説明

レーザ光源装置

【課題】波長変換素子の変換効率の低下を防ぐとともに、直接接合の構成の採用によってレーザ光源装置を小型化やコストダウンさせることができるレーザ光源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】固体レーザ素子34と波長変換素子35と凸部80とはそれらを直接接合させて直接接合SHG素子110として構成され、直接接合SHG素子110に基本波長の赤外レーザ光の光軸に対して所定量の傾きを持たせ、赤外レーザ光が波長変換された変換光を反射させる傾斜面100を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関し、特に画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されている水銀ランプに比較して、色再現性が良い点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような画像表示装置に用いられるレーザ光源装置においては、緑色レーザ光を直接出力する半導体レーザに高出力のものがないため、半導体レーザから励起用レーザ光を出力させ、この励起用レーザ光で固体レーザ素子を励起させて赤外レーザ光を出力させ、この赤外レーザ光の波長を波長変換素子で変換して緑色レーザ光を出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
そして近年、レーザ光源装置の部品点数を低減させレーザ光源装置の小型化やコストダウンを図るために、レーザ光源装置に使用されている固体レーザ素子と波長変換素子とを直接接合させる構造にすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−16833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、直接接合された固体レーザ素子と波長変換素子では光軸上のそれぞれの端面は光軸に対して赤外レーザ光の共振路を構成するために垂直に形成されており、すなわち固体レーザ素子と波長変換素子の端面は平行になっているので、固体レーザ素子から出力される赤外レーザ光の共振路上において赤外レーザ光が波長変換素子で変換されて作られた緑色レーザ光と干渉を起こし、波長変換素子の変換効率が低下するという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく案出されたものであり、波長変換素子の変換効率の低下を防ぐとともに、直接接合の構成の採用によってレーザ光源装置を小型化やコストダウンさせることができるレーザ光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のレーザ光源装置は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、半導体レーザから出力される励起用レーザ光により基本波長の赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と固体レーザから出力されたレーザ光の波長を1/2に変換する波長変換素子とを直接接合させた直接接合素子とを備え、直接接合素子の接合面は、赤外レーザ光の光軸に対して傾いた傾斜面で構成され、傾斜面は、波長変換素子の出力面から反射された赤外レーザ光が波長変換された変換光を反射させるとともに、反射させた変換光の光軸と基本波長の赤外レーザ光の光軸との間で所定量の傾きを持たせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、直接接合された固体レーザ素子と波長変換素子に簡単な構成の断面を設けることで、波長変換素子の変換効率の低下を防ぐことができる。さらに、直接接合の構成の採用によってレーザ光源装置を小型化やコストダウンさせることができ、構成部品の減少によりレーザ光源装置の組み立てや調整が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態における画像表示装置の概略構成図
【図2】本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置の斜視図
【図3】本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置のレーザ光の光路を示す概略図
【図4】本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置のレーザ光の状況を示す摸式図
【図5】本発明の第2の実施形態における直接接合部の形態を示す形態図
【図6】本発明の第3の実施形態における直接接合部の形態を示す形態図
【発明を実施するための形態】
【0011】
請求項1に記載の発明は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、半導体レーザから出力される励起用レーザ光により基本波長の赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と固体レーザから出力されたレーザ光の波長を1/2に変換する波長変換素子とを直接接合させた直接接合素子とを備え、直接接合素子の接合面は、赤外レーザ光の光軸に対して傾いた傾斜面で構成され、傾斜面は、波長変換素子の出力面から反射された赤外レーザ光が波長変換された変換光を反射させるとともに、反射させた変換光の光軸と基本波長の赤外レーザ光の光軸との間で所定量の傾きを持たせることを特徴とするレーザ光源装置であって、固体レーザ素子と波長変換素子が直接接合された一体的な素子に簡単な構成の断面を設けることで、波長変換素子の変換効率の低下を防ぐことができる。