説明

レンズ鏡胴及び撮像装置

【課題】屈曲光学系と、その像面に配置された撮像素子とを有し、該撮像素子を移動させて手振れ補正を行う、小型のレンズ鏡胴を提供する。
【解決手段】被写体光を導く複数のレンズを有する撮像光学系と、被写体光を光電変換する撮像素子と、撮像光学系に入射する入射光軸を折り曲げるための物体側から数えて第1番目の反射部材と、最も像面側に配置された第n番目の反射部材と、を有し、第(n−1)番目の反射部材は、入射光軸に対し垂直な面内の方向に折り曲げるよう配置され、第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸は、入射光軸と平行な方向であり、撮像素子を第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸に垂直な面内で移動させて手振れ補正を行うレンズ鏡胴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系内に反射部材を有し、光軸を屈曲させた撮像光学系を有するレンズ鏡胴及び該レンズ鏡胴を備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学系中に反射面を配置し、光軸を折り曲げた所謂屈曲光学系が実用化されており、撮像素子を用いた所謂デジタルカメラに搭載されている。このような屈曲光学系を備えた撮像装置として、標準姿勢の撮像装置を被写体側から見たときに、左右方向の略全幅にわたって配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、撮影時の手振れによる光軸のズレを補正して鮮明な画像を得る手振れ補正技術が実用化されている。この手振れ補正技術には、撮像光学系の一部を移動させるタイプと、撮像光学系全体を移動させるタイプと、撮像素子を移動させるタイプの3種が知られている。
【0004】
撮像素子を移動させて手振れ補正をおこなうものとして、撮像素子に一方の端部が接続され撮像素子と共に移動するフレキシブルプリント基板側に他の電気部品を配設した撮像装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、屈曲光学系の像面に配置された撮像素子を移動させ、手振れ補正をおこなうものも知られている。
【特許文献1】特開2004−219516号公報
【特許文献2】特開2003−110929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の屈曲光学系を搭載した撮像装置は、変倍してもレンズ鏡胴が突出せず、撮像装置の外形が変化せず薄型にできるという利点を有しているが、より小型化の要望は、留まることがない。
【0007】
このような要望に対し、屈曲光学系の像面に配置された撮像素子を移動させて手振れ補正をおこなうものの場合、撮像素子を移動させるためのアクチュエータ及び移動機構を撮像素子の背面に配置するとレンズ鏡胴を細くできるが、アクチュエータ及び移動機構の厚み分だけ、長さが長くなってしまう問題がある。一方、撮像素子を移動させるアクチュエータを撮像素子の側面に配置するとレンズ鏡胴が太くなってしまうという問題となる。
【0008】
本発明は上記問題に鑑み、屈曲光学系と、その像面に配置された撮像素子とを有し、該撮像素子を移動させて手振れ補正を行う、小型のレンズ鏡胴を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記に記載する発明により達成される。
【0010】
1.被写体光を導く複数のレンズを有する撮像光学系と、該撮像光学系に導かれた被写体光を光電変換する撮像素子と、前記撮像光学系に入射する入射光軸を折り曲げるための物体側から数えて第1番目の反射部材と、最も像面側に配置された第n番目の反射部材と、を有し、第(n−1)番目の反射部材は、前記入射光軸に対し垂直な面内の方向に折り曲げるよう配置され、前記第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸は、前記入射光軸と平行な方向であり、前記撮像素子を前記第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸に垂直な面内で移動させて手振れ補正を行うことを特徴とするレンズ鏡胴。
【0011】
2.前記撮像素子を第(n−1)番目の反射部材による折り曲げ後の光軸よりも被写体側に配置したことを特徴とする1に記載のレンズ鏡胴。
【0012】
