説明

レーザー光を照射して得られるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤、それを含有する食品製剤、化粧品製剤

【課題】 副作用が弱く、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤、食品製剤及び化粧品製剤を提供する。
【解決手段】 副作用が弱く、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤は、プロトポルフィリン9に、エピガロカテキンを添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られるエステル結合物である。また、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9に、エピガロカテキンを添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られるエステル結合物である。さらに、副作用が弱く、優れた食品製剤、化粧品製剤は、ラジカル消去作用を呈する抗炎症剤を主とし、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイト、スクワラン、ビタミンEを含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジカル消去作用を呈する抗炎症剤に関するものである。また、プロトポルフィリン9、エピガロカテキンにレーザー光を照射して得られるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤に関するものである。さらに、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9、エピガロカテキンにレーザー光を照射して得られるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤に関するものである。加えて、ラジカル消去作用を呈する抗炎症剤を含有する食品製剤、化粧品製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然のビタミンCやビタミンEより優れたラジカル消去作用を呈する物質を探索する目的で、海洋植物、藻類、微生物、動物、培養植物、植物から有用物質の探索が進められ、緑茶よりガロカキテン、エピガロカテキンガレートが分離されている(例えば、非特許文献1参照。)。海洋植物、魚類からはエイコサペンタエン酸やアスタキサンチンが単離され、それらの抗炎症作用も調べられている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0003】
ラジカル消去作用を呈するそれぞれの物質には個別の特長があり、特に、緑茶由来のエピガロカテキンガレートはビタミンEと同程度のラジカル消去作用を呈する。しかし、水溶性の性質が強いため、排泄が早いという欠点があるため、その他の物質との相互作用を目的で組成物として茶に由来する薬理組成物が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ヘミンなどのプロトポルフィリン9は細胞膜に入り込み、炎症性サイトカイン産生を持続的に抑制する機序によって抗炎症作用を長期間にわたり、発揮する特長があるものの、プロトポルフィリン9は過酸化されやすく、かつ、分解されやすいという欠点がある(例えば、非特許文献3参照。)。そのため、医薬品、食品、化粧品の各産業に利用でき、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤が切望されている。
【0005】
ラジカル消去作用を呈する抗炎症剤に関する発明としては、例えば、抗酸化組成物、皮膚老化防止用組成物、抗炎症組成物及び脂質代謝改善用組成物の報告がある(特許文献2参照)。さらに、緑茶やエイコサペンタエン酸を含有する組成物に関する報告が、栄養組成物として認められる(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−220340
【特許文献2】特開2005−15364
【特許文献3】特開2003−313142
【非特許文献1】Ahmed S.ら、J.Pharmacol.Exp.Ther. 308、767−73、2004。
【非特許文献2】Ohgami K.ら、Invest.Opthalmol. Vis. Sci.44、2694−2701、2003。
【非特許文献3】Silver J.ら、J.Leukoc.Biol.62、547−552、1997。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ラジカル消去作用を呈する水溶性物質は、体内からの排泄が早く、その働きが一過性であるという問題点があった。また、プロトポルフィリン9は、抗炎症作用を呈するものの、酸化されやすく、分解されやすいという問題点があった。
【0007】
