説明

レーザマーキング装置

【課題】基準焦点距離調整範囲より狭い範囲でのレーザ印字をする際にスポット径を小さく変更でき、線幅が細くサイズの小さい微小印字を可能とするレーザマーキング装置を提供する。
【解決手段】制御装置21は、第2入力装置24にて設定した実遠点距離に対するレーザ光の焦点位置におけるスポット径を記憶装置22から求めて、その求めたスポット径を基準スポット径dφより小径の新たな基準スポット径dφk1として、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射する。また、制御装置21は、第1入力装置23にて設定した基準スポット径dφより小径の目標スポット径dφpに対する収束レンズの焦点距離を記憶手段から求め、その求めた焦点距離を前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離とし、求めた実調整遠点距離に対する第1入力装置23にて設定した最小径よりも小径の目標スポット径dφpにて、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザマーキング装置は、レーザ発振器からのレーザ光を収束レンズにて集光して加工対象物の加工面に照射することによって加工面に文字、記号、図形等を印字(マーキング)する。近年、3次元の加工面に印字(レーザマーキング)可能なレーザマーキング装置が種々提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
この種の3次元印字可能なレーザマーキング装置は、収束レンズから加工面までの距離(収束レンズの焦点距離)が各位置で変化するため、変化する距離に応じて収束レンズの焦点距離を変更している。この焦点距離を変更するのに、ビームエキスパンダが用いられている。ビームエキスパンダは、収束レンズの入射側に配置し、ビームエキスパンダに設けた一対のレンズの相対距離を変化させて、収束レンズを介して加工面に集光されるレーザ光の焦点位置(焦点距離)を、光軸方向(Z軸方向)に移動させるものである。
【0004】
詳述すると、ビームエキスパンダの一対のレンズの相対距離を変化させると、収束レンズから出射されるレーザ光の集光角を変化させることができ、レーザ光の光軸方向(Z軸方向)に焦点位置(焦点距離)を移動させることができる。具体的には、集光角を小さくすると、焦点位置(焦点距離)が収束レンズから遠くなる。反対に、集光角が大きくなると、焦点位置(焦点距離)が収束レンズから近くなる。
【0005】
ここで、図4に示すように、焦点距離Dfにおけるレーザ光のビーム径、即ち、スポット径dφは、下記の関係式が成立し、集光角2θと反比例し、レーザ光の波長λに比例することが知られている。
【0006】
dφ=λ/πθ
従って、スポット径dφは、集光角2θが小さくなるほど、即ち、焦点位置が収束レンズから遠くなるほど大きくなる。反対に、スポット径dφは、集光角2θが大きくなるほど、即ち、焦点位置が収束レンズに近くなるほど小さくなる。
【0007】
ところで、2次元表面と同様に、3次元表面においても、各位置において均一な文字、記号、図形が印字(マーキング)されることが印字品質を上げるうえで要求されている。
しかしながら、3次元表面では、各位置で焦点位置が相違すると、前記したようにスポット径dφも相違する。その結果、例えば、3次元表面に直線を印字した時、線幅に異なる直線が印字されることになる。つまり、収束レンズから遠い位置では太い線が、収束レンズから近い位置では細い線が印字されてしまい、3次元表面では均一な線幅の直線が印字できないことになる。
【0008】
そこで、3次元印字可能なレーザマーキング装置では、常に、どの位置においても均一なサイズの文字、記号、図形等が印字されるために、どの位置においてもレーザ光のビーム径が同じになるようにしている。
【0009】
具体的には、レーザマーキング加工装置は、光軸方向に印字できる加工面、つまり、最も収束レンズから遠い最遠点距離の加工面(最遠点加工面)と最も収束レンズから近い最近点距離の加工面(最近点加工面)との間の範囲(基準焦点距離調整範囲)において、収束レンズの焦点位置(焦点距離)をビームエキスパンダにて調整できるようになっている。そして、この範囲(基準焦点距離調整範囲)において、収束レンズから最も遠い最遠点加工面までの最遠点距離を最遠点焦点距離として、この最遠点焦点距離でのレーザ光のスポット径dφを、基準スポット径として、最遠点距離より短い各面に照射されるレーザ光のビーム径を、ビームエキスパンダにてディフォーカスして基準スポット径と同じになるようにしている。
【0010】
ちなみに、最遠点焦点距離でのレーザ光のスポット径を基準スポット径としたのは、全ての位置においてレーザ光のビーム径を該基準スポット径(基準ビーム径)に形成することができるからである。つまり、最遠点焦点距離より短い焦点距離のスポット径を基準スポット径にすると、該焦点距離の加工面より遠い各位置の加工面においては基準スポット径と同じ径のビーム径をつくりだすことができず、基準スポット径より大きなスポット径しかできないからである。
【0011】
従って、この種の3次元印字可能なレーザマーキング装置では、常にどんな場合でも、最遠点焦点距離でのレーザ光のスポット径で規定された基準スポット径に集光されたレーザ光が加工表面に照射され、同じサイズの均一な文字、記号、図形等が形成(マーキング)されることになる。
【特許文献1】特開平02−174173号公報
【特許文献2】特開2008−62257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した3次元印字可能なレーザマーキング装置においては、常にどんな場合でも、基準スポット径のレーザ光が加工面に照射されて、該基準スポット径を変更することができなかった。
【0013】
