説明

レーザマーキング装置

【課題】露光範囲内の任意位置にて歪みのないマーキングを迅速に実行でき、高精度を要求される2次元コード等のマーキングに適し、マーキング対象物が露光面に沿って移動している場合でも高精度のマーキングを可能にする装置を提供する。
【解決手段】可動ステージ51の移動量を表すエンコーダ信号が入力される入力部53と、マーキング位置指令信号x,yが出力される出力部63とを有する制御ユニット6を設け、駆動モータ21,31間に、マーキング対象物のマーキング位置Xm,Ymに対応する指令信号Xc,Ycを駆動モータ21,31に送出する2つの指令信号変換演算部71,72を配設する。指令信号変換演算部71,72に出力部63及び入力部53を接続し、指令信号変換演算部71,72は、マーキング位置指令信号x,yに可動ステージ51の移動量を加味して指令信号Xc,Ycに変換させてマーキングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザマーキング装置に関するものであり、特に、レーザ光をX方向とY方向ミラーで反射し、各ミラーの回転角をモータで任意に制御することにより、露光面に配置された液晶パネルなどの材料の任意の場所にレーザ光を集光して2次元コード等のマーキングを行うようにしたレーザマーキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のレーザマーキング装置の要部構成を模式的に示す解説図である。同図において、図示しない光源から発した入射レーザ光1は、X方向ミラー2とY方向ミラー3にて反射された後、集光レンズ4を通り、露光面5に焦点を結ぶ。そして、X方向ミラー2とY方向ミラー3の回転角θx,θyにより、露光面5における(焦点)座標位置Xm,Ymが一意的に定まる。
【0003】
尚、図1中の符号6’は制御ユニットであり、該制御ユニット6’の主要制御部60’は、レーザ制御部61とマーキング位置情報出力部63とから成る。又、該マーキング位置情報出力部63には設定等指令部8が接続されている。
【0004】
前記マーキング位置情報出力部63はマーキングパターン情報Pに基づきマーキング指令信号x,yを出力するが、マーキング指令信号x,yは、電力増幅器9,9’を介してX方向ミラー2の駆動モータ21及びX方向ミラー2の駆動モータ31に送出される(特許文献1又は2参照)。
【特許文献1】特開昭62−94343号公報
【特許文献2】特開平7−164169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のレーザマーキング装置によれば、集光レンズ4の特性や該集光レンズ4とX方向ミラー2、Y方向ミラー3の夫々の幾何学的配置に起因してレーザ光の照射位置に歪みが発生する。依って、X方向ミラー2とY方向ミラー3の回転角θx,θyを等間隔で回転させても、前記レーザ光の照射位置に歪みにより、座標位置Xm,Ymの間隔は等間隔にならない。
【0006】
図2は、各回転角θx,θyを夫々X方向,Y方向に等間隔で回転させて、レーザ光によりマーキングした場合の理想的な結果物(マーキング後の製品)の一例をグラフで表したものであり、白丸で示す各点は、図2の直交座標におけるθx,θyの回転角に対応している。また、図3は、図2の白丸で示す位置に対して、マーキングされた露光面上の座標位置Xm,Ymがどのような位置に変換されるかを示したものであり、黒丸で示す各点は、図3の直交座標におけるXm,Ymの位置に対応している。
【0007】
図2では、白丸の点の配置は全体として等間隔の格子状を呈しているが、図3では、黒丸の点の配置は全体として上下が膨らみ、且つ、左右が凹んだ形状を呈している。従って、図5に示すように、露光面上での座標位置Xm,Ymが等間隔の格子状になるようにするには、X方向ミラー2とY方向ミラー3の回転角θx,θyが等間隔を有しない位置、即ち、図4における白丸の位置になるように制御する必要がある
例えば、2次元コードをマーキングするような場合には、2次元コード内の中心位置からの相対位置としてX方向ミラー2とY方向ミラー3の回転角θx,θyを等間隔に変化させることがある。しかし、図6に示すように、露光位置によっては2次元コードの形状がひし形に歪んでしまうという問題を有していた。尚、図7は歪みのない正常な2次元コードの形状を示す。
