説明

レーザ加工機

【課題】走行方向に延伸する溝と、当該走行方向とは交差するピッチ送り方向に延伸する溝とをともに速やかに形成できる加工機を実現する。
【解決手段】レーザ加工時に基板9を動かないよう保定する保定機構5と、走行方向に走行しかつその走行方向とは交差したピッチ送り方向にも移動可能な加工ノズル3と、基板9を下方から支持しながらレーザ加工時に固定の基板9及び架台7に対してピッチ送り方向に相対移動しレーザ光軸との干渉を回避可能な支持機構4とを具備する加工機1において、支持機構4に、走行方向に沿って延伸する複数の走行方向開口41と、ピッチ送り方向に沿って延伸するピッチ送り方向開口45とをともに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルや有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の製造工程における、薄膜のレーザスクライブまたはアブレーション等を実施するレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレーザ加工機は、基板の被加工面に製膜した単層または積層の薄膜にレーザ光を照射して除去加工することを主務とする。例えば、下記特許文献1に開示されているレーザ加工機は、レーザ加工時に、レーザ加工が施される被加工面を上にした基板を架台に対して動かないよう保定し、この基板に対して加工ノズルを所定方向に走行させながらレーザ光を照射、太陽電池の要素である電極膜や発電層をセル単位に分割する分離溝を形成するものである。
【0003】
基板の略全域を下方から支持する支持機構は、加工ノズルの走行方向に延伸する開口を、走行方向とは交差するピッチ送り方向に複数並べ連ねた枠体状をなし、その枠体の桟の部分に多数のボールベアリングを設置してある。ボールベアリングは、支持機構と基板の下面との間の摩擦を軽減する摩擦軽減体として機能する。
【0004】
太陽電池の製造過程では、ピッチ送り方向に並ぶ多数の分離溝を切削する。そのために、加工ノズルを、走行方向に往復させつつ、ピッチ送り方向にも順次移動させる。その上で、加工ノズルから出射するレーザ光の光軸と支持機構の桟とが干渉することを避けるべく、基板を固定したままで、支持機構をピッチ送り方向に移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4616373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上掲のレーザ加工機は優れて有用なものである。しかしながら、ピッチ送り方向に延伸する分離溝を切削するような加工工程には必ずしも向いていなかった。特に、太陽電池の製造過程の後期には、基板における分離溝の延伸方向つまりは加工ノズルの走行方向の両端部に存在する電極膜及び発電層を除去する「横切り」加工を実施するが、上掲のレーザ加工機によって「横切り」を行うことは難しかった。
【0007】
本発明は、この問題に初めて着目してなされたものであり、走行方向に延伸する溝だけでなく、ピッチ送り方向に延伸する溝を形成するような加工をも速やかに実施できるような加工機を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、架台と、レーザ加工が施される被加工面を上にした基板をレーザ加工時に前記架台に対して動かないよう保定する保定機構と、所定の走行方向に走行して前記基板の被加工面にレーザ光を照射しかつその走行方向とは交差したピッチ送り方向にも移動可能な加工ノズルと、前記基板を下方から支持しながらレーザ加工時に前記架台に対して動かないよう保定した基板及び架台に対して前記ピッチ送り方向に相対移動しレーザ光軸との干渉を回避可能な支持機構とを具備し、前記支持機構が、前記走行方向に沿って延伸し前記ピッチ送り方向に沿って配列された前記加工ノズルの光軸を通すための複数の走行方向開口と、前記走行方向開口の周縁部に散開させて、または走行方向開口の周縁部を覆うように設けられて前記基板の下面が載置される摩擦軽減体と、ピッチ送り方向に沿って延伸した加工ノズルの光軸を通すためのピッチ送り方向開口とを備えているレーザ加工機を構成した。
【0009】
即ち、「横切り」等の加工を実施する際には、支持機構に設けているピッチ送り方向開口を通じてレーザ光を基板の被加工面に照射できるようにしたのである。このようなものであれば、走行方向に延伸する溝だけでなく、ピッチ送り方向に延伸する溝をも短いタクトタイムで形成することが可能になる。