従って、3次元印字可能なレーザマーキング加工装置は、前記基準焦点距離調整範囲以内であって最遠点距離よりも収束レンズに近い焦点位置の加工面しか持たない加工対象物に印字する場合でも、基準スポット径に集光されたレーザ光で印字していた。その結果、線幅が太くサイズの大きい文字、記号、図形等が印字されてしまい、線幅が細くサイズの小さい均一な文字、記号、図形等を印字することができなかった。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、基準焦点距離調整範囲より狭い範囲でのレーザ印字をする際にスポット径を小さく変更でき、線幅が細くサイズの小さい印字品質の高い印字を可能とするレーザマーキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光の方向を変更する光走査手段と、前記光走査手段からのレーザ光を収束し出射する収束レンズと、前記レーザ光源と前記光走査手段との間に配置され、前記収束レンズへの前記レーザ光の入射角度を変更することで、前記収束レンズで収束されるレーザ光の焦点距離を変更する焦点距離調整手段とを備え、前記レーザ光を、前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲における最遠点距離において収束可能な最小径にして、加工対象物に照射するようにしたレーザマーキング装置であって、前記最小径よりも小径のスポット径の設定を可能とするスポット径設定手段を備えた。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザマーキング装置において、前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲において、予め前記収束レンズの焦点距離に応じた前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を記憶する記憶手段と、前記焦点距離調整手段での基準焦点距離調整範囲内において、前記最遠点距離よりも短い実遠点距離を設定可能な実遠点距離入力手段とを備え、前記スポット径設定手段は、前記実遠点距離入力手段にて設定した前記実遠点距離に対する前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を前記記憶手段から求めて、その求めたスポット径を前記最小径より小径のスポット径の設定を可能とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は請求項2に記載のレーザマーキング装置において、前記スポット径設定手段は、前記最小径よりも小径のスポット径にて、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射するように、前記焦点距離調整手段を駆動制御する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、前記記憶手段から求めたスポット径を小径のスポット径として、その小径のスポット径を表示手段に表示することを特徴とするレーザマーキング装置。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項に記載のレーザマーキング装置において、前記実遠点距離入力手段は、前記実遠点距離入力手段にて設定した実遠点距離に対して前記記憶手段から求めた先のスポット径を微調整する微調整手段を備え、前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整したスポット径が、前記記憶手段から求めた先のスポット径よりも小径のとき、その旨を報知手段にて報知する。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のレーザマーキング装置において、 前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整したスポット径が、前記記憶手段から求めた先のスポット径よりも小径のとき、前記微調整手段で微調整したスポット径の設定を禁止する。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載のレーザマーキング装置において、前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲において、予め前記収束レンズの焦点距離に応じた前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を記憶する記憶手段と、前記最小径よりも小径のスポット径を目標スポット径として設定可能な目標スポット径入力手段とを備え、前記スポット径設定手段は、前記目標スポット径入力手段にて設定した前記目標スポット径に対する前記収束レンズの焦点距離を前記記憶手段から求め、その求めた焦点距離を前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離として表示手段に表示する。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のレーザマーキング装置において、前記スポット径設定手段は、求めた前記実調整遠点距離に対する前記目標スポット径入力手段にて設定した前記最小径よりも小径の目標スポット径にて、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射するように、前記焦点距離調整手段を駆動制御する。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載のレーザマーキング装置において、目標スポット径入力手段は、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離を微調整する微調整手段を備え、前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、その旨を報知手段にて報知する。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のレーザマーキング装置において、前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、前記微調整手段で微調整した実調整遠点距離の設定を禁止する。
