説明

レーザー導光体の処理方法、レーザー導光体の処理材

【課題】吸収性粉体の付着処理を簡易に行う。
【解決手段】レーザー導光体1よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体を含む処理材20を用いる。レーザー導光体1の先端部からレーザー光を出射させながら、レーザー導光体1の先端部を混合粉体を含む処理材20と接触させ、吸収粉の発熱によりガラス粉を溶融するとともに、吸収粉の混入した溶融ガラス11をレーザー導光体1の先端部外面に付着させ、この付着物11を冷却固化し、発熱部12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーまたはその前方に光学的に連結されてプローブの先端部の表面にレーザー光の吸収性粉体を付着処理するレーザー光導光体の処理方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を利用して、生体組織の切開、蒸散、凝固などを行うことが汎用されている。この場合、光ファイバーから直接生体組織にレーザー光を出射させるほか、光ファイバーの前方に、適宜の連結手段によりレーザー光の透過可能な材料たとえばサファイア製のプローブを配置し、光ファイバーを透過したレーザー光をプローブに導き、その先端から出射させることも行われている。この後者の場合は、生体組織と接触させながら操作するコンタクト方式に主に採用されている。
【0003】
一方、光ファイバーまたはプローブ、すなわちレーザー導光体からレーザー光を出射する場合、レーザー光の直進性から、導光体の先端面からレーザー光が出射される。ただし、プローブをたとえば円錐形などとした場合には、その円錐外表面で屈折反射が生じ、一部が側方に出射される。
【0004】
しかるに、積極的にレーザー光のもつエネルギーをプローブの側方から生体組織に与えたい場合には、特開平2−159269号に示されているように、カーボンなどのレーザー光の吸収性粉体をプローブに付着させることが有効である。
【0005】
従来、レーザー光の吸収性粉体をプローブの表面に付着させるに際しては、その吸収性粉体をたとえばアルコールなどに分散させ、その分散液をたとえば布などに含浸させて、その布をプローブ外面に当てて塗布する方法か、前記の分散液中にプローブの先端部を浸漬する方法などに依っていた。
【0006】
いずれにしても、プローブに吸収性粉体を塗布すると、使用回数に応じて、その塗布部分におけるレーザーの照射に伴う熱歪みが徐々に増大し、ついには手術中に作用する外力によりプローブが破損することがある。また、多数回の使用により、吸収性粉体が徐々に剥落する傾向がある。このような事態になると、プローブを交換する必要がある。
【0007】
プローブを損耗の度に交換するのは、予備の比較的高価となるプローブを多数用意する必要があり、経済的でない。
【0008】
他方で、たとえば歯科の根管治療などの場合には、その根管内に入るだけの細いプローブを、光ファイバーに対して別途用意して連結することは意味がなく、光ファイバーそのものを使用するのが好ましいことを本発明者は知見した。
【0009】
しかし、この光ファイバーの先端に、前述の方法に従って、吸収性粉体を塗布する場合、プローブの先端部に塗布する場合と同様に、その塗布量をコントロールすることはできないか、困難である。すなわち、コントロール手法として、複数回塗りにより塗布層を複数層とするか、分散液の濃度を調整する手法があるが、いずれの手法も単位面積当たりの吸収性粉体の塗布量がばらつく問題がある。また、塗布層が短時間または少ない使用回数で剥落することが多い。
【0010】
この問題点に対して、本発明者は、レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させながら、その先端部を、カーボン等のレーザー光吸収性粉体および熱可塑性樹脂等のバインダーからなる成形体と接触させて、先端部表面に粉体を付着させる技術を提案した(特許文献1参照)。
【0011】
この従来技術によれば、吸収性粉体の付着量および付着領域を簡易かつ確実に設定できる、付着物の剥落量が少なく耐久性に富むようになる、先端部分が使用に耐えなくなった場合に、医療現場で簡易に先端部処理が可能となる等の利点がもたらされる。
【特許文献1】特開平8−71080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、この従来技術では、付着量の制御が難しく、付着量の増加に限界があり、また付着物の形状を変化させる、例えば球状もしくはそれに近い膨らみのある形状にするといった形状制御も困難であった。
【0013】
そこで、本発明の主たる課題は、吸収性粉体の付着量および付着領域を簡易かつ確実に設定できる、付着物の剥落量が少なく耐久性に富むようになる、先端部分が使用に耐えなくなった場合に、医療現場で簡易に先端部処理が可能となる等の利点を損ねずに、付着物の付着量および形状をより広範に制御できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
レーザー導光体の先端部を処理する方法であって、
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体を用い、
レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させながら、レーザー導光体の先端部を混合粉体と接触させて、吸収粉の発熱によりガラス粉を溶融するとともに、吸収粉の混入した溶融ガラスを前記レーザー導光体の先端部外面に付着させ、この付着物を冷却固化することを特徴とするレーザー導光体の処理方法。
【0015】
(作用効果)
本発明の特徴は、吸収粉とガラス粉とを混合して用いたことにある。吸収粉はレーザー光の吸収により発熱し、この熱によりガラス粉は溶融し、吸収粉の混入した溶融ガラスがレーザー導光体の先端部外面に付着する。溶融ガラスは長時間の加熱にも耐えることができ、消失することなくレーザー導光体に付着する。その結果、従来例と比べて、吸収粉の濃度やレーザー光の出力を高くしたり、レーザー光の出射時間を長くしたりすることができ、付着物の付着量や形状をより広範に制御できるとともに、付着物の耐久性も向上できるようになる。
【0016】
また、医療現場でレーザー導光体の先端部を再生できる。よって、患者毎に先端部を切断除去し、新たに先端部を形成するといった部分的使い捨て使用が可能となり、患者間の相互感染の防止等を図ることができる。
【0017】
<請求項2記載の発明>
レーザー導光体の先端部を処理する方法であって、
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉と、前記ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉とを含む混合粉体を用い、
レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させながら、レーザー導光体の先端部を混合粉体と接触させて、吸収粉の発熱によりガラス粉を溶融するとともに、吸収粉及び拡散粉の混入した溶融ガラスを前記レーザー導光体の先端部外面に付着させ、この付着物を冷却固化することを特徴とするレーザー導光体の処理方法。
【0018】
(作用効果)
本項記載の発明は、前項記載の発明と比べて、ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉を混合粉体に混合した点が異なるものである。このような拡散粉を混入することにより、レーザー導光体の先端部から出射されるレーザー光が出射方向とは異なる方向に拡散され、全方向に均一な光を照射することができるようになる。なお、吸収粉も、このような拡散性を有しないわけではないが、光の吸収を伴うため、拡散性を向上させるには、このような拡散粉を用いるのが好ましい。
【0019】
<請求項3記載の発明>
前記付着物の付着量および付着物の形状の少なくとも一方を、吸収粉の濃度、レーザー光の出力、およびレーザー光の出射時間の少なくとも一つにより制御する請求項1または2記載のレーザー導光体の処理方法。
【0020】
(作用効果)
本発明では、付着物の付着量や付着物の形状は、吸収粉の濃度、レーザー光の出力、およびレーザー光の出射時間の少なくとも一つにより容易に制御することができる。
【0021】
<請求項4記載の発明>
前記付着の後、前記レーザー導光体の先端部を前記混合粉体から離間した状態で、前記レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させ、前記付着物の形状を調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー導光体の処理方法。
【0022】
(作用効果)
付着物の付着の後、レーザー導光体の先端部を混合粉体から離間した状態で、レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させると、溶融状態の付着物の形状がそれ自身の表面張力により、柱状から楕球状を経て正球状に変化する。よって、所望のタイミングでレーザー出射を停止し、付着物を冷却固化するだけで、付着物の形状を調整することができる。なお、このようなことができるのも、ガラス粉を用いたことによる利点である。
【0023】
<請求項5記載の発明>
前記冷却固化した付着物が、レーザー導光体の先端から長さ3〜5mmの部分の全周にわたり、厚さ10μm以上設けられるようにする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー導光体の処理方法。
【0024】
(作用効果)
従来の方法では、付着物をこのような正球状または楕球状にすることは不可能であったが、本発明では前述のとおりガラス粉を用いたことによりこのような形状制御が可能である。
【0025】
<請求項6記載の発明>
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体である、ことを特徴とするレーザー導光体の処理材。
【0026】
(作用効果)
本項記載の発明は、前述の本発明の処理方法に用いる処理材に関するものであり、前述のガラス粉と吸収粉とを含む混合粉体からなるものである。このような混合粉体は、そのまま本発明の処理に用いることが可能である。
【0027】
<請求項7記載の発明>
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉と、前記ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉とを含む混合粉体である、ことを特徴とするレーザー導光体の処理材。
