レーザレーダ用設置位置検証装置、レーザレーダ用設置位置の検証方法及びレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラム
【課題】所定領域に向けてレーザを走査照射して所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、レーザレーダの設置位置の検証を、安全、迅速、確実に行うことができる検証装置、検証方法及びプログラムを提案する。
【解決手段】レーザレーダ用設置位置検証装置100は、レーザレーダの設置候補位置Pに配置されると共にレーザレーダの画角と同一以上の画角を有して所定領域ARを含む画像を取得する撮像部110と、所定領域ARのうち設置候補位置Pからの最遠位置50Bと最近位置50Tのそれぞれにおいて撮像部110により撮像される矩形基準板120と、撮像部110により取得した検証用取得画像と矩形基準板120の形状情報に基づいて設置候補位置Pから最遠位置50Bまでの第一距離L1及び最近位置50Tまでの第二距離L2を求める距離演算部と、を備える。
【解決手段】レーザレーダ用設置位置検証装置100は、レーザレーダの設置候補位置Pに配置されると共にレーザレーダの画角と同一以上の画角を有して所定領域ARを含む画像を取得する撮像部110と、所定領域ARのうち設置候補位置Pからの最遠位置50Bと最近位置50Tのそれぞれにおいて撮像部110により撮像される矩形基準板120と、撮像部110により取得した検証用取得画像と矩形基準板120の形状情報に基づいて設置候補位置Pから最遠位置50Bまでの第一距離L1及び最近位置50Tまでの第二距離L2を求める距離演算部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定領域に存在する物体を検知するレーザレーダの設置位置の検証を行うレーザレーダ用設置位置検証装置、検証方法及びプログラムに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、踏切内を通過する物体を検知して、検知された物体が列車であるか否かを検知する検知装置及び検知方法が知られている。
この検知装置としては、光学方式、ループコイル方式、カメラ画像処理方式、水中走査レーザ方式が提案されている。
しかし、これらの方式に対しては、様々な問題点が挙げられている。すなわち、学方式の検知装置は、細い光軸を遮断するものは全て障害物として検知してしまう。ループコイル方式の検知装置は、ループコイル上の金属で発振周波数を所定値以上に変化させるものは全て障害物として検知してしまう。カメラ画像処理方式の検知装置は周囲の環境に影響されやすく、常時十分な性能を維持することができない。水平走査レーザ方式の検知装置では、凹凸の大きい踏切等での適用が困難である、等の問題が指摘されている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、特許文献1,2等に開示されるように、空中を伝搬するレーザを踏切内の物体に放射して、反射信号に基づいてその物体の方位情報と距離情報とを収集することによってその物体が踏切内の障害物であるか否かを判定するレーザレーダ装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−11824号公報
【特許文献2】特許第3812666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したレーザレーダ装置を踏切等に設置する場合には、レーザレーダ装置の画角(水平画角、垂直画角)内に踏切等の監視エリアが納まるような設置位置を選定する必要がある。
踏切がレーザレーダ装置の水平画角内に納まるか否かについては、踏切の地図情報に基づいて事前確認することができる。一方、垂直画角に納まるか否かについては、地図情報等が存在しないため事前確認ができず、現地確認を行っている。
【0005】
現地確認は、レーザレーダ装置の設置候補位置から踏切(監視エリア)までの距離を巻尺等を用いて測定しているのが現状である。このため、交通量が多い踏切では、距離測定自体が困難であったり、危険を伴ったり、或いは夜間に測定しなければならない等の制約があるという問題がある。また、木の枝などの障害物で遮られるかどうかもわからない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、所定領域に向けてレーザを走査照射して所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、レーザレーダの設置位置の検証を、安全、迅速、確実に行うことができる検証装置、検証方法及びプログラムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザレーダ用設置位置検証装置、レーザレーダ用設置位置の検証方法及びレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
第1の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証装置であって、前記レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【0010】
また、前記撮像部により撮像された画像を表示すると同時に、前記画像に前記3次元レーザレーダの画角を示す画角枠を重ねて表示する画像表示部を備えることを特徴とする。
これにより、撮像部により取得される画像内に、所定領域が納まっているか否かを、容易かつ確実に確認することができる。
【0011】
また、前記距離演算部は、前記所定姿勢情報に基づいて前記撮像部と前記矩形基準板の相対位置姿勢関係を求めることを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置位置姿勢を求めることができる。
【0012】
また、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を選択する入力部を備え、前記距離演算部は、前記入力部からの入力情報に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする。
これにより、検証用取得画像上における矩形基準板を容易に特定することができ、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離を確実に求めることができる。
【0013】
また、前記距離演算部は、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を、画像処理を含む演算処理により求める機能を有し、その演算結果に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする。
これにより、検証用取得画像上における矩形基準板を容易・確実・正確に特定することができ、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離を求めることができる。
【0014】
また、前記距離演算部は、前記検証用取得画像上において特定された前記矩形基準板の位置姿勢を検証する姿勢検証機能を有することを特徴とする。
これにより、矩形基準板の撮像部に対する姿勢(所定姿勢)が傾いていたり、検証用取得画像上における矩形基準板の四隅の選択位置にずれがあったりしても、これを検証するので、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離をより正確に求めることができる。
【0015】
また、前記距離演算部は、前記撮像部のレンズに起因する前記検証用取得画像の歪みを補正する歪み補正機能を有することを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離をより正確に求めることができる。
【0016】
第2の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証方法であって、前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部を前記レーザレーダの設置候補位置に配置する工程と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに、矩形基準板を前記撮像部に対して所定姿勢に配置して前記撮像部により撮像する工程と、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【0018】
第3の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、前記撮像部に接続された演算処理端末と、を備えるレーザレーダ用設置位置検証装置に、前記レーザレーダの設置位置の検証処理を実行させるためのプログラムであって、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算処理を、前記演算処理端末に実行させることを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
本発明は、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)をそれぞれ求めて、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断するので、設置候補位置の適否検証を容易かつ確実に行うことができる。
この際、現地においては、所定領域のうち設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに矩形基準板を配置するだけなので、巻尺等を用いる場合に比べて、安全、迅速に距離測定(検証作業)を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るレーザレーダ用設置位置検証装置、レーザレーダ用設置位置の検証方法及びレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、3次元レーザレーダ式監視装置1の概略構成を示す模式図である。
図2は、3次元レーザレーダ式監視装置1の設置例及び検知可能エリアを示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、3次元レーザレーダ式監視装置1は、レーザレーダ部10と監視装置本体20とから構成される。
レーザレーダ部10は、多面体ミラー11、多面体ミラー11を一定速度で回転駆動する主走査モータ12、多面体ミラー11を主走査モータ12の回転軸に直交する方向に所定速度で揺動させる副走査モータ13、レーザ光源14、ハーフミラー15、集光レンズ16、受光器17等を備える。
そして、レーザ光源14から発せられたレーザパルス光を、ハーフミラー15を介して多面体ミラー11に照射することで、レーザパルス光を多面体ミラー11の回転と傾きとに応じて監視エリアARに照射する。また、監視エリアからのレーザパルス光の反射光を多面体ミラー11から集光レンズ16を介して受光器17により受光検知するように構成されている。
【0022】
すなわち、レーザレーダ部10は、多面体ミラー11の回転とその揺動とによってレーザパルス光の照射方向を主走査方向(x1方向)に高速に偏向走査しながら、その走査面を副走査方向(y方向)に偏向走査し、これによって図2に示すような監視エリアARの全域を走査している。
