説明

レンズ装置、レンズ調整装置、及び調整方法、並びにカメラ

【課題】 撮影レンズの光軸調整を容易かつ高精度に行う
【解決手段】 第1レンズ8aは、光軸Pに沿った方向と光軸Pと直交する方向にスライド自在であるとともに、光軸Pと直交する方向を軸とした回動方向に回動自在にして、第1鏡筒14に収納されている。第1レンズ8aの外周縁に、3組の第1,第2光変形シートがの一端が固定され、各他端は第一鏡筒14の内面に固定される。レンズ調整装置30は、イメージセンサ25でチャート板31を撮影して得られる画像データに基づいて、ピント状態、結像状態を判断し、その結果に基づいて各レーザ装置36を駆動する。レーザ装置36から照射された紫外線光あるいは可視光で各光変形シート21,22変形させて第1レンズ8aのピント、結像状態の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像状態を調整するレンズ装置、レンズ調整装置、及び調整方法、並びにカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCDイメージセンサ等のイメージセンサを用いたデジタルカメラや、このデジタルカメラが組み込まれた携帯電話,情報携帯端末(PDA)等が広く普及している。デジタルカメラでは、撮影レンズでイメージセンサ上にで被写体像を結像させ、その被写体像を電気的な撮影信号に変換し、さらにその撮影信号をデジタルデータに変換して記録媒体に記録している。
【0003】
撮影レンズをカメラに組み込むにあたっては、撮影レンズを構成する各レンズを精度良く組み立てられる。また、例えばデジタルカメラの場合には、撮影レンズとイメージセンサとの相対位置合わせも同時に調整される。このような調整は、イメージセンサ上に、被写体像を適切に結像するために高い調整精度が要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮影レンズを構成するレンズは、例えばレンズ面となる球面形状や非球面形状、外形寸法や厚みなどに誤差が入ることがあり、さらには屈折率が設計値どおりにならないことがある。このため、撮影レンズを精度良く組み立てたとしても、好ましい結像状態が得られないことがあった。例えば撮影レンズには少なからず収差としての像面湾曲があり、撮影画面の中心でピントが合致していても画面周辺部のピントが多少なりともズレていることは避けらないが、画面周辺部のボケ量が不均一になる、いわゆる片ボケが発生することがあった。この片ボケのような不適切な結像状態を修正するには、さらに精度の高い調整作業が必要であるが、このような調整作業は、時間がかかり効率が悪いという問題とともに、調整精度がでにくいという問題があった。また、撮影レンズの一部レンズあるいは全レンズが光軸に沿って移動する場合には、その移動によってレンズの姿勢が変化してしまい、特定のレンズ位置で好ましい結像状態が得られたとして、他のレンズ位置では結像状態が不適切になることがあった。
【0005】
本発明は上記問題を解消するためになされたもので、好ましい結像状態に簡便に調整することができるレンズ装置、レンズ調整装置,及び調整方法を提供することを目的とする。また、好ましい結像状態に簡便に調整した状態で撮影を行うことができるカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のレンズ装置では、補正レンズと、この補正レンズを移動自在に収納する鏡筒と、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートからなり、光変形シートの変形または復元によって、光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に補正レンズを移動させる移動機構と、第1の波長の光及び第2の波長の光を鏡筒の外部から光変形シートに照射するために、前記鏡筒に設けられた開口とを備えたものである。
【0007】
請求項2記載のレンズ装置では、補正レンズと、この補正レンズを移動自在に収納する鏡筒と、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートからなり、光変形シートの変形または復元によって、光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に補正レンズを移動させる移動機構と、前記鏡筒に設けられ、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する光源とを備えたものである。
【0008】
請求項3記載のレンズ調整装置では、撮影した被写体像を撮影信号に光電変換するイメージセンサを用いて、所定パターンが描かれた平面板をレンズ装置を通して撮影し、得られる撮影信号に基づいて、レンズ装置に設けた補正レンズを光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構を駆動させる制御手段を備えたものである。
【0009】
請求項4のレンズ調整装置では、移動機構を、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートとし、光変形シートの変形または復元によって補正レンズを移動するようにし、制御手段を、撮影信号に基づいて、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する光源を制御するようにしたものである。
【0010】
請求項5記載のカメラでは、上記のレンズ装置と、このレンズ装置を通して撮影した被写体像を撮影信号に光電変換するイメージセンサと、所定パターンが描かれた平面板を撮影して得られる撮影信号に基づいて光源を駆動し、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する制御手段とを備えたものである。
