説明

レーザ加工装置およびレーザ加工方法

【課題】薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させる。
【解決手段】測定位置PSa,PSbが、レーザ光の照射中心PLから閾値距離DT1以上離れ、かつ、x軸の正および負の方向並びにy軸の正および負の方向の4方向の全てにおいて、照射中心PLから閾値距離DT2以上離れた測定位置が少なくとも1つ存在するように、薄膜太陽電池パネルの加工面のz軸方向の変位を測定する変位計201a,201bが加工ヘッド133の下面133Aに設置されている。薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションを行う場合、加工対象となる辺からパネルの内側に向かう方向に最大想定距離DS以上離れた測定位置において測定を行う変位計201を選択し、選択した変位計201による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御する。本発明は、例えば、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションを行うレーザ加工装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置およびレーザ加工方法に関し、特に、レーザ光を用いてエッジデリーションを行う場合に用いて好適なレーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに隣接する薄膜太陽電池パネル間の電気絶縁性を強化するために、薄膜太陽電池パネルの周縁部の薄膜を除去するエッジデリーションが行われている(例えば、特許文献1参照)。ここで、図1を参照して、エッジデリーションの概要について説明する。
【0003】
エッジデリーションの工程では、例えば、レーザ光を出射する加工ヘッドを、薄膜太陽電池パネル1の4辺に沿って移動させるとともに、加工ヘッドの移動方向と垂直な方向にレーザ光を走査する。これにより、セル集積領域11を囲む所定の幅の周縁領域12の薄膜が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−109041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄膜太陽電池パネル1の薄膜を除去する面である加工面は、たわみ、歪み、そりなどにより、必ずしも平坦であるとは限らない。従って、加工ヘッドと薄膜太陽電池パネル1との間の距離が変動し、レーザ光の焦点が加工面からずれてしまい、薄膜が完全に剥離されずに残り、薄膜太陽電池パネル1の絶縁性などの品質が低下する恐れがある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置は、レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置であって、レーザ光が基板に照射される位置の近傍の所定の複数の測定位置において基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、レーザ光を出射する出射口および複数の測定手段を備え、加工面に垂直な軸回りに回転しない出射手段と、出射手段と基板のうち少なくとも一方を動かし、出射手段と基板の間の相対位置を、加工面に平行で、かつ、互いに直交する4方向に移動させることが可能な移動手段と、測定に使用する測定手段を選択する選択手段と、選択された測定手段による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御する焦点位置制御手段とを備え、全ての測定位置がレーザ光の照射範囲の中心である照射中心から所定の第1の距離以上離れ、かつ、4方向の全てにおいて、照射中心から所定の第2の距離以上離れた測定位置が少なくとも1つ存在し、出射手段と基板の間の相対位置を基板の端部に沿って移動させながら基板の端部を加工する場合、選択手段は、基板の端部から基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた測定位置において測定を行う測定手段を選択する。
【0008】
本発明の第1の側面のレーザ加工装置においては、出射手段と基板の間の相対位置を基板の端部に沿って移動させながら基板の端部を加工する場合、基板の端部から基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた測定位置において測定を行う測定手段が選択され、選択された測定手段による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置が制御される。
【0009】
従って、レーザ光の焦点を確実に基板の加工面に合わせることができ、加工精度が向上する。その結果、例えば、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させることができる。
【0010】
この測定手段は、例えば、レーザ変位計により構成される。この出射手段は、例えば、レーザ光を出射する加工ヘッドにより構成される。この移動手段は、例えば、リニアモータなどの駆動手段により構成される。この選択手段は、例えば、各種のコンピュタ、プロセッサ、PLC(Programmable Logic Controller)などにより構成される。この焦点位置制御手段は、例えば、加工ヘッドおよび基板の少なくとも一方を動かして、加工ヘッドと基板との間の距離を制御する駆動手段、または、レーザ光の光学系のレンズ等の位置を制御する焦点制御手段などにより構成される。この第1の距離は、例えば、パネル変位の測定精度を所定のレベル以上に保つために、測定位置を照射中心から離す必要がある距離に設定される。この第2の距離は、例えば、加工対象となる辺と照射中心との間の距離により変動し、加工対象となる辺と当該辺の加工時に選択される測定位置との間の距離が、薄膜太陽電池パネルの回り込み領域の想定される最大幅より大きくなるように設定される。この第3の距離は、例えば、薄膜太陽電池パネルの回り込み領域の想定される最大幅より大きい値に設定される。
【0011】
このレーザ加工装置においては、3つの測定手段を設け、3つの測定手段による3つの測定位置のうちの少なくとも1つの照射中心に対する方向が、4方向の全てに対して斜めに設定されるようにすることができる。
【0012】
これにより、少ない数の測定手段により、基板の加工面の高さ方向の位置を正確に測定することができる。
【0013】
このレーザ加工装置においては、2つの測定手段を設け、2つの測定手段による2つの測定位置が、照射中心に対して対称な方向に配置され、それぞれの測定位置の照射中心に対する方向が、4方向の全てに対して斜めに設定されるようにすることができる。
【0014】
これにより、より少ない数の測定手段により、基板の加工面の高さ方向の位置を正確に測定することができる。
【0015】
この焦点位置制御手段には、基板の周縁から第3の距離以内の第1の領域より内側の第2の領域内に測定位置が存在しない場合、事前に第2の領域内において測定された加工面の高さ方向の位置に基づいてレーザ光の焦点位置を制御させることができる。
【0016】
これにより、より確実にレーザ光の焦点を基板の加工面に合わせることができ、加工精度をより向上させることができる。
【0017】
本発明の第1の側面のレーザ加工方法においては、レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置であって、レーザ光が基板に照射される位置の近傍の所定の複数の測定位置において基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、レーザ光を出射する出射口および複数の測定手段を備え、加工面に垂直な軸回りに回転しない出射手段と、出射手段と基板のうち少なくとも一方を動かし、出射手段と基板の間の相対位置を、加工面に平行で、かつ、互いに直交する4方向に移動させることが可能な移動手段とを備えるレーザ加工装置によるレーザ加工方法であって、全ての測定位置がレーザ光の照射範囲の中心である照射中心から所定の第1の距離以上離れ、かつ、4方向の全てにおいて、照射中心から所定の第2の距離以上離れた測定位置が少なくとも1つ存在し、出射手段と基板の間の相対位置を基板の端部に沿って移動させながら基板の端部を加工する場合、基板の端部から基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた測定位置において測定を行う測定手段を選択し、選択された測定手段による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御する。
【0018】
本発明の第1の側面のレーザ加工方法においては、出射手段と基板の間の相対位置を基板の端部に沿って移動させながら基板の端部を加工する場合、基板の端部から基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた測定位置において測定を行う測定手段が選択され、選択された測定手段による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置が制御される。
