説明

レーザー光源装置

【課題】調整用ねじの先端部又はねじ受け部等の調整部の摩耗による位置調整精度の劣化を防止できると共に、X軸及びY軸方向の調整を同一方向から行えて作業性を改善できるレーザー光源装置の提供を目的としている。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るレーザー光源装置は、光軸調整ユニット30のX軸調整部53とXステージ42との間に、X軸調整部53の調整動作に伴ってY軸方向に作動する昇降部材70が介在されている。昇降部材70は、Xステージ42のカム部42cと係合することにより、そのY軸方向の動きをXステージ42のX軸方向の動きへと変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光の光軸調整が可能なレーザー光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色レーザー光、緑色レーザー光、青色レーザー光をそれぞれ出射する赤色レーザーデバイス、緑色レーザーデバイス、青色レーザーデバイスを備え、各色のレーザー光を結合して単一の光ビームを生成し、生成された単一の光ビームを、レーザー制御系を介してスクリーンに投射するレーザーディスプレイシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザーディスプレイシステムでは、レーザー光源装置においてレーザー光の光軸を微調整する光軸調整機構が必要となる。
【0003】
従来、光軸を調整する際の作業性の改善を目的として、種々の光軸調整機構が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2には、互いに直交するX軸及びY軸方向の光軸調整を可能にした液晶パネル支持機構において、X軸のねじ受け部を45度傾斜面とし、Y軸調整用のねじと同一方向にX軸調整用のねじを配置することが開示されている。
【特許文献1】特開2007−300009号公報
【特許文献2】特開平10−133279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のレーザー光源装置に特許文献2に記載の光軸調整機構を適用すれば、X軸及びY軸方向の調整を、同一方向から行えるので作業性の改善を期待できるが、X軸調整用のねじ先端部を45度傾斜面としたX軸のねじ受け部に直接押し当てた状態で回転させることとなるので、X軸調整用のねじ先端部又はねじ受け部が摩耗して位置調整精度が出せなくなる可能があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、X軸及びY軸方向の調整を同一方向から行えて作業性を改善できると共に、調整用ねじの先端部又はねじ受け部の摩耗による位置調整精度の劣化を防止できるレーザー光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザー光源装置は、レーザー光を発する光源ユニットと、この光源ユニットから発せられるレーザー光の光軸を調整するための光軸調整ユニットとを備えるレーザー光源装置であって、前記光軸調整ユニットは、光路上に配置されたレンズを光軸に対する直交平面内において互いに直交するX、Y軸方向に位置調整するための調整機構を有し、前記調整機構は、X軸方向へ移動可能なX軸移動部と、このX軸移動部と一体的に移動すると共にY軸方向へ移動可能なY軸移動部と、前記X軸移動部をX軸方向に移動させて前記レンズのX軸方向の位置を調整するX軸調整手段と、前記Y軸移動部をY軸方向に移動させて前記レンズのY軸方向の位置を調整するY軸調整手段とを有し、前記X軸調整手段は、前記X軸移動部において光軸に対する直交平面に形成されY軸方向に対して傾斜した傾斜カム溝と、この傾斜カム溝にX軸方向の移動を規制された状態で係合しX軸方向の調整動作に伴ってY軸方向に作動する作動要素とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、X軸方向の移動を規制された状態で傾斜カム溝に係合した作動要素により、そのY軸方向の動きが前記X軸移動部のX軸方向の動きへと変換されるため、X軸及びY軸方向の調整を同一方向から行なうことが可能になり、作業性を改善できる。また、傾斜カム溝内を作動要素が移動することにより、移動時の負荷が直接的ではなく間接的に作用するため、摩耗による位置調整精度の劣化を効果的に防止できる。