【0008】
又、露光面上の所期の位置にマーキングするためにパターン認識装置を用いて、上記格子点における誤差量を計測し、現在位置と行き先位置との間の相対移動量にプラスして、各格子点における誤差量の差を補正量として、該補正量をガルバノメータ駆動信号に付加して位置補正を行う方法が提案されている。
【0009】
しかし、図3に示すような非直線的な歪みをもつ座標系では、誤差量と補正量は厳密には一致せず、数百μmのずれを有する。このため、数百μm程度の精度で済むマーキングの場合は良いが、数十μmの精度が要求される2次元コード等のマーキングの場合は、マーキング精度の点で不十分である。特に、マーキング対象物が露光面に沿って移動している場合に、マーキング精度が低下する。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、露光範囲のどの場所でも歪みのないマーキングを迅速に実行でき、しかも、高精度を要求される2次元コード等のマーキングに適し、且つ、マーキング対象物が露光面に沿って移動している場合でも、静止している場合と同様に、高精度のマーキングを行うことができるレーザマーキング装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1記載の発明は、レーザ光を反射するX方向ミラー及びY方向ミラーと、前記各ミラーを回転させる2つの駆動モータと、前記X方向ミラー及びY方向ミラーによって反射されたレーザ光を集光して露光面に焦点を結ぶ集光レンズと、マーキング対象物が固定される可動ステージとを備えたレーザマーキング装置であって、前記可動ステージの移動量を表すエンコーダ信号が入力される入力部と、マーキング位置指令信号x,yが出力される出力部とを有する制御ユニットを設け、且つ、前記2つの駆動モータ間に、マーキング対象物のマーキング位置Xm,Ymに対応する指令信号Xc,Ycを該駆動モータに送出する2つの指令信号変換演算部を設けると共に、該指令信号変換演算部に前記出力部及び入力部を接続し、該指令信号変換演算部は、前記マーキング位置指令信号x,yに前記可動ステージの移動量を加味して前記指令信号Xc,Ycに変換させることにより、マーキング対象物が移動している場合でも該マーキング対象物にマーキングできるように構成したレーザマーキング装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、マーキング対象物が可動ステージと共に移動する場合、2つの指令信号変換演算部において、X方向ミラー及びY方向ミラーを駆動するための指令信号Xc,Ycが生成される。この場合、マーキング位置指令信号x,yに可動ステージの変位量を加味して指令信号Xc,Ycに変換演算される。
【0013】
依って、可動ステージの位置情報を加味した指令信号Xc,Ycに基づいて、X方向ミラー及びY方向ミラーの回転角を駆動制御することにより、マーキング対象物が移動している場合であっても、所期の露光位置Xm,Ymに高精度のマーキングが行われる。
【0014】
請求項2記載の発明は、上記指令信号変換演算部は、近似多項式f(x,y),g(x,y)によって上記指令信号Xc,Yc化の演算を行うように構成した請求項1記載のレーザマーキング装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、指令信号変換演算部において、任意の次数の近似多項式f(x,y),g(x,y)によって指令信号Xc,Yc化の演算を行うが、その際、近似多項式f(x,y),g(x,y)の係数は、レーザマーキング装置固有の歪み発生状態に応じて最適の係数に設定される。
【0016】
請求項3記載の発明は、上記集光レンズを省略し、且つ、上記各ミラーの直前にフォーカス制御機構を設けた請求項1又は2記載のレーザマーキング装置を提供する。