【0010】
前記支持機構は、前記架台に対して動かないよう保定した基板及び架台に対して前記走行方向にも相対移動できるものとすることが好ましい。その場合、前記支持機構の前記走行方向に沿った寸法は、加工対象である前記基板のそれよりも大きくすることが望ましい。
【0011】
前記ピッチ送り方向開口が、前記支持機構における前記走行方向に沿った端部に設けられていれば、太陽電池の製造過程の後期にて「横切り」加工を速やかに実施することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遮走行方向に延伸する溝だけでなく、ピッチ送り方向に延伸する溝を形成するような加工をも速やかに実施できる好適なレーザ加工機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態のレーザ加工機を示す分解斜視図。
【図2】同レーザ加工機の支持機構及び搬送装置を示す平面図。
【図3】同レーザ加工機の支持機構及び搬送装置を示す平面図。
【図4】同レーザ加工機の支持機構及び搬送装置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。はじめに、本発明の適用対象となる加工機1の例を述べる。図1ないし図4に示すレーザ加工機1は、薄膜太陽電池の製造工程において使用されるものであり、ガラス基板9の被加工面である上表面に製膜される薄膜、例えば透明導電膜や、発電層である光電変換膜、裏面電極膜等にレーザ光を照射して、当該薄膜を分断する分離溝等のパターニングを行うものである。この加工機1は、架台7及び支持機構4を備えた本体と、支持機構4の下方に配置した加工ノズル3と、支持機構4の上方に吊設した集塵ノズル(図示せず)とを具備する。なお、図1では、加工対象物である基板9を加工機1に搬入し、または加工機1から搬出するための搬送装置2と、レーザ光を照射する加工ノズル3等とを分解して図示している。
【0015】
以降、説明の簡明化のため、加工ノズル3及び集塵ノズルが薄膜に分離溝を形成するべく往復走行する方向(Y軸方向)を前後方向、加工ノズル3及び集塵ノズルがピッチ送りする方向(X軸方向)を左右方向と定義して記述する。
【0016】
支持機構4は、レーザ加工機1に搬入した基板9の広範囲を支持し、基板9の自重による撓みを抑制して加工精度の維持に寄与する。なお、この支持機構4は、本実施形態の加工機用搬送装置2の構成要素の一である。支持機構4は、台枠を主体とする。台枠4は、架台7に固設される本体フレーム71により、加工ノズル3やXYステージ32等と衝突しない高さに持ち上げてある。この台枠4は、前後方向に拡張し上下に貫通した複数の走行方向開口たる開口窓41を左右方向に複数配列し、かつそれら開口窓41の前後方向の両端部に、左右方向に拡張し上下に貫通したピッチ送り方向開口たる開口窓45を連接したような平面視形状をなす。開口窓41の個数は、加工ノズル3の本数に等しい。加工ノズル3から出射するレーザ光は、開口窓41または開口窓45を通過する。
【0017】
台枠4の開口窓41、45の周縁部には、自由に回転することのできる摩擦軽減体たる転動体42を多数、前後左右に散開させて設けている。転動体42は、例えばいわゆるボールベアである。搬入した基板9は、これら転動体42の上に載せ置かれる。
【0018】
台枠4は、その前後端部に設けたレール機構43を介して、左右方向に移動可能としてある。台枠4の左右方向の移動を惹起するねじ送り機構44は、ピッチ送り用モータにより駆動されて、台枠4をレール43に沿って左右方向に変位させる。
【0019】
さらに、レール機構43、ねじ送り機構44及びピッチ送り用モータは、レール機構46を介して、前後方向に移動可能としてある。台枠4と本体フレーム71との間に介設した、台枠4の前後方向の移動を惹起するねじ送り機構47は、前後移動用モータにより駆動されて、台枠4をレール46に沿って前後方向に変位させる。総じて言えば、開口窓41、45を有する台枠4が、架台7(または、本体フレーム71)に対して相対的に前後及び左右に変位することが可能となっている。
【0020】
この台枠4の前後方向寸法は、加工対象である基板9のそれよりも大きい。特に、開口窓41の前後方向寸法が、基板9の前後方向寸法に匹敵するか、それよりも大きくなっている。
【0021】
