レーザ加工装置及びその方法
【課題】1台のレーザ発振器から出力したレーザ光を2つの異なる波長の基本波と高調波に分割し、それぞれのレーザ光を用いて同一目的の加工を行うことのできるレーザ加工装置及びその方法を提供する。
【解決手段】レーザ施工装置は、レーザ光を出力するレーザ発振器1と、このレーザ発振器1から出力されたレーザ光が入力され基本波2と高調波4を発生する波長変換部3と、波長変換部3により発生した基本波2を伝送する基本波用光学系6と、波長変換部3により発生した高調波4を伝送する高調波用光学系7と、基本波用光学系6より伝送された基本波2と高調波用光学系7より伝送された高調波4とが入力されてレーザ光が合成されるレーザ光合成部10と、レーザ光合成部10により合成されたレーザ光が水を介して被加工物12に照射される集光レンズ11と、を有する。
【解決手段】レーザ施工装置は、レーザ光を出力するレーザ発振器1と、このレーザ発振器1から出力されたレーザ光が入力され基本波2と高調波4を発生する波長変換部3と、波長変換部3により発生した基本波2を伝送する基本波用光学系6と、波長変換部3により発生した高調波4を伝送する高調波用光学系7と、基本波用光学系6より伝送された基本波2と高調波用光学系7より伝送された高調波4とが入力されてレーザ光が合成されるレーザ光合成部10と、レーザ光合成部10により合成されたレーザ光が水を介して被加工物12に照射される集光レンズ11と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、被加工物のレーザピーニングや焼入れ等の表面改質を行うレーザ加工装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレーザ加工は、レーザ発振器から照射されたレーザ光をレンズやミラー等の光学系を介して被加工物の表面に集光し、被加工物の溶接、切断又はレーザピーニングや焼入れ等の表面改質を行う方法である。使用するレーザ発振器の種類と被加工物の材質によってレーザ光の吸収率が異なり、またレーザ出力の違い等によっても様々な加工を行うことができる。例えば、レーザ溶接や切断等では、数kWクラスの高出力のYAGレーザ、CO2レーザ又はファイバレーザ等が用いられ、レーザ波形を連続波やパルスを使い分けることでレーザ加工部の品質を変えることもできる。
【0003】
従来の高調波を用いたレーザ加工装置によるレーザピーニングや焼入れ等の表面改質について、図18を用いて説明する。
【0004】
レーザピーニングは、被加工物12表面にパルスレーザを照射し、アブレション(後述)により被加工物12表面に圧縮残留応力を付与する技術である。このとき、例えば、特許文献1に示されるように、アブレションにより発生する金属プラズマを閉じ込めるために、被加工物12表面に黒色ペンキのようなコーティング膜を施すのが一般的である。また、特許文献2に示されるように、表面に透明な液体が設けられた被加工物12表面に対してレーザ照射を行うことにより圧縮応力を付与することもできる。
【0005】
レーザピーニングに用いられる光源としては、波長1064nmのYAGレーザ基本波や波長532nmのYAGレーザを基本波長の1/2にした高調波が用いられている。
【0006】
図18に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、波長変換部3を通過し、ダイクロイックミラー5により、基本波2と高調波4に分離される。すなわち、高調波4は、基本波2となるレーザ光を、非線型結晶を通して1/2の出力の基本波2と1/2波長の高調波4を発生し、ダイクロイックミラー5により波長分離して元々の1/2の出力を有する高調波4だけを取り出すことにより得られる。
【0007】
波長変換部3で作り出された基本波2と高調波4は、それぞれ別々の光学系により伝送される。波長変換部3を通過した高調波4は、高調波用光学系7を経由し、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。ここで、使用する非線型結晶を変えることにより、例えば基本波の1/2〜1/5の波長を有する高調波を得ることができる。そして、図18に示すように波長変換部3で作り出された基本波2は、ダンパー13でパワーを吸収して廃棄されている。
【0008】
一方、レーザ微細加工に用いられる光源は、パルス幅がns以上の紫外線レーザが一般的である。しかし、被加工物12の材料によっては、加工部周辺に熱変層が形成され、また加工面の化学組成も変化するときがある。そこで最近、加工部周辺のパルス幅がピコ秒あるいはフェムト秒の超短パルスレーザ光が利用されようとしている。この超短パルスレーザ光の波長を近赤外とすると、一部の被加工材料において、加工面の化学組成も変化しないことが報告されている。
【0009】
上述のように、一般にレーザ加工では1種類のレーザ光を用いて1つの加工を行うが、場合によっては2つのレーザ光を用いてレーザ加工を行うこともあり、例えば1つの被加工物に対して2つの異なる波長のレーザ光を用いて加工することにより、従来よりも加工速度を向上させたり、高品質の加工部が得られる技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
