説明

レーザー加工溝の確認方法

【課題】レーザー加工されたレーザー加工溝の状態を明確に確認することができるレーザー加工溝の確認方法を提供する。
【解決手段】表面に格子状に形成されたストリートによって複数のデバイスが形成されるとともにストリート上に膜が形成されたウエーハに、ストリートに沿ってレーザー光線を照射することによって形成されたレーザー加工溝の確認方法であって、レーザー加工溝を赤外線カメラによって撮像し、該赤外線カメラによって撮像された画像に基づいてストリート上に形成された膜が除去されたか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に格子状に形成されたストリートによって複数のデバイスが形成されたウエーハにストリートに沿って形成されたレーザー加工溝の確認方法に関する。
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体基板の表面に格子状に配列されたストリートとよばれる切断予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスが形成されている半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによって個々の半導体デバイスを製造している。半導体ウエーハのストリートに沿った切断は、通常切削装置によって行われている。この切削装置は、被加工物である半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された半導体ウエーハを切削するための切削手段と、チャックテーブルと切削手段とを相対的に移動せしめる移動手段とを具備している。切削手段は、高速回転せしめられる回転スピンドルと該スピンドルに装着された切削ブレードを含んでいる。切削ブレードは円盤状の基台と該基台の側面外周部に装着された環状の切れ刃からなっており、切れ刃は例えば粒径3μm程度のダイヤモンド砥粒を電鋳によって固定し厚さ20μm程度に形成されている。
【0003】
また、近時においては、IC、LSI等のデバイスの処理能力を向上するために、シリコンウエーハの如き半導体基板の表面にSiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(Low−k膜)を積層せしめた形態の半導体ウエーハが実用化されている。
【0004】
また、ストリート上のLow−k膜にデバイスの機能をテストするためのテスト エレメント グループ(Teg)と呼ばれるテスト用の金属パターンが部分的に配設されている半導体ウエーハが実用化されている。
【0005】
上述したLow−k膜を積層した形態の半導体ウエーハを切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、Low−k膜は雲母のように多層に積層されているとともに非常に脆いことから、Low−k膜が剥離し、この剥離がデバイスにまで達し半導体デバイスに致命的な損傷を与えるという問題がある。また、ストリート上にデバイスの機能をテストするためのテスト エレメント グループ(Teg)と呼ばれるテスト用の金属パターンが部分的に配設されている半導体ウエーハを切削ブレードによりストリートに沿って切削すると、金属パターンが銅等の粘りのある金属によって形成されているためにバリが発生するとともにデバイスの側面に欠けが生じてデバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0006】
上述した問題を解消するために、半導体ウエーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射してレーザー加工溝を形成することによりLow−k膜やTegを除去し、その除去した領域に切削ブレードを位置付けて切削するウエーハの分割方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−320466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、半導体ウエーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射してもLow−k膜が確実に除去されていない場合があり、レーザー加工溝が形成されたストリートに切削ブレードを位置付けて切削すると、切削ブレードがレーザー加工溝の側面に接触してLow−k膜を剥離し、デバイスを損傷させるという問題がある。また、Tegが適正に除去されずに残存している場合、残存したTegを切削ブレードによって切削するとバリが発生するとともにデバイスの側面に比較的大きな欠けが生じてデバイスの品質を低下させるという問題もある。
【0009】
ストリートに形成されたレーザー加工溝を撮像してLow−k膜やTeg等の膜が適正に除去されたか否かを確認することも考えられるが、レーザー加工されたレーザー加工溝にはデブリが堆積してLow−k膜やTeg等の膜が適正に除去された否かを判定することが困難である。
【0010】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、レーザー加工されたレーザー加工溝の状態を明確に確認することができるレーザー加工溝の確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に格子状に形成されたストリートによって複数のデバイスが形成されるとともにストリート上に膜が形成されたウエーハに、ストリートに沿ってレーザー光線を照射することによって形成されたレーザー加工溝の確認方法であって、
レーザー加工溝を赤外線カメラによって撮像し、該赤外線カメラによって撮像された画像に基づいてストリート上に形成された膜が除去されたか否かを判定する、
ことを特徴とするレーザー加工溝の確認方法が提供される。
【0012】
赤外線カメラによるレーザー加工溝の撮像は、ウエーハの裏面側から撮像する。