3.前記第n番目の反射部材と前記撮像素子を、第(n−1)番目の反射部材による折り曲げ後の光軸と平行な方向に移動させて焦点調節を行うことを特徴とする1又は2に記載のレンズ鏡胴。
【0013】
4.前記焦点調節は、前記手振れ補正に用いるアクチュエータを用いておこなうことを特徴とする1〜3のいずれかに記載のレンズ鏡胴。
【0014】
5.前記アクチュエータを前記撮像素子の側面に配置したことを特徴とする1〜4のいずれかに記載のレンズ鏡胴。
【0015】
6.前記撮像光学系は、物体側から順に負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを有することを特徴とする4又は5に記載のレンズ鏡胴。
【0016】
7.前記撮像光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に直線的に移動する負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍時に直線的に移動する正の屈折力を有する第4レンズ群とを有することを特徴とする4又は5に記載のレンズ鏡胴。
【0017】
8.1〜7のいずれかに記載のレンズ鏡胴を備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、屈曲光学系と、その像面に配置された撮像素子とを有し、該撮像素子を移動させて手振れ補正を行う、小型のレンズ鏡胴を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施の形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る撮像装置100の主要構成ユニットの内部配置の一例を示す図である。同図は、撮像装置100を被写体側から見た斜視図である。
【0021】
同図に示すように、撮像装置100は、変倍可能な屈曲撮像光学系を内包したレンズ鏡胴50が図示の如く配置され、開口部51より被写体光束を取り込むよう配置されている。この開口部51には、開口部51を露呈する開状態と開口部51を覆う閉状態とする不図示のレンズバリアが設けられている。
【0022】
52はフラッシュ発光窓であり、53はフラッシュ発光窓の後方に配置された反射傘、キセノン管、その他メインコンデンサ、回路基板等で構成されるフラッシュユニットである。54はカード型の画像記録用メモリである。55は電池であり、本撮像装置の各部へ電源を供給する。画像記録用メモリ54及び電池55は、図示しない蓋部から挿脱が可能となっている。
【0023】
撮像装置100の上面には、レリーズ釦56が配置され、その1段目の押し込み(スイッチS1のONと称す)により撮影準備動作、即ち焦点合わせ動作や測光動作が行われ、その2段目の押し込み(スイッチS2のONと称す)により撮影露光動作が行われる。57はメインスイッチであり、撮像装置を動作状態と非動作状態に切り替えるスイッチである。メインスイッチ57により動作状態に切り替えられると、不図示のレンズバリアは、開状態にされると共に、各部の動作が開始される。また、メインスイッチ57により非動作状態に切り替えられると、不図示のレンズバリアは、閉状態にされると共に、各部の動作を終了させる。
【0024】
撮像装置100の背面には、LCDや有機EL等で構成され、画像やその他文字情報等を表示する画像表示部58が配置されている。また、図示していないが、ズームアップ、ズームダウンを行うズーム釦、撮影した画像を再生する再生釦、画像表示部58上に各種のメニューを表示させるメニュー釦、表示から所望の機能を選択する選択釦等の操作部材が配置されている。
【0025】
また、不図示であるが、これら主要構成ユニットの間には、各部を接続すると共に、各種電子部品が搭載された回路基板が配置され、各主要構成ユニットの駆動及び制御を行うようになっている。同様に、不図示であるが、外部入出力端子、ストラップ取り付け部、三脚座等を備えている。
【0026】
なお、図1に示す撮像装置は、被写体側からみて、矩形状の外形の短辺方向にレンズ鏡胴50を配置したものであるが、矩形状の外形の長辺方向にレンズ鏡胴50を配置したものであってもよい。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る撮像装置100の概要を示すブロック図である。
【0028】