この2つの異なる波長を用いたレーザ加工方法については、YAGレーザや半導体レーザ等の比較的高出力が得られる近赤外領域の波長を有するレーザ光を非線型結晶とダイクロイックミラー等から構成される高調波発生器に入射させ、基本波長の1/3から1/5の紫外領域の高調波を発生させ基本波長と高調波の2波長を分離して取り出し、個々の波長のレーザ光を独立した光学系により個別の加工テーブルに誘導し、別々の用途でレーザ加工を行う手法がある。
【0011】
このとき、近赤外領域の波長を有する高出力が得られるレーザ光(基本波)を利用して孔加工や溝加工などの主加工を施工し、高調波発生器を通して得られた紫外領域の波長を有するレーザ光を用いてスミア除去や加工穴の整形などの従加工を施工する。
【0012】
この方法では、1台のレーザ発振器を用いて2つの異なる波長のレーザ光を作り出し、それぞれ別々の加工を施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3156530号公報
【特許文献2】特許第3373638号公報
【特許文献3】特許第3491545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の特許文献3に示すように、2つの異なる波長を用いたレーザ加工方法については、YAGレーザや半導体レーザ等の比較的高出力が得られる近赤外領域の波長を有するレーザ光を非線型結晶とダイクロイックミラー等から構成される高調波発生器に入射させている。
【0015】
しかしながら、従来の1台のレーザ発振器から照射されるレーザ光を2つの異なる波長に変換して行うレーザ加工においては、それぞれ波長の異なるレーザ光を主加工と従加工に分離して用いることは可能であるが、波長の異なるレーザ光を同じ目的の加工に使用することはできない点に課題があった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波と高調波に分割し、それぞれのレーザ光を用いて同一目的の加工を行うことのできるレーザ加工装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工方法においては、レーザ出力手段によりパルスレーザ光を出力するレーザ光出力ステップと、このレーザ光出力ステップにおいて出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する高調波発生ステップと、この高調波発生ステップにおいて発生した前記基本波が伝送される基本波伝送ステップと、前記高調波発生ステップにおいて発生した前記高調波が伝送される高調波伝送ステップと、前記基本波伝送ステップより伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを、同一の集光光学系によって集光し、水を介して被加工物に照射してアブレーション加工により前記被加工物に圧縮応力を付与するレーザ照射ステップと、を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工装置においては、レーザ光を出力するレーザ出力手段と、このレーザ出力手段から出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する第1の高調波発生手段と、この第1の高調波発生手段により発生した前記基本波を伝送する基本波伝送光学系と、前記第1の高調波発生手段により発生した前記高調波を伝送する高調波伝送光学系と、前記基本波伝送光学系より伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを集光し、水を介して被加工物に照射させる集光光学系と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレーザ加工装置及びその方法によれば、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を波長が異なる基本波と高調波に分割し、それぞれのレーザ光を用いて同一目的の加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図。
【図2】レーザ光の水に対する減衰率を示す説明図で、(a)はレーザ光の水に対する減衰率を示すグラフ、(b)はレーザ光の水に対する減衰率を示す計算式。
【図3】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例のPWR炉内計装筒のレーザピーニング施工手段を示す説明図で、(a)はPWR炉内計装筒を示す概念図、(b)は配管内面レーザピーニング施工手段を示す概念図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例のフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す説明図で、(a)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼を示す概念図、(b)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す概念図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の基本波と高調波を伝送する光学系を示す説明図で、(a)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図、(b)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置の光軸補正機能を示す概念図。