【0011】
請求項6記載のカメラでは、補正レンズ及びこの補正レンズを光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構を有するレンズ装置と、結像状態を最良とする光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向での補正レンズの位置を示す補正レンズ情報を記憶した記憶手段と、前記移動機構を駆動し、前記記憶手段から読み出した補正レンズ情報に示される位置に前記補正レンズを移動させる制御手段とを備えたものである。
【0012】
請求項7記載のカメラでは、レンズ装置が、ズームタイプのものであり、記憶手段には、レンズ装置の焦点距離毎に結像状態を最良とする補正レンズ情報を記憶しておき、制御手段を、レンズ装置に応じた補正レンズ情報に示される位置に前記補正レンズを移動させるようにしたものである。
【0013】
請求項8記載のレンズ装置の調整方法では、レンズ装置の光軸に対して垂直に配された所定パターンが描かれた平面板を、前記レンズ装置を通して撮影装置で撮影しながら、レンズ装置のフォーカスレンズを移動させて、ピントが合致するフォーカスレンズの移動位置を撮影画面を複数に分割した各領域のそれぞれについて測定し、この測定で得られる各フォーカスレンズの移動位置の相対的なズレ量に基づいて、光軸に直交する方向を軸とした回動方向におけるレンズ装置の補正レンズの位置を決定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補正レンズとともに光変形シートを鏡筒内に組み込んで、この光変形シートの変形,復元を使ってレンズを移動させるので、構造を複雑化させることなく、片ボケのない適切な結像が得られるように調整することができる。また、本発明によれば、所定パターンが描かれた平面板をレンズ装置を通して撮影し、その撮影で得られる撮影信号に基づいて補正レンズの位置を移動させるようにすることで、簡単にしかも高精度で片ボケのない適切な結像が得られるように調整することができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、補正レンズ及びこの補正レンズを光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構をレンズ装置に設け、記憶しておいた補正レンズ情報に示される位置に補正レンズを移動させるようにすることで、高精度で片ボケのない適切な結像が得られる状態で撮影を行うことができ、また焦点距離毎に補正レンズ情報を記憶しておき、ズームタイプのレンズ装置の設定された焦点距離に応じた補正レンズ情報に基づいて補正レンズを移動させることにより、各焦点距離で適切な結像を得ることができる。
【0016】
所定パターンが描かれた平面板を撮影装置で撮影しながら、フォーカシングを行って、撮影画面を複数に分割した各領域のそれぞれについてピントが合致するフォーカスレンズの移動位置を測定し、この測定で得られる各フォーカスレンズの移動位置の相対的なズレ量に基づいて、光軸に直交する方向を軸とした回動方向におけるレンズ装置の補正レンズの移動位置を決めることにより、適切な結像が得るための補正レンズの位置を簡単に決めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施したデジタルカメラ内蔵型の携帯電話の外観を図1に示す。この携帯電話2は、ヒンジ部3により折り畳み自在に連結された受話器ユニット4と送話器ユニット5とからなる。受話器ユニット4には、アンテナ6の他、その内面側にLCD(液晶ディスプレイ)や受話スピーカ等が組み込まれている(図示省略)。また、この受話器ユニット4にはカメラユニット7が内蔵され、その背面に撮影レンズ(レンズ装置)8が露出している。
【0018】
送話器ユニット5の内面側には、送話マイク9,ダイヤル操作や各種設定を行うためのキー操作部10等を設けてある。このキー操作部10を操作することで、撮影モードとすることが可能であり、撮影モード下でキー操作部10の所定のキーを操作することで、撮影レンズ8を通したカメラユニット7での撮影が行われ、得られる画像データが内蔵メモリに記録される。
【0019】
図2にカメラユニット7の要部構成を示す。カメラユニット7は、大別して撮影レンズ8を構成する第1鏡筒14及び第2鏡筒15と、センサ基板24とからなる。第1鏡筒14には第1レンズ8aが移動自在に収納してあり、第2鏡筒15には第2レンズ8bが組み付けてある。第1鏡筒14は、前面中央に撮影窓が形成され、その撮影窓に防塵用の透明なカバープレート16を嵌め込んである。カバープレート16は、受話器ユニット4の背面に露呈される。第2鏡筒15の前面開口に組み付けられた絞り板17の前面に、撮影レンズ8の光軸Pと平行な3本のガイド軸18を突設してあり、各ガイド軸18の一端は第1鏡筒14の前面内側に固定してある。
【0020】
3本のガイド軸18は、光軸Pを軸にして120°の回転対称となる位置に設けられている。第1レンズ8aの外周には、120°の回転対称となる位置に3個の孔19を設けてあり、各孔19にガイド軸19が通される。図3に示すように、各孔19の内径をガイド軸18の外径よりも大きくしてある。
【0021】
上記のような各孔19にガイド軸18をそれぞれ通した状態で、第1レンズ8aが第1鏡筒14内に収納されている。これにより、第1レンズ8aは、ガイド軸18に沿って、すなわち光軸Pに沿った方向(以下、光軸方向という)にスライド自在であり、このスライドでピント位置を調整することができる。また、孔19の内径とガイド軸18の外径の差分だけ、第1レンズ8aは光軸Pと直交する任意の方向(以下、光軸直交方向という)にスライド自在であるとともに、第1レンズ8aは光軸Pと直交する任意の方向を軸とした回動方向に回動自在である。これらの移動(スライド,回動)によって、イメージセンサ25上での結像状態を変化させることができる。なお、この例では撮影レンズ8を構成するレンズのうち、結像状態の調整効果が大きい第1レンズ8aを補正レンズとしているが、補正レンズを別途設けてもよい。
