説明

レーザ加工方法及び装置

【課題】電子回路基板におけるパターンニングで、強度や波長の異なるレーザ光を複数段階に分けて照射する場合にも、効率良く加工が行える方法と装置を提供する。
【解決手段】波長と強度の少なくともどちらか一方が異なるレーザビーム3a,3bを照射する第1,第2のレーザ発振器2a,2bと、被加工物1を移動させるステージ装置5と、各レーザビーム3a,3bを、被加工物1の所定位置に導く光学系4a,4bを備える。光学系4a,4bは、各レーザビーム3a,3bと被加工物1との相対移動方向に応じて、各レーザビーム3a,3bによって被加工物1の加工が可能なように、各レーザビーム3a,3bが前記の順に被加工物1の所定位置に照射すべく、可動装置6によって可動する。
【効果】各レーザビームと被加工物を相対移動方向に限定されず、余分な移動を行うことなく、効率良くレーザ加工が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを使用して被加工材に加工を施す方法及びその方法を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビームの照射によって、例えば被加工物を切断又は溶接したり、被加工物表面の所定層のみを除去するに際し、予熱加工と本加工、第1の層の除去と第2の層の除去というように、強度や波長の異なるレーザビームを複数段階に分けて照射する必要がある場合がある。
【0003】
このような場合、加工効率を向上させるために、例えば加工する層に対応したレーザビームを照射するレーザ発振器を、加工層に対応する数だけ並べて加工する技術が、特許文献1で開示されている。
【特許文献1】特開平8−10970号公報
【0004】
また、例えば異なる波長のレーザビームを照射する複数のレーザ発振器を、そのレーザビームが同軸上に照射されるように配置し、各レーザビームをON/OFF制御することにより被加工物に異なる波長のレーザビームを照射する技術が、特許文献2で開示されている。
【特許文献2】特開2002−270994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子回路基板におけるパターンニング等では、基板側又はレーザビームの照射側を、例えばX−Y方向に移動させることでレーザ加工を行っている。
【0006】
このような電子回路基板におけるパターンニングで、前記の強度や波長の異なるレーザビームを複数段階に分けて照射する場合、特許文献1の技術では、加工層に対応する数だけ並べたレーザ発振器分、基板又はレーザビームの照射側をX方向とY方向に余分に移動させる必要があり、加工効率が低下し、生産性の低下につながるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1の技術では、加工層に対応する数だけ並べた各レーザ発振器から照射される各レーザビームの相対照射位置が決まっているので、基板側又はレーザビームの照射側を、逆方向に移動する場合は、加工ができないという問題もある。
【0008】
一方、特許文献2の技術では、異なる波長のレーザ光が同軸上に照射されるので、複数の層を連続して加工することができない。従って、特許文献1の技術を適用した場合と同様、加工効率が低下し、生産性の低下につながるという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、電子回路基板におけるパターンニングで、強度や波長の異なるレーザ光を複数段階に分けて照射する場合、従来の技術を適用した場合には、加工効率が低下し、生産性の低下につながるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレーザ加工方法は、
電子回路基板におけるパターンニングで、強度や波長の異なるレーザ光を複数段階に分けて照射する場合にも、効率良く加工が行えるようにするために、
被加工物を加工すべく、波長と強度の少なくともどちらか一方が異なる複数のレーザビームを、前記異ならせた波長、強度の順に、被加工物に照射することで加工する方法において、
前記レーザビームと被加工物を相対移動しつつ前記レーザビームを被加工物に照射する際に、これらの相対移動方向に応じて、前記複数のレーザビームが前記の順に被加工物を照射するよう、レーザビームの照射位置を変更することを最も主要な特徴としている。
【0011】
また、本発明のレーザ加工装置は、
前記本発明のレーザ加工方法を実施する装置であって、
波長と強度の少なくともどちらか一方が異なるレーザビームを照射する複数のレーザ発振器と、
前記各レーザビームと被加工物を相対移動すべく、前記のどちらか一方を移動させるステージ装置と、
前記複数のレーザ発振器から照射された各レーザビームを、被加工物の所定位置に導く光学系を備え、
前記光学系は、前記各レーザビームと被加工物との相対移動方向に応じて、各レーザビームによって被加工物の加工が可能なように、各レーザビームが前記異ならせた波長、強度の順に被加工物の所定位置に照射すべく、可動装置によって可動するように構成されていることを最も主要な特徴としている。
【0012】
本発明において、各レーザビームと被加工物を相対移動させる場合のうち、各レーザビームを移動させる場合には、各レーザビームを照射するレーザ発振器と光学装置を移動させる場合のほか、レーザ発振器は固定して光学装置のみを移動させる場合でも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、電子回路基板におけるパターンニングで、強度や波長の異なるレーザビームを複数段階に分けて照射する場合にも、各レーザビームと被加工物を相対移動方向に限定されず、余分な移動を行うことなく、効率良くレーザ加工が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図3を用いて詳細に説明する。
図1は本発明のレーザ加工装置の一例を示す基本構成図、図2は図1に示した本発明のレーザ加工装置で、図1と逆方向に移動する場合の説明図、図3は本発明のレーザ加工装置の他の例を示す概略基本構成図である。
【0015】
図1は、基板等の被加工物1の表面に形成された第1と第2の金属層1a,1bを除去する場合の本発明のレーザ加工装置の一例を示したものである。
【0016】
この図1において、2a,2bはたとえば第1と第2のYAGレーザ発振器(以下、単にレーザ発振器という。)であり、このうち第1のレーザ発振器2aは前記第1の金属層1aを除去するのに適した波長又は強度のレーザビーム3aを照射する。また、第2のレーザ発振器2bは前記第2の金属層1bを除去するのに適した波長又は強度のレーザビーム3bを照射する。
【0017】