【図6】本発明の第1の実施の形態のレーザ加工装置の第4の変形例を示す概念図。
【図7】(a)は本発明の第2の実施の形態の基本波と高調波の周波数(パルス)を示す概念図、(b)は第2の実施形態のレーザピーニング照射スポットを示す図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の第1の変形例のレーザピーニングの照射密度を示す概念図。
【図9】レーザピーニングしたステンレス鋼SUS304の試験結果を示す説明図で、(a)はその第1の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ、(b)はその第2の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ。
【図10】本発明の第2の実施の形態の第2の変形例のレーザピーニング照射スポットを示す説明図で、(a)はレーザピーニング照射スポットを示す概念図、(b)はその第1の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(c)はその第2の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(d)はその第3の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の基本波と高調波を用いた焦点裕度拡大方法を示す概念図。
【図12】ガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図。
【図13】ガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図。
【図14】ガスタービン動翼植込み部の冷却口表面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図15】ガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図16】ガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図17】本発明の第4の実施の形態の2台のレーザ発振器を用いた基本波と高調波の合成方法を示す概念図。
【図18】従来の高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るレーザ加工装置及びその方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態の基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図である。また、図2は、レーザ光の水に対する減衰率を示す説明図であり、(a)はレーザ光の水に対する減衰率を示すグラフ、(b)はレーザ光の水に対する減衰率を示す計算式である。
【0023】
まず、基本波と高調波を用いたレーザ加工装置170の構成について、図1を用いて説明する。
【0024】
本図に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、第1の高調波発生手段である波長変換部3に入力されて基本波2と高調波4が作り出される。ここで、レーザ発振器1は、レーザピーニングを行うときは、ジャイアントパルスYAGレーザ発振器を用いるのが好ましいが、ジャイアントパルスが形成されるレーザ発振器であればこの限りではない。また、波長変換部3は高調波の種類によって1/2から1/5までの範囲で用いることができる。例えば、波長変換部3に第2高調波用のSHG(Second Harmonic Generation)を用いたときは、YAGレーザ発振器から照射された波長1064nmの基本波2は、波長変換部3を通ると波長1064nmの基本波2と波長532nmの高調波4が発生する。このとき、レーザ出力は入力値の1/2程度となるため、例えば出力200mJ/パルスの基本波2を入射したときには、出力100mJの基本波2と出力100mJの高調波4が出射されることになる。
【0025】
波長変換部3で発生した基本波2と高調波4は、ダイクロイックミラー5を介して、
それぞれ別々の光学系により伝送される。波長変換部3で発生した高調波4は、高調波用光学系7を経由し、高調波出力調整部9で出力調整され、レーザ光合成部10に伝達される。
【0026】
そして、波長変換部3で発生した基本波2は、ダイクロイックミラー5を介して、基本波出力調整部8で出力調整され、基本波用光学系6を介し、レーザ光合成部10に伝達される。このレーザ光合成部10に伝達された高調波4及び基本波2は、合成され、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。なお、使用する非線型結晶を変えることにより、例えば基本波の1/2から1/5の波長を有する高調波を得ることができる。
【0027】
なお、上記レーザピーニングは、被加工物12表面にパルスレーザを照射し、アブレーションにより被加工物12の表面に圧縮残留応力を付与している。このアブレーションとは、材料の表面にパルスレーザを照射することにより材料の表面が蒸発、侵食によって分解する現象である。
