシート44を第2ダンサー部14へ送る対をなす駆動ローラ46によって構成されている。
【0032】
また、第1ダンサー部10では、第1ダンサーロール42の上下方向の位置が常時検出されており、第1ダンサーロール42の上下方向の位置が所定位置となるように第2保護フィルムラミネート部12の駆動ローラ46の回転速度は可変に制御されるようになっている。さらに、第1ダンサー部10の上流側には、送り速度検出用フリーロール48が配置され、この送り速度検出用フリーロール48は、第1保護フィルムラミネート部8から送られるレンズシート40の送り速度v0を検出するように構成されている。また、送り速度検出用フリーロール48は、所定時間におけるレンズシート40の平均速度を算出するエンコーダ(図示せず)等を含む。
【0033】
第2保護フィルムラミネート部12から送り出された長尺のレンズシート44は、第2ダンサーロール50を含む第2ダンサー部14を経て、連続送り部16へ供給されるようになっている。また、連続送り部16の第2駆動部15は、長尺のレンズシート44を第3ダンサー部18へ送る対をなす連続送りローラ52によって構成されている。
【0034】
第2ダンサー部14は、第2ダンサーロール50の上下方向の位置が常時検出され、第2ダンサーロール50の上下方向の位置が所定位置となるように連続送り部16の連続送りローラ52の回転速度は可変に制御されるようになっている。
【0035】
また、連続送り部16では、連続送りローラ52の駆動軸(図示せず)がサーボモータ(図示せず)によって駆動されるようになっており、このサーボモータ(図示せず)のパルス特性に基づいて所定時間当りの平均送り速度v1が算出されるようになっている。さらに、連続送りローラ52により送られる長尺のレンズシート44の送り量L1は、エンコーダ(図示せず)によって算出され、この算出した送り量L1と平均送り速度v1に基づいて連続送りローラ52の平均回転時間t2が算出されるようになっている。
【0036】
連続送り部16から送り出された長尺のレンズシート44は、第3ダンサーロール54を含む第3ダンサー部18を経て、間欠送り部20へ供給されるようになっている。また、間欠送り部20の第3駆動部19は、長尺のレンズシート44を切断部22へ送る対をなす間欠送りローラ56によって構成されている。
【0037】
また、第3ダンサー部18の第3ダンサーロール54は、連続送り部16の連続送りローラ52の送り速度v1と間欠送りローラ56の送り速度v2との差が生じると上下方向に移動するようになっている。さらに、送り中の間欠送りローラ56の回転速度は、第3ダンサーロール54の上下方向の位置が所定位置となるように可変に制御されるようになっている。
【0038】
さらに、間欠送り部20では、間欠送りローラ56によって切断部22に送られるレンズシート44が切断部22のカッター58によって所定の長さ(所定の送り量)L2毎に切断されるように、間欠送りローラ56の送り量L2がエンコーダ(図示せず)等によって検出されている。
【0039】
すなわち、一連のシーケンスによって、間欠送りローラ56は、長尺のレンズシート44を切断部22に、例えば金型外周の整数倍の長さである所定の送り量L2送ると停止し、切断部22に送られたレンズシート44が切断部22のカッター58によって所定の長さ(所定の送り量)L2に切断されるようになっており、最終的には、所定長さL2の定尺レンズシート60が製造されるようになっている。
【0040】
なお、間欠送りローラ56の送り量L2は、コントローラ(図示せず)に内蔵されている演算手段によって所定量になるように常時、補正される。また、送り量L2は、予め使用者が入力して与える送り量の初期入力値L0と、詳細は後述する演算補正値ΔLとを用いた次式によって決定される。
【0041】
L2=L0+ΔL=nπD+ΔL (数式1)
ここで、Dはレンズ金型30の呼び直径であり、L0はレンズ金型30の呼び外周長(πD)を整数(n)倍した量、すなわち、レンズ金型30がn回転したときのレンズシート44の送り量に相当する。
【0042】
つぎに、上述した演算補正値ΔLを決定してレンズシートが所定長さに切断されるまでの一連の手順について説明する。
図2は、本実施形態のレンズシート製造装置において、作動が開始してから演算補正値ΔLを決定してレンズシートが所定長さに切断されるまでの一連の手順を示すフローチャートである。ここで、図2おいて「S」は各ステップを示す。
【0043】