【0022】
撮影レンズ8は、ピント位置が固定されたパンフォーカスタイプのものであって、第1レンズ8aは、ピント調整と結像状態の完了の後に、各孔19内に接着剤を滴下することにより、支持軸18に固着される。
【0023】
第1レンズ8aの外周縁には、光軸Pを対称軸として120°の回転対称となる各位置に第1光変形シート21,第2光変形シート22の一端がそれぞれ固定されている。各光変形シート21,22は、ピント調整及び結像状態の調整をするために第1レンズ8aを移動する移動機構を構成している。第1光変形シート21は物体側に伸び、第2光変形シート22は像側に伸びており、それぞれ他端が第1鏡筒14の周面内壁に固定してあり、第1レンズ8aと第1鏡筒14とを連結している。一端が同じ位置に固定された各組みの各光変形シート21,22とで第1レンズ8aの径方向外側に向かって開いた略V字形状になっている。なお、1組の第1,2光変形シート21,22の代わりに、1枚の光変形シートの中央部を第1レンズ8aの外周縁に固定し、略V字状に開くように両端を第1鏡筒14の周面内壁に固定してもよい。また、結像状態の調整する際に、光軸直交方向に第1レンズ8aをスライドさせる必要がなければ、第1光変形シート21だけ、あるいは第2光変形シート22だけで構成することもできる。
【0024】
各光変形シート21,22は、波長が366nm付近の紫外線の照射により平坦な形状から屈曲変形(湾曲)し、波長が540nm付近の可視光の照射により元の平坦な形状に戻り、さらに紫外線,可視光の照射を停止したときの状態を保持する性質を有したものであり、アゾベンゼン分子を主原料とする高分子材料(プラスチック)をシート状にしたものが用いられる。このような高分子材料は、英国雑誌「NATURE」(Vol.245 11 SEPTEMBER 2003 )などで知られている。
【0025】
各光変形シート21,22のそれぞれの湾曲の度合を調節することにより、第1レンズ8aを移動させてピント及び結像状態を調整する。各光変形シート21,22に可視光、紫外線を照射するために、第1鏡筒14の周面には、各光変形シート21,22に対応して開口23を設けてある。
【0026】
第2鏡筒15には、前述のように第2レンズ8bが組み込まれ、また絞り板17が前面の前部開口に組み付けてある。絞り板17には、撮影レンズ8の絞りである絞り開口17aを設けてある。上記の第1レンズ8a,絞り開口17a,第2レンズ8bによってパンフォーカスタイプの撮影光学系が構成される。第2鏡筒15の後端に開口が形成され、この開口を塞ぐようにセンサ基板24が固定されている。センサ基板24にはイメージセンサ25が実装されており、イメージセンサ25の受光面に撮影光学系によって被写体像が結像される。
【0027】
イメージセンサ25から出力される撮影信号は、センサ基板24上の信号処理回路(図示せず)に入力されて所定の信号処理が行われる。イメージセンサ25は、撮影モード下では、一定の周期で繰り返し撮影を行って撮影信号を出力し、これに各種の信号処理を行って画像データを生成する。そして、得られる画像データに基づいて、受話器ユニット4の内面側に設けられたLCDに撮影中の被写体がスルー画像として表示される。そして、キー操作部10を操作して撮影指示を行うと、その直後に得られる一画面分の画像データが内蔵メモリに書き込まれて保存される。
【0028】
ところで、第1レンズ8a,第2レンズ8bは、例えば、外形寸法や厚み、面形状,屈折率が設計値どおりにならないことがある。そこで、カメラユニット7を受話器ユニット4に組み込む前に、撮影レンズ8のピント調整と同時に、結像状態の調整が行われる。
【0029】
図4に撮影レンズ8のピント調整及び結像状態の調整を行うレンズ調整装置30の構成を示す。なお、この例では、前述のように第1レンズ8aを補正レンズとしてあり、第1レンズ8aについて調整を行う。チャート板31は、平板に所定のパターン、例えば空間周波数が均一の矩形波チャートやSin波チャート等を描いたの図柄を描いたものであり、レンズ調整装置30にセットされたカメラユニット7の前方に配されるようにしてある。カメラユニット7は、その撮影レンズ8の光軸がチャート板31と垂直となるように配される。カメラユニット7からチャート板31までの距離は、設計上の撮影レンズ8のピント位置と同じ距離になっている。チャート板31は、調整時には照明装置によって均一に照明される。
【0030】
システムコントローラ32は、レンズ調整装置30の各部を制御する。ドライバ33は、セットされたカメラユニット7を駆動し、カメラユニット7でチャート板31の撮影を行わせる。信号処理部34は、イメージセンサ25から出力される撮影信号に対してデジタルカメラと同様の信号処理を行い、撮影信号を画像データに変換して出力する。なお、カメラユニット7に搭載されたドライバ及び信号処理部を作動させて画像データを取得してもよい。
【0031】
解析処理部35は、撮影信号に基づいて光変形シートに照射する光源を制御するものであって、信号処理部34からの画像データを用いて、撮影中のチャート板31のボケ量、ボケの分布等から結像状態,ピント状態を判別し、その結果に応じてピントが合致し、また結像状態が最良となるように各レーザ装置36を駆動する。なお、ボケ量については、例えばそれを判断すべき部分のコントラストの高低によって知ることができる。
【0032】
各レーザ装置36は、第1鏡筒14の開口23毎に設けてあり、それぞれ第1光変形シート21に対応する第1ユニット36aと、第2光変形シート22に対応する第2ユニット36bとからなる。第1ユニット36aは、第1光変形シート21に対して波長が366nm付近の紫外線と、波長が540nm付近の可視光とを選択的に照射する。同様に、第2ユニット36bは、第2光変形シート22に対して紫外線と可視光とを選択的に照射する。