【0025】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザマーキング装置において、前記レーザ光のパワーを変更可能にするパワー調整手段を備え、前記スポット径設定手段は、設定したスポット径に応じて、照射エネルギー密度が一定になるように前記パワー調整手段を介して前記レーザ光のパワーを変更する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、スポット径設定手段を設けたことにより、基準焦点距離調整範囲より狭い範囲でのレーザ印字をする際にスポット径を小さく変更でき、線幅が細くサイズの小さい印字品質の高い印字をおこなうことができる。
【0027】
請求項2に記載の発明によれば、実遠点距離入力手段にて加工対象物の実遠点距離を設定入力にすると、スポット径設定手段は、その設定した実遠点距離に対するレーザ光の焦点位置におけるスポット径を最小径よりも小径の新たなスポット径が設定される。
【0028】
従って、基準焦点距離調整範囲より狭い範囲の加工対象物の加工面にレーザ印字をする際に、実遠点距離を設定するだけで、スポット径を小さく変更でき、線幅が細くサイズの小さい微小印字をおこなうことができる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、前記加工対象物の加工面の各位置にその求めたスポット径を最小径より小径のスポット径としてレーザ光を照射する。
請求項4に記載の発明によれば、表示手段を見ることにより、加工面に照射されるレーザ光のスポット径が確認できる。
【0030】
請求項5に記載の発明によれば、ユーザは、微調整したスポット径が、スポット径よりも小径のとき、その旨を報知手段にて知ることができる。
請求項6に記載の発明によれば、先に設定したスポット径を微調整したとき、微調整したスポット径が、スポット径よりも小径のとき、微調整したスポット径にできないとして設定を禁止する。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、目標スポット径入力手段にて最小径よりも小径の目標スポット径を設定するだけで、その目標スポット径で印字可能な最遠点距離よりも短い実調整遠点距離が表示手段にて確認することができる。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、目標スポット径入力手段にて最小径よりも小径の目標スポット径を設定入力すると、スポット径設定手段は、その目標スポット径に対する最遠点距離よりも短い実調整遠点距離の範囲で、目標スポット径入力手段で入力した目標スポット径で、レーザ印字ができる。
【0033】
請求項9に記載の発明によれば、ユーザは、微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、その旨を報知手段にて知ることができる。
【0034】
請求項10に記載の発明によれば、ユーザは、微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、先に設定した目標スポット径に対する最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、微調整した実調整遠点距離にできないとして設定を禁止する。
【0035】
請求項11に記載の発明によれば、スポット径設定手段は、設定したスポット径に応じて、レーザ光のパワーを変更して照射エネルギー密度が一定になるようにマーキングを行うことができる。従って、例えば、薄い加工対象物を損傷させることなくマーキング加工ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した3次元印字が可能なレーザマーキング装置の一実施形態を図面に従って説明する。図1はレーザマーキング装置の概略構成図を示す。
図1に示すように、レーザマーキング装置10は、レーザ光を出射するレーザ光源としてのレーザ発振器11、レーザ光の焦点位置を調整する焦点距離調整手段としてのビームエキスパンダ12、レーザ光をX方向及びY方向に走査する光走査手段としての走査部13、レーザ光を集光して加工対象物Wの加工面Wsに照射する収束レンズ14を有している。
【0037】
レーザ発振器11は、励起光を出射する半導体レーザを備え、半導体レーザから出射された励起光を入射し該励起光に基づいて共振してレーザ光を出射する。レーザ発振器11は、この励起光のパワーを調整することによってレーザ発振器11から出射するレーザ光のパワーが制御される。レーザ発振器11から出射されたレーザ光は、ビームエキスパンダ12に出射される。
【0038】
ビームエキスパンダ12は、レーザ光を入射する入射レンズ12aと、入射レンズ12aを通過したレーザ光を走査部13に出射する出射レンズ12bを備えている。入射レンズ12a及び出射レンズ12bは、互いに平行に配置されている。そして、入射レンズ12aは出射レンズ12bに対して光軸方向に移動可能に配置され、入射レンズ12aと出射レンズ12bとの相対距離Dを変化させることができるようになっている。なお、入射レンズ12aと出射レンズ12bとの間に、複数の反射ミラーを配置して、入射レンズ12aと出射レンズ12bの間の光路長を変更してもよい。
【0039】
入射レンズ12aは、焦点距離調整モータMfに駆動連結され、焦点距離調整モータMfを正逆回転させることにより光軸に沿って往復移動し、出射レンズ12bとの相対距離Dを変化させることができるようになっている。レンズ12a、12b間の相対距離Dを変化させると、収束レンズ14を介して加工対象物Wへ集光されるレーザ光の焦点位置(収束レンズ14の焦点距離Df)を、光軸方向に移動させることができる。
【0040】
詳述すると、相対距離Dが変化すると、出射レンズ12bから収束レンズ14へ出射されるレーザ光の入射角度が変化し、レーザ光の光軸方向に焦点位置が移動し、収束レンズ14の焦点距離Dfが変化する。
【0041】