さらに、化学合成により製造されたラジカル消去作用を呈する物質は、強い働きとは反対に、皮膚に対する刺激性や腸管に対する副作用があるという問題点があった。天然由来の物質で、細胞膜に働き、持続的にラジカル消去作用を呈する抗炎症剤についての例は認められず、副作用の弱い、天然物由来の優れた抗炎症剤が望まれている。
【0008】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、プロトポルフィリン9に対し、エピガロカテキンを添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる副作用が弱く、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤を提供することにある。
【0009】
また、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9に対し、エピガロカテキンを添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤を提供することにある。
【0010】
さらに、副作用が弱く、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤を提供することにある。加えて、副作用が弱く、優れたラジカル消去作用を呈する抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる下記の式(1)で示されるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤に関するものである。
【0012】
【化1】

【0013】
請求項2に記載の発明は、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる請求項1に記載の抗炎症剤に関するものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2のいずれかに記載の抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤に関するものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2のいずれかに記載の抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0017】
請求項1に記載のプロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤によれば、副作用が弱く、優れた抗炎症作用が発揮される。
【0018】
請求項2に記載の動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる抗炎症剤によれば、副作用が弱く、優れた抗炎症作用が発揮される。
【0019】
請求項3に記載の抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤によれば、副作用が弱く、優れた抗炎症作用が発揮される。
【0020】
請求項4に記載の抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤によれば、副作用が弱く、優れた抗炎症作用が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態の抗炎症剤は、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる下記の式(1)で示されるラジカル消去作用を呈するものである。
【0022】
【化2】

【0023】
前記の抗炎症剤は、プロトポルフィリン9のカルボキシル基の2つに、エピガロカテキンのA環のフェノール性水酸基がエステル結合したものである。
【0024】
前記の抗炎症剤は、過酸化水素、脂質過酸化物、脂質過酸化ラジカル、活性酸素、ヒドロキシラジカル、酸素ラジカル、亜硝酸ラジカル、ペルオキシラジカルなどのラジカル類と結合することにより、ラジカルを消去し、炎症局所におけるラジカル誘発反応を抑制するものである。
【0025】
前記の抗炎症剤は、炎症部位における炎症性サイトカインの作用を抑制し、プロスタグランジンの作用を抑制することにより、抗炎症作用を発現する。
【0026】
前記の抗炎症剤は、白血球やマクロファージなどの炎症細胞に入り、細胞内情報伝達系においてプロテインキナーゼCの抑制を行い、また、核内では、ヌクレオファクター−カッパBの転写因子を抑制することにより、炎症性サイトカイン、プロスタグランジン及び抗体産生を抑制する。
【0027】
このように、プロトポルフィリン9がエステル結合することにより、まず、プロトポルフィリン9の酸化分解が、近隣に位置するエピガロカテキンによって抑制され、構造が安定する。さらに、脂溶性が増すことによって標的となる細胞膜に維持され持続し、炎症性サイトカインの抑制作用が持続される。
【0028】
前記の抗炎症剤は皮膚細胞、肝臓細胞、血管内皮細胞、白血球、マクロファージなどの標的細胞に取り込まれ、細胞内に維持された後、細胞質内のライソゾームにおいてエステラーゼやリパーゼにより分解される。
【0029】
