説明

レーザスキャナ及び動体検知方法

【課題】3次元データ内への動体の測定データの混入防止を自動で行うことで、作業効率の向上を図るレーザスキャナ及び動体検知方法を提供する。
【解決手段】投光光軸34に沿って測距光40を射出する投光光学系33と、測距光40を偏向し測定エリアに照射する偏向光学部材と、偏向光学部材を高低方向に回転させる高低角駆動部と、偏向光学部材を水平方向に回転させる水平角駆動部と、測距光40の反射光に基づき測定を行い測定エリアの距離データを求める測距部4と、測定エリアを含む画像データを連続して取得可能な第2の撮像部6と、制御部7とを具備し、制御部7は画像データと距離データとに基づき3次元画像を取得する第1の画像処理部と、時間的に隣接する画像データの比較により動体を検知する第2の画像処理部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距光を測定対象物に照射して、測定対象物からの反射光を受光して測定対象物迄の距離を測定し、更に測定時の測距光の照射方向を検出することで、測定対象物の3次元データを取得するレーザスキャナ及び動体検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物や道路等の測定対象物に向けて赤外光等のパルスレーザビームを照射・走査し、測定対象物からの反射光に基づき測距を行い、その測距値と照射角度から測定対象物の3次元測定を行い、点群データを得る、所謂レーザスキャナといわれる3次元測定装置が知られている。
【0003】
該レーザスキャナは、測距値とパルスビームの照射角度とから計算される3次元の点群データを得る。又、レーザスキャナとして点群データの取得に先んじて測定対象物の画像データを取得し、この画像データと点群データとを関連付け、画像付きの3次元データを得るものがある。
【0004】
然し乍ら、レーザスキャナを用いて建物や道路等を測定する場合、歩行者や自動車等の動体が測定エリアに存在すると、動体についても測定され、3次元座標データ内に動体の測定データがノイズとして混入する。この為、従来はレーザスキャナの操作者が測定エリアと前記動体の位置とを常時監視し、動体が測定エリアに入った場合にはスキャンの一時停止と再開を手動で行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−76303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる実情に鑑み、3次元データ内への動体の測定データの混入防止を自動で行うことで、作業効率の向上を図るレーザスキャナ及び動体検知方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、投光光軸に沿って測距光を射出する投光光学系と、前記測距光を偏向し測定エリアに照射する偏向光学部材と、該偏向光学部材を高低方向に回転させる高低角駆動部と、前記偏向光学部材を水平方向に回転させる水平角駆動部と、前記測距光の反射光に基づき測定を行い前記測定エリアの距離データを求める測距部と、測定エリアを含む画像データを連続して取得可能な第2の撮像部と、制御部とを具備し、該制御部は画像データと前記距離データとに基づき3次元画像を取得する第1の画像処理部と、時間的に隣接する画像データの比較により動体を検知する第2の画像処理部とを有するレーザスキャナに係るものである。
【0008】
又本発明は、前記制御部は、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に検知された動体の測定を制限する様前記測距部を制御するレーザスキャナに係り、又前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部に前記測定エリアの測定を一時停止させ、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に動体が存在しないことを確認した後に測定を再開させるレーザスキャナに係り、又前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記第2の画像処理部により動体が検知されなかった箇所から前記測定エリア内の測定を行う様、前記測距部に測定の順番を変更させるレーザスキャナに係り、又前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部により測定された動体の距離データを破棄し、破棄した箇所から再度前記測定エリア内の測定を再開させるレーザスキャナに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記偏向光学部材を介して撮像を行う第1の撮像部を更に具備し、前記第2の撮像部により撮像された画像を基に、前記第1の撮像部がパノラマ画像を取得するレーザスキャナに係り、又前記第2の撮像部は前記偏向光学部材と一体に水平回転する様配設され、該偏向光学部材より照射される測距光の水平回転と連動するレーザスキャナに係り、又前記第2の撮像部は固定部に配設され、前記偏向光学部材より照射される測距光は前記第2の撮像部に対して相対的に回転するレーザスキャナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記第2の撮像部は周方向に複数設けられたレーザスキャナに係り、又前記投光光学系は測距光の光束を平行に射出するレーザスキャナに係り、又前記投光光学系は、前記測定エリア迄の測定距離に応じて測距光の光束径を最小化する為のズームビームエキスパンダを有するレーザスキャナに係るものである。
【0011】
又本発明は、測定エリアを設定する工程と、投光光学系から射出された測距光の反射光に基づき測距部が測定を行い前記測定エリアの距離データを求める工程と、距離データを求める工程と並行して第2の撮像部が前記測定エリアを連続して撮像して画像データを取得し、時間的に隣接する画像データ間の差分の抽出により動体を検知する工程とを具備する動体検知方法に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記測定エリアは、偏向光学部材を介して第1の撮像部により撮像された画像データを基に設定される動体検知方法に係り、又前記測定エリアは、照星照門により複数点を視準し、それぞれの視準方向を設定することで設定される動体検知方法に係り、更に又前記測定エリアは、前記第2の撮像部により撮像された画像データを基に設定される動体検知方法に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、投光光軸に沿って測距光を射出する投光光学系と、前記測距光を偏向し測定エリアに照射する偏向光学部材と、該偏向光学部材を高低方向に回転させる高低角駆動部と、前記偏向光学部材を水平方向に回転させる水平角駆動部と、前記測距光の反射光に基づき測定を行い前記測定エリアの距離データを求める測距部と、測定エリアを含む画像データを連続して取得可能な第2の撮像部と、制御部とを具備し、該制御部は画像データと前記距離データとに基づき3次元画像を取得する第1の画像処理部と、時間的に隣接する画像データの比較により動体を検知する第2の画像処理部とを有するので、前記測定エリア内の動体を自動で検知でき、作業者が前記測定エリアを視認し、動体を検知した際に手動で測定の停止、再開を行う必要がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