レーザー加工溝を形成する際にはウエーハをレーザー光線照射位置に対してストリートに沿って移動し、レーザー光線照射位置に対してウエーハの移動方向下流側において赤外線カメラによってレーザー加工溝を撮像する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるレーザー加工溝の確認方法においては、ストリート上に膜が形成されたウエーハにストリートに沿ってレーザー光線を照射することによって形成されたレーザー加工溝を赤外線カメラによって撮像し、赤外線カメラによって撮像された画像に基づいてストリート上に形成された膜が除去されたか否かを判定するので、レーザー加工されたレーザー加工溝にデブリが堆積していてもレーザー加工溝の状態を明確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】被加工物であるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図2】図1に示す半導体ウエーハの断面拡大図。
【図3】図1に示す半導体ウエーハにストリートに沿ってレーザー加工溝を形成するとともに、形成されたレーザー加工溝の状態を確認するためのレーザー加工溝確認機能を備えたレーザー加工装置の斜視図。
【図4】図3に示すレーザー加工装置に装備される被加工物保持機構の構成部材を分解して示す斜視図。
【図5】図4に示す被加工物保持機構の要部断面図。
【図6】図3に示すレーザー加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図7】図1に示す半導体ウエーハを環状のフレームFに装着されたダイシングテープTの上面に貼着した状態を示す斜視図。
【図8】図3に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成工程の説明図。
【図9】図8に示すレーザー加工溝形成工程が実施された半導体ウエーハの要部を拡大して示す断面図。
【図10】図8に示すレーザー加工溝形成工程によって形成されたレーザー加工溝を赤外線カメラで撮像した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明によるレーザー加工溝の確認方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1には半導体ウエーハの斜視図が示されており、図2には図1に示す半導体ウエーハのストリートにおける拡大断面図が示されている。図1および図2に示す半導体ウエーハ10は、シリコンウエーハからなる半導体基板11の表面11aに格子状に配列された複数のストリート(切断予定ライン)111によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス112が形成されている。なお、この半導体ウエーハ10は、半導体基板11の表面11aに低誘電率絶縁体被膜113が積層して形成されており、ストリート111にはデバイス112の機能をテストするためのテスト エレメント グループ(Teg)と呼ばれるテスト用の金属パターン114が部分的に複数配設されている。
【0017】
以下、上記半導体ウエーハ10にストリート111に沿ってレーザー光線を照射することによってレーザー加工溝を形成し、低誘電率絶縁体被膜113および金属パターン114(ストリート上に形成された膜)を除去するとともに、形成されたレーザー加工溝の状態を確認する方法について説明する。
【0018】
図3には、上記半導体ウエーハ10にストリート111に沿ってレーザー加工溝を形成するとともに、形成されたレーザー加工溝の状態を確認するためのレーザー加工溝確認機能を備えたレーザー加工装置の斜視図が示されている。
図3に示すレーザー加工装置2は、静止基台20と、該静止基台20に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持する被加工物保持機構3と、静止基台20に加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構5と、該レーザー光線照射ユニット支持機構5に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット6とを具備している。
【0019】
上記被加工物保持機構3は、静止基台20上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール21、21と、該一対の案内レール21、21上にX軸方向に移動可能に配設された移動基台31と、該移動基台31上に配設された支持基台32と、該支持基台32上に配設された被加工物保持手段4とを含んでいる。移動基台31は矩形状に形成され、下面には一対の案内レール21、21に嵌合する一対の被案内溝311、311が設けられており、この被案内溝311、311を案内レール21、21に嵌合することにより、移動基台31は案内レール21、21に沿って移動可能に構成される。このようにして案内レール21、21上に移動可能に配設された移動基台31は、加工送り手段33によって一対の案内レール21に沿って移動せしめられる。加工送り手段33は、一対の案内レール21、21間に配設され案内レール21、21と平行に延びる雄ネジロッド331と、該雄ネジロッド331を回転駆動するサーボモータ332を具備している。雄ネジロッド331は、上記移動基台31に設けられたネジ穴312と螺合して、その先端部が軸受部材333によって回転自在に支持されている。従って、サーボモータ332によって雄ネジロッド331を正転および逆転駆動することにより、移動基台31は案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0020】
上記移動基台31上に配設された支持基台32は、図4および図5に示すように下板321と上板322および下板321と上板322の一端を連結する連結板323とからなり、他方が開放されている。支持基台32を構成する上板322には、図5に示すように円形の穴322aが設けられている。このように構成された支持基台32は、図3に示すように開放部がレーザー光線照射ユニット6側に向けて下板321が上記移動基台31上に配設される。
【0021】