生成されたプロトポルフィリン9とエピガロカテキンは、天然に存在する副作用の少ない物質に変換され、排泄される。したがって、前記のエステルは副作用が少ない。
【0030】
前記の抗炎症剤は胃内の塩酸酸性条件においても安定に維持し、また、腸管でも脂溶性が高いことから、腸管上皮細胞に取り込まれやすく、吸収にも優れる。前記の抗炎症剤にすることにより、腸管から吸収が悪いエピガロカテキンが吸収されやすくなる。
【0031】
この抗炎症剤は、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる。
【0032】
原料となるプロトポルフィリン9は、天然物でも合成物でも用いられる。天然物の場合、色素を合成する植物や藻類から抽出される。天然物として、ツバキ科植物、カキノキ科植物又はヒノキ科植物がある。ツバキ科植物として、ツバキ科ツバキ属の茶樹、すなわち、一般に利用される緑茶が、その中にポリフェノールを多く含むことから好ましく、テアセア科カメリア属シネンシスやテアセア科カメリア属アッサミカは栽培しやすいことから、より好ましい。飲料用となる緑茶や紅茶の原料は好ましい。
【0033】
原料となるプロトポルフィリン9は、これらの植物を乾燥後、破砕し、溶媒にて抽出して得られる。
【0034】
原料となるエピガロカテキンは、天然物でも合成物でも用いられる。天然物の場合、色素を合成する植物や藻類から抽出される。天然物として、ツバキ科植物、カキノキ科植物又はヒノキ科植物がある。ツバキ科植物として、ツバキ科ツバキ属の茶樹が、ポリフェノール含量が高いことから好ましく、テアセア科カメリア属シネンシスやテアセア科カメリア属アッサミカは栽培しやすいことから、より好ましい。飲料用となる緑茶や紅茶の原料はエピガロカテキンを大量に含有することから、好ましい。
【0035】
用いるレーザーの波長は、610〜750nmである。レーザーの光源としては、半導体、炭酸ガス、ヘリウム−アルゴン、クリプトンのいずれでも、好ましい。波長が610nmを下回る場合、生成されたエステルが安定に維持されないおそれがある。波長が750nmを上回る場合、プロトポルフィリン9にエステル結合のためのエネルギーが十分に得られないおそれがある。
【0036】
用いるレーザーの出力は、0.1mW〜10mWが好ましく、0.5〜6mWがより好ましく、0.8〜3mWがさらに好ましい。0.1mWを下回る場合、十分なエネルギーが得られないおそれがあり、10mWを上回る場合、エネルギーが高いため、生成されたエステルが分解されるおそれがある。また、レーザーの照射時間は、レーザーの出力との積で求められ、その積として0.1mW・分〜18mW・分が好ましい。すなわち、0.1mWの場合、10分間〜3時間が好ましく、1mWの場合、1分間〜18分間が好ましく、10mWの場合、6秒から2分間が好ましい。
【0037】
プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加される。エピガロカテキン含量が1重量を下回る場合、エピガロカテキンのA環の水酸基が不足するため、十分な生成物が得られないおそれがある。エピガロカテキン含量が10重量を上回る場合、プロトポルフィリン9のカルボキシル基が不足し、余分なエピガロカテキンがレーザー光のエネルギーを吸収するため、十分な生成物が得られないおそれがある。
【0038】
得られる抗炎症剤は、混合物として得られ、溶媒抽出、液相分離、カラムクロマトにより精製されることは好ましい。
【0039】
前記の抗炎症剤は、皮膚の内部で、作成されることは、直接、吸収されることから好ましい。すなわち、原料を皮膚の上に、置いた後、ハンディタイプのレーザー照射装置を照射することにより、目的とする抗炎症剤を産生させると同時に、皮膚から吸収させる。このようにすることにより、抗炎症剤がロスなく、生体に利用されることから好ましい。
【0040】
次に、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる抗炎症剤について説明する。
【0041】
ここで得られる抗炎症剤は、下記の式(1)で示されるプロトポルフィリン9のカルボキシル基の2つに、エピガロカテキンのA環のフェノール性水酸基がエステル結合したものである。
【0042】
【化3】

【0043】
動物の皮膚の上で、反応が行われる。動物とは、ヒト、ブタ、ウシ、ニワトリ、アヒル、などの脊椎動物である。特に、ヒトとブタの皮膚は、脂溶性の皮脂を産生することから、好ましく、皮脂量の多いブタはさらに好ましい。
【0044】
皮膚の部位としては、手の甲、足、顔面、頚部、背部、腹部、大腿部の全身の部位が用いられる。
【0045】
皮膚の上で生成された抗炎症物は、植物油脂、植物油、魚油などの天然由来脂質により、抽出される。
【0046】
皮膚は、温度が一定していることから、反応が安定して行われることから、好ましい。
原料となるプロトポルフィリン9、エピガロカテキンは、前記に記載されたものが用いられる。
【0047】
レーザーも、前記のものが用いられる。反応方法も、前記に記載された条件で実施される。
【0048】
