説明

レーザー加工装置

【課題】レーザー発振器から発振されるレーザー光線を集光レンズによって集光することなく集光器に伝送することができる光伝送手段を備えたレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】パルスレーザー光線発振器61が発振したパルスレーザー光線の波長域を拡張する波長域拡張手段64と、波長域拡張手段によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線のパルス時間幅を拡張するパルス時間幅拡張手段65と、パルス時間幅拡張手段によってパルス時間幅が拡張されたパルスレーザー光線を集光する集光レンズ66と、集光レンズによって集光されたパルスレーザー光線を入光して伝送する光ファイバー67と、光ファイバーによって伝送されたパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズ68と、修正レンズによって平行光に修正されたパルスレーザー光線を元のパルス時間幅に圧縮して集光器に伝送するパルス時間幅圧縮手段69とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物にパルスレーザー光線を照射してレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面にフォトダイオード等の受光素子やレーザーダイオード等の発光素子等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々のフォトダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝または内部に変質層を形成し、このレーザー加工溝または変質層に沿って破断する方法が提案されている。このようにウエーハ等の被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するパルスレーザー光線照射手段とを具備している。このパルスレーザー光線照射手段は、パルスレーザー光線を発振するパルスレーザー発振器と、該パルスレーザー発振器が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、パルスレーザー発振器が発振したパルスレーザー光線を集光器に導く光伝送手段とから構成されている。
【0004】
上述したパルスレーザー発振器から発振されたパルスレーザー光線を集光器に導く光伝送手段は、一般にレンズとミラーからなる光学系からなっている。しかるに、レンズとミラーからなる光学系は設置場所によっては設計上の自由度が少ないという問題がある。このような問題を解消するために、光ファイバーを用いた光伝送手段が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−277775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した光伝送手段としての光ファイバーは、ガラスで形成されており、柔軟性を持たせるために直径が25μm程度の細さに形成されている。しかるに、パルスレーザー発振器から発振されるパルスレーザー光線は直径が2〜3mmであるため、パルスレーザー発振器から発振されたパルスレーザー光線を集光レンズによって集光し光ファイバーの端面の中心に位置付ける必要がある。このようにパルスレーザー発振器から発振されるパルスレーザー光線を集光して、ピークパワー密度の高いパルスレーザー光線が光ファイバーの端面の中心に位置付けられるので、光ファイバーの端面が照射されるパルスレーザー光線によって早期に劣化するという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、パルスレーザー光線発振器から発振されるパルスレーザー光線を、光ファイバーに損傷を与えることなく集光器に伝送することができる光伝送手段を備えたレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するために、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にパルスレーザー光線を照射するパルスレーザー光線照射手段とを備え、該パルスレーザー光線照射手段がレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振器と、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線を集光器に導く光伝送手段とを具備しているレーザー加工装置において、
該光伝送手段は、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線の波長域を拡張する波長域拡張手段と、
該波長域拡張手段によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線のパルス時間幅を拡張するパルス時間幅拡張手段と、
該パルス時間幅拡張手段によってパルス時間幅が拡張されたパルスレーザー光線を集光する集光レンズと、
該集光レンズによって集光されたパルスレーザー光線を入光して伝送する光ファイバーと、
該光ファイバーによって伝送されたパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズと、
該修正レンズによって平行光に修正されたパルスレーザー光線を元のパルス時間幅に圧縮して該集光器に伝送するパルス時間幅圧縮手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0009】
上記波長域拡張手段は、ロッド型ホトニクス結晶ファイバーと、該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーの入光側に配設されパルスレーザー発振器が発振したパルスレーザー光線を集光する集光レンズと、該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーの出光側に配設され該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーから出光するパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズとからなっている。