さらに、直接接合の構成の採用によってレーザ光源装置を小型化やコストダウンさせることができ、構成部品の減少によりレーザ光源装置の組み立てや調整が容易になる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、傾きの所定量は、1度以上5度以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置であって、この角度に設定すると、傾斜面で反射する半波長レーザ光の出力方向を元々の光軸方向からずれるのを少なくし緑色レーザ光源装置の出力特性の低下を防ぐとともに、基本波長レーザ光と傾斜面で反射された半波長レーザ光との干渉を少なくすることができ、波長変換素子での変換効率の低下を防止することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、波長変換素子の出力面は凸形状であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置であって、基本波長レーザ光の光軸方向のレーザ光が傾斜面での屈折などで光軸方向からずれても、凸部の曲率形状により元々の光軸へ復元され、基本波長レーザの励起は安定に維持させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、半導体レーザと、固体レーザ素子と直接接合素子とが、1つの基台に一体的に支持されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザ光源装置であって、この構成を採ることで光軸調整が容易にでき、高出力のレーザ光を出力することができるともに、スラブ形状を取り入れることでレーザ光源装置の光学系を簡素化することや光学系の構成部品を減らすことができ、レーザ光源装置の小型化やコストダウンができる。
【0015】
以下、本発明のレーザ光源装置について図面を用いて説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な具体例であり、技術的に良好な条件の限定が記載されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する記載が無い限り、これらの条件に限られるものでは無い。
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態における画像表示装置の概略構成図である。この画像表示装置1は、所要の画像をスクリーンに投影表示するものであり、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置2と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置3と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置4と、映像信号に応じて各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光の変調を行なう液晶反射型の空間光変調器5と、各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光を反射させて空間光変調器5に照射させるとともに空間光変調器5から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ6と、各レーザ光源装置2〜4から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ6に導くリレー光学系7と、偏光ビームスプリッタ6を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系8とを備えている。
【0018】
この画像表示装置1は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置2〜4から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0019】
リレー光学系7は、各レーザ光源装置2〜4から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ11〜13と、コリメータレンズ11〜13を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー14,15と、ダイクロイックミラー14,15により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板16と、拡散板16を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ17とを備えている。
【0020】
投射光学系8からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置4から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置2および赤色レーザ光源装置3から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー14,15で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー14で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー15で同一の光路に導かれる。
【0021】
第1および第2のダイクロイックミラー14,15は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー14は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー15は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0022】
これらの各光学部材は、筐体21に支持されている。この筐体21は、各レーザ光源装置2〜4で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0023】
緑色レーザ光源装置2は、側方に向けて突出した状態で筐体21に形成された取付部22に取り付けられている。この取付部22は、リレー光学系7の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部23と側壁部24とが交わる角部から側壁部24に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置3は、ホルダ25に保持された状態で側壁部24の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置4は、ホルダ26に保持された状態で前壁部23の外面側に取り付けられている。
【0024】
赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、ホルダ25,26に開設された取付孔27,28に圧入するなどしてホルダ25,26に対して固定される。青色レーザ光源装置4および赤色レーザ光源装置3のレーザチップの発熱は、ホルダ25,26を介して筐体21に伝達されて放熱され、各ホルダ25,26は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0025】
緑色レーザ光源装置2は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、半導体レーザ31から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズでFAC(Fast−AxisCollimator)レンズ32およびロッドレンズ33と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子34と基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力するいわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子である波長変換素子35と凸部80が一体的に直接接合された直接接合SHG素子110(この詳細ついては後述する)、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー37と、各部を支持する基台38と、各部を覆うカバー体39とを備えている。
【0026】
この緑色レーザ光源装置2は、基台38を筐体21の取付部22に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置2と筐体21の側壁部24との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置2の熱が赤色レーザ光源装置3に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置3の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置3を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置3の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置2と赤色レーザ光源装置3との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0027】
図2は、本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置の斜視図である。
【0028】
図2に示すように、半導体レーザ31、FACレンズ32、ロッドレンズ33、そして直接接合SHG素子110は、基台38に一体的に支持されている。基台38の底面51は光軸方向に対して平行となる。なおここでは、基台38の底面51に対して直交する方向を高さ方向とし、この高さ方向および光軸方向に対して直交する方向を幅方向とする。また、基台38の底面51に近接する側を下、底面51と相反する側を上として説明するが、これは実際の装置の上下方向と必ずしも一致するものではない。
【0029】
半導体レーザ31は、レーザ光を出力するレーザチップ41をマウント部材52に実装したものである。レーザチップ41は、光軸方向に長い帯板状をなし、光出力面をFACレンズ32側に向けた状態で、板状をなすマウント部材52の一面の幅方向の略中心位置に固着されている。この半導体レーザ31は、取付部材53を介して基台38に固定される。この取付部材53は、銅あるいはアルミ等の熱伝導性の高い金属で形成されており、これによりレーザチップ41の発熱が基台38に伝達されて放熱することができる。
【0030】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズホルダ54に保持される。この集光レンズホルダ54は、基台38に一体的に形成された支持部55に支持される。集光レンズホルダ54は、光軸方向に移動可能に支持部55に連結されており、これにより集光レンズホルダ54、すなわちFACレンズ32およびロッドレンズ33の位置が、光軸方向に調整される。FACレンズ32およびロッドレンズ33は位置調整作業の前に集光レンズホルダ54に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、集光レンズホルダ54と支持部55とが接着剤で互いに固定される。
【0031】
固体レーザ素子34と波長変換素子35と凸部80(図1参照)からなる直接接合SHG素子110は、直接接合SHG素子ホルダ58に保持される。この直接接合SHG素子ホルダ58は、直接接合SHG素子110の幅方向の位置および光軸方向に対する傾斜角度を調整することができるように、基台38に対して、幅方向に移動可能に、且つ光軸方向に対して略直交する軸周りに回動可能に設けられている。直接接合SHG素子110は位置調整作業の前に直接接合SHGホルダ58に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、直接接合SHG素子ホルダ58と基台38とが接着剤で互いに固定される。これにより、半導体レーザ31から出力されたレーザ光の光軸とFACレンズ32およびロッドレンズ33や直接接合SHG素子110との光軸調整が容易にでき、高出力の緑色レーザ光を出力することができる。
【0032】
次に、図3と図4を用いて緑色レーザ光源装置2のレーザ光の挙動について詳細に説明する。
【0033】
図3は、本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置のレーザ光の光路を示す概略図で、図4は、本発明の第1の実施形態における緑色レーザ光源装置のレーザ光の状況を示す摸式図である。
【0034】
図3に示すように、半導体レーザ31のレーザチップ41は、波長808nmの励起用レーザ光(図3の一点鎖線)を出力する。FACレンズ32は波長808nmの励起用レーザ光の縦方向の拡がりを低減し、ロッドレンズ33は波長808nmの励起用レーザ光の横方向の拡がりを低減する。