前記の皮膚がヒトの場合、ヒトの皮膚の上で抗炎症剤が産生された後、直ちに、吸収されることから好ましい。特に、原料をヒトの肌に接着し、混合した後に、レーザー照射装置により照射することにより、目的とする抗炎症剤を産生されたと同時に、吸収させることができる。
【0049】
前記のレーザー照射装置は、ハンディタイプであることは操作が容易である点から好ましい。このようにすることにより、ヒト皮膚に抗炎症剤が効率的に吸収される。
【0050】
次に、前記の抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤について説明する。
【0051】
前記の抗炎症剤は、プロトポルフィリン9のカルボキシル基の2つに、エピガロカテキンのA環のフェノール性水酸基がエステル結合したラジカル消去能を呈するものである。
【0052】
アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチンは、天然由来のものでも、合成されたもののいずれもでも、用いられる。ドロマイトは、天然由来のものである。
【0053】
抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトの重量の割合について、抗炎症剤1重量に対してアルファ−リポ酸は、1〜10重量が好ましい。また、コエンザイムQ10は、0.5〜5重量が好ましく、アスタキサンチンは、0.3〜4重量が好ましく、ドロマイトは、4〜20重量が好ましい。
【0054】
前記の食品製剤において、抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトは、混合され、成型される。こうすることにより、目的とする臓器に移動して蓄積することから好ましい。さらに、目的とする組織内に到達し、前記の抗炎症剤が遊離され、標的に作用することから好ましい。
【0055】
前記の場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤とすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤等を適宜添加してもよい。
【0056】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて経口摂取される。1日の摂取量は0.1〜10gが好ましく、0.3〜5gがより好ましく、0.5〜3gがさらに好ましい。1日の摂取量が、0.1gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の摂取量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。
【0057】
前記の食品製剤は、その抗炎症作用により、肝臓、すい臓、腎臓、肺、消化管の炎症の改善及び予防などに用いられ、病院食、患者食、予防食として利用される。さらに、前記の食品製剤は、花粉症や鼻炎などの炎症に対しても、優れた抗炎症作用を呈することから好ましい。
【0058】
加えて、皮膚疾患に対しても、血中から皮膚組織に移行し、ラジカルを消去し、皮膚の構築を改善又は予防することから、好ましい。また、皮膚における過酸化物の産生を抑制し、しわの改善や防止にも有用である。さらに、保健機能食品としても利用される。
【0059】
また、ペットや家畜などに用いる動物用サプリメントやペットサプリメントとしての食品製剤とすることもできる。前記の食品製剤は、動物においても炎症により生じる障害を改善することができるから好ましい。
【0060】
次に、前記の抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤について説明する。
【0061】
前記の抗炎症剤は、プロトポルフィリン9のカルボキシル基の2つに、エピガロカテキンのA環のフェノール性水酸基がエステル結合したラジカル消去能を呈するものである。
コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEは、天然由来のものでも、合成されたもののいずれもでも、用いられる。
【0062】
抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEの重量の割合について、抗炎症剤1重量に対してコエンザイムQ10は、1〜10重量が好ましい。また、スクワランは、0.5〜5重量が好ましく、ビタミンEは、0.3〜4重量が好ましい。
【0063】
前記の化粧品製剤において、抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEは、混合され、成型される。こうすることにより、油溶性が高まり、皮膚又は皮下組織に移動して蓄積することから好ましい。さらに、目的とする組織内に到達し、前記の抗炎症剤が分離されることから好ましい。
【0064】
前記の化粧品製剤は、表皮や真皮において過酸化脂質やラジカルによるコラーゲンの分解を抑制することにより、コラーゲン量を維持することから、コラーゲン低下に起因する水分保持やしわに対する効果又は予防がある。さらに、炎症を抑制することから、ニキビや日焼けにより組織の炎症を抑制することから、好ましい。
【0065】