そして、監視エリアARに存在する種々の物体による反射光を、レーザパルス光の照射に同期して受光し、その受光タイミング(レーザパルス光の照射タイミングからその反射光の受光タイミングまでの経過時間)から物体(反射点)までの距離情報を求めることが可能となっている。
【0023】
なお、レーザレーダ部10による走査範囲は、例えば主走査(水平)方向に60度(±30度)、副走査(垂直)方向に30度(±15度)に設定されている。
またレーザレーダ部10は、例えばその走査方向が0.1度変化する都度、レーザパルス光を照射し、その反射光を受光することで、合計[600×300]方位からの反射光の情報を順次検出するように設定されている。
【0024】
監視装置本体20は、例えばパーソナルコンピュータからなり、レーザレーダ部10を用いて検出される反射光情報から、その反射点の空間座標を示す3次元レーダ情報を求める。
レーダ情報は、レーザ光源14を駆動するレーザパルス走査回路(不図示)からの同期信号を受けてレーザパルス光の物体による反射光の受光タイミングを計測し、この計測時間を距離情報に変換し、更にこの距離情報を濃淡情報に変換する機能を備える。
【0025】
なお、計測時間を直接的に濃淡情報に変換することも可能である。また、距離に応じて濃度を段階的に変化させる場合の他、距離に応じて色が段階的に変化させるようにしてもよい。
また、3次元レーダ情報をレーザレーダ画像として可視化する必要がない場合には、上述した濃淡変換等を行うことなく、反射光の受光タイミングの計測時間をそのままレーザパルス光の反射点の情報として用いることも可能である。
【0026】
そして、3次元レーダ情報としてのレーザレーダ画像は、上述したようにして求められる濃淡情報(距離情報)をレーザパルス走査回路から求められる主走査角度および副走査角度の情報に従って、画像メモリ(不図示)上に順次マッピングしていくことにより作成される。
【0027】
監視装置本体20は、更に、3次元レーダ情報(レーザレーダ画像)から監視エリアAR内に存在する物体を検出する物体検出機能を備える。
物体検出機能は、3次元レーダ情報からその空間座標が連続する所定数以上の反射点のまとまりを、或る大きさを有する1つの物体として認識し、その重心を物体位置として検出するものである。
【0028】
そして、このような検出結果は、例えば、3次元レーダ情報を平面座標変換し、監視エリアARを天空から見下ろした状態を示す平面監視画像として、モニタ25上に画像表示される。
【0029】
図2に示すように、3次元レーザレーダ式監視装置1(レーザレーダ部10)は、踏切50の近傍に設置される。
踏切50(所定領域)は、鉄道線路52と道路54が地上(同一平面)で交わっている領域であって、道路の侵入口の両側にそれぞれ遮断機56(計4台)が設けられている。
そして、レーザレーダ部10は、踏切50の四隅のいずれか近傍に配置されて、踏切50を斜め方向から視野することで、踏切50の全域を監視するように設定されている。つまり、踏切50の全域(監視エリアAR)がレーザレーダ部10の検知可能エリアAPに含まれるように設置される。
【0030】
上述したように、レーザレーダ部10の監視可能エリア、すなわち画角は、水平方向(主走査方向)に60度、垂直方向(副走査方向)に30度に設定されている。
したがって、レーザレーダ部10の水平画角(60度)内に、踏切50(監視エリアAR)の四隅のうちレーザレーダ部10から見て左右の隅50L,50Rが納まるように、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
また、レーザレーダ部10の垂直画角(30度)内に、踏切50(監視エリアAR)の四隅のうちレーザレーダ部10から見て前後(前奥)の隅50T,50Bが納まるように、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
【0031】
更に、レーザレーダ部10は、地上から約5mの位置に配置された上で、測定距離が5m〜30mに設定されている。したがって、レーザレーダ部10から前側の隅50Tまでの距離(最短距離)が5m以上、奥側の隅50Bまでの距離(最長距離)が30m以内に納まるに、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
【0032】
このように、レーザレーダ部10の検知可能エリアAP(画角、測定距離)を考慮して、レーザレーダ部10の適切な位置姿勢を決定した上で、現地にて設置する必要がある。
レーザレーダ部10の設置候補位置としては、踏切50の地図情報に基づいて、予め机上にて検討することができる。しかし、机上検討できるのは、レーザレーダ部10の水平画角内に、踏切50(監視エリアAR)が納まるか否かを大まかに行えるに過ぎない。また、木の枝などの障害物で遮られるかどうかもわからない。
【0033】
したがって、レーザレーダ部10の設置に先立って、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR)との位置姿勢関係を、予め計測する必要がある。つまり、踏切50の現地にて、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR:隅50T,50B,50L,50R)との位置姿勢関係(水平画角、垂直画角、測定距離)を計測する。
【0034】
以下、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR)との位置姿勢関係を計測して、設置候補位置Pが適切な設置位置であるかを検証する装置及び方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の概略構成を示す模式図であって、(a)は全体図、(b)は距離計測用基準板120を示す。
図4は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の機能ブロック図である。
【0035】
図3に示すように、レーザレーダ用設置位置検証装置100は、広角カメラ110、距離計測用基準板120及び距離演算部130から構成される。
広角カメラ110は、レーザレーダ部10の設置候補位置Pに配置されると共にレーザレーダ部10の画角と同一以上の画角を有して設置候補位置Pを含む画像を取得するものである。
広角カメラ110としては、いわゆるデジタルスチルカメラが用いられる。広角カメラ110は、例えば、水平方向に1500画素以上、垂直方向に1000画素以上の記録画素数を有している。
なお、ビデオカメラは用いることも可能である。ビデオカメラは、動画を撮影でき、画像の更新速度の点で適しているが、画素数が少なく、計測精度が不十分となってしまう虞がある。
また、広角カメラ110には、広角レンズが装着される。これにより、広角カメラ110の画角は、水平方向に60度以上、垂直方法に30度以上に設定されている。
そして、広角カメラ110は、不図示の三脚等を用いて、設置候補位置Pに配置される。
【0036】
距離計測用基準板120(矩形基準板)は、監視エリアAR(踏切50)内に配置されて、監視エリアARと共に広角カメラ110により撮像されるものである。
距離計測用基準板120は矩形の板状部材であって、その外縁(枠)に黒色の較正パターンQが描かれている。
具体的には、図3(b)に示すように、距離計測用基準板120(較正パターンQ)は、垂直長さが1205mm(1165mm)、水平長さが850mm(810mm)のA0サイズの長方形である。そして、距離計測用基準板120の上端(辺)が地上から1500mmに位置するようにスタンド125により支持可能となっている。
【0037】
なお、距離計測用基準板120のサイズは、任意であって、例えば、垂直長さが850mm(810mm)、水平長さが605mm(565mm)のA1サイズの長方形であってもよい。この場合であっても、距離計測用基準板120の上端(辺)が地上から1500mmに位置するように支持可能となっている。監視エリアARは、踏切50の地上0mmから1500mmの範囲内の立体的領域であって、この最大高さに内に距離計測用基準板120を納めるためである。
【0038】
距離演算部130は、広角カメラ110により取得した距離計測用基準板120を含む画像(検証用取得画像)と距離計測用基準板120の形状(各辺の長さ)情報等とに基づいて、設置候補位置Pから監視エリアAR(踏切50)の隅50Bまでの距離L1(最長距離:第一距離)と、隅50Tまでの距離L2(最短距離:第二距離)を演算処理により求めるものである。
つまり、距離演算部130は、設置候補位置Pが適切な設置位置であるかを検証するために、監視エリアAR(踏切50)内に配置した距離計測用基準板120の画像(検証用取得画像)に基づいて、各種演算処理を行って、設置候補位置Pと監視エリアAR(踏切50)との位置姿勢関係を計測する。
【0039】
距離演算部130としては、例えばパーソナルコンピュータが用いられ、広角カメラ110とUSBケーブル等により接続される。
これにより、距離演算部130は、広角カメラ110を遠隔操作したり、広角カメラ110により撮影された設置候補位置Pを含む画像(検証用取得画像)を取得したりすることが可能となっている。
【0040】
図4に示すように、レーザレーダ用設置位置検証装置100は、距離演算部130内に格納されたカメラ遠隔操作ソフトウエア、画角確認・測距ソフトウエア、測距計算ライブラリを備えている。
【0041】
カメラ遠隔操作ソフトウエアは、広角カメラ110を遠隔操作する機能を有する。また、広角カメラ110から連続的に撮影した画像データを取り込み、画像ファイルとして、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)の上のハードディスクに保存する。
【0042】
画角確認・測距ソフトウエアは、画角判定および距離測定(測距)を行う機能を有する。また、ハードディスク上の画像ファイルを読み出し、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)上の液晶画面135(画像表示部)に表示する機能を有する。
更に、検知可能エリアAPの画像上への重畳表示、距離計測用基準板120までの距離L1,L2、および広角カメラ110の位置、姿勢を液晶画面135上に表示する。
【0043】
測距計算ライブラリは、画角確認・測距ソフトウエア内に組み込まれるライブラリとして提供され、画像の歪み除去、距離計測用基準板120の画面上での位置から距離計測用基準板120までの距離、広角カメラ110の位置・姿勢を算出する機能を有する。
【0044】
図5は、レーザレーダ用設置位置検証装置100で用いられる座標系を示す図である。
画像座標系は、画像平面上での2次元の座標系を表す。
カメラローカル座標系は、広角カメラ110の仮想中心を原点とする3次元の直行座標系を表す。広角カメラ110にとっての右手方向をXc、下向き方向をYc、奥行き方向をZcとする。Xc,Yc,Zc軸を中心とした回転角度をそれぞれ、ロール角,ピッチ角,ヨー角と呼ぶ。
地上座標系は、広角カメラ110の設置候補位置Pの足元(地上)を原点とする3次元の直交座標系を表す。広角カメラ110にとっての右手方向をxc、奥行き方向をyc、鉛直上向き方向をzcで表す。