図3及び図5に示すように、加工ノズル3は、XYステージ32に支持させている。XYステージ32は、前後方向に延伸するY軸レール321と、Y軸レール321に案内されて前後方向に走行するとともに左右方向に拡張してその上部にX軸レール323を設けているX軸ユニット322と、X軸レール323に案内されて左右方向にピッチ送り移動する台車324とを備えてなる。X軸ユニット322、台車324はともに、リニアサーボ可動子を駆動源とするリニアモータ台車である。本実施形態では、X軸ユニット322に複数基の台車324を配し、各台車324にそれぞれ加工ノズル3を搭載している。これらX軸ユニット322、台車324はそれぞれ、加工ノズル3を基板9に対して相対的に左右方向、前後方向に移動させる移動機構を構成する。
【0022】
XYステージ32には、リニアスケール33、34が付帯する。X軸リニアスケール33は、加工ノズル3の左右方向の位置を検出するための位置検出機構、Y軸リニアスケール34は、加工ノズル3の前後方向の位置を検出するための位置検出機構である。X軸リニアスケール33は、例えば、各ノズル3を支持する台車324にそれぞれ設けた磁気センサヘッドと、X軸ユニット322に設けた磁気格子縞を目盛りとした磁気式リボンスケールとを要素とする。そして、磁気センサヘッドでリボンスケールの目盛りを読み取ることにより、各台車324ひいては各ノズル3のX軸方向位置を検知してその位置を指し示す信号を出力する。同様に、Y軸リニアスケール34も、X軸ユニット322に設けた磁気センサヘッドと、Y軸レール321に沿って設けた磁気式リボンスケールとを要素とし、X軸ユニット322ひいてはノズル3のY軸方向位置を検知してその位置を指し示す信号を出力する。
【0023】
加工ノズル3は、複数種類のレーザ光、例えば波長1064nmの赤外レーザビームや、波長532nmの緑色レーザビーム等を薄膜に照射する。各加工ノズル3にはそれぞれ、レーザ発振器(図示せず)から供給される複数種類のレーザ光を導く複数本の光ファイバ31を接続している。レーザ発振器から供給されるレーザ光は、光ファイバ31を通じて加工ノズル3に導入され、加工ノズル3内の集光レンズ等の光学系を経て、ノズル上部の出射端から鉛直上方に出射する。
【0024】
集塵ノズルは、薄膜をパターニングすることで基板9の被加工面上に発生する粉塵を吸引するために存在する。集塵ノズルは、下向きに開口するとともに左右方向に延伸するスロット状の吸引口を有する。集塵ノズルは、ダクト(図示せず)を介して集塵機(図示せず)と接続している。集塵ノズル及びダクトは、加工ノズル3に追随して前後方向に往復走行可能である。
【0025】
続いて、本実施形態の加工機用搬送装置に関して詳述する。加工機用搬送装置は、基板9を加工機1に搬入/加工機1から搬出するための装置であって、基板9に対しレーザ光を照射して加工を行う際にその基板9を下方から支持する支持機構4と、支持機構4に散開させて設けられて基板9の下面が載置される摩擦軽減体たる転動体42と、転動体42に載置される基板9の側端面に当接して当該基板9を移送する搬送機構と、転動体42に載置される基板9の側端面に当接して基板9の位置決めを行う位置決め部材とを具備する。支持機構4及び転動体42については、既に述べた通りである。
【0026】
本実施形態の搬送装置2は、基板9をY軸方向に沿って後方または前方に搬送する。搬送機構は、転動体42に載置される基板9の側端面に接して基板9を後方または前方に送り出す駆動輪21と、駆動輪21を支持するとともに駆動輪21を左右方向の内外に変位させることができ、駆動輪21を転動体42に載置される基板9の側端面に向けて押圧する支持部材22とを備えてなる。
【0027】
駆動輪21は、台枠4(の転動体42)の上面に臨む高さ位置に所在している。駆動輪21は、駆動源から回転駆動力の供給を受けて回転する。駆動輪21の駆動源は、典型的には電動モータである。図示例では、モータにより回転駆動される回転軸23と駆動輪21とを巻掛伝動機構(ベルト及びプーリ、またはチェーン及びスプロケット)を介して接続し、回転軸23から駆動輪21に回転駆動力を伝達するようにしている。回転軸23、ひいては駆動輪21は、正逆両方向に回転可能である。
【0028】
支持部材22は、その先端側に駆動輪21が設けられるとともに、その基端側を中心として略水平に旋回即ち揺動することが可能である。前記回転軸23は、支持部材22の回転中心またはその近傍に設けられる。支持部材22は、コイルばね、板ばね、ガススプリングその他適宜の弾性付勢部材を用いて、その先端側を左右方向の内側方に向けるように弾性付勢されている。
【0029】