【0033】
上記のように、第1光変形シート21と第2光変形シート22のそれぞれに対して、レーザ装置36からの紫外線あるいは可視光を照射することにより、第1光変形シート21と第2光変形シート22とを独立させて湾曲させたり、平坦化することができる。そして、各光変形シート21,22の湾曲の度合をそれぞれ変化させることにより、第1レンズ8aの光軸方向のスライドと、光軸直交方向のスライドと、光軸直交方向を軸とした回動とを行うことができる。
【0034】
例えば、ピント調整のために第1レンズ8aを光軸Pに沿って例えば物体側にスライドさせる場合には、各第1光変形シート21に紫外線を照射するとともに、各第2光変形シート22に可視光を照射する。逆に像側にスライドさせる場合には、各第1光変形シート21に可視光を照射し、各第2光変形シート22に紫外線を照射する。
【0035】
結像状態を調整するために、第1レンズ8aを光軸直交方向を軸として回動する場合には、1組あるいは2組の各光変形シート21,22に対して異なる種類の光(紫外線,可視光)を照射する。また、第1レンズ8aを光軸直交方向(第1レンズ8aの径方向)にスライドする場合には、スライド方向とそのスライド量とを、第1レンズ8aの中心から各光変形シート21,22が固定された第1レンズ8aの外周縁上の3カ所に向かう3つのベクトルに分解し、そのベクトルの正負に応じて紫外線、可視光のいずれかを照射するかを決定し、光変形シートの湾曲(平坦化)の度合がベクトルの大きさに応じたものとなるようにする。なお、ベクトルが「正」のときには、そのベクトルに対応する各光変形シート21,22に紫外線を照射して、ベクトルが「負」のときには、そのベクトルに対応する各光変形シート21,22に可視光を照射する。
【0036】
次に上記構成の作用について説明する。カメラユニット7は、その組み付け完了後、調整工程に送られて、レンズ調整装置30にセットされる。セット完了後に、ドライバ33により撮影レンズ8を通してのイメージセンサ25によるチャート板31の撮影が開始される。この撮影によって得られる撮影信号が信号処理部34で各種信号処理が施されて画像データに変換され、この画像データが解析処理部35に送られる。
【0037】
解析処理部35では、入力される画像データに基づいてイメージセンサ25によって撮影されているチャート板31のボケ状態やボケの分布が調べられ、結像状態、ピント状態が解析される。そして、その解析結果に基づいた調整信号が各レーザ装置36に送られる。具体的には、撮影画像の中心でチャート板にピントが合致し、撮影画像の4隅の各位置におけるピントのボケ量が同じとなるように第1レンズ8aを移動するように各レーザ装置36が駆動される。
【0038】
なお、結像状態,ピント状態を解析する際に、レーザ装置36を駆動して、第1レンズ8aをスライド、回動させて情報を得るようにしてもよい。また、この例では、ボケ量,ボケの分布を解析しているが、例えばチャート板31に格子パターンを描いておき、その像の歪みの方向や程度、分布等から結像状態を解析してもよい。
【0039】
調整信号の入力により各レーザ装置36の各ユニット36a,36bからは紫外線あるいは可視光が対応する光変形シート21,22に対して照射される。もちろん、第1レンズ8aの光軸の状態,ピント状態によっては、紫外線,可視光のいずれもが照射されない場合もある。
【0040】
紫外線または可視光の照射の結果、各光変形シート21,22は照射された光の種類に応じて屈曲、あるいは平坦な形状に戻るように変形し、これに伴って第1レンズ8aが光軸方向にスライド、あるいは光軸直交方向にスライドし、さらには光軸直交方向を軸として回動する。
【0041】
上記のように各レーザ装置36を駆動している間にも、イメージセンサ25での撮影が継続され、ボケ量やボケ分布が解析処理部35によって監視される。そして、撮影画像の中心にピントが合い、撮影画像の4隅の各位置におけるピントのボケ量が同じとなって、適切なチャート像が得られた時点で各レーザ装置36の駆動が停止される。光変形シート21,22はレーザ装置36からの光の照射が絶たれた時点での形状を維持する。この後に接着剤を各孔19に滴下して第1レンズ8aを支持軸18に固着することによって調整工程が完了する。
【0042】
上記実施形態では第1レンズ8aだけの調整を行っているが、レンズ装置の構成に応じて、その他のレンズや全部のレンズの調整を行うこともできる。また、調整工程の完了後に光変形シート21,22を取り除くようにしてもよい。
【0043】
上記実施形態では、解析処理部35によって、ボケ量やボケ分布から、結像状態,ピント状態を自動解析しているが、図5に示すように、結像状態,ピント状態の解析結果を表示装置38に表示し、その表示を見ながら操作部39を操作して、光軸状態,ピント状態が適切となるように調整してもよい。この例では、操作部39の操作に応じてコントローラ32によってレーザ装置36が駆動される。
【0044】
図6及び図7に示す実施形態は、レンズ調整装置をカメラユニットに内蔵した例を示すものであり、同じ部材には共通の符号を付してある。図6に示すように、カメラユニット40は、システムコントローラ42,ドライバ43,信号処理部44、解析処理部45,レーザ装置46を内蔵している。システムコントローラ42は、カメラユニット40の各部を制御する。ドライバ43は、イメージセンサ25を駆動し、信号処理部44は、イメージセンサ25から出力される撮影信号に対して信号処理を行い、撮影信号を画像データに変換して出力する。これらドライバ43,信号処理部44は、これまでのデジタルカメラに搭載されているものと同じである。解析処理部45は、先の実施形態の解析処理部35と同じ機能を有するものであり、信号処理部44から入力される画像データに基づいて判断したボケ量、ボケの分布から、結像状態,ピント状態を解析し、その結果に基づいてレーザ装置46を駆動する。