【0035】
固体レーザ素子34は、いわゆるセラミック製造法を用いて作られた多結晶であり、ロッドレンズ33を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(図3の破線)を出力する。この固体レーザ素子34は、光の直線透過性の高いイツトリウムアルミニウムガーネットを使用したものである。このイツトリウムアルミニウムガーネットは基本結晶構造が立方構造を有しているので複屈折が無く結晶界面での光散乱が無いという特徴を持つので前述したように光の直線透過性の高い多結晶焼結物として用いられる。また、固体レーザ素子34のセラミック素子は安価な素子として知られている。
【0036】
固体レーザ素子34のロッドレンズ33に対向する面には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止の機能と、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射の機能とを備える膜42が形成されている。
【0037】
波長変換素子35は、強誘電体結晶に分極反転領域と非分極反転領域とが交互に形成された、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向に基本波長レーザ光を入射させる。これにより、擬似位相整合による入射光の第2次高調波発生で2倍の周波数、すなわち1/2の波長のレーザ光を得ることができる。強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0038】
波長変換素子35は、固体レーザ素子34から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を変換して基本波長の1/2である波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光で図3の点線)を出力する。
【0039】
上述した固体レーザ素子34と波長変換素子35の2つの素子はこれらの相対する傾斜面100で直接接合されている。いわゆる、固体レーザ素子34と波長変換素子35と凸部80(凸部に関しては後述する)とは接着剤などを使用しないオプティカルコンタクト(光学接着)で直接接合され、一体的に構成される直接接合SHG素子110となる。
【0040】
傾斜面100は、レーザ光の光軸に垂直な面に対して1度から5度程度傾いた角度を有する平面であり、本実施形態ではこの傾斜角度はおおよそ2度に設定している。この角度に設定すると、傾斜面100で反射する半波長レーザ光の出力方向を元々の光軸方向からずれるのを少なくし緑色レーザ光源装置2の出力特性の低下を防ぐとともに、基本波長レーザ光と半波長レーザ光との干渉を少なくすることができ、波長変換素子35での変換効率の低下を防止することができる。
【0041】
なお、図3および図4において傾斜面100は右上がりで図示されているが、左上がりでも良い。要するに、傾斜面100の面が傾斜していることが重要である。
【0042】
ここで、固体レーザ素子34の媒質は波長1064nmの基本波長レーザ光を通させ、波長変換素子35の媒質は波長1064nmの基本波長レーザ光と波長532nmの半波長レーザ光を通させる。そして、固体レーザ素子34の媒質と波長変換素子35の媒質の屈折率の差は大きいほど傾斜面100の高反射機能という働きが大きくなる。
【0043】
また、直接接合SHG素子110のレーザ光出力側の面には凸面形状を有している凸部80が形成されている。この凸部80の表面には膜46が形成されており、膜46は波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射の機能と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止(透過)の機能とを備える。
【0044】
凸部80上に形成された膜46の曲率作用により波長1064nmの基本波長レーザ光が光軸から多少ずれても元々の光軸への復元ができるので、固体レーザ素子34の膜42と凸部80の内面との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0045】
もし凸部80が凸面でなく平面であると、波長1064nmの基本波長レーザ光が光軸から何らかの原因でずれてしまうと光軸からさらに離れる方向へ行き元々の光軸への復元が困難になってしまう。
【0046】
凸部80の曲率Rは、共振器の共振モード安定条件を満たすことや共振器内で必要なビーム径を形成することから求められ、媒質の種類や共振器内の波長やビーム径および共振器間隔などより計算される。本実施形態では凸部80の媒質は屈折率2であるニオブ酸リチウムを使用しているのでこの曲率Rはおおよそ40mmになる。
【0047】
次に、図4を用いて緑色レーザ光源装置2のレーザ光の光路上での傾斜面100と凸部80の機能について説明する。
【0048】
本実施形態では、波長変換素子35の屈折率が固体レーザ素子34の屈折率に比べ大きく、凸部80の材質が波長変換素子35のそれと同じものを使用している。もし、波長変換素子35の屈折率と凸部80の屈折率が異なる構成を採った場合にはその間に波長1064nmの基本波長レーザ光と波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止(透過)の機能とを備える膜を形成すれば良い。
【0049】
図4(a)に示すように、半導体レーザ31のレーザチップ41から出力された波長808nmの励起用レーザ光は、FACレンズ32とロッドレンズ33を経由し膜42を通過してセラミックレーザである固体レーザ素子34部に入射される(STEP1)。
【0050】
励起用レーザ光が固体レーザ素子34に入力されると、波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光を出力する(STEP2)。
【0051】
次に、この固体レーザ素子34から出力された波長1064nmの基本波長レーザ光が傾斜面100を経て波長変換素子35に入力されると、その基本波長レーザ光の一部が波長変換素子35によって波長532nmのレーザ光(緑色)に波長変換され、凸部80および膜46を経て緑色レーザ光源装置2より出力される(STEP3)。
【0052】
