説明

レーザパターニング装置及びレーザパターニング方法

【課題】可撓性基板に形成された薄膜を、歩留まり良くレーザパターニング可能なレーザパターニング装置及びレーザパターニング方法を提供する。
【解決手段】薄膜が表面に形成された可撓性基板1が配置される加工基準面33を備える加工ステージ30と、可撓性基板1の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張る手段で構成されている皺取り装置40と、可撓性基板1に形成された薄膜にレーザ光を照射して所定のラインに沿ってレーザ光を走査させるレーザ光走査手段20とを備えたレーザパターニング装置を用いて可撓性基板に形成された薄膜をレーザパターニングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザパターニング装置及びレーザパターニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜太陽電池は、単一の領域に第1電極層、光電変換層、第2電極層の3層が積層した薄膜からなる太陽電池素子が、絶縁性基板上に複数形成された構成をなしている。そして、ある太陽電池素子の第1電極と、隣接する太陽電池素子の第2電極とを電気的に直列接続することで、必要な電圧を出力している。このように直列接続される太陽電池素子は、各層の成膜と、パターニング及びそれらの組み合わせ手順により形成される。このパターニングでは、前工程で加工された1次パターニングライン上に重ね合わせて、2次パターニングラインを加工する必要がある。このため、パターニングには高い精度が要求され、加工精度に優れたレーザパターニングが広く用いられている。
【0003】
薄膜太陽電池の基板には、従来よりガラス基板が使用されていたが、近年では、プラスチックフィルムなどの可撓性基板が使用されつつある。可撓性基板を用いた薄膜太陽電池は、軽量で取り扱い性に優れる。また、基板のフレキシブル性を生かして、ロールトゥーロール方式により大量生産が可能である。
【0004】
しかしながら、可撓性基板は、反り、弛み、皺等が発生し易く、レーザ加工面の平坦度が低下し易かった。このため、可撓性基板は、ガラス基板に比べて、レーザパターニングの加工精度が悪化し易かった。
【0005】
そこで、可撓性基板表面の薄膜をレーザパターニングする際には、特許文献1、2に記載されるように、可撓性基板の両端を、搬送方向に直交する方向に張力を加えて伸ばした状態で加工ステージに配置し、レーザパターニングを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−15686号公報(段落番号0019、図4)
【特許文献2】特開平8−90271号公報(段落番号0010、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、可撓性基板の両端を、搬送方向に直交する方向に張力を加えても、反り、弛み、皺等を十分に解消できないことがあった。例えば、可撓性基板の弛みや反りが大きい場合、弛みや反りを解消するために張力を大きくする必要があるが、張力を大きくすると、搬送方向に沿って皺が発生し易かった。皺等が発生した状態でレーザパターニングを行うと、ライン直線性やライン幅等が悪化し、製品不良となり、歩留まりが損なわれる。
【0008】
よって、本発明の目的は、可撓性基板に形成された薄膜を、歩留まり良くレーザパターニングすることが可能なレーザパターニング装置及びレーザパターニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するにあたり、本発明のレーザパターニング装置は、
薄膜が表面に形成され、ロールトゥーロールで搬送される可撓性基板が配置される加工基準面を備える加工部と、
前記加工基準面に配置された可撓性基板の皺取りを行う皺取り装置と、
前記可撓性基板に形成された薄膜にレーザ光を照射して所定のラインに沿ってレーザ光を走査させるレーザ光走査手段とを備えたレーザパターニング装置であって、
前記皺取り装置は、前記可撓性基板の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように、引っ張る手段で構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のレーザパターニング装置は、皺取り装置が、可撓性基板の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張る手段で構成されているので、可撓性基板を、反り、弛み、皺等が無く、極めて平坦な状態で加工基準面に固定できる。このため、可撓性基板を加工精度よくレーザパターニングできる。