【0008】
また本発明は、上記レーザー光源装置において、前記X軸調整手段は、前記作動要素に形成されたY軸方向のねじ穴に螺合されるX軸調整用のねじ部材を含み、前記Y軸調整手段は、前記Y軸移動部に形成されたY軸方向のねじ穴に螺合されるY軸調整用のねじ部材を含み、前記X軸調整用及びY軸調整用のねじ部材のねじ頭が同一方向に表出していることを特徴とする。
【0009】
この構成により、X軸調整用及びY軸調整用のねじ部材を操作することでX軸及びY軸方向の調整が可能となり、レーザー光源装置を取り付け後において調整することができる。また、X軸及びY軸方向の調整を同一方向から行なうことが可能になり、作業性を改善できる。
【0010】
また本発明は、上記レーザー光源装置において、前記作動要素をY軸方向に付勢する第1の付勢部材と、前記X軸移動部をX軸方向に付勢する第2の付勢部材とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、X軸移動部のX軸方向及びY軸方向の動きがガタつくことなくX軸調整手段による正確な調整を行なえ、調整後のガタつきを防止することもできる。
【0012】
また本発明は、上記レーザー光源装置において、前記第1の付勢部材は、前記X軸移動部の傾斜カム溝形成面であってX軸方向の他方の端部の近傍に配置されたトーションばねからなり、前記第2の付勢部材は、前記X軸移動部におけるX軸方向の一方の端部の側面に配置されたコイルばねからなることを特徴とする。
【0013】
この構成により、第2の付勢部材のコイルばねがX軸移動部をX軸方向の一方の端部からX軸方向の他方の端部に向けて付勢することにより、傾斜カム溝を介してX軸移動部に作動要素からY軸方向へ押す力が加わるが、作動要素はX軸調整手段にて保持されているので、X軸移動部をY軸方向へ押す力が保持力となってガタつきを防止することができる。このとき、第1の付勢部材のトーションばねはX軸方向の他方の端部の近傍に配置されているので、第1の付勢部材からの付勢力は弱くなる。一方、X軸移動部がX軸方向の反対方向となる他方へ移動した場合には、第2の付勢部材のコイルばねが伸びて第2の付勢部材による上記保持力が弱くなるが、第1の付勢部材のトーションばねによる付勢力が増大することにより、傾斜カム溝を介してX軸移動部に作動要素からY軸方向へ押す力が加わる第1の付勢部材のトーションばねによる保持力が強くなり、ガタつきを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、調整用ねじの先端部又はねじ受け部等の調整部の摩耗による位置調整精度の劣化を防止できるレーザー光源装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1から図10は本発明の一実施形態に係るレーザー光源装置に関する構成図である。
図2および図3に示されるように、レーザー光源装置1は、光源ユニット10と、光軸調整ユニット30と、光源照射ユニット80とを主な構成要素として備える。
【0016】
図1〜図3に示されるように、光源ユニット10は、光源としてのレーザダイオードを保持するレーザダイオードホルダ(光源支持板)3と、レーザダイオードに電源を供給するための電源ボードとしての機能を少なくとも果たすプリント回路基板2と、レーザダイオードホルダ3およびプリント回路基板2を一体的に固定支持するための固定金具としてのブラケット4と、コリメータレンズを保持するレンズホルダ170とを有している。
【0017】
回路基板2は例えば図示しないネジによってブラケット4に対して取り付けられる。また、レーザダイオードホルダ3は、放熱機能を有するように熱伝導性の良い金属から成っており、レーザー光出射口5を有するとともに、ネジ6によってブラケット4に対して取り付けられる(図1参照)。また、レーザダイオードホルダ3および回路基板2を一体的に支持するブラケット4は、基台300の垂直支持体172よりも後方側で、基台300の底部に対して例えばネジにより取り付け固定される。また、レンズホルダ170は、ネジ179によって基台300の垂直支持体172に対して取り付けられる。この場合、レンズホルダ170の軸方向に突出する円筒状のレンズ保持部170aが垂直支持体172の保持穴172a内に嵌着される。このように、本実施形態において、光源ユニット10は、基台300の垂直支持体172よりも後方側にまとめて配設されている。なお、基台300の底部には、後述するモータ200を受けるために受け穴300aが形成されている。