較正パターン座標系は、距離計測用基準板120上の既知寸法の長方形を較正パターンQとして用いる。較正パターン座標系は、較正パターンQの中心を原点とし、較正パターンQの水平の辺の方向をXm、垂直の辺の方向をYmおよび較正パターンの平面に直交する方向をZmとした座標系を表す。
【0045】
長方形平板をカメラで撮影した場合、カメラと長方形平板との距離や配置に応じて、カメラで撮影した長方形の画像上での見かけの形状、大きさが変化する。長方形平板の大きさが既知であれば、カメラから長方形平板までの距離を求めることができる。
レーザレーダ用設置位置検証装置100では、この計測原理を利用して、広角カメラ110(設置候補位置P)から距離計測用基準板120までの距離を演算処理により求める。なお、距離計測用基準板120の形状・各辺長さは、上述したように、既知である。
【0046】
以下に、計測原理の詳細を説明する。
距離計測用基準板120の頂点k (k=1〜4)の画像平面上(画像座標系)の座標値(xi[k])と、三次元空間(較正パターン座標系)での座標値(Xm[k])との関係は、式(1)により表される。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、行列Pは広角カメラ110の射影変換行列であり、事前に広角カメラ110のキャリブレーションを行うことによって求まる既知の3×3行列である。
スカラー値h[k]は、広角カメラ110の光軸方向の距離である奥行き情報を表す未知数である。
回転行列Rと並進ベクトルtは、それぞれ広角カメラ110に対する長方形の位置と姿勢を表すものであり、回転行列Rは3つの回転角θx,θy,θzで各成分を表すことができ、並進ベクトルtは3つの成分tx,ty,tzで表すことができるので、計6つの未知数からなる。
【0049】
三次元空間での座標値(Xm[k],(k=1〜4))は、距離計測用基準板120の各辺長さ(幅・高さ)が既知の値である。
また、画像平面上の座標値(xi[k],(k=1〜4))は、計測によって求められる既知の値である。
よって、未知数は、h[k] (k=1〜4)、θx、θy、θz、tx、ty、tzの計10個であり、式(1)の計12個(4頂点のそれぞれに対して、3つの座標に関する方程式がある。)の方程式を使用した収束計算によって、これらの未知数を求めることができる。
既知の寸法の長方形平板(距離計測用基準板120)を用いることによって、最終的に、奥行き情報(h[k] (k=1〜4))から、広角カメラ110と距離計測用基準板120との間の距離が求まる。
【0050】
なお、未知数が10個に対して方程式の個数が12個と冗長であるため、画像平面上の座標値(xi[k] (k=1〜4))の計測値に誤差が含まれている場合、12個の方程式全てを満たす未知数を求めることができないが、近似解は得られるので支障はない。
【0051】
レーザレーダ用設置位置検証装置100では、広角カメラ110に広角レンズを使用しているため、レンズ歪が大きく、広角カメラ110で撮影した生画像は、歪んだものとなる。そこで、計測精度を向上させるためにレンズ歪みの補正が必要となる。
【0052】
以下に、レンズ歪みの補正方法について示す。
レンズの歪み補正前および歪み補正後の画像上(画像座標系)での位置をそれぞれ(x,y)、(x’,y’)とし、x方向およびy方向の歪みの大きさを△x、△yとすると、歪補正前後の座標値は、行列Pの成分を用いて、式(2)で与えられる。
【0053】
【数2】
【0054】
このとき、△x、△yを歪み係数p1,p2,k1,k2を用いて、式(3)で表す。
【0055】
【数3】
【0056】
レンズ歪を補正するためには、事前に既知寸法の格子パターン(例えば市松模様)を撮影し、各格子の頂点の位置を上述の(x,y)とみなし、式(2)、(3)で得られる(x’,y’)が格子状になるように、最小2乗法によって未知数である行列Pの各成分、および歪み係数p1,p2,k1,k2を求める。
このようにして、レンズの歪み補正後の画像上(画像座標系)での位置(x’,y’)を求める。
【0057】
図6は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証方法の手順を示す図である。
図7は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の設置状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図8は、広角カメラ110の取得画像を示す図である。
図9は、広角カメラ110の取得画像(検証用取得画像)を示す図であって、(a)は踏切の奥側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像、(b)は踏切の手前側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像を示す。
図10は、検証用取得画像上の距離計測用基準板を特定する方法を説明する図である。
【0058】
図6に示すように、レーザレーダ用設置位置検証方法は、広角カメラ110をレーザレーダ部10の設置候補位置Pに配置する第一工程(ステップS1)、監視エリアARのうち設置候補位置Pからの最遠位置と最近位置のそれぞれに距離計測用基準板120を配置して広角カメラ110により撮像して検証用取得画像を取得する第二工程(ステップS2)、検証用取得画像のレンズ歪みを補正する第三工程(ステップS3)、検証用取得画像上において距離計測用基準板120を特定する第四工程(ステップS4)、検証用取得画像と距離計測用基準板120の形状(各辺長さ)情報基づいて設置候補位置Pから最遠位置までの距離及び最近位置までの距離を求める第五工程(ステップS5)を行うものである。
以下、工程順に説明する。
【0059】
(第一工程)
上述したように、広角カメラ110は、レーザレーダ部10よりも広い画角(水平方向60度以上、垂直方法30度以上)に設定されている。このため、図7に示すように、予め机上検討にて選定されたレーザレーダ部10の設置候補位置Pに、広角カメラ110を配置すると、広角カメラ110により、レーザレーダ部10の監視エリアARである踏切50の全領域は勿論、更に検知可能エリアAPを含む画像を取得することが可能である。
【0060】
図8に示すように、距離演算部130の液晶画面135に表示される広角カメラ110の画像(動画等)には、画角確認・測距ソフトウエアの処理により、検知可能エリアAPを示す枠(すなわちレーザレーダ部10の画角を示す画角枠W)が重ねて表示される。
なお、広角カメラ110の画角(画像)とレーザレーダ部10の画角(画角枠W)との相対関係は、上述したキャリブレーションにより予め求められている。そして、画角枠Wは、広角カメラ110の画角(画像)とレーザレーダ部10の画角のそれぞれの中心が一致する位置に表示される。
【0061】
このため、レーザレーダ用設置位置検証装置100の操作者は、まず、設置候補位置Pに配置された広角カメラ110の取得画像から、レーザレーダ部10の検知可能エリアAP(つまり画角枠W)内に、監視エリアARである踏切50の全領域が含まれているか否かを目視判断する。
広角カメラ110が設置候補位置Pに正しく配置されていれば、画角枠W内に踏切50の全領域(監視エリアAR)が含まれているはずである。したがって、もし、画角枠W内に踏切50の全領域が含まれていない場合には、広角カメラ110の設置高さ、姿勢の調整を行う。
【0062】
(第二工程)
次に、広角カメラ110から踏切50までの距離計測を行うための、検証用取得画像Vを取得する。
具体的には、監視エリアARである踏切50の四隅(隅50T,50B,50L,50R)のうち、手前側の隅50Tと奥側の隅50Bに、それぞれ距離計測用基準板120に配置して、距離計測用基準板120を含む静止画像(検証用取得画像V)を広角カメラ110により取得(撮像)する。
【0063】
なお、隅50T,50Bに配置される距離計測用基準板120は、広角カメラ110に対して、正対する(真正面を向く)ように配置される。また、距離計測用基準板120は、垂直(地面(水平面)に対して直角)に配置される。上述した計測原理に基づく演算処理の誤差を小さくするためである。
【0064】
距離計測用基準板120を含む検証用取得画像Vとして、2つの画像を取得する。
まず、図9(a)に示すように、踏切50の奥側の隅50Bに距離計測用基準板120が配置した上で、広角カメラ110により静止画像を撮像する。これにより、設置候補位置Pから踏切50の奥側の隅50Bまでの距離L1(最長距離)を計測するため画像(検証用取得画像V1)が取得される。
次いで、図9(b)に示すように、踏切50の手前側の隅50Tに距離計測用基準板120が配置した上で、広角カメラ110により静止画像を撮像する。これにより、設置候補位置Pから踏切50の手前側の隅50Tまでの距離L2(最短距離)を計測するため画像(検証用取得画像V2)が取得される。
そして、検証用取得画像V(V1,V2)は、一旦、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)のメモリに、画像ファイルとして保存される。
【0065】
(第三工程)
なお、検証用取得画像V(V1,V2)をパーソナルコンピュータ(距離演算部130)のメモリに保存する際に、検証用取得画像Vのレンズ歪み補正を行うのが好ましい。レンズ歪み補正の原理・方法は、上述した通りである。
【0066】
(第四工程)
次に、検証用取得画像V1,V2における距離計測用基準板120の位置(画像座標系)を特定する。
具体的には、図10(a)に示すように、検証用取得画像V1,V2をそれぞれ液晶画面135上に拡大表示し、液晶画面135上に重ねて表示されたカーソル(ポインタ)を検証用取得画像V1,V2上の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDに移動し、不図示のマウス(入力部)をクリック(操作)することで、四隅QA〜QD(4箇所)を選択する。
こうして、検証用取得画像V1,V2における距離計測用基準板120の位置(画像座標系)が特定される。
【0067】
(第五工程)
そして、距離計測用基準板120(四隅QA〜QD)の位置が特定されると、距離演算部130は、距離演算部130の画角確認・測距ソフトウエアを用いて、検証用取得画像V(V1,V2)に基づいて、設置候補位置Pから隅50Bまでの距離L1と手前側の隅50Tまでの距離L2をそれぞれ求める。
この演算結果(距離L1,L2)は、図10(b)に示すように、液晶画面135上に表示される。
【0068】
距離L1を求める演算処理と、距離L2を求める演算処理は、別々に行われる。
まず、液晶画面135上に検証用取得画像V1を表示した上で、距離L1を求め、その演算結果をメモリに保存する。次いで、液晶画面135上に検証用取得画像V2を表示した上で、距離L2を求め、その演算結果をメモリに保存する。
なお、距離L1,L2の演算の順序は、任意である。
【0069】
また、L1,L2の演算処理により、広角カメラ110からみた距離計測用基準板120の位置姿勢も併せて求められる。言い換えると、隅50B,隅50Tのそれぞれから見た広角カメラ110の位置姿勢が併せて求められる。
この演算結果は、距離L1,L2と同時に、液晶画面135上に表示される。
【0070】
