説明

レーザー彫刻用凸版印刷原版及びそれから得られる凸版印刷版

【課題】 レーザー彫刻性能と印刷性能に優れた印刷原版を製造できるレーザー彫刻用印刷原版及びそれから得られる印刷版を提供する。
【解決手段】少なくとも共重合ポリアミド、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤を含む感光性樹脂凸版組成物から得られる感光性樹脂組成層を紫外線照射によって硬化させた後にレーザー光照射により画像形成して印刷版を形成するレーザー彫刻用凸版印刷原版において、該共重合ポリアミドが共重合ポリアミド中に6−ナイロン及び/又は66−ナイロンを55〜65重量%含有し、且つ数平均分子量400〜800のポリエチレングリコール構成成分を35〜45重量%含有することを特徴とするレーザー彫刻用凸版印刷原版である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化した後にレーザー光を照射してシート表面に凹凸を形成したレリーフの製造方法するレーザー彫刻用凸版印刷原版及びそれから得られる凸版印刷版に関
【背景技術】
【0002】
各種包装材やシール、ラベル印刷、他、多種の印刷に使用される凸版印刷版は、従来、感光性樹脂からなる印刷原版を像に従ってマスク層を介して露光して露光部の樹脂を光硬化させ、次いで非露光部の未光硬化樹脂を洗浄除去することにより製造されていたが、近年、印刷版製造の効率改善のため、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成するレーザー彫刻による印刷版が普及しつつある。レーザー彫刻による印刷版の製造工程では、レーザー光線を像に従って印刷原版に照射して照射部分の像形成材料を分解することにより版表面に凹凸が形成される。
【0003】
レーザー彫刻用の印刷原版としては、フレキソ版への技術応用が進んでおり、レーザー彫刻可能なフレキソ版原版、あるいはレーザー彫刻によって得られたフレキソ版が特許文献1及び2に開示されている。それらの文献には、バインダーとしてエラストマー性のゴムにモノマーを混合してフレキソ印刷原版を製造し、熱架橋又は光架橋により硬化させた後にレーザー彫刻を行い、フレキソ印刷版を得ている。しかし、これらは水性インキやエステルインキに適性のあるフレキソ印刷版であり、油性インキが主に用いられる樹脂凸版用途には適するものではない。
一方、凸版印刷に用いるレーザー彫刻用印刷原版としては、ポリビニルアルコール又は変成ポリビニルアルコールやポリエーテルポリアミドなどの可溶性高分子に光重合性化合物及び光重合開始剤を配合した樹脂組成物からなるものが特許文献3〜5に開示されている。
【0004】
しかしながら、凸版印刷に用いるレーザー彫刻用印刷原版としては、レーザー彫刻性と印刷性能との両者を満足できる印刷原版が得られていなかった。レーザー彫刻時の問題点としては、レーザー照射により生じた樹脂カスがレーザー照射中の吸引やレーザー照射後の洗浄でも除去されずに版に付着したまま残りやすいことが最大の課題であり、その樹脂カスが印刷版のレーザー非照射部分(凸部分)に付着した樹脂カスが印刷時にインクを受理して印刷不良を起こしやすくしていた。
上記樹脂カス付着の課題に対しては、シリカ微粉末などの無色透明の充填剤を配合する方法(特許文献6参照)により印刷原版の機械的特性を向上させ、結果として粘着性や微細部の溶融を減少させる技術が提案されている。しかしながら、シリカ微粉末などの充填剤を配合する方法は、印刷原版の粘着性を十分に低下させるためには多量の充填剤が必要となり、印刷原版の成型性や版物性を著しく損なうという問題があった。
このように、従来技術の充填剤添加方法では印刷原版の成型性や版物性に悪影響を与えるので、充填剤を添加せずに印刷原版の粘着性を低減でき且つ微細部形成性を向上したレーザー彫刻用原版が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2846954号公報
【特許文献2】特開平11−338139号公報
【特許文献3】特開平11−170718号公報
【特許文献4】特開2006−002061号公報
【特許文献5】特開2001−328365号公報