同図に示すように、レンズ鏡胴50内の撮像光学系40は、第1モータ20により所定のレンズ群が移動させられ変倍を行う。更に、レンズ鏡胴50内には、図1に示すヨー方向及びピッチ方向の像移動を打ち消す方向に、撮像素子6を移動させる2つのアクチュエータ61が設けられている。撮像素子6の移動は、第1の駆動アクチュエータ61Pと第2の駆動アクチュエータ61Yにより行われる。
【0029】
また、アクチュエータ61による撮像素子6の移動位置を検出するセンサ62が設けられており、ピッチ方向の位置はピッチ方向位置センサ62P、ヨー方向の位置はヨー方向位置センサ62Yにより行われる。
【0030】
アクチュエータ61は、制御部30により制御されたドライバ63により駆動される。また、第1モータ20も制御部30により制御されたドライバ22により駆動される。
【0031】
揺れを検知する揺れ検出センサ64は、レンズ鏡胴50の揺れを検出する。具体的には、揺れ検出センサ64Pは、ピッチ方向の角速度(詳細には、慣性角速度(対地角速度))を検出し、揺れ検出センサ64Yは、ヨー方向の角速度を検出する。
【0032】
揺れ検出センサ64P、64Yからの信号は、揺れ検出回路65で増幅され且つフィルタリング処理が施され、「揺れ」を示す信号として検出され、例えばマイクロコンピュータで構成される制御部30に入力されるようになっている。
【0033】
制御部30では、不図示のRAMをワークエリアとして、ROM81に記憶された所定のソフトウェアプログラムが実行されて、各部の機能が実行される。例えば、制御出力部35は、揺れ検出回路65からの信号に基づいてピッチ方向及びヨー方向における現在角度を求め、この現在角度と目標角度との差を少なくするようなサーボ制御系の出力値を求める。即ち、揺れ検出回路65により検出された揺れを抑制するように撮像素子6を面内変位駆動するための制御指令値を生成する。制御出力部35は、生成した制御指令値をドライバ63に出力する。
【0034】
ドライバ63は、制御指令値に基づいて第1の駆動アクチュエータ61P及び第2の駆動アクチュエータ61Yを駆動する。これにより、撮像素子6は面内変位し、手振れが補正される。ピッチ方向位置センサ62Pとヨー方向位置センサ62Yは、アクチュエータ61により面内変位駆動される撮像素子6の位置を検出し、撮像素子6の変位駆動をフィードバック制御するためのセンサである。
【0035】
EEPROM82には、撮像光学系40の変倍時のズームポジション等の個体データに加え、手振れ補正の制御に関わる調整データが記憶される記憶手段である。
【0036】
また、撮像装置100には、撮像素子6により得られた画像を扱う処理部として信号処理部71、A/D変換部72、画像処理部73、及び画像メモリ74が設けられている。撮像素子6により取得されたアナログ信号の画像は信号処理部71を介してA/D変換部72でA/D変換され画像処理部73により所定の画像処理がなされた後、画像メモリ74に一時的に格納される。画像メモリ74に格納された画像は、記録用画像としてメモリカード54に記録されたり、所望の処理を行ってライブビュー表示用画像として画像表示部58に表示される。
【0037】
制御部30には、十字キーボタン、ズーム操作ボタン、モード選択ダイアル、モード設定ボタン群等の操作スイッチ群150が接続され、使用者の操作により撮像装置100が該操作に基づき動作するようになっている。
【0038】
以下、本実施の形態に係るレンズ鏡胴50及びその動作を詳しく説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴50の一例を示す概略図である。同図(a)はレンズ鏡胴50の断面図であり、同図(b)は変倍時の各レンズ群のW(広角端)からT(望遠端)の間での移動線図である。
【0040】
同図に示す、1は負の屈折力を有する第1レンズ群であり、第1レンズ群1は、光軸をOAとし被写体に向けて配置されたレンズ11と光軸OAを略直角方向に折り曲げる反射部材であるプリズム12と、プリズム12により折り曲げられた光軸OBを光軸として配置されたレンズ13により構成されている。この第1レンズ群1、主胴10に固定されたレンズ群である。
【0041】
2は正の屈折力を有する第2レンズ群であり、第2レンズ群鏡枠2kに組み込まれている。Sは絞り及びシャッタの少なくとも一方を有した、絞りシャッタユニットである。第2レンズ群2及び絞りシャッタユニットSは、同図(b)に示すように、変倍(以下、ズーミングとも言う)時に第2レンズ群鏡枠2kと共に、一体的に移動する。
【0042】