このように、レーザレーダ用設置位置検証装置100により、レーザレーダ部10の設置候補位置Pから監視エリアARの奥側の隅50B(最遠位置)までの距離L1(最長距離)と手前側の隅50Tまでの距離L2(最短距離)を求めることで、レーザレーダ部10により監視エリアARに存在する物体の検出が可能であるか否かを確認することが可能となる。
言い換えれば、レーザレーダ部10により監視エリアARの監視を行うために、レーザレーダ部10の設置位置として設置候補位置Pが適しているか否かを確認することができる
【0071】
すなわち、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)の液晶画面135に、設置候補位置Pに配置した広角カメラ110の画像が表示され、この画像に対して検知可能エリアAPを示す枠(すなわちレーザレーダ部10の画角を示す画角枠W)を重ねて表示しているので、監視エリアARがレーダレーザ部10の画角内に納まるか否かを目視により簡単に確認することができる。
更に、監視エリアARのうち設置候補位置Pからの最遠位置(隅50B)までの距離L1と最近位置(隅50T)までの距離L2とを求めることで、監視エリアARがレーダレーザ部10の測定可能距離(5m〜30m)内に納まっているか否かを簡単に確認することができる。
このように、監視エリアARがレーダレーザ部10の画角内で、かつ測定可能距離内に納まっていれば、この時の設置候補位置Pは、レーザレーダ部10の設置位置として適していると判断される。
【0072】
そして、設置候補位置Pがレーザレーダ部10の設置位置として適していると判断した場合には、設置候補位置Pにレーザレーダ部10を広角カメラ110と同一姿勢で設置すればよい。これにより、レーザレーダ部10により、踏切50(監視エリアAR)の物体を確実に検出することができる。
一方、設置候補位置Pがレーザレーダ部10の設置位置として適していないと判断した場合には、他の設置候補位置P2,P3等に広角カメラ110を配置して、上述したのと同一の検証方法を再び実施して、最適な設置位置を選定する。
【0073】
なお、第四工程では、レーザレーダ用設置位置検証装置100の操作者が、液晶画面135に表示された検証用取得画像V1,V2上に重ねて表示されたカーソル(ポインタ)を距離計測用基準板120の四隅QA〜QDに移動して選択(マウスをクリック)しているので、特定した位置(四隅QA〜QD)に誤差が生じやすい。
そこで、以下の方法により、距離計測用基準板120の姿勢を検証するようにしてもよい。
【0074】
図11は、距離計測用基準板120の姿勢検証方法を示す図である。
図11(a)に示すように、距離計測用基準板120の画像上(画像座標系)の座標をa,b,c,dと表す。また広角カメラ110の位置をeと表す。
三角形abeの法線n1は、ベクトルeaとベクトルebの外積により求めることができる。三角形cdeの法線n2も同様に求めることができる。
【0075】
図11(b)に示すように、距離計測用基準板120の辺を表すベクトルu1,u2と表す。
このとき、法線n1とベクトルu1は垂直、かつ、法線n2とベクトルu1は垂直である。よって、法線n1と法線n2の外積からベクトルu1を求めることができる。ベクトルu2についても同様に求めることができる。
【0076】
距離計測用基準板120の四隅QA〜QDの特定が正確であれば、ベクトルu1とベクトルu1のなす角は、90°となるはずである。しかし、特定に誤差が含まれていれば、なす角は90°とはならない。
したがって、ベクトルu1とベクトルu1のなす角が90°であるか否かを確認することで、距離計測用基準板120の四隅QA〜QDを正確に特定できたか否かを検証することができる。
【0077】
距離計測用基準板120の四隅QA〜QDの特定が不正確(誤差が含まれる)と判断した場合には、再度、四隅QA〜QDの特定を行えばよい。検証用取得画像V1,V2の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDにカーソル(ポインタ)移動して選択し直せばよい。
また、複数回繰り返しても、四隅QA〜QDの特定が不正確な場合には、距離計測用基準板120の設置姿勢がそもそも不正確(広角カメラ110に対して正対していない)な場合がある。そこで、距離計測用基準板120の姿勢を修正して、再度、検証用取得画像Vを取得すればよい。
【0078】
または、検証用取得画像V1,V2上の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDを画像処理により抽出し、その四隅QA〜QDに対して最小自乗法等を用いて4つの直線をフィッティングする。そして、4つの直線の交点から、計算上の四隅QA〜QDを求める。
この方法によれば、マウス等を用いて特定した四隅QA〜QDの位置のいずれかに、大きな誤差が含まれている場合に、その誤差を好適に補正することができる。
【0079】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100によれば、レーザレーダ部10の設置候補位置Pの適否検証を容易かつ確実に行うことができる。
この際、現地においては、踏切50(監視エリアAR)のうち設置候補位置Pからの最遠位置(隅50B)と最近位置(隅50T)のそれぞれに距離計測用基準板120を配置するだけなので、巻尺等を用いて距離測定を行う場合に比べて、安全、迅速、確実に検証作業を行うことができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、検証用取得画像Vとして、2つの画像(V1,V2)を取得する場合について説明したが、これに限らない。
1つに検証用取得画像V内に、2つの距離計測用基準板120がふくまれていればよい。つまり、距離計測用基準板120を2つ用意して、踏切50(監視エリアAR)の最遠位置(隅50B)と最近位置(隅50T)のそれぞれに同時に距離計測用基準板120を配置する。そして、この状態を広角カメラ110で撮像するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】3次元レーザレーダ式監視装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】3次元レーザレーダ式監視装置1の設置例及び検知可能エリアを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の概略構成を示す模式図であって、(a)は全体図、(b)は距離計測用基準板120を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100で用いられる座標系を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証方法の手順を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の設置状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】広角カメラ110の取得画像を示す図である。
【図9】広角カメラ110の取得画像(検証用取得画像)を示す図であって、(a)は踏切の奥側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像、(b)は踏切の手前側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像を示す。
【図10】検証用取得画像上の距離計測用基準板を特定する方法を説明する図である。
【図11】距離計測用基準板120の姿勢検証方法を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…3次元レーザレーダ式監視装置
10…レーザレーダ部
20・・・監視装置本体
50…踏切(所定領域)
50T…隅(最近位置)
50B…隅(最遠位置)
100…レーザレーダ用設置位置検証装置
110…広角カメラ(撮像部)
120…距離計測用基準板(矩形基準板)
130…距離演算部(演算処理端末)
135…液晶画面(画像表示部)
P…設置候補位置
AP…検知可能エリア
AR…監視エリア(所定領域)
W…画角枠
V(V1,V2)…検証用取得画像
L1…距離(第一距離)
L2…距離(第二距離)
Q…較正パターン
QA〜QD…四隅
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定領域に存在する物体を検知するレーザレーダの設置位置の検証を行うレーザレーダ用設置位置検証装置、検証方法及びプログラムに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、踏切内を通過する物体を検知して、検知された物体が列車であるか否かを検知する検知装置及び検知方法が知られている。
この検知装置としては、光学方式、ループコイル方式、カメラ画像処理方式、水中走査レーザ方式が提案されている。
しかし、これらの方式に対しては、様々な問題点が挙げられている。すなわち、学方式の検知装置は、細い光軸を遮断するものは全て障害物として検知してしまう。ループコイル方式の検知装置は、ループコイル上の金属で発振周波数を所定値以上に変化させるものは全て障害物として検知してしまう。カメラ画像処理方式の検知装置は周囲の環境に影響されやすく、常時十分な性能を維持することができない。水平走査レーザ方式の検知装置では、凹凸の大きい踏切等での適用が困難である、等の問題が指摘されている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するために、特許文献1,2等に開示されるように、空中を伝搬するレーザを踏切内の物体に放射して、反射信号に基づいてその物体の方位情報と距離情報とを収集することによってその物体が踏切内の障害物であるか否かを判定するレーザレーダ装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−11824号公報
【特許文献2】特許第3812666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したレーザレーダ装置を踏切等に設置する場合には、レーザレーダ装置の画角(水平画角、垂直画角)内に踏切等の監視エリアが納まるような設置位置を選定する必要がある。
踏切がレーザレーダ装置の水平画角内に納まるか否かについては、踏切の地図情報に基づいて事前確認することができる。一方、垂直画角に納まるか否かについては、地図情報等が存在しないため事前確認ができず、現地確認を行っている。
【0005】
現地確認は、レーザレーダ装置の設置候補位置から踏切(監視エリア)までの距離を巻尺等を用いて測定しているのが現状である。このため、交通量が多い踏切では、距離測定自体が困難であったり、危険を伴ったり、或いは夜間に測定しなければならない等の制約があるという問題がある。また、木の枝などの障害物で遮られるかどうかもわからない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、所定領域に向けてレーザを走査照射して所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、レーザレーダの設置位置の検証を、安全、迅速、確実に行うことができる検証装置、検証方法及びプログラムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザレーダ用設置位置検証装置、レーザレーダ用設置位置の検証方法及びレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