【0011】
本発明のレーザパターニング装置の加工基準面の好ましい態様の一つは、可撓性基板の周縁部のみが当接する形状をなしていることである。この態様において、加工部は、加工基準面の内側の可撓性基板が接しない背面側に、加工残渣の吸引部を有していることが好ましい。この態様によれば、レーザパターニング時に、加工残渣が可撓性基板の裏面側に回り込んだとしても、吸引部から除去されるので、可撓性基板の裏面に加工残渣が付着するといった不具合を防止できる。
【0012】
本発明のレーザパターニング装置の加工基準面の好ましい別の態様は、可撓性基板の加工領域の背面側が少なくとも当接する形状をなしていることである。この態様によれば、可撓性基板の弛みや反りをより効果的に解消できる。可撓性基板に形成された薄膜の膜応力が大きく、反りや弛みの大きい場合に特に有効的である。
【0013】
本発明のレーザパターニング装置は、加工部が、加工基準面に当接する可撓性基板を、前記加工基準面上に吸着する吸引機構を備える加工ステージを有することが好ましい。そして、吸引機構は、吸引孔が形成された吸着面と、該吸着面の内部より吸引する機構とで構成されていることが好ましい。この態様によれば、可撓性基板を、加工基準面に吸着固定できるので、可撓性基板の弛みや反りをより効果的に解消できる。また、皺取りを効率よく行うことができる。
【0014】
本発明のレーザパターニング装置の皺取り装置の好ましい態様の一つは、可撓性基板を損傷しない材質からなるプレートと、このプレートを可撓性基板に押し付けて、加工ステージの外周方向に移動させる駆動機構とを有していることである。
【0015】
本発明のレーザパターニング装置の皺取り装置の好ましい別の態様は、可撓性基板を損傷しない材質からなるローラと、このローラを可撓性基板に押し付けて、可撓性基板が加工ステージの外周方向に移動するように回転させる回転機構とを有していることである。
【0016】
本発明のレーザパターニング装置の皺取り装置の好ましい別の態様は、可撓性基板の両側を把持して引っ張る把持機構からなり、該把持機構は、加工ステージの両側の搬送方向に沿って少なくとも3箇所に設けられた、可撓性基板を損傷しない材質からなる把持部を有し、把持部は、引っ張り方向及び引っ張り力を個別に調整可能とされていることである。把持部は、その引っ張り方向を、可撓性基板の搬送方向に対して30〜150°の角度範囲で調整可能とされていることが好ましい。また、把持部は、可撓性基板の両側面を挟み込む一対のローラで構成されていることが好ましい。
【0017】
また、本発明のレーザパターニング方法は、薄膜が表面に形成された可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記可撓性基板を加工部の加工基準面に配置し、前記可撓性基板の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張ることにより、前記可撓性基板の皺取りを行い、その状態で前記可撓性基板に形成された薄膜をレーザ光によってパターニングすることを特徴とする。
【0018】
本発明のレーザパターニング方法の好ましい態様の一つは、前記加工基準面として、前記可撓性基板の周縁部のみが当接する形状のものを用い、前記可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記加工基準面に、前記可撓性基板の加工領域を除く周縁部のみを当接させ、前記可撓性基板の周縁部を前記加工基準面に押し付けつつ、前記加工基準面の外周方向に引っ張ることにより前記可撓性基板の皺取りを行うことである。
【0019】