第2レンズ群2は、広角端時には第1レンズ群1と大きく離間した位置にあり、長焦点側への変倍に伴って、第1レンズ群1に接近する方向に移動する。この第2レンズ群2の移動は、例えばステッピングモータ等により行われる。
【0043】
3は正の屈折力を有する第3レンズ群であり、主胴10に固定されている。この第3レンズ群3は、移動しないレンズ群である。
【0044】
5は反射部材であるプリズムであり、プリズム5は斜面に反射面が施され、プリズムホルダ5hに組み込まれている。
【0045】
6は赤外光カットフィルタやオプティカルローパスフィルタを積層した光学フィルタである。7は撮像素子であり、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等が用いられる。光学フィルタ6及び撮像素子7は、プリズム5による折り曲げ後の光軸OC上に配置されている。
【0046】
プリズム5による折り曲げ後の光軸OCは、第1レンズ群1内に配置された反射部材であるプリズム12による折り曲げ前の光軸OAと平行な方向である。
【0047】
光学フィルタ6及び撮像素子7は、図示の如く光軸OBよりも被写体側に配置され、手振れ補正機構60に組み付けられており、光学フィルタ6及び撮像素子7は、光軸OCに直交する面内で一体的に移動して手振れ補正を行うようになっている。
【0048】
また、プリズムホルダ5hには、ソレノイド8が設けられ、ソレノイド8により駆動されるプランジャー8pにより、手振れ補正機構60を構成する一部の部材とプリズムホルダ5hを係合させたり、係合を解除することができるようになっている。同図(a)に示す例においては、ソレノイド8に通電がなされない場合は、付勢部材である引っ張りコイルバネ9により、プランジャー8pは手振れ補正機構60を構成する一部の部材に係合する方向に付勢されている。ソレノイド8に通電がなされた場合には、引っ張りコイルバネ9の付勢力に抗してプランジャー8pは図示右方向に移動して係合が解除されるようになっている。
【0049】
図4は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴50のプリズムホルダ5h及び手振れ補正機構60周辺を示す斜視図である。なお、以下の図においては、説明の重複を避けるため、同機能部材には同符号を付与して説明する。
【0050】
同図に示す手振れ補正機構60は、光学フィルタ6及び撮像素子7を一体的に保持する撮像素子保持ケース66と、撮像素子保持ケース66を光軸OBと平行な方向に移動させる第1の駆動アクチュエータ61Pを保持する移動板67と、移動板67と撮像素子保持ケース66を光軸OC、OBに直交する方向に移動させる第2の駆動アクチュエータ61Yを保持する固定板68で構成されている。固定板68は、主胴10に固定されている。
【0051】
同図に示す第1の駆動アクチュエータ61P、第2の駆動アクチュエータ61Yは圧電素子を積層したものである。
【0052】
第1の駆動アクチュエータ61Pは、一方の端部を錘61wを介して移動板67に固着されると共に、他方の端部にはシャフト61sが固着されている。シャフト61sは撮像素子保持ケース66に形成された係合部66fと摩擦係合している。第1の駆動アクチュエータ61Pへの電圧印加の勾配を制御することで圧電素子の伸び方向と縮み方向での速度を変化させ、シャフト61sと摩擦係合している撮像素子保持ケース66を、光軸OBに平行な方向に移動させるようになっている。
【0053】
同様に、第2の駆動アクチュエータ61Yは、一方の端部を錘61wを介して固定板68に固着されると共に、他方の端部にはシャフト61sが固着されている。シャフト61sは移動板67に形成された係合部67fと摩擦係合している。第2の駆動アクチュエータ61Yへの電圧印加の勾配を制御することで圧電素子の伸び方向と縮み方向での速度を変化させ、シャフト61sと摩擦係合している移動板67を、光軸OC、OBに直交する方向に移動させるようになっている。
【0054】
一方、プリズムホルダ5hに設けられたソレノイド8のプランジャー8pは、無給電状態では引っ張りコイルバネ9の付勢力により、撮像素子保持ケース66に形成された長溝66hと係合している。また、プリズムホルダ5hに形成された突起部5pは不図示の主胴に形成された光軸OBに平行なガイド溝と係合されている。この係合した状態で、第1の駆動アクチュエータ61Pを駆動すると、撮像素子保持ケース66及びプリズムホルダ5hを一体的に光軸OB方向に移動させることができる。即ち、プリズムホルダ5hと撮像素子保持ケース66を係合させ、第1の駆動アクチュエータ61Pを駆動することより、焦点調節を行うことができる。