第1の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証装置であって、前記レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【0010】
また、前記撮像部により撮像された画像を表示すると同時に、前記画像に前記3次元レーザレーダの画角を示す画角枠を重ねて表示する画像表示部を備えることを特徴とする。
これにより、撮像部により取得される画像内に、所定領域が納まっているか否かを、容易かつ確実に確認することができる。
【0011】
また、前記距離演算部は、前記所定姿勢情報に基づいて前記撮像部と前記矩形基準板の相対位置姿勢関係を求めることを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置位置姿勢を求めることができる。
【0012】
また、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を選択する入力部を備え、前記距離演算部は、前記入力部からの入力情報に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする。
これにより、検証用取得画像上における矩形基準板を容易に特定することができ、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離を確実に求めることができる。
【0013】
また、前記距離演算部は、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を、画像処理を含む演算処理により求める機能を有し、その演算結果に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする。
これにより、検証用取得画像上における矩形基準板を容易・確実・正確に特定することができ、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離を求めることができる。
【0014】
また、前記距離演算部は、前記検証用取得画像上において特定された前記矩形基準板の位置姿勢を検証する姿勢検証機能を有することを特徴とする。
これにより、矩形基準板の撮像部に対する姿勢(所定姿勢)が傾いていたり、検証用取得画像上における矩形基準板の四隅の選択位置にずれがあったりしても、これを検証するので、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離をより正確に求めることができる。
【0015】
また、前記距離演算部は、前記撮像部のレンズに起因する前記検証用取得画像の歪みを補正する歪み補正機能を有することを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの最長距離・最短距離をより正確に求めることができる。
【0016】
第2の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証方法であって、前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部を前記レーザレーダの設置候補位置に配置する工程と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに、矩形基準板を前記撮像部に対して所定姿勢に配置して前記撮像部により撮像する工程と、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【0018】
第3の発明は、所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、前記撮像部に接続された演算処理端末と、を備えるレーザレーダ用設置位置検証装置に、前記レーザレーダの設置位置の検証処理を実行させるためのプログラムであって、前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算処理を、前記演算処理端末に実行させることを特徴とする。
これにより、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)がそれぞれ求められるので、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば以下の効果を得ることができる。
本発明は、レーザレーダの設置候補位置から所定領域までの第一距離(最長距離)・第二距離(最短距離)をそれぞれ求めて、所定領域がレーザレーダの検出領域内に納まっているか否かを判断するので、設置候補位置の適否検証を容易かつ確実に行うことができる。
この際、現地においては、所定領域のうち設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに矩形基準板を配置するだけなので、巻尺等を用いる場合に比べて、安全、迅速に距離測定(検証作業)を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係るレーザレーダ用設置位置検証装置、レーザレーダ用設置位置の検証方法及びレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、3次元レーザレーダ式監視装置1の概略構成を示す模式図である。
図2は、3次元レーザレーダ式監視装置1の設置例及び検知可能エリアを示す平面図である。
【0021】
図1に示すように、3次元レーザレーダ式監視装置1は、レーザレーダ部10と監視装置本体20とから構成される。
レーザレーダ部10は、多面体ミラー11、多面体ミラー11を一定速度で回転駆動する主走査モータ12、多面体ミラー11を主走査モータ12の回転軸に直交する方向に所定速度で揺動させる副走査モータ13、レーザ光源14、ハーフミラー15、集光レンズ16、受光器17等を備える。
そして、レーザ光源14から発せられたレーザパルス光を、ハーフミラー15を介して多面体ミラー11に照射することで、レーザパルス光を多面体ミラー11の回転と傾きとに応じて監視エリアARに照射する。また、監視エリアからのレーザパルス光の反射光を多面体ミラー11から集光レンズ16を介して受光器17により受光検知するように構成されている。
【0022】
すなわち、レーザレーダ部10は、多面体ミラー11の回転とその揺動とによってレーザパルス光の照射方向を主走査方向(x1方向)に高速に偏向走査しながら、その走査面を副走査方向(y方向)に偏向走査し、これによって図2に示すような監視エリアARの全域を走査している。
そして、監視エリアARに存在する種々の物体による反射光を、レーザパルス光の照射に同期して受光し、その受光タイミング(レーザパルス光の照射タイミングからその反射光の受光タイミングまでの経過時間)から物体(反射点)までの距離情報を求めることが可能となっている。
【0023】
なお、レーザレーダ部10による走査範囲は、例えば主走査(水平)方向に60度(±30度)、副走査(垂直)方向に30度(±15度)に設定されている。
またレーザレーダ部10は、例えばその走査方向が0.1度変化する都度、レーザパルス光を照射し、その反射光を受光することで、合計[600×300]方位からの反射光の情報を順次検出するように設定されている。
【0024】
監視装置本体20は、例えばパーソナルコンピュータからなり、レーザレーダ部10を用いて検出される反射光情報から、その反射点の空間座標を示す3次元レーダ情報を求める。
レーダ情報は、レーザ光源14を駆動するレーザパルス走査回路(不図示)からの同期信号を受けてレーザパルス光の物体による反射光の受光タイミングを計測し、この計測時間を距離情報に変換し、更にこの距離情報を濃淡情報に変換する機能を備える。
【0025】
なお、計測時間を直接的に濃淡情報に変換することも可能である。また、距離に応じて濃度を段階的に変化させる場合の他、距離に応じて色が段階的に変化させるようにしてもよい。
また、3次元レーダ情報をレーザレーダ画像として可視化する必要がない場合には、上述した濃淡変換等を行うことなく、反射光の受光タイミングの計測時間をそのままレーザパルス光の反射点の情報として用いることも可能である。
【0026】
そして、3次元レーダ情報としてのレーザレーダ画像は、上述したようにして求められる濃淡情報(距離情報)をレーザパルス走査回路から求められる主走査角度および副走査角度の情報に従って、画像メモリ(不図示)上に順次マッピングしていくことにより作成される。
【0027】
監視装置本体20は、更に、3次元レーダ情報(レーザレーダ画像)から監視エリアAR内に存在する物体を検出する物体検出機能を備える。
物体検出機能は、3次元レーダ情報からその空間座標が連続する所定数以上の反射点のまとまりを、或る大きさを有する1つの物体として認識し、その重心を物体位置として検出するものである。
【0028】
そして、このような検出結果は、例えば、3次元レーダ情報を平面座標変換し、監視エリアARを天空から見下ろした状態を示す平面監視画像として、モニタ25上に画像表示される。
【0029】
図2に示すように、3次元レーザレーダ式監視装置1(レーザレーダ部10)は、踏切50の近傍に設置される。
踏切50(所定領域)は、鉄道線路52と道路54が地上(同一平面)で交わっている領域であって、道路の侵入口の両側にそれぞれ遮断機56(計4台)が設けられている。
そして、レーザレーダ部10は、踏切50の四隅のいずれか近傍に配置されて、踏切50を斜め方向から視野することで、踏切50の全域を監視するように設定されている。つまり、踏切50の全域(監視エリアAR)がレーザレーダ部10の検知可能エリアAPに含まれるように設置される。
【0030】
上述したように、レーザレーダ部10の監視可能エリア、すなわち画角は、水平方向(主走査方向)に60度、垂直方向(副走査方向)に30度に設定されている。
したがって、レーザレーダ部10の水平画角(60度)内に、踏切50(監視エリアAR)の四隅のうちレーザレーダ部10から見て左右の隅50L,50Rが納まるように、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
また、レーザレーダ部10の垂直画角(30度)内に、踏切50(監視エリアAR)の四隅のうちレーザレーダ部10から見て前後(前奥)の隅50T,50Bが納まるように、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
【0031】
更に、レーザレーダ部10は、地上から約5mの位置に配置された上で、測定距離が5m〜30mに設定されている。したがって、レーザレーダ部10から前側の隅50Tまでの距離(最短距離)が5m以上、奥側の隅50Bまでの距離(最長距離)が30m以内に納まるに、レーザレーダ部10を配置する必要がある。
【0032】
このように、レーザレーダ部10の検知可能エリアAP(画角、測定距離)を考慮して、レーザレーダ部10の適切な位置姿勢を決定した上で、現地にて設置する必要がある。
レーザレーダ部10の設置候補位置としては、踏切50の地図情報に基づいて、予め机上にて検討することができる。しかし、机上検討できるのは、レーザレーダ部10の水平画角内に、踏切50(監視エリアAR)が納まるか否かを大まかに行えるに過ぎない。また、木の枝などの障害物で遮られるかどうかもわからない。