【0045】
図7に示すように、レーザ装置46は、先の実施形態のレーザ装置36と同様なものであり、第1ユニット46a,第2ユニット46bとからなる。レーザ装置46は、光変形シート21,22に対応する第1鏡筒14の周面の位置に組み付けられており、周面の内面側に紫外線,可視光を照射する部分が露呈されており、対応する光変形シートに紫外線と可視光とを選択的に照射する。
【0046】
この例では、キー操作部10の操作でレンズ調整を指示すると、システムコントローラ42の制御下で上記実施形態と同様な手順で第1レンズ8aの調整が行われる。これによれば、例えば修理時に携帯電話を分解しなくてもレンズ調整を行うことができる。
【0047】
なお、図7に示されるように撮影レンズに組み込まれたレーザ装置46に、外部のレンズ調整装置から調整信号を与えてレンズ調整を行うこともできる。
【0048】
上記各実施形態では、移動機構として光変形シートを用いているが、この他の部材や装置を用いてレンズ位置を調整してもよい。また、カメラユニットに搭載するイメージセンサを用いてチャート板を撮影しているが、レンズ調整装置に設けたイメージセンサで撮影する構成としてもよい。さらに、カメラユニットを携帯電話に組み込んだ例について説明したが、本発明は、PDAやパーソナルコンピュータに組み込まれるデジタルカメラ、単体としてのデジタルカメラにも利用できる。
【0049】
次にズームタイプの撮影レンズの各ズーム位置毎に良好な結像状態が得られるようにしたデジタルカメラの例について説明する。デジタルカメラの構成を示す図8において、マイクロコンピュータ50は、レリーズボタンやズームボタン等からなる操作部51からの操作信号に応じてデジタルカメラの各部を制御する。
【0050】
マイクロコンピュータ50には、ROM50a,RAM50bが接続されている。ROM50aには、デジタルカメラの各種動作を制御するためのプログラムを記憶してあり、マイクロコンピュータ50は、そのプログラムにしたがって各部を制御して撮影を行う。また、ROM50aのプログラムには、測定用プログラムが含まれており、マイクロコンピュータ50は、その測定用プログラムにしたがって各部を制御することにより、後述するズーム位置毎の補正レンズ情報を決定する。RAM50bは、プログラム実行時に必要な各種変数などが一時的に書き込まれるワークメモリとして利用される。
【0051】
撮影レンズ53は、ズームタイプのものであって、ピント合わせ用のフォカースレンズ54と、変倍用のズームレンズ55と、補正レンズ56とからなる。これら各レンズ54〜56は、1枚のレンズで構成してもよく複数枚のレンズで構成してもよい。撮影レンズ53は、例えば焦点距離が段階的に変化するステップズームであって、変倍レンズ55は焦点距離に応じたズーム位置にステップ移動される。
【0052】
レンズ駆動ユニット57は、フォーカスレンズ54,変倍レンズ55をそれぞれ光軸Pに沿った方向(以下、光軸方向)に移動するための、モータ、モータを駆動するドライバ等からなる。マイクロコンピュータ50は、このレンズ駆動ユニット57を介してフォーカスレンズ54,変倍レンズ55を光軸方向に移動することで、ピント合せ、ズーミングを行う。レンズ駆動ユニット部57は、撮影レンズ53の焦点距離に応じた、すなわち変倍レンズ55のズーム位置を検出するセンサを備えており、ズーム位置に応じたズーム位置情報をマイクロコンピュータ50に送る。
【0053】
補正レンズ駆動ユニット58は、マイクロコンピュータ50の制御の下で補正レンズ56を移動する。補正レンズ56の移動は、光軸Pと直交する光軸直交方向へのスライドと、光軸直交方向を軸とする回動方向の回動とがあり、この補正レンズ56の移動によって各ズーム位置における結像状態を最良にする。
【0054】
撮影レンズ53の背後に、イメージセンサ59が配されており、イメージセンサ59は、光学的な被写体像を電気的な撮影信号に変換する。撮影信号は、CDS(相関二重サンプリング)回路61によってノイズ除去が行われた後に、A/D変換器62に入力されて画像データに変換される。A/D変換器62からの画像データは、データ処理部63に送られる。
【0055】
データ処理部63は、画像データに対してガンマ補正,ホワイトバランスの調整,データ圧縮,データ伸長等の種々のデータ処理を行う。また、このデータ処理部63は、入力される画像データを用いて撮影中の画像のコントラストに応じたAF信号を生成し、これをマイクロコンピュータ50に送る。マイクロコンピュータ50は、このAF信号に基づいて、撮影中の画像のコントラストが最大となるようにレンズ駆動ユニット57を介してフォーカスレンズ54を移動することでピント合せを行う。
【0056】
撮影モード下でレリーズボタンを操作していないときには、データ処理部63でガンマ補正,ホワイトバランスの調整が行われた画像データがマイクロコンピュータ50を介して次々に画像表示部65に送られ、動画として表示される。また、レリーズボタンが押圧操作されると、その直後の撮影で得られる画像データが、ガンマ補正,ホワイトバランスの調整,データ圧縮が施されてから、マイクロコンピュータ50を介してメディアI/F66に送られてメモリカード67に記録される。
【0057】
画像表示部65は、撮影中の画像やメモリカード67に記録されている画像を表示するLCDやそのドライバ等から構成され、入力される画像データに基づいてLCDに画像を表示する。メディアI/F66は、デジタルカメラに装着されたメモリカード67への画像データの書き込み、読み出しを行う。再生時には、メディアI/F66によってメモリカード67から画像データが読み出され、その画像データがデータ処理部32でデータ伸長されてから画像表示部65に送られることで、メモリカード67に記録されている画像が表示される。
【0058】