【0019】
従って、レーザ光の焦点を確実に基板の加工面に合わせることができ、加工精度が向上する。その結果、例えば、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させることができる。
【0020】
この測定手段は、例えば、レーザ変位計により構成される。この出射手段は、例えば、レーザ光を出射する加工ヘッドにより構成される。この移動手段は、例えば、リニアモータなどの駆動手段により構成される。測定手段の選択は、例えば、各種のコンピュタ、プロセッサ、PLC(Programmable Logic Controller)などにより実行される。焦点位置の制御は、例えば、加工ヘッドおよび基板の少なくとも一方を動かして、加工ヘッドと基板との間の距離を制御する駆動手段、または、レーザ光の光学系のレンズ等の位置を制御する焦点制御手段などにより実行される。この第1の距離は、例えば、パネル変位の測定精度を所定のレベル以上に保つために、測定位置を照射中心から離す必要がある距離に設定される。この第2の距離は、例えば、加工対象となる辺と照射中心との間の距離により変動し、加工対象となる辺と当該辺の加工時に選択される測定位置との間の距離が、薄膜太陽電池パネルの回り込み領域の想定される最大幅より大きくなるように設定される。この第3の距離は、例えば、薄膜太陽電池パネルの回り込み領域の想定される最大幅より大きい値に設定される。
【0021】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置は、レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置において、前記レーザ光が前記基板に照射される位置から、前記レーザ光によって測定に影響を受けない距離以上離れた測定位置において前記基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、前記レーザ光を出射する出射口および複数の前記測定手段を備えた出射手段と、前記出射手段と前記基板のうち少なくとも一方を動かし、前記出射手段を前記基板周辺に沿って移動させる移動手段と、測定に使用する前記測定手段を選択する選択手段と、選択された前記測定手段による測定結果に基づいて、前記レーザ光の焦点位置を制御する焦点位置制御手段とを備え、前記基板の周辺を加工するときに、前記選択手段は、前記レーザ光の照射位置に対して前記基板の内側に位置する前記測定手段を選択する。
【0022】
本発明の第2の側面のレーザ加工装置においては、基板の周辺を加工するときに、レーザ光が基板に照射される位置から、レーザ光によって測定に影響を受けない距離以上離れた測定位置において基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段のうち、レーザ光の照射位置に対して基板の内側に位置する測定手段が選択され、選択された測定手段による測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置が制御される。
【0023】
従って、レーザ光の焦点を確実に基板の加工面に合わせることができ、加工精度が向上する。その結果、例えば、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させることができる。
【0024】
この測定手段は、例えば、レーザ変位計により構成される。この出射手段は、例えば、レーザ光を出射する加工ヘッドにより構成される。この移動手段は、例えば、リニアモータなどの駆動手段により構成される。この選択手段は、例えば、各種のコンピュタ、プロセッサ、PLC(Programmable Logic Controller)などにより構成される。この焦点位置制御手段は、例えば、加工ヘッドおよび基板の少なくとも一方を動かして、加工ヘッドと基板との間の距離を制御する駆動手段、または、レーザ光の光学系のレンズ等の位置を制御する焦点制御手段などにより構成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の側面または第2の側面によれば、レーザ光の焦点を確実に基板の加工面に合わせることができ、加工精度が向上する。その結果、例えば、薄膜太陽電池パネルのエッジデリーションの加工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】エッジデリーションについて説明するための図である。
【図2】本発明を適用したレーザ加工システムの一実施の形態を示す図である。
【図3】レーザ加工装置の構成例を示す図である。
【図4】レーザ加工装置に薄膜太陽電池パネルを設置した状態を上から見た模式図である。
【図5】加工ヘッドの構成例を模式的に示す図である。
【図6】パネル変位の測定位置の条件について説明するための図である。
【図7】パネル変位の測定位置の条件について説明するための図である。
【図8】パネル変位の測定位置の条件について説明するための図である。
【図9】パネル変位の測定位置の条件について説明するための図である。
【図10】パネル変位の測定位置の条件について説明するための図である。
【図11】制御部の機能の構成例を示すブロック図である。
【図12】レーザ加工システムにより実行されるエッジデリーション処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】レーザ加工システムにより実行されるエッジデリーション処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】エッジデリーションの加工方向の例を示す図である。
【図15】変位計を3つ設ける場合の第1の配置例を示す図である。
【図16】変位計を3つ設ける場合の第2の配置例を示す図である。
【図17】変位計を3つ設ける場合の第3の配置例を示す図である。
【図18】変位計を3つ設ける場合の第4の配置例を示す図である。
【図19】変位計を4つ設ける場合の第1の配置例を示す図である。
【図20】変位計を4つ設ける場合の第2の配置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0028】
<1.実施の形態>
[レーザ加工システムの構成例]
図2は、本発明を適用したレーザ加工システムの一実施の形態を示す図である。
【0029】
レーザ加工システム101は、薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションを行うシステムである。レーザ加工システム101は、搬入ローラコンベア111、シャッター112、レーザ加工装置113、シャッター114、搬出ローラコンベア115、および、パーソナルコンピュータ(以下、PCと称する)116により構成される。
【0030】
薄膜太陽電池パネル102は、搬入ローラコンベア111によりレーザ加工装置113に搬入される。そして、レーザ加工装置113で薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションが行われ、加工後の薄膜太陽電池パネル102が搬出ローラコンベア115により外部に搬出される。
【0031】
シャッター112およびシャッター114は、例えば、薄膜太陽電池パネル102の加工中に閉じられ、レーザ加工装置113内の加工空間を外部から遮断する。
【0032】
PC116は、レーザ加工装置113の制御に用いられる。例えば、ユーザは、エッジデリーションの実行に必要な加工制御情報をPC116に入力し、PC116は、加工制御情報をレーザ加工装置113に供給する。レーザ加工装置113は、その加工制御情報に基づいて、薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションを行う。また、例えば、ユーザは、PC116を介して、レーザ加工装置113に対して、起動、停止などの各種の指令を入力することが可能である。なお、PC116以外から、各種の指令を入力できるようにすることも可能である。
【0033】
[レーザ加工装置の構成例]
図3は、レーザ加工装置113の構成例を示す図である。また、図4は、レーザ加工装置113に薄膜太陽電池パネル102を設置した状態を上から見た模式図である。
【0034】
レーザ加工装置113は、レーザ発振器131、光ファイバ132、加工ヘッド133、ガントリ134、X−Yステージ135、ベルト搬送ホルダ136、リニアモータ137、サーボモータ138、搬送コンベア139、搬送ローラユニット140、集塵ダクト141、電源コントローラ142a,142b、冷却器143a,143b、および、制御部144により構成される。
【0035】
レーザ発振器131と加工ヘッド133は、光ファイバ132を介して接続されている。加工ヘッド133は、ガントリ134の前面に設けられている。ガントリ134は、X−Yステージ135の上面に設けられている。
【0036】
なお、以下、X−Yステージ135の幅方向をx軸方向とし、かつ、左から右に向かう方向を正の方向とする。また、以下、X−Yステージ135の奥行き方向をy軸方向とし、かつ、前から後ろに向かう方向を正の方向とする。さらに、以下、X−Yステージ135の高さ方向をz軸方向とし、かつ、下から上に向かう方向を正の方向とする。
【0037】