【0033】
したがって、レーザレーダ部10の設置に先立って、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR)との位置姿勢関係を、予め計測する必要がある。つまり、踏切50の現地にて、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR:隅50T,50B,50L,50R)との位置姿勢関係(水平画角、垂直画角、測定距離)を計測する。
【0034】
以下、レーザレーダ部10の設置候補位置Pと踏切50(監視エリアAR)との位置姿勢関係を計測して、設置候補位置Pが適切な設置位置であるかを検証する装置及び方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の概略構成を示す模式図であって、(a)は全体図、(b)は距離計測用基準板120を示す。
図4は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の機能ブロック図である。
【0035】
図3に示すように、レーザレーダ用設置位置検証装置100は、広角カメラ110、距離計測用基準板120及び距離演算部130から構成される。
広角カメラ110は、レーザレーダ部10の設置候補位置Pに配置されると共にレーザレーダ部10の画角と同一以上の画角を有して設置候補位置Pを含む画像を取得するものである。
広角カメラ110としては、いわゆるデジタルスチルカメラが用いられる。広角カメラ110は、例えば、水平方向に1500画素以上、垂直方向に1000画素以上の記録画素数を有している。
なお、ビデオカメラは用いることも可能である。ビデオカメラは、動画を撮影でき、画像の更新速度の点で適しているが、画素数が少なく、計測精度が不十分となってしまう虞がある。
また、広角カメラ110には、広角レンズが装着される。これにより、広角カメラ110の画角は、水平方向に60度以上、垂直方法に30度以上に設定されている。
そして、広角カメラ110は、不図示の三脚等を用いて、設置候補位置Pに配置される。
【0036】
距離計測用基準板120(矩形基準板)は、監視エリアAR(踏切50)内に配置されて、監視エリアARと共に広角カメラ110により撮像されるものである。
距離計測用基準板120は矩形の板状部材であって、その外縁(枠)に黒色の較正パターンQが描かれている。
具体的には、図3(b)に示すように、距離計測用基準板120(較正パターンQ)は、垂直長さが1205mm(1165mm)、水平長さが850mm(810mm)のA0サイズの長方形である。そして、距離計測用基準板120の上端(辺)が地上から1500mmに位置するようにスタンド125により支持可能となっている。
【0037】
なお、距離計測用基準板120のサイズは、任意であって、例えば、垂直長さが850mm(810mm)、水平長さが605mm(565mm)のA1サイズの長方形であってもよい。この場合であっても、距離計測用基準板120の上端(辺)が地上から1500mmに位置するように支持可能となっている。監視エリアARは、踏切50の地上0mmから1500mmの範囲内の立体的領域であって、この最大高さに内に距離計測用基準板120を納めるためである。
【0038】
距離演算部130は、広角カメラ110により取得した距離計測用基準板120を含む画像(検証用取得画像)と距離計測用基準板120の形状(各辺の長さ)情報等とに基づいて、設置候補位置Pから監視エリアAR(踏切50)の隅50Bまでの距離L1(最長距離:第一距離)と、隅50Tまでの距離L2(最短距離:第二距離)を演算処理により求めるものである。
つまり、距離演算部130は、設置候補位置Pが適切な設置位置であるかを検証するために、監視エリアAR(踏切50)内に配置した距離計測用基準板120の画像(検証用取得画像)に基づいて、各種演算処理を行って、設置候補位置Pと監視エリアAR(踏切50)との位置姿勢関係を計測する。
【0039】
距離演算部130としては、例えばパーソナルコンピュータが用いられ、広角カメラ110とUSBケーブル等により接続される。
これにより、距離演算部130は、広角カメラ110を遠隔操作したり、広角カメラ110により撮影された設置候補位置Pを含む画像(検証用取得画像)を取得したりすることが可能となっている。
【0040】
図4に示すように、レーザレーダ用設置位置検証装置100は、距離演算部130内に格納されたカメラ遠隔操作ソフトウエア、画角確認・測距ソフトウエア、測距計算ライブラリを備えている。
【0041】
カメラ遠隔操作ソフトウエアは、広角カメラ110を遠隔操作する機能を有する。また、広角カメラ110から連続的に撮影した画像データを取り込み、画像ファイルとして、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)の上のハードディスクに保存する。
【0042】
画角確認・測距ソフトウエアは、画角判定および距離測定(測距)を行う機能を有する。また、ハードディスク上の画像ファイルを読み出し、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)上の液晶画面135(画像表示部)に表示する機能を有する。
更に、検知可能エリアAPの画像上への重畳表示、距離計測用基準板120までの距離L1,L2、および広角カメラ110の位置、姿勢を液晶画面135上に表示する。
【0043】
測距計算ライブラリは、画角確認・測距ソフトウエア内に組み込まれるライブラリとして提供され、画像の歪み除去、距離計測用基準板120の画面上での位置から距離計測用基準板120までの距離、広角カメラ110の位置・姿勢を算出する機能を有する。
【0044】
図5は、レーザレーダ用設置位置検証装置100で用いられる座標系を示す図である。
画像座標系は、画像平面上での2次元の座標系を表す。
カメラローカル座標系は、広角カメラ110の仮想中心を原点とする3次元の直行座標系を表す。広角カメラ110にとっての右手方向をXc、下向き方向をYc、奥行き方向をZcとする。Xc,Yc,Zc軸を中心とした回転角度をそれぞれ、ロール角,ピッチ角,ヨー角と呼ぶ。
地上座標系は、広角カメラ110の設置候補位置Pの足元(地上)を原点とする3次元の直交座標系を表す。広角カメラ110にとっての右手方向をxc、奥行き方向をyc、鉛直上向き方向をzcで表す。
較正パターン座標系は、距離計測用基準板120上の既知寸法の長方形を較正パターンQとして用いる。較正パターン座標系は、較正パターンQの中心を原点とし、較正パターンQの水平の辺の方向をXm、垂直の辺の方向をYmおよび較正パターンの平面に直交する方向をZmとした座標系を表す。
【0045】
長方形平板をカメラで撮影した場合、カメラと長方形平板との距離や配置に応じて、カメラで撮影した長方形の画像上での見かけの形状、大きさが変化する。長方形平板の大きさが既知であれば、カメラから長方形平板までの距離を求めることができる。
レーザレーダ用設置位置検証装置100では、この計測原理を利用して、広角カメラ110(設置候補位置P)から距離計測用基準板120までの距離を演算処理により求める。なお、距離計測用基準板120の形状・各辺長さは、上述したように、既知である。
【0046】
以下に、計測原理の詳細を説明する。
距離計測用基準板120の頂点k (k=1〜4)の画像平面上(画像座標系)の座標値(xi[k])と、三次元空間(較正パターン座標系)での座標値(Xm[k])との関係は、式(1)により表される。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、行列Pは広角カメラ110の射影変換行列であり、事前に広角カメラ110のキャリブレーションを行うことによって求まる既知の3×3行列である。
スカラー値h[k]は、広角カメラ110の光軸方向の距離である奥行き情報を表す未知数である。
回転行列Rと並進ベクトルtは、それぞれ広角カメラ110に対する長方形の位置と姿勢を表すものであり、回転行列Rは3つの回転角θx,θy,θzで各成分を表すことができ、並進ベクトルtは3つの成分tx,ty,tzで表すことができるので、計6つの未知数からなる。
【0049】
三次元空間での座標値(Xm[k],(k=1〜4))は、距離計測用基準板120の各辺長さ(幅・高さ)が既知の値である。
また、画像平面上の座標値(xi[k],(k=1〜4))は、計測によって求められる既知の値である。
よって、未知数は、h[k] (k=1〜4)、θx、θy、θz、tx、ty、tzの計10個であり、式(1)の計12個(4頂点のそれぞれに対して、3つの座標に関する方程式がある。)の方程式を使用した収束計算によって、これらの未知数を求めることができる。
既知の寸法の長方形平板(距離計測用基準板120)を用いることによって、最終的に、奥行き情報(h[k] (k=1〜4))から、広角カメラ110と距離計測用基準板120との間の距離が求まる。
【0050】
なお、未知数が10個に対して方程式の個数が12個と冗長であるため、画像平面上の座標値(xi[k] (k=1〜4))の計測値に誤差が含まれている場合、12個の方程式全てを満たす未知数を求めることができないが、近似解は得られるので支障はない。
【0051】
レーザレーダ用設置位置検証装置100では、広角カメラ110に広角レンズを使用しているため、レンズ歪が大きく、広角カメラ110で撮影した生画像は、歪んだものとなる。そこで、計測精度を向上させるためにレンズ歪みの補正が必要となる。
【0052】
以下に、レンズ歪みの補正方法について示す。
レンズの歪み補正前および歪み補正後の画像上(画像座標系)での位置をそれぞれ(x,y)、(x’,y’)とし、x方向およびy方向の歪みの大きさを△x、△yとすると、歪補正前後の座標値は、行列Pの成分を用いて、式(2)で与えられる。
【0053】
【数2】
【0054】
このとき、△x、△yを歪み係数p1,p2,k1,k2を用いて、式(3)で表す。
【0055】
【数3】
【0056】
レンズ歪を補正するためには、事前に既知寸法の格子パターン(例えば市松模様)を撮影し、各格子の頂点の位置を上述の(x,y)とみなし、式(2)、(3)で得られる(x’,y’)が格子状になるように、最小2乗法によって未知数である行列Pの各成分、および歪み係数p1,p2,k1,k2を求める。
このようにして、レンズの歪み補正後の画像上(画像座標系)での位置(x’,y’)を求める。
【0057】
図6は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証方法の手順を示す図である。
図7は、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の設置状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図8は、広角カメラ110の取得画像を示す図である。
図9は、広角カメラ110の取得画像(検証用取得画像)を示す図であって、(a)は踏切の奥側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像、(b)は踏切の手前側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像を示す。