図2に示すように、まずS1において、本実施形態のレンズシート製造装置1の作動が開始すると、レンズ金型30が一定の回転速度で回転すると共に、連続送りローラ52が第2ダンサーロール50の上下方向の位置が所定位置となるように任意の回転速度で回転する。このとき、間欠送りローラ56は予め入力した間欠送りローラ56の初期入力値の送り量L0だけレンズシート44が切断部22に送られて停止することを繰り返し、切断部22のカッター58が上昇して非切断状態となっている。
【0044】
つぎに、S2において、切断部22のセレクトスイッチがオンにされると、間欠送りローラ56が回転し、予め入力した間欠送りローラ56の初期入力値の送り量L0だけレンズシート44が切断部22に送られて停止し、カッター58によって切断される。切断後、再び間欠送りローラ56が回転して初期入力値の送り量L0だけレンズシート44が切断部22に送られて再び停止する。
【0045】
また、S3において、レンズ金型30が1回転したときに近接センサ35が検出したレンズ金型30の回転周期t1と、この回転周期t1の間に連続送り部16の連続送りローラ52が駆動回転して計測された送り量L1と平均送り速度v1に基づいて算出された連続送りローラ52の平均回転時間t2との位相差Δt、すなわち、
Δt=t1−t2 (数式2)
の計測が開始される。
【0046】
さらに、S4において、切断部22のカッター58による切断回数が5回未満の場合には、S5へ進み切断部22のカッター58による切断回数が5回に達するまで、間欠送りローラ56が初期入力値の送り量L0だけレンズシート44を送って切断部22で切断が行われる。一方、S4において、切断部22のカッター58による切断回数が5回に達した場合には、S6へ進み、先のS3で計測したΔtに基づいて、演算補正値ΔLを決定するための演算が開始される。
【0047】
S6において、まずS3で計測した位相差Δtを連続して10回計測したときの位相差平均Δt10(N)が計算処理によって算出される。ここで、Nは、位相差平均Δt10の計算処理の回数であり、この計算処理の回数を0から12までカウント可能な処理カウンターである。例えば、処理カウンターNが1のときの位相差平均Δt10(1)は、1番目から10番目まで計測した10個の位相平均であり、処理カウンターNが2のときの位相差平均Δt10(2)は、2番目から11番目まで計測した10個の位相差平均となる。
【0048】
S6において、今回の処理カウンター数Nのとき計算処理された位相差平均Δt10(N)が10[μsec]を超える場合には、安定フラグがオフになり、S7に進む。一方、S6において、今回の処理カウンター数Nで計算処理された位相差平均Δt10(N)が10[μsec]以下となる場合には、安定フラグがオンになり、このときのΔt10(N)を以後の位相差平均の基準値(以下「Δt10(基準値)」と呼ぶ)と定めてS8に進む。S8において、数えた処理カウンター数Nが2以下となる場合にはS9に進む。
【0049】
S9では、前回の処理カウンターN−1で計算処理された位相差平均Δt10(N−1)と今回の処理カウンターNで計算処理された位相差平均Δt10(N)との偏差ΔT1、すなわち、
ΔT1=Δt10(N−1)−Δt10(N) (数式3)
が計算され、S10に進む。
【0050】
一方、S8において、処理カウンターNが3以上12以下となる場合には、S7に進み、10[μsec]以下となっているΔt10(基準値)と今回の処理カウンターNで計算処理された位相差平均Δt10(N)の偏差ΔT2、すなわち、
ΔT2=Δt10(基準値)−Δt10(N) (数式4)
が計算され、S10に進む。
【0051】
つぎに、S10において、S7で計算された偏差ΔT2、またはS9で計算された偏差ΔT1に基づいて演算補正値ΔLを計算し、S11に進む。演算補正値ΔLは、具体的には、今回の処理カウンターNのときの演算補正値ΔL(N)であり、前回の処理カウンターN−1のときの演算補正値をΔL(N−1)とすると、送り速度検出用フリーロール48が検出したレンズシート40の送り速度v0、S7で計算された偏差ΔT2、またはS8で計算された偏差ΔT1によって次式のようになる。
ΔL(N)=ΔT1×v0+ΔL(N−1) (数式5)
または、
ΔL(N)=ΔT2×v0+ΔL(N−1) (数式6)
【0052】
また、S11において、処理カウンターNが12未満の場合には、S13へ進み、処理カウンターNが12となる場合には、S12を経て処理カウンターNがリセットされ、S13へ進む。
【0053】
S13では、式(1)とS8で算出された式(5)または式(6)に基づいて、間欠送りローラ56がレンズシート44を切断部22に送り量L2だけ送り込み、レンズシート44がカッター58によって所定の長さ(所定の送り量)L2で切断され、S14へ進む。