【0018】
一方、基台300の垂直支持体172よりも前方側には、光軸調整ユニット30および光源照射ユニット80が配設されている。光軸調整ユニット30は、レーザダイオードから出射されるレーザー光の光軸調整を行ない、凹レンズ40と、当該凹レンズ40のXY軸方向の位置を調整するための調整機構とを有している。光軸に対して垂直平面をXY平面として、XY平面内において互いに直交する方向をX軸方向及びY軸方向とする。
一方、光源照射ユニット80は、回動可能なプリズム96を有しており、光源ユニット10から出射されるレーザー光の出射方向をプリズム96によって規定する。したがって、光源ユニット10のレーザダイオードホルダ3に保持されたレーザダイオードからのレーザー光は、レーザー光出射口5から出射されて、レンズホルダ170に保持されたコリメータレンズを通った後、光軸調整ユニット30の凹レンズ40を通過し、光源照射ユニット80のプリズム96によって規定される方向へと進行して、例えば所定のディスプレイスクリーンへと導かれる。
【0019】
図4および図5に具体的に示されるように、光軸調整ユニット30は、前述したように、レーザダイオードから出射されるレーザー光の光軸調整を行なうものであり、凹レンズ40と、当該凹レンズ40のXY軸方向の位置を調整するための調整機構とを有している。調整機構は、凹レンズ40をY軸方向へ移動させるためのY軸移動機構32と、凹レンズ40をX軸方向へ移動させるためのX軸移動機構33と、X軸移動機構33の後述するXステージ42をX軸方向へ移動させるためのX軸駆動部34とから成る。
【0020】
Y軸移動機構32は、凹レンズ40を保持し且つY軸方向へ移動可能なYステージ(Y軸移動部)35と、Yステージ35のY軸方向の移動を案内する一対のガイドシャフト36,37と、Yステージ35(したがって、凹レンズ40)のY軸方向の位置を調整するためのY軸調整部38とを有している。Yステージ35は、凹レンズ40を保持するための一対の略円弧状の保持突起35dと、凹レンズ40と対向し且つ凹レンズ40を透過するレーザー光を前方へ逃がす開口35eとを有している。また、一対のガイドシャフト36,37は、Y軸方向に延びてYステージ35の両側の上下にそれぞれ突設されたブラケット35a,35bの挿通孔39,38に挿通されており、その下端がXステージ42の下端部の両側にYステージ35側へ突出するように一体形成された受け部に固定される。また、一対のガイドシャフト36,37の上端側は、Xステージ42のY軸移動機構32側へ張り出す板状の上面42aに設けられた一対の通孔45,44に挿通されて(図5参照)天板130(図1参照)に固定される。すなわち、Yステージ35は、ガイドシャフト36,37を介してXステージ42と一体化される。
【0021】
また、Y軸調整部38は、その外周面の少なくとも一部に雄ネジが形成されたネジシャフト38として構成されており、Xステージ42の上面42aに設けられたY軸方向の貫通穴46に挿通されてXステージ42の背面と対向して延び、Yステージ35に突設されたブラケット35cの雌ネジ穴37に螺合される。この場合、ネジシャフト38のネジ頭は、図2に明確に示されるように天板130の長穴130bで露出される(すなわち、装置1の上方に表出される)とともに、Xステージ42の上面42aに支持される。したがって、ネジシャフト38を一方向に回すと、Yステージ35がY軸方向に沿って上方へ移動し、また、ネジシャフト38を反対方向に回すと、Yステージ35がY軸方向に沿って下方へ移動する。すなわち、Yステージ35に保持される凹レンズ40のY軸方向の位置が調整される。
【0022】