そして、前記第1と第2のレーザ発振器2a,2bから照射された第1と第2のレーザビーム3a,3bは、それぞれ第1と第2の光学系4a,4bを介して、ステージ装置5上に載置されて例えば紙面左方向に移動される前記被加工物1の表面に照射され、第1,第2の金属層1a,1bを除去する。
【0018】
図1では、前記第1の光学系4aは、第1のビーム成形光学系4aa、第1の反射ミラー4abと集光レンズ4cで、また前記第2の光学系4bは、第2のビーム成形光学系4ba、第2の反射ミラー4bbと集光レンズ4cで構成し,同一の集光レンズ4cを用いたものを示しているが、必ずしもこれに限るものではない。
【0019】
ところで、本発明では、被加工物1はステージ装置5によって紙面右方向にも移動するが、その際、第1,第2の光学系4a,4bが図1の配置状態のままでは、特許文献1の技術と同様、被加工物1の第1,第2の金属層1a,1bの除去を適正に行うことができない。
【0020】
そこで、本発明では、例えば前記第1の光学系4aの第1の反射ミラー4abの角度位置を可動機構6によって変更し、第1のレーザビーム3aを第2のレーザビーム3bの図1における紙面左側にも、紙面右側にも照射できるように構成している。
【0021】
このような構成により、被加工物1が図1と反対側の紙面右方向に移動する際にも、図2に示すように、第1のレーザビーム3aが第1の金属層1aに照射されて第1の金属層1aを除去した後に、第2のレーザビーム3bが第2の金属層1bに照射するようにできる。
【0022】
前記構成の本発明のレーザ加工装置を用いて、被加工物1の表面に形成された第1,第2の金属層1a,1bを除去するには以下のように行う。
先ず、図1に示したように被加工物1が紙面左方向に移動する場合、第1のレーザビーム3aが紙面左側に、第2のレーザビーム3bが第1のレーザビーム3aの紙面右側に照射するように第1の反射ミラー4abの位置が設定されている。
【0023】
この状態で、制御装置8はステージ装置5を駆動して被加工物1を紙面右側に移動させつつ、第1のレーザ発振器2aと第2のレーザ発振器2bから第1,第2のレーザビーム3a,3bを照射し、第1,第2の金属層1a,1bを除去する。
【0024】
そして、被加工材1が反転地点に到達したことを検知器7が検出すると、検知器7からの信号に基づき、制御装置8は第1,第2のレーザ発振器2a,2bに指令を出し、一旦、第1,第2のレーザビーム3a,3bの照射を停止する。
【0025】
次に、制御装置8は可動機構6に指令を出して第1の反射ミラー4abを可動し、第1と第2のレーザビーム3a,3bの照射位置を図1と反転させる。反転後は、制御装置8は第1,第2のレーザ発振器2a,2bに指令を出し、第1,第2のレーザビーム3a,3bの照射を再開すると共に、ステージ装置5に指令を出して被加工物1を図2の紙面右方向に移動する。
【0026】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇内において、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0027】
例えば、図1、図2の例では、第1の反射ミラー4abを可動させているが、第2の反射ミラー4bbを可動させても良い。
【0028】
また、図3のように、図1や図2に示した本発明のレーザ加工装置の、第1,第2の光学系4a,4bにレーザビーム3a,3bを分割する光学素子4dをさらに加え、加工幅を広げるようにしても良い。
【0029】
さらに、図1や図2の例では、被加工物1上の薄膜を除去する場合に、第1の金属層1aの次に第2の金属層1bを除去しているが、第2の金属層1bを先に除去した後に第1の金属層1aを除去しても良い。
【0030】
なお、以上の例は、被加工物1の表面側にレーザビームを照射して薄膜を除去する場合について説明しているが、裏面側からレーザビームを照射して薄膜の除去などの加工を行う場合においても適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、薄膜除去だけでなく、被加工物にレーザビームを照射する必要のある加工であれば、微細加工等、どのようなレーザ加工にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のレーザ加工装置の一例を示す基本構成図である。
【図2】図1に示した本発明のレーザ加工装置で、図1と逆方向に移動する場合の説明図である。
【図3】本発明のレーザ加工装置の他の例を示す概略基本構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 被加工物
1a 第1の金属層
1b 第2の金属層
2a 第1のレーザ発振器
2b 第2のレーザ発振器
3a 第1のレーザビーム
3b 第2のレーザビーム
4a 第1の光学系
4ab 第1の反射ミラー
4b 第2の光学系
4bb 第2の反射ミラー
5 ステージ装置
6 可動機構
7 検知器
8 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工すべく、波長と強度の少なくともどちらか一方が異なる複数のレーザビームを、前記異ならせた波長、強度の順に、被加工物に照射することで加工する方法において、
前記レーザビームと被加工物を相対移動しつつ前記レーザビームを被加工物に照射する際に、これらの相対移動方向に応じて、前記複数のレーザビームが前記の順に被加工物を照射するよう、レーザビームの照射位置を変更することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工方法を実施する装置であって、
波長と強度の少なくともどちらか一方が異なるレーザビームを照射する複数のレーザ発振器と、
前記各レーザビームと被加工物を相対移動すべく、前記のどちらか一方を移動させるステージ装置と、
前記複数のレーザ発振器から照射された各レーザビームを、被加工物の所定位置に導く光学系を備え、
前記光学系は、前記各レーザビームと被加工物との相対移動方向に応じて、各レーザビームによって被加工物の加工が可能なように、各レーザビームが前記異ならせた波長、強度の順に被加工物の所定位置に照射すべく、可動装置によって可動するように構成されていることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−296533(P2007−296533A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124084(P2006−124084)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】