【0055】
また、ソレノイド8に給電し、引っ張りコイルバネ9の付勢力に抗してプランジャー8pを移動させ、プリズムホルダ5hと撮像素子保持ケース66の係合を解除し、第1の駆動アクチュエータ61P、第2の駆動アクチュエータ61Yを駆動することにより、光軸OCに直交する面内で撮像素子7及び光学フィルタ6を一体的に移動させることで手振れ補正を行うことができる。
【0056】
図5は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴50を備えた撮像装置の動作の一例を示すフローチャートである。本実施の形態に係るレンズ鏡胴50の動作は撮影モード時に関わるものであるため、撮影モード時のみを示している。以下、フローに従い説明する。
【0057】
まず、撮影モードであるか否か判断する(ステップS101)。撮影モードである場合(ステップS101;Yes)には、レリーズ釦の1段目の押し込みである、スイッチS1のONを待機する(ステップS102)。スイッチS1がONされない状態(ステップS102;No)では、ステップS101とステップS102でループを構成し、スイッチS1がONされる(ステップS102;Yes)と、撮影準備動作を行う(ステップS103)。
【0058】
撮影準備動作とは、画像記録を行う撮影時の露光条件の決定(AE)と自動焦点調節(AF)である。本実施の形態におけるAFは、上述のように、反射部材であるプリズムを保持するプリズムホルダと撮像素子保持ケースとをプランジャーで係合させた状態で、手振れ補正に用いる第1の駆動アクチュエータを駆動し、フォーカシング(焦点調節)を行う。合焦位置の検出は、撮像素子出力を用いた公知の山登り法等が用いられる。
【0059】
撮影準備動作が終了すると、再度スイッチS1がONされているか判断する(ステップS104)。スイッチS1がONされていない場合(ステップS104;No)はステップS102に戻る。スイッチS1がONされている場合(ステップS104;Yes)は、レリーズ釦の2段目の押し込みである、スイッチS2のONを待機する(ステップS105)。
【0060】
スイッチS2がONされる(ステップS105;Yes)と、ソレノイドを駆動し、プランジャーを移動させ、反射部材であるプリズムを保持するプリズムホルダと撮像素子保持ケースとの係合を解除する(ステップS106)。この後、撮影露光を開始する(ステップS107)。撮影露光の開始と同時もしくは開始直前より、第1の駆動アクチュエータ、第2の駆動アクチュエータを駆動し、光軸OCに直交する面内で撮像素子及び光学フィルタを一体的に移動させて、手振れ補正動作を行う(ステップS108)。ステップS103で決定された露光時間が経過すると撮影露光を終了させる(ステップS109)。この後、撮像素子出力に所定の処理を施した後、記録媒体である例えばメモリカードに画像を記録してステップS101に戻る。
【0061】
なお、ステップS101において、使用者が操作スイッチ群150(図2参照)を用いて、他のモードを指定した場合(ステップS101;No)には、他の指定されたモードへ移行する(ステップS120)。
【0062】
以上が、本実施の形態に係るレンズ鏡胴を備えた撮像装置の動作である。
【0063】
即ち、変倍時には、プリズムホルダ5hと撮像素子保持ケース66を係合させて、手振れ補正に用いる第1の駆動アクチュエータ61Pを用いてプリズム5、光学フィルタ6、撮像素子7を、図3(b)、図6(b)に示すPの実線で示す無限遠に合焦する位置に移動させ、更に、撮影前には、同様に、図3(b)、図6(b)に示すPの実線と破線で示す最至近距離との間を移動させることで、従来用いていた焦点調節の為のアクチュエータを設けることなく、被写体に対し焦点調節を行うことが可能となる。
【0064】
また、撮影時には、プランジャー8pを移動させてプリズムホルダ5hと撮像素子保持ケース66との係合を解除し、第1の駆動アクチュエータ61P、第2の駆動アクチュエータ61Yにより、光学フィルタ6と撮像素子7を光軸OCに直交する面内で移動させることで、手振れ補正を行わせることができる。
【0065】
これにより、アクチュエータの削減ができ、薄型、小型で低コストのレンズ鏡胴を提供することが可能となる。
【0066】
