説明

レーザー溶着用樹脂組成物及び複合成形体

【課題】 広範囲の樹脂の組合せに適用可能であり、レーザー照射により接合された複合成形体において、接合強度を改善する。
【解決手段】 第1の熱可塑性樹脂又は第1の熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、第2の熱可塑性樹脂を含む第2の熱可塑性樹脂組成物で構成された第2の樹脂成形体とをレーザー照射により接合する方法において、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂組成物のうち、少なくとも第2の熱可塑性樹脂組成物に、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂の双方に対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体同士の接合強度を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光の照射による溶着を利用して、被接合体である樹脂成形体に接合させるためのレーザー溶着用樹脂組成物、及び接合された複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂部材同士を接合させる方法には、接着剤や粘着剤を介して樹脂部材を接着する方法が知られているが、リサイクル性や作業工程の短縮などの点から樹脂部材同士を直接接合させる溶着による接合方法が着目されている。溶着による接合のうち、特にレーザー光照射を利用するレーザー溶着方法は、熱溶着や超音波溶着に比べて、熱や振動の影響を受けにくく、樹脂成形品の形状に大きく依存することなく効率よく接合可能であるという利点がある。
【0003】
一方、樹脂部材を溶着により接合させる場合、接合させる樹脂部材を構成する樹脂同士の相溶性が高いと、効率よく樹脂部材を接合可能であるものの、樹脂同士の相溶性が低い場合には、十分な接合強度が得られない。このような相溶性の点に加え、レーザー溶着では、透過側の樹脂部材はレーザー光に対して高い透明性が求められる点からも接合させる樹脂の組合せが限定される。
【0004】
そこで、特開2002−18961号公報(特許文献1)には、レーザー溶着を利用して、第1の樹脂材料よりなる第1樹脂部材と第2の樹脂材料よりなる第2樹脂部材とを一体的に接合する樹脂成形品の接合方法において、前記第1の樹脂部材と第2の樹脂部材との間に、前記第1の樹脂材料と第2の樹脂材料とよりなるアロイ樹脂材を介在させ、レーザー光照射により、少なくとも第1樹脂部材とアロイ樹脂部材との第1当接界面及び第2樹脂部材とアロイ樹脂材との第2当接界面を加熱溶融させることが開示されている。しかし、この方法では、アロイ材フィルムを作製したり、アロイ材フィルムを樹脂部材間に挟み込むなどの工程が増え、コスト的に不利である。また、複雑な形状の樹脂部材同士を接合させる場合には、適用するのが困難である。
【特許文献1】特開2002−18961号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、レーザー光照射により、樹脂成形体を被接合体(樹脂成形体)に対して強固に接合可能な樹脂組成物、この樹脂組成物と被接合側の樹脂組成物との組合せ、及び前記樹脂組成物で構成された樹脂成形体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、広範囲の樹脂の組合せに適用可能であり、接合性を改善可能な樹脂組成物、樹脂成形体及び組合せ、接合強度の改善方法、並びにそのために使用する相溶化剤の使用方法を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、高い接合強度で一体化された複合成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、接合させる樹脂成形体のうち、少なくとも一方に相溶化剤を含有させると、広範囲の樹脂の組合せに適用可能であり、レーザー光照射により、高い接合強度で接合(又は一体化)できることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)で構成された第1の樹脂成形体に対して、レーザー照射により接合可能な第2の樹脂成形体を構成するための樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)と、この熱可塑性樹脂及び前記第1の樹脂成形体を構成するための熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)に対する相溶化剤とで構成されている。前記第2の樹脂成形体を構成する第2の熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種であってもよく、第1の樹脂成形体を構成する第1の熱可塑性樹脂と同系統又は異系統であってもよい。レーザー溶着用樹脂組成物は、相溶化剤を含み、複数の熱可塑性樹脂で構成されたポリマーアロイであってもよい。前記相溶化剤は、エポキシ基含有ポリマー(エポキシ基含有スチレン系共重合体、エポキシ基含有オレフィン系共重合体など)、酸変性ポリマー(酸変性スチレン系共重合体、酸変性オレフィン系共重合体など)から選択された少なくとも一種であってもよく、スチレン系ブロック共重合体であってもよい。前記樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂と相溶化剤との割合(重量比)は、熱可塑性樹脂/相溶化剤=40/60〜99/1程度であってもよい。
【0010】
前記樹脂組成物において、第2の熱可塑性樹脂(I)と、相溶化剤(II)との組み合わせは、下記(a1)、(a2)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)又は(d2)の組み合わせであってもよい。
【0011】
(a1)ポリアミド系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(a2)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリアミド系樹脂と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b1)オレフィン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b2)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂と、(II)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c1)スチレン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c2)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)スチレン系樹脂と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(d1)環状オレフィン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマーとの組み合わせ
(d2)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)環状オレフィン系樹脂と、(II)酸変性ポリマーとの組み合わせ。
【0012】
また、第2の樹脂成形体を構成する第2の樹脂組成物は、複数の熱可塑性樹脂と、相溶化剤とで構成してもよい。前記複数の熱可塑性樹脂と、前記相溶化剤との組み合わせは、例えば、下記(a)、(b)、(c)、又は(d)の組み合わせであってもよく、前記第2の樹脂成形体は、前記複数の熱可塑性樹脂の少なくとも一種を含む第1の樹脂成形体に対して接合可能であってもよい。