本発明のレーザパターニング方法の好ましい態様のもう一つは、前記加工基準面として、前記可撓性基板の加工領域の背面側が少なくとも当接する形状のものを用い、前記可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記加工基準面に、前記可撓性基板の加工領域の背面側を当接させ、前記加部の両側の搬送方向に沿って少なくとも3箇所に設けられた把持部により前記可撓性基板の両側を把持し、該把持部によって前記可撓性基板の幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張ることにより、前記可撓性基板の皺取りを行うことである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、可撓性基板を、反り、弛み、皺等が無く、極めて平坦な状態で加工基準面に固定できるので、可撓性基板を加工精度よくレーザパターニングできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のレーザパターニング装置の第1の実施形態の概略構成図である。
【図2】同レーザパターニング装置に用いられる加工ステージの概略図である。
【図3】同レーザパターニング装置に用いられる皺取り装置の概略図である。
【図4】同レーザパターニング装置の変形例1に用いられる皺取り装置の概略図である。
【図5】同レーザパターニング装置の変形例2に用いられる皺取り装置の概略図である。
【図6】本発明のレーザパターニング装置の第2の実施形態の概略構成図である。
【図7】同レーザパターニング装置に用いられる加工ステージの概略図である。
【図8】同レーザパターニング装置の皺取り装置の底面図である。
【図9】図8のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で用いる、「薄膜が表面に形成された可撓性基板」は、特に限定は無く、どのような形態のものであっても好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリサルフォン(PSF)等の材質から構成される樹脂フィルム等の表面に、半導体薄膜、金属薄膜等の薄膜が形成された、薄膜太陽電池等が挙げられる。以下、「薄膜が表面に形成された可撓性基板」として、薄膜太陽電池形成基板を用いた場合を例に挙げて説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1〜3を用いて、本発明のレーザパターニング装置の第1の実施形態を説明する。
図1に示すように、このレーザパターニング装置は、薄膜太陽電池形成基板1を巻取った巻出しロール2が収容される巻出し室3と、薄膜太陽電池形成基板1を巻取る巻取りロール4が収容される巻取り室5と、巻出し室3と巻取り室5との間で薄膜太陽電池形成基板1の搬送方向(図中の矢印方向)に沿って配置されるレーザ加工室10とで主に構成される。
【0024】
巻出し室3及び巻取り室5には、薄膜太陽電池形成基板1をガイドしつつ、薄膜太陽電池形成基板1にかかる張力を均一にするためのガイドローラ6,7が、それぞれ複数個(本実施形態では2個)設けられている。
【0025】
レーザ加工室10には、レーザ加工ユニット20と、加工ステージ30と、皺取り装置40とが配置されている。
【0026】
レーザ加工ユニット20は、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面にレーザ光を照射してパターニングする装置であって、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面に対向して配置されている。
【0027】
レーザ加工ユニット20は、レーザ発振器21と、レーザ発振器21から出力されたレーザ光をレーザ出力系23へと導く光ファイバー22と、レーザ出力系23をX−Y方向に移動させるXYステージ24とを備えている。また、レーザ出力系23は、レーザ発振器21から出力されたレーザ光を反射して、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面に導くレーザ用ミラー25を備えている。
【0028】
加工ステージ30は、薄膜太陽電池形成基板1を、加工基準面の所定位置に固定配置するものであり、図示しない昇降装置によって昇降可能とされている。
【0029】
図2を併せて参照すると、この加工ステージ30は、額縁状をなす加工基準面33を有し、その内周が開口部31をなしている。そして、開口部31の背面側は、加工基準面33に対して垂直な周壁37と、該周壁37の長辺方向の底部から中央部に向けて縮径するように延出された底壁36と、底壁36の中央部に形成されたスリット状の開口部32とで囲まれている。スリット状の開口部32は、レーザパターニング時に発生した加工残渣の排出口をなし、吸引装置35(図1参照)で負圧吸引することにより、加工残渣が、スリット状の開口部32を通して系外に廃棄されるようになっている。