具体的には、相対距離Dが短くなると、入射角度(集光角2θ)が小さくなり、焦点距離Dfが長くなって焦点位置が収束レンズ14から遠くなる。反対に、相対距離Dが長くなると、入射角度(集光角2θ)が大きくなり、焦点距離Dfが短くなって焦点位置が収束レンズ14に近くなる。
【0042】
本実施形態では、加工対象物Wに対して光軸方向(Z軸方向)に印字できる加工面Wsの最大許容範囲が予め決められている。つまり、収束レンズ14から最も遠い距離の印字可能な加工面又は点(以下、総称して最遠点加工面Sbという)と収束レンズから最も近い距離の印字可能な加工面又は点(以下、総称して最近点加工面Sfという)とが、予め決められている。そして、この最遠点加工面Sbから最近点加工面Sfまでの範囲(基準焦点距離調整範囲Zw)内の各加工面において、そのZ軸方向に垂直な各加工面毎にレーザ光が集光するように、ビームエキスパンダ12は、入射レンズ12aと出射レンズ12bの相対距離Dを調整させることで収束レンズ14の焦点距離Dfを調整することができるようになっている。
【0043】
ちなみに、ここでは、収束レンズ14から基準焦点距離調整範囲Zwの最遠点加工面Sb(最遠点)における収束レンズ14の焦点距離Dfを最遠点焦点距離Dfbとし、収束レンズ14から基準焦点距離調整範囲Zwの最近点加工面Sf(最近点)における収束レンズ14の焦点距離Dfを最近点焦点距離Dffとする。
【0044】
ビームエキスパンダ12を通過したレーザ光は走査部13に出射される。走査部13は、X軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bを備えている。
X軸ガルバノミラー13aは、回動して加工対象物Wに向けて照射するレーザ光を、加工対象物Wの加工面Wsに対して、光軸に対して垂直の面の一方向(X方向)に走査させるミラーである。X軸ガルバノミラー13aは、X軸ガルバノモータMxの回転軸に固着され、X軸ガルバノモータMxの駆動により回動されて、加工対象物Wに向けて照射するレーザ光を、その加工面Wsに対してX方向に走査させる。
【0045】
Y軸ガルバノミラー13bは、回動して加工対象物に向けて照射するレーザ光を、加工対象物Wの加工面Wsに対して、光軸に対して垂直の面のX方向に対して直交する方向(Y方向)に走査させるミラーである。Y軸ガルバノミラー13bは、Y軸ガルバノモータMyの回転軸に固着され、Y軸ガルバノモータMyの駆動により回動されて、加工対象物Wに向けて照射するレーザ光を、その加工面Wsに対してY方向に走査させる。
【0046】
従って、加工対象物Wに向けて照射するレーザ光は、X軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bにより、加工対象物Wの加工面Wsに対して、X方向及びY方向に走査される。
【0047】
走査部13のX軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bにてX及びY方向に走査されたレーザ光は、収束レンズ14を介して集光されて加工対象物Wの加工面Wsに照射される。収束レンズ14は、走査部13からのレーザ光を入射し加工対象物Wの加工面Wsに集光する。このとき、収束レンズ14の焦点距離Dfは、ビームエキスパンダ12に設けた入射レンズ12aと出射レンズ12bの相対距離Dが変更されることにより、変更される。
【0048】
次に、上記のように構成したレーザマーキング装置10の電気的構成を図2に示す電気ブロック回路図に従って説明する。
図2において、レーザマーキング装置10は、スポット径設定手段としての制御装置21、記憶手段としての外部記憶装置22、目標スポット径入力手段としての第1入力装置23、実遠点距離入力手段としての第2入力装置24、焦点距離調整手段を構成する焦点距離調整モータ駆動回路25、光走査手段を構成するガルバノモータ駆動回路26を備えている。
【0049】
制御装置21は、第1入力装置23、第2入力装置24、焦点距離調整モータ駆動回路25、ガルバノモータ駆動回路26と電気的に接続され、レーザマーキング装置10全体を統括制御する。制御装置21は、中央処理装置(CPU)、ROM及びRAMを備えたマイクロコンピュータよりなる。制御装置21(CPU)は、ROM及びRAMに記憶した制御プログラム及びアプリケーションプログラムに従って、レーザ発振器11の発振動作制御、焦点距離調整モータMfの焦点距離調整動作制御、X軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bの走査動作制御をそれぞれ実行する。
【0050】
外部記憶装置22は、ビームエキスパンダ12に備えた入射レンズ12aと出射レンズ12bとの相対距離Dを決めるための焦点距離・スポット径データ、基準焦点距離調整データを記憶している。
【0051】
焦点距離・スポット径データは、ビームエキスパンダ12に設けた入射レンズ12aと出射レンズ12bとの相対距離Dに対するその時の収束レンズ14の焦点距離Dfとその時のスポット径dφのデータである。本実施形態では、基準焦点距離調整範囲Zw(即ち、最近点焦点距離Dffから最遠点焦点距離Dfbまで)の焦点距離Dfに対するスポット径dφと相対距離Dのデータが焦点距離・スポット径データとして外部記憶装置22に記憶している。
【0052】
従って、収束レンズ14から加工面Wsまでの距離(焦点距離Df)がわかれば、その時の相対距離Dとスポット径dφが焦点距離・スポット径データから求めることができる。また、相対距離Dがわかれば、その時の焦点距離Dfとスポット径dφが焦点距離・スポット径データから求めることができる。さらに、スポット径dφがわかると、その時の相対距離Dと焦点距離Dfが焦点距離・スポット径データから求めることができる。
【0053】
一方、基準焦点距離調整データは、基準焦点距離調整範囲Zwにある各加工面に照射するレーザ光のビーム径が、最遠点加工面Sb(収束レンズ14の焦点距離Dfが最遠点焦点距離Dfb)で集光させるレーザ光のスポット径dφ(基準スポット径dφk)にするための各加工面に対する入射レンズ12aと出射レンズ12bとの相対距離Dのデータである。