【0013】
(a)(i)ポリアミド系樹脂と、(ii)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b)(i)オレフィン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c)(i)スチレン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(d)(i)環状オレフィン系樹脂と、(ii)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマーとの組み合わせ。
【0014】
上記(a)〜(d)の組み合わせにおいて、樹脂(i)と樹脂(ii)との割合(重量比)は、1/99〜99/1程度であってもよく、樹脂(i)及び樹脂(ii)の総量と相溶化剤(iii)との割合(重量比)は、40/60〜99/1程度であってもよい。
【0015】
本発明には、前記レーザー溶着用組成物で形成された樹脂成形体、及び熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)で構成された前記第1の樹脂成形体と、前記第2の樹脂成形体とがレーザー照射により接合されている複合成形体も含まれる。
【0016】
また、本発明には、レーザー照射により互いに接合可能であり、熱可塑性樹脂(第1の熱可塑性樹脂)又は第1の熱可塑性樹脂を含む第1の熱可塑性樹脂組成物で構成された前記第1の樹脂成形体と、熱可塑性樹脂(第2の熱可塑性樹脂)を含む第2の熱可塑性樹脂組成物で構成された前記第2の樹脂成形体との組合せであって、前記第1及び第2の樹脂組成物のうち、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂組成物が、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂の双方に対する相溶化剤(又は第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とを相溶化させる相溶化剤)を含有する組合せも含まれる。
【0017】
本発明の改善方法では、前記第1の樹脂成形体と、前記第2の樹脂成形体とをレーザー照射により接合する方法であって(又は接合する方法において)、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂(又はその組成物)のうち、少なくともいずれか一方(例えば、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂又はその組成物)に、前記第1及び第2の樹脂成形体を構成する双方の熱可塑性樹脂に対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体同士の接合強度を改善する。本発明の改善方法では、通常、前記レーザー溶着用樹脂組成物を用いて、成形体同士の接合強度を改善する。
【0018】
さらに、本発明には、前記複合成形体において、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂(又はその組成物)のうち、少なくともいずれか一方(例えば、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂又はその組成物)に、前記第1及び第2の樹脂成形体を構成する双方の熱可塑性樹脂の双方に対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体同士の接合強度を改善するための相溶化剤の使用方法も含まれる。
【0019】
なお、本明細書において、熱可塑性樹脂とは、「熱可塑性樹脂組成物」を含む意味に用いる場合がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、レーザー溶着用の樹脂組成物を、熱可塑性樹脂と相溶化剤とで構成するので、レーザー光照射により、前記樹脂組成物で構成された樹脂成形体を被接合体に強固に接合可能であるとともに、高い接合強度で一体化された複合成形体を得ることができる。また、接合させる樹脂成形体のうち、少なくとも一方を構成する熱可塑性樹脂組成物に相溶化剤を含有させるので、広範囲の樹脂の組合せに適用可能であり(広範囲の樹脂の組合せを用いてレーザー溶着に適した樹脂組成物を構成することができ)、接合性(接合強度)を大きく改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[レーザー溶着用樹脂組成物]
本発明のレーザー溶着用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂で構成され、かつ相溶化剤を含有していてもよい第1の樹脂成形体に、レーザー照射により接合させるための第2の樹脂成形体を構成する樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂と、この熱可塑性樹脂及び前記第1の樹脂成形体を構成する前記熱可塑性樹脂の双方に対する相溶化剤とで構成されている。なお、前記第1の樹脂組成物が相溶化剤を含有する場合、第1の樹脂成形体を構成する第1の樹脂組成物は本願発明のレーザー溶着用樹脂組成物に該当する。レーザー溶着用樹脂組成物は、レーザー光を透過する側の樹脂成形体(以下、単に、レーザー光透過部材又は透過部材と称する場合がある)に用いてもよく、レーザー光を吸収する側の樹脂成形体(以下、単に、レーザー光吸収部材又は吸収部材と称する場合がある)に用いてもよい。
【0022】
(熱可塑性樹脂)
第2の樹脂成形体(又は第1の樹脂成形体)を構成する熱可塑性樹脂としては、特に制限されず、レーザー溶着により被接合体(又は相手材)である樹脂成形品に対して接合(又は貼付)可能であればよく、種々の熱可塑性樹脂が使用できる。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂(ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド系樹脂;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド系樹脂;脂環族ポリアミド系樹脂など)、熱可塑性ポリエステル系樹脂(ポリC2-4アルキレンテレフタレート、ポリC2-4アルキレンナフタレート、これらのコポリエステル、ポリアリレート、液晶性ポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなどのビスフェノール型ポリカーボネート、水添ビスフェノール型ポリカーボネートなど)、オレフィン系樹脂{ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなども含む)、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンゴムなどのオレフィンの単独又は共重合体(エラストマーも含む)、環状オレフィン系樹脂など}、スチレン系樹脂[ポリスチレン(GPPSなど)、スチレン−アクリル系共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)など)、スチレン−ジエン又はオレフィン系共重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体など)、ゴム含有スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(ABS樹脂)、AXS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリロニトリル/エチレン−プロピレンゴム/スチレン樹脂(AES樹脂)など)、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂(MS樹脂)など)など]、アクリル系樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリアクリロニトリルなど)、ビニル系樹脂(塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリフェニレンオキシド系樹脂[ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンとのブレンド、ポリスチレンがグラフトしたポリフェニレンオキシドなど)など]などが挙げられる。
