説明

レーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する方法と装置

【課題】 本発明は、移動物体の位置を定めるための光学リンクをレーザ・パルスにより製造する方法と装置に関する。
【解決手段】 本発明の特徴とするところは、上記のレーザ・パルスを多少なりとも受信器の方向へ照射し、照射の開始から経過する時間(t)の増加する関数として連続レーザ・パルス(4)のエネルギーを変化させることである。上記のレーザ・パルスの照射の開始は移動物体の発射から遅らせられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パルスのエミッタ(発信器)と受信器との間で、そのパルスによって光学リンクを製造するための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この光学リンクは、例えば、米国特許第4,710,028号(フランス特許第2,583,523)に記載されているような位置を定める装置およびミサイル案内装置に使用するのに適している。
【0003】
この種の既知の装置では、光パルスのエミッタは、上記のミサイルに搭載し得るか固定ステーションに置かれることができ、ミサイルに搭載された鏡からなり、上記の光パルスを検出器に戻す光学リンクは、一般に、嵩高く、大量のエネルギーを消費する閃光電球である。
【特許文献1】米国特許第4710028号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、視覚上の危険が低く、エネルギー消費も低いレーザ光学リンクの製造を可能にすることによって、上記の短所を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明によれば、レーザ・パルスのエミッタとその受信器との間でレーザ・パルスにより光学リンクを製造する方法であって、その光学リンクは、そこから遠去かる移動物体の位置を定める装置によって用いられものであり、以下のことを特徴とする。
【0006】
上記のレーザ・パルスの照射の開始は、移動物体の発射より遅らされ、その後連続するレーザ・パルスのエネルギーを、レーザ・パルスの照射の開始から経過する時間の増加する関数につれて変化させる。
このようにして、全ての光学上の危険は、移動物体の発射前及びその間中回避される。その理由は、発射前にはレーザエネルギーは照射されないし、レーザ・パルスの照射は、移動物体の位置を定めるのに本当に必要な時まで、移動物体の発射から遅らせられるからである。そしてエミッタは低エネルギーを照射し、このエネルギーはエミッタと受信器との間の距離につれて徐々に増加し、移動物体の最大範囲で必要なネエルギーはその範囲の端部でのみ、即ち、操作者が居ない領域で照射される。
【0007】
尚、米国特許第4,013,244号は目標物に向けてミサイルを案内する光学ビームを制御する装置を記載する。この装置では、上記の光学上の危険とは異なる技術上の理由で、上記の案内ビームのエネルギーを所望の法則に従ってサーボコントロールで上記のミサイルの飛行中増加させる。
【0008】
本発明では、反対に、力の増加は、時間の関数として定められているので、サーボコントロールは必要ではない。更に、本発明によれば、この力の増加は、比較的遅く、光学リンクは事実上電磁的影響を受けない。
【0009】
レーザ源は、レーザ・ダイオードでもよいが、エミッタによって、照射されるエネルギーを減少させ、光学上の危険に対する保護を完全にするため、レーザ・ダイオードは、VCSEL (垂直凹面照射レーザ)からなるのが好ましい。事実、ヒ化ガリウム基板を用いた半導体レーザは僅かに収束するビーム(+あるいは−7度)を照射し、これにより、照射されたエネルギーを円錐形に限定する。これが、まさしく、移動物体の位置を定めるのに必要である。よって、光学上の危険が起こり得る、エミッタによって光があてられる容積は非常に小さい。
【0010】
加えて、受け取るエネルギーと供給されるエネルギーとの間のVCSELレーザの収束効率は特に良く、消費される電気エネルギーは低くなる。
【0011】
更に、受信器が受け取るレーザ・パルスの振幅が一定になるように、エミッタにより照射されるエネルギーは、エミッタと受信器との間の距離の2乗に比例して変化する必要がある。
【0012】
また、移動物体が一定の速度で移動する場合は、上記の連続レーザ・パルスのエネルギーは、上記のパルスの照射開始以後経過した時間の2乗に比例して変化する。
【0013】
このため、上記の連続レーザ・パルスを発生させるため上記のエミッタに連続放電を供給するコンデンサを使用することができる。そしてこのコンデンサの連続充電は、連続する充電用形パルスによって制御され、そのパルスの持続時間は直線状に増加する時間の関数である。
【0014】
よって、コンデンサによってレーザ・ダイオードあるいはVCSELレーザに与えられるエネルギーは1/2 CV に等しく(Cは、コンデンサの静電容量(ファラド)で、Vは、上記コンデンサの放電電圧(ボルト)である)、すなわち、経過時間の2乗に直接比例する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により以下のことが得られる。