【0030】
加工基準面33には、複数の吸引孔34が形成されている。吸引装置35で吸引孔34を負圧吸引することにより、薄膜太陽電池形成基板1が加工基準面33に吸着固定される。
【0031】
吸引孔34の孔径は、φ0.3〜φ1.5mmが好ましく、φ0.5〜φ1.0mmがより好ましい。吸引孔34の孔径がφ2.0mmを超えると、薄膜太陽電池形成基板1の吸着固定時に、薄膜太陽電池形成基板1が変形する恐れがある。
【0032】
図3を併せて参照すると、皺取り装置40は、加工ステージ30に配置される薄膜太陽電池形成基板1の皺を取り除く装置であり、薄膜太陽電池形成基板1の加工領域の外周を、幅方向の両側外方(図3のA,B方向)と、搬送方向の前後外方(図3のC,D方向)とのそれぞれに張力がかかるように、引っ張る手段で構成されている。
【0033】
この皺取り装置40は、薄膜太陽電池形成基板1を損傷しない材質からなるプレート41からなり、加工基準面33に沿って複数個所(この実施形態では8か所)に配置されている。プレート41の材質としては、特に限定は無く、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム系材料が挙げられる。プレート41は、薄膜太陽電池形成基板1の搬送時及び位置決め時は、薄膜太陽電池形成基板1から所定の距離をおいて離れているが、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時に、薄膜太陽電池形成基板1の加工基準面33上に位置する部分を押し付け、加工ステージ30の外周方向へ向かって水平移動するように、図示しない制御装置で駆動制御されている。
【0034】
すなわち、この実施形態では、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時において、加工基準面33の両側に配置されたプレート41aは、薄膜太陽電池形成基板1に押し付けつつ、薄膜太陽電池形成基板1の幅方向外側(図3のA,B方向)に水平移動するように駆動制御されている。また、加工基準面33の前方に配置されたプレート41b及び後方に配置されたプレート41cは、それぞれ薄膜太陽電池形成基板1に押し付けつつ、薄膜太陽電池形成基板1の搬送方向の前後外方(図3のC,D方向)に水平移動するように駆動制御されている。
【0035】
次に、図1に示すレーザパターニング装置を用いた場合を例に挙げて、本発明のレーザパターニング方法の第1の実施形態について説明する。
【0036】
薄膜太陽電池形成基板1を巻出しロール2から引き出してレーザ加工室10に導く。そして、薄膜太陽電池形成基板1の位置決めを行った後、図示しない昇降装置を作動して加工ステージ30を薄膜太陽電池形成基板1に向かって近接させ、加工ステージ30の所定位置に薄膜太陽電池形成基板1を配置する。
【0037】
薄膜太陽電池形成基板1の位置の位置決め方法としては特に限定はない。従来公知の方法を採用できる。例えば、マーカーホールを基準に位置決めセンサにより位置決め停止する方法が挙げられる。なお、薄膜太陽電池形成基板1の搬送時及び位置決め時は、薄膜太陽電池形成基板1と、加工ステージの加工基準面33とは、所定の距離をおいて離れている。
【0038】
次に、吸引装置35を作動して吸引孔34を負圧吸引し、薄膜太陽電池形成基板1の周縁部を、加工基準面33に吸着固定する。そして、吸引装置35の作動と同時あるいは、作動後、プレート41a、41b、41cを、それぞれ薄膜太陽電池形成基板1に押し付けると共に、加工ステージの外周方向へ水平移動させて、薄膜太陽電池形成基板1の加工領域外周を幅方向外側(図3のA,B方向)及び搬送方向の前後外方(図3のC,D方向)に引っ張る。
【0039】
薄膜太陽電池形成基板1の加工領域の外周が、プレート41a、41b、41cで、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張られるので、薄膜太陽電池形成基板1は、反り、弛み、皺等が無く、極めて平坦な状態で加工基準面33に固定される。
【0040】
そして、加工ステージ30に薄膜太陽電池形成基板1が固定された状態で、吸引装置35を作動させ、レーザ発振器21からレーザ光を出力し、レーザ出力系23をX−Y方向に走査して、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面をレーザパターニングする。