又本発明によれば、前記制御部は、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に検知された動体の測定を制限する様前記測距部を制御するので、前記距離データに動体の距離データが混入するのを防止することができる。
【0015】
又本発明によれば、前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部に前記測定エリアの測定を一時停止させ、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に動体が存在しないことを確認した後に測定を再開させるので、前記測距部が前記動体の距離データを取得することがない。
【0016】
又本発明によれば、前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記第2の画像処理部により動体が検知されなかった箇所から前記測定エリア内の測定を行う様、前記測距部に測定の順番を変更させるので、前記測定エリアの測定時間を短縮できる。
【0017】
又本発明によれば、前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部により測定された動体の距離データを破棄し、破棄した箇所から再度前記測定エリア内の測定を再開させるので、動体の距離データが取得された場合でも前記第1の画像処理部によって処理される3次元画像に動体の距離データが反映されることがない。
【0018】
又本発明によれば、前記偏向光学部材を介して撮像を行う第1の撮像部を更に具備し、前記第2の撮像部により撮像された画像を基に、前記第1の撮像部がパノラマ画像を取得するので、作業者が手動にて該パノラマ画像を取得する必要がなく、作業効率を向上させることができる。
【0019】
又本発明によれば、前記第2の撮像部は前記偏向光学部材と一体に水平回転する様配設され、該偏向光学部材より照射される測距光の水平回転と連動するので、前記測定エリアが広範囲であり、前記撮像部の撮像範囲を越える場合であっても容易に画像データを取得できる。
【0020】
又本発明によれば、前記第2の撮像部は固定部に配設され、前記偏向光学部材より照射される測距光は前記第2の撮像部に対して相対的に回転するので、動体を検知する際に前記撮像部自身の水平移動速度を考慮する必要がなく、前記測定エリア内の動体検知が容易となる。
【0021】
更に又本発明によれば、測定エリアを設定する工程と、投光光学系から射出された測距光の反射光に基づき測距部が測定を行い前記測定エリアの距離データを求める工程と、距離データを求める工程と並行して第2の撮像部が前記測定エリアを連続して撮像して画像データを取得し、時間的に隣接する画像データ間の差分の抽出により動体を検知する工程とを具備するので、前記測定エリアの測定に対してリアルタイムの動体の有無を反映でき、取得する距離データ内に動体を測定することによるノイズデータの混入を防止することができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナの断面図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る一部を回転したレーザスキャナの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るレーザスキャナの構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施例に於けるデータ取得を示す説明図である。
【図5】(A)(B)は第1の実施例に於けるデータ取得を示す説明図であり、(A)は測定エリアの高さが低く設定された状態、(B)は測定エリアの高さが高く設定された状態を示している。
【図6】第1の実施例に於けるデータ取得を示す説明図である。
【図7】(A)(B)(C)は第1の実施例に於ける動体の検知を説明する説明図であり、(A)は前回取得された第2画像データを示し、(B)は新規に取得された第2画像データを示し、(C)は(A)と(B)との比較により動体が検出された状態を示している。
【図8】(A)(B)(C)は第1の実施例に於ける動体の回避方法を示す説明図であり、(A)は前回取得された第2画像データを示し、(B)は新規に取得された第2画像データを示し、(C)は次回取得される第2画像データを示している。
【図9】(A)(B)(C)は第1の実施例に於ける動体の回避方法を示す説明図であり、(A)は測定エリア内に動体が検知された状態を示し、(B)は動体の検知により測定の順番を変更した状態を示し、(C)は測定を停止した状態を示している。
【図10】(A)(B)(C)(D)は第1の実施例に於ける動体の回避方法を示す説明図であり、(A)は測定エリアの通常測定状態を示し、(B)はスキャンライン上に突然動体が出現した状態を示し、(C)は動体がスキャンされた状態を示し、(D)は動体をスキャンしたエリアを破棄する状態を示している。
【図11】第1の実施例に於ける動体の検知及び回避の流れを示すフローチャートである。
【図12】(A)(B)(C)(D)は参照画像データの作製方法の一例を示す説明図であり、(A)は複数回撮像された第1画像データの内の1枚を示し、(B)は複数回撮像された第1画像データの内の1枚を示し、(C)は複数回撮像された第1画像データの内の1枚を示し、(D)は(A)〜(C)の差分により動体を削除した第1画像データを示している。
【図13】本発明の第2の実施例に係るレーザスキャナの断面図である。
【図14】本発明の第2の実施例に係る一部を回転したレーザスキャナの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0024】
先ず、本発明が実施されるレーザスキャナについて説明する。
【0025】
図1〜図3は第1の実施例に係るレーザスキャナを示している。
【0026】
レーザスキャナ1は主に、整準部2、該整準部2に設置された回転機構部3、該回転機構部3に支持され、測距部4、第1撮像部5、第2撮像部6、制御部7等を含む測定装置本体部8、該測定装置本体部8の上部に設けられた回転照射部9から構成されている。尚、図2は便宜上、図1に対して前記回転照射部9のみ側方から見た状態を示している。
【0027】
前記整準部2について説明する。
【0028】
台盤11にピン12が立設され、該ピン12の上端は曲面に形成され、下部ケーシング13の底面に形成された凹部に傾動自在に嵌合している。又、前記底面の他の2カ所には、調整螺子14が螺合貫通しており、該調整螺子14の下端部には脚部材15が固着されており、該脚部材15の下端は、尖端又は曲面に形成され、前記台盤11に当接している。前記調整螺子14の上端には整準従動ギア16が嵌着されている。前記下部ケーシング13は前記ピン12と2つの前記調整螺子14により3点で前記台盤11に支持され、前記ピン12の先端を中心に傾動可能となっている。尚、前記台盤11と前記下部ケーシング13とは離反しない様に、前記台盤11と前記下部ケーシング13との間にはスプリング17が設けられている。
【0029】