【0024】
樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であってもよく、非結晶性樹脂であってもよい。
【0025】
前記熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂[特にポリアミド系樹脂(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド系樹脂など)、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン(鎖状オレフィン)の単独又は共重合体、環状オレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂(ABS樹脂などのゴム含有スチレン系樹脂など)など]などが好ましい。
【0026】
前記熱可塑性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。複数の樹脂を組み合わせて用いる場合、樹脂の組合せは、レーザー溶着性や成形性を損なわない限り、被接合体(又は被着体)を構成する樹脂の種類に応じて、同系統又は異系統の樹脂の組み合わせであってもよく、同一又は異なる樹脂の組合せであってもよい。レーザー溶着用樹脂組成物は、前記相溶化剤(第1の相溶化剤)又は別途添加した相溶化剤(第2の相溶化剤)により複数の熱可塑性樹脂のポリマーアロイを形成していてもよい。
【0027】
(相溶化剤)
第2の樹脂組成物(又は第1の樹脂組成物)、又は前記ポリマーアロイに含まれる第1又は第2の相溶化剤としては、第1及び第2の樹脂組成物(又は前記ポリマーアロイ)を構成するそれぞれの樹脂のユニット(鎖又はセグメント)に対して共通、類似又は関連するユニット(鎖又はセグメント)を併せ持つブロック共重合体又はグラフト共重合体(非反応性型相溶化剤)、前記それぞれの樹脂のうち、少なくとも一方に対して反応性(又は高い親和性)を有する基(反応性基)を含むポリマー(例えば、グラフト共重合体など)(反応性型相溶化剤)などが挙げられる。相溶化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
非反応性型相溶化剤(非反応型相溶化剤)は、第1および第2の樹脂組成物を構成する樹脂の組合せに応じて適宜選択できる。例えば、樹脂の組合せがポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)とポリスチレン系樹脂との組合せである場合、前記非反応性型相溶化剤としては、スチレン系共重合体、例えば、スチレン−ジエン系ブロック共重合体[例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB樹脂)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)など]及びその水添物[例えば、水素化(スチレン−ブタジエン)ブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS樹脂)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体など]などのスチレン系ブロック共重合体の他;ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンにポリスチレンがグラフトしたスチレン系グラフト共重合体などが挙げられる。
【0029】
前記反応性型相溶化剤(反応型相溶化剤)としては、酸基(酸無水物基、カルボキシル基など)を有するポリマー(酸変性ポリマー)、エポキシ基含有ポリマー、オキサゾリン基含有ポリマー(オキサゾリン基含有ポリスチレンなど)などが挙げられる。
【0030】
酸変性ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸又はその無水物を共重合成分として用いた共重合体、例えば、酸変性オレフィン系共重合体[例えば、酸変性(特に、無水マレイン酸変性)ポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレンに無水マレイン酸がグラフトしたグラフト共重合体など)、酸変性(特に、無水マレイン酸変性)ポリオレフィン系エラストマー(例えば、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴムなど)など]、酸変性スチレン系共重合体{酸変性ポリスチレン((メタ)アクリル酸変性ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸ランダム共重合体など)、酸変性アクリロニトリル/スチレン共重合体(酸変性AS樹脂)、酸変性アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(酸変性ABS樹脂)(例えば、メタクリル酸変性ABS樹脂など)、酸変性スチレン/ブタジエン共重合体(無水マレイン酸変性水素化スチレン/ブタジエンゴムなど)、酸変性ポリスチレン系エラストマー[例えば、酸変性スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(酸変性SBS)、酸変性スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(酸変性SIS)、酸変性スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体(又は酸変性水素化スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、酸変性SEBS)、酸変性スチレン/エチレン・プロピレン/スチレンブロック共重合体(又は酸変性水素化スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、酸変性SEPS)、酸変性水添SEBSなど]など}が挙げられる。酸変性ポリマーにおける不飽和カルボン酸成分の割合(変性割合)は、ポリマー全体に対して、例えば、0.1〜35重量%、好ましくは0.2〜25重量%、さらに好ましくは0.5〜20重量%程度であってもよい。
【0031】