マイクロコンピュータ50にEEPROM68を接続してある。このEEPROM68には、変倍レンズ55のズーム位置毎の補正レンズ情報が記録されている。この補正レンズ情報は、例えば製造時に測定用プログラムを実行することでEEPROM68に記録される。補正レンズ情報は、補正レンズ56の光軸直交方向のスライドについてのスライド方向及びスライド量と、光軸直交方向を軸とする回動について回動軸の方向及び回動量とを示すものとなっている。なお、補正レンズ情報をメモリカードに記録して、撮影時に読み出すようにしてもよい。
【0059】
撮影モード下では、マイクロコンピュータ50は、レンズ駆動ユニット57からのズーム位置情報に応じた補正レンズ情報をEEPROM68から読み出して、この補正情レンズ情報に基づいて補正レンズ駆動ユニット58を駆動し、補正レンズ56を補正情レンズ情報に示される位置に移動した状態にする。
【0060】
図9に補正レンズ駆動ユニット58の概略を示す。移動機構としての補正レンズ駆動ユニット58は、光軸直交方向と、光軸直交方向を軸とした回動方向とに補正レンズ56を移動するアクチュエータ部71,マイクロコンピュータ50からの制御信号に応じてアクチュエータ部71を駆動するドライバ72と、補正レンズ53の位置、すなわち光軸直交方向についてのスライド方向及びスライド量、光軸直交方向を軸とする回動について回動軸の方向及び回動量を検出し、それらを検出情報としてマイクロコンピュータ50に送る位置検出部73とからなる。
【0061】
図9に示されるように、補正レンズ56の中心を通り、光軸Pに直交し、かつ互いに直交する2つの軸をX軸,Y軸としたときに、アクチュエータ部71は、X軸に沿った方向(以下、X軸方向),Y軸に沿った方向(以下、Y軸方向),X軸を回転軸にした回動方向、Y軸を回転軸にした回動方向とのそれぞれの方向に独立して補正レンズ56を移動(スライド・回動)する。
【0062】
図10に一例を示すように、補正レンズ58は、リング75内に軸支されており、このリング75に固定された第1アクチュエータ71aによってY軸を中心に回動される。リング75は、保持枠76の開口内に軸支されており、この保持枠76に固定された第2アクチュエータ71bによってX軸を中心に回動される。第3アクチュエータ76cは保持枠76に取り付けられ、この保持枠76をX軸方向にスライドする。鏡筒(図示省略)に取り付けられた第4アクチュエータは、第3アクチュエータ76cを保持しており、第3アクチュエータ71cとともに保持枠76をY軸方向にスライドする。これにより、補正レンズ56は、任意の光軸直交方向にスライド自在であり、また任意の光軸直交方向を軸とした回動方向に回動自在となっている。
【0063】
上記構成の作用について説明する。メーカでの製造工程において、デジタルカメラの組み立て完了後に補正レンズ情報を決定・記録する。この場合には、平面に所定のパターンが描かれたチャート板の正面にデジタルカメラをセットした後に、操作部51が操作されて、デジタルカメラが測定モードとされる。測定モードとなると、マイクロコンピュータ50は、測定用プログラムの実行する。
【0064】
補正レンズ情報の測定手順の概略を図11に示すように、マイクロコンピュータ50の制御の下、レンズ駆動ユニット57によって変倍レンズ55が広角端位置にセットされてから、イメージセンサ59が作動されて撮影が開始される。これにより、チャート板を撮影した撮影信号がイメージセンサ59から出力されるようになり、撮影信号はCDS回路61,A/D変換器62を介して画像データに変換されてからデータ処理部63に送られる。すると、データ処理部63が入力される画像データに基づき撮影中の撮影画像のコントラストに応じたAF信号を生成し、これをマイクロコンピュータ50に送る。
【0065】
マイクロコンピュータ50は、データ処理部63からのAF信号を参照しながら、レンズ駆動ユニット57を介してフォーカスレンズ54を光軸方向に移動し、撮影レンズ53を通してイメージセンサ59で撮影中の撮影画像のコントラストが最大となる位置にフォーカスレンズ54をセットする。
【0066】
上記のようにして、コントラスト検出方式により、チャート板にピント合わせを行った後、マイクロコンピュータ50によって、イメージセンサ59で撮影中の撮影画像の4隅について、それぞれ適当な個数の画素の画像データを用いて、ピントのボケ量が同じであるか否かが調べられる。4隅でのピントのボケ量が異なる場合には、マイクロコンピュータ50によって撮影画像中の各位置でのボケ量の差やボケの分布等が解析され、4隅でのピントのボケ量が同じするための補正レンズ56の移動方向、移動量が求められる。
【0067】
そして、上記のように求めた移動方向、移動量に基づいて補正レンズ駆動ユニット58が駆動され、補正レンズ56が光軸直交方向にスライド,あるいは光軸直交方向を軸とする回動方向に回動される。この後、再び4隅でのピントのボケ量が同一であるか否かが調べられ、4隅でのピントのボケ量が異なる場合には、再度解析が行われて、補正レンズ駆動ユニット58を介して補正レンズ56が移動される。
【0068】
上記のようにして、撮影画像の4隅のピントのボケ量が同一となると、マイクロコンピュータ50は、その時点で補正レンズ駆動ユニット58から出力されている補正レンズ56の光軸直交方向のスライド方向及びスライド量、光軸直交方向を軸とする回動についての回動軸方向及び回動量の各情報を持つ検出情報を読み込み、この検出情報を広角端に対応した補正レンズ情報としてEEPROM68に記録する。
【0069】
なお、4隅のピントのボケ量が同一となるように補正レンズ56を移動させる際に、各位置でのボケ量を監視しながら補正レンズ56を移動し、ボケ量が同一となった時点で補正レンズの移動を停止して、補正レンズ情報を取得するようにしてもよい。
【0070】