前記下部ケーシング13の内部には、2個の整準モータ18が設けられ、該整準モータ18の出力軸に整準駆動ギア19が嵌着され、該整準駆動ギア19は前記整準従動ギア16に噛合している。前記整準モータ18は前記制御部7によって独立して駆動され、前記整準モータ18の駆動により前記整準駆動ギア19、前記整準従動ギア16を介して前記調整螺子14が回転され、該調整螺子14の下方への突出量が調整される様になっている。又、前記下部ケーシング13の内部には傾斜センサ54(図3参照)が設けられており、該傾斜センサ54の検出信号に基づき2個の前記整準モータ18が駆動されることで、前記整準部2の整準がなされる。
【0030】
次に、前記回転機構部3について説明する。
【0031】
前記下部ケーシング13は、前記回転機構部3のケーシングを兼ねており、内部には水平回動モータ20が設けられ、該水平回動モータ20の出力軸には水平回動駆動ギア21が嵌着されている。
【0032】
前記下部ケーシング13の上端には、軸受22を介して回転基盤23が設けられ、該回転基盤23の中心には、下方に突出する回転軸24が設けられ、該回転軸24には水平回動ギア25が設けられ、該水平回動ギア25に前記水平回動駆動ギア21が噛合されている。又、前記水平回動モータ20、前記水平回動駆動ギア21、前記水平回動ギア25等により水平角駆動部が構成される。
【0033】
又、前記回転軸24には水平角検出器26、例えばエンコーダが設けられ、該水平角検出器26により、前記下部ケーシング13に対する前記回転軸24の相対回転角が検出され、検出結果(水平角)は前記制御部7に入力され、該検出結果に基づき前記制御部7により前記水平回動モータ20の駆動が制御される様になっている。
【0034】
次に、前記測定装置本体部8について説明する。
【0035】
前記回転基盤23に本体部ケーシング27が固着され、該本体部ケーシング27の内部に鏡筒28が設けられる。該鏡筒28は、前記本体部ケーシング27の回転中心と同心の軸心32を有し、該本体部ケーシング27に所要の手段で取付けられる。例えば、前記鏡筒28の上端にフランジ29が形成され、該フランジ29が前記本体部ケーシング27の天井部に固着される。
【0036】
前記鏡筒28の側面には投光光学系である発光部33が設けられ、該発光部33はパルスビームを発する発光素子31と、該発光素子31の投光光軸34上には複数のレンズ35,35(図示ではレンズの構成を簡略化して示している)が設けられ、該複数のレンズ35によりズームビームエキスパンダ30が構成される。前記発光素子31は、例えば半導体レーザ等であり、測距光40としての赤外光のパルスレーザ光線を発し、前記制御部7によって所要の状態でパルスレーザ光線が発光される様に制御される。
【0037】
前記投光光軸34と前記軸心32との交差位置にはハーフミラー36が配設され、前記発光素子31から発せられたパルスレーザ光線による測距光は、前記レンズ35により平行な光束とされ、前記ズームビームエキスパンダ30により測距光40の光束径が最小化された後、前記ハーフミラー36で前記軸心32と合致する様反射される。反射された測距光は高低回動ミラー37を経て前記投光光軸34に沿って測定対象物に照射される様になっている。該高低回動ミラー37は偏向光学部材であり、前記軸心32上に配設され、前記軸心32上の前記ハーフミラー36と前記高低回動ミラー37との間には集光レンズ38が配設されている。前記高低回動ミラー37は前記ハーフミラー36により鉛直方向に偏向された前記投光光軸34を、更に水平方向に偏向する。
【0038】
前記軸心32上であり前記鏡筒28の底部には測距受光部39が設けられ、該測距受光部39は前記ハーフミラー36を透過する受光光軸41上に位置する。前記測距受光部39には測定対象物からの反射測距光が、前記高低回動ミラー37、前記集光レンズ38、前記ハーフミラー36を経て入射される。又、前記測距受光部39には、測距光の一部が内部参照光(図示せず)として入射する様になっており、前記反射測距光と内部参照光とに基づき測定対象物迄の距離を測定する様になっている。
【0039】
前記発光素子31、前記レンズ35、前記ハーフミラー36、前記高低回動ミラー37、前記集光レンズ38、前記測距受光部39等は前記測距部4を構成する。
【0040】
前記本体部ケーシング27の上側に上部ケーシング42が設けられ、該上部ケーシング42の側壁の一部は投光窓43となっている。
【0041】
又、前記上部ケーシング42の天井下面には、狭角の画角を有する狭角カメラ(以下パノラマカメラ)44が設けられる。又、該パノラマカメラ44は、多数の画素が平面上に集合された画像受光部44a、例えばCCD或はCMOSセンサを有するデジタルカメラである。前記画像受光部44aの画素は該画像受光部44aに対して垂直な撮像光軸50を中心として位置が特定されている。又、画素の位置の特定は、例えば光軸を原点としたX−Y座標が想定され、X座標、Y座標によって特定される。
【0042】
前記画像受光部44aに入射する光線の角度(前記撮像光軸50に対する角度)は、該画像受光部44aの画素の位置によって特定され、画角として表される様になっており、前記パノラマカメラ44、前記高低回動ミラー37等により前記第1撮像部5が構成される。
【0043】
測定対象物からの撮像光の撮像光軸50は、前記投光光軸34と一致しており、前記高低回動ミラー37を所定角度回転させることで前記撮像光軸50を偏向し、偏向後の光軸を前記パノラマカメラ44の光軸に合致させることができる。前記パノラマカメラ44で測定対象物を撮像する場合は、前記高低回動ミラー37を前記所定角度回転し、測定対象物からの撮像光を前記高低回動ミラー37で反射し、前記パノラマカメラ44に入射させる。入射した撮像光は、前記画像受光部44aに受光され、画像が取得される。
【0044】
尚、前記第1撮像部5は、前記高低回動ミラー37を回転させ、該高低回動ミラー37を測距状態とは異なった角度で測定対象物の画像を取得する為、前記測距部4による距離の測定と前記第1撮像部5による画像の取得とは択一的な作動となる。
【0045】
又、前記本体部ケーシング27側壁の前記投光窓43下方には、デジタル動画を撮像可能な広角カメラ45が設けられている。該広角カメラ45の撮像光軸は、前記投光光軸34及び前記撮像光軸50と同一平面上に位置し、前記投光光軸34、前記撮像光軸50と平行となっている。前記広角カメラ45は前記測距部4による測定対象物迄の距離の測定と並行して測定対象物の動画像を取得できる様になっており、前記広角カメラ45は前記第2撮像部6として機能する。
【0046】
次に、前記回転照射部9について説明する。
【0047】
該回転照射部9は前記上部ケーシング42の内部に収納される。前記フランジ29の上端にミラーホルダ46が設けられ、該ミラーホルダ46に水平な回動軸47を介して前記高低回動ミラー37が回転自在に設けられ、該高低回動ミラー37の一方の軸端に高低回動ギア48が嵌着され、前記高低回動ミラー37の他方の軸端には高低角検出器49が設けられている。該高低角検出器49は前記高低回動ミラー37の回動角(回動位置)を検出し、前記制御部7に検出結果を送出する様になっている。
【0048】
前記ミラーホルダ46には高低回動モータ51が取付けられ、該高低回動モータ51の出力軸に高低回動駆動ギア52が嵌着され、該高低回動駆動ギア52は前記高低回動ギア48に噛合している。前記高低回動モータ51は、前記高低角検出器49の検出結果に基づき前記制御部7により駆動が制御される様になっている。又、該制御部7は、前記水平回動モータ20及び前記高低回動モータ51を独立して駆動、或は同期して駆動制御可能となっている。又、前記高低回動ギア48、前記高低回動モータ51、前記高低回動駆動ギア52等により高低角駆動部が構成される。