エポキシ基含有ポリマーとしては、エポキシ基やグリシジル基を有する単量体(例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸グリシジルエステルなどのα,β−不飽和カルボン酸のグリシジルエステルなど)を共重合成分として用いた共重合体[オレフィン−グリシジル(メタ)アクリレート系共重合体(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体など)などのエポキシ基含有オレフィン系共重合体;スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ基含有スチレン系共重合体など]、重合体の不飽和基をエポキシ化した重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体のエポキシ化物(エポキシ化SBS樹脂)などのエポキシ基含有スチレン系共重合体など)などが挙げられる。なお、エポキシ基やグリシジル基を有する単量体を共重合成分として含む共重合体において、エポキシ又はグリシジル基を有する単量体の割合は、特に制限されず、例えば、0.1〜25重量%、好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%程度であってもよい。また、エポキシ化重合体におけるエポキシ化の割合は、重合体の不飽和基の割合やエポキシ化の程度により調整することができ、例えば、重合体全体に対して、0.1〜30モル%、好ましくは0.2〜20モル%、さらに好ましくは0.5〜10モル%程度であってもよい。
【0032】
なお、これらの相溶化剤は、熱可塑性樹脂(例えば、前記例示の熱可塑性樹脂など)を含むマスターバッチとして用いてもよい。
【0033】
(熱可塑性樹脂及び相溶化剤の組合せ)
吸収部材及び透過部材を構成する熱可塑性樹脂及び相溶化剤(並びに前記ポリマーアロイを構成する熱可塑性樹脂及び相溶化剤)は、前記例示の熱可塑性樹脂及び相溶化剤から適宜選択して組み合わせることができる。熱可塑性樹脂の組合せ、及びこの熱可塑性樹脂の組合せと、相溶化剤との組合せとしては、例えば、以下の例が挙げられる。
【0034】
(a)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)ポリアミド系樹脂(ポリアミド5,ポリアミド6,ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド系樹脂や芳香族ポリアミド系樹脂;これらのポリアミド系樹脂と他の樹脂とのブレンド(例えば、ABS樹脂などのスチレン系樹脂とのブレンド、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂とのブレンドなど)と、(ii)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種との組み合わせであり、相溶化剤が、酸変性ポリマー(酸変性オレフィン系又はスチレン系共重合体など)及びエポキシ基含有ポリマー(エポキシ基含有スチレン系又はオレフィン系共重合体など)から選択された少なくとも一種である。
【0035】
なお、前記樹脂(ii)において、オレフィン系樹脂としては、オレフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのオレフィン系単量体の単独又は共重合体;エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体などのオレフィン−(メタ)アクリレート系共重合体など);前記オレフィン系ポリマーと、スチレン系樹脂(ABS樹脂などのゴム含有スチレン系樹脂など)及び/又はポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂など)とのブレンドなどが挙げられる。また、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ABS樹脂[ABS樹脂とアクリロニトリル/エチレン−プロピレンゴム/スチレン樹脂(AES樹脂)などのAXS樹脂とのブレンドも含む]、SBS樹脂などの他;これらのスチレン系樹脂と他の樹脂とのブレンド[例えば、オレフィン系樹脂(前記オレフィン系ポリマーなど)、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート又はC2-4アルキレンテレフタレート単位を有するコポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミドなど)、及び/又はポリカーボネート系樹脂などとのブレンドなど)など]などが挙げられる。樹脂(ii)のうち、ポリフェニレンオキシド系樹脂としては、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド(ポリスチレンをブレンド又はグラフトしたポリフェニレンオキシドなど)などが挙げられる。
【0036】
上記の樹脂及び相溶化剤の組合せのうち、好ましくは下記の(a-1)又は(a-2)の組合せ:
(a-1)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)ポリアミド系樹脂と、(ii)オレフィン系樹脂との組合せであり、相溶化剤が、酸変性オレフィン系共重合体(無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性オレフィン系エラストマーなど)である
(a-2)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)ポリアミド系樹脂と、(ii)スチレン系樹脂及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、酸変性スチレン系共重合体(変性ポリスチレン、酸変性ABS樹脂など)、及び酸変性オレフィン系共重合体(酸変性ポリオレフィンなど)から選択された少なくとも一種である。
【0037】
(b)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)オレフィン系樹脂(前記(a)の項で例示のオレフィン系樹脂など)と、(ii)ポリエステル系樹脂(PBTなどのポリC2-4アルキレンテレフタレート又はC2-4アルキレンテレフタレート単位を有するコポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(前記例示のポリカーボネート系樹脂)及びスチレン系樹脂(前記(a)の項で例示のスチレン系樹脂など)から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、非反応型相溶化剤(スチレン系ブロック共重合体、スチレン系グラフト共重合体などのスチレン系共重合体など)、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種である
上記組合せのうち、好ましくは下記の(b-1)又は(b-2)の組合せ:
(b-1)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)オレフィン系樹脂、(ii)スチレン系樹脂との組合せであり、相溶化剤が、SBS樹脂、エポキシ化SBS樹脂、SIS樹脂、SPS樹脂などのスチレン系ブロックポリマーから選択された少なくとも一種である
(b-2)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)オレフィン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、エポキシ基含有オレフィン系共重合体((a-1)の項で例示の共重合体)である。
【0038】
(c)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)スチレン系樹脂(前記(a)の項で例示のスチレン系樹脂など)と、(ii)ポリエステル系樹脂(PBTなどのポリC2-4アルキレンテレフタレート又はC2-4アルキレンテレフタレート単位を有するコポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂(前記例示のポリカーボネート系樹脂)及び(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種である