また、X軸移動機構33は、前述したようにYステージ35を保持し且つX軸方向へ移動可能なXステージ(X軸移動部)42と、Xステージ42のX軸方向の移動を案内するガイドロッド47とを有している。Xステージ42は、凹レンズ40を透過するレーザー光を前方へ逃がすための開口48と、X軸およびY軸のそれぞれに対して所定の角度を成して斜めに延びる傾斜カム溝43を有するカム部42cとを備えている。ガイドロッド47は、X軸方向に延びており、Xステージ42の下部に設けられた貫通孔42bを挿通して、その両端部が基台300の両側の支持孔300b(図1参照)に支持されている。
【0023】
X軸移動機構33のXステージ42をX軸方向へ移動させるためのX軸駆動部34は、支持部材50と、昇降部材(作動要素)70と、Xステージ42(したがって、Xステージ42に保持されるYステージ35の凹レンズ40)のX軸方向の位置を調整するためのX軸調整部53とを有している。支持部材50は、支持面部50aと、上面部50bと、側面部50cと、下面部50fとから成り、上面部50bのネジ穴51に螺合されるネジ150(図2参照)によって天板130に対して取り付け固定される(図1参照)。支持面部50aは、Y軸方向に延びる案内開口部50dを有している。この案内開口部50dは、昇降部材70と係合することにより昇降部材70の回転およびX軸方向の移動を規制しつつ昇降部材70の昇降動作(Y軸方向の移動)を案内する。
【0024】
昇降部材70は、図5に明確に示されるように、案内開口部50dに係合される矩形板状の第1の係合部70aと、雌ネジ穴73を有する螺合部70cと、Xステージ42のカム部42cの傾斜カム溝43と係合する第2の係合部70bとから成る。また、X軸調整部53は、その外周面の少なくとも一部に雄ネジが形成されたネジシャフト53として構成されており、上面部50bに設けられた貫通穴52(図6〜図8参照)に挿通されて昇降部材70の螺合部70cの雌ネジ穴73に螺合される。この場合、ネジシャフト53のネジ頭は、図2に明確に示されるように天板130の開口穴130aで露出される(すなわち、装置1の上方に表出される)とともに、上面部50bに支持される。したがって、ネジシャフト53を一方向に回すと、昇降部材70が案内開口部50dによって回転およびX軸方向の移動を規制されつつ案内されてY軸方向に沿って上昇し、また、ネジシャフト53を反対方向に回すと、昇降部材70がY軸方向に沿って下降する。
【0025】
また、このように昇降する昇降部材70の第2の係合部70bは、それが係合するカム部42cの傾斜カム溝43と共に、昇降部材70のY軸方向の動きをXステージ42のX軸方向の動きへと変換する移動方向変換手段を構成する。言い換えると、ネジシャフト53の調整動作に伴ってY軸方向に作動する昇降部材70は、カム部42cと係合することにより、そのY軸方向の動きをXステージ42のX軸方向の動きへと変換するものである。したがって、ネジシャフト53を回すと、昇降部材70およびカム部42cを介して、Xステージ42がX軸方向へ移動し、Xステージ42に保持されるYステージ35の凹レンズ40のX軸方向の位置が調整される。
【0026】
また、以上のようなXステージ42のX軸方向及びY軸方向の動きがガタ付くことなくX軸調整部53による正確な調整を行なえるように、本実施形態では、Xステージ42をX軸方向に付勢してそのX軸方向の動きのガタ付きを抑制するための付勢手段が設けられている。具体的には、この付勢手段は、Xステージ42をX軸方向に沿って一方向に付勢する第1の付勢部材57(図6〜図8参照)と、昇降部材70を付勢することで移動方向変換手段を介してXステージ42をY軸方向に沿って付勢する第2の付勢部材60とから成る。第1の付勢部材57は、支持部材50の側面部50cとXステージ42の側面との間に介挿されるコイルバネ57から成る。コイルバネ57の一端側は、側面部50cから突出する支持軸部56に支持され、また、コイルバネ57の他端側は、Xステージ42の側部に形成された保持筒49の保持穴内に保持される。
【0027】
一方、第2の保持部材60は、支持部材50の支持面部50aからXステージ42側へ延出するバネ支持部50eに支持されたトーションバネ60から成る。この場合、バネ支持部50eに保持されたコイル状のバネ本体部から延びるトーションバネ60の一端60aは、支持部材50の下面部50fに形成された係止部52に係止され、また、トーションバネ60の他端60bは、昇降部材70の第1の係合部70aに当て付いて、昇降部材70をY軸方向に沿って下方へ付勢する。