【0049】
尚、前記上部ケーシング42の上面には照星照門53が設けられ、該照星照門53の視準方向は鉛直方向の前記投光光軸34(即ち前記軸心32)と直交すると共に、前記回動軸47に対しても直交している。
【0050】
次に、図3に於いて、前記レーザスキャナ1の制御系の構成について説明する。
【0051】
前記制御部7には前記水平角検出器26、前記高低角検出器49、前記傾斜センサ54からの検出信号が入力されると共に、操作部55から作業者が前記レーザスキャナ1を測定開始するのに必要な条件、測定開始の指令等を入力できる様になっている。尚、前記操作部55は前記本体部ケーシング27等の筐体に設けられてもよく、或は別途独立して設けられ、無線、赤外線等の信号伝達媒体により遠隔操作可能としてもよい。
【0052】
前記制御部7は前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ51、前記整準モータ18を駆動すると共に、作業状況、測定結果等を表示する表示部56を駆動する。又、前記制御部7には、メモリカード、HDD等の外部記憶装置57が取付けられ、或は着脱可能に設けられている。
【0053】
前記制御部7の概略を説明する。
【0054】
該制御部7は、CPUで代表される演算部61と、測距、高低角の検出、水平角の検出をする為に必要な、シーケンスプログラム、演算プログラム、測定データの処理を実行する測定データ処理プログラム、画像処理をする画像処理プログラム、時間的に隣接して取得した画像データを比較することで動体を検出する動体検出プログラム、比較により得られた変位に基づき動体の速度を計算する移動速度計算プログラム、動体が検出された場合に、動体に対応した回避処理を行う動体回避処理プログラム、検出した動体の位置や速度に応じて複数の動体回避処理の中から1つを選択する回避処理選択プログラム、データを前記表示部56に表示させる画像表示プログラム等のプログラム、或はこれらプログラムを統合管理するプログラム等を格納し、更に測定データ、画像データ等のデータを格納する記憶部62と、前記水平回動モータ20を駆動制御する為の水平駆動部63と、前記高低回動モータ51を駆動制御する為の高低駆動部64と、前記整準モータ18を駆動制御する為の整準駆動部65、及び前記測距部4により得られた距離データを処理する為の距離データ処理部66と、前記第1撮像部5により得られた第1画像データと距離データを基に3次元画像データを取得する第1画像データ処理部67と、前記第2撮像部6により得られた第2画像データを基に動体を検知する第2画像データ処理部68等を具備している。
【0055】
尚、前記距離データ処理部66、前記第1画像データ処理部67、前記第2画像データ処理部68の機能を前記演算部61に実行させてもよく、この場合前記距離データ処理部66、前記第1画像データ処理部67、前記第2画像データ処理部68は省略することができる。又、前記距離データ処理部66、前記第1画像データ処理部67、前記第2画像データ処理部68を個別に具備することで、距離データ処理と、画像データ処理とを並行して実行でき、高速処理が可能となる。
【0056】
又、前記距離データ処理部66、前記第1画像データ処理部67、前記第2画像データ処理部68とを別途設けてもよい。例えば、別途PCを装備し、該PCに前記距離データ処理部66、前記第1画像データ処理部67、前記第2画像データ処理部68の機能を実行させる様にしてもよい。この場合、距離データ、第1画像データ、第2画像データを前記外部記憶装置57に格納し、格納後、該外部記憶装置57を前記制御部7から取外してPCに接続し、PCで距離データ処理、第1画像データ処理、第2画像データ処理を実行する様にしてもよい。尚、無線LAN等所要の通信手段で、前記レーザスキャナ1で取得したデータをPCに送信することもできる。この場合、前記外部記憶装置57を着脱可能とする必要はなくなり、或は省略することもできる。
【0057】
次に、前記レーザスキャナ1による測定作動、測定対象物の画像データ、距離データの取得について、図4、図5(A)(B)を参照して説明する。
【0058】
前記レーザスキャナ1を既知点に設置し、前記操作部55より整準を指定し、整準を実行させる。
【0059】
前記整準駆動部65を介して前記整準モータ18が駆動され、前記レーザスキャナ1の傾斜は前記傾斜センサ54によって検出され、該傾斜センサ54の検出結果が前記制御部7にフィードバックされる。前記傾斜センサ54が水平を検出する様に、前記整準モータ18により前記調整螺子14が回転される。
【0060】
整準が完了すると、前記表示部56に整準完了の表示がなされ、或は警告音等によって整準完了が告知される。
【0061】
整準が終了すると、前記照星照門53により視準し、測定範囲を設定する。例えば、測定範囲が4角であれば、前記照星照門53により測定範囲の4つの角を視準し、それぞれの視準方向(水平角、高低角)を設定することで測定範囲を設定できる。或は、前記パノラマカメラ44で取得した画像上からタッチパネル等により測定範囲を設定できる。又、測定範囲が前記パノラマカメラ44で取得される1つの画像よりも広い場合は、該パノラマカメラ44により撮像した複数の画像を合成し、パノラマ画像である第1画像データ72を作製し、該第1画像データ72上から測定範囲を設定することもできる。
【0062】
該第1画像データ72は前記第1撮像部5にて撮像することで取得されるが、設定された測定範囲の広さが1回の撮像範囲を超える場合には、測定範囲を分割して撮像を行う(図示では12分割)。分割して撮像する場合、分割撮像した分割画像データを合成する為、隣接する分割画像データ間で所要部分がオーバラップする様に撮像される。
【0063】
測定範囲の設定、1回の撮像範囲、オーバラップ量が設定されることで、前記演算部61によって分割撮像する場合の必要な条件が演算される。例えば、撮像する分割数、撮像する毎に前記測定装置本体部8を回転する回転角、該測定装置本体部8の撮像方向、前記高低回動ミラー37の回転角、該高低回動ミラー37の高低角等が演算される。
【0064】
前記操作部55より、前記第1画像データ72の取得が指令されると、前記高低回動ミラー37の反射面が前記パノラマカメラ44に対峙する様に前記高低回動ミラー37の姿勢が設定されると共に、前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ51が駆動され、前記測定装置本体部8が水平方向に回転され、前記高低回動ミラー37が高低方向に回転される。
【0065】
前記水平角検出器26で検出した水平角、前記高低角検出器49により検出した高低角が前記制御部7にフィードバックされ、前記パノラマカメラ44の撮像範囲が分割した前記第1画像データ72の撮像範囲(以下、分割エリア73a〜73l)方向の水平角、高低角に合致する様に制御される。
【0066】
前記各分割エリア73a〜73l毎に、演算された水平角、高低角と前記水平角検出器26、前記高低角検出器49が検出する水平角、高低角とが合致した状態で、前記パノラマカメラ44により前記各分割エリア73a〜73lの撮像が行われる。
【0067】
前記パノラマカメラ44からの撮像画像は、前記各分割エリア73a〜73lに対応するデジタル画像データとして前記記憶部62に格納される。
【0068】