【0028】
(作用効果)
本項記載の発明も、前述の本発明の処理方法に用いる処理材に関するものであり、前述のガラス粉、吸収粉および拡散粉を含む混合粉体からなるものである。このような混合粉体は、そのまま本発明の処理に用いることが可能である。
【0029】
<請求項8記載の発明>
前記混合粉体が媒体中に分散された分散液からなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【0030】
(作用効果)
混合粉体はこのような分散液形態でも、本発明の処理材として用いることができる。この媒体は処理中の発熱により蒸散する。
【0031】
<請求項9記載の発明>
前記混合粉体をケーキ化してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【0032】
(作用効果)
混合粉体は媒体中に分散した後に乾燥させる、あるいは突き固める等によりケーキの形態とすることもできる。この場合、レーザー導光体の先端部をケーキ表面に突き当てることにより、本発明の処理が可能である。
【0033】
<請求項10記載の発明>
前記混合粉体を樹脂製多孔質保持体の孔中に保持してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【0034】
(作用効果)
混合粉体は樹脂製多孔質保持体に保持した形態でも、本発明の処理に用いることができる。この場合、処理に際しては、樹脂製多孔質保持体が溶解蒸散しつつ混合粉体がレーザー導光体の先端部に接触し付着する。
【0035】
<請求項11記載の発明>
前記混合粉体を樹脂と混合し成形してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【0036】
(作用効果)
ガラス粉を含むこと以外は、前述の従来技術と同様である。この場合、処理に際しては、成形体の樹脂成分が溶解蒸散しつつ混合粉体がレーザー導光体の先端部に接触し付着する。
【発明の効果】
【0037】
以上のとおり、本発明によれば、吸収性粉体の付着量および付着領域を簡易かつ確実に設定できる、付着物の剥落量が少なく耐久性に富むようになる、先端部分が使用に耐えなくなった場合に、医療現場で簡易に先端部処理が可能となる等の利点を損ねずに、付着物の付着量および形状をより広範に制御できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
前述のとおり、本発明は特定の処理材を用いてレーザー導光体の先端部を処理するものであり、その処理材は、レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体、あるいは更にガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉を含む混合粉体を含むものである。
【0039】
本発明のガラス粉としては、レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するものであれば特に限定されないが、例えばレーザー導光体が石英からなる光ファイバーの場合、ガラス粉としてはソーダ石灰ガラス粉、カリ石灰ガラス粉、ホウ酸クラウンガラス粉、ホウ酸フリントガラス粉等を用いることができる。ガラス粉の粒径は適宜定めれば良いが、通常の場合10nm〜500μmが好適である。
【0040】
また、本発明の吸収粉としては、レーザー光を吸収して熱エネルギーに変換し発熱するものであれば、特に限定されないが、ガラス粉よりも高い融点を有するものが好ましく、例えばカーボンブラック、グラファイト、MgO、Fe2 3、MnO2などを用いることができる。吸収粉の粒径は適宜定めれば良いが、通常の場合10nm〜1μmが好適である。
【0041】
また、本発明の拡散粉としては、ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有するものであれば特に限定されないが、例えば石英粉、アルミナ粉、ジルコニア粉、酸化チタン粉等を用いることができる。このような拡散粉を混入することにより、レーザー導光体の先端部から出射されるレーザー光が出射方向とは異なる方向に拡散され、全方向(前方、斜め前方、側方および斜め後方)に均一な光を照射することができるようになる。なお、吸収粉も、このような拡散性を有しないわけではないが、光の吸収を伴うため、拡散性を向上させるには、このような拡散粉を用いるのが好ましい。拡散粉の粒径はレーザー光の波長以上であれば特に限定されず、通常の場合1μm〜500μmが好適である。
【0042】
混合粉体における各粉体の配合は、使用する粉体の種類に応じて適宜定めることができるが、通常の場合、ガラス粉に対して吸収粉を1重量%以上混合するのが好ましい。また、拡散粉を用いる場合、ガラス粉に対して拡散粉を5重量%以上混合するのが好ましい。
【0043】