【0041】
この実施形態によれば、薄膜太陽電池形成基板1を、反り、弛み、皺等が無く、極めて平坦な表面状態で加工ステージ30に固定配置できるので、加工精度が良好で、歩留まりが良い。また、加工残渣の一部が薄膜太陽電池形成基板1の裏面に回り込んだとしても、加工ステージ30のスリット状の開口部32から系外に廃棄されるので、加工残渣が薄膜太陽電池形成基板1に付着するといった不具合の発生を抑制できる。
【0042】
(第1の実施形態の変形例1)
本発明のレーザパターニング装置の第1の実施形態の変形例1について、図4を用いて説明する。
この実施形態のレーザパターニング装置は、第1の実施形態と基本構成は同一であるが、皺取り装置40aが、図4に示す構成をなしている点で相違する。
【0043】
すなわち、この皺取り装置40aは、薄膜太陽電池形成基板1を損傷しない材質からなるローラ42a,42b,42cが、加工基準面33に沿って、加工基準面33の両側辺及び加工基準面33の前後辺部にそれぞれ配置されている。ローラの材質としては、特に限定は無く、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム系材料が挙げられる。
【0044】
ローラ42a,42b,42cは、薄膜太陽電池形成基板1の搬送時及び位置決め時は、薄膜太陽電池形成基板1から所定の距離をおいて離れているが、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時に、薄膜太陽電池形成基板1に押し付けると共に、薄膜太陽電池形成基板1が加工ステージ30の外周方向に移動するように、図示しない駆動装置によって、図4中の矢印で示すように回転する。すなわち、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時において、加工基準面33の両側に配置されたローラ42aは、薄膜太陽電池形成基板1に押し付けられて、薄膜太陽電池形成基板1が加工ステージ30の幅方向外側に移動する方向に回転し、加工基準面33の前方に配置されたローラ42b及び後方に配置されたローラ42cは、それぞれ薄膜太陽電池形成基板1に押し付けられて、薄膜太陽電池形成基板1が加工ステージ30の搬送方向の前後外方に移動する方向に回転する。
【0045】
(第1の実施形態の変形例2)
本発明のレーザパターニング装置の第1の実施形態の変形例2について、図5を用いて説明する。
この実施形態のレーザパターニング装置は、第1の実施形態と基本構成は同一であるが、皺取り装置40bが、図5に示す構成をなしている点で相違する。
【0046】
すなわち、この皺取り装置40bは、薄膜太陽電池形成基板1を損傷しない材質からなるローラ43が、加工基準面33に沿って、加工基準面33の両側辺に配置されたローラ43aと、加工基準面33の角部に斜めに配置されたローラ43bとで構成されている。ローラの材質としては、特に限定は無く、シリコンゴム、ウレタンゴム等のゴム系材料が挙げられる。
【0047】
ローラ43a,43bは、薄膜太陽電池形成基板1の搬送時及び位置決め時は、薄膜太陽電池形成基板1から所定の距離をおいて離れているが、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時に、薄膜太陽電池形成基板1に押し付けると共に、薄膜太陽電池形成基板1が加工ステージ30の外周方向に移動するように、図示しない駆動装置によって図5中の矢印方向に回転する。すなわち、薄膜太陽電池形成基板1の皺取り時において、加工基準面33の両側辺に配置されたローラ43aは、薄膜太陽電池形成基板1に押し付けられ、薄膜太陽電池形成基板1が加工ステージ30の幅方向外側に移動する方向に回転し、加工基準面33の角部に配置されたローラ43bは、それぞれ薄膜太陽電池形成基板1に押し付けられ、薄膜太陽電池形成基板1に対して加工ステージ30の搬送方向前後に張力が作用するように、斜め外方に移動する方向に回転する。
【0048】
(第2の実施形態)
本発明のレーザパターニング装置の第2の実施形態について、図6〜9を用いて説明する。この実施形態のレーザパターニング装置は、第1の実施形態と基本構成は同一であるが、加工ステージ、皺取り装置が第1の実施形態と相違している。
【0049】