レーザ発振器131から出射されたレーザ光は、光ファイバ132を通って加工ヘッド133に入射する。加工ヘッド133は、レーザ光が出射される出射口133C(図5)が設けられている面が下を向くように、ガントリ134の前面に設けられている。そして、加工ヘッド133は、X−Yステージ135の上面に設けられているベルト搬送ホルダ136に載置される薄膜太陽電池パネル102(図4)にレーザ光を照射するとともに、薄膜太陽電池パネル102上でレーザ光を走査する。
【0038】
また、加工ヘッド133は、ガントリ134の前面に設けられているリニアモータ137によりx軸方向に平行移動することが可能である。さらに、ガントリ134は、左右の両脚の裏面に設けられている図示せぬリニアモータ(以下、ガントリ134の裏面のリニアモータと称する)により、y軸方向に平行移動することが可能である。これにより、加工ヘッド133と薄膜太陽電池パネル102の間の相対位置を、x軸の正および負の方向、並びに、y軸の正および負の方向の、互いに直交する4方向に移動し、レーザ光の照射位置を当該4方向に移動することができる。
【0039】
さらに、加工ヘッド133は、加工ヘッド133の裏面(ガントリ134の前面と対向する面)に設けられているサーボモータ138によりz軸方向に平行移動することが可能である。これにより、加工ヘッド133と薄膜太陽電池パネル102の間隔を調整し、加工ヘッド133から出射されるレーザ光の焦点位置を制御することができる。
【0040】
ベルト搬送ホルダ136は、ベルト搬送ホルダ136のx軸方向の両隣に設けられている搬送コンベア139および搬送ローラユニット140によりy軸方向に移動する。これにより、ベルト搬送ホルダ136の上面に載置されている薄膜太陽電池パネル102を、加工が行われる位置まで搬入したり、レーザ加工装置113から搬出したりすることができる。
【0041】
ベルト搬送ホルダ136の下方には、薄膜太陽電池パネル102の加工時に発生する加工屑などを集める集塵ダクト141が設けられている。
【0042】
電源コントローラ142a,142bは、レーザ発振器131に供給する電力の制御を行う。
【0043】
冷却器143a,143bは、レーザ発振器131および電源コントローラ142a,142b等の冷却を行う。
【0044】
制御部144は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)により構成される。制御部144は、PC116から供給される加工制御情報に基づいて、レーザ加工装置113の各部を制御し、薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションを実行させる。また、制御部144は、例えば、タッチパネルなどにより構成される操作部を有しており、ユーザは、その操作部を介して、レーザ加工装置113に対する各種の指令を入力することが可能である。
【0045】
[加工ヘッドの構成例]
図5は、加工ヘッド133の構成例を模式的に示す図である。なお、図5の左上の図は、加工ヘッド133の正面図であり、左下の図は、加工ヘッド133の下面図である。なお、加工ヘッド133の下面図では、右方向がx軸の正の方向となり、上方向がy軸の正の方向となる。
【0046】
加工ヘッド133の下面133Aには、レーザ光を出射する出射口133C、および、薄膜太陽電池パネル102の加工面の高さ方向の位置を測定する変位計201a,201bが設けられている。
【0047】
レーザ光は、加工ヘッド133の下面133Aに設けられている出射部133Bのほぼ中央にある出射口133Cから出射され、薄膜太陽電池パネル102に照射される。また、加工ヘッド133内には、ガルバノメータスキャナ271(図11)が設けられており、出射口133Cから出射されるレーザ光は、所定の範囲内においてx軸およびy軸の2軸方向に走査される。
【0048】
なお、以下、リニアモータ137、および、ガントリ134の裏面のリニアモータにより、加工ヘッド133を移動させてレーザ光を走査する方向を主走査方向と称し、主走査方向と直交する方向を副走査方向と称する。
【0049】
変位計201は、例えば、レーザ光を測定光に用いたレーザ変位計により構成される。より具体的には、変位計201は、測定対象となる薄膜太陽電池パネル102の加工面に測定光を照射する。そして、測定光が加工面で反射された反射光のうち変位計201の受光レンズに入射した光が、例えば、2次元CMOSイメージセンサなどにより構成される、変位計201内の検出素子において結像する。そして、変位計201は、検出素子における反射光の結像位置に基づいて、薄膜太陽電池パネル102の加工面の所定のz軸方向の基準位置に対する変位(以下、パネル変位と称する)を測定する。
【0050】
後述するように、このパネル変位の測定結果に基づいて、レーザ光の焦点が薄膜太陽電池パネル102の加工面に合うように、加工ヘッド133のz軸方向の位置が制御される。
【0051】
なお、加工ヘッド133の下面図の右隣の図は、薄膜太陽電池パネル102におけるレーザ光の照射位置、および、パネル変位の測定位置を示している。なお、この図では、右方向がx軸の正の方向となり、下方向がy軸の正の方向となる。
【0052】
照射位置PLは、出射口133Cから下面133Aに対して垂直にレーザ光が出射される場合のレーザ光の照射位置を示している。そして、ガルバノメータスキャナ271(図11)によりレーザ光が走査されることにより、レーザ光の照射位置は、照射位置PLを中心にしてx軸方向およびy軸方向に走査される。従って、レーザ光の照射範囲の中心は、照射位置PLと一致する。なお、以下、照射位置PLを照射中心PLとも称する。
【0053】
測定位置PSaは、変位計201aによるパネル変位の測定位置を示している。測定位置PSaは、変位計201aからの測定光が照射される位置(センサスポット)と一致する。また、測定位置PSbは、変位計201bによるパネル変位の測定位置を示している。測定位置PSbは、変位計201bからの測定光が照射される位置(センサスポット)と一致する。
【0054】
なお、以下、変位計201a,201bを個々に区別する必要がない場合、単に変位計201と称する。また、以下、測定位置PSa,PSbを個々に区別する必要がない場合、単に測定位置PSと称する。
【0055】
変位計201a,201bは、出射口133Cを中心にして対称な方向に配置されるとともに、出射口133Cに対する方向が、加工ヘッド133の進行方向(x軸方向およびy軸方向)に対して斜めになるように配置されている。より正確には、変位計201aは、出射口133Cに対してx軸の負の方向かつy軸の正の方向に、x軸およびy軸に対して約45°の位置に配置されている。また、変位計201bは、出射口133Cに対してx軸の正の方向かつy軸の負の方向に、x軸およびy軸に対して約45°の位置に配置されている。そして、照射中心PL、測定位置PSa、および、測定位置PSbの位置関係は、この出射口133C、変位計201a、および、変位計201bの間の位置関係とほぼ同様になる。
【0056】
なお、加工ヘッド133は、薄膜太陽電池パネル102の加工面に垂直な軸回りに回転しない。従って、照射中心PLおよび測定位置PSa,PSbは、加工ヘッド133の移動に伴ってx軸およびy軸方向に平行移動するのみであり、3者の間の相対方向は変わらない。
【0057】
なお、以下、変位計201が、出射口133Cを基準にして、加工ヘッド133の進行方向(x軸方向およびy軸方向)に対して斜めに配置されていることを、単に、変位計201が出射口133Cに対して斜めに配置されているという。
【0058】
[パネル変位の測定位置PSの設定条件]
ここで、図6乃至図10を参照して、パネル変位の測定位置PSの設定条件について説明する。
【0059】
まず、パネル変位の測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御することを考慮すると、測定位置PSは、レーザ光の照射中心PLになるべく近い方が良い。しかし、レーザ光の強度は、変位計201の測定光の強度と比較して非常に強いため、測定位置PSが照射中心PLに近すぎると、レーザ光の反射光が変位計201に入射し、誤差の原因となる。従って、パネル変位の測定精度を所定のレベル以上に保つためには、測定位置PSを照射中心PLから所定の距離(以下、閾値距離DT1と称する)以上離す必要がある。すなわち、測定位置PSの第1の設定条件は、以下のとおりとなる。
【0060】
設定条件1:照射中心PLから閾値距離DT1以上離す。
【0061】
この閾値距離DT1は、レーザ光の反射光による測定誤差を所定のレベル以下にするために必要な距離であり、レーザ光が反射される範囲と、その強度の分布により決定される。なお、レーザ光が反射される範囲と強度の分布は、例えば、レーザ光の強度、波長および走査範囲、薄膜太陽電池パネル102の材質、厚さ、表面の形状などの要因により変化する。
【0062】
しかし、照射中心PLから閾値距離DT1以上離れた位置においてパネル変位を測定するようにした場合、1つの変位計201だけでは、パネル変位を測定できない場合がある。例えば、図6は、加工ヘッド133の出射部133Bから離れた位置に変位計201を1つ設け、照射中心PLから離れた位置において、パネル変位を測定する場合を示している。この図のように、加工対象となる薄膜太陽電池パネル102の辺によって、変位計201から出射される測定光が薄膜太陽電池パネル102の外に照射され、パネル変位を正確に測定できない場合が発生する。