本発明の処理材は、上記混合粉体を含み、且つ本発明の処理が実行できるものであれば特に限定されない。具体的には、混合粉体を粉体のままの形態で用いる他、混合粉体を水等の適宜の液体、特にカルボキシメチルセルロース水溶液等のように粘性を有する液体に分散させた分散液の形態で用いたり、混合粉体を水等の媒体中に分散した後に乾燥させる、または混合粉体を突き固める等により固形化したケーキの形態で用いたり、ウレタン、EVA、シリコンゴム、NBRゴム、SBRゴム等の樹脂バインダーと混合し成形した成形体の形態で用いたりすることができる。特に、上記混合粉体を、EVA、アクリル、PVA、各種ゴム等からなる樹脂製多孔質保持体の孔中に保持させた形態で用いると、混合粉体が零れ落ちたりし難く、かつ混合粉が保持体全体にわたり均一に保持されるため好ましい。
【0044】
一方、本発明のレーザー導光体としては、光ファイバーの他、いわゆるコンタクトプローブなども対象とすることができる。通常、光ファイバーは保護シースにより被覆されているため、図1に示すように、光ファイバーの先端部の保護シース1Aをストリッパー等により除去し、クラッド1Bを露出させた後、本発明の処理を行う。この状態で、光ファイバーの先端部を滅菌または消毒することができる。また、クラッド1Bは本発明の処理により蒸散する。
【0045】
処理に際しては、図1に示すように、レーザー導光体1の先端を処理材20に接触させる。処理材20が液体以外の場合、レーザー導光体1が曲がらない程度に押し付けて接触状態を維持しながら、図示しないレーザー光発生装置からレーザー光をレーザー導光体1に導き、その先端面から出射させる。出射されたレーザー光Lは、処理材20中に含まれる吸収粉により吸収され、吸収粉は発熱される。この発熱によって処理材20中のガラス粉が溶融し、図2に示すように、レーザー導光体1の先端部の周囲に、吸収粉の混入したガラス溶融液部分21が形成される。この部分21は赤く発光するため目視で容易に確認できる。またこの際、処理材20が分散液の形態を有する場合には媒体が、また樹脂製多孔質保持体または樹脂成形体の形態を有する場合には樹脂が、処理に伴う発熱により蒸散する。
【0046】
この状態で、図3に示すように、レーザー導光体1を処理材20から離間すると、レーザー導光体1の先端部外面に吸収粉の混入した溶融ガラス11が付着する。付着したか否かは、レーザー導光体1の先端部外面が赤く発光するか否かで判断できる。しかる後、レーザー光の出射を停止することにより付着物11が冷却固化し、レーザー導光体1の先端部に、吸収粉混入ガラスからなる発熱部が形成される。
【0047】
上記処理に際して、ガイド管またはガイド溝等のガイド手段を処理材に対して所定の姿勢で固定設置し、レーザー導光体をこのガイド手段に沿って(すなわちガイド管内やガイド溝内を通じて)処理材に案内し接触させ、処理者の技能に関係なく一定レベル以上の処理が可能になるようにするのも好ましい形態である。このような装置は、先に述べた特許文献1に記載されている。
【0048】
また、上記処理に際して、付着物11の付着量・形状、すなわち先端部に形成される発熱部の大きさ・形状は、吸収粉の濃度、レーザー光の出力、およびレーザー光の出射時間の少なくとも一つにより制御することができる。この調整は適宜行うことができるが、吸収粉の濃度がガラス粉に対して5重量%以上とされ、レーザー光の出力が4W程度の場合、出射時間は3〜5秒程度が好適である。
【0049】
付着した溶融ガラス11が十分に粘性を有する場合、付着の後、レーザー導光体1の先端部を処理材20から離間した状態で、レーザー導光体1の先端部からレーザー光を出射させると、溶融状態の付着物の形状がそれ自身の表面張力により、柱状から楕球状を経て正球状に変化する。よって、所望の形状になるのと同時またはその直前に、レーザー出射を停止し、付着物11を冷却固化するだけで、付着物11の形状を調整することができる。この調整は、処理開始からレーザー光の出射を停止せずに連続的に行うこともできるが、必要に応じてレーザー光の出射を停止した後、改めて形状の調整のためにレーザー光を出射させることでも可能である。なお、付着した溶融ガラス11の粘度が低い場合には、球状になるまでに要する時間が短いため、調整は比較的困難になる。
【0050】
かくして、図3に示すように、先端に楕球状発熱部12を有するレーザー導光体10や、図4に示すように、先端に正球状発熱部13を有するレーザー導光体10を得ることができる。またこのように処理が簡単なため、例えば医療現場において一人の患者の治療が終了したならば、先端の使用済み部分を切断廃棄し、改めて、次の患者に対して使用する発熱部を形成するといったことも可能となる。
【0051】
冷却固化した付着物11、すなわち発熱部12,13の形状・サイズは適宜定めることができ、例えば円柱状に薄く付着させることもできるが、図3及び図4に示すように、正球状または楕球状をなすように付着させることができる。具体的には、冷却固化した付着物が、レーザー導光体1の先端から長さ3〜5mmの部分の全周にわたり、厚さ10μm以上設けられるようにするのが好ましい。また、正球状または楕球状をなすように付着させる場合、レーザー導光体1の先端部の直径方向の長さDがレーザー導光体1の先端部の直径dの1.2倍以上、特に1.5倍以上となるようにするのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、レーザー光により発熱する先端部を有する医療用レーザー治療装置に好適に使用できるものである。例えば、図5に示すように、レーザー導光体10を、歯3の根管3A内の底まで挿入した後、レーザー光を出射させると、そのレーザー光はその根管3Aの底側(根尖)に照射されるとともに、側方の全周にも照射されるので、レーザー導光体10をある長さ部分まで引き上げる過程において、レーザー光を照射させることにより、根管3Aの内壁部に対して殺菌を行うことができ、しかも、根管3Aの内壁部にレーザー導光体10がひっかかることなく円滑な治療を行うことができる。また、図6に示すように、レーザー導光体10を適宜のホルダー4により保持し、これらを組織5の表面に沿って側方(図中矢印方向)に移動させることによって、レーザー導光体10の側部で切開を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】処理の初期状況示す概略図である。