また、上記パルス時間幅拡張手段は、上記波長域拡張手段によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線を透過する第1のビームスプリッターと、該第1のビームスプリッターを透過したパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第1の1/4波長板と、該第1の1/4波長板によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を拡張して反射するパルス時間幅拡張素子とを備え、該パルス時間幅拡張素子で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を該第1の1/4波長板によって偏光面を90度回転して2次直線偏光にした後、該第1のビームスプリッターを介して該集光レンズに導き、
上記パルス時間幅圧縮手段は、上記修正レンズによって平行光に修正されたパルスレーザー光線を透過する第2のビームスプリッターと、該第2のビームスプリッターを透過したパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第2の1/4波長板と、該第2の1/4波長板によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を圧縮して反射するパルス時間幅圧縮素子とを備え、該パルス時間幅圧縮素子で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を該第2の1/4波長板によって偏光面を90度回転して2次直線偏光のパルスレーザー光線を該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線に戻した後、該第2のビームスプリッターを介して上記集光器に導く。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレーザー加工装置においては、パルスレーザー発振器が発振したパルスレーザー光線のパルス時間幅をパルス時間幅拡張手段によって拡張してピークパワー密度を低減した後に光ファイバーに導入し、光ファイバーから出光したパルスレーザー光線のパルス時間幅をパルス時間幅圧縮手段によって元のパルス時間幅に戻しピークパワー密度を元の状態に戻してから集光器に導くので、光ファイバーに損傷を与えることなく、被加工物に所望の加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるパルスレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に加工送り方向(X軸方向)と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0014】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向に(X軸方向)移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、被加工物保持面としての吸着チャック361上に被加工物である例えば円板状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0015】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動させるためのボール螺子機構からなる加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動せしめられる。
【0016】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるためのボール螺子機構からなる第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0017】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるためのボール螺子機構からなる第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたパルスレーザー光線照射手段6を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0019】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って上記チャックテーブル36の被加工物保持面に垂直な方向である矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動させるための集光点位置調整手段53を具備している。集光点位置調整手段53は、上記加工送り手段37や第1の割り出し送り手段38および第2の割り出し送り手段43と同様にボール螺子機構からなっている。この集光点位置調整手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびパルスレーザー光線照射手段6を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりパルスレーザー光線照射手段6を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりパルスレーザー光線照射手段6を下方に移動するようになっている。
【0020】
上記パルスレーザー光線照射手段6は、ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング60を具備している。この円筒形状のケーシング60の前端部には、上記パルスレーザー光線照射手段6によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段7が配設されている。この撮像手段7は撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0021】
図示の実施形態におけるパルスレーザー光線照射手段6は、図2に示すように上記ケーシング60内に配設され直線偏光のパルスレーザー光線LBを発振するパルスレーザー光線発振器61と、ケーシング60の先端に配設されパルスレーザー光線発振器61によって発振されたパルスレーザー光線を集光して上記チャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光器62と、パルスレーザー光線発振器61によって発振されたパルスレーザー光線を集光器62に伝送する光伝送手段63と、を具備している。