好ましくは(c-1)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)スチレン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂及びポリカーボネート系樹脂から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、エポキシ基含有スチレン系共重合体及びエポキシ基含有オレフィン系共重合体(前記例示の共重合体)から選択された少なくとも一種である。
【0039】
(d)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)環状オレフィン系樹脂[環状オレフィン系樹脂単独;環状オレフィン系樹脂と他の樹脂とのブレンド(例えば、環状オレフィン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのブレンド、環状オレフィン系樹脂とポリアミド系樹脂(例えば、ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド系樹脂)とのブレンドなど)など]と、(ii)オレフィン系樹脂(特に、環状オレフィン系樹脂)、およびポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種との組合せであり、相溶化剤が、酸変性ポリマー(酸変性オレフィン系共重合体、酸変性スチレン系共重合体など)である。
【0040】
なお、前記組合せ(d)において、環状オレフィン系樹脂としては、例えば、環式オレフィン(又は環状オレフィン)の単独又は共重合体、環式オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体などが挙げられる。前記環式オレフィンとしては、例えば、C4-10シクロアルケン又はアルカジエン(シクロペンタジエンなど)などの単環式オレフィン類;二環式オレフィン類{C4-20ビシクロアルケン[ノルボルネン類(例えば、ノルボルネン(2−ノルボルネンなど)、メチルノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなど)など]、C4-20ビシクロアルカジエン[ノルボルナジエン類(例えば、2,5−ノルボルナジエンなど)など]など}、3環以上の多環式オレフィン類{C6-25トリシクロアルカジエン[ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエンなど)など]、C8-30テトラシクロアルケン[例えば、テトラシクロドデセン類(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなど)など]などの3乃至6環式オレフィン(例えば、4乃至6環式オレフィン)など}などの多環式オレフィン類などが挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、これらの環状オレフィンを単独で又は2種以上組みあわせた樹脂であってもよい。
【0041】
また、共重合性単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのC2-20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエンなどの非共役C5-20アルカジエン)など]、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリルなど)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などが挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0042】
代表的な環状オレフィン系樹脂には、環状オレフィン(ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などの多環式オレフィン)の単独又は共重合体、環状オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体[例えば、エチレン−ノルボルネン共重合体などの環式オレフィンと鎖状α−C2-6オレフィン(特にエチレン)との共重合体など]などが含まれる。なお、環状オレフィンと共重合性モノマーとの共重合体において、環式オレフィン(ノルボルネン類など)の割合は、単量体全体の30重量%以上(例えば、35〜99.5重量%程度)、好ましくは40重量%以上(例えば、45〜99重量%程度)であってもよい。
【0043】
なお、環状オレフィン系樹脂は、水素添加(又は水素化)された水添樹脂であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、慣用の重合方法(例えば、付加重合、開環メタセシス重合など)により調製してもよく、市販品を使用してもよい。例えば、環状オレフィン系樹脂は、日本ゼオン(株)から商品名「ZEONEX」、JSR(株)から商品名「ARTON」、三井化学(株)から商品名「アペル」、ポリプラスチックス(株)から商品名「トーパス」などとして入手することもできる。
【0044】
なお、前記ブレンドにおいて、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂との割合は、前者/後者(重量比)=99/1〜10/90、好ましくは95/5〜15/85(例えば、90/10〜20/80)、さらに好ましくは85/15〜25/75(例えば、80/20〜30/70)程度であってもよい。
【0045】
上記の樹脂及び相溶化剤の組合せ(d)のうち、好ましくは下記の(d-1)又は(d-2)の組合せ:
(d-1)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)環状オレフィン系樹脂(例えば、環状オレフィン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのブレンドなど)と、(ii)環状オレフィン系樹脂との組合せであり、相溶化剤が、酸変性オレフィン系共重合体(例えば、酸変性ポリオレフィン系エラストマーなど)である。
【0046】
(d-2)熱可塑性樹脂の組合せが、(i)環状オレフィン系樹脂(例えば、環状オレフィン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのブレンドなど)と、(ii)環状オレフィン系樹脂との組合せであり、相溶化剤が、酸変性スチレン系共重合体(例えば、酸変性ポリスチレン系エラストマーなど)である。
【0047】
なお、透過部材及び吸収部材を構成する熱可塑性樹脂と、相溶化剤との組合せにおいて、相溶化剤は、透過部材及び吸収部材を構成する熱可塑性樹脂(又は樹脂組成物)のうち、少なくとも一方に含有させればよく、双方に含有させてもよい。
【0048】
また、各部材(透過部材及び/又は吸収部材)を構成する熱可塑性樹脂(組成物)を、複数の熱可塑性樹脂と相溶化剤とで構成してもよい(前記ポリマーアロイも含む)。このような樹脂組成物において、複数の熱可塑性樹脂と相溶化剤との組み合わせも上記で例示した樹脂(i)及び(ii)と相溶化剤との組み合わせが利用できる。一方の部材を複数の熱可塑性樹脂と相溶化剤とで構成した場合、他方の部材は、前記複数の熱可塑性樹脂のうち少なくとも一種で構成してもよく、複数の熱可塑性樹脂の少なくとも一種(例えば、前記樹脂(i)及び(ii)のいずれか一方)と前記相溶化剤とで構成してもよい。
【0049】
各部材を構成する熱可塑性樹脂(組成物)を、複数の熱可塑性樹脂と相溶化剤とで構成する場合、複数の熱可塑性樹脂の割合は、適宜選択でき、例えば、樹脂(i)と樹脂(ii)とを組み合わせる場合には、樹脂(i)/樹脂(ii)(重量比)=1/99〜99/1、好ましくは5/95〜95/5、さらに好ましくは10/90〜90/10(例えば、20/80〜80/20)程度の範囲から選択できる。