尚、デジタル画像データは、前記パノラマカメラ44の前記画像受光部44aの画素それぞれの信号の集合であり、又画素それぞれの信号は、前記画像受光部44a上での位置(座標位置)を特定する信号を有している。又、前記画像受光部44a上での位置、即ち画角は前記撮像光軸50に対して特定され、更に各画像についての該撮像光軸50の水平角、高低角は、前記水平角検出器26、前記高低角検出器49で検出された値であり、既知となっている。従って、前記撮像光軸50の水平角、高低角と前記画像受光部44a上の画角によって、各画素の水平角、高低角が算出される。而して、全ての画像の前記第1画像データ72の撮像範囲内での位置が既知となると共に、各画像の全ての画素の前記第1画像データ72の撮像範囲内での位置が既知となる。前記記憶部62に格納される画像データは、各画素毎に水平角データ、高低角データ(番地データ)を含んでいる。
【0069】
前記第1画像データ72の撮像範囲、即ち前記各分割エリア73a〜73lの撮像が完了すると、各分割エリア73a〜73lの画像データを合成することで、前記第1画像データ72を取得することができ、取得した該第1画像データ72を基に、前記操作部55より測定を行う範囲を設定する。又、該測定範囲内の測定点密度を設定する。設定された該測定エリア74の高低方向の長さ(高さ)に基づいて後述する検知エリア75の高低方向の長さが設定されると共に、前記測定エリア74の高さ及び測定点密度に基づいて前記レーザスキャナ1によるスキャン速度、即ち後述するスキャンライン76の水平移動速度が前記演算部61により演算され、又前記スキャンライン76の水平移動速度に基づいて前記検知エリア75の水平方向の長さ(幅)が前記演算部61により設定される。
【0070】
尚、図5(A)(B)中、Hは前記測定エリア74の高低方向の高さを示し、Wは前記検知エリア75の水平方向の幅を示している。図5(A)は、前記スキャンライン76の水平移動速度が速い場合を示し、前記高低回動ミラー37は定速で回転するのでHの長さが短くなっている。又、図5(B)は、前記スキャンライン76の水平移動速度が遅い場合を示し、該スキャンライン76の長さが長くなっている。
【0071】
前記操作部55より前記測定エリア74の測距の実行を指令すると、前記高低回動ミラー37の反射面が前記発光素子31に対峙する様に前記高低回動ミラー37の姿勢が設定されると共に、前記水平回動モータ20、前記高低回動モータ51が駆動され、前記測定装置本体部8が水平方向に回転され、前記高低回動ミラー37が高低方向に回転される。
【0072】
前記発光素子31から測距光40が前記投光光軸34上にパルス発光され、前記高低回動ミラー37で偏向され、測定対象物71へと投射される。前記測距光40がパルス発光された状態で、前記水平回動モータ20と前記高低回動モータ51が同期駆動され、前記高低回動ミラー37が高低方向に回転され、前記測定装置本体部8が水平方向に回転されることで、前記パルス発光された測距光40(以下パルス測距光40)により前記測定エリア74が走査(レーザスキャン)される。
【0073】
この時、前記パルス測距光40は、前記高低回動ミラー37により高低方向にスキャンされ、前記パルス測距光40のスキャンによりスキャンライン76が形成される。又、該スキャンライン76は、前記測定装置本体部8の回転により水平方向に移動する。前記スキャンライン76の周囲には前記検知エリア75が形成される。該検知エリア75により前記測定エリア74内に動体が進入し、進入した動体を前記パルス測距光40によりスキャンし、動体を測定するのを防止する様になっている。尚、前記検知エリア75の広さは、所定の速度で近づく動体に対し、どの方向からの接近であっても前記スキャンライン76に達する迄の猶予時間Tが得られる様、該スキャンライン76の移動速度に合わせて拡大、縮小される。
【0074】
又、前記測定対象物71で反射された反射測距光は、前記高低回動ミラー37により前記受光光軸41上に偏向され、前記集光レンズ38にて集光されて前記測距受光部39に受光される。前記測距部4に於いて、反射測距光に基づき各パルス毎に距離測定がなされる。
【0075】
各パルス毎に測距された距離データが取得されると共に、パルス発光された時の前記水平角検出器26の検出水平角、前記高低角検出器49の検出高低角も同時に取得され、各距離データは高低角データ、水平角データと対応付けられて前記記憶部62に格納される。尚、各画素に関する水平角と距離データに関する水平角とは等しく対応し、各画素に関する高低角と距離データに関する高低角との関係は、画素高低角から前記測距光40と前記撮像光軸50とが一致する様回転させた前記高低回動ミラー37の回転角を引いたものが距離データの高低角と等しくなる。
【0076】
ここで、前記測定エリア74の広さにもよるが、取得する距離データの数は、数百万〜数千万に及ぶ。取得された距離データと高低角データ、水平角データとを対応付けることで、各測定点についての3次元点データが得られ、更に前記測定エリア74に含まれる多数の点データ、即ち3次元データ群(点群データ)が得られる。
【0077】
又、前記測距部4と前記第1撮像部5とは前記測定装置本体部8に一体に設けられ、前記投光光軸34と前記撮像光軸50とが一致しており、更に前記回転機構部3により一体に水平回転されるので、点群データと画像データ間で回転による位置ずれは生じない。前記第1画像データ72の各画素毎の水平角データ、高低角データは、前記点群データの各点の距離データに対応付けられた高低角データ、水平角データと1対1に対応するので、前記距離データと前記第1画像データ72とは高低角データ、水平角データに基づき、直ちに対応付けが可能である。前記第1画像データ72上の高低角データ、水平角データに対応する画素の信号を点群データに転写することで、点群データによる色づけされた3次元画像を得ることができる。
【0078】
更に、上記した前記測定エリア74の測距を開始する前から測距と並行して、該測定エリア74内の動体の検知及び回避が行われる。図6、図7(A)〜(C)に於いて、前記レーザスキャナ1を用いた動体の検知及び回避について説明する。尚、前記広角カメラ45は前記測定装置本体部8と一体に回転する為、前記スキャンライン76及び前記検知エリア75は、常に前記第2撮像部6により撮像される第2画像データ77の中心部に位置するが、前記スキャンライン76の移動を明確にする為、図7(B)では便宜上前記スキャンライン76及び前記検知エリア75を水平方向にずらして示している。
【0079】
前記第2撮像部6により、前記測定エリア74内の前記スキャンライン76、該スキャンライン76の周囲に形成された前記検知エリア75及びその周囲を含むエリアがデジタル動画にて撮像され、該動画内所定コマ間隔、或は所定時間間隔にデジタル画像データが第2画像データ77として取得され、前記記憶部62に格納される。前記第2画像データ77も前記第1画像データ72と同様、画素それぞれの信号は、前記広角カメラ45の画像受光部45a上での位置(座標位置)を特定する信号を有しており、全ての画素は前記第2画像データ77の撮像範囲上での位置を特定できる。尚、該第2画像データ77の水平方向の幅は、前記測定エリア74の水平方向の幅よりも狭くてもよい。
【0080】
前記レーザスキャナ1では、前記第2撮像部6により図7(B)に示される新規に第2画像データ77n(nは自然数)が取得される度に、該第2画像データ77nと図7(A)に示される前回取得された第2画像データ77n−1とを、図7(C)に示される様に比較し、各画素に於ける色情報、輝度情報の偏差を算出することで動体78が検知される様になっている。