そして、波長変換素子35によって変換されなかった波長1064nmの基本波長レーザ光は膜46にて反射し、再度波長変換素子35へ戻っていく。このとき、波長1064nmの基本波長レーザ光の光軸方向のレーザ光が傾斜面100での屈折などで光軸方向からずれても、凸部80の曲率形状により元々の光軸へ復元され、基本波長レーザの励起は安定に維持される(STEP4)。
【0053】
膜46で反射し波長変換素子35へ戻った波長1064nmの基本波長レーザ光は再度波長変換素子35によって波長532nmのレーザ光(緑色)に波長変換される。そして、波長変換された波長532nmのレーザ光は直接接合SHG素子110内に形成された傾斜面100で固体レーザ素子34と波長変換素子35の屈折率の相違により反射される。この時、傾斜面100で反射された波長532nmのレーザ光は傾斜面100の傾斜により元々の光軸方向からずれた方向に進む(図4(b)参照)。
【0054】
また、波長変換素子35によって変換されなかった波長1064nmの基本波長レーザ光の数パーセントほどは傾斜面100で反射され波長変換素子35側に戻り、残りは傾斜面100で屈折して光軸をずらして(図4(b)の光線表示は極端に記載している)固体レーザ素子34側へと進む(STEP5)。
【0055】
このように、傾斜面100はその両側にある固体レーザ素子34と波長変換素子35の屈折率に関して固体レーザ素子34の屈折率より波長変換素子35の屈折率を大きくさせて波長532nmのレーザ光を反射させる反射膜の機能を持つ。
【0056】
固体レーザ素子34側へ進んだ波長1064nmの基本波長レーザ光は、固体レーザ素子34の端部にある前述した膜42で反射し、再度固体レーザ素子34、波長変換素子35の方向に戻っていく(STEP6)。
【0057】
ここで、固体レーザ素子34から波長変換素子35に入力して波長変換素子35で波長変換されて波長変換素子35から出力されるレーザ光のビームB1と、膜46で一旦反射されて波長変換素子35に入力して傾斜面100で反射されて波長変換素子35から出力されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0058】
そこで図4(b)に示すように、傾斜面100は前述したように光軸方向に対して傾斜しているので、傾斜面100での屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。一方、波長1064nmの基本波長レーザ光はその光軸方向からずれても、凸部80の曲率形状により元々の光軸へ復元される。
【0059】
すなわち、波長532nmの半波長レーザ光が通っている光路から外れた光路で波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換が行なわれるので、これらのレーザ光の干渉を防ぐことができ、波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換効率の低下を防ぐことができる。
【0060】
なお、図1に示したガラスカバー37には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。
【0061】
このように、固体レーザ素子34と波長変換素子35とを一体化した直接接合SHG素子110はその固体レーザ素子34と波長変換素子35との境界面を傾斜させてオプティカルコンタクトで直接接合させた構造と直接接合SHG素子110の出力側の端部に凸部形状を有することで、波長1064nmの基本波長レーザ光と波長532nmの半波長レーザ光の干渉を防ぐことができ、波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換効率の低下を防ぐことができる。
【0062】
また、固体レーザ素子34と波長変換素子35との2つの構成部材を一体化したので、緑色レーザ光源装置2を小型化やコストダウンを図ることができるとともに、緑色レーザ光源装置2の組み立てを容易にし、その調整時間を減らすことができる。さらに、構成部材の一体化で組み立て精度が向上し、それらの位置精度もずれの少ないものにすることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここでは、第1の実施形態と同一の構成、機能を備えた部材には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態と第1の実施形態との異なる点は、オプティカルコンタクトで直接接合させた傾斜面100の構成方法である。以下、この異なる点について詳細に説明する。
【0065】
図5は、本発明の第2の実施形態における直接接合部の形態を示す形態図である。
【0066】
図5では、固体レーザ素子34と波長変換素子35はそれらの屈折率が同値になるように前述したそれぞれの材質の構成比率を変えて作られている。そのため、傾斜面100では波長1064nmの基本波長レーザ光は屈折が起こらず直進することができ、安定的にレーザの励起が継続できる。
【0067】
しかしこの条件では、凸部80から戻ってきた波長1064nmの基本波長レーザ光が波長変換素子35で波長変換された波長532nmの半波長レーザ光も傾斜面100を通過してしまう。そこで、本実施形態では傾斜面100すなわち波長変換素子35の斜面あるいは固体レーザ素子の斜面には波長1064nmの基本波長レーザ光を反射防止の機能を持ち、波長532nmの半波長レーザ光を高反射する機能を持つ膜120が形成されている。すなわち、膜120は固体レーザ素子34と波長変換素子35とに傾斜面100でサンドウィッチ状に挟まれ、固体レーザ素子34と波長変換素子35は直接接合させる。
【0068】
なお、固体レーザ素子34と波長変換素子35の間に膜120を形成する場合、オプティカルコンタクト(光学接着)は必須では無いため、単にくっつけるだけで光学的に接合していない状態(つまり、微妙に空隙が存在するような状態で接着剤等で固定してしまっているような擬似的な直接接合状態)であっても良い。
【0069】
この膜120で反射された波長532nmの半波長レーザ光は傾斜面100にある膜120の傾斜により元々の光軸方向からずれた方向に進んで緑色レーザ光源装置2から出力される。
【0070】