【0054】
つまり、基準焦点距離調整データは、最遠点加工面Sbを除く基準焦点距離調整範囲Zwにある全ての加工面Wsに対する収束レンズ14の焦点距離Dfをそれぞれ外して、全ての加工面に基準スポット径dφkでレーザ光を照射するためのデータであって、収束レンズ14から該加工面Wsまでの距離に対する相対距離Dのデータである。
【0055】
従って、収束レンズ14から加工面Wsの距離がわかれば、加工面Wsに基準スポット径dφkのビーム光を照射するための相対距離Dが基準焦点距離調整データから求めることができる。
【0056】
第1入力装置23は、ユーザが3次元の加工面Wsを有する実際の加工対象物Wに照射するレーザ光のスポット径dφを適宜設定できる選択スイッチを有する入力装置である。
ユーザは、収束レンズ14の最遠点焦点距離Dfbにおけるスポット径dφ(基準スポット径dφk)から、収束レンズ14の最近点焦点距離Dffにおけるスポット径dφまでの範囲の目的のスポット径dφ(目標スポット径dφp)を選択することができるようになっている。
【0057】
ユーザは、実際に3次元印字を行う加工対象物Wについて、実際の加工対象物Wの加工面Wsであって収束レンズ14から最も遠い実際の加工面(実最遠点加工面)が、最遠点加工面Sbより収束レンズ14に近い場合であって、前記基準スポット径dφkよりも小さい、スポット径dφ(目標スポット径dφp(<dφk))で3次元印字したい場合に、第1入力装置23を使用する。
【0058】
これは、最遠点加工面Sbから最近点加工面Sfまでの基準焦点距離調整範囲Zw内を基準スポット径dφkで3次元印字が可能なレーザマーキング装置10が、収束レンズ14からの距離が最遠点加工面Sbの最遠点距離より実最遠点加工面の実遠点距離のほうが短い場合、その基準スポット径dφkより短いスポット径dφ(目標スポット径dφp)を指定すれば、その目標スポット径dφpで加工対象物Wに3次元印字を行うことができることを意味する。
【0059】
つまり、第1入力装置23にて目的のスポット径dφ(目標スポット径dφp)が選択されると、制御装置21において、加工対象物Wの実最遠点加工面の収束レンズ14までの実遠点距離が特定される。
【0060】
第2入力装置24は、ユーザが3次元の加工面Wsを有する実際の加工対象物Wの加工面Wsであって、収束レンズ14から最も遠い実際の加工面Ws(実最遠点加工面)が、最遠点加工面Sbより収束レンズ14に近い場合であって、収束レンズ14からその実最遠点加工面までの実遠点距離(実遠点焦点距離)を適宜設定できる選択スイッチを有する入力装置である。
【0061】
ユーザは、加工対象物Wの実最遠点加工面が、最遠点加工面Sbより収束レンズ14に近い場合、収束レンズ14の焦点距離Dfを実遠点焦点距離にして形成されるレーザ光のスポット径dφを新たな基準スポット径dφk1(<dφk)としてその加工対象物Wの各加工面Wsに印字を行いたい場合に、第2入力装置24を使用する。
【0062】
従って、実遠点焦点距離に収束レンズ14の焦点距離Dfを設定したとき、実遠点焦点距離が最遠点焦点距離Dfbより短いため、最遠点焦点距離Dfbでの基準スポット径dφkより小さい新たな基準スポット径dφk1で加工対象物Wの各加工面が印字される。
【0063】
制御装置21は、第1入力装置23からの最小スポット径としての目標スポット径dφpを入力すると、目標スポット径dφpに対する実遠点距離(実遠点焦点距離)と相対距離Dを外部記憶装置22に記憶した焦点距離・スポット径データから求める。
【0064】
実遠点距離(実遠点焦点距離)が求まると、制御装置21は、第1入力装置23に設けた表示手段としてのディスプレイ23aに実遠点距離(実遠点焦点距離)を表示する。従って、ユーザは、目標スポット径dφpを指定するだけで、ディスプレイ23aにて加工対象物Wに対する実遠点距離が視認でき、レーザ印字の準備作業を効率よく進めることができる。
【0065】
続いて、制御装置21は、実遠点距離(実遠点焦点距離)から最近点焦点距離Dffまで、即ち、実最遠点加工面から最近点加工面Sfまでの各加工面Wsにおけるスポット径dφが、目標スポット径dφpとなるための相対距離Dを各加工面Ws毎に求める。
【0066】
詳述すると、実最遠点加工面では目標スポット径dφpとなるが、他の加工面Wsは実遠点距離(実遠点焦点距離)ではないため、目標スポット径dφpにする必要がある。そのために、各加工面Wsにおいて、その加工面Wsに対する収束レンズ14の焦点距離Dfを変更してその加工面Wsから外れた点でレーザ光が集光するように、各加工面Wsにおける相対距離Dを算出する。制御装置21は、算出した目標スポット径dφpに対する各加工面Wsの相対距離Dを第1スポット径データとして外部記憶装置22に記憶する。
【0067】
そして、制御装置21は、図示しない外部装置から加工対象物Wの加工面Wsに印字する印字データと、印字される加工面Wsの各位置の収束レンズ14からの距離とが入力されると、印字される加工面Wsの各位置における相対距離Dを、外部記憶装置22に記憶した第1スポット径データから求めるようになっている。
【0068】
各位置における相対距離Dが求まると、制御装置21は、印字データと加工面Wsの各位置での相対距離Dとに基づいて、各位置においてビームエキスパンダ12の入射レンズ12aを移動制御して、入射レンズ12aと出射レンズ12bを求めた相対距離Dにするための制御駆動信号を生成し焦点距離調整モータ駆動回路25に出力する。焦点距離調整モータ駆動回路25は、制御駆動信号に応答して焦点距離調整モータMfを駆動して入射レンズ12aを移動させ入射レンズ12aと出射レンズ12bを求めた相対距離Dにする。
【0069】
また、制御装置21は、印字データと加工面Wsの各位置での相対距離Dとに基づいて、X軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bを回動させるための制御駆動信号を生成しガルバノモータ駆動回路26に出力する。ガルバノモータ駆動回路26は、制御駆動信号に応答してX軸ガルバノモータMx及びY軸ガルバノモータMyを駆動させX軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bを回動させる。