上述した支持基台32を構成する上板322上に被加工物保持手段4が配設される。被加工物保持手段4は、図4に示すように支持部材41と、該支持部材41に回転可能に支持される回転筒42と、該回転筒42の上端に装着される被加工物保持部材43とを具備している。支持部材41は、図5に示すようにベース部411と、該ベース部411の中心部に上方に突出して形成された円筒状の支持部412とからなっている。ベース部411は、上記支持基台32を構成する上板322に設けられた円形の穴322aと同径の穴を備えた環状に形成されている。このベース部411の上面には環状の嵌合凸部411bが設けられている。この環状の嵌合凸部411bが形成されたベース部411には嵌合凸部411bの上面に開口する通路411cが設けられており、この通路411cが支持基台32を構成する上板322に形成された通路322bを介して図示しない吸引手段に連通されている。
【0022】
上記支持部材41に回転可能に支持される回転筒42は、下面に支持部材41を構成するベース部411に設けられた環状の嵌合凸部411bに嵌合する環状溝421が設けられている。また、回転筒42には、環状溝421に開口するとともに上面に開口する吸引通路422が形成されている。なお、回転筒42の下部外周には、環状の歯車423が設けられている。このように構成された回転筒42は円筒状の支持部412を囲繞して配設され、環状溝421を支持部材41を構成するベース部411に設けられた環状の嵌合凸部411bに嵌合するとともに、支持部材41を構成する支持部412に軸受け44によって回転可能に支持される。このように回転筒42が支持部材41を構成する支持部412に回転可能に支持された状態で、環状の歯車423が支持基台32を構成する上板322に配設されたサーボモータ45の駆動軸に装着された駆動歯車46に噛み合うようになっている。以上のように構成された回転筒42の上端部には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ47が配設されている。
【0023】
上記回転筒42の上端に装着される被加工物保持部材43は、ガラス板等の透明部材によって円板状に形成されており、回転筒42の上面に適宜の接着剤によって装着されている。この被加工物保持部材43の上面には、外周部に環状の吸引溝431が形成されている。また、被加工物保持部材43には、環状の吸引溝431と上記回転筒42に設けられた吸引通路422と連通する通路432が設けられている。従って、図示しない吸引手段を作動すると、上記支持基台32を構成する上板322に設けられた通路322b、支持部材41を構成するベース部411に設けられた通路411c、回転筒42に設けられた環状溝421および吸引通路422、通路432を介して環状の吸引溝431に負圧が作用せしめられる。
【0024】
図3に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射ユニット支持機構5は、静止基台20上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール51、51と、該一対の案内レール51、51上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台52を具備している。この可動支持基台52は、一対の案内レール51、51上に移動可能に配設された移動支持部521と、該移動支持部521に取り付けられた装着部522とからなっている。移動支持部521の下面には上記一対の案内レール51、51と嵌合する一対の被案内溝521a、521aが形成されており、この一対の被案内溝521a、521aを一対の案内レール51、51に嵌合することにより、可動支持基台52は一対の案内レール51、51に沿って移動可能に構成される。また、装着部522は、一側面に被加工物保持手段4を構成する被加工物保持部材43の上面(保持面)に対して垂直な矢印Zで示す集光点調整方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール522a、522aが平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構5は、可動支持基台52を一対の案内レール51、51に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための割り出し送り手段53を具備している。割り出し送り手段53は、上記一対の案内レール51、51の間に平行に配設された雄ネジロッド531と、該雄ネジロッド531を回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド531は、その一端が上記静止基台20に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ532の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド531は、可動支持基台52を構成する移動支持部521の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ532によって雄ネジロッド531を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台52は案内レール51、51に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0025】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット6は、ユニットホルダ61と、該ユニットホルダ61に取り付けられたレーザー光線照射手段62を具備している。ユニットホルダ61は、上記装着部522に設けられた一対の案内レール522a、522aに摺動可能に嵌合する一対の被案内溝611、611が設けられており、この被案内溝611、611を上記案内レール522a、522aに嵌合することにより、矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0026】