広角端に対応した補正レンズ情報を記録した後に、変倍レンズ55が望遠側に1ステップ分移動される。この後に上記と同様な手順によって、撮影画像の4隅のピントのボケ量が同一となるように補正レンズ56を移動し、得られる検出情報を広角端から1ステップ分移動させたズーム位置での補正情報としてEEPROM68に記録する。以下、同様にして、変倍レンズ55を1ステップずつ望遠端に向けて移動しながら、撮影画像の4隅のピントのボケ量を評価して各ボケ量が同一となるように位置補正レンズ56を移動し、その4隅のピントのボケ量が同一となる位置で得られる検出情報を補正レンズ情報としてEEPROM68に順次に記録する。そして、望遠端の補正レンズ情報の記録が完了することで、測定が終了する。
【0071】
撮影を行う場合には、これまでのデジタルカメラと同様にズームボタンを操作して撮影レンズ53のズーミングを行い所望とする焦点距離としてから、レリーズボタンを押圧操作して、撮影を行う。
【0072】
ズームボタンを操作すると、マイクロコンピュータ50の制御によりレンズ駆動ユニット57を介して変倍レンズ55が望遠端、あるいは広角端に向けて移動される。ズームボタンの操作が解除されて変倍レンズ55の位置が決まると、そのズーム位置に対応した補正レンズ情報がマイクロコンピュータ50によってEEPROM68から読み出される。
【0073】
そして、マイクロコンピュータ50は、補正レンズ駆動ユニット58からの検出情報を参照しながら、補正レンズ駆動ユニット58を介して補正レンズ56を移動する。そして、検出情報が補正レンズ情報と同じとなった時点で補正レンズ56の移動が停止されて固定される。これにより、セットされているズーム位置において撮影画像の4隅のピントのボケ状態が同一となる位置に補正レンズ56がスライドあるいは回動されて固定され、最も好ましい結像状態になる。
【0074】
補正レンズ56の固定後、イメージセンサ59での撮影により得られる画像データに基づいて、撮影画像のコントラストが最も高くなる位置にフォーカスレンズ54が移動され、撮影中の被写体にピントが合致される。そして、レリーズボタンを押圧操作すると、その直後の撮影で得られる1フレーム分の画像データがデータ処理部63からマイクロコンピュータ50を介してメディアI/F66に送られ、メモリカード67に記録される。
【0075】
以上のようにして、メモリカード67に記録される撮影画像は、いずれのズーム位置で撮影を行っても、そのズーム位置に最も適切となる結像状態で撮影されているので、片ボケがない高い画質となっている。
【0076】
上記実施形態では、デジタルカメラに補正レンズ情報を取得する機能を内蔵させたが、外部の測定装置からの制御でデジタルカメラの各部を駆動し、補正レンズ情報を取得し、これをデジタルカメラ内の記憶手段に書き込むようにしてもよい。また、上記各実施形態では、撮影画像の各位置におけるボケ量の差、ボケの分布に基づいて補正レンズを移動し、最良の結像状態となる補正レンズの移動方向や移動量を決めているが、この他の方法で補正レンズの移動方向や移動量を決めてもよい。
【0077】
図12は補正レンズの移動方向や移動量を決める際の撮影画面内の各位置におけるピントのズレ量を測定し、その結果に基づいて補正レンズの位置を決定する例を示すものである。なお、上記実施形態のデジタルカメラにおいて、マイクロコンピュータ50の制御でピントのズレ量を測定する場合を例にして説明するが、図4に示すレンズ調整装置などにも利用できることはいうまでもない。
【0078】
測定を行う場合には、撮影レンズ53の前面に空間周波数が均一の矩形波チャートやSin波チャート等を描いたチャート板を配し、これを撮影レンズ53を通してイメーージセンサ59で撮影した状態とする。なお、補正レンズ56は、例えば所定の原点位置に補正レンズ56にセットした状態とされる。
【0079】
撮影開始後、レンズ駆動ユニット57内のフォーカス用モータに駆動パルスを供給して、フォーカスレンズ54を例えば近距離側から遠距離側に向けて微小な移動量ずつ移動させる。このときに、フォーカスレンズ54のレンズ位置が、例えばフォーカスレンズ54の原点位置からその位置に移動するまでにフォーカス用モータに供給する駆動パルスのパルス数で測定される。なお、フォーカスレンズ54を移動する範囲は、移動可能な全範囲である必要はなく、チャート板までの撮影距離に対応する位置を中心とし、結像位置のズレ量をカバーするだけの移動量の範囲でよい。
【0080】
マイクロコンピュータ50は、フォーカスレンズ54を移動する毎に、イメージセンサ59で撮影されデータ処理部63でデータ化された撮影画像を取得する。そして、取得した撮影画像を複数の領域、例えば縦9×横9の領域に分割し、各領域についてピントを評価し、そのピントの評価値を対応するフォーカスレンズ54のレンズ位置とともに、例えばRAM50bに記憶する。評価値としては、例えばコントラストの高低を数値化したものが用いられる。
【0081】
各レンズ位置についてピントの評価値を取得した後、マイクロコンピュータ50は、RAM50bに記録した評価値を調べ、各領域のぞれぞれについて、評価値が最も高くなるレンズ位置を特定する。すなわち、ピントがあっているレンズ位置が領域毎に特定される。そして、各領域の特定されたレンズ位置(パルス数)と、撮影画像の中央の領域の特定されたレンズ位置(パルス数)の差をそれぞれ求める。このようにして求められた各差は、撮影画像中心を基準とした、撮影レンズ53による像面位置のズレ量を領域毎に表したものとなる。これら各ズレ量に基づいて、良好な結像状態とすることができる補正レンズ56の回動量と、その回動の軸とする光軸と直交する方向を決める。なお、各領域におけるズレ量がわかると、イメージセンサ25の受光面に対する撮影レンズ53による結像面の傾き向き、程度を知ることができるので、結果として補正レンズ56をいずれの光軸直交方を軸にしてどの程度回動すれば、良好な結像状態となるかを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明を実施したカメラユニットを内蔵した携帯電話の外観を示す斜視図である。
【図2】カメラユニットの要部構成を示す分解斜視図である。