図7に示すように、この実施形態では、加工ステージ30aは、長尺の板状の形状をなしている。また、加工基準面33aには、吸引孔34aが複数形成されている。吸引装置35(図6参照)で吸引孔34aを負圧吸引することにより、薄膜太陽電池形成基板1の加工領域裏面が、加工基準面33aに吸着固定される。
【0050】
加工ステージ30aは、幅方向の長さが、薄膜太陽電池形成基板1の幅方向の長さよりも短くされている。好ましくは、10〜50mm短くされ、より好ましくは30〜40mm短くされている。加工ステージ30aの幅方向の長さが、薄膜太陽電池形成基板1の幅方向の長さよりも短くされているので、薄膜太陽電池形成基板1の両端を、後述するグリップ60(図8,9参照)で保持しつつ、薄膜太陽電池形成基板1の裏面を加工ステージ30aの加工基準面に当接させることができる。その結果、薄膜太陽電池形成基板1の弛みや反りなどを効率よく解消して、皺の発生を抑制できる。
【0051】
図8、9を併せて参照すると、加工ステージ30aの下面に配置された薄膜太陽電池形成基板1の幅方向両端には、左右一対のグリップ60a、60b、60c(以下、これらを総称して「グリップ60」とする)が、搬送方向に沿って複数組(この実施形態では3対)配置されている。
【0052】
グリップ60は、上部押圧部61と、下部押圧部62とで構成され、それぞれ支軸63を介して、開閉装置64に接続されている。開閉装置64は、支軸63を介して、上部押圧部61と、下部押圧部62とを開閉させるように構成されている。
【0053】
グリップ60の材質は、特に限定は無く、薄膜太陽電池形成基板1を損傷しない材質からなるものであればよい。例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、ふっ素ゴム等が挙げられる。
【0054】
また、グリップ60の表面には、凹凸加工が施されていても良い。グリップ60の表面に凹凸を形成することで、グリップ60で薄膜太陽電池形成基板1を保持した際に、滑りを防止することができる。このため、薄膜太陽電池形成基板1に対して効率よく張力を加えて引っ張ることができる。
【0055】
開閉装置64は、支持板65、ロッド68を介して、加工ステージ30a上に設置されたエアシリンダ66に連結されている。そして、エアシリンダ66の作動により、ロッド68が伸縮することによって、グリップ60が薄膜太陽電池形成基板1に対して内方及び外方に移動するようになっている。
【0056】
また、エアシリンダ66は、支軸67を介して、加工ステージ30aに対して回動可能に設置されており、それによって、図8に示すように、薄膜太陽電池形成基板1の搬送方向に対して、グリップ60の支軸30の角度を所定角度、好ましくは30〜150°の角度範囲で変更可能となっている。
【0057】
この実施形態の場合、薄膜太陽電池形成基板1の搬送方向に沿って中央に位置する左右一対のグリップ60bは、その支軸67が、上記搬送方向に対してほぼ直角に伸びるように配置され、搬送方向の前方に位置する左右一対のグリップ60aは、その支軸67が、搬送方向に向けて斜め外方に伸びるように配置され、搬送方向の後方に位置する左右一対のグリップ60cは、その支軸67が搬送方向後方に向けて斜め外方に伸びるように配置されている。
【0058】
次に、図6に示すレーザパターニング装置を用いた場合を例に挙げて、本発明のレーザパターニング方法の第2の実施形態について説明する。
【0059】
薄膜太陽電池形成基板1を巻出しロール2から引き出してレーザ加工室10に導く。そして、薄膜太陽電池形成基板1の位置決めを行った後、図示しない昇降装置を作動して加工ステージ30aを薄膜太陽電池形成基板1に向かって近接させ、加工ステージ30aの所定位置に薄膜太陽電池形成基板1を配置する。
【0060】
次に、吸引装置35を作動して、吸引孔34aを負圧吸引し、薄膜太陽電池形成基板1の裏面を加工基準面33a上に吸着固定する。
【0061】
そして、開閉装置64を作動させて、グリップ60の上部押圧部61と下部押圧部62とで、薄膜太陽電池形成基板1の両側辺を挟持させる。続いて、エアシリンダ66を作動させて、ロッド68をより長く突出させて、グリップ60で挟持した薄膜太陽電池形成基板1の両側辺を外方に引っ張る。
【0062】