【0070】
従って、ユーザが、目標スポット径dφpを入力すると、レーザマーキング装置10は、加工対象物Wの3次元加工面Wsの各位置に、基準スポット径dφkより小さい径の目標スポット径dφpに集光されたレーザ光を照射して、均一な文字等の印字が行われる。しかも、線幅が細くサイズの小さい文字等を加工対象物Wの3次元加工面Wsに印字することができる。
【0071】
一方、制御装置21は、第2入力装置24からの実遠点距離(実遠点焦点距離)を入力すると、実遠点距離(実遠点焦点距離)に対する最小スポット径としての新たな基準スポット径dφk1(<dφk)と相対距離Dを外部記憶装置22に記憶した焦点距離・スポット径データから求める。
【0072】
新たな基準スポット径dφk1が求まると、制御装置21は、第2入力装置24に設けた表示手段としてのディスプレイ24aに新たな基準スポット径dφk1を表示する。従って、ユーザは、実遠点距離(実遠点焦点距離)を指定するだけで、ディスプレイ24aにて加工対象物Wに照射されるレーザ光の新たな基準スポット径dφk1が視認でき、印字の出来上がりを予測することができる。
【0073】
続いて、制御装置21は、実遠点距離(実遠点焦点距離)から最近点焦点距離Dffまで、即ち、実最遠点加工面から最近点加工面Sfまでの各加工面Wsにおけるスポット径dφが、新たな基準スポット径dφk1となるための相対距離Dを、前記と同様に、各加工面Ws毎に求める。つまり、前記と同様に、実最遠点加工面は実遠点焦点距離となるが、他の加工面は、実遠点焦点距離ではないので、新たな基準スポット径dφk1にする必要がある。
【0074】
そのため、各加工面において、その加工面に対する収束レンズ14の焦点距離Dfを変更して、その加工面から外れた点でレーザ光が集光するように、各加工面における相対距離Dを算出する。制御装置21は、算出した新たな基準スポット径dφk1に対する各加工面Wsの相対距離Dを第2スポット径データとして外部記憶装置22に記憶する。
【0075】
そして、制御装置21は、前記と同様に、図示しない外部装置から加工対象物Wの加工面Wsに印字する印字データと、印字される加工面Wsの各位置の収束レンズ14からの距離とが入力されると、印字される加工面Wsの各位置における相対距離Dを、外部記憶装置22に記憶した第2スポット径データから求めるようになっている。
【0076】
各位置における相対距離Dを求めると、前記と同様に、制御装置21は、印字データと加工面Wsの各位置での相対距離Dとに基づいて、各位置においてビームエキスパンダ12の入射レンズ12aを移動制御して、入射レンズ12aと出射レンズ12bを求めた相対距離Dにするための制御駆動信号を生成し焦点距離調整モータ駆動回路25に出力する。焦点距離調整モータ駆動回路25は、制御駆動信号に応答して焦点距離調整モータMfを駆動して入射レンズ12aを移動させ入射レンズ12aと出射レンズ12bを求めた相対距離Dにする。
【0077】
また、制御装置21は、印字データと加工面Wsの各位置での相対距離Dとに基づいて、X軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bを回動させるための制御駆動信号を生成しガルバノモータ駆動回路26に出力する。ガルバノモータ駆動回路26は、制御駆動信号に応答してX軸ガルバノモータMx及びY軸ガルバノモータMyを駆動してX軸ガルバノミラー13a及びY軸ガルバノミラー13bを回動させる。
【0078】
従って、ユーザが、実遠点距離(実遠点焦点距離)を入力すると、レーザマーキング装置10は、加工対象物Wの3次元加工面Wsの各位置に、基準スポット径dφkより小さい径の新たな基準スポット径dφk1に集光されたレーザ光を照射して、均一な文字等の印字が行われる。しかも、線幅が細くサイズの小さい文字等を加工対象物Wの3次元加工面Wsに印字することができる。
【0079】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、目標スポット径dφpを選択することができる第1入力装置23を設け、制御装置21は、第1入力装置23にて設定した目標スポット径dφpに対する収束レンズ14の焦点距離Dfを記憶装置22から求めた。そして、制御装置21は、その求めた焦点距離Dfを最遠点距離よりも短い実調整遠点距離とし、求めた実調整遠点距離に対する基準スポット径dφkよりも小径の目標スポット径dφpにて、加工対象物Wの加工面Wsの各位置にレーザ光を照射するようにした。
【0080】
従って、目標スポット径dφpを入力するだけで、基準焦点距離調整範囲Zwより狭い範囲において、加工対象物Wの3次元加工面Wsの各位置に、基準スポット径dφkより小さい径の目標スポット径dφpに集光されたレーザ光を照射して、線幅が細くサイズの小さい均一な文字等を加工対象物Wの3次元加工面Wsに印字することができる。
【0081】
(2)本実施形態によれば、実遠点距離(実遠点焦点距離)を選択することができる第2入力装置24を設け、制御装置21は、第2入力装置24にて設定した実遠点距離に対するレーザ光の焦点位置におけるスポット径dφを記憶装置22から求めた。そして、制御装置21は、その求めたスポット径dφを基準スポット径dφkより小径の新たな基準スポット径dφk1として、加工対象物Wの加工面の各位置にレーザ光を照射するようにした。
【0082】
従って、実遠点距離(実遠点焦点距離)を入力するだけで、加工対象物Wの3次元加工面Wsの各位置に、基準焦点距離調整範囲Zwより狭い範囲において、基準スポット径dφkより小さい径の新たな基準スポット径dφk1に集光されたレーザ光を照射して、線幅が細くサイズの小さい均一な文字等を加工対象物Wの3次元加工面Wsに印字することができる。
【0083】
(3)上記実施形態によれば、第1入力装置23にディスプレイ23aを設け、そのディスプレイ23aに制御装置21が求めた目標スポット径dφpに対する実調整遠点距離を表示するようにした。従って。ユーザはディスプレイ23aにて加工対象物Wに対する実遠点距離を視認することにより、レーザ印字の準備作業を効率よく容易に進めることができる。