図示のレーザー光線照射ユニット6は、上記ユニットホルダ61とレーザー光線照射手段62を含んでいる。レーザー光線照射手段62はユニットホルダ61に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング621と、該ケーシング621内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング621の先端に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して上記被加工物保持手段4の被加工物保持部材43上に保持された被加工物に照射する集光器622を具備している。
【0027】
上記レーザー光線照射手段62を構成するケーシング621の前端部には、上記レーザー光線照射手段62によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を後述する制御手段に送る。
【0028】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット6は、ユニットホルダ61を一対の案内レール522a、522aに沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動させるための集光点位置調整手段63を具備している。集光点位置調整手段63は、一対の案内レール522a、522aの間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ632等の駆動源を含んでおり、パルスモータ632によって図示しない雄ネジロッドを正転または逆転駆動することにより、ユニットホルダ61およびレーザー光線照射手段62を一対の522a、522aに沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。
【0029】
図3を参照して説明を続けると、上記レーザー光線照射ユニット支持機構5の可動支持基台52を構成する移動支持部521の上面には、レーザー加工溝確認機構を構成する赤外線カメラ8が配設されている。この赤外線カメラ8は、Y軸方向に進退可能な支持手段81に支持されている。このように支持手段81によって支持された赤外線カメラ8は、レーザー光線照射手段62の集光器622に対してレーザー加工時における被加工物保持手段4の加工送り方向下流側に配設されており、被加工物保持機構3を構成する支持基台32が移動する際に上板322と下板321の間を通過するようになっている。
【0030】
図示の実施形態におけるレーザー加工機は、図6に示す制御手段9を具備している。制御手段9はマイクロコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)91と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)92と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)93と、入力インターフェース94および出力インターフェース95とを備えている。このように構成された制御手段9の入力インターフェース94には、上記撮像手段7、赤外線カメラ8等からの検出信号が入力される。また、出力インターフェース95からは、上記パルスモータ332、パルスモータ532、パルスモータ632、レーザー光線照射手段62等に制御信号を出力するとともに、表示手段96に表示信号を出力する。
【0031】
次に、上述したレーザー加工装置2を用いて上記半導体ウエーハ10にストリート111に沿ってレーザー加工するとともに、形成されたレーザー加工溝の状態を確認する方法について説明する。
上述した半導体ウエーハ10にストリート111に沿ってレーザー加工するには、図7に示すようにダイシングテープTを介して環状のフレームFに支持された半導体ウエーハ10を、図3に示すレーザー加工装置2の被加工物保持手段4を構成する被加工物保持部材43の上面(保持面)に載置する。そして、環状のフレームFをクランプ47によって固定する。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、上述したように被加工物保持部材43に形成された環状の吸引溝431に負圧を作用せしめ、被加工物保持部材43の保持面(上面)上に載置されダイシングテープTを介して半導体ウエーハ10を吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0032】
上述したようにウエーハ保持工程を実施したならば、加工送り手段33を作動して半導体ウエーハ10を吸引保持した被加工物保持手段4を撮像手段7の直下に位置付ける。被加工物保持手段4が撮像手段7の直下に位置付けられると、撮像手段7および制御手段9によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段7および制御手段9は、半導体ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート111と、レーザー光線照射手段62の集光器622との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、アライメントを遂行する(アライメント工程)。また、半導体ウエーハ10に形成されている所定方向と直交する方向に形成されているストリート111に対しても、同様にアライメントが遂行される。このとき、赤外線カメラ8は、集光器622とX軸方向において同一線上になるように調整される。
【0033】