【0028】
このように構成された本実施の形態のレーザピーニングにおいては、レーザ光合成部10により合成された高調波4及び基本波2が水を介して被加工物12に照射されている。
【0029】
この高調波4及び基本波2の水に対する減衰率について説明する。
【0030】
レーザピーニングにおいて、被加工物12の表面に水がある状態でジャイアントパルスレーザを照射した場合、レーザ光を水中で伝送するときには、波長によっては水に吸収されて出力が減少することが知られている。
【0031】
例えば、図2(a)、(b)に示すように、波長532nmの高調波は水300mmで約1%とほとんど水で出力が減衰しないのに対し、波長1064nmの基本波は水5mmで約90%の出力が減衰してしまう。
【0032】
このために、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4に分割し、被加工物12に圧縮応力を形成する等の同一目的の加工を行うときには、高調波4及び基本波2の水に対する減衰率を考慮しないで、それぞれのレーザ光を被加工物12に照射して施工することができる。
【0033】
一方、被加工物12に同一エネルギーのレーザ光を照射して加工を行うときには、高調波4は水300mmで約1%とほとんど出力が減衰しないのに対して、波長1064nmの基本波2は水5mmで約90%の出力が減衰してしまうことを考慮して、高調波4の照射前のエネルギーは若干増加させておく必要があるのに対して、基本波2の照射前のエネルギーは大幅に増加させておく必要がある。
【0034】
本実施の形態によれば、波長変換部3で発生した基本波2と高調波4はそれぞれ別々の光学系により伝送され、レーザ光合成部10で合成され、集光レンズ11からレーザ光を被加工物12の表面に水が存在する状態で照射して同一目的の加工を行うことができる。
【0035】
また、光ファイバにレーザ光を入射して所定の位置までレーザ光を伝送し、光ファイバ先端から出射されたレーザ光を再度光学系で集光して被加工物12表面に所定のスポット径で集光して同一目的の加工を行うことも可能である。
【0036】
図3は、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例のPWR炉内計装筒のレーザピーニング施工手段を示す説明図で、(a)はPWR炉内計装筒を示す概念図、(b)は配管内面レーザピーニング施工手段を示す概念図である。
【0037】
例えば、図3(a)に示すような配管形状を呈するPWR(Pressurized Water Reactor)型プラントの炉内計装筒(BMI:Bottom Mounted Instruments)の内面にレーザピーニングを施工する場合について説明する。このBMIノズル71は、PWR原子炉のPWR炉底部72に設けられている。
【0038】
図3(b)に示すように、光ファイバに代表されるレーザ光伝送手段73の先端に照射ヘッド74が設置されている。この照射ヘッド74は、非球面ミラー75を用いて反射させつつ集光するようにしてレーザ光76を施工部に集光させる。また他の変形例として非球面ミラーの代わりに集光レンズを介してミラーで集光してもよい。
【0039】
仮に、レーザ光伝送手段73から加工対象物であるBMIノズル71の先端までの距離が25mmであったときには、図2(b)に示す減衰率を表す計算式から算出すると、基本波2を照射したときの減衰率が約75%となる。レーザピーニングを施工する際に、基本波2と高調波4を同じエネルギーにするときには、波長変換部3で発生したレーザ光をダイクロイックミラー5で分離した後に、基本波出力調整部8と高調波出力調整部9を用いて伝送するエネルギーの比率を変え、その後の光学系における伝送ロスも加味することにより達成される。
【0040】
例えば、レーザ発振器1の出力が200mJ/パルスのレーザ光を用いたときに、波長変換部3で基本波2と高調波4それぞれのエネルギーを100mJとした後で、基本波の水中での減衰率75%と同じ値になるように、高調波のエネルギーを25%減衰させればよい。
【0041】
本実施の形態においては、この減衰させる方法として、基本波出力調整部8と高調波出力調整部9において高調波レーザ光の偏光特性を利用し、直線偏光で出てくる高調波が偏光フィルタ(図示せず)を通過する際の偏光方向を調整すれば容易にエネルギーを調整することができ、加工点において同じエネルギーを用いたレーザピーニングが達成される。
【0042】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光伝送手段73を介してそれぞれのレーザ光を用いてBMIノズル71の表面において同じエネルギーを用いたレーザピーニングを施工することができる。
【0043】
図4は、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例のフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す説明図で、(a)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼を示す概念図、(b)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す概念図である。
【0044】