【特許文献6】特表2004−533343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を鑑みて、原画フィルムを必要とせず、また現像工程を必要としないで感光性樹脂組成物に凹凸のある像を形成したレリーフの製造方法、およびこのレリーフを用いた樹脂凸版用印刷版材を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる目的を達成するために好適な樹脂組成物の組成について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は(1)少なくとも共重合ポリアミド、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤を含む感光性樹脂凸版組成物から得られる感光性樹脂組成層を紫外線照射によって硬化させた後にレーザー光照射により画像形成して印刷版を形成するレーザー彫刻用凸版印刷原版において、該共重合ポリアミドが共重合ポリアミド中に6−ナイロン及び/又は66−ナイロンを55〜65重量%含有し、且つ数平均分子量400〜800のポリエチレングリコール構成成分を35〜45重量%含有することを特徴とするレーザー彫刻用凸版印刷原版、(2)共重合ポリアミドがポリエチレングリコールをエステル結合によって導入されたポリエーテルエステルアミドである(1)のレーザー彫刻用凸版印刷原版、(3)感光性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が感光性樹脂組成物1000質量グラム中に2.2モル以上3.7モル以下含有する(1)又は(2)のレーザー彫刻用凸版印刷原版、(4)該記エチレン性不飽和モノマーが少なくとも2個以上のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、且つ、感光性樹脂組成物中に20%〜42%含有する(1)〜(3)のいずれかのレーザー彫刻用凸版印刷原版である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凸版印刷に用いるレーザー彫刻用印刷原版を用いることにより、レーザー彫刻性能が向上することで、印刷性能が大幅に向上したレーザー彫刻用印刷原版を提供することが可能となるので産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
共重合ポリアミド以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の感光性樹脂組成物とは、300〜500nmの紫外線を照射することにより、光硬化する組成物のことであり、共重合ポリアミド、エチレン性不飽和モノマーと光重合開始剤を少なくとも含有するものである。
【0010】
まず、本発明の共重合ポリアミドについて説明する。
本発明に用いる共重合ポリアミドは、ソフトセグメントとしてポリエチレングリコールを含有するブロック共重合体であり、ハードセグメント中に水素結合の形成可能なアミド結合を形成する6ナイロン及び/又は66ナイロンを分子内に含有することで高い結晶性を有する。そのために感光性樹脂組成物としても30%以上の高い反発弾性率を有し、さらにレーザー彫刻時に発生した熱によって発生する熱変形を小さくすることが可能となる。その結果、本発明を用いたレーザー彫刻用印刷原版は従来の高反発弾性を有する印刷原版では得られなかった優れたレーザー彫刻性能を達成し、且つ早い印刷速度においても優れた印刷性を満足するものである。
【0011】
本発明に用いる共重合ポリアミドは、共重合ポリアミド中にハードセグメントとして6−ナイロン及び/又は66−ナイロンを50〜65重量%含有し、且つ数平均分子量400〜800のポリエチレングリコール構成成分を35〜50重量%含有するものである。好ましいハードセグメントの構成成分は、6ナイロン及び又は66ナイロンからなり、ハードセグメント中に66ナイロンを30〜45重量%含有することが好ましい。66ナイロンは結晶性に優れるためにハードセグメント中の含有率を高くしたいが、45重量%を越えると感光性樹脂層の柔軟性が低下するために好ましくない。又、ハードセグメント中の含有率が30重量%では優れた結晶性を有効に生かすことができないために好ましくない。
【0012】
本発明に用いる共重合ポリアミドは、印刷版として優れた高速印刷性を満足するために高反発弾性率を有することが重用である。好ましい反発弾性率としては、30%以上、さらに好ましい反発弾性率は40%以上である。反発弾性率が30%未満では100m/分以上の高速印刷時においてベタ部インキ乗りが悪いために好ましくない。
本発明には、30%以上の高反発弾性率を有する共重合ポリアミドを用いることが好ましく、ソフトセグメントとして数平均分子量が400〜800のポリエチレングリコールを用いることによって達成できる。特に好ましいポリエチレングリコールの数平均分子量は400〜600である。さらに可溶性合成高分子化合物中に含有するポリエチレングリコールの含有率が重要であり。好ましい含有率は30質量%〜45質量%であり、さらに好ましい含有率は40質量%〜45質量%である。
ソフトセグメント含有比率が40質量%未満ではソフトセグメントの役割を果たさず、又45質量%を超えるとハードセグメントの機能が発揮されずに十分なレーザー彫刻性能が得られなので、好ましくない。
【0013】
エチレン性不飽和モノマーとは、ラジカル重合により架橋可能な物質である。