図2ないし図4に示しているように、駆動輪21及び支持部材22は、加工機1における左右両側に存在し、それぞれの側に複数設置してある。図2に示しているように、支持機構4に基板9を支持させていない段階では、駆動輪21が台枠4の側端縁よりも内側方、さらに言えば(台枠4に載置されることになる)基板9の側端面よりも内側方に位置づけられる。
【0030】
保定機構たる位置決め部材5は、レーザ加工時に基板9を保定する役割を担うものであり、支持機構4の傍らに設けた保定用押付体(板)を主体とする。保定用押付体5は、台枠4の側端縁よりも外側方、かつ台枠4(の転動体42)の上面に臨む高さ位置に所在している。保定用押付体5は、エアシリンダ等のアクチュエータにより駆動され、その先端側を左右方向の内外に変位させることができる。なお、左右の保定用押付体5のうちの一方側を不動とし、基板9の位置決めの基準としてもよい。因みに、保定用押付体5に替えて、あるいは保定用押付体5とともに、基板9を挟持するクランプや基板9に吸着する吸盤等を採用しても構わない。
【0031】
レーザ加工を実行するにあたっては、まず、薄膜を製膜した被加工面を上にした基板9を前方から搬入する。基板9が台枠4上に持ち込まれると、基板9の側端面よりも内側方に位置していた駆動輪21が基板9の側端面に当接する。また、駆動輪21を支持している支持部材22の先端側が、基板9の側端面によって外側方に押しやられるので、支持部材22が原位置から外側方に回動する。支持部材22はその先端側が内側方(即ち、原位置)に向かうよう弾性付勢されていることから、支持部材22に支持された駆動輪21は基板9の側端面に密接するように押圧される。この状態で駆動輪21を回転駆動させれば、回転駆動力が駆動輪21から基板9の側端面に伝わり、転動体42に載置された基板9を前方から後方へと送り込むことができる。
【0032】
本実施形態では、駆動輪21及び支持部材22を、前後に複数配列している。図2、図3、図4に順次示すように、基板9が前方から後方に移動してゆくにつれ、駆動輪21が前方にあるものから順に基板9の側端面に当接し、並びに、支持部材22が前方にあるものから順に弾性付勢力に抗して外側方に回動する。
【0033】
基板9が台枠4上の加工に適した位置まで送り込まれると、駆動輪21の回転が停止し、すぐさま保定用押付体5が内側方に進出して基板9の側端面に圧接する。つまり、保定用押付体5が左右両側から基板9を挟み付けて、この基板9を架台7に対して位置決めしながら保定する。
【0034】
上記の結果、図4に示すように、基板9の前後方向の略全域が、開口窓41の範囲内にあるように位置づけられる。しかる後、加工ノズル3を所要の加工部位に移動させてレーザ光を上向きに発射し、基板9を透過させて被加工面にある薄膜に照射する。具体的には、X軸ユニット322を前後方向に走行させながら連続波レーザまたはパルスレーザを連続的に照射して、前後方向に延伸した分離溝を薄膜に形成する。レーザ光軸は、開口窓41内を通る。同時に、集塵ノズルの吸引口を恒常的にレーザ光の照射部位の直上に位置づける。その上で、集塵機を運転して、照射部位から発生する粉塵の集塵を行う。
【0035】
さらに、加工ノズル3を搭載した台車324を左右方向にピッチ送り移動させ、分離溝の形成位置を遷移させる。同時に、レーザ光軸が台枠4に干渉しないよう、台車324に連動して台枠4をも左右方向に移動させる。このとき、基板9を支える台枠4が基板9に対して相対的に変位することになるが、基板9の下面と台枠4の上面との間に転動体42が介在しておりこれが回転するため、台枠4の移動は妨げられない。リニアモータ台車324による加工ノズル3のピッチ送りは瞬間的である一方、ねじ送り機構44による台枠4のピッチ送りは加工ノズル3の走行中を含めて略等速運動であるが、分離溝の形成工程において、レーザ光軸は常時開口窓41内にある。
【0036】
分離溝の切削形成が完了したら、次に、基板9の前端部及び/または後端部における薄膜の除去、「横切り」を行う。「横切り」では、基板9の前端縁や後端縁に沿って左右方向に延伸した溝を切削する。そこで、レーザ光軸が台枠4に干渉しないよう、「横切り」に先んじて台枠4をねじ送り機構47により前方または後方に移動させ、開口窓45が基板9の前端部または後端部の下方にあるように位置づける。やはり、基板9を支える台枠4が基板9に対して相対的に変位することになるが、基板9の下面と台枠4の上面との間に介在する転動体42が回転するので、台枠4の移動は妨げられない。
【0037】