この構成によれば、上記ミラーの直前に設けたフォーカス制御機構は、レーザ光を集光して露光面に焦点を結んでマーキングを実行する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、可動ステージと共に移動するマーキング対象物に対して、所期の露光したい位置Xm,Ymにマーキングするとき、X方向ミラー及びY方向ミラーを駆動するための指令信号Xc,Ycには、可動ステージの位置情報が加味されているので、マーキング指令信号x,yに補正量を加える従来技術に比べて、指令信号Xc,Ycに内在する誤差量が極めて少なくなり、数十μmの精度を要求される2次元コードのマーキングにも十分適用することができる。
【0018】
又、本発明は、補正用テーブルを用いる従来技術に比べて、マーキングを容易迅速に行うことができ、マーキング対象物を移動させながらマーキングする場合に、マーキング対象物が装置内に止まる時間を大幅に短縮させることができる。斯くして、例えば液晶パネルの製造ラインなどにおいて、従来技術に比して生産能力を著しく向上させることが可能となる。
【0019】
請求項2記載の発明は、レーザマーキング装置固有の歪み発生状態に応じて近似多項式f(x,y),g(x,y)の係数を設定することにより、レーザマーキング装置固有の歪みに容易に対応できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、光学系装置の調整を全く必要とせず、レーザマーキング装置の運転開始前に要する調整等の準備時間を大幅に短縮させることができる。
【0020】
請求項3記載の発明は、レーザ光の集光はフォーカス制御機構にて行えるので、集光レンズを省略しても、請求項1又は2記載の発明と同様の効果、即ち、露光範囲の任意の位置において歪みのないマーキングを迅速に実行でき、高精度が要求される2次元コード等のマーキングに適し、且つ、マーキング対象物が露光面に沿って移動している場合でも高精度のマーキングを容易に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、露光範囲のどの場所でも歪みのないマーキングを迅速に実行でき、高精度を要求される2次元コード等のマーキングに適し、マーキングされる対象物が露光面に沿って移動している場合でも、静止している場合と同様に高精度のマーキングを可能にするという目的を達成するため、レーザ光を反射するX方向ミラー及びY方向ミラーと、前記各ミラーを回転させる2つの駆動モータと、前記X方向ミラー及びY方向ミラーによって反射されたレーザ光を集光して露光面に焦点を結ぶ集光レンズと、マーキング対象物が固定される可動ステージとを備えたレーザマーキング装置であって、該可動ステージの移動量を表すエンコーダ信号が入力される入力部と、マーキング位置指令信号x,yが出力される出力部とを有する制御ユニットを設け、且つ、前記2つの駆動モータ間に、マーキング対象物のマーキング位置Xm,Ymに対応する指令信号Xc,Ycを該駆動モータに送出する2つの指令信号変換演算部を設けると共に、該指令信号変換演算部に前記出力部及び入力部を接続し、該指令信号変換演算部は、前記マーキング位置指令信号x,yに前記可動ステージの移動量を付加して前記指令信号Xc,Ycに変換させることにより、マーキング対象物が移動している場合でも該マーキング対象物にマーキングできるように構成したことにより実現した。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
以下、本発明の好適な一実施例を図に従って説明する。図8は、本実施例に係るレーザマーキング装置の要部を示す模式図である。本発明装置は、マーキング位置信号X,Yが出力されるマーキング位置情報出力部63と、可動ステージ51の変位量を表すエンコーダ信号が入力されるエンコーダヘッド(入力部)53とに指令信号変換演算部71,72を接続すると共に、該指令信号変換演算部71,72をミラー用の駆動モータ21,31間に配設し、マーキング位置信号X,Yに可動ステージ51の変位量を付加して指令信号Xc,Ycに変換させることを特徴とする。尚、図1の従来装置と同一の構成要素については、説明の都合上、同一符号を付してその説明を省略する。
【0023】