【0084】
(4)上記実施形態によれば、第2入力装置24にディスプレイ24aを設け、そのディスプレイ24aに制御装置21が求めた実遠点距離(実遠点焦点距離)に対する新たな基準スポット径dφk1を表示するようにした。従って。ユーザはディスプレイ23aにて加工対象物Wに対する実遠点距離が視認でき、レーザ印字の準備作業を効率よく進めることができる。従って、ユーザは、ディスプレイ24aにて新たな基準スポット径dφk1を視認することにより、容易に出来上がりを予測することができる。
【0085】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1入力装置23と第2入力装置24を備え、第1入力装置23にて目標スポット径dφpを入力することができ、第2入力装置24にて、実遠点距離(実遠点焦点距離)を入力することができるようにした。これを、第2入力装置24を省略し第1入力装置23のみを備えたレーザマーキング装置に具体化したり、反対に、第1入力装置23を省略し第2入力装置24のみを備えたレーザマーキング装置に具体化したりしてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、第1入力装置23と第2入力装置24を別々に設けたが、1つの入力装置で具体化して実施してもよい。
・上記実施形態では、第1入力装置23にディスプレイ23aを設けたが、ディスプレイ23aを省略して目標スポット径dφpに対する実調整遠点距離を表示しなくて実施するようにしてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、第2入力装置24にディスプレイ24aを設けたが、ディスプレイ24aを省略して実遠点距離(実遠点焦点距離)に対する新たな基準スポット径dφk1を表示しなくて実施するようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、ビームエキスパンダ12において、入射レンズ12aが出射レンズ12bよりサイズが小さいことから移動させるのに大型化及び複雑化を避けるために、出射レンズ12bを固定して入射レンズ12aを移動させるように構成したが、入射レンズ12aを固定した状態で出射レンズ12bを移動させるように構成してもよい。さらに、入射レンズ12a及び出射レンズ12bの両方をそれぞれ移動させるようにして入射レンズ12aと出射レンズ12bの相対距離Dを変更するように構成してもよい。
【0089】
・上記実施形態では、収束レンズ14を走査部13のレーザ光の出射側に配置した。これを、収束レンズ14を、走査部13のレーザ光の入射側に配置して実施してもよい。
・上記実施形態では、設定されたスポット径dφに対するレーザ光のパワーは特に限定していなかったが、設定されたスポット径dφに応じて変更するようにして実施してもよい。例えば、図3に示すように、レーザ発振器11に備えた励起光を出射する半導体レーザから出射された励起光のパワーを調整するレーザ駆動回路31に対して、パワー調整手段としての制御装置21は、設定したスポット径dφに対する予め設定したパワー値のレーザ光をレーザ発振器11から出射させるための駆動制御信号を出力する。レーザ駆動回路31は、この駆動制御信号に応答して半導体レーザから出射された励起光のパワーを調整し、そのレーザ発振器11から出射されるレーザ光のパワーを調整するようにようにして実施してもよい。
【0090】
この場合、設定したスポット径dφに関係なくレーザ光のパワーを変更して照射エネルギー密度が一定になるようにパワー値を設定すれば、常に均一なマーキング加工が行えるとともに、例えば、薄い加工対象物を損傷させることなくマーキング加工ができる。
【0091】
・上記実施形態では、第1入力装置23及び第2入力装置24によって、設定されたスポット径dφ(新たな基準スポット径dφk1、目標スポット径dφp)にて集光されたレーザ光を照射するようにした。第1入力装置23及び第2入力装置24に微調整手段を設け、微調整手段にてそれぞれ設定されたスポット径dφ又は実遠点距離を微調整できるようにして実施してもよい。
【0092】
そして、制御装置21は、微調整手段にてそれぞれ微調整されたスポット径dφ又は実遠点距離が、それぞれ微調整前の先に設定されたスポット径dφ又は実遠点距離より小径又は短いとき、その微調整したスポット径dφ又は実遠点距離を新たなスポット径dφ又は実遠点距離としないように禁止する。
【0093】
このとき、微調整したスポット径dφ又は実遠点距離を新たなスポット径dφ又は実遠点距離としないとき、報知手段を構成するディスプレイ23a,24aに、微調整されたスポット径dφ又は実遠点距離が、先に設定されたスポット径dφ又は実遠点距離より小径又は短いから設定できない旨の表示を行いユーザに間違いを報知するようにしてもよい。ユーザは、これにより次の作業に素早く進むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】レーザマーキング装置の概略構成図。
【図2】レーザマーキング装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【図3】レーザマーキング装置の別例を説明するための概略構成図。
【図4】焦点距離とスポット径の関係を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0095】
10…レーザマーキング装置、11…レーザ発振器、12…ビームエキスパンダ、12a…入射レンズ、12b…出射レンズ、13…走査部、13a…X軸ガルバノミラー、13b…Y軸ガルバノミラー、14…収束レンズ、21…制御装置、22…外部記憶装置、23…第1入力装置、24…第2入力装置、25…焦点距離調整モータ駆動回路、26…ガルバノモータ駆動回路、D…相対距離、Df…焦点距離、Dfb…最遠点焦点距離、Dff…最近点焦点距離、dφ…スポット径、Mf…焦点距離調整モータ、Mx…X軸ガルバノモータ、My…Y軸ガルバノモータ、Sb…最遠点加工面、Sf…最近点加工面、W…加工対象物、Ws…加工面、Zw…基準焦点距離調整範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光の方向を変更する光走査手段と、