配管形状の加工対象物の内径に光ファイバから出射されたレーザ光を照射するレーザピーニングについて説明する。配管形状の加工対象物の内径がφ5mm以上であれば、光ファイバから出射されたレーザ光を非球面ミラーを介して被加工物表面に集光することができる。この適用例としては、図3(a)、(b)に示すようなBMIノズルや、図4(a)(b)に示すようなガスタービン部品である蒸気タービン翼ピン孔に係る円筒状形状において、本実施形態によるレーザピーニングの施工が可能である。
【0045】
図4(a)に示すように、蒸気タービンの動翼81は、ピン孔83にピンを挿入することによりディスク82に固定されている。レーザピーニングに係る施工は、フォーク型植込み部を有する蒸気タービンの動翼81をディスク82に固定するためのピンを挿入するためのピン孔83の内面に適用される。
【0046】
図4(b)に示すように、蒸気タービンの動翼81のピン孔83は、内径が7〜20mm程度であり、形状も円筒状であるので本実施の形態によるレーザピーニング施工が可能である。
【0047】
本実施の形態において、照射ヘッドの機能を有するレーザ光出射手段88がレーザ光伝送手段84によりピン孔83内に挿入される。このレーザ光伝送手段84先端のレーザ光出射手段88からレーザ光86が照射される。レーザ光集光手段85により所定のスポット径に成形されて図示しない水が被加工物の表面に存在する状態で出射口87よりレーザ光86が照射される。このレーザ光出射手段88を回転させながらピン孔83の軸方向に移動させることにより、ピン孔83の内面にレーザ光86が照射され、ピン孔83の内面に圧縮残留応力を形成することが可能となる。
【0048】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光伝送手段84を介してそれぞれのレーザ光を用いて蒸気タービン動翼のピン孔83の内面において同じエネルギーを用いたレーザピーニングを施工することができる。
【0049】
図5は、本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の基本波と高調波を伝送する光学系を示す説明図で、(a)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図、(b)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置の光軸補正機能を示す概念図である。 図5に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、第1の高調波発生手段である波長変換部3に入力されて基本波+高調波132が作り出される。この波長変換部3で発生した基本波+高調波132は、レーザ光調整部131を介して伝送される。そして、この基本波+高調波132は、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。
【0050】
一般に、図18に示すように、波長変換部3において基本波2と高調波4に分離した後に、この基本波2をダイクロイックミラー5を介してダンパー13に廃棄している。
【0051】
本実施の形態において、ダイクロイックミラー5を使用しないで、このままレーザ光調整部131と集光レンズ11を介して被加工物12に照射することができる。
【0052】
なお、図5(a)に示すように、波長変換部3において作り出された基本波+高調波132からなるレーザ光はそれぞれ同軸に照射される。一方、図5(b)に示すように、基本波2と高調波4が照射される角度が同軸にならないときもある。
【0053】
本実施の形態においては、波長変換部3から照射された基本波2と高調波4はレーザ光調整部131に入射される。そして、図5(b)に示すように、同軸方向に修正する必要があるときには、色消機能付集光レンズ21を用いて、集光される基本波2と高調波4の焦点位置が同じになるように修正される。
【0054】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光調整部131を介してそれぞれのレーザ光を用いて被加工物12の表面においてレーザピーニングを施工することができる。
【0055】
図6は、本発明の第1の実施の形態のレーザ加工装置の第4の変形例を示す概念図である。
【0056】
波長変換部3において基本波2と高調波4を発生させた後に、ダイクロイックミラー5を介して基本波2と高調波4に分離している。このダイクロイックミラー5で基本波2と高調波4をそれぞれ別々の光路に分けて伝送しているので、図6に示すように、このまま別々の集光レンズ11a、11bを用いて異なる2つの被加工物12の表面又は同じ被加工物12でも異なる2箇所の部位について基本波2と高調波4を照射することができる。
【0057】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、別々の集光レンズ11a、11bを用いて異なる2つの被加工物12の表面又は同じ被加工物12でも異なる2箇所の部位にレーザピーニングを施工することができる。かくして、一つの被加工物12に対して同時に2箇所の加工が行えるために加工時間の短縮が可能となる。
【0058】
次に、図7を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。図7(a)は、本発明の第2の実施の形態の基本波と高調波の周波数(パルス)を示す概念図、図7(b)は本実施の形態によるレーザピーニングの照射スポットを示す図である。