【0022】
上記パルスレーザー光線発振器61は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなっている。なお、図示の実施形態におけるパルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線LBは、次のように設定されている。
波長 :1030nm
パルス時間幅 :10ps
繰り返し周波数 :200kHz
出力 :3W
直径 :3.5mm
【0023】
上記集光器62は、図示の実施形態においては、光伝送手段63から出光されるパルスレーザー光線を図2において下方に方向変換する方向変換ミラー621と、該方向変換ミラー621によって方向変換されたパルスレーザー光線を集光してチャックテーブル36に保持された被加工物Wに照射する集光レンズ622とからなっている。
【0024】
次に、上記光伝送手段63について説明する。
図2に示す実施形態における光伝送手段63は、パルスレーザー光線発振器61が発振したパルスレーザー光線LBの波長域を拡張する波長域拡張手段64と、該波長域拡張手段64によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線のパルス時間幅を拡張するパルス時間幅拡張手段65と、該パルス時間幅拡張手段65によってパルス時間幅が拡張されたパルスレーザー光線を集光する集光レンズ66と、該集光レンズ66によって集光されたパルスレーザー光線を入光して伝送する光ファイバー67と、該光ファイバー67によって伝送されたパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズ68と、該修正レンズ68によって平行光に修正されたパルスレーザー光線を元のパルス時間幅に圧縮して集光器62に伝送するパルス時間幅圧縮手段69とによって構成されている。
【0025】
上記波長域拡張手段64は、ロッド型ホトニクス結晶ファイバー641と、該ロッド型ホトニクス結晶ファイバー641の入光側に配設されパルスレーザー発振器61が発振したパルスレーザー光線を集光する集光レンズ642と、ロッド型ホトニクス結晶ファイバー641の出光側に配設されロッド型ホトニクス結晶ファイバー641から出光するパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズ643とからなっている。ロッド型ホトニクス結晶ファイバー641は、図示の実施形態においては直径が100μmに設定されている。従って、パルスレーザー光線発振器61が発振したパルスレーザー光線を集光する集光レンズ642は、パルスレーザー光線発振器61が発振したパルスレーザー光線を100μm程度まで集光すればよいので、パルスレーザー光線のパワー密度が極めて高くなることはない。そして、パルスレーザー光線発振器61が発振した直線偏光のパルスレーザー光線がロッド型ホトニクス結晶ファイバー641を通ることにより、波長域が拡張される。
【0026】
上記パルス時間幅拡張手段65は、波長域拡張手段64によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線を透過する第1のビームスプリッター651と、該第1のビームスプリッター651を透過した直線偏光のパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第1の1/4波長板652と、該第1の1/4波長板652によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を拡張して反射するVolume Bragg Gratingと呼ばれる光の分散を遅延させてパルス時間幅を拡張するパルス時間幅拡張素子653とを具備している。パルス時間幅拡張素子653は、図示の実施形態においては波長の短い領域から波長の長い領域まで順次反射するように構成されている。例えば波長が1030nmに設定されたパルスレーザー光線は上記波長域拡張手段64によって例えば1020〜1040nmに波長域が拡張されており、従ってパルスレーザー光線を波長域に渡って反射することによりパルス時間幅を拡張することができる。図示の実施形態においては、パルスレーザー光線発振器61から発振されるパルスレーザー光線のパルス時間幅が10psから200psに拡張される。このようにしてパルス時間幅拡張素子653で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を再び第1の1/4波長板652に導入して偏光面が90度回転した2次直線偏光のパルスレーザー光線(パルスレーザー光線発振器61が発振したパルスレーザー光線の偏光面が90度回転した直線偏光)にした後、第1のビームスプリッター651および方向変換ミラー650を介して集光レンズ66に導く。
【0027】
集光レンズ66に導かれた2次直線偏光のパルスレーザー光線は、集光レンズ66によって集光されて光ファイバー67の一端に入光する。この光ファイバー67は、図示の実施形態においては直径が25μmに設定されている。従って、パルスレーザー光線は、集光レンズ66によって直径が25μm以下になるまで集光されるが、上述したようにパルス時間幅が拡張されているのでピークパワー密度が低減しているため、光ファイバー67に損傷を与えることはない。
【0028】
上述したように光ファイバー67の一端に入光した2次直線偏光のパルスレーザー光線は、他端から出光する。光ファイバー67の他端から出光した2次直線偏光のパルスレーザー光線は、修正レンズ68によって平行光に修正されてパルス時間幅圧縮手段69に導かれる。
【0029】