前記の場合、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、増粘剤、保湿剤、副素材等とともに用いることができる。化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等の形態とすることができる。化粧品製剤の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状又は粉末状として用いることができる。
【0066】
化粧品製剤として皮膚に1日数回に分けて塗布される。1日の塗布量は0.01〜10gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜1gがさらに好ましい。1日の塗布量が、0.01gを下回る場合、しわやしびれの治療または防止効果が発揮されないおそれがある。1日の塗布量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0067】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0068】
カメリア シネンシスである緑茶葉40kgを乾燥し、食用ミキサーで粉砕した後、エタノールで抽出し、抽出物を乾燥した。これをシリカゲルカラムに供してプロトポルフィリン9の530gを得た。さらに、同様に、緑茶葉からシリカゲルカラムに供してエピガロカテキン70gを得た。得られたプロトポルフィリン9の30gをエタノールに溶解し、1Lガラス反応槽に入れ、これにエピガロカテキン50gを添加した。
【0069】
この反応槽に波長650nm、1mW出力の半導体レーザー光を5分間照射した。照射後、生成物をシリカゲルカラムに供して目的とする抗炎症剤を採取した。なお、検出には、以下のラジカル消去反応試験を利用した。その結果、目的とする抗炎症剤8.2gを得た。また、以下の試験方法により求めたラジカル消去能はビタミンEの2300倍であった。
(試験例1)
【0070】
HPLCによる分析では、フォトダイオードアレイ(島津製作所製)を装着したHPLCにより解析を行った。さらに、NMR(ジョエル製)による解析の結果、目的とする抗炎症剤が同定された。以下に、ラジカル消去能の測定法の試験方法について述べる。
(試験例2)
【0071】
ラジカル消去活性は、キサンチンオキシダーゼにより産生されたラジカルを1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH、アルドリッチ製)を用いて測定する方法を用いた。すなわち、キサンチンオキシターゼ(アルドリッチ製)を0.01Mリン酸緩衝液に溶解し、これにヒポキサンチンを添加し、37℃に加温し、ラジカルを生成させた。この溶液に、試験検体溶液を添加し、さらに、0.1MDPPH溶液を添加して520nmの吸光度を測定した。対照として、ビタミンEを用いた。
【0072】
以下に、動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9とエピガロカテキンとから、レーザー光を照射して得られる抗炎症剤について述べる。
【実施例2】
【0073】
カメリア シネンシスである緑茶葉40kgを乾燥し、食用ミマサーで粉砕した後、エタノールで抽出し、抽出物を乾燥した。これをシリカゲルカラムに供してプロトポルフィリン9の523gを得た。さらに、同様に、緑茶葉からシリカゲルカラムに供してエピガロカテキン78gを得た。
【0074】
ブタの背部皮膚に、得られたプロトポルフィリン9の2gをエタノールに溶解し、これにエピガロカテキン4gをエタノールに溶解して添加した。に波長650nm、1mW出力の半導体レーザー光を5分間照射した。照射後、皮脂膜を採取し、エタノールに溶解し、生成物をシリカゲルカラムに供して目的とする抗炎症剤を採取した。なお、検出には、以下のラジカル消去反応を利用した。その結果、目的とする抗炎症剤1.2gを得た。また、得られた抗炎症剤のラジカル消去能はビタミンEの2150倍であった。
【0075】
以下に、抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤について述べる。
【実施例3】
【0076】
前記の実施例1で得られた抗炎症剤1g、市販のアルファ−リポ酸(東洋発酵製)5g及び市販のコエンザイムQ10(カネカ製)の2g、アスタキサンチン(武田紙器製)3g、ドロマイト(エヌシーコーポ製)10gに、食用セルロース300g、アスコルビン酸1g及び食用香料9gを食品加工用ミキサーに添加し、混合した。これを常法により粉末化し、乾燥後、ブタ由来ゼラチン製ハードカプセルに充填し、食品製剤を得た。
(試験例3)
【0077】
30〜44才のスギ花粉によりクシャミやハナミズを呈する男性5例に、前記の実施例3で得られた食品製剤を1日1回2gずつ、14日間摂食させた。摂食前及び摂食14日目に、スギ花粉による反応性を観察した。さらに、摂食前及び摂食14日目に、血液を採取し、IgE量を免疫抗体法により測定した。
【0078】
その結果、摂食後、スギ花粉によるクシャミやハナミズの発現数は、摂食前に比して平均で、33%になり、反応性の減少が認められた。さらに、血液IgE量は、摂食前に比して平均値で29%となり、IgE量の減少が認められた。また、摂食後に、健康状態に異常は、認められなかった。