照射され消費されるエネルギーの減少。レーザ・ダイオードのおかげで、受信器およびその所望の円錐形内の制限室に直接エネルギーが照射されるので、閃光ランプによって照射され、多少鏡および複合レンズによって方向が変えられる4πステラジアン以上のエネルギーと比べると、エネルギーを節約することができる。エネルギーの大部分が受信器のレベルで失せる、閃光ランプで照射された広域スペクトル帯(>1000nm)と違って、照射された狭いスペクトル帯(数nm)は受信器の高感度スペクトル帯内に完全に含まれ得る。よって、受信した同一信号レベルでは、密着した光源によって照射されたエネルギーは、それ故、広いスペクトル・ランプによって照射されたエネルギーよりもっと低くなれる。レーザ・ダイオードあるいはVCSELレーザは、更に、より良い照射エネルギー対消費エネルギー率を有し、高圧も非常に高い始動電圧も必要としない。よって、消費される電気エネルギーの減少は非常に大きい。
【0016】
重さと嵩が減少する。レーザ・ダイオードあるいはVCSELレーザは、閃光ランプよりはるかに容積が少ないので、より簡素な電力供給回路(高圧でもなく非常に高い電圧変換器もない)しか必要としないので、閃光ランプより容積が小さい光エミッタを製造することができる。
【0017】
受信器の迷走の減少。照射されるエネルギーは発射時低いので、受信器が用いる検出器は迷走せず、受信器の信号レベルは、移動物体が遠去かるにつれ、より規則正しくなる。
【0018】
電磁照射率の減少。用いられる高圧とレーザ・ダイオードおよびVCSELレーザに関わるエネルギーとは閃光ランプのものよりはるかに低いので、レーザの電磁照射率は閃光光エミッタのものよりはるかに低い。
【0019】
スペクトルの選択性の改良。非常に狭い照射波長を有する源が受信器のスペクトル帯を減少させ、よって信号と背景との比率を改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付図面の各図により本発明がどのように実施されるかが良く理解できる。これらの図面で、同一符号は同一要素を示す。
【0021】
図1には、基準軸X−X(例えば、照準軸)に対しミサイル(2)の位置を定めることができる装置(1)が示されており、このミサイル(2)は上記の装置(1)から一定の速度でより遠のくものである。この装置(1)は、例えば、米国特許第4,710,028号(フランス特許第2,583,523号)に記載されているタイプのものである。
【0022】
装置(1)でミサイル(2)の位置を定めるため、ミサイル(2)は、上記の装置(1)に向けてレーザ・パルス(4)を照射できるレーザ・ダイオードあるいはVCSELレーザタイプのレーザ源(3)を備える。
【0023】
ミサイル(2)に搭載されレーザ源(3)を制御するようになされた装置(5)は、レーザ源(3)と平行に連結され、制御スイッチ(8)を介して電圧源(7)から電圧をかけられることができるコンデンサ(6)を備える。同様に、レーザ源(3)の回路は負荷抵抗器(9)を備え、制御スイッチ(10)を介して閉じられる。
【0024】
装置(5)は、更にまた、周期的信号(12)(図3A参照)の発生器(11)を備え、この発生器(11)は制御装置(13)を介して制御スイッチ(10)の閉鎖を制御できる。加えて、この信号発生器(11)は可変幅(図3B参照)のパルス(15)の発生器(14)を制御し、この発生器(14)自体は、制御システム(16)を介して制御可能なスイッチ(8)を制御する。発生器(14)は、信号(12)を受けてパルスを照射し、パルス(15)の幅は、時間(t)の関数として直線的に増加する。
【0025】
ミサイル(2)の発射前は、レーザ源(3)によってレーザ・パルス(4)は照射されない。よって、ミサイル(2)の直ぐ傍にいても光学上の危険はない。
【0026】
ミサイル(2)の発射時には、制御指令が、タイミング装置(18)が介在する制御ライン(17)を介して信号発生器(11)に送られる。よって、装置(1)がミサイル(2)の位置を定めるのに本当にレーザ・パルス(4)が必要な時までレーザ源(3)からの照射を遅らせることが出来る。
【0027】
装置(18)によって生じるタイミングの遅れが経過すると、発生器(11)が第1信号(12.1)を発生する。この信号は、
短時間制御スイッチ(13)を介してスイッチ(10)を閉じ、コンデンサ(6)の潜在電荷が負荷抵抗器(9)を介してレーザ源(3)を通って放電する。その後上記のスイッチ(10)は即座に再度開く。そして
暫定長さ(l1)の第1矩形パルス(15.1)を発生する発生器(14)を制御し、スイッチ(8)を時間(l1)の間閉じることができて、上記の時間の間(図3Cのc1参照)コンデンサ(6)には電圧源7から電圧をかけることができる。時間l1が経過すると、コンデンサ6には電圧レベル(V1)まで電圧がかけられ、この電圧レベル(V1)が次の信号(12.2)が現れるまで維持される。
【0028】
発生器(11)が次の信号(12.2)を照射すると、前記のように、スイッチ(10)が即座に短時間閉じ、コンデンサ(6)の電圧(V1)での電荷はレーザ・パルス(4)を照射するレーザ源(3)を通って(図3Cのセグメントd1を参照)放電される。他方、発生器(14)は第2矩形パルス(15.2)を発生する。この矩形パルスの幅(l2)でl2=l1 + δt (δtは時間定数で、矩形パルスの幅は、時間と共に直線的に変化する)。この結果、幅(l2)は、幅(l1)に対し、時間と共に直線的に増加する。従って、スイッチ(10)は再度開き、コンデンサ(6)は、電圧V2=kV1になるまで時間(l2)に亘って電圧をかける(図3Cのセグメントc2参照)。この電圧V2は第3の信号(12.3)が現れるまで維持される。