【0063】
従って、変位計201を複数設け、パネル変位を複数箇所で測定できるようにする必要がある。また、薄膜太陽電池パネル102においては、後述する半導体層の回り込みにより、パネル変位の測定誤差が発生する可能性があり、その対策についても検討する必要がある。ここで、複数箇所の測定位置PSの設定条件について検討する。
【0064】
図7は、薄膜太陽電池パネル102がシングル型である場合の積層構造の例を示している。なお、この図では、薄膜太陽電池パネル102の端部から離れた位置、および、薄膜太陽電池パネル102の端部の2箇所における階層構造の例を示している。
【0065】
この例において、薄膜太陽電池パネル102は、ガラス製の透明基板221、ITO、SnO2、ZnOなどのTCO(Transparent Conductive Oxide)からなる透明電極層222、α−Si(アモルファスシリコン)からなる半導体層223、Al電極からなる裏面電極層224の順に上から積層されている。そして、エッジデリーションにより、辺102A乃至102Dに沿った薄膜太陽電池パネル102の周縁部の透明電極層222乃至裏面電極層224が除去される。また、変位計201は、加工面である透明電極層222の表面(透明基板221と接する面)のパネル変位を測定する。
【0066】
この図に示されるように、薄膜太陽電池パネル102の端部では、製造プロセスの問題により、半導体層223の回り込みが発生し、半導体層223が、透明基板221の表面に付着する現象が発生する。なお、以下、半導体層223の回り込みにより、半導体層223が透明基板221の表面に付着した領域を回り込み領域231と称する。また、図7の薄膜太陽電池パネル102の平面図において、回り込み領域231を斜線で示される領域により模式的に示している。
【0067】
そして、変位計201からの測定光が回り込み領域231で反射されてしまうと、パネル変位の測定誤差が発生する。従って、測定位置PSをより正確に測定するためには、薄膜太陽電池パネル102の周縁から所定の距離(以下、最大想定距離DSと称する)の範囲内の領域(以下、最大想定領域と称する)より内側の領域に設定する必要がある。
【0068】
なお、この最大想定距離DSは、想定される回り込み領域231の最大幅以上の値(例えば、15mm)に設定される。従って、最大想定領域は、薄膜太陽電池パネル102の周縁部のロの字型の領域であって、半導体層223の回り込みが発生する可能性があると想定される領域を全て含む領域となる。
【0069】
図8は、変位計201a,201bの配置の一例を示している。なお、図8は、加工ヘッド133を上から見た場合の出射口133C、および、変位計201a,201bの位置を示している。この例では、変位計201a,201bが、出射口133Cを挟んでy軸方向に一列に並ぶように配置されている。
【0070】
この場合、例えば、薄膜太陽電池パネル102の辺102Bに沿って矢印A1の方向(y軸の正の方向)に加工ヘッド133を移動させながら辺102Bの加工を行うとき、変位計201a,201bのどちらを用いても、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができない。その結果、パネル変位の測定誤差が発生してしまう。
【0071】
なお、この問題は、変位計201a,201bを、出射口133Cを挟んでx軸方向に一列に並ぶように配置した場合も、同様に発生する。
【0072】
図9は、変位計201a,201bの配置の他の例を示している。この例では、変位計201a,201bは、出射口133Cを中心に直交するように配置されている。より正確には、変位計201aは、出射口133Cに対してx軸の正の方向に配置され、変位計201bは、出射口133Cに対してy軸の正の方向に配置されている。
【0073】
この場合、例えば、薄膜太陽電池パネル102の辺102Bに沿って矢印A1の方向(y軸の正の方向)に加工ヘッド133を移動させながら辺102Bの加工を行うとき、変位計201aを用いると、測定位置PSaが薄膜太陽電池パネル102の外に出てしまい、変位計201bを用いると、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができない。その結果、パネル変位の測定誤差が発生してしまう。
【0074】
なお、この問題は、変位計201a,201bのうち一方を、出射口133Cに対してx軸方向に配置し、他方を出射口133Cに対してy軸方向に配置する場合に発生する。
【0075】
そこで、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺を加工する場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定できるようにするには、x軸の正および負の方向、並びに、y軸の正および負の方向の4方向のそれぞれにいて、照射中心PLから所定の距離(以下、閾値距離DT2と称する)以上離れた測定位置PSが少なくとも1つ存在する必要がある。すなわち、測定位置PSの第2の設定条件は、以下のとおりとなる。
【0076】
設定条件2:x軸の正および負の方向、並びに、y軸の正および負の方向(加工ヘッド133が移動する方向)の各方向において、照射中心PLから閾値距離DT2以上離れた測定位置PSが少なくとも1つ存在する。
【0077】
なお、閾値距離DT2は、最大想定距離DSとほぼ同じ値になるが、加工対象となる辺と照射中心PLとの間の距離により変動する。すなわち、加工対象となる辺と照射中心PLとの間の距離が長くなるほど、閾値距離DT2は短くなり、加工対象となる辺と照射中心PLとの間の距離が短くなるほど、閾値距離DT2は長くなる。なお、照射中心PLは、薄膜太陽電池パネル102の内側を通過するものとする。
【0078】
そして、測定位置PSが設定条件1および設定条件2を満たすように、変位計201を設置することにより、加工に用いるレーザ光および回り込み領域231の影響を避けて、パネル変位を測定することができ、測定精度が向上する。
【0079】
例えば、本実施形態のように変位計201a,201bを配置した場合、図10に示されるように、辺102Aおよび辺102Bを加工する場合、変位計201aが薄膜太陽電池パネル102の内側に位置し、辺102Cおよび辺102Dを加工する場合、変位計201bが薄膜太陽電池パネル102の内側に位置する。すなわち、いずれの辺の加工時にも、少なくとも一方の変位計201が薄膜太陽電池パネル102の内側に位置する。従って、測定位置PSaの照射中心PLからのx軸の負の方向およびy軸の正の方向の距離がともに閾値距離DT2以上となるように変位計201aを設置し、測定位置PSbの照射中心PLからのx軸の正の方向およびy軸の負の方向の距離がともに閾値距離DT2以上となるように変位計201bを設置することで、設定条件2を満たすことができる。
【0080】
例えば、変位計201aは、出射口133Cの中心からx軸の負の方向に30mm〜50mmかつy軸の正の方向に30mm〜50mm離れた位置に配置される。また、例えば、変位計201bは、出射口133Cの中心からx軸の正の方向に30mm〜50mmかつy軸の負の方向に30mm〜50mm離れた位置に配置される。
【0081】
なお、測定位置PSは、測定精度をより向上させるために、設定条件1および設定条件2を満たす範囲内で、なるべく照射中心PLに近い位置に設定することが望ましい。
【0082】
[制御部144の機能の構成例]
次に、図11を参照して、制御部144の機能の構成例について説明する。制御部144は、所定の制御プログラムを実行することにより、加工ヘッド制御部251、全体制御部252、および、ステージ制御部253を含む機能を実現する。
【0083】
加工ヘッド制御部251は、選択部261、焦点制御部262、および、レーザ制御部263を含むように構成される。
【0084】
選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201aまたは変位計201bのいずれかを選択する。選択部261は、選択した変位計201からパネル変位の測定結果を取得し、焦点制御部262に供給する。
【0085】
焦点制御部262は、パネル変位の測定結果と加工ヘッド133のz軸方向の位置との対応関係を示すテーブル(以下、焦点制御テーブルと称する)を予め保持している。焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、パネル変位の測定結果および焦点制御テーブルに基づいて、サーボモータ138を制御して、加工ヘッド133のz軸方向の位置を調整する。この結果、レーザ光の焦点が、薄膜太陽電池パネル102の加工面に合わせられる。
【0086】
レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、レーザ発振器131を制御して、レーザ光の出射および停止、強度等を制御する。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133内に設けられているガルバノメータスキャナ271を制御して、レーザ光のx軸方向およびy軸方向の走査を制御する。