その結果、薄膜太陽電池形成基板1の搬送方向に沿って中央に位置する左右一対のグリップ60bは、薄膜太陽電池形成基板1の両側辺を幅方向外方に引っ張られ、搬送方向の前方に位置する左右一対のグリップ60aは、薄膜太陽電池形成基板1の両側辺を搬送方向に向けて斜め外方に引っ張られ、搬送方向の後方に位置する左右一対のグリップ60cは、薄膜太陽電池形成基板1の両側辺を搬送方向後方に向けて斜め外方に引っ張られる。
【0063】
このようにすることで、薄膜太陽電池形成基板1の裏面が、加工ステージに吸着固定され、薄膜太陽電池形成基板1の加工領域外周が、幅方向外側及び搬送方向の前後外方に引っ張られるので、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面に、反り、弛み、皺等の無い状態で加工基準面33aの所定位置に固定配置される。
【0064】
そして、この状態で、レーザ発振器21からレーザ光を出力し、レーザ出力系23をX−Y方向に走査して、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面をレーザパターニングする。
【0065】
この実施形態においても、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面に、反り、弛み、皺等の無い状態で加工基準面33の所定位置に固定配置できるので、薄膜太陽電池形成基板1のレーザ加工面が極めて平坦な状態でレーザ光を照射できる。このため、加工精度が良好で、歩留まりが良い。
【0066】
なお、グリップ60として、第1の実施形態の変形例2と同様に、一対のローラで構成されたものを使用することもでき、その場合には、ローラを回転させることにより、薄膜太陽電池形成基板1に対して張力を与えることができる。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
ポリイミドフィルムに、シリコン膜が2μm製膜されたものを試料片とし、この試料片を、図6〜9に示すレーザパターニング装置を用い、吸引孔34aを負圧吸引して加工ステージ30aに試料片を吸着固定すると共に、グリップ60aを、薄膜太陽電池形成基板1の進行方向に対して水平方向に45°、グリップ60bを、薄膜太陽電池形成基板1の進行方向に対して水平方向に90°、グリップ60cを、薄膜太陽電池形成基板1の進行方向に対して水平方向に135°に設定して、それぞれの方向に引っ張り、この状態でレーザ光を操作して、レーザパターニングを行った。
レーザパターニング中は、試料片に反り、弛み、皺等がなく、平坦性を確保でき、加工精度よくレーザパターニングを行うことができた。
【0068】
(比較例1)
実施例1において、グリップ60a、60b、60cのそれぞれを、薄膜太陽電池形成基板1の進行方向に対して水平方向に90°に設定して引っ張った。しかしながら、試料片の搬送方向に沿って、スジ状の皺が発生した。張力を高めてもスジ状の皺を解消できなかった。
【符号の説明】
【0069】
1:薄膜太陽電池形成基板
2:巻出しロール
3:巻出し室
4:巻取りロール
5:巻取り室
6,7:ガイドローラ
10:レーザ加工室
20:レーザ加工ユニット
21:レーザ発振器
22:光ファイバー
23:レーザ出力系
24:XYステージ
25:レーザ用ミラー
30、30a:加工ステージ
31、32:開口部
33、33a:加工基準面
34、34a:吸引孔
35:吸引装置
40、40a、40b:皺取り装置
41、41a、41b,41c:プレート
42a、42b、42c、43a、43b:ローラ
60、60a、60b:グリップ
61:上部押圧部
62:下部押圧部
63、67:支軸
64:開閉装置
65:支持板
66:エアシリンダ
68:ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が表面に形成され、ロールトゥーロールで搬送される可撓性基板が配置される加工基準面を備える加工部と、
前記加工基準面に配置された可撓性基板の皺取りを行う皺取り装置と、
前記可撓性基板に形成された薄膜にレーザ光を照射して所定のラインに沿ってレーザ光を走査させるレーザ光走査手段とを備えたレーザパターニング装置であって、
前記皺取り装置は、前記可撓性基板の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張る手段で構成されていることを特徴とするレーザパターニング装置。
【請求項2】
前記加工基準面は、前記可撓性基板の周縁部のみが当接する形状をなしている、請求項1記載のレーザパターニング装置。