【0081】
該動体78が検知されると、次に前記第2画像データ77n及び前記第2画像データ77n−1をエッジ処理することで、前記第2画像データ77nに於ける動体78nの先端座標(Xn、Yn)と、前記第2画像データ77n−1に於ける動体78n−1の先端座標(Xn−1、Yn−1)を求める。前記動体78nと前記動体78n−1の先端座標の差を取ることで、X軸及びY軸に於ける変位量(ΔX、ΔY)、即ち前記動体78の水平方向の移動量及び高低方向の移動量を求め、変位量(ΔX、ΔY)と前記第2画像データ77の取得間隔tと、前記測定装置本体部8の回転速度、即ち前記スキャンライン76の水平移動速度vとから前記動体78の移動速度Vが算出され、算出された移動速度Vを基に次回取得される第2画像データ77n+1に於ける動体78n+1の先端座標が算出される。
【0082】
以下では、前記スキャンライン76が紙面に対して右方向に移動し、前記動体78も前記スキャンライン76と同様紙面に対して右方向に移動する場合について説明している。
【0083】
尚、前記動体78が高速移動体であり、移動速度が極めて速い場合、前記動体78から前記スキャンライン76迄の距離をLとし、L+tv<tVとなった際には、次回の第2画像データ77n+1が取得された段階で前記動体78が前記スキャンライン76上に到達していると判断され、前記第2画像データ77nに於いて前記動体78が前記検知エリア75外に存在していた場合であっても、該検知エリア75による判断を介さずに前記動体78の回避処理が行われる。
【0084】
次に、図8〜図10に於いて、該動体78の回避処理について説明する。動体回避処理として、本実施例では動体78の速度、検知位置に応じて3パターンの動体回避処理が設定されており、前記操作部55より予め速度の閾値Kが設定されている。尚、閾値Kは前記スキャンライン76の水平移動速度v、前記第2画像データ77の取得間隔t等に応じて適宜設定されるか、或は水平移動速度v、取得間隔t、前記動体78から前記スキャンライン76迄の距離L等に応じて、例えばK=(L+tv)/tとなる様適宜演算されるものとする。
【0085】
前記動体78が高速移動体ではなく、前記検知エリア75内で検知され、移動速度Vが閾値Kを上回っている場合を説明する。
【0086】
図8(A)に示される様に、前記第2画像データ77n−1で検知された前記動体78n−1が自動車等であり、移動速度が速く、短時間で前記検知エリア75を通過すると判断された場合には、図8(B)に示される様に、前記測距光40による前記測定エリア74の測定を一時的に停止する。その後、第2画像データ77nと第2画像データ77n+1との比較により、前記動体78が前記検知エリア75を通過したと判断されると、図8(C)に示される様に、前記測距光40による前記測定エリア74の測定が再開される。
【0087】
尚、前述した前記動体78が高速移動体であり、前記第2画像データ77nの段階で前記動体78が前記検知エリア75内に存在していないが、前記第2画像データ77n+1を取得した段階で、前記動体78が前記スキャンライン76上に到達していると判断された場合も、前記測定エリア74の測定を一時的に停止することで処理される。
【0088】
前記動体78が高速移動体ではなく、前記検知エリア75内で検知され、移動速度Vが閾値Kを下回っている場合を説明する。
【0089】
図9(A)に示される様に、前記動体78が歩行者等であり、移動速度が遅く、前記検知エリア75の通過に時間がかかると判断された場合には、その段階での水平角データ、高低角データを記憶し、前記測距光40による前記測定エリア74の測定を中断する。該測定エリア74の測定を中断した後は、別の場所、例えば図9(B)に示される様に、前記測定エリア74の終端から始端に向って測定を再開する等測定の順番を変更する。
【0090】
該測定エリア74の終端から始端に向って測定を進め、再度前記検知エリア75内で前記動体78を検知した場合、或は該動体78を検知した際に測定する様予め設定されたエリアの測定が完了した場合には、順番を変更した測定を終了し、測定を中断した際に記憶した水平角データ、高低角データに基づき先程停止した箇所より終端に向って該測定エリア74の測定を再開する。
【0091】
尚、前記動体78の速度が極めて遅い、或は途中で停止した場合等、前記測定エリア74の別の箇所からの測定を完了した後も、中断した箇所に前記動体78が存在し、前記測定エリア74の測定を再開できない場合には、該測定エリア74の測定を一時的に停止する。更に、一定時間経過後も該測定エリア74の測定を再開できなければ、図9(C)に示される様に、該測定エリア74の測距を停止し、前記動体78がなくなった後に再度前記測定エリア74の測距を行う様促す告知を前記表示部56に表示する。
【0092】
図10(A)は、前記測定エリア74の通常測定状態を示しており、前記第1画像データ72のエリアが前記測定エリア74より広い場合を示している。図10(B)に示される様に、前記測定対象物71の背後より突然前記動体78が出現する等、前記検知エリア75の内外で前記動体78を検知できず、前記スキャンライン76上に前記動体78が出現する場合がある。図10(C)は取得された該動体78の距離データを示しており、前記測距光40により前記動体78をスキャンしてしまった場合には、前記測定エリア74の測定を停止した上で、図10(D)に示される前記動体78の測定済みエリア79の距離データを破棄する。該測定済みエリア79の距離データを破棄した後は、該動体78が前記検知エリア75内に存在しなくなった段階で、前記測定済みエリア79より再度前記測定エリア74の測定を開始する、或は距離データを破棄した段階で別の箇所より前記測定エリア74の測定を開始する等所定の処理が行われる。
【0093】
該測定エリア74の測距と並行して、上述した動体78の検知及び回避処理を行うことで、前記測距光40により前記測定エリア74の測定が完了した際には、第1画像データ72、及び測距光40により前記動体78をスキャンすることにより生じる画像データと距離データとの差異、即ちノイズデータを除いた3次元データ群(点群データ)の取得が完了する。
【0094】
図11により、前記測定エリア74の距離データの取得と、距離データ取得処理と並行して行われる前記動体78の検知及び回避処理について説明する。
【0095】
先ず、処理の前段階として、前記第1撮像部5により分割画像データを複数取得し、分割画像データを合成して前記第1画像データ72を作製し、前記操作部55より前記測定エリア74が設定され、該測定エリア74の設定後に前記操作部55より測距実行の指令が入力されることで、前記測距光40による前記測定エリア74の測定が開始される。
【0096】
尚、該測定エリア74を作業者が前記照星照門53を介して前記操作部55より設定し、設定された前記測定エリア74を所要分割し、前記第1撮像部5により分割画像データを複数取得し、分割画像データを合成して前記第1画像データ72を作製してもよい。この場合、前記測定エリア74と前記第1画像データ72のエリアの広さが略等しくなる。
【0097】
STEP:01 測距実行の指令が入力されると、先ず前記第2撮像部6により前記測定エリア74の動画撮像が開始され、所定コマ間隔、或は所定時間間隔で前記第2画像データ77の取得が開始される。
【0098】
STEP:02 該第2画像データ77の取得開始後、前記測定エリア74に対して前記測距部4による測距が開始される。