【0087】
全体制御部252は、PC116から加工制御情報を取得し、取得した加工制御情報に基づいて、制御部144の各部を制御して、薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションの制御を行う。なお、加工制御情報は、例えば、レーザ光の強度、加工ヘッド133の移動速度、各辺の始点および終点、加速マージン、減速マージン、加工マージン、測定マージン、加工順、使用変位計などを含む。ここで、加工制御情報に含まれる各要素の概要について説明する。
【0088】
レーザ光の強度は、エッジデリーションを行うときのレーザ光の強度を示す。
【0089】
加工ヘッド133の移動速度は、加工ヘッド133を主走査方向に等速移動させる際の速度を示す。
【0090】
各辺の始点は、各辺の加工を開始する位置(以下、加工開始点と称する)に対応する加工ヘッド133の位置を示す。すなわち、加工ヘッド133を各辺の始点に設定することにより、各辺の加工開始点に対して加工を行うことができる。
【0091】
各辺の終点は、各辺の加工を終了する位置(以下、加工終了点と称する)に対応する加工ヘッド133の位置を示す。すなわち、加工ヘッド133を各辺の終点に設定することにより、各辺の加工終了点に対して加工を行うことができる。
【0092】
加速マージンは、加工ヘッド133を停止した状態から上記の移動速度まで加速するために必要な距離を示す。
【0093】
減速マージンは、加工ヘッド133を上記の移動速度で等速している状態から停止させるまでに必要な距離を示す。
【0094】
加工マージンは、加工ヘッド133が始点に到達する前に加工を行う距離、および、加工ヘッド133が終点に到達した後、さらに加工を行う距離を示す。なお、レーザ加工装置113においては、加工漏れを防止するために、加工ヘッド133が各辺の始点に到達する前に加工を開始し、終点を過ぎた後もしばらく加工を継続する。
【0095】
測定マージンは、回り込み領域231を避けてパネル変位を測定するために必要な、薄膜太陽電池パネル102の端部からの距離を示し、例えば、上述した最大想定距離DSと同じ値に設定される。
【0096】
加工順は、薄膜太陽電池パネル102の各辺を加工する順番を示す。
【0097】
使用変位計は、加工対象となる薄膜太陽電池パネル102の辺、および、加工ヘッド133の位置と、パネル変位の測定に用いる変位計201との関係を示す。
【0098】
また、全体制御部252は、搬送コンベア139および搬送ローラユニット140を制御して、薄膜太陽電池パネル102の搬送、搬出、位置決め等を行う。さらに、全体制御部252は、集塵ダクト141(図3)に接続され、薄膜太陽電池パネル102の加工時に発生する加工屑などを収集する集塵機272を制御する。また、全体制御部252は、画像センサ273を制御して、薄膜太陽電池パネル102を撮影し、その結果得られた画像データを取得する。そして、全体制御部252は、取得した画像データに基づいて、薄膜太陽電池パネル102の加工状況を把握し、加工状況に応じて、加工ヘッド制御部251およびステージ制御部253を制御する。
【0099】
ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、加工ヘッド133のx軸方向の位置を制御する。また、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、図示せぬガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、ガントリ134のy軸方向の位置を制御することにより、加工ヘッド133のy軸方向の位置を制御する。
【0100】
[エッジデリーション処理]
次に、図12および図13のフローチャート、および、図14を参照して、レーザ加工システム101により実行されるエッジデリーション処理について説明する。なお、以下、薄膜太陽電池パネル102の辺102A、辺102B、辺102C、辺102Dの順番に加工が行われるものとする。
【0101】
ステップS1において、レーザ加工システム101は、初期設定を行う。具体的には、ユーザは、薄膜太陽電池パネル102のエッジデリーションに用いる加工制御情報をPC116に入力する。PC116は、入力された加工制御情報をレーザ加工装置113の制御部144の全体制御部252に供給する。
【0102】
搬入ローラコンベア111は、加工対象となる薄膜太陽電池パネル102をレーザ加工装置113内に搬入する。これにより、薄膜太陽電池パネル102が、レーザ加工装置113のベルト搬送ホルダ136に載置される。
【0103】
搬送コンベア139および搬送ローラユニット140は、全体制御部252の制御の基に、ベルト搬送ホルダ136をy軸方向に移動させて、薄膜太陽電池パネル102を所定の位置にセットする。
【0104】
ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137およびガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、最初に加工する薄膜太陽電池パネル102の辺102Aの始点から加速マージンだけx軸の負の方向に離れた位置に加工ヘッド133を移動させる。
【0105】
ステップS2において、ステージ制御部253は、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定できる位置まで、主走査方向に加工ヘッド133を移動する。具体的には、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、辺102Aの始点からx軸の正の方向に測定マージンだけ離れた位置まで、加工ヘッド133を、図14の矢印A11で示される方向(x軸の正の方向)に移動させる。これにより、変位計201aの測定位置PSaが、薄膜太陽電池パネル102の回り込み領域231より内側の領域に移動する。
【0106】
ステップS3において、変位計201aは、パネル変位の初期値を測定する。具体的には、選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201aを選択して、パネル変位の測定を開始させる。そして、選択部261は、変位計201aからパネル変位の測定結果を取得し、焦点制御部262に供給する。焦点制御部262は、取得したパネル変位を初期値として保持する。
【0107】
ステップS4において、ステージ制御部253は、加工ヘッド133を元の位置に戻す。すなわち、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、ステップS1の処理で設定されていた位置まで、加工ヘッド133を矢印A12の方向(x軸の負の方向)に移動させる。
【0108】
ステップS5において、レーザ加工装置113は、パネル変位を初期値に固定して加工する。具体的には、焦点制御部262は、上述した焦点制御テーブルに基づいて、パネル変位の初期値に対応する加工ヘッド133のz軸方向の位置を求め、サーボモータ138を制御して、求めた位置まで加工ヘッド133をz軸方向に移動させる。また、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、矢印A13の方向(x軸の正の方向)への加工ヘッド133の等速移動を開始させる。
【0109】
さらに、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Aの始点からx軸の負の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ発振器131を制御して、所定の強度のレーザ光の出射を開始させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、ガルバノメータスキャナ271を制御して、副走査方向(y軸方向)へのレーザ光の走査を開始させる。
【0110】
なお、このとき、パネル変位はステップS3の処理で測定された初期値に固定され、レーザ光の焦点位置が固定された状態で、辺102Aに対する加工が開始される。
【0111】
ステップS6において、ステージ制御部253は、測定位置PSaが回り込み領域231より内側に到達したか否かを判定する。ステップS6の判定処理は、測定位置PSaが回り込み領域231より内側に到達したと判定されるまで繰返し実行される。そして、ステージ制御部253は、辺102Aの始点からx軸の正の方向に測定マージンだけ離れた位置に加工ヘッド133が到達した場合、測定位置PSaが回り込み領域231(より正確には、回り込み領域231の最大想定領域)より内側に到達したと判定し、処理はステップS7に進む。
【0112】
ステップS7において、レーザ加工装置113は、パネル変位の測定結果に基づいてレーザ光の焦点位置を制御しながら加工する。具体的には、選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201aによるパネル変位の測定結果の焦点制御部262への供給を開始する。焦点制御部262は、焦点制御テーブルに基づいて、変位計201aによるパネル変位の測定結果に対応する加工ヘッド133のz軸方向の位置を求め、サーボモータ138を制御して、求めた位置まで加工ヘッド133をz軸方向に移動させる処理を開始する。これにより、レーザ光の焦点が、パネル変位に追従して薄膜太陽電池パネル102の加工面に常に合わせられた状態で、辺102Aに対する加工が行われる。