【0054】
S14では、切断部22におけるレンズシート44の次回の切断を続行するかどうかが判断される。S14において、次回の切断を続行する場合にはS6へ戻り、次回の切断を続行しない場合にはS15へ進み、切断を終了する。
【0055】
上述した本実施形態のレンズシート製造装置1によれば、レンズ金型30の回転周期t1と連続送りローラ52の平均回転時間t2との位相差Δtを計測しながら、この位相差Δtに基づいて間欠送りローラ56がレンズシート44を切断部22へ送る送り量L2を所定の送り量の範囲内に補正することができる。この結果、切断部22において、供給された長尺のレンズシート44をほぼ一定長さL2の定尺レンズシート60に切断することができる。一例として、レンズ金型30の呼び直径Dを230mmとした場合、演算補正値ΔLは±2.5mmの範囲内に設定することができる。
【0056】
また、レンズ金型30の実際の直径を一切測定することなく、近接センサ35が検出したレンズ金型30の回転周期t1に基づいた位相差Δtの計測値を利用して間欠送りローラ56の送り量L2を制御しているため、時間の経過と共に磨耗等によってレンズ金型30の直径が変化しても、送り量L2を所定の送り量の範囲内に適宜補正して、切断部22で定長切断を確実に行うことができる。
【0057】
さらに、本実施形態のレンズシート製造装置1によれば、製造ラインの途中に配置されている第1ダンサーロール42が所定位置となるように駆動ローラ46の回転速度が可変に制御され、第2ダンサーロール50が所定位置となるように連続送りローラ52の回転速度が可変に制御されているため、送り中のレンズシート44のテンションがほぼ一定になるように対応することができ、レンズシート製造装置1の製造ラインが比較的長くても、間欠送りローラ56の送り量L2を所定の送り量の範囲内に適宜補正して、切断部22で定長切断を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 レンズシート製造装置
2 原反フィルム巻出し部
4 アキューム部
6 重合賦型部
8 第1保護フィルムラミネート部
10 第1ダンサー部
11 第1駆動部
12 第2保護フィルムラミネート部
14 第2ダンサー部
15 第2駆動部
16 連続送り部
18 第3ダンサー部
19 第3駆動部
20 間欠送り部
22 切断部
24 原反フィルムロール
26 基材フィルム
28 アキュームダンサーロール
30 レンズ金型
32 モノマー供給ノズル
34 紫外線照射装置
35 近接センサ
36 モノマー
38,40,44,60 レンズシート
39 第1保護フィルム
43 第2保護フィルム
42 第1ダンサーロール
46 駆動ローラ
48 送り速度検出用フリーロール
50 第2ダンサーロール
52 連続送りローラ
54 第3ダンサーロール
56 間欠送りローラ
58 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルムシートの少なくとも一方の面にレンズを賦型して所定長さのレンズシートを製造するレンズシート製造装置であって、
ほぼ円筒状の外周面に沿って上記レンズを賦形するためのパターンが形成された回転式のレンズ型と、このレンズ型の回転周期を検出する回転周期検出手段と、上記レンズ型に供給される上記透明フィルムシートに光硬化樹脂を供給する光硬化樹脂供給手段と、この光硬化樹脂が供給された透明フィルムシートに紫外線を照射する紫外線照射手段とを備え、上記透明フィルムシートにレンズを賦型して長尺のレンズシートを形成するレンズ賦型部と、
このレンズ賦型部から送られるレンズシートの弛み量を検出する弛み量検出手段を備え、この弛み量検出手段が検出した弛み量に応じて送り速度を変化させてレンズシートを下流側へ連続的に送り出すレンズシート連続送り部と、
この連続送り部から送られた長尺のレンズシートを下流側へ間欠的に送り出す間欠送り部と、
上記回転周期検出手段が検出した上記レンズ金型の回転周期と、この回転周期の間に上記連続送り部が送り出した連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて上記間欠送り部の送り量が所定送り量になるように補正する送り量補正手段を有する送り量補正部と、
上記間欠送り部から所定送り量で送られたレンズシートを切断して所定長さのレンズシートにする切断部と、
を有することを特徴とするレンズシート製造装置。
【請求項2】