【0028】
このように、上記構成のX軸移動機構33およびX軸駆動部34では、例えば第1および第2の付勢部材57,60の互いに対抗する付勢力が釣り合う図6の中立状態からネジシャフト53を一方向へ回すと、図7に示されるように、第2の付勢部材60の付勢力に抗して昇降部材70が上昇し、前述した移動方向変換手段43,70bを介してXステージ42が第1の付勢部材57の付勢力に抗して図中左方向へ移動する。このとき、Xステージ42のX軸方向の移動に伴ってY軸調整部であるネジシャフト38のネジ頭も天板130の長穴130bに沿って移動される。そのため、Xステージ42がX軸方向のどの位置に移動されても、ネジシャフト38を介して凹レンズ40のY軸方向の調整も行なえる。一方、図6の中立状態からネジシャフト53を他方向へ回すと、図8に示されるように昇降部材70が下降し、Xステージ42が図中右方向へ移動する。
また、Xステージ42の調整位置における第1および第2の付勢部材57,60による保持力は、以下のように作用する。すなわち、X軸方向に付勢する第1の付勢部材57の付勢力により、カム傾斜溝43を介して、昇降部材70を図6,7,8の下側へ押す力が生じるが、昇降部材70にはネジシャフト53が一体となっておりこのネジシャフト53の頭部が支持部材50に当接し昇降部材70が下がるのを阻止し、結果的にXステージ42の位置を保持する保持力として作用する。一方、第一の付勢部材57の反力は、Xステージ42が図8に示すX軸方向の他端部に位置した時にもっとも弱くなる。第一の付勢部材57の形状制限から応力緩和を起こさないバネ仕様が難しい。この為、第二の付勢部材60を用いて、Xステージ42が図8の状態でも十分な保持力を得られる様にした。又、昇降部材70が図6,7の位置では、第二の付勢部材60の腕部は昇降部材70の側面に掛かる様になり、昇降部材70を押し下げる力は弱くなる。この第二の付勢部材60により発生する昇降部材70を押し下げる力は、図8>図6>図7となり、第一の付勢部材57により発生する昇降部材70を押し下げる力は、図7>図6>図8となり、Xステージ42がいずれの位置に有っても適切な付勢力でガタ付き無く保持できる。
【0029】
一方、図9および図10に示されるように、光源照射ユニット80は、前述したように、回動可能なプリズム96を有しており、光源ユニット10から出射されるレーザー光の出射方向をプリズム96によって規定する。具体的には、光源照射ユニット80は、支持ブロック82と、支持ブロック82に保持されるプリズムアセンブリと、プリズムアセンブリを回動させるための駆動機構とを有している。支持ブロック82は、垂直に立ち上がる側壁部82aと、底壁部(ベース部)82bと、上壁部82cとから成り、これらの壁部により、プリズムアセンブリを収容するためのコの字型の収容スペースを形成する。なお、支持ブロック82は、その支軸82dにより、基台300の底部に取り付けられている。
【0030】
プリズムアセンブリは、上側プリズムホルダ95と、下側プリズムホルダ97と、これらのプリズムホルダ95,97間に挟持されたプリズム96とから成る。下側プリズムホルダ97は、プリズム96を受けるための凹部97cと、軸支部97aとを有しており、軸支部97aの内孔97dに挿通される支軸99により、支持ブロック82の底壁部82bに対して回動可能に取り付けられる。また、上側プリズムホルダ95は、プリズム96を受けるための凹部95cと、軸支部95bとを有しており、軸支部95bの内孔に挿通される支軸85により、支持ブロック82の上壁部82cに対して回動可能に取り付けられる。なお、支軸85の上端は、支持ブロック82の上壁部82cの通孔86を貫通するとともに、上壁部82c上に重ね合わせて配置される天板130の前側延出部130g(図2参照)の上方に突出している。
【0031】