本発明の光学系の装置部の構成は、図1に示した従来装置とほぼ同一であるが、露光面5は1軸の可動ステージ51上に設けられ、且つ、該可動ステージ51はステージ固定部52に沿って水平に移動できるように構成されている。該可動ステージ51にはエンコーダヘッド53が取り付けられており、また、ステージ固定部52にはエンコーダスケール54が固定されている。該エンコーダスケール54により前記可動ステージ51の変位量が得られるように構成されている。
【0024】
更に、制御ユニット6の構成も従来装置とは相違している。即ち、制御ユニット6は主要制御部60及び指令信号変換演算部7を備え、主要制御部60は、レーザ制御部61と、マーキング点を数十mmの等間隔で格子状に配置した誤差量検出用テストパターン発生部62と、ネットワークを介して入力するマーキングパターン情報Pのマーキング位置情報出力部63とから成る。
【0025】
前記レーザ制御61は、Qスイッチ制御信号P1及び励起光源制御信号P2を送出し、また、誤差量検出用テストパターン発生部62は、格子点の位置信号x、yを送出する。さらに、マーキング位置情報出力部63は、マーキングパターン情報Pによるマーキング位置信号X,Yを送出する。
【0026】
エンコーダヘッド53から得られる可動ステージ51の変位量は、変位量分離器10によってX方向とY方向に分離され、分離後の各変位量はそれぞれ、マーキング位置信号X,Yに加算されて指令信号変換演算部7へ送出される。
【0027】
前記指令信号変換演算部7は、指令信号Xc,指令信号Ycを得るための2つの演算部71,72を有している。各演算部71,72はそれぞれ前記マーキング位置信号X,Yを入力データとして,所期のマーキング位置Xm,Ymを得るための指令信号Xc,Ycの演算を行うが、この場合、任意の次数の近似多項式f(x,y),g(x,y)を用いて演算が行われる。そして、各近似多項式f(x,y),g(x,y)の係数ai,bi(i=0,1,2,3・・・)は、設定等指令部8により後述の誤差量検出用テストパターンのマーキング結果に応じて設定される。
【0028】
次に、本実施例のレーザマーキング装置の操作手順について説明する。先ず、エンコーダヘッド53から可動ステージ51の変位量が0となるように、該可動ステージ51を初期位置に固定する。次に、設定値等指令部8によりON信号P3を送出させて電子開閉部S1を開き、続いて、読み出し信号P5により誤差量検出パターン発生部62のメモリに記憶されているテストパターン、例えば、図2に示す格子点状のテストパターンを読み出す。
【0029】
前記テストパターンの読み出しと同時に、該テストパターンのマーキング指令信号x,yを電子開閉部S1及び電力増幅器9,9’を介して上記ミラー2,3の駆動モータ21,31に出力して、マーキング対象物に対して前記テストパターンのマーキングを行う。このマーキング後の結果物は、前述のように光学装置部の幾何学的配置や集光レンズの特性により、例えば図3に例示するように歪曲する。
【0030】
この後、歪曲した結果物の各点(図3の黒点)の位置を測長機で測定し、黒点を結ぶX軸方向とY軸方向の曲線の逆曲線の近似多項式f(x,y),g(x,y)を求め、該逆曲線の近似多項式f(x,y),g(x,y)を指令信号変換演算部7の演算部71,72に設定する。尚、曲線の近似多項式f(x,y),g(x,y)は係数が異なるだけであるので、演算部71,72に近似多項式f(x,y),g(x,y)の主要部は予め設定しておき、上記の計算結果に応じて、設定値等指令部8で各演算部71,72における近似多項式f(x,y),g(x,y)の係数ai,biを設定する。
【0031】
以上の事前準備が終了すれば、電子開閉部S1を閉じ、この後、電子開閉部S2に設定値等指令部8からON信号P4を送出して開く。次に、マーキング開始信号P0を設定値等指令部8から、主要制御部60に出力してマーキングを開始させる。
【0032】
マーキング開始と共に、マーキング位置情報出力部63から、マーキング位置信号X,Yが出力され、その出力信号は指令信号変換演算部7によって、所期のマーキング位置Xm,Ymにマーキングさせるための指令信号Xc,Ycに変換される。そして、変換後の指令信号Xc,Ycはそれぞれ電力増幅器9,9’を介して駆動モータ21,31に付与し、これにより、上記ミラー2,3を駆動して所期の位置にマーキングを行う。