図10は、検証用取得画像上の距離計測用基準板を特定する方法を説明する図である。
【0058】
図6に示すように、レーザレーダ用設置位置検証方法は、広角カメラ110をレーザレーダ部10の設置候補位置Pに配置する第一工程(ステップS1)、監視エリアARのうち設置候補位置Pからの最遠位置と最近位置のそれぞれに距離計測用基準板120を配置して広角カメラ110により撮像して検証用取得画像を取得する第二工程(ステップS2)、検証用取得画像のレンズ歪みを補正する第三工程(ステップS3)、検証用取得画像上において距離計測用基準板120を特定する第四工程(ステップS4)、検証用取得画像と距離計測用基準板120の形状(各辺長さ)情報基づいて設置候補位置Pから最遠位置までの距離及び最近位置までの距離を求める第五工程(ステップS5)を行うものである。
以下、工程順に説明する。
【0059】
(第一工程)
上述したように、広角カメラ110は、レーザレーダ部10よりも広い画角(水平方向60度以上、垂直方法30度以上)に設定されている。このため、図7に示すように、予め机上検討にて選定されたレーザレーダ部10の設置候補位置Pに、広角カメラ110を配置すると、広角カメラ110により、レーザレーダ部10の監視エリアARである踏切50の全領域は勿論、更に検知可能エリアAPを含む画像を取得することが可能である。
【0060】
図8に示すように、距離演算部130の液晶画面135に表示される広角カメラ110の画像(動画等)には、画角確認・測距ソフトウエアの処理により、検知可能エリアAPを示す枠(すなわちレーザレーダ部10の画角を示す画角枠W)が重ねて表示される。
なお、広角カメラ110の画角(画像)とレーザレーダ部10の画角(画角枠W)との相対関係は、上述したキャリブレーションにより予め求められている。そして、画角枠Wは、広角カメラ110の画角(画像)とレーザレーダ部10の画角のそれぞれの中心が一致する位置に表示される。
【0061】
このため、レーザレーダ用設置位置検証装置100の操作者は、まず、設置候補位置Pに配置された広角カメラ110の取得画像から、レーザレーダ部10の検知可能エリアAP(つまり画角枠W)内に、監視エリアARである踏切50の全領域が含まれているか否かを目視判断する。
広角カメラ110が設置候補位置Pに正しく配置されていれば、画角枠W内に踏切50の全領域(監視エリアAR)が含まれているはずである。したがって、もし、画角枠W内に踏切50の全領域が含まれていない場合には、広角カメラ110の設置高さ、姿勢の調整を行う。
【0062】
(第二工程)
次に、広角カメラ110から踏切50までの距離計測を行うための、検証用取得画像Vを取得する。
具体的には、監視エリアARである踏切50の四隅(隅50T,50B,50L,50R)のうち、手前側の隅50Tと奥側の隅50Bに、それぞれ距離計測用基準板120に配置して、距離計測用基準板120を含む静止画像(検証用取得画像V)を広角カメラ110により取得(撮像)する。
【0063】
なお、隅50T,50Bに配置される距離計測用基準板120は、広角カメラ110に対して、正対する(真正面を向く)ように配置される。また、距離計測用基準板120は、垂直(地面(水平面)に対して直角)に配置される。上述した計測原理に基づく演算処理の誤差を小さくするためである。
【0064】
距離計測用基準板120を含む検証用取得画像Vとして、2つの画像を取得する。
まず、図9(a)に示すように、踏切50の奥側の隅50Bに距離計測用基準板120が配置した上で、広角カメラ110により静止画像を撮像する。これにより、設置候補位置Pから踏切50の奥側の隅50Bまでの距離L1(最長距離)を計測するため画像(検証用取得画像V1)が取得される。
次いで、図9(b)に示すように、踏切50の手前側の隅50Tに距離計測用基準板120が配置した上で、広角カメラ110により静止画像を撮像する。これにより、設置候補位置Pから踏切50の手前側の隅50Tまでの距離L2(最短距離)を計測するため画像(検証用取得画像V2)が取得される。
そして、検証用取得画像V(V1,V2)は、一旦、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)のメモリに、画像ファイルとして保存される。
【0065】
(第三工程)
なお、検証用取得画像V(V1,V2)をパーソナルコンピュータ(距離演算部130)のメモリに保存する際に、検証用取得画像Vのレンズ歪み補正を行うのが好ましい。レンズ歪み補正の原理・方法は、上述した通りである。
【0066】
(第四工程)
次に、検証用取得画像V1,V2における距離計測用基準板120の位置(画像座標系)を特定する。
具体的には、図10(a)に示すように、検証用取得画像V1,V2をそれぞれ液晶画面135上に拡大表示し、液晶画面135上に重ねて表示されたカーソル(ポインタ)を検証用取得画像V1,V2上の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDに移動し、不図示のマウス(入力部)をクリック(操作)することで、四隅QA〜QD(4箇所)を選択する。
こうして、検証用取得画像V1,V2における距離計測用基準板120の位置(画像座標系)が特定される。
【0067】
(第五工程)
そして、距離計測用基準板120(四隅QA〜QD)の位置が特定されると、距離演算部130は、距離演算部130の画角確認・測距ソフトウエアを用いて、検証用取得画像V(V1,V2)に基づいて、設置候補位置Pから隅50Bまでの距離L1と手前側の隅50Tまでの距離L2をそれぞれ求める。
この演算結果(距離L1,L2)は、図10(b)に示すように、液晶画面135上に表示される。
【0068】
距離L1を求める演算処理と、距離L2を求める演算処理は、別々に行われる。
まず、液晶画面135上に検証用取得画像V1を表示した上で、距離L1を求め、その演算結果をメモリに保存する。次いで、液晶画面135上に検証用取得画像V2を表示した上で、距離L2を求め、その演算結果をメモリに保存する。
なお、距離L1,L2の演算の順序は、任意である。
【0069】
また、L1,L2の演算処理により、広角カメラ110からみた距離計測用基準板120の位置姿勢も併せて求められる。言い換えると、隅50B,隅50Tのそれぞれから見た広角カメラ110の位置姿勢が併せて求められる。
この演算結果は、距離L1,L2と同時に、液晶画面135上に表示される。
【0070】
このように、レーザレーダ用設置位置検証装置100により、レーザレーダ部10の設置候補位置Pから監視エリアARの奥側の隅50B(最遠位置)までの距離L1(最長距離)と手前側の隅50Tまでの距離L2(最短距離)を求めることで、レーザレーダ部10により監視エリアARに存在する物体の検出が可能であるか否かを確認することが可能となる。
言い換えれば、レーザレーダ部10により監視エリアARの監視を行うために、レーザレーダ部10の設置位置として設置候補位置Pが適しているか否かを確認することができる
【0071】
すなわち、パーソナルコンピュータ(距離演算部130)の液晶画面135に、設置候補位置Pに配置した広角カメラ110の画像が表示され、この画像に対して検知可能エリアAPを示す枠(すなわちレーザレーダ部10の画角を示す画角枠W)を重ねて表示しているので、監視エリアARがレーダレーザ部10の画角内に納まるか否かを目視により簡単に確認することができる。
更に、監視エリアARのうち設置候補位置Pからの最遠位置(隅50B)までの距離L1と最近位置(隅50T)までの距離L2とを求めることで、監視エリアARがレーダレーザ部10の測定可能距離(5m〜30m)内に納まっているか否かを簡単に確認することができる。
このように、監視エリアARがレーダレーザ部10の画角内で、かつ測定可能距離内に納まっていれば、この時の設置候補位置Pは、レーザレーダ部10の設置位置として適していると判断される。
【0072】
そして、設置候補位置Pがレーザレーダ部10の設置位置として適していると判断した場合には、設置候補位置Pにレーザレーダ部10を広角カメラ110と同一姿勢で設置すればよい。これにより、レーザレーダ部10により、踏切50(監視エリアAR)の物体を確実に検出することができる。
一方、設置候補位置Pがレーザレーダ部10の設置位置として適していないと判断した場合には、他の設置候補位置P2,P3等に広角カメラ110を配置して、上述したのと同一の検証方法を再び実施して、最適な設置位置を選定する。
【0073】
なお、第四工程では、レーザレーダ用設置位置検証装置100の操作者が、液晶画面135に表示された検証用取得画像V1,V2上に重ねて表示されたカーソル(ポインタ)を距離計測用基準板120の四隅QA〜QDに移動して選択(マウスをクリック)しているので、特定した位置(四隅QA〜QD)に誤差が生じやすい。
そこで、以下の方法により、距離計測用基準板120の姿勢を検証するようにしてもよい。
【0074】
図11は、距離計測用基準板120の姿勢検証方法を示す図である。
図11(a)に示すように、距離計測用基準板120の画像上(画像座標系)の座標をa,b,c,dと表す。また広角カメラ110の位置をeと表す。
三角形abeの法線n1は、ベクトルeaとベクトルebの外積により求めることができる。三角形cdeの法線n2も同様に求めることができる。
【0075】
図11(b)に示すように、距離計測用基準板120の辺を表すベクトルu1,u2と表す。
このとき、法線n1とベクトルu1は垂直、かつ、法線n2とベクトルu1は垂直である。よって、法線n1と法線n2の外積からベクトルu1を求めることができる。ベクトルu2についても同様に求めることができる。
【0076】
距離計測用基準板120の四隅QA〜QDの特定が正確であれば、ベクトルu1とベクトルu1のなす角は、90°となるはずである。しかし、特定に誤差が含まれていれば、なす角は90°とはならない。
したがって、ベクトルu1とベクトルu1のなす角が90°であるか否かを確認することで、距離計測用基準板120の四隅QA〜QDを正確に特定できたか否かを検証することができる。
【0077】
距離計測用基準板120の四隅QA〜QDの特定が不正確(誤差が含まれる)と判断した場合には、再度、四隅QA〜QDの特定を行えばよい。検証用取得画像V1,V2の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDにカーソル(ポインタ)移動して選択し直せばよい。
また、複数回繰り返しても、四隅QA〜QDの特定が不正確な場合には、距離計測用基準板120の設置姿勢がそもそも不正確(広角カメラ110に対して正対していない)な場合がある。そこで、距離計測用基準板120の姿勢を修正して、再度、検証用取得画像Vを取得すればよい。
【0078】
または、検証用取得画像V1,V2上の距離計測用基準板120の四隅QA〜QDを画像処理により抽出し、その四隅QA〜QDに対して最小自乗法等を用いて4つの直線をフィッティングする。そして、4つの直線の交点から、計算上の四隅QA〜QDを求める。
この方法によれば、マウス等を用いて特定した四隅QA〜QDの位置のいずれかに、大きな誤差が含まれている場合に、その誤差を好適に補正することができる。
【0079】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100によれば、レーザレーダ部10の設置候補位置Pの適否検証を容易かつ確実に行うことができる。