【0113】
ステップS8において、ステージ制御部253は、加工中の辺102Aの終点に加工ヘッド133が到達したか否かを判定する。ステップS8の判定処理は、加工中の辺102Aの終点に加工ヘッド133が到達したと判定されるまで繰返し実行され、加工中の辺102Aの終点に加工ヘッド133が到達したと判定された場合、処理はステップS9に進む。
【0114】
ステップS9において、レーザ加工装置113は、加工中の辺102Aの加工を終了する。具体的には、焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、レーザ光の焦点位置の制御を停止する。ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、加工ヘッド133の主走査方向の移動速度を減速し、最終的に停止させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Aの終点からx軸の正の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ光の出射を停止する。
【0115】
また、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137、および、ガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、辺102Bの始点からy軸の負の方向に加速マージンだけ離れた位置に加工ヘッド133を移動させる。
【0116】
ステップS10において、レーザ加工装置113は、パネル変位の測定結果に基づいてレーザ光の焦点位置を制御しながら加工する。具体的には、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、ガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、矢印A14の方向(y軸の正の方向)への加工ヘッド133(ガントリ134)の等速移動を開始させる。
【0117】
レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Bの始点からy軸の負の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ発振器131を制御して、所定の強度のレーザ光の出射を開始させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、ガルバノメータスキャナ271を制御して、副走査方向(x軸方向)へのレーザ光の走査を開始させる。
【0118】
焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Bの始点に到達した時点で、レーザ光の焦点位置の制御を開始する。このとき、変位計201aによるパネル変位の測定結果が、選択部261を介して焦点制御部262に継続して供給されている。従って、焦点制御部262は、ステップS7の処理と同様に、変位計201aによるパネル変位の測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御する処理を開始する。これにより、レーザ光の焦点が、パネル変位に追従して薄膜太陽電池パネル102の加工面に常に合わせられた状態で、辺102Bに対する加工が行われる。
【0119】
ステップS11において、ステージ制御部253は、測定位置PSaが回り込み領域231に到達したか否かを判定する。ステップS11の判定処理は、測定位置PSaが回り込み領域231に到達したと判定されるまで繰返し実行される。そして、ステージ制御部253は、辺102Bの終点からy軸の負の方向に測定マージンだけ離れた位置に加工ヘッド133が到達した場合、測定位置PSaが回り込み領域231(より正確には、回り込み領域231の最大想定領域)に到達したと判定し、処理はステップS12に進む。
【0120】
ステップS12において、レーザ加工装置113は、回り込み領域231に到達する直前のパネル変位に固定して加工する。具体的には、焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、ステップS11において測定位置PSaが回り込み領域231に到達したと判定される直前に変位計201aにより測定されたパネル変位を保持する。選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201aの測定を停止させ、焦点制御部262へのパネル変位の測定結果の供給を停止する。これにより、レーザ光の焦点が回り込み領域231(より正確には、回り込み領域231の最大想定領域)に到達する直前の位置に固定された状態で、辺102Bの加工が継続される。
【0121】
ステップS13において、ステージ制御部253は、加工中の辺102Bの終点に加工ヘッド133が到達したか否かを判定する。ステップS13の判定処理は、加工中の辺102Bの終点に加工ヘッド133が到達したと判定されるまで繰返し実行され、加工中の辺102Bの終点に加工ヘッド133が到達したと判定された場合、処理はステップS14に進む。
【0122】
ステップS14において、レーザ加工装置113は、加工中の辺102Bの加工を終了する。具体的には、焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、レーザ光の焦点位置の制御を停止する。ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、ガントリ134の裏面のリニアモータ制御して、加工ヘッド133(ガントリ134)の主走査方向の移動速度を減速し、最終的に停止させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Bの終点からy軸の正の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ光の出射を停止する。
【0123】
また、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137、および、ガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、辺102Cの始点からx軸の正の方向に加速マージンだけ離れた位置に加工ヘッド133を移動させる。
【0124】
ステップS15において、レーザ加工装置113は、パネル変位を固定したまま加工する。具体的には、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、リニアモータ137を制御して、矢印A15の方向(x軸の負の方向)への加工ヘッド133の等速移動を開始させる。
【0125】
レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Cの始点からx軸の正の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ発振器131を制御して、所定の強度のレーザ光の出射を開始させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、ガルバノメータスキャナ271を制御して、副走査方向(y軸方向)へのレーザ光の走査を開始する。
【0126】
焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Cの始点に到達した時点で、レーザ光の焦点位置の制御を開始する。このとき、レーザ光の焦点位置の制御に用いられるパネル変位は、ステップS12の処理から固定されたままとなる。従って、ステップS12の処理で設定された位置にレーザ光の焦点位置が固定されたまま、辺102Cの加工が開始される。
【0127】
ステップS16において、ステージ制御部253は、測定位置PSbが回り込み領域231より内側に到達したか否かを判定する。ステップS16の判定処理は、測定位置PSbが回り込み領域231より内側に到達したと判定されるまで繰返し実行される。そして、ステージ制御部253は、辺102Cの始点からx軸の負の方向に測定マージンだけ離れた位置に加工ヘッド133が到達した場合、測定位置PSbが回り込み領域231(より正確には、回り込み領域231の最大想定領域)より内側に到達したと判定し、処理はステップS17に進む。
【0128】
ステップS17において、選択部261は、使用する変位計を変更する。具体的には、選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201bを選択して、パネル変位の測定を開始させる。すなわち、選択部261は、加工対象の辺102Cから薄膜太陽電池パネル102の内側に垂直に向かう方向(y軸の正の方向)に最大想定距離DS以上離れた測定位置PSbにおいて測定を行う変位計201bを選択して、パネル変位の測定を開始させる。そして、選択部261は、変位計201bからパネル変位の測定結果を取得し、焦点制御部262に供給する処理を開始する。