【0033】
マーキング位置信号X,Yには、エンコーダヘッド53から得られる可動ステージ51の変位量が加算されているので、可動ステージ51がどの位置にあっても、可動ステージ51上の同じ位置にマーキングすることができる。従って、この位置制御をリアルタイムで行うことにより、可動ステージ51が停止せずに一定速度で移動している場合であっても、可動ステージ51上の同一位置にマーキングすることができる。
【0034】
本発明装置では、例えば、図2に示す格子点状のテストパターンをマーキングしようとする場合、従来装置による図3に示す結果物のマーキングにならないように、それとは逆の図4に示すパターンに対応する指令信号Xc,Yc、即ち、誤差量(偏位量)をキャンセルするような指令信号に変換してマーキングを行う。
【0035】
この方法によると、補正テーブルを用いる方法に比べて、マーキング時間が著しく短縮して装置自体の動作が高速化される。この場合、誤差量が数十μmレベルの精度に抑えられるので、マーキングする2次元コードの品質が大幅に向上し、マーキングした二次元コードも歪むことなく、図7に示す如く高精度のマーキングが可能になる。
【0036】
なお、近似多項式f(x,y),g(x,y)の次数を多くすれば、マーキングの精度を一層向上させることができるが、計算速度は遅くなる。即ち、マーキング速度が遅くなるので、次数はマーキング品質又は要求される精度に応じて自由に決定すればよい。
【0037】
以上説明した如く本発明よると、マーキング対象物が可動ステージ51に固定されて該可動ステージ51と共に移動する場合、X方向ミラー2及びY方向ミラー3を駆動するための指令信号Xc,Ycは、マーキング位置信号X,Yに可動ステージ51の位置情報(変位量)を加味して演算変換される。
【0038】
斯くして、前記指令信号Xc,Ycに基づいてX方向ミラー2及びY方向ミラー3の回転角θx,θyを制御することにより、マーキング対象物が露光面5に沿って移動している場合であっても、静止している場合と同様に、所期の露光したいマーキング位置Xm,Ymに高精度にマーキングされる。
【0039】
特に、本発明では、可動ステージ51と共に移動するマーキング対象物に対して、前記マーキング位置Xm,Ymにマーキングするとき、指令信号Xc,Ycに内在する誤差量が極めて少なくなるので、数十μmの精度を要求される2次元コードのマーキングにも適切に対応することができる。
【0040】
又、本発明は、マーキング対象物が移動している場合に、該マーキング対象物に容易かつ高精度にマーキングできるのみならず、マーキング対象物が装置内に止まる時間が大幅に短縮するので、マーキング対象物、例えば、液晶パネルの製造ラインなどにおいて生産能力を著しく向上させることができる。
【0041】
更に、指令信号変換演算部において任意の次数の近似多項式f(x,y),g(x,y)によって指令信号Xc,Yc化の演算を行う際に、近似多項式f(x,y),g(x,y)の係数ai,biはレーザマーキング装置固有の歪み発生状態に応じて適切に設定できる。従って、レーザマーキング装置固有の歪みに容易に対応でき、この場合、光学系装置の調整を全く必要とせず、レーザマーキング装置の運転開始前に要する調整等の準備時間が大幅に短縮する。
【0042】
(実施例2)
次に、本発明に係る実施例2を図面に基づいて説明する。図9は本実施例によるレーザマーキング装置を示す模式図である。同図に示すように、本実施例は、図8に示した集光レンズ4に代えてフォーカス制御機構11を使用し、該フォーカス制御機構11をX方向ミラー2の直前に設けて成るものである。
【0043】
このように構成しても、上記レーザ光1はフォーカス制御機構11により露光面5に精度良く集光されるので、集光レンズ4を省略しても、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。即ち、露光範囲の任意の位置にて歪みのないマーキングを迅速に実行でき、高精度が要求される2次元コード等のマーキングに適し、且つ、マーキング対象物が露光面5に沿って移動している場合でも、静止状態のときと同様に高精度のマーキングを容易に実行することができる。