「横切り」では、X軸ユニット322を基板9の前端部に臨ませるように前進、または後端部に臨ませるように後退させる。そして、各加工ノズル3の台車324を各々左右方向にピッチ送り移動させながら連続波レーザまたはパルスレーザを連続的に照射し、それらノズル3からのレーザが切削する溝を繋いだ、左右方向に伸びる一本の切削溝を薄膜に形成する。レーザ光軸は、開口窓45内を通る。集塵ノズルの吸引口をレーザ光の照射部位の直上に位置づける。その上で、集塵機を運転して、照射部位から発生する粉塵の集塵を行う。
【0038】
レーザ加工が完了したら、基板9を後方に搬出する。即ち、保定用押付体5を外側方に退避させることで基板9の保定を解除する。そして、すぐさま駆動輪21を回転駆動する。
【0039】
基板9を加工機1の前方に搬出するのであれば、駆動輪21を搬入時とは逆方向に回転駆動する。さすれば、回転駆動力が駆動輪21から基板9の側端面に伝わり、転動体42に載置された基板9を後方から前方へと送り出すことができる。図4、図3及び図2の順に示すように、基板9が後方から前方に移動してゆくにつれ、駆動輪21が後方にあるものから順次基板9の側端面から離脱し、並びに、支持部材22が後方にあるものから順に弾性付勢力により内側方に回動して原位置に復帰する。
【0040】
基板9を加工機1の後方に搬出するのであれば、駆動輪21を搬入時と同方向に回転駆動する。基板9が前方から後方に移動してゆくにつれ、駆動輪21が前方にあるものから順次基板9の側端面から離脱し、支持部材22が前方にあるものから順に内側方に回動することは言うまでもない。
【0041】
本実施形態では、架台7と、レーザ加工が施される被加工面を上にした基板9をレーザ加工時に前記架台7に対して動かないよう保定する保定機構5と、所定の走行方向即ち前後方向に走行して前記基板9の被加工面にレーザ光を照射しかつその走行方向とは交差したピッチ送り方向即ち左右方向にも移動可能な加工ノズル3と、前記基板9を下方から支持しながらレーザ加工時に保定した基板9及び架台7に対して前記ピッチ送り方向に相対移動しレーザ光軸との干渉を回避可能な支持機構4とを具備し、前記支持機構4が、前記走行方向に沿って延伸し前記ピッチ送り方向に沿って配列された前記加工ノズル3の光軸を通すための複数の走行方向開口41と、前記走行方向開口41の周縁部に散開させて設けられ前記基板9の下面が載置される摩擦軽減体42と、ピッチ送り方向に沿って延伸した加工ノズル3の光軸を通すためのピッチ送り方向開口45とを備えているレーザ加工機1を構成した。
【0042】
本実施形態によれば、「横切り」等の加工を実施する際にピッチ送り方向開口45を通じてレーザ光を基板9の被加工面に照射することができるため、走行方向に延伸する溝だけでなく、ピッチ送り方向に延伸する溝をも短いタクトタイムで形成することが可能になる。
【0043】
前記支持機構4は、前記架台7に対して動かないよう保定した基板9及び架台7に対し、前記走行方向にも相対移動可能であるため、走行方向に延伸する溝を形成するときには走行方向開口41を利用できるように(走行方向開口41を基板9の加工対象領域下に位置づけるべく)支持機構4を移動させ、ピッチ送り方向に延伸する溝を形成するときにはピッチ送り方向開口45を利用できるように(ピッチ送り方向開口45を基板9の加工対象領域下に位置づけるべく)支持機構4を移動させることが容易である。
【0044】
前記支持機構4の前記走行方向に沿った寸法は、前記基板9のそれよりも大きいため、ピッチ送り方向開口45を基板9の加工対象領域下に位置づけた場合でも、支持機構4が基板9の略全域を支持し続けることができる。
【0045】
前記ピッチ送り方向開口45を、前記支持機構4における前記走行方向に沿った端部即ち前端部及び/または後端部に設けていることから、基板9の前端部及び/または後端部に存在する薄膜を切削する「横切り」加工が簡便になる上、走行方向に延伸する溝を形成するときにはピッチ送り方向開口45を基板9の加工対象領域下から前方または後方に退避させておくことができる。換言すれば、走行方向に延伸する溝を基板9の略全域に亘って形成することが可能となる。
【0046】
なお、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、摩擦軽減体たる転動体42を走行方向開口41の周縁部に間欠的に設けていたが、転動体42の個数を増やし、走行方向開口41の周縁部を覆うように設けてもよい。
【0047】
上記実施形態では、ピッチ送り方向開口45の開口縁部には必ずしも転動体42を設けていない。特に、支持機構たる台枠4の前端縁及び後端縁を形成する桟の部分に転動体42を設けていなかったが、ピッチ送り方向開口45の開口縁部にも複数の転動体42を設けてよいことは言うまでもない。