【0050】
各部材又は各部材を構成する熱可塑性樹脂(組成物)に含まれる相溶化剤の割合に関して、各部材(透過部材又は吸収部材)を構成する熱可塑性樹脂(複数の熱可塑性樹脂を用いる場合には総量)と相溶化剤との割合(重量比)は、前者/後者=40/60〜99/1、好ましくは50/50〜95/5、さらに好ましくは60/40〜90/10程度である。
【0051】
本発明には、透過部材及び吸収部材のそれぞれを構成する熱可塑性樹脂(又はその組成物)の組合せ、すなわち、第1の熱可塑性樹脂(組成物)で構成された第1の樹脂成形体と、第2の熱可塑性樹脂組成物で構成された第2の樹脂成形体とを、レーザー照射により接合可能な前記熱可塑性樹脂(又はその組成物)の組合せであって、前記第1の熱可塑性樹脂(又はその組成物)及び第2の熱可塑性樹脂(又はその組成物)のうち、少なくともいずれか一方(例えば、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂)が、前記第1の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂と、前記第2の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂とに対する相溶化剤を含有する組合せも含まれる。また、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂(又はその組成物)のうち、少なくともいずれか一方(例えば、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂)に、前記第1の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂と、前記第2の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂とに対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体同士の接合性を改善するための相溶化剤の使用方法も本発明に含まれる。
【0052】
そして、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、透過部材及び吸収部材のいずれを形成してもよい。例えば、前記例示の熱可塑性樹脂の組合せにおいては、樹脂(i)を透過部材又は吸収部材として用い、樹脂(ii)を相手材として用いることができる。なお、透過部材を形成する場合、レーザー光照射により被接合体(吸収部材)と効率よく接合させるため、レーザー光に対してある程度の透過性を有する必要がある。従って、上記の熱可塑性樹脂の組合せのうち、レーザー光に対する透過性の高い方の樹脂(又は樹脂組成物)で透過部材を形成し、他方の熱可塑性樹脂(又は樹脂組成物)で吸収部材を形成すればよい。
【0053】
樹脂の種類(例えば、共重合成分(芳香族成分やゴム成分など)の種類や割合)、結晶性などにもよるが、例えば、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミド系樹脂など)、オレフィン系樹脂(ポリプロピレンなどのオレフィン系単量体の単独又は共重合体など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ゴム含有スチレン系樹脂など)などを透過部材側に用いる場合が多い。なお、ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのレーザー光に対する透過性が比較的低い樹脂を透過部材に使用する場合、他の樹脂と組み合わせてポリマーブレンドやポリマーアロイなどとして用いて、含量を適宜調整することにより接合性を確保することができる。なお、透過部材を構成する樹脂組成物(透過部材としての)のレーザー光に対する透過率は、使用するレーザー光の発振波長(例えば、740〜1600nmの範囲のうちいずれかの波長)に応じて、例えば、15%以上(例えば、15〜100%程度)であればよく、通常、20〜100%、好ましくは30〜100%、さらに好ましくは40〜100%程度であってもよい。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要により、さらに着色剤を含んでいてもよい。特に吸収部材を形成する熱可塑性樹脂組成物には、着色剤及び/又はレーザー光吸収剤などを添加する場合が多い。また、透過部材に着色剤を用いる場合、レーザー光の透過を阻害しない範囲で着色剤を使用してもよい。
【0055】
レーザー光吸収剤としては、例えば、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)、チタンブラック、黒色酸化鉄などの黒色顔料を使用する場合が多い。これらのレーザー光吸収剤は、単独で又は二種以上組合せて使用できる。樹脂組成物は、前記レーザー光吸収剤を着色剤として含有してもよい。なお、前記黒色顔料の平均粒径は、例えば10nm〜3μm(好ましくは10nm〜1μm)程度の広い範囲から選択できる。カーボンブラックの平均粒径は、例えば、10〜100nm、好ましくは15〜90nm程度であってもよい。レーザー光吸収剤の割合は、被接合体を構成する樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部程度であってもよい。
【0056】
着色剤としては、樹脂の着色に使用される種々の無機又は有機染顔料、例えば、白色染顔料(チタン白など)、黄色染顔料(カドミイエローなどの無機顔料、ベンジジンイエローなどの有機顔料)、橙色染顔料(ハンザイエローなど)、赤色顔料(赤口顔料などの無機顔料、レーキレッドなどの有機顔料)、青色顔料(コバルトブルーなどの無機顔料、フタロシアニンブルーなどの有機顔料)、緑色顔料(クロムグリーンなどの無機顔料、フタロシアニングリーンなどの有機顔料)などが挙げられる。着色剤は、前記例示の染顔料などを単独で用いてもよく、複数の着色剤を組み合わせて用いて所望の色調に調整してもよい。減色混合、例えば、3原色を用いて、樹脂を黒色に着色することもできる。着色剤の割合は、特に制限されず、例えば、樹脂100重量部に対して、0〜10重量部(例えば、0.001〜10重量部)、好ましくは0.01〜5重量部程度であってもよい。
【0057】
前記第1及び第2の熱可塑性樹脂組成物は、必要により、他の添加剤、例えば、難燃剤、充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属フィラーなど)、安定剤(酸化防止剤など)、滑剤、分散剤、発泡剤、抗菌剤などを含んでいてもよい。
【0058】
[樹脂成形体]
レーザー光照射により接合させて複合成形体とするための樹脂成形体(透過部材、吸収部材)は、前記樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂(又は組成物、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物、相溶化剤を含まず、前記熱可塑性樹脂と必要により着色剤及び/又は添加剤などとを含む樹脂組成物など)又はその構成成分(熱可塑性樹脂、着色剤、添加剤など)を、押出機、ニーダー、ミキサー、ロールなどを用いた慣用の混合方法で混合(例えば、溶融混練)し、慣用の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などにより、成形することにより得ることができる。
【0059】
樹脂成形体の形状は、接合させるに十分な接触面(平面など)を少なくとも一部に有する限り、特に制限されず、二次元的形状(例えば、板状)又は三次元的形状であってもよい。
【0060】