【0029】
そして、前項で記載したのと同じ現象が起こり、コンデンサ6の電圧V2の電荷は、レーザ・パルス(4)を照射するレーザ源(3)(セグメントd2)を通って放電し、その後、このコンデンサ(6)には、第3の矩形パルス(15.3)の間電圧V3=kV2になるまで電圧がかけられる。矩形パルス(15.3)の暫定幅(l3)はl2 +δtに等しい。
【0030】
こうして、電圧V1、V2、V3での放電(d1、d2、...)から生じる連続光パルス(4)が、時間(t)と共に直線的に増加し、そのエネルギーは時間の2乗に比例して増加する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ミサイルの位置を示す線図である。
【図2】上記のミサイルに搭載されるレーザ・パルスエミッタのブロック図である。
【図3】図3A、図3Bおよび図3Cは図2のエミッタの作用を示す経時線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ・パルス(4)のエミッタ(照射器)(3)とそのパルスの受信器(1)との間でレーザ・パルス(4)によって光学リンクを製造する方法であって、その光学リンクは、遠ざかる移動物体の位置を定める装置によって用いられるものにおいて、上記のレーザ・パルス(4)の照射の開始が、上記の移動物体(2)の発射より遅らされ、上記の連続レーザ・パルス(4)のエネルギーは、上記のレーザ・パルスの照射の開始から経過する時間(t)の増加する関数として変化することを特徴とするレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、移動物体(2)が一定速度で移動するものにおいて、上記の連続するレーザ・パルス(4)が、上記のパルスの照射の開始から経過する時間(t)の2乗に比例して変化することを特徴とするレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する方法。
【請求項3】
レーザ・パルス(4)のエミッタ(3)とそのパルスの受信器(1)との間でレーザ・パルス(4)によって光学リンクを製造する装置であって、その光学リンクは、遠ざかる移動物体の位置を定める装置によって用いられるものにおいて、上記のレーザ・パルス(4)の照射の開始を、上記の移動物体(2)の発射より遅らせる手段(18)と、上記の連続レーザ・パルス(4)のエネルギーを、上記のレーザ・パルスの照射の開始から経過する時間(t)の増加する関数として変化させる手段(5)とからなることを特徴とするレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する装置。
【請求項4】
上記のエミッタ(3)が1つ以上のレーザ・ダイオードからなることを特徴とする請求項3に記載したレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する装置。
【請求項5】
上記のエミッタ(3)が1つ以上のVCSELレーザからなることを特徴とする請求項3に記載したレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する装置。
【請求項6】
上記の移動物体(2)が一定速度で移動し、上記の手段(5)が、上記の連続レーザ・パルス(4)のエネルギーを、上記のレーザ・パルスの照射の開始から経過する時間(t)の2乗に比例して変化させることを特徴とする請求項3に記載したレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する装置。
【請求項7】
コンデンサ(6)からなり、その連続放電(d1、d2、d3...)が、上記のエミッタ(3)に供給されて上記の連続レーザ・パルス(4)を発生させ、またそのその連続する電圧の印加(c1、c2、c3...)は連続する矩形電圧印加パルス(15.1、15.2、15.3...)により制御され、そのパルスの持続時間(l1、l2、l3...) は時間(t)の直線的に増加する関数であることを特徴とする請求項6に記載したレーザ・パルスを用いて光学リンクを製造する装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−510032(P2006−510032A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566107(P2004−566107)
【出願日】平成15年12月9日(2003.12.9)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003635
【国際公開番号】WO2004/064274
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(502303430)エムべーデーアー フランス (5)
【氏名又は名称原語表記】MBDA France
【住所又は居所原語表記】37 Bld de Montmorency F−75116 PARIS France
【Fターム(参考)】