パルス時間幅圧縮手段69は、修正レンズ68によって平行光に修正された2次直線偏光のパルスレーザー光線を透過する第2のビームスプリッター691と、該第2のビームスプリッター691を透過した2次直線偏光のパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第2の1/4波長板692と、該第2の1/4波長板692によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を圧縮して反射するVolume Bragg Gratingと呼ばれるパルス時間幅を圧縮するパルス時間幅圧縮素子693とを備えている。パルス時間幅圧縮素子693は、図示の実施形態においては上記パルス時間幅拡張手段65のパルス時間幅拡張素子653の反射順序が逆になるように、即ち図示の実施形態においては波長の長い1040nm領域から波長の短い1020nm領域まで順次反射するように構成されている。従って、上記パルス時間幅拡張手段65のパルス時間幅拡張素子653によってパルス時間幅が拡張されたパルスレーザー光線は、パルス時間幅圧縮素子693で波長域に渡って反射することにより元のパルス時間幅(図示の実施形態においては10ps)に戻される。このようにしてパルス時間幅圧縮素子693で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を再び第2の1/4波長板692に導入し、偏光面を90度回転して2次直線偏光のパルスレーザー光線をパルスレーザー光線発振器61が発振した最初の直線偏光のパルスレーザー光線に戻した後、第2のビームスプリッター691を介して集光器62に導く。このように、上記パルス時間幅拡張手段65のパルス時間幅拡張素子653によってパルス時間幅を拡張されたパルスレーザー光線は、パルス時間幅圧縮素子693によって元のパルス時間幅に戻されてピークパワー密度が元の状態に戻されるので、被加工物に所望の加工を施すことができる。
【符号の説明】
【0030】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
31:案内レール
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
41:案内レール
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
6:パルスレーザー光線照射手段
61:パルスレーザー光線発振器
62:集光器
63:光伝送手段
64:波長域拡張手段
641:ロッド型ホトニクス結晶ファイバー
65:パルス時間幅拡張手段
651:第1のビームスプリッター
652:第1の1/4波長板
653:パルス時間幅拡張素子
66:集光レンズ
67:光ファイバー
68:修正レンズ
69:パルス時間幅圧縮手段
691:第2のビームスプリッター
692:第2の1/4波長板
693:パルス時間幅圧縮素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するパルスレーザー光線照射手段とを備え、該パルスレーザー光線照射手段がパルスレーザー光線を発振するパルスレーザー光線発振器と、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線を集光してチャックテーブルに保持された被加工物に照射する集光器と、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線を集光器に導く光伝送手段とを具備しているレーザー加工装置において、
該光伝送手段は、該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線の波長域を拡張する波長域拡張手段と、
該波長域拡張手段によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線のパルス時間幅を拡張するパルス時間幅拡張手段と、
該パルス時間幅拡張手段によってパルス時間幅が拡張されたパルスレーザー光線を集光する集光レンズと、
該集光レンズによって集光されたパルスレーザー光線を入光して伝送する光ファイバーと、
該光ファイバーによって伝送されたパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズと、
該修正レンズによって平行光に修正されたパルスレーザー光線を元のパルス時間幅に圧縮して該集光器に伝送するパルス時間幅圧縮手段と、を具備している、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該波長域拡張手段は、ロッド型ホトニクス結晶ファイバーと、該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーの入光側に配設されパルスレーザー発振器が発振したパルスレーザー光線を集光する集光レンズと、該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーの出光側に配設され該ロッド型ホトニクス結晶ファイバーから出光するパルスレーザー光線を平行光に修正する修正レンズとからなっている、請求項1のレーザー加工装置。
【請求項3】
該パルス時間幅拡張手段は、該波長域拡張手段によって波長域が拡張されたパルスレーザー光線を透過する第1のビームスプリッターと、該第1のビームスプリッターを透過したパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第1の1/4波長板と、該第1の1/4波長板によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を拡張して反射するパルス時間幅拡張素子とを備え、該パルス時間幅拡張素子で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を該第1の1/4波長板によって偏光面を90度回転して2次直線偏光にした後、該第1のビームスプリッターを介して該集光レンズに導き、
該パルス時間幅圧縮手段は、該修正レンズによって平行光に修正されたパルスレーザー光線を透過する第2のビームスプリッターと、該第2のビームスプリッターを透過したパルスレーザー光線を円偏光のパルスレーザー光線に変換する第2の1/4波長板と、該第2の1/4波長板によって変換された円偏光のパルスレーザー光線を波長域に渡ってパルス時間幅を圧縮して反射するパルス時間幅圧縮素子とを備え、該パルス時間幅圧縮素子で反射し回転方向が逆転した円偏光のパルスレーザー光線を該第2の1/4波長板によって偏光面を90度回転して2次直線偏光のパルスレーザー光線を該パルスレーザー光線発振器が発振したパルスレーザー光線に戻した後、該第2のビームスプリッターを介して該集光器に導く、請求項1又は2記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96268(P2012−96268A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246575(P2010−246575)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】