また、上記の実施の形態では、プリズム12が物体側の第1番目の反射部材に相当し、プリズム5が第n番目の反射部材に相当する。またプリズム5による折り曲げ後の光軸OCは、入射光軸OAと平行な方向とし、撮像素子7をプリズム12による折り曲げ後の光軸OBよりも被写体側に配置し、アクチュエータを撮像素子の側面に配置することで、撮像素子を移動させて手振れ補正をおこなう場合、最も被写体側のレンズ(図示ではレンズ11)がレンズ鏡胴より突出している場合に、より厚みの薄い、長さの短いレンズ鏡胴を得ることができる。
【0067】
図6は、本実施の形態に係るレンズ鏡胴50の他の例を示す概略図である。同図(a)はレンズ鏡胴50の断面図であり、同図(b)は変倍時の各レンズ群のW(広角端)からT(望遠端)の間での移動線図である。
【0068】
同図に示すレンズ鏡胴50は、撮像光学系が正の屈折力を有する第1レンズ群1と、負の屈折力を有する第2レンズ群2と、正の屈折力を有する第3レンズ群3と、正の屈折力を有する第4レンズ群4で構成され、第4レンズ群4の後方に図4に示す機構を配置したものである。
【0069】
第2レンズ群2と第4レンズ群4は、同図(b)に示すように、広角端時には第3レンズ群3と離間した位置にあり、長焦点側への変倍に伴って、第3レンズ群3に接近する方向に直線的に移動する。この第2レンズ群2及び第4レンズ群4の直線的な移動は、1個のステッピングモータにより回転させられる、それぞれ異なるリードを有するスクリューを用いることで行うことができる。
【0070】
プリズムホルダ5h及び手振れ補正機構60周辺については、図4で説明したものと同様である。
【0071】
図7は、プリズムホルダ5h及び手振れ補正機構60周辺のその他の例を示す斜視図である。同図については、図4に示した機構と異なる部分に付いてのみ説明する。
【0072】
同図に示す手振れ補正機構60は、第1の駆動アクチュエータ61P、第2の駆動アクチュエータ61Yをステッピングモータとしたものである。
【0073】
第1の駆動アクチュエータ61Pであるステッピングモータにより回転させられるリードスクリュー61rは、撮像素子保持ケース66に形成された螺合部66nと螺合している。第1の駆動アクチュエータ61Pであるステッピングモータの回転方向及び回転量を制御することで、螺合している撮像素子保持ケース66を、光軸OBに平行な方向に移動させる。
【0074】
第2の駆動アクチュエータ61Yであるステッピングモータにより回転させられるリードスクリュー61rは、移動板67に形成された螺合部67nと螺合している。第2の駆動アクチュエータ61Yであるステッピングモータの回転方向及び回転量を制御することで、螺合している移動板67を、光軸OC、OBに直交する方向に移動させるようになっている。
【0075】
このように、第1の駆動アクチュエータ61P、第2の駆動アクチュエータ61Yをステッピングモータとしても、上述の圧電素子を用いた場合と同様の動作及び効果を得ることができる。
【0076】
なお、上記の実施の形態では、光軸を折り曲げる反射部材が2箇所に配置された例で説明したが、これに限るものでなく、3箇所に配置されたものであってもよい。
【0077】
図8は、3箇所に反射部材が配置されたレンズ鏡胴50を模式的に示す斜視図である。
【0078】
同図に示すように、入射光軸OAを折り曲げる反射面A、反射面Aによる折り曲げ後の光軸を更に入射光軸に対し垂直な面内の方向に折り曲げる反射面B、反射面Bによる折り曲げ後の光軸を、反射面Cにより折り曲げて入射光軸OAと平行な方向ODとし、撮像素子7を反射面Cによる折り曲げ後の光軸上に配置すればよく、これにより上記の効果を得ることができる。
【0079】
即ち、撮像光学系内に反射部材がn箇所に配置された場合は、物体側から数えて第1番目の反射部材から最も像面側の第n番目までの反射部材のうち、第(n−1)番目の反射部材を、入射光軸に対し垂直な面内の方向に折り曲げるよう配置し、第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸が入射光軸と平行な方向とされていればよい。
【0080】
また、プリズムホルダ5hと撮像素子保持ケース66との係合に、ソレノイドにより駆動されるプランジャーで係合させる例で説明したが、係合及び解除のできる機構であればこれに限るものでない。
【0081】