上記送り量補正手段は、連続して計測した複数の位相差に基づいて計算処理した位相差平均に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正する請求項1記載のレンズシート製造装置。
【請求項3】
上記送り量補正手段は、位相差平均を計算処理した回数をカウントするカウント手段と、位相差平均が所定値以下であるどうかを判断する位相差平均値判断手段と、この位相差平均値判断手段が位相差平均が所定値以下であると判断した場合にその位相差平均の基準値を定める基準値設定手段と、を備えている請求項1又は2に記載のレンズシート製造装置。
【請求項4】
上記送り量補正手段は、上記カウント手段がカウントした数が所定未満である場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正し、上記カウント手段がカウントした数が所定以上である場合には、上記基準値設定手段が定めた位相差平均の基準値と位相差平均の今回値との偏差に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正し、上記位相差平均値判断手段が位相差平均が所定値を超えていると判断した場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り部の送り量を補正する請求項1乃至3の何れか1項に記載のレンズシート製造装置。
【請求項5】
透明フィルムシートの少なくとも一方の面にレンズを賦型して所定長さのレンズシートを製造するレンズシート製造方法であって、
ほぼ円筒状の外周面に沿って上記レンズを賦形するためのパターンが形成された回転式のレンズ型と、このレンズ型の回転周期を検出する回転周期検出手段と、上記レンズ型に供給される上記透明フィルムシートに光硬化樹脂を供給する光硬化樹脂供給手段と、この光硬化樹脂が供給された透明フィルムシートに紫外線を照射する紫外線照射手段とを用いて、上記透明フィルムシートにレンズを賦型して長尺のレンズシートを形成するレンズ賦型工程と、
このレンズ賦型工程で形成された長尺のレンズシートの弛み量を検出し、この弛み量に応じて送り速度を変化させて下流側へ連続的に送り出す連続送り工程と、
この連続送り工程によって送られた長尺のレンズシートを下流側へ間欠的に送り出す間欠送り工程と、
上記回転周期検出手段が検出した上記レンズ金型の回転周期と、この回転周期の間に上記連続送り工程によって送り出された連続送り量と平均送り速度から求まる平均回転時間との位相差に基づいて上記間欠送り部の送り量が所定送り量になるように補正する送り量補正工程と、
上記間欠送り工程によって所定送り量で送られたレンズシートを切断して所定長さのレンズシートにする切断工程と、
を有することを特徴とするレンズシート製造方法。
【請求項6】
上記送り量補正工程は、連続して計測した複数の位相差に基づいて計算処理した位相差平均に基づいて上記間欠送り工程の送り量を補正する請求項5記載のレンズシート製造方法。
【請求項7】
上記送り量補正工程は、位相差平均を計算処理した回数をカウントするカウント工程と、位相差平均が所定値以下であるどうかを判断する位相差平均値判断工程と、この位相差平均値判断工程が位相差平均が所定値以下であると判断した場合にその位相差平均の基準値を定める基準値設定工程と、を備えている請求項5又は6に記載のレンズシート製造方法。
【請求項8】
上記送り量補正工程は、上記カウント工程がカウントした数が所定未満である場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り工程の送り量を補正し、上記カウント工程がカウントした数が所定以上である場合には、上記基準値設定工程が定めた位相差平均の基準値と位相差平均の今回値との偏差に基づいて上記間欠送り工程の送り量を補正し、上記位相差平均値判断工程が位相差平均が所定値を超えていると判断した場合には、連続して複数回計算処理した位相差平均の前回値と今回値との偏差に基づいて上記間欠送り工程の送り量を補正する請求項5乃至7の何れか1項に記載のレンズシート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−140013(P2012−140013A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60217(P2012−60217)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2005−373015(P2005−373015)の分割
【原出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】