前記光走査手段からのレーザ光を収束し出射する収束レンズと、
前記レーザ光源と前記光走査手段との間に配置され、前記収束レンズへの前記レーザ光の入射角度を変更することで、前記収束レンズで収束されるレーザ光の焦点距離を変更する焦点距離調整手段と
を備え、前記レーザ光を、前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲における最遠点距離において収束可能な最小径にして、加工対象物に照射するようにしたレーザマーキング装置であって、
前記最小径よりも小径のスポット径の設定を可能とするスポット径設定手段を備えたことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザマーキング装置において、
前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲において、予め前記収束レンズの焦点距離に応じた前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を記憶する記憶手段と、
前記焦点距離調整手段での基準焦点距離調整範囲内において、前記最遠点距離よりも短い実遠点距離を設定可能な実遠点距離入力手段と
を備え、
前記スポット径設定手段は、前記実遠点距離入力手段にて設定した前記実遠点距離に対する前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を前記記憶手段から求めて、その求めたスポット径を前記最小径より小径のスポット径の設定を可能とすることを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、前記最小径よりも小径のスポット径にて、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射するように、前記焦点距離調整手段を駆動制御することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、前記記憶手段から求めたスポット径を小径のスポット径として、その小径のスポット径を表示手段に表示することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のレーザマーキング装置において、
前記実遠点距離入力手段は、前記実遠点距離入力手段にて設定した実遠点距離に対して前記記憶手段から求めた先のスポット径を微調整する微調整手段を備え、
前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整したスポット径が、前記記憶手段から求めた先のスポット径よりも小径のとき、その旨を報知手段にて報知することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整したスポット径が、前記記憶手段から求めた先のスポット径よりも小径のとき、前記微調整手段で微調整したスポット径の設定を禁止することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項7】
請求項1に記載のレーザマーキング装置において、
前記焦点距離調整手段で調整される基準焦点距離調整範囲において、予め前記収束レンズの焦点距離に応じた前記レーザ光の焦点位置におけるスポット径を記憶する記憶手段と、
前記最小径よりも小径のスポット径を目標スポット径として設定可能な目標スポット径入力手段と
を備え、
前記スポット径設定手段は、前記目標スポット径入力手段にて設定した前記目標スポット径に対する前記収束レンズの焦点距離を前記記憶手段から求め、その求めた焦点距離を前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離として表示手段に表示することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、求めた前記実調整遠点距離に対する前記目標スポット径入力手段にて設定した前記最小径よりも小径の目標スポット径にて、加工対象物の加工面の各位置にレーザ光を照射するように、前記焦点距離調整手段を駆動制御することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のレーザマーキング装置において、
目標スポット径入力手段は、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離を微調整する微調整手段を備え、
前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、その旨を報知手段にて報知することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザマーキング装置において、
前記スポット径設定手段は、前記微調整手段にて微調整した実調整遠点距離が、設定した目標スポット径に対する前記最遠点距離よりも短い実調整遠点距離よりも短いとき、前記微調整手段で微調整した実調整遠点距離の設定を禁止することを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のレーザマーキング装置において、
前記レーザ光のパワーを変更可能にするパワー調整手段を備え、
前記スポット径設定手段は、設定したスポット径に応じて、照射エネルギー密度が一定になるように前記パワー調整手段を介して前記レーザ光のパワーを変更することを特徴とするレーザマーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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