【0099】
STEP:03 測距が開始されると、前記第2画像データ処理部68により、前記第2撮像部6により取得された前記第2画像データ77n(nは自然数)と、1回前に取得された前記第2画像データ77n−1とが、各画素毎の色情報、輝度情報に基づき比較される。
【0100】
STEP:04 前記第2画像データ77nと前記第2画像データ77n−1との比較の結果、色情報、輝度情報間で差分が存在したかどうかで前記動体78が存在するかが判断される。
【0101】
STEP:05 STEP:04にて該動体78が存在すると判断された場合には、次に該動体78の位置を検知し、該動体78の位置が前記スキャンライン76上であるかどうかが判断される。
【0102】
STEP:06 STEP:05にて前記動体78が前記スキャンライン76上に存在しないと判断されると、次にエッジ検出された前記第2画像データ77nと、前記第2画像データ77n−1に於ける前記動体78の先端座標の変位が求められ、該変位と前記第2画像データ77の取得間隔t、前記スキャンライン76の水平移動速度vとから移動速度Vが算出される。
【0103】
STEP:07 前記動体78の移動速度Vが算出されると、次に前記動体78の移動速度Vが極めて速い、即ち該動体78が高速移動体であるかどうかが判断される。
【0104】
STEP:08 STEP:07にて前記動体78が高速移動体ではないと判断されると、次に該動体78の検知された位置が前記検知エリア75内であるかが判断される。
【0105】
STEP:09 STEP:08にて前記動体78が前記検知エリア75内に存在しないと判断されると、或はSTEP:04にて前記動体78が存在しないと判断されると、該動体78の回避処理が行われることなく、通常の前記測定エリア74の測定が行われる。
【0106】
STEP:10 STEP:05にて前記動体78の位置が前記スキャンライン76上であると判断された場合には、前記動体78をスキャンしたエリアの一部である前記測定済みエリア79の距離データを破棄し、破棄後は距離データを破棄した該測定済みエリア79から測定を再開する様測定箇所を変更する。
【0107】
STEP:11 STEP:07にて前記動体78が高速移動体であると判断された場合には、前記検知エリア75に基づく動体回避処理が行われず、次回取得される前記第2画像データ77n+1に於ける前記動体78の先端座標が算出される。
【0108】
STEP:12 前記第2画像データ77n+1に於ける前記動体78の先端座標の算出後、或はSTEP:08にて該動体78が前記検知エリア75内に存在していると判断されると、次に前記動体78の移動速度Vが、予め設定、或は前記第2画像データ77n取得後に算出された速度の閾値Kよりも大きいかどうかが判断される。
【0109】
STEP:13 STEP:12にて前記動体78の移動速度Vが閾値Kよりも大きいと判断されると、該動体78が前記検知エリア75通過後に前記測定エリア74内の測定を再開する様、距離データの取得を一時停止する。
【0110】
STEP:14 STEP:12にて前記動体78の移動速度Vが閾値Kよりも小さいと判断されると、該動体78が検知されなかった箇所、例えば前記測定エリア74の終端より始端に向って距離データの取得を行う様測定箇所を変更する。
【0111】
STEP:15 STEP:09、STEP:10、STEP:13、STEP:14にて所定の処理が行われ、前記第2画像データ77の取得間隔tの経過後、前記第2画像データ77n+1が取得される。
【0112】
STEP:16 該第2画像データ77n+1の取得後、前記測定エリア74内の距離データの取得が全て完了したかどうかが判断され、距離データの取得が完了していなければ、再度STEP:03〜STEP:15の処理が繰返され、前記測定エリア74内の距離データの取得が全て完了したと判断されることで距離データの取得処理を終了する。
【0113】
上述の様に、本実施例では、前記測定装置本体部8に設けられ、該測定装置本体部8と一体に回転する前記広角カメラ45を設けたので、前記測定エリア74に対する距離データの取得と、該測定エリア74内の画像データの取得を同時に行うことができ、画像、色データをリアルタイムで取得することができる。
【0114】
又、前記測定エリア74の距離データの取得と並行して、前記動体78の検知を行い、該動体78を検知した際には、前記測距光40による前記動体78のスキャンを回避し、又該動体78をスキャンした場合には該動体78をスキャンした距離データを破棄する様構成したので、前記測距部4により取得される点群データ内に、前記動体78をスキャンしたことにより生じるノイズデータが混入するのを防止することができる。
【0115】
又、前記スキャンライン76の周囲に前記検知エリア75を設定し、前記動体78が前記検知エリア75内で検知されると、前記動体78の速度、位置に応じて測定の一時停止、測定箇所の変更、前記動体78の測定済み距離データの破棄の3パターンの処理の何れか1つを自動的に行う様にしたので、作業者が前記測定エリア74と前記動体78の位置とを監視し、点群データ内にノイズデータが混入しない様測定の一時停止と再開を手動で行う必要がなく、点群データを取得する際の作業者の負担を軽減することができる。
【0116】
尚、本実施例では、前記広角カメラ45を前記測定装置本体部8に設け、該測定装置本体部8と一体となって回転する様にしているが、前記測定エリア74が前記第2撮像部6により撮像される前記第2画像データ77よりも充分に小さい場合には、前記広角カメラ45を前記回転機構部3等に固定的に設けてもよい。
【0117】
又、本実施例では、作業者が前記照星照門53により視準して前記レーザスキャナ1を測定方向に向け、前記測定エリア74の設定を行っていたが、前記第2撮像部6により広範囲の画像データを取得し、該画像データを基に操作部55より前記測定エリア74の設定を行ってもよい。
【0118】
又、本実施例では、前記第1撮像部5にて撮像された分割画像データを合成した前記第1画像データ72を基に点群データの色づけを行っているが、点群データの各点の距離データと、前記第2画像データ77の各画素とを対応付けることで、該第2画像データ77を基に点群データの色づけを行うことができる。この場合、前記第1撮像部5を省略してもよい。
【0119】
又、本実施例では、新規に前記第2画像データ77nを取得する毎に、該第2画像データ77nと前回取得された前記第2画像データ77n−1とを比較することで前記動体78の検知を行っているが、距離データ取得処理の前に、前記動体78が存在しない状態で前記第1画像データ72を取得して参照画像データとし、該参照画像データと新規に取得された前記第2画像データ77nとを比較することで前記動体78の検知を行ってもよい。
【0120】
更に、前記第1画像データ72撮像時に、前記分割エリア73a〜73lをそれぞれ複数回、例えば3回撮像し、図12に示される様に、図12(A)〜(C)から色情報、輝度情報の差分を演算し、演算結果に基づき前記動体78を削除することで、自動で図12(D)に示される様な前記動体78の存在しない参照画像データ80を作製することができ、作業者の負担をより軽減することができる。
【0121】
次に、図13、図14に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、図14は便宜上、図13に対して回転照射部9のみ側方から見た状態を示している。又、図13、図14中、図1、図2中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