【0048】
摩擦軽減体は、転動体42には限られない。不動の基板9に対して台枠4を支障なく相対移動させ得る程度まで、基板9の下面と台枠4との間の摩擦を軽減できるようなものであれば、転動体42以外の態様の摩擦軽減体を採用しても構わない。例えば、走行方向開口41の周縁部(さらには、ピッチ送り方向開口45の周縁部)に、転動体42に替わる摩擦軽減体として、上向きに無数の毛を生やしたブラシを設けておき、ブラシの毛先が基板9の下面に接して基板9を下方より支持する態様をとることが考えられる。
【0049】
ピッチ送り方向に拡張するピッチ送り方向開口45を、台枠4の前後端部以外の部位、例えば前後方向の中間部に設けてもよい。さすれば、基板9の前後端部以外の部位に、ピッチ送り方向に延伸した溝を形成するレーザ加工を施すことが容易となる。この場合、走行方向開口41の連続性がピッチ送り方向開口45によって寸断され、基板9の前端部から後端部まで一貫して延伸する溝を一時に切削形成することが妨げられる。しかしながら、ピッチ送り方向開口45の前後にある走行方向開口41を通じて走行方向に延伸する溝を切削した後、台枠4を基板9に対し走行方向に沿って相対移動させて溝の分断箇所に走行方向開口41を臨ませ(即ち、溝の分断箇所からピッチ送り方向開口45を退避させ)れば、走行方向開口41を通じてその分断箇所に走行方向に溝を切削し、分断箇所を連絡して基板9の前端部から後端部まで連続する溝を完成させることができる。あるいは、ピッチ送り方向開口45の前方及び/または後方にある走行方向開口41の前後寸法を、基板9の走行方向に沿った寸法に匹敵する、またはそれを上回るくらい大きく設定してもよい。
【0050】
架台7、搬送装置2、保定機構5等の態様は、上記実施形態の如きものに限定されないことは言うまでもない。
【0051】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、例えば太陽電池パネル、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の製造工程における、薄膜のレーザスクライブまたはアブレーション等を実施する加工機として利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…レーザ加工機
3…加工ノズル
4…支持機構
41…走行方向開口
42…摩擦軽減体
45…ピッチ送り方向開口
5…保定機構
9…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、
レーザ加工が施される被加工面を上にした基板をレーザ加工時に前記架台に対して動かないよう保定する保定機構と、
所定の走行方向に走行して前記基板の被加工面にレーザ光を照射しかつその走行方向とは交差したピッチ送り方向にも移動可能な加工ノズルと、
前記基板を下方から支持しながらレーザ加工時に前記架台に対して動かないよう保定した基板及び架台に対して前記ピッチ送り方向に相対移動しレーザ光軸との干渉を回避可能な支持機構とを具備し、
前記支持機構が、
前記走行方向に沿って延伸し前記ピッチ送り方向に沿って配列された前記加工ノズルの光軸を通すための複数の走行方向開口と、
前記走行方向開口の周縁部に散開させて、または走行方向開口の周縁部を覆うように設けられて前記基板の下面が載置される摩擦軽減体と、
ピッチ送り方向に沿って延伸した加工ノズルの光軸を通すためのピッチ送り方向開口と
を備えていることを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記支持機構が、前記架台に対して動かないよう保定した基板及び架台に対して前記走行方向にも相対移動することができる請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記支持機構の前記走行方向に沿った寸法が前記基板のそれよりも大きい請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記ピッチ送り方向開口が、前記支持機構における前記走行方向に沿った端部に設けられている請求項1、2または3記載のレーザ加工機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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