本発明に用いる光重合性不飽和化合物としては、公知の光重合性不飽和化合物を用いることができる。好適に用いられる光重合性不飽和化合物としては、公知の二価又は三価アルコールのグリシジルエーテルとメタアクリル酸およびアクリル酸との開環付加反応生成物であり、前記多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フタル酸のエチレンオキサイド付加物、グリセリン、ビスフェノールA、トリメルロールプロパンやビスフェノールFのジグリシジルエーテルアクリル酸付加物などが挙げられるが、またこれらの化合物を2種類以上混合して使用することも出来る。なお、本発明においてはレーザー彫刻性の面よりグリセリンジメタクリレート、エチレングリコールジエポキシアクリレート、トリメルロールプロパントリエポキシアクリレートが好ましく、特にグリセリンジメタクリレートを用いることが好ましい。本発明に用いる光重合性不飽和化合物は単独でも良いが、光重合性不飽和基の含有量を特定の範囲とするために混合してもかまわない。
【0014】
光重合開始剤とは、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば特に限定されない。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などある。
【0015】
本発明は、感光性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が感光性樹脂組成物1000質量グラム中に2.2モル以上3.7モル以下含有することが重要であり、特に好ましい範囲としては2.6〜3.5である。(メタ)アクリロイル基の含有量が感光性樹脂組成物1000質量グラム中に2.2モル未満の場合はレーザー彫刻時のカス発生が多く、3.7モルを超える場合には樹脂硬度が硬くなりすぎて印刷版として性能を満足できない。
【0016】
本発明に用いる本発明に用いる共重合ポリアミドは、ソフトセグメントとしてポリエチレングリコールを35質量%〜50質量%含有するブロック共重合体であり、ハードセグメント中に6ナイロン又は66ナイロンに由来する水素結合の形成可能なアミド結合を分子内に含有することで高い結晶性を有する。そのために感光性樹脂組成物としても30%以上の高い反発弾性率を有し、さらに感光性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が感光性樹脂組成物1000質量グラム当り2.2モル以上3.7モル以下含有することで十分な光架橋され、レーザー彫刻時に発生した熱によって発生する熱変形を小さくすることが可能となる。その結果、本発明を用いたレーザー彫刻用印刷原版は従来の高反発弾性を有する印刷原版では得られなかった優れたレーザー彫刻性能を達成し、且つ早い印刷速度においても優れた印刷性を満足するものである。
本発明に用いるポリエーテル含有共重合ポリアミドの骨格構造としては、ポリエーテルエステルアミド又はポリエーテルアミドが考えられるが、ポリエーテルエステルアミドが好ましい。ポリエーテルエステルアミドはエチレン性不飽和モノマーとの相溶性の面よりポリエーテルエステルアミドが優れるために光硬化が均一に行われ、結果としてレーザー彫刻性も優れていると考えられる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、印刷用レリーフ版を得る場合の溶融成形法の他、例えは、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により目的の製品に応じた所望の形状物に成形できる。
【0018】
レーザー彫刻用印刷原版を得る場合はシート状に成形した成形物(生版)を公知の接着剤を介して、或いは、介さずに支持体に積層して使用することができる。支持体としてはスチール、アルミニウム等の金属支持体、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルム、金属蒸着したフィルムなど任意のものが使用できる。シート状成形物(生版)を支持体上に接着層を積層した積層体にして供給する場合にはシート状成形物(生版)に接して保護層がさらに積層される。保護層はフイルム状のプラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレートの125μm厚みのフイルムに粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を1〜3μmの厚みで塗布したものが用いられる。この薄い高分子の皮膜を有する保護層をシート状成形物(生版)に接することによって、シート状成形物(生版)の表面粘着性が強い場合であっても次の露光処理(光硬化)操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる
【0019】
本発明の光硬化とは凸版印刷用感光性樹脂組成物をシート状に成形・固形化した後に、このシート状成形物(生板)を表面より高さ5cmの距離から8mW/cmの紫外線露光機(光源:フィリップス社製10R)により表裏10分露光し、架橋硬化させるものである。なお、露光処理はカバーフィルムを通して処理しても良いし、カバーフィルム剥離後に処理しても良い。感光性樹脂を光硬化させる光源は特に限定されないが、通常300〜400nmの波長を照射できるものとして、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などが使用できる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物をシート状にして、光硬化したシートを得る方法としては、共重合ポリアミドをその樹脂を溶解できる溶剤に溶解した後に、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤を添加して充分攪拌し、感光性樹脂組成物溶液を得ることができる。この溶液から溶剤を除去した後に、接着剤を塗布した基板上に溶融押し出しし、シート状の感光性樹脂版を得る。そのシートに、300〜500nmの光を照射することで光硬化した感光性樹脂原版を得ることができる。基板としてはスチール、ステンレス、アルミニウムなどの金属やポリエステルなどのプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴムシートが使用される。
【0021】
感光層の厚みは、感光層の凸部にインキが受容し、それが被印刷体などに転写できる厚みがあれば特に限定されないが、0.2〜7mmの厚さに形成することが好ましい。
【0022】
かくして得られた印刷原版は、レーザー彫刻装置の版装着ドラムの表面に取り付けられ、像に従ったレーザー照射により照射部分の原版が分解されて凹部分を形成し、印刷版が製造される。
【0023】
光硬化して得られたレーザー彫刻用原版のシートに凹凸を形成する方法としては、レーザー光を発信する装置からレーザー光出力し、これをレンズにより集光させて、1μm〜5mmのスポットにして、シート上に照射し、シートを焼き飛ばすことによりシート上に凹凸を形成する方法である。レーザー発信機からの出力は、シートを焼き飛ばすエネルギーを有すれば特に限定られるものではないが、通常100W程度のものをレンズで集光し、シートを焼き飛ばすものである。
【0024】
レーザー光としては、特に光源を限定するものではないが、一般に次のようなものを使用することができる。エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、イオンレーザー、ヘリウム−ネオンレーザー、半導体レーザー、YAGレーザーなどを挙げることができる。この中でも、炭酸ガスレーザーが好ましく使用される。
【0025】
レーザー光は、コンピューターからなるコントロールユニットによりレーザー光のオン−オフを制御し、シート上にレーザー光の当たる部分と当たらない部分を作ることにより、凹凸を形成することができる。
【0026】
本発明におけるレリーフの製造装置は、上述した感光性樹脂を300〜500nmの光で光硬化させるユニットおよび光硬化させた感光性樹脂にレーザー光を照射して凹凸を形成するユニットから構成される。
【0027】
このようにして形成できた凹凸を有する感光性樹脂版は、通常の印刷機に印刷版材を装着する印刷版材として使用することができる。
【実施例】
【0028】
次に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ショアーD硬さ及び反発弾性率は感光性樹脂をシート状成形物に成型して光硬化した後に、以下の方法により測定した。なお、測定用サンプルは 250μのポリエステル支持体上に3mmの感光性樹脂層を設けて感光性樹脂層表面に125μのポリエステルフィルムを積層した感光性樹脂積層体を使って、感光性樹脂積層体の表面から25W/m2のケミカルランプを用いて感光性樹脂表面より高さ5cmの距離から10分間露光し、光硬化させた。このサンプルを20℃、相対湿度65%の条件で24時間保存してサンプルを調整した。
(1)ショアーD硬さ :西独ツビック社製、ショアー式デュロメーター(ショアーDタイプ)を用いて25℃で測定した。
(2)反発弾性率 :直径10mm(重さ4.16グラム)の鋼球製ボールを20cmの高さより落下させ、跳ね返る高さ(a)を読み取り、(a/20)×100%表示とした。測定は、25℃、70%RHの条件で行った。
(3)樹脂カス除去性評価
樹脂カス除去性の評価として、レーザー彫刻した後に印刷版表面に付着した樹脂カスを用いて除去のし易さを評価した。直径160μmのポリエチレンテレフタレート製の植え込みした10cm×10cmのブラシを用いてその除去し易さを以下の通りに評価した。