また、本実施形態において、上側プリズムホルダ95の軸支部95bには、プリズムアセンブリ(したがって、プリズムホルダ)の回動方向の遊び(ガタ)をなくすための第1の付勢部材90が巻装されている。この第1の付勢部材90は、コイル状の本体部から成り、その一端90aが上側プリズムホルダ95のブラケット95aに係止されるとともに、その他端90bが支持ブロック82の上壁部82cの側面に当て付いて係止されている(図2参照)。また、本実施形態において、支持ブロック82の上壁部82cおよび天板130の前側延出部130gから上方へ突出する支軸85の頂部には、プリズムアセンブリ(したがって、プリズムホルダ)のスラスト方向の遊び(ガタ)をなくすための第2の付勢部材83が作用するようになっている。具体的には、第2の付勢部材83は、その一端が支持ブロック82の上壁部82c上にネジ84によって取り付けられる板バネから成り、その他端が支軸85の頂部に当接している。このように、本実施形態では、第1および第2の付勢部材90,83が上側プリズムホルダ95の軸支部95側に一括して設けられているものである。
【0032】
また、プリズムアセンブリを回動させるための駆動機構は、基台300の受け穴300aに載置されたステッピングモータ200と、ステッピングモータ200の出力軸に取り付けられたウォームギア100と、支持ブロック82の底壁部82bに回転可能に設けられ且つウォームギア100と噛み合う第1のギア101と、第1のギア101と一体で回転する第2のギア102と、下側プリズムホルダ97に形成され且つ第2のギア102と噛み合うギア部97bとから成り、これにより、プリズムアセンブリ(したがって、プリズム96)を例えば±14°回動させるようになっている。なお、ステッピングモータ200には、これに電力を供給するための回路を含むプリント回路基板195(図1および図2参照)が電気的に接続される。このように、本実施形態では、下側プリズムホルダ97がモータ200と係合するギア部97bを有しているものである。また第1の付勢部材の付勢力は下側プリズムホルダ97を介してステッピングモータの出力軸が突出している方向と逆方向に掛かるようになっている。このため、ステッピングモータ200の出力軸の遊びが無くなるので、プリズムの回転が精度良く行われることとなる。
なお、プリズムのスラスト方向のガタ取りを板バネ(83)によって行っているが、バックラッシュ取りに使用しているトーションバネ(90)で併用することも可能である。具体的には、第1の付勢部材90の変形例として、コイル状の本体部の巻回部分において巻回の軸方向において隙間を設けて形成することで、上側プリズムホルダ95の軸支部95bに巻装したとき、プリズムアセンブリのスラスト方向の遊びをなくすことができる。このようにすることで第2の付勢部材83の機能を兼用することができ第2の付勢部材83を削減することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、X軸調整部53とXステージ42との間に介在された昇降部材70によりそのY軸方向の動きがXステージ42のX軸方向の動きへと変換されるため、X軸及びY軸方向の調整を同一方向から行なうことが可能になり、作業性を改善できる。また、X軸調整部53には、当該X軸調整部53とXステージ42との間に設けられた別個の昇降部材70を介することにより、移動時の負荷が直接的ではなく間接的に作用するため、X軸調整部53の摩耗による位置調整精度の劣化を効果的に防止できる。
【0034】
また、本実施形態では、X軸調整部53が昇降部材70に螺合されるネジ部材であるため、昇降部材70を簡単な構成でY軸方向に作動させることができるとともに、X軸調整部53の摩耗をより効果的に防止できる。
【0035】
また、本実施形態では、X軸調整部53およびY軸調整部38が装置の上方で同一方向に露出されているため、装置をディスプレイ装置などの他の装置に取り付けた後においても光軸調整を行なうことが可能になり、作業性が向上する。
【0036】
また、本実施形態では、凹レンズ40を保持するYステージ35がXステージ42と一体でX軸方向に移動するため、調整機構の構造および動きが簡略化され、装置の小型化を図ることも可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、Xステージ42をX軸方向に付勢してそのX軸方向の動きのガタ付きを抑制するための付勢手段57,60が設けられているため、Xステージ42のX軸方向の動きがガタ付くことなくX軸調整部53による正確な調整を行なえる。また、この場合、X軸方向において第1の付勢手段57による付勢力が弱くなるのに応じて、第2の付勢部材60による付勢力が強くなるようにしたので、Xステージ42がいずれの位置に有っても適切な付勢力でガタ付き無く保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザー光源装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るレーザー光源装置の組み立て状態の斜視図である。