【0129】
ステップS18において、レーザ加工装置113は、パネル変位の測定結果に基づいてレーザ光の焦点位置を制御しながら加工する。具体的には、焦点制御部262は、焦点制御テーブルに基づいて、変位計201bによるパネル変位の測定結果に対応する加工ヘッド133のz軸方向の位置を求め、サーボモータ138を制御して、求めた位置まで加工ヘッド133をz軸方向に移動させる処理を開始する。これにより、レーザ光の焦点が、パネル変位に追従して薄膜太陽電池パネル102の加工面に常に合わせられた状態で、辺102Cに対する加工が行われる。
【0130】
ステップS19において、ステージ制御部253は、加工中の辺102Cの終点に加工ヘッド133が到達したか否かを判定する。ステップS19の判定処理は、加工中の辺102Cの終点に加工ヘッド133が到達したと判定されるまで繰返し実行され、加工中の辺102Cの終点に加工ヘッド133が到達したと判定された場合、処理はステップS20に進む。
【0131】
ステップS20において、ステップS9と同様の処理により、加工中の辺102Cの加工が終了し、加工ヘッド133が、辺102Dの始点からy軸の正の方向に加速マージンだけ離れた位置に移動する。
【0132】
ステップS21において、レーザ加工装置113は、パネル変位の測定結果に基づいてレーザ光の焦点位置を制御しながら加工する。具体的には、ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、ガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、矢印A16の方向(y軸の負の方向)への加工ヘッド133(ガントリ134)の等速移動を開始させる。
【0133】
レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Dの始点からy軸の正の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ発振器131を制御して、所定の強度のレーザ光の出射を開始させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、ガルバノメータスキャナ271を制御して、副走査方向(x軸方向)へのレーザ光の走査を開始する。
【0134】
焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Dの始点に到達した時点で、レーザ光の焦点位置の制御を開始する。このとき、変位計201bによるパネル変位の測定結果が、選択部261を介して焦点制御部262に継続して供給されている。従って、焦点制御部262は、ステップS18の処理と同様に、変位計201bによるパネル変位の測定結果に基づいて、レーザ光の焦点位置を制御する処理を開始する。これにより、レーザ光の焦点が、パネル変位に追従して薄膜太陽電池パネル102の加工面に常に合わせられた状態で、辺102Dに対する加工が行われる。
【0135】
ステップS22において、ステージ制御部253は、加工中の辺102Dの終点に加工ヘッド133が到達したか否かを判定する。ステップS22の判定処理は、加工中の辺102Dの終点に加工ヘッド133が到達したと判定されるまで繰返し実行され、加工中の辺102Dの終点に加工ヘッド133が到達したと判定された場合、処理はステップS23に進む。
【0136】
ステップS23において、レーザ加工装置113は、加工を終了する。具体的には、焦点制御部262は、全体制御部252の制御の基に、レーザ光の焦点位置の制御を停止する。ステージ制御部253は、全体制御部252の制御の基に、ガントリ134の裏面のリニアモータを制御して、加工ヘッド133(ガントリ134)の主走査方向の移動速度を減速し、最終的に停止させる。また、レーザ制御部263は、全体制御部252の制御の基に、加工ヘッド133が辺102Dの終点からy軸の負の方向に加工マージンだけ離れた位置に到達した時点で、レーザ光の出射を停止する。さらに、選択部261は、全体制御部252の制御の基に、変位計201bの測定を停止させる。
【0137】
その後、エッジデリーション処理は終了する。
【0138】
以上のようにして、エッジデリーションの加工方向に関わらず、2つの変位計201のみで薄膜太陽電池パネル102のパネル変位を正確に測定することができ、その測定結果に基づいて、レーザ光の焦点が薄膜太陽電池パネル102の加工面に常に合うように制御される。加えて、回り込み領域231の最大想定領域より内側に測定位置PSが存在しない場合、事前に当該最大想定領域より内側の領域において測定したパネル変位を用いてレーザ光の焦点位置が制御される。その結果、薄膜太陽電池パネル102の周縁部の薄膜を確実に剥離することができ、薄膜太陽電池パネル102の品質が向上する。
【0139】
また、使用する変位計201を選択して使い分けるため、パネル変位の測定に要する消費電力を低減することができる。
【0140】
なお、図14では、薄膜太陽電池パネル102の各辺がX−Yステージ135のx軸方向またはy軸方向と一致するように配置される例、換言すれば、X−Yステージ135のxy座標系と薄膜太陽電池パネル102のxy座標系が一致する例を示した。しかし、薄膜太陽電池パネル102の置き方によっては、各辺がX−Yステージ135のx軸方向およびy軸方向に対して斜めに配置される場合も想定される。この場合、加工ヘッド133を薄膜太陽電池パネル102の各辺に沿って移動させながら、加工が行われる。すなわち、加工ヘッドを薄膜太陽電池パネル102のxy座標系のx軸方向またはy軸方向に平行移動させながら、加工が行われる。
【0141】
<2.変形例>
[測定位置PSの変形例]
以上の説明では、照射中心PLに対する変位計201a,201bの方向を、x軸方向およびy軸方向に対して約45°に設定する例を示したが、上述した設定条件1および設定条件2を満たす範囲内で、45°以外の角度に設定することも可能である。
【0142】
次に、図15乃至図20を参照して、変位計201を3つまたは4つ設ける場合について説明する。
【0143】
なお、図15乃至図20では、レーザ光の照射中心PLおよびパネル変位の測定位置PSを図示していないが、図面上において、照射中心PLは、出射口133Cの中心とほぼ一致し、測定位置PSは、変位計201の中心とほぼ一致するものとする。また、図15乃至図20において、照射中心PLと各測定位置PSとの間の距離が閾値距離DT1以上離れるように、各変位計201が設けられているものとする。さらに、図15乃至図20において、変位計201が出射口133Cに対して斜めに配置されている場合、その変位計201に対応する測定位置PSと照射中心PLとの間の距離が、x軸方向およびy軸方向とも閾値距離DT2以上離れているものとする。
【0144】
図15の例では、出射口133Cに対して、変位計201aがx軸の負の方向に配置され、変位計201bがy軸の正の方向に配置され、変位計201cがx軸の正の方向に配置されている。この例では、照射中心PLからy軸の負の方向に閾値距離DT2以上離れた位置に測定位置PSが存在しないため、上述した設定条件2を満たさない。従って、例えば、図15の上の図のように、辺102Bの加工を行う場合、変位計201aを用いて、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができるが、図15の下の図のように、辺102Cの加工を行う場合、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができる変位計201が存在しない。
【0145】
一方、図16の例では、出射口133Cに対して、変位計201aがx軸の負の方向かつy軸の負の方向に配置され、変位計201bがx軸の正の方向かつy軸の負の方向に配置され、変位計201cがx軸の正の方向かつy軸の正の方向に配置されている。すなわち、変位計201a乃至201cが、全て加工ヘッド133の進行方向に対して斜めに配置されている。この例では、図15の例と異なり、辺102Cの加工を行う場合、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができる変位計201が2つ存在する。また、他の辺の加工を行う場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することができる変位計201が必ず1つ存在する。従って、図16のように変位計201を配置した場合、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺を加工する場合にも、パネル変位を正確に測定することができる。
【0146】
図17の例では、出射口133Cに対して、変位計201aがy軸の負の方向に配置され、変位計201bがx軸の負の方向に配置され、変位計201cがx軸の正の方向かつy軸の正の方向に配置されている。この例でも、図16の例と同様に、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺の加工を行う場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することが可能な変位計201が必ず1つ存在し、パネル変位を正確に測定することができる。