樹脂成形体の厚み(少なくとも透過部材のレーザー溶着位置の厚み)は、用途や、レーザー光に対する透過性又は吸収性などに応じて、例えば、50μm〜10mm、好ましくは70μm〜8mm、さらに好ましくは100μm〜5mm程度であってもよい。
【0061】
[複合成形体]
本発明の複合成形体では、熱可塑性樹脂で構成され、相溶化剤を含有していてもよい第1の樹脂成形体と、本発明の熱可塑性樹脂組成物で形成された第2の樹脂成形体とがレーザー照射により接合されている。
【0062】
複合成形体は、レーザー照射により、接合体(例えば、透過部材)と被接合体(例えば、吸収部材)とを、少なくとも両者の接合部を面接触させ、レーザー光を照射することにより、前記接合体と被接合体との界面を部分的に溶融させて接合面を密着させ、冷却して接合(又は一体化)することにより得られる。
【0063】
溶着に用いるレーザー光源としては、通常、発振波長193〜1600nm程度のレーザー光源が使用でき、例えば、固体レーザー(Nd:YAG励起、半導体レーザー励起など)、半導体レーザー(650〜980nm)、チューナブルダイオードレーザー(630〜1550nm)、チタンサファイアレーザー(Nd:YAG励起、690〜1000nm)などを用いる場合が多い。
【0064】
本発明では、さらに、第1の熱可塑性樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、第2の熱可塑性樹脂組成物で構成された第2の樹脂成形体とのレーザー照射による接合において、前記第1の熱可塑性樹脂組成物及び第2の熱可塑性樹脂組成物のうち、少なくともいずれか一方(例えば、少なくとも前記第2の熱可塑性樹脂組成物)に、前記第1の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂と、前記第2の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂とに対する相溶化剤を含有させることにより、両樹脂成形体の接合性(接合強度)を改善することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、成形体及び複合成形体は、家庭用又はオフィスオートメーション(OA)用機器、例えば、コンピューター、ワードプロセッサー、プリンター、コピー機、ファックス、電話、モバイル機器(携帯電話、携帯情報端末(PDA)など)などの機器類や家電製品(テレビ、ビデオデッキ、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)プレーヤー、エアコン、冷蔵庫、洗濯機など)の構成部品(ハウジング、ケース、カバー、ドア、カートリッジ(インクカートリッジ、トナーカートリッジなど)など)などの他、自動車部品、家庭用品、建築材料などの用途において有用である。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
実施例1〜10及び比較例1〜3
(1)樹脂成形体の調製
表1の透過部材の欄に示す組成の樹脂組成物を用いて、樹脂成形体(三段プレート、縦90mm×横50mm×厚み1,2及び3mm)(レーザー光透過部材)を成形するとともに、表1の吸収部材の欄に示す組成の樹脂組成物に、組成物全体に対して0.5重量%のカーボンブラックを含有させた樹脂組成物を用いて、前記成形体と同様のサイズ及び形状のレーザー光吸収部材を成形した。
【0068】
(2)レーザー溶着
前記(1)の工程で得られた黒色に着色したレーザー光吸収部材の上に、レーザー光透過部材を置き、さらにこの透過部材の上に透明なガラス板を重しとして置き、ファインデバイス社製120Wレーザー溶着機(半導体レーザー、波長940nm)を用いて、両者を溶着させた(溶着条件:表1に示す出力及び走査速度10mm/秒)。なお、吸収側の三段プレートと透過側の三段プレートとを重ねて、透過部材及び吸収部材の厚みが双方とも2mmとなる位置にレーザー光を照射した。
【0069】
(3)評価
レーザー光照射後の接合の可否を判断し、破断点荷重を測定した。
(i)レーザー溶着の可否
以下の基準で判断した。
○:2つの成形体が接合した。
×:2つの成形体が接合しなかった。
【0070】
(ii)溶着強度試験(破断点荷重の評価)
引張試験機(オリエンテック社製,テンシロンUCT−1T)を用いて、チャック間距離80mm及びヘッド速度5.0mm/分の条件で、吸収部材及び透過部材のそれぞれを、接合部を中心にして外方に引張り、破断点荷重を測定した。
【0071】
結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表から明らかなように、いずれの成形体にも相溶化剤を含有しない比較例では、成形体同士が接合しないか、接合しても破断点荷重が低く接合強度が非常に小さかった。一方、少なくともいずれか一方の成形体に相溶化剤を含有する実施例では、2つの成形体は有効に接合し、破断点荷重も高かった。さらに、ポリプロピレン(PP)を透過部材に用いた例では、接合できた例は、吸収部材としてPA/PP/酸変性PPを用いた例(実施例1)及びPA/酸変性PPを用いた例(実施例2)だけであったが、透過部材として、ABS/PP/相溶化剤を用いた例(実施例3〜6)では、多くの種類の吸収部材に対して有効に接合し、接合強度(すなわち、破断点荷重)も高かった。
【0074】
なお、実施例及び比較例で用いた熱可塑性樹脂及び相溶化剤は以下の通りである。
【0075】
(1)PP:ポリプロピレンホモポリマー(「サンアロマーPM900M」、サンアロマー(株)製)
(2)ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)(「セビアン−V500SF」、ダイセルポリマー(株)製)
(3)PA:ナイロン6(宇部ナイロン1015B、宇部興産(株)製)
(4)PA/ABS/酸変性ABS(50/36/14):
上記(3)のPAと、上記(2)のABSと、特開昭63−182369号公報の参考例1のグラフト共重合体(A−1)の調製方法に準じて調製した酸変性ABSとを上記の重量比で含むポリマーアロイ。なお、前記酸変性ABSにおけるモノマー成分の含有量は、スチレン量42重量%、アクリロニトリル量16重量%、ゴム量40重量%、及びメタクリル酸量3重量%であった。
【0076】
(5)PA/PP/酸変性PP(70/10/20):
上記(3)のPAと、酸(無水マレイン酸)変性PP(相溶化剤,アトフィナ社製,OREVAC CA100,無水マレイン酸含量1重量%)と上記(1)のPPとのブロック共重合体とを上記の重量比で含むポリマーアロイ。
【0077】
(6)PA/酸変性PP(80/20):
上記(3)のPAと、酸(無水マレイン酸)変性PP(相溶化剤,アトフィナ社製,OREVAC CA100,無水マレイン酸含量1重量%)とを上記の重量比で含むポリマーアロイ。
【0078】
(7)COP:環状オレフィン樹脂(「ゼオネックスE48R」、日本ゼオン(株)製)
(8)PC:ポリカーボネート樹脂(「S2000」、三菱エンジニアプラスチック(株)製)
(9)COP/PC(30/70):
上記(7)のCOPと、上記(8)のPCとを上記の重量比で含むポリマーアロイ。
【0079】
(10)COP/PC/酸変性水添SEBS(27/53/20):
上記(7)のCOPと、上記(8)のPCと、酸(無水マレイン酸)変性水添SEBS(相溶化剤,旭化成(株)製,「タフテックM1913」)とを上記の重量比で含むポリマーアロイ。
【0080】
(11)COP/PC/酸変性EPR(27/53/20):