【図3】図2のレーザー光源装置の側面図である。
【図4】図2のレーザー光源装置の光軸調整ユニットの分解斜視図である。
【図5】図2のレーザー光源装置の光軸調整ユニットの要部構成を示す斜視図である。
【図6】図2のレーザー光源装置の光軸調整ユニットの第1の作動状態(中立状態)を示す断面図である。
【図7】図2のレーザー光源装置の光軸調整ユニットの第2の作動状態を示す断面図である。
【図8】図2のレーザー光源装置の光軸調整ユニットの第3の作動状態を示す断面図である。
【図9】図2のレーザー光源装置の光源照射ユニットの斜視図である。
【図10】図2のレーザー光源装置の光源照射ユニットの斜視断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 レーザー光源装置
10 光源ユニット
30 光軸調整ユニット
35 Yステージ(Y軸移動部)
38 Y軸調整部
40 凹レンズ
42 Xステージ(X軸移動部)
53 X軸調整部
57 第1の付勢部材(付勢手段)
60 第2の付勢部材(付勢手段)
70 昇降部材(作動要素)
80 光源照射ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発する光源ユニットと、この光源ユニットから発せられるレーザー光の光軸を調整するための光軸調整ユニットとを備えるレーザー光源装置であって、
前記光軸調整ユニットは、光路上に配置されたレンズを光軸に対する直交平面内において互いに直交するX、Y軸方向に位置調整するための調整機構を有し、
前記調整機構は、X軸方向へ移動可能なX軸移動部と、このX軸移動部と一体的に移動すると共にY軸方向へ移動可能なY軸移動部と、前記X軸移動部をX軸方向に移動させて前記レンズのX軸方向の位置を調整するX軸調整手段と、前記Y軸移動部をY軸方向に移動させて前記レンズのY軸方向の位置を調整するY軸調整手段とを有し、
前記X軸調整手段は、前記X軸移動部において光軸に対する直交平面に形成されY軸方向に対して傾斜した傾斜カム溝と、この傾斜カム溝にX軸方向の移動を規制された状態で係合しX軸方向の調整動作に伴ってY軸方向に作動する作動要素とを有する、
ことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項2】
前記X軸調整手段は、前記作動要素に形成されたY軸方向のねじ穴に螺合されるX軸調整用のねじ部材を含み、
前記Y軸調整手段は、前記Y軸移動部に形成されたY軸方向のねじ穴に螺合されるY軸調整用のねじ部材を含み、
前記X軸調整用及びY軸調整用のねじ部材のねじ頭が同一方向に表出していることを特徴とする請求項1記載のレーザー光源装置。
【請求項3】
前記作動要素をY軸方向に付勢する第1の付勢部材と、前記X軸移動部をX軸方向に付勢する第2の付勢部材とを備えたことを特徴とする請求項2記載のレーザー光源装置。
【請求項4】
前記第1の付勢部材は、前記X軸移動部の傾斜カム溝形成面であってX軸方向の他方の端部の近傍に配置されたトーションばねからなり、
前記第2の付勢部材は、前記X軸移動部におけるX軸方向の一方の端部の側面に配置されたコイルばねからなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のレーザー光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−135597(P2010−135597A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310747(P2008−310747)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】