○:10回以内の擦り作業で除去可能、△:30回以内の擦り作業で除去可能、
×:30回以上の擦り作業でも除去できず、ブラシにも樹脂が付着。
【0029】
合成例1
〔ポリエーテルエステルアミドの合成〕
εカプロラクタム200重量部(縮合後200重量部)、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩347質量部(縮合後300重量部)、数平均分子量600のポリ(プロピレンオキシド)グリコールと等モルのアジピン酸混合物525質量部(縮合後500重量部)の組成比率で公知の処方(例えば特開昭55−79437号公報)に基づいて共重合ポリアミドを合成した。得られたポリマーはポリエーテル成分を40.6重量%含有するポリエーテルエステルアミドであり、オルトクロロフェノール中25℃、0.5%濃度で測定した相対粘度は1.7であった。
合成例2
〔ポリエーテルエステルアミドの合成〕
合成例1と同様にして、縮合した後の構成成分比率が6−ナイロン成分23重量%、66ナイロン成分25重量%、ポリエーテル成分を37.8重量%含有するポリエーテルエステルアミドを得た。得られたポリマーはオルトクロロフェノール中25℃、0.5%濃度で測定した相対粘度は1.6であった。
合成例3
〔ポリエーテルアミドの合成〕
数平均分子量600のポリオキシエチレンの両末端にアクリロニトリルを付加し、これを水素還元して得たα,ω−ジアミノポリオキシエチレンとアジピン酸の等モル塩55重量部、ε−カプロラクタム25重量部およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の塩20重量部を通常の条件で重合してポリエーテルアミドを得た。得られたポリマーの相対粘度(ポリマー1gを抱水クロラール100mlに溶解し、25℃で測定した粘度)は2.50であった。
【0030】
実施例1
合成例1で合成したポリエーテルエステルアミド60重量部をエタノール/水=60/40(重量比)の混合溶媒150重量部に80℃で加温溶解した。さらに、グリセリンジメタクリレート30.9部、エチレングリコールジエポキシアクリレート5部、可塑剤としてN−エチルトルエンスルホン酸アミド3質量部、ハイドロキノンモノエチルエーテル0.1部、ベンジルジメチルケタール1.0部を加え、感光性樹脂組成物溶液を得た。得られた感光性樹脂組成物は、1000グラム中に光重合性基を3.0モル含有していた。
この溶液をテフロン(登録商標)コートしたシャーレに流延し、暗室にてメタノールを除去後、更に一昼夜40℃で減圧乾燥し厚み800μmの感光性組成物のシートを得た。
【0031】
次に、得られた組成物シートを厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリエステル系接着層をコーティングしたフィルムと、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで挟み、ヒートプレス機で100℃、100kg/cm2の圧力で加圧することにより、厚さ1.05mmのシート状成形物を得た。
次に、このシート状成形物を紫外線露光機(光源:フィリップス社製10R)により表面より高さ5cmの距離から8mW/cmの紫外線露光機(光源:フィリップス社製10R)により表裏10分露光し、架橋硬化させた後、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、レーザー彫刻用印刷原版を作製した。
【0032】
実施例2〜5
表1の通りにポリエーテルエステルアミドを用いた感光性樹脂組成物1000g中の光重合性基の総モル数を変更し、実施例1と同様にしてレーザー彫刻用印刷原版を作製した。
【0033】
実施例6〜7
表1の通りにポリエーテルアミドを用いた感光性樹脂組成物であり、実施例1と同様にしてレーザー彫刻用印刷原版を作製した。
【0034】
比較例1及び比較例2
比較例1及び比較例2は感光性樹脂組成物1000g中に含有する光重合性基の総モル数が請求項3の数値範囲外のモル数を含有する感光性樹脂組成物であり、実施例1と同様にしてレーザー彫刻用印刷原版を作製した。
【0035】
次に得られたレーザー彫刻用印刷原版のレーザー彫刻性能評価について説明する。
レーザー彫刻装置はLuescher Flexo社製の300W炭酸ガスレーザーを搭載したFlexPose!directを用いた。本装置の仕様はレーザー波長10.6μm、ビーム直径30μm、版装着ドラム直径は300mm、加工速度は1.5時間/0.5m2であった。レーザー彫刻の条件は、以下のとおりである。なお、(1)〜(3)は装置固有の条件である。(4)〜(7)は任意に条件設定が可能であり、それぞれの条件は本装置の標準条件を採用した。
解像度:2540dpi
(1)解像度:2540dpi
(2)レーザーピッチ:10μm