次に、被加工物保持手段4を移動して図8の(a)で示すように所定のストリート111の一端(図において左端)を集光器622の直下に位置付ける。そして、制御手段9はレーザー光線照射手段62に制御信号を出力し、集光器622から低誘電率絶縁体被膜113および金属パターン114に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ被加工物保持手段4を矢印X1で示す方向に所定の加工送り速度で移動せしめる。そして、図8の(b)で示すように集光器622の照射位置がストリート111の他端(図8の(b)において右端)に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止する(レーザー加工溝形成工程)。一方、被加工物保持手段4は、ストリート111の他端(図8の(b)において右端)が赤外線カメラ8を通過してから停止する。この(レーザー加工溝形成工程)においては、パルスレーザー光線の集光点Pを図8の(a)に示すように半導体ウエーハ10の表面(上面)付近に合わせる。この結果、図9に示すように半導体ウエーハ10には所定のストリート111に沿って半導体基板11に達するレーザー加工溝120が形成され金属パターン114および低誘電率絶縁体被膜113が除去される。
【0034】
上記レーザー加工溝形成工程の加工条件は、次の通りに設定されている。
光源 :YAGレーザーまたはYVO4レーザー
波長 :355nm(紫外光)
出力 :4〜10W
繰り返し周波数:10〜100kHz
集光スポット径:φ10〜φ50μm
加工送り速度 :100〜300mm/秒
【0035】
上述したレーザー加工溝形成工程を実施している際には、赤外線カメラ8を作動して半導体ウエーハ10の裏面側から形成されたレーザー加工溝120を撮像し、撮像した画像情報を制御手段9に送っている。このとき赤外線カメラ8は、被加工物保持部材43、ダイシングテープTおよび半導体基板11を透過してレーザー加工溝120を撮像することができる。制御手段9は、赤外線カメラ8から送られた画像情報に基づいて図10に示すように画像処理し、画像処理したレーザー加工溝120の画像を表示手段96に表示する。図10に示すように、レーザー加工溝120を赤外線カメラ8で撮像しているので、金属パターン114が除去されずに残存している場合には表示される。そして制御手段9は、図10に示すように金属パターン114が表示されている場合には、金属パターン114が除去されずに残存していると判定し、判定結果を表示手段96に表示する(レーザー加工溝確認工程)。このようにして金属パターン114が除去されずに残存していると判定した場合には、金属パターン114が残存している領域に再度レーザー加工溝形成工程を実施し、金属パターン114を除去するレーザー加工溝修正工程を実施する。
【0036】
上述したように所定のストリート111に沿ってレーザー加工溝形成工程とレーザー加工溝確認工程および必要に応じてレーザー加工溝修正工程を実施したら、被加工物保持手段4、従ってこれに保持されている半導体ウエーハ10を矢印Yで示す方向にストリート111の間隔だけ割り出し移動し(割り出し工程)、上記レーザー加工溝形成工程とレーザー加工溝確認工程および必要に応じてレーザー加工溝修正工程を実施する。このとき、赤外線カメラ8の支持手段81を作動して、赤外線カメラ8が集光器622とX軸方向において同一線上になるように調整する。このようにして所定方向に延在する全てのストリート111についてレーザー加工溝形成工程とレーザー加工溝確認工程および必要に応じてレーザー加工溝修正工程を実施したならば、被加工物保持手段4、従ってこれに保持されている半導体ウエーハ10を90度回動せしめて、上記所定方向に対して直角に延びる各ストリート111に沿って上記レーザー加工溝形成工程とレーザー加工溝確認工程および必要に応じてレーザー加工溝修正工程を実施することにより、半導体ウエーハ10の全てのストリート111に形成されている金属パターン114および低誘電率絶縁体被膜113が除去される。
【0037】
以上のようにして半導体ウエーハ10の表面にストリート111に沿ってレーザー加工溝120を形成することにより金属パターン114および低誘電率絶縁体被膜113を除去したならば、半導体ウエーハ10はストリート111に形成されたレーザー加工溝120に沿って切断し個々のデバイス112に分割する分割工程に搬送される。分割工程においては、切削装置の切削ブレードをストリート111に形成されたレーザー加工溝120に位置付けて半導体ウエーハ10の半導体基板11を切断するが、上述したようにストリート111に形成されている金属パターン114および低誘電率絶縁体被膜113が除去されているので、バリの発生やデバイスを損傷させたり欠けが発生することがない。
【符号の説明】
【0038】
2:レーザー加工装置
20:静止基台
3:被加工物保持機構
31:移動基台
32:支持基台
33:加工送り手段
4:被加工物保持手段
41:支持部材
42:回転筒
43:被加工物保持部材
5:スピンドル支持機構
52:可動支持基台
53:割り出し送り手段
6:レーザー光線照射ユニット
62:レーザー光線照射手段
622:集光器
7:撮像手段
8:赤外線カメラ
10:半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に形成されたストリートによって複数のデバイスが形成されるとともにストリート上に膜が形成されたウエーハに、ストリートに沿ってレーザー光線を照射することによって形成されたレーザー加工溝の確認方法であって、
レーザー加工溝を赤外線カメラによって撮像し、該赤外線カメラによって撮像された画像に基づいてストリート上に形成された膜が除去されたか否かを判定する、
ことを特徴とするレーザー加工溝の確認方法。
【請求項2】
赤外線カメラによるレーザー加工溝の撮像は、ウエーハの裏面側から撮像する、請求項1記載のレーザー加工溝の確認方法。
【請求項3】
該レーザー加工溝を形成する際にはウエーハをレーザー光線照射位置に対してストリートに沿って移動し、レーザー光線照射位置に対してウエーハの移動方向下流側において赤外線カメラによってレーザー加工溝を撮像する、請求項1又は2記載のレーザー加工溝の確認方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−187829(P2011−187829A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53480(P2010−53480)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】