【図3】第1レンズの孔とガイド軸との径の大小を示す説明図である。
【図4】レンズ調整装置の構成を示すブロック図である。
【図5】光軸状態,ピント状態の解析結果を表示する例のレンズ調整装置の構成を示すブロック図である。
【図6】レンズ調整装置を組み込んだカメラユニットの例の構成を示すブロック図である。
【図7】撮影レンズにレーザ装置を組み込んだカメラユニットの要部構成を示す分解斜視図である。
【図8】焦点距離毎に補正レンズを位置を補正するデジタルカメラの例を示すものである。
【図9】補正レンズ駆動ユニットの構成を示すブロック図である。
【図10】補正レンズを支持する構造を示す説明である。
【図11】補正レンズの補正レンズ情報を測定するときの手順を示すフローチャートである。
【図12】撮影レンズの像面の位置のズレを測定して補正レンズの位置を決定する例を示すものである。
【符号の説明】
【0083】
7 カメラユニット
8 撮影レンズ
8a,8bレンズ
14,15 鏡筒
21,22 光変形シート
23 開口
25,59 イメージセンサ
31 チャート板
34,44 解析処理部
36,46 レーザ装置
50 マイクロコンピュータ
53 撮影レンズ
55 変倍レンズ
56 補正レンズ
58 補正レンズ駆動ユニット
68 EEPROM


【特許請求の範囲】
【請求項1】
補正レンズと、この補正レンズを移動自在に収納する鏡筒と、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートからなり、光変形シートの変形または復元によって、光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に補正レンズを移動させる移動機構と、第1の波長の光及び第2の波長の光を鏡筒の外部から光変形シートに照射するために、前記鏡筒に設けられた開口とを備えたことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
補正レンズと、この補正レンズを移動自在に収納する鏡筒と、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートからなり、光変形シートの変形または復元によって、光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に補正レンズを移動させる移動機構と、前記鏡筒に設けられ、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する光源とを備えたことを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
撮影した被写体像を撮影信号に光電変換するイメージセンサを用いて、所定パターンが描かれた平面板をレンズ装置を通して撮影し、得られる撮影信号に基づいて、レンズ装置に設けた補正レンズを光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構を駆動させる制御手段を備えたことを特徴とするレンズ調整装置。
【請求項4】
前記移動機構は、補正レンズと鏡筒とを連結するように固定され、第1の波長の光を受けて変形し第2の波長の光を受けて復元する光変形シートであり、光変形シートの変形または復元によって補正レンズを移動し、前記制御手段は、撮影信号に基づいて、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する光源を制御することを特徴とする請求項3記載のレンズ調整装置。
【請求項5】
請求項2記載のレンズ装置と、このレンズ装置を通して撮影した被写体像を撮影信号に光電変換するイメージセンサと、所定パターンが描かれた平面板を撮影して得られる撮影信号に基づいて前記光源を駆動し、第1の波長の光と第2の波長の光とを選択的に光変形シートに照射する制御手段とを備えたことを特徴とするカメラ。
【請求項6】
補正レンズ及びこの補正レンズを光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構を有するレンズ装置と、結像状態を最良とする光軸に直交する方向、または光軸に直交する方向を軸とした回動方向での補正レンズの位置を示す補正レンズ情報を記憶した記憶手段と、前記移動機構を駆動し、前記記憶手段から読み出した補正レンズ情報に示される位置に前記補正レンズを移動させる制御手段とを備えたことを特徴とするカメラ。
【請求項7】
前記レンズ装置は、ズームタイプのものであり、前記記憶手段は、撮影レンズの焦点距離毎に結像状態を最良とする補正レンズ情報を記憶しており、前記制御手段は、撮影レンズに応じた補正レンズ情報に示される位置に前記補正レンズを移動させることを特徴とする請求項6記載のカメラ。
【請求項8】
補正レンズ及びこの補正レンズの光軸に直交する方向を軸とした回動方向に移動させる移動機構を有するレンズ装置の調整方法において、
レンズ装置の光軸に対して垂直に配された所定パターンが描かれた平面板を、前記レンズ装置を通して撮影装置で撮影しながら、レンズ装置のフォーカスレンズを移動させて、ピントが合致するフォーカスレンズの移動位置を撮影画面を複数に分割した各領域のそれぞれについて測定し、この測定で得られる各フォーカスレンズの移動位置の相対的なズレ量に基づいて、補正レンズの光軸に直交する方向を軸とした回動方向における前記補正レンズの位置を決定することレンズ装置の調整方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−91738(P2006−91738A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280170(P2004−280170)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】