【0044】
図8及び図9に示した各実施例1,2では、誤差量検出量パターン発生部62のメモリにテストパターンを書き込んでおき、レーザマーキング装置固有の近似多項式f(x,y),g(x,y)を決定するに際して、メモリから格子点の位置信号x,yを読み出し、電子開閉部S1及び電力増幅器9,9’を介して駆動モータ21,31に駆動信号を与えるように構成したが、本発明はこれに限定されない。
【0045】
例えば、外部ネットワークを介してテストパターン情報を主要制御部60に入力させ、電子開閉部S1及び電力増幅器9,9’を介して駆動モータ21,31に駆動信号を与えるように構成しても良いことは勿論である。
【0046】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来のレーザマーキング装置の要部構成を示す模式図。
【図2】図1のミラーの回転角をグラフ化した説明図。
【図3】同上ミラーの回転角に対応する露光面上のレーザ焦点位置の座標をグラフ化した説明図。
【図4】同上露光面上のレーザ焦点位置の座標が等間隔の格子状になるようにしたときのミラーの回転角をグラフ化した説明図。
【図5】図4のミラーの回転角に対応する露光面上のレーザ焦点位置の座標をグラフ化した説明図。
【図6】従来技術での歪んだ2次元コードの一例を示す説明図。
【図7】本発明適用による歪みのない2次元コードの一例を示す説明図。
【図8】本発明の実施例1に係るレーザマーキング装置を示す模式図。
【図9】本発明の実施例2レーザマーキング装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0048】
1 入射レーザ光
2 X方向ミラー
3 Y方向ミラー
21 駆動モータ
31 駆動モータ
4 集光レンズ
5 露光面
51 可動ステージ
52 ステージ固定部
53 エンコーダヘッド
54 エンコーダスケール
6 制御ユニット
60 主要制御部
61 レーザ制御部
62 誤差量検出用テストパターン発生部
63 マーキング位置情報出力部
7 指令信号変換演算部
71 指令信号Xcの演算部
72 指令信号Ycの演算部
8 設定値等指令部
9 電力増幅器
9’ 電力増幅器
10 変位量分離器
11 フォーカス制御機構
S1 電子開閉部
S2 電子開閉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を反射するX方向ミラー及びY方向ミラーと、前記各ミラーを回転させる2つの駆動モータと、前記X方向ミラー及びY方向ミラーによって反射されたレーザ光を集光して露光面に焦点を結ぶ集光レンズと、マーキング対象物が固定される可動ステージとを備えたレーザマーキング装置であって、前記可動ステージの移動量を表すエンコーダ信号が入力される入力部と、マーキング位置指令信号x,yが出力される出力部とを有する制御ユニットを設け、且つ、前記2つの駆動モータ間に、マーキング対象物のマーキング位置Xm,Ymに対応する指令信号Xc,Ycを該駆動モータに送出する2つの指令信号変換演算部を設けると共に、該指令信号変換演算部に前記出力部及び入力部を接続し、該指令信号変換演算部は、前記マーキング位置指令信号x,yに前記可動ステージの移動量を加味して前記指令信号Xc,Ycに変換させることにより、マーキング対象物が移動している場合でも該マーキング対象物にマーキングできるように構成したことを特徴とするレーザマーキング装置。
【請求項2】
上記指令信号変換演算部は、近似多項式f(x,y),g(x,y)によって上記指令信号化の演算を行うことを特徴とする請求項1記載のレーザマーキング装置。
【請求項3】
上記集光レンズを省略し、且つ、上記各ミラーの直前にフォーカス制御機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のレーザマーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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