第2の実施例では、第1の実施例で用いられた回転機構部3を簡略化し、鏡筒28の一部を回転する様にしたものである。更に、本体部ケーシング27の周面に広角カメラ45を全周に亘って所定の間隔で複数設けている。又、第2の実施例に於いても、測距光40としては赤外光が使用される。尚、前記広角カメラ45が設けられる間隔は、隣接する該広角カメラ45,45′が撮像した画像の両端の所要部分がオーバラップする距離となっている。
【0123】
ハーフミラー36、集光レンズ38、測距受光部39等が収納される鏡筒28の上端部に、該鏡筒28の一部を形成する上端軸部81が設けられ、該上端軸部81に軸受82を介して回動筒83が回転自在に設けられる。該回動筒83にミラーホルダ46が取付けられ、更に該ミラーホルダ46に高低回動ミラー37が回転自在に設けられ、該高低回動ミラー37を回動させる高低回動駆動ギア52が設けられ、前記高低回動ミラー37の高低角を検出する高低角検出器49が設けられている。
【0124】
前記回動筒83に水平回動ギア25が設けられ、該水平回動ギア25を回転させる水平回動モータ20が前記本体部ケーシング27の上面に設けられている。又、前記回動筒83と前記本体部ケーシング27間に前記回動筒83の回転角を検出する水平角検出器26が設けられている。
【0125】
第2の実施例では、前記高低回動ミラー37が高低方向に回動すると共に、該高低回動ミラー37とパノラマカメラ44が水平方向に回動し、測距部4、第2撮像部6は前記測定装置本体部8に固定的に設けられている。
【0126】
第2の実施例に於いて、撮像光軸と測距光軸とは投光光軸34に合致しており、前記高低回動ミラー37の高低方向の回動、水平方向の回動により、所要範囲で測量が可能であり、所要方向の撮像画像を得ることができる。
【0127】
尚、第2の実施例では、前記回動筒83が回転することで、前記測距受光部39に対して反射測距光の受光状態も回転するが、前記測距受光部39に対する反射測距光の受光状態の回転は、前記水平角検出器26によって検出されるので、該水平角検出器26の検出角によって距離データが修正される。
【0128】
上述の様に、第2の実施例では、前記回転機構部3の構成を簡略化したので、レーザスキャナ1の小型化を図ることができる。
【0129】
又、第2の実施例では、複数の前記広角カメラ45を前記本体部ケーシング27の周面全周に亘って固定的に設けたので、動体を検出する際に前記測定装置本体部8の回転速度を考慮する必要がなく、動体の検知が容易になる。
【符号の説明】
【0130】
1 レーザスキャナ
2 整準部
3 回転機構部
4 測距部
5 第1撮像部
6 第2撮像部
7 制御部
8 測定装置本体部
9 回転照射部
18 整準モータ
20 水平回動モータ
26 水平角検出器
31 発光素子
34 投光光軸
36 ハーフミラー
37 高低回動ミラー
39 測距受光部
40 測距光
41 受光光軸
44 パノラマカメラ
45 広角カメラ
49 高低角検出器
50 撮像光軸
53 照星照門
61 演算部
62 記憶部
72 第1画像データ
74 測定エリア
75 検知エリア
76 スキャンライン
77 第2画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光光軸に沿って測距光を射出する投光光学系と、前記測距光を偏向し測定エリアに照射する偏向光学部材と、該偏向光学部材を高低方向に回転させる高低角駆動部と、前記偏向光学部材を水平方向に回転させる水平角駆動部と、前記測距光の反射光に基づき測定を行い前記測定エリアの距離データを求める測距部と、測定エリアを含む画像データを連続して取得可能な第2の撮像部と、制御部とを具備し、該制御部は画像データと前記距離データとに基づき3次元画像を取得する第1の画像処理部と、時間的に隣接する画像データの比較により動体を検知する第2の画像処理部とを有することを特徴とするレーザスキャナ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に検知された動体の測定を制限する様前記測距部を制御する請求項1のレーザスキャナ。
【請求項3】
前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部に前記測定エリアの測定を一時停止させ、前記第2の画像処理部により前記測定エリア内に動体が存在しないことを確認した後に測定を再開させる請求項2のレーザスキャナ。
【請求項4】
前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記第2の画像処理部により動体が検知されなかった箇所から前記測定エリア内の測定を行う様、前記測距部に測定の順番を変更させる請求項2のレーザスキャナ。
【請求項5】
前記制御部は、前記測定エリア内に動体が検知されると、前記測距部により測定された動体の距離データを破棄し、破棄した箇所から再度前記測定エリア内の測定を再開させる請求項2のレーザスキャナ。
【請求項6】
前記偏向光学部材を介して撮像を行う第1の撮像部を更に具備し、前記第2の撮像部により撮像された画像を基に、前記第1の撮像部がパノラマ画像を取得する請求項1のレーザスキャナ。
【請求項7】
前記第2の撮像部は前記偏向光学部材と一体に水平回転する様配設され、該偏向光学部材より照射される測距光の水平回転と連動する請求項1〜請求項6のいずれかのレーザスキャナ。
【請求項8】
前記第2の撮像部は固定部に配設され、前記偏向光学部材より照射される測距光は前記第2の撮像部に対して相対的に回転する請求項1〜請求項6のいずれかのレーザスキャナ。
【請求項9】
前記第2の撮像部は周方向に複数設けられた請求項7又は請求項8のレーザスキャナ。
【請求項10】
前記投光光学系は測距光の光束を平行に射出する請求項1のレーザスキャナ。
【請求項11】
前記投光光学系は、前記測定エリア迄の測定距離に応じて測距光の光束径を最小化する為のズームビームエキスパンダを有する請求項1のレーザスキャナ。
【請求項12】
測定エリアを設定する工程と、投光光学系から射出された測距光の反射光に基づき測距部が測定を行い前記測定エリアの距離データを求める工程と、距離データを求める工程と並行して第2の撮像部が前記測定エリアを連続して撮像して画像データを取得し、時間的に隣接する画像データ間の差分の抽出により動体を検知する工程とを具備することを特徴とする動体検知方法。
【請求項13】
前記測定エリアは、偏向光学部材を介して第1の撮像部により撮像された画像データを基に設定される請求項12の動体検知方法。
【請求項14】
前記測定エリアは、照星照門により複数点を視準し、それぞれの視準方向を設定することで設定される請求項12の動体検知方法。
【請求項15】
前記測定エリアは、前記第2の撮像部により撮像された画像データを基に設定される請求項12の動体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−207929(P2012−207929A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71544(P2011−71544)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】