【図2】処理の中期状況を示す概略図である。
【図3】処理の後期状況を示す概略図である。
【図4】処理の後期状況を示す概略図である。
【図5】歯科における応用例を示す概略図である。
【図6】切開用途における使用例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1…レーザー導光体(光ファイバー)、1A…保護シース、1B…クラッド、3…歯、4…ホルダー、5…組織、10…処理済のレーザー導光体(光ファイバー)、11…付着物、12…楕球状発熱部、13…正球状発熱部、20…処理材、L…レーザー光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー導光体の先端部を処理する方法であって、
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体を用い、
レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させながら、レーザー導光体の先端部を混合粉体と接触させて、吸収粉の発熱によりガラス粉を溶融するとともに、吸収粉の混入した溶融ガラスを前記レーザー導光体の先端部外面に付着させ、この付着物を冷却固化することを特徴とするレーザー導光体の処理方法。
【請求項2】
レーザー導光体の先端部を処理する方法であって、
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉と、前記ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉とを含む混合粉体を用い、
レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させながら、レーザー導光体の先端部を混合粉体と接触させて、吸収粉の発熱によりガラス粉を溶融するとともに、吸収粉及び拡散粉の混入した溶融ガラスを前記レーザー導光体の先端部外面に付着させ、この付着物を冷却固化することを特徴とするレーザー導光体の処理方法。
【請求項3】
前記付着物の付着量を、吸収粉の濃度、レーザー光の出力、およびレーザー光の出射時間の少なくとも一つにより制御する請求項1または2記載のレーザー導光体の処理方法。
【請求項4】
前記付着の後、前記レーザー導光体の先端部を前記混合粉体から離間した状態で、前記レーザー導光体の先端部からレーザー光を出射させ、前記付着物の形状を調整する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレーザー導光体の処理方法。
【請求項5】
前記冷却固化した付着物が、レーザー導光体の先端から長さ3〜5mmの部分の全周にわたり、厚さ10μm以上設けられるようにする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザー導光体の処理方法。
【請求項6】
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉とを含む混合粉体である、ことを特徴とするレーザー導光体の処理材。
【請求項7】
レーザー導光体よりも融点が低く且つ光透過性を有するガラス粉と、レーザー光を吸収して発熱する吸収粉と、前記ガラス粉よりも融点が高く且つレーザー光を拡散する性質を有する拡散粉とを含む混合粉体である、ことを特徴とするレーザー導光体の処理材。
【請求項8】
前記混合粉体を媒体中に分散してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【請求項9】
前記混合粉体をケーキ化してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【請求項10】
前記混合粉体を樹脂製多孔質保持体の孔中に保持してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。
【請求項11】
前記混合粉体を樹脂と混合し成形してなる、請求項6または7記載のレーザー導光体の処理材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−61499(P2006−61499A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248919(P2004−248919)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(304042009)ナノオプテック有限会社 (6)
【Fターム(参考)】