(3)ドラム回転数:982cm/秒
(4)トップパワー:9%
(5)ボトムパワー:100%
(6)ショルダー幅:0.30mm
(7)評価画像:150lpi、0〜100%まで1%刻みの網点、直径100μ〜600μの独立点について画像形成し、評価した。
【0036】
得られた印刷版について以下の評価項目を評価した。
(1)印刷版表面への樹脂カスの付着具合
10倍の拡大ルーペを使用して、印刷表面への樹脂カスの付着具合を目視により検査し、◎:ほとんど付着なし、○:少し付着有り、△:かなり付着有り、×:付着激しい、の4段階で示した。
(2)レリーフ縁部エッジ丸み
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(キーエンス社製VK−9510)を使用して、直径200μの独立点を拡大し、頂部レリーフの縁部エッジ丸みの判定を行った。縁部エッジに丸みが発生すると印刷物が不明瞭となるために、丸みが発生しないことが必要である。
◎:エッジがシャープで丸み全く発生なし。
○:僅かにエッジに丸みが発生。
△:エッジに少し丸みが発生し。
×:エッジに激しい丸みが発生し、エッジが不鮮明。
(3)150lpi最小網点再現性
10倍の拡大ルーペを使用して、150lpi最小網点再現性を測定した。
(4)高速印刷時の印刷性
レタープレス印刷機としてシール印刷用輪転印刷機を使って100m/分の速度でUVインキを用いて1000部の印刷を実施し、ハイライト印刷性及びベタインキ乗りを判定した。
〔ハイライト印刷性〕
○:150lpiの3%ハイライトでムラなく鮮明に印刷できる。
△:150lpiの3%ハイライトでわずかに濃度ムラが有る。
×:150lpiの3%ハイライトで濃度ムラが有る。
〔ベタ部インキ乗り〕
○:ベタ部のインキ乗りにムラがなく印刷できる。
△:ベタ部のインキ乗りにわずかに濃度ムラが有る。
×:ベタ部のインキ乗りに濃度ムラが有る。
評価結果を以下の表1及び表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
ポリエーテルエステルアミドを用いた実施例1〜5は表1の通りに感光性樹脂組成物1000gの光重合性基の総モル数が2.2モル以上3.7モル以下含有する範囲で特に優れたレーザー彫刻性であることが分かる。
又、実施例6〜7はポリエーテルアミドを用いた感光性樹脂組成物であり、優れたレーザー彫刻性であることが分かる。
一方、比較例1〜3では組成1000g中の光重合性基の総モル数が請求項3の範囲外であり、レーザー彫刻性及び印刷性の両者を満足できていないことは明らかである。
以上の結果から、本発明の樹脂組成物及びそれより得られた印刷原版を使用すればレーザー彫刻性に優れ、しかも印刷性に優れた凸版用印刷版を製造することができることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の樹脂組成物は、印刷版作製の際のレーザー照射時の版表面への樹脂カス付着が少なく且つレリーフエッジの丸み発生が殆どないので、レーザー彫刻性と高速印刷性能との両者を満足できるレーザー彫刻用印刷原版を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも共重合ポリアミド、エチレン性不飽和モノマー、光重合開始剤を含む感光性樹脂凸版組成物から得られる感光性樹脂組成層を紫外線照射によって硬化させた後にレーザー光照射により画像形成して印刷版を形成するレーザー彫刻用凸版印刷原版において、該共重合ポリアミドが共重合ポリアミド中に6−ナイロン及び/又は66−ナイロンを55〜65重量%含有し、且つ数平均分子量400〜800のポリエチレングリコール構成成分を35〜45重量%含有することを特徴とするレーザー彫刻用凸版印刷原版。
【請求項2】
共重合ポリアミドがポリエチレングリコールをエステル結合によって導入されたポリエーテルエステルアミドである請求項1に記載のレーザー彫刻用凸版印刷原版。
【請求項3】
感光性樹脂組成物中の(メタ)アクリロイル基の含有量が感光性樹脂組成物1000質量グラム中に2.2モル以上3.7モル以下含有する請求項1又は請求項2に記載のレーザー彫刻用凸版印刷原版。
【請求項4】
該記エチレン性不飽和モノマーが分子中に2個又は3個のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有し、且つ、感光性樹脂組成物中に25%〜42%含有する請求項1〜3のいずれかに記載のレーザー彫刻用凸版印刷原版。

【公開番号】特開2011−5814(P2011−5814A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153560(P2009−153560)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】