この際、現地においては、踏切50(監視エリアAR)のうち設置候補位置Pからの最遠位置(隅50B)と最近位置(隅50T)のそれぞれに距離計測用基準板120を配置するだけなので、巻尺等を用いて距離測定を行う場合に比べて、安全、迅速、確実に検証作業を行うことができる。
【0080】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0081】
例えば、上述した実施形態では、検証用取得画像Vとして、2つの画像(V1,V2)を取得する場合について説明したが、これに限らない。
1つに検証用取得画像V内に、2つの距離計測用基準板120がふくまれていればよい。つまり、距離計測用基準板120を2つ用意して、踏切50(監視エリアAR)の最遠位置(隅50B)と最近位置(隅50T)のそれぞれに同時に距離計測用基準板120を配置する。そして、この状態を広角カメラ110で撮像するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】3次元レーザレーダ式監視装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】3次元レーザレーダ式監視装置1の設置例及び検知可能エリアを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の概略構成を示す模式図であって、(a)は全体図、(b)は距離計測用基準板120を示す。
【図4】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100で用いられる座標系を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証方法の手順を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るレーザレーダ用設置位置検証装置100の設置状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】広角カメラ110の取得画像を示す図である。
【図9】広角カメラ110の取得画像(検証用取得画像)を示す図であって、(a)は踏切の奥側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像、(b)は踏切の手前側の隅に配置した距離計測用基準板を撮像した画像を示す。
【図10】検証用取得画像上の距離計測用基準板を特定する方法を説明する図である。
【図11】距離計測用基準板120の姿勢検証方法を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1…3次元レーザレーダ式監視装置
10…レーザレーダ部
20・・・監視装置本体
50…踏切(所定領域)
50T…隅(最近位置)
50B…隅(最遠位置)
100…レーザレーダ用設置位置検証装置
110…広角カメラ(撮像部)
120…距離計測用基準板(矩形基準板)
130…距離演算部(演算処理端末)
135…液晶画面(画像表示部)
P…設置候補位置
AP…検知可能エリア
AR…監視エリア(所定領域)
W…画角枠
V(V1,V2)…検証用取得画像
L1…距離(第一距離)
L2…距離(第二距離)
Q…較正パターン
QA〜QD…四隅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証装置であって、
前記レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算部と、
を備えることを特徴とするレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項2】
前記撮像部により撮像された画像を表示すると同時に、前記画像に前記3次元レーザレーダの画角を示す画角枠を重ねて表示する画像表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項3】
前記距離演算部は、前記所定姿勢情報に基づいて前記撮像部と前記矩形基準板の相対位置姿勢関係を求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項4】
前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を選択する入力部を備え、
前記距離演算部は、前記入力部からの入力情報に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項5】
前記距離演算部は、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を、画像処理を含む演算処理により求める機能を有し、その演算結果に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項6】
前記距離演算部は、前記検証用取得画像上において特定された前記矩形基準板の位置姿勢を検証する姿勢検証機能を有することを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項7】
前記距離演算部は、前記撮像部のレンズに起因する前記検証用取得画像の歪みを補正する歪み補正機能を有することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項8】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証方法であって、
前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部を前記レーザレーダの設置候補位置に配置する工程と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに、矩形基準板を前記撮像部に対して所定姿勢に配置して前記撮像部により撮像する工程と、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算工程と、
を有することを特徴とするレーザレーダ用設置位置の検証方法。
【請求項9】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、
前記撮像部に接続された演算処理端末と、
を備えるレーザレーダ用設置位置検証装置に、前記レーザレーダの設置位置の検証処理を実行させるためのプログラムであって、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算処理を、
前記演算処理端末に実行させることを特徴とするレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラム。
【請求項1】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証装置であって、
前記レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算部と、
を備えることを特徴とするレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項2】
前記撮像部により撮像された画像を表示すると同時に、前記画像に前記3次元レーザレーダの画角を示す画角枠を重ねて表示する画像表示部を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項3】
前記距離演算部は、前記所定姿勢情報に基づいて前記撮像部と前記矩形基準板の相対位置姿勢関係を求めることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項4】
前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を選択する入力部を備え、
前記距離演算部は、前記入力部からの入力情報に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項5】
前記距離演算部は、前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の四隅を、画像処理を含む演算処理により求める機能を有し、その演算結果に基づいて前記検証用取得画像上における前記矩形基準板の各辺長さを求めることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項6】
前記距離演算部は、前記検証用取得画像上において特定された前記矩形基準板の位置姿勢を検証する姿勢検証機能を有することを特徴とする請求項3から請求項5のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項7】
前記距離演算部は、前記撮像部のレンズに起因する前記検証用取得画像の歪みを補正する歪み補正機能を有することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載のレーザレーダ用設置位置検証装置。
【請求項8】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダを設置するに先立って、前記レーザレーダの設置位置の検証を行う検証方法であって、
前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部を前記レーザレーダの設置候補位置に配置する工程と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれに、矩形基準板を前記撮像部に対して所定姿勢に配置して前記撮像部により撮像する工程と、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算工程と、
を有することを特徴とするレーザレーダ用設置位置の検証方法。
【請求項9】
所定領域に向けてレーザを走査照射して検知される距離情報とその走査情報とから前記所定領域に存在する物体を検知する3次元レーザレーダの設置候補位置に配置されると共に前記レーザレーダの画角と同一以上の画角を有して前記所定領域を含む画像を取得する撮像部と、
前記所定領域のうち前記設置候補位置からの最遠位置と最近位置のそれぞれにおいて前記撮像部に対して所定姿勢に配置されて前記撮像部により撮像される矩形基準板と、
前記撮像部に接続された演算処理端末と、
を備えるレーザレーダ用設置位置検証装置に、前記レーザレーダの設置位置の検証処理を実行させるためのプログラムであって、
前記撮像部により取得した前記矩形基準板を含む検証用取得画像と前記矩形基準板の形状情報に基づいて前記設置候補位置から前記最遠位置までの第一距離及び前記設置候補位置から前記最近位置までの第二距離を求める距離演算処理を、
前記演算処理端末に実行させることを特徴とするレーザレーダ用設置位置検証装置用プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−117211(P2010−117211A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289781(P2008−289781)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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