上記(7)のCOPと、上記(8)のPCと、酸(無水マレイン酸)変性エチレンプロピレンゴム(相溶化剤、三井化学(株)製、「タフマーMH7010」)とを上記の重量比で含むポリマーアロイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して、レーザー照射により接合可能な第2の樹脂成形体を構成するための樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂と、この熱可塑性樹脂及び前記第1の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂に対する相溶化剤とで構成されたレーザー溶着用樹脂組成物。
【請求項2】
第2の樹脂成形体を構成する第2の熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種であり、第1の樹脂成形体を構成する第1の熱可塑性樹脂と同系統又は異系統の樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
相溶化剤を含み、複数の熱可塑性樹脂で構成されたポリマーアロイである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
相溶化剤が、エポキシ基含有ポリマー及び酸変性ポリマーから選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
相溶化剤が、酸変性スチレン系共重合体、酸変性オレフィン系共重合体、エポキシ基含有スチレン系共重合体、エポキシ基含有オレフィン系共重合体及びスチレン系ブロック共重合体から選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂と相溶化剤との割合(重量比)が、熱可塑性樹脂/相溶化剤=40/60〜99/1である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
熱可塑性樹脂(I)と、相溶化剤(II)との組み合わせが、下記(a1)、(a2)、(b1)、(b2)、(c1)、(c2)、(d1)又は(d2)の組み合わせである請求項1記載の樹脂組成物。
(a1)ポリアミド系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(a2)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリアミド系樹脂と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b1)オレフィン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b2)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂と、(II)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c1)スチレン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c2)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)スチレン系樹脂と、(II)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(d1)環状オレフィン系樹脂で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種と、(II)酸変性ポリマーとの組み合わせ
(d2)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種で構成された第1の樹脂成形体に対して接合可能な組み合わせであり、(I)環状オレフィン系樹脂と、(II)酸変性ポリマーとの組み合わせ
【請求項8】
第2の樹脂成形体を構成する第2の樹脂組成物が、複数の熱可塑性樹脂と、相溶化剤とで構成されており、前記複数の熱可塑性樹脂と、前記相溶化剤との組み合わせが、下記(a)、(b)、(c)、又は(d)の組み合わせであり、前記第2の樹脂成形体が、前記複数の熱可塑性樹脂の少なくとも一種を含む第1の樹脂成形体に対して接合可能である請求項1記載の樹脂組成物。
(a)(i)ポリアミド系樹脂と、(ii)オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキシド系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(b)(i)オレフィン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)非反応型相溶化剤であるスチレン系共重合体、酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(c)(i)スチレン系樹脂と、(ii)ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーから選択された少なくとも一種との組み合わせ
(d)(i)環状オレフィン系樹脂と、(ii)オレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂から選択された少なくとも一種と、(iii)酸変性ポリマーとの組み合わせ
【請求項9】
(a)〜(d)の組み合わせにおいて、樹脂(i)と樹脂(ii)との割合(重量比)が、1/99〜99/1であり、樹脂(i)及び樹脂(ii)の総量と相溶化剤(iii)との割合(重量比)が、40/60〜99/1である請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
レーザー照射により互いに接合可能であり、第1の熱可塑性樹脂又は少なくとも第1の熱可塑性樹脂を含む第1の熱可塑性樹脂組成物で構成された第1の樹脂成形体と、少なくとも第2の熱可塑性樹脂を含む第2の熱可塑性樹脂組成物で構成された第2の樹脂成形体との組合せであって、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂組成物のうち、少なくとも第2の熱可塑性樹脂組成物が、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂の双方に対する相溶化剤を含有する組合せ。
【請求項11】
請求項1記載のレーザー溶着用樹脂組成物で形成された樹脂成形体。
【請求項12】
熱可塑性樹脂で構成された第1の樹脂成形体と、請求項1記載のレーザー溶着用樹脂組成物で形成された第2の樹脂成形体とがレーザー照射により接合されている複合成形体。
【請求項13】
第1の熱可塑性樹脂で構成された第1の樹脂成形体と、第2の熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とをレーザー照射により接合する方法であって、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂のうち、少なくともいずれか一方に、前記第1及び第2の樹脂成形体を構成する双方の熱可塑性樹脂に対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体の接合強度を改善する方法。
【請求項14】
レーザー照射により、第1の熱可塑性樹脂で構成された第1の樹脂成形体と、第2の熱可塑性樹脂で構成された第2の樹脂成形体とが接合された複合成形体において、前記第1及び第2の熱可塑性樹脂のうち、少なくともいずれか一方に、前記第1及び第2の樹脂成形体を構成する双方の熱可塑性樹脂に対する相溶化剤を含有させ、樹脂成形体同士の接合強度を改善するための相溶化剤の使用方法。

【公開番号】特開2006−312303(P2006−312303A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263694(P2005−263694)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】