【0079】
以下に、抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤について述べる。
【実施例4】
【0080】
ミツロウ(アピ製)1kgに、前記の実施例2で得られた抗炎症剤1g、コエンザイムQ10(カネカ製)の3g、スクワラン(日本水産製)1gを添加し、混合して、化粧品製剤としてクリームを得た。
(試験例4)
【0081】
実施例4で得られたクリームを使用して、36〜72才の女性7例を対象に、紫外線に対する炎症改善試験を行なった。すなわち、前記の実施例4のクリームを1日当たり1gずつ、7日間、顔面部に塗布させた。
【0082】
前記の女性に、13時〜14時の間、太陽光を浴びさせた。使用前及び使用7日後に、肌温度、皮表角層水分量測定装置(IBS社製、SKICON200)を用いて角質水分量、弾力計(クトメーター)を用いて肌弾性及び単位面積当たりのしわの長さを計測した。さらに、汗に含有される炎症性物質であるプロスタグランジンE2量を免疫酵素法により測定した。
【0083】
その結果、使用前の太陽光照射に比し、実施例4の使用後には、平均で0.5℃の肌温度の低下が認められた。皮表角層水分量は、実施例4の使用後に、175%に増加した。また、弾力計による弾力は、使用前に比して実施例4の使用後では、190%に増加した。さらに、しわの長さは、使用前に比し、67%になり、しわの減少が認められた。加えて、プロスタグランジンE2量は、使用前に比して、55%に減少した。
【0084】
一方、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。この結果、実施例4で得られた乳液は、抗炎症作用、水分増加作用、しわの減少作用および炎症物質産生の抑制作用が認められた。
【0085】
以下に、ヒト皮膚の上で、直接、抗炎症剤を産生させる場合について述べる。
【実施例5】
【0086】
前記のように緑茶葉より採取したプロトポルフィリン9の0.3gとエピガロカテキン0.5gをクリームに溶解してヒトの手の甲に上に、のせた。この混合物に波長650nm、1mW出力のハンディタイプの半導体レーザー照射装置によりレーザー光を5分間照射した。
(試験例4)
【0087】
36〜72才の女性7例を対象に、13時〜14時の間、太陽光を浴びさせた。使用前及び実施例5の処置後に、肌温度、皮表角層水分量測定装置を用いて角質水分量、弾力計を用いて肌弾性及び単位面積当たりのしわの長さを計測した。さらに、汗に含有される炎症性物質であるプロスタグランジンE2量を免疫酵素法により測定した。
【0088】
その結果、使用前の太陽光照射に比し、実施例5の使用後には、平均で0.3℃の肌温度の低下が認められた。皮表角層水分量は、実施例5の使用後に、166%に増加した。また、弾力計による弾力は、使用前に比して実施例5の使用後では、182%に増加した。さらに、しわの長さは、使用前に比し、89%になり、しわの減少が認められた。加えて、プロスタグランジンE2量は、使用前に比して、75%に減少した。
【0089】
一方、体感においても特に苦情は聞かれなかった。この結果、実施例5で実施した処置は、抗炎症作用、水分増加作用、しわの減少作用および炎症物質産生の抑制作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、ラジカル消去作用を呈する抗炎症剤、それからなる食品製剤、化粧品製剤に関するものであり、副作用の弱い、優れた抗炎症作用を発揮することにより、社会生活で得られる環境毒素やストレス、紫外線からの予防、さらに、遺伝子の変異や細胞の癌化に対しても、幅広く改善するものである。また、食品製剤又は化粧品製剤として日々の生活のQOLを改善する。これらにより、医療の進歩に寄与し、医薬品業界、食品業界、化粧品業界での活用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる下記の式(1)で示されるラジカル消去作用を呈する抗炎症剤。
【化1】

【請求項2】
動物の皮膚の上で、プロトポルフィリン9の1重量に対し、エピガロカテキン1〜10重量を添加し、波長610nm〜750nmのレーザー光を照射して得られる請求項1に記載の抗炎症剤。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の抗炎症剤、アルファ−リポ酸、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、ドロマイトからなる食品製剤。
【請求項4】
請求項1又は2のいずれかに記載の抗炎症剤、コエンザイムQ10、スクワラン、ビタミンEからなる化粧品製剤。

【公開番号】特開2006−248909(P2006−248909A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63677(P2005−63677)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】