【0147】
図18の例では、出射口133Cに対して、変位計201aがy軸の負の方向に配置され、変位計201bがx軸の負の方向かつy軸の正の方向に配置され、変位計201cがx軸の正の方向かつy軸の正の方向に配置されている。この例でも、図16および図17の例と同様に、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺の加工を行う場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することが可能な変位計201が必ず1つ存在し、パネル変位を正確に測定することができる。
【0148】
従って、変位計201を3つ設ける場合、少なくとも1つの変位計201が出射口133Cに対して斜めに配置されることが、設定条件1および設定条件2を満たすための必要条件の1つとなる。
【0149】
次に、図19および図20を参照して、変位計201を4つ設ける場合について説明する。
【0150】
図19の例では、出射口133Cに対して、x軸の正および負の方向、並びに、y軸の正および負の方向の4方向に、変位計201がそれぞれ1つずつ配置されている。この例でも、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺の加工を行う場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することが可能な変位計201が必ず1つ存在し、パネル変位を正確に測定することができる。
【0151】
図20の例では、変位計201a乃至201dが、出射口133Cに対して斜め方向に、出射口133Cを中心に約90°の間隔で配置されている。この例でも、図19の例と同様に、薄膜太陽電池パネル102のいずれの辺の加工を行う場合にも、回り込み領域231を回避してパネル変位を測定することが可能な変位計201が必ず1つ存在し、パネル変位を正確に測定することができる。
【0152】
さらに、この例では、各辺の終点付近においても、少なくとも1つの測定位置PSが、薄膜太陽電池パネル102の回り込み領域231の最大想定領域より内側に存在する。従って、図12のステップS5および図13のステップS12のように、パネル変位を固定して加工を行う必要がない。その結果、エッジデリーションの加工精度をより向上させることができる。
【0153】
なお、変位計201を5つ以上設けることも可能であるが、4つ設ける場合と比較して、パネル変位の測定精度の向上は少ないため、コスト面や設置場所等を考慮すると、変位計201の設置数は、2〜4にするのが望ましい。
【0154】
[その他の変形例]
また、以上の説明では、加工ヘッド133をz軸方向に移動させることにより、薄膜太陽電池パネル102に対するレーザ光の焦点位置を制御する例を示したが、薄膜太陽電池パネル102をz軸方向に移動させたり、あるいは、両者をz軸方向に移動させて、レーザ光の焦点位置を制御するようにしてもよい。また、加工ヘッド133内の光学系のレンズ等の位置を制御して、レーザ光の焦点位置を制御するようにしてもよい。
【0155】
さらに、制御部144の機能の一部または全部を、例えば、レーザ加工装置113により実現したり、PC116により実現したりするようにしてもよい。
【0156】
また、本発明は、エッジデリーション以外にも、各種の基板の周縁部を加工する場合に適用することができる。
【0157】
なお、本明細書において、システムの用語は、複数の装置、手段などより構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0158】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0159】
101 レーザ加工システム
102 薄膜太陽電池パネル
113 レーザ加工装置
116 パーソナルコンピュータ
131 レーザ発振器
133 加工ヘッド
133C 出射口
134 ガントリ
135 X−Yステージ
137 リニアモータ
138 サーボモータ
144 制御部
201 変位計
231 回り込み領域
251 加工ヘッド制御部
252 全体制御部
253 ステージ制御部
261 選択部
262 焦点制御部
263 レーザ制御部
271 ガルバノメータスキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置において、
前記レーザ光が前記基板に照射される位置の近傍の所定の複数の測定位置において前記基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、
前記レーザ光を出射する出射口および複数の前記測定手段を備え、前記加工面に垂直な軸回りに回転しない出射手段と、
前記出射手段と前記基板のうち少なくとも一方を動かし、前記出射手段と前記基板の間の相対位置を、前記加工面に平行で、かつ、互いに直交する4方向に移動させることが可能な移動手段と、
測定に使用する前記測定手段を選択する選択手段と、
選択された前記測定手段による測定結果に基づいて、前記レーザ光の焦点位置を制御する焦点位置制御手段と
を備え、
全ての前記測定位置が前記レーザ光の照射範囲の中心である照射中心から所定の第1の距離以上離れ、かつ、前記4方向の全てにおいて、前記照射中心から所定の第2の距離以上離れた前記測定位置が少なくとも1つ存在し、
前記出射手段と前記基板の間の相対位置を前記基板の端部に沿って移動させながら前記基板の端部を加工する場合、前記選択手段は、前記基板の端部から前記基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた前記測定位置において測定を行う前記測定手段を選択する
レーザ加工装置。
【請求項2】
3つの前記測定手段を備え、
3つの前記測定手段による3つの前記測定位置のうちの少なくとも1つの前記照射中心に対する方向が、前記4方向の全てに対して斜めに設定されている
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
2つの前記測定手段を備え、
2つの前記測定手段による2つの前記測定位置が、前記照射中心に対して対称な方向に配置され、それぞれの前記測定位置の前記照射中心に対する方向が、前記4方向の全てに対して斜めに設定されている
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記焦点位置制御手段は、前記基板の周縁から前記第3の距離以内の第1の領域より内側の第2の領域内に前記測定位置が存在しない場合、事前に前記第2の領域内において測定された前記加工面の高さ方向の位置に基づいて前記レーザ光の焦点位置を制御する
請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光が前記基板に照射される位置の近傍の所定の複数の測定位置において前記基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、
前記レーザ光を出射する出射口および複数の前記測定手段を備え、前記加工面に垂直な軸回りに回転しない出射手段と、
前記出射手段と前記基板のうち少なくとも一方を動かし、前記出射手段と前記基板の間の相対位置を、前記加工面に平行で、かつ、互いに直交する4方向に移動させることが可能な移動手段と
を備えるレーザ加工装置によるレーザ加工方法において、
全ての前記測定位置が前記レーザ光の照射範囲の中心である照射中心から所定の第1の距離以上離れ、かつ、前記4方向の全てにおいて、前記照射中心から所定の第2の距離以上離れた前記測定位置が少なくとも1つ存在し、
前記出射手段と前記基板の間の相対位置を前記基板の端部に沿って移動させながら前記基板の端部を加工する場合、前記基板の端部から前記基板の内側に向かう方向に所定の第3の距離以上離れた前記測定位置において測定を行う前記測定手段を選択し、
選択された前記測定手段による測定結果に基づいて、前記レーザ光の焦点位置を制御する
レーザ加工方法。
【請求項6】
レーザ光を用いて基板を加工するレーザ加工装置において、
前記レーザ光が前記基板に照射される位置から、前記レーザ光によって測定に影響を受けない距離以上離れた測定位置において前記基板の加工面の高さ方向の位置を測定する複数の測定手段と、
前記レーザ光を出射する出射口および複数の前記測定手段を備えた出射手段と、
前記出射手段と前記基板のうち少なくとも一方を動かし、前記出射手段を前記基板周辺に沿って移動させる移動手段と、
測定に使用する前記測定手段を選択する選択手段と、
選択された前記測定手段による測定結果に基づいて、前記レーザ光の焦点位置を制御する焦点位置制御手段と
を備え、
前記基板の周辺を加工するときに、前記選択手段は、前記レーザ光の照射位置に対して前記基板の内側に位置する前記測定手段を選択する
レーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−192427(P2012−192427A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56952(P2011−56952)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】