また、図3、図6で示したレンズ鏡胴の断面においては、撮像素子を第(n−1)番目の反射部材による折り曲げ後の光軸よりも被写体側に配置した例で説明したが、第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸を、入射光軸に平行で被写体と対向する方向に折り曲げ、撮像素子の撮像面を被写体に対向するよう配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施の形態に係る撮像装置の主要構成ユニットの内部配置の一例を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る撮像装置の概要を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の一例を示す概略図である。
【図4】本実施の形態に係るレンズ鏡胴のプリズムホルダ及び手振れ補正機構周辺を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態に係るレンズ鏡胴を備えた撮像装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態に係るレンズ鏡胴の他の例を示す概略図である。
【図7】プリズムホルダ及び手振れ補正機構周辺のその他の例を示す斜視図である。
【図8】3箇所に反射部材が配置されたレンズ鏡胴を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
1 第1レンズ群
2 第2レンズ群
3 第3レンズ群
4 第4レンズ群
5 プリズム
5h プリズムホルダ
6 光学フィルタ
7 撮像素子
8 ソレノイド
8p プランジャー
9 引っ張りコイルバネ
10 主胴
50 レンズ鏡胴
60 手振れ補正機構
61P 第1の駆動アクチュエータ
61Y 第2の駆動アクチュエータ
66 撮像素子保持ケース
67 移動板
68 固定板
100 撮像装置
OA、OB、OC 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を導く複数のレンズを有する撮像光学系と、該撮像光学系に導かれた被写体光を光電変換する撮像素子と、前記撮像光学系に入射する入射光軸を折り曲げるための物体側から数えて第1番目の反射部材と、最も像面側に配置された第n番目の反射部材と、を有し、
第(n−1)番目の反射部材は、前記入射光軸に対し垂直な面内の方向に折り曲げるよう配置され、前記第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸は、前記入射光軸と平行な方向であり、前記撮像素子を前記第n番目の反射部材による折り曲げ後の光軸に垂直な面内で移動させて手振れ補正を行うことを特徴とするレンズ鏡胴。
【請求項2】
前記撮像素子を第(n−1)番目の反射部材による折り曲げ後の光軸よりも被写体側に配置したことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡胴。
【請求項3】
前記第n番目の反射部材と前記撮像素子を、第(n−1)番目の反射部材による折り曲げ後の光軸と平行な方向に移動させて焦点調節を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ鏡胴。
【請求項4】
前記焦点調節は、前記手振れ補正に用いるアクチュエータを用いておこなうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項5】
前記アクチュエータを前記撮像素子の側面に配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴。
【請求項6】
前記撮像光学系は、物体側から順に負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群とを有することを特徴とする請求項4又は5に記載のレンズ鏡胴。
【請求項7】
前記撮像光学系は、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍時に直線的に移動する負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍時に直線的に移動する正の屈折力を有する第4レンズ群とを有することを特徴とする請求項4又は5に記載のレンズ鏡胴。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−268700(P2008−268700A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113935(P2007−113935)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】