この反射された波長532nmの半波長レーザ光が元々の光軸方向からずれた方向に進むことで、第1の実施形態で説明した波長532nmの半波長レーザ光が通っている光路から外れた光路で波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換が行なわれるので、これらのレーザ光の干渉を防ぐことができ、波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換効率の低下を防ぐことができる。
【0071】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。ここでは、第1の実施形態と同一の構成、機能を備えた部材には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施形態と第1の実施形態との異なる点は、オプティカルコンタクトで直接接合させた傾斜面100の構成方法である。すなわち、本実施形態においては直接接合させる箇所が2箇所あることである。以下、この異なる点について詳細に説明する。
【0073】
図6は、本発明の第3の実施形態における直接接合部の形態を示す形態図である。
【0074】
図6では、波長変換素子35は2分割され、2つの構成要素35a、35bになり、その2つの構成要素35a、35bはその間に傾斜面100を作ってオプティカルコンタクトで直接接合させる。
【0075】
ただし、構成要素35aの方で波長変換機能の働きを行ない、構成要素35bは波長変換素子35の端部にあり、波長変換機能の働きをしない部分である。
【0076】
この場合も第2の実施形態(図5)で説明したことと同様に、傾斜面100には膜120が形成されており、この膜120で反射された波長532nmの半波長レーザ光が元々の光軸方向からずれた方向に進むことで、第1の実施形態で説明した波長532nmの半波長レーザ光が通っている光路から外れた光路で波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換が行なわれるので、これらのレーザ光の干渉を防ぐことができ、波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換効率の低下を防ぐことができる。
【0077】
一方、傾斜面100では波長1064nmの基本波長レーザ光は同じ部材内であるので屈折が起こらずほとんど直進することができ、安定的にレーザの励起が継続できる。この基本波長レーザ光の一部は傾斜面で反射するが、第1の実施形態で説明したように凸部80の反射機能により再度レーザ光の励起に利用される。
【0078】
また、波長変換素子35の構成要素35bと固体レーザ素子34とはそれらの相対するそれぞれの面はレーザ光の光軸に垂直な面であり、そのままオプティカルコンタクトで直接接合させる。これにより、波長1064nmの基本波長レーザ光は屈折が起こらず直進することができ、安定的にレーザの励起が継続できる。
【0079】
以上のように、固体レーザ素子34と波長変換素子35とを一体化した直接接合SHG素子110はその固体レーザ素子34と波長変換素子35との境界面あるいはそれらの一部を傾斜させてオプティカルコンタクトで直接接合させた構造と直接接合SHG素子110の出力側の端部に凸部形状を有することで、波長1064nmの基本波長レーザ光と波長532nmの半波長レーザ光の干渉を防ぐことができ、波長1064nmの基本波長レーザ光から波長532nmの半波長レーザ光への変換効率の低下を防ぐことができる。
【0080】
また、固体レーザ素子34と波長変換素子35との2つの構成部材を一体化したので、緑色レーザ光源装置2を小型化やコストダウンを図ることができるとともに、緑色レーザ光源装置2の組み立てを容易にし、その調整時間を減らすことができる。さらに、構成部材の一体化で組み立て精度が向上し、それらの位置精度もずれの少ないものにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明にかかるレーザ光源装置は、固体レーザ素子と波長変換素子を一体化し、その一部に傾斜面を設けることで、波長の異なる2つのレーザ光の干渉を防止し、波長変換素子の変換効率が低下するのを防ぐ効果を有し、画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 画像表示装置
2 緑色レーザ光源装置
3 赤色レーザ光源装置
4 青色レーザ光源装置
31 半導体レーザ
34 固体レーザ素子
35 波長変換素子
42、46、120 膜
80 凸部
100 傾斜面
110 直接接合SHG素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、
前記半導体レーザから出力される励起用レーザ光により基本波長の赤外レーザ光を出力する固体レーザ素子と前記固体レーザから出力されたレーザ光の波長を1/2に変換する波長変換素子とを直接接合させた直接接合素子とを備え、
前記直接接合素子の接合面は、前記赤外レーザ光の光軸に対して傾いた傾斜面で構成され、前記傾斜面は、前記波長変換素子の出力面から反射された前記赤外レーザ光が波長変換された変換光を反射させるとともに、反射させた前記変換光の光軸と前記基本波長の赤外レーザ光の光軸との間で所定量の傾きを持たせることを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記傾きの所定量は、1度以上5度以下であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
前記波長変換素子の出力面は凸形状であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ光源装置。
【請求項4】
前記半導体レーザと前記固体レーザ素子と前記直接接合素子とが、1つの基台に一体的に支持されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザ光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−248558(P2012−248558A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116572(P2011−116572)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】