【請求項3】
前記加工部は、前記加工基準面の内側の前記可撓性基板が接しない背面側に、加工残渣の吸引部を有している、請求項2に記載のレーザパターニング装置。
【請求項4】
前記加工基準面は、前記可撓性基板の加工領域の背面側が少なくとも当接する形状をなしている、請求項1記載のレーザパターニング装置。
【請求項5】
前記加工部は、前記加工基準面に当接する可撓性基板を、前記加工基準面上に吸着する吸引機構を備える加工ステージを有する、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザパターニング装置。
【請求項6】
前記吸引機構は、吸引孔が形成された吸着面と、該吸着面の内部より吸引する機構とで構成されている請求項5に記載のレーザパターニング装置。
【請求項7】
前記加工基準面は、少なくとも前記加工部の周囲に前記可撓性基板の一部を接するように配置され、
前記皺取り装置は、前記可撓性基板を損傷しない材質からなるプレートと、このプレートを前記可撓性基板に押し付けて、前記加工部の外周方向に移動させる駆動機構とを有している請求項1〜6のいずれかに記載のレーザパターニング装置。
【請求項8】
前記加工基準面は、少なくとも前記加工部の周囲に前記可撓性基板の一部を接するように配置され、
前記皺取り装置は、前記可撓性基板を損傷しない材質からなるローラと、このローラを前記可撓性基板に押し付けて、前記可撓性基板が前記加工部の外周方向に移動するように回転させる回転機構とを有している請求項1〜6のいずれかに記載のレーザパターニング装置。
【請求項9】
前記皺取り装置は、前記可撓性基板の両側を把持して引っ張る把持機構からなり、該把持機構は、前記加工部の両側の搬送方向に沿って少なくとも3箇所に設けられた、前記可撓性基板を損傷しない材質からなる把持部を有し、前記把持部は、引っ張り方向及び引っ張り力を個別に調整可能とされている、請求項1〜6のいずれかに記載のレーザパターニング装置。
【請求項10】
前記把持部は、その引っ張り方向を、前記可撓性基板の搬送方向に対して30〜150°の角度範囲で調整可能とされている請求項9記載のレーザパターニング装置。
【請求項11】
前記把持部は、前記可撓性基板の両側面を挟み込む一対のローラで構成されている請求項9又は10に記載のレーザパターニング装置。
【請求項12】
薄膜が表面に形成された可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記可撓性基板を加工部の加工基準面に配置し、前記可撓性基板の加工領域の外周を、幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張ることにより、前記可撓性基板の皺取りを行い、その状態で前記可撓性基板に形成された薄膜をレーザ光によってパターニングすることを特徴とするレーザパターニング方法。
【請求項13】
前記加工基準面として、前記可撓性基板の周縁部のみが当接する形状のものを用い、前記可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記加工基準面に、前記可撓性基板の周縁部のみを当接させ、前記可撓性基板の周縁部を前記加工基準面に押し付けつつ、前記加工基準面の外周方向に引っ張ることにより前記可撓性基板の皺取りを行う、請求項12に記載のレーザパターニング方法。
【請求項14】
前記加工基準面として、前記可撓性基板の加工領域の背面側が少なくとも当接する形状のものを用い、前記可撓性基板をロールトゥーロールで搬送する過程で、前記加工基準面に、前記可撓性基板の加工領域の背面側を当接させ、前記加工部の両側の搬送方向に沿って少なくとも3箇所に設けられた把持部により前記可撓性基板の両側を把持し、該把持部によって前記可撓性基板の幅方向の両側外方と、搬送方向の前後外方とのそれぞれに張力がかかるように引っ張ることにより前記可撓性基板の皺取りを行う、請求項12に記載のレーザパターニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61506(P2012−61506A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208750(P2010−208750)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】