【0059】
図1において、レーザ発振器1から照射された基本波2のレーザ光は、波長変換部3において基本波2と高調波4が作り出され、一旦はそれぞれ別の光学系を用いて伝送され、同じ集光レンズ11を介して集光することによりレーザピーニングを行っている。
【0060】
このレーザピーニングを水中で行うときには、基本波2と高調波4で水中でのレーザ光減衰率が異なるために、集光レンズ11から被加工物12の表面までの距離に応じて基本波2と高調波4のレーザ出力を基本波出力調整部8と高調波出力調整部9で調整することにより、被加工物12表面の加工点において同じ出力でレーザピーニングを行うことができる。
【0061】
さらに、単位時間当たりのパルス数を変化させたいときには、上記集光レンズ11により照射される基本波2と高調波4の照射間隔を制御することにより実現できる。例えば、100Hzのレーザ発振器1においては、基本波2と高調波4の照射のタイミングについて図示しないタイミング調整部を用いて所定の時間に変動することが可能となる。
【0062】
すなわち、基本波2と高調波4に分離した後で、図7(a)に示すように、基本波の周波数121で照射するタイミングを高調波の周波数122の中間とし、図7(b)に示すように高調波スポット61と基本波スポット62を交互に照射することにより、基本波2と高調波4のタイミングを調整することにより、200Hzのレーザ発振器と同等にすることが可能となる。
【0063】
本実施の形態において、このタイミングをずらす手段としては、パルス周波数に関わる時間分を光が移動するような光学系や、図示しないシャッタを用いてシャッタ開閉のタイミングを周波数に合わせてもよい。このようにすれば照射のタイミングをずらすことが可能なので、3次元加工機等を用いてレーザ光の照射位置を制御することが可能となる。
【0064】
図8は、本発明の第2の実施の形態の第1の変形例のレーザピーニングの照射密度を示す概念図であり、図9は、レーザピーニングしたステンレス鋼SUS304の試験結果を示す説明図で、(a)はその第1の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ、(b)はその第2の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフである。
【0065】
レーザピーニングにおいては、照射するレーザ光のエネルギーや単位面積当りの照射密度を変えることにより被加工物12の表面に形成される残留応力が変わる。この単位面積あたりの照射密度とは、図8に示すように、施工範囲53内をレーザ光51により照射して施工するときに、レーザ光駆動軌跡52に沿って図示しない駆動装置によりレーザ光51を照射するパルス数密度を示している。この照射密度は、駆動装置により、スポット径の中心間距離を変更したり、スポットの照射状態を歯抜け状態にする等の対応をして変更している。
【0066】
本実施の形態において、図9(a)に示すように、ステンレス鋼SUS304の試験結果において、照射エネルギーが200mJで同じ照射密度の場合(この例では50パルス/mm2)には、太線41のように表層数μmの表面は残留応力が−200MPa程度で、その直下は−500MPaと高い圧縮応力になり、その後なだらかに応力が0に向かって小さくなり、深さ1mmまで圧縮応力が形成されていた。一方、照射エネルギーが20mJのときには、細線42のように表面残留応力は−600MPaと高く、その後徐々に値は0に向かっていく。応力改善深さについては0.5mmまでとエネルギーが200mJの場合に比べると浅くなる傾向が認められた。このように、パルスエネルギーが高い場合には形成される圧縮応力の絶対値としては低くなる傾向があるものの、深さ方向の改善効果は高くなる。一方、パルスエネルギーが低い場合には、表面に付与される圧縮応力の値は高くなるものの、深さ方向の改善効果は低くなる傾向が認められる。
【0067】
一方、図9(b)に示すように、細線43のように、パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後に20mJでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、すなわち、エネルギーの異なるレーザのタイミングをずらして同じ位置に照射することにより、表面残留応力も高い状態に維持することができる。
【0068】
図10は、本変形例のレーザピーニング照射スポットを示す説明図で、(a)はレーザピーニング照射スポットを示す概念図、(b)はその第1の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(c)はその第2の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(d)はその第3の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図である。
【0069】
図10(a)に示すように、エネルギーの高いレーザ光である高調波スポット61を先に照射し、少なくともレーザ光のパルス幅以上遅いタイミングで次のエネルギーの低いレーザ光である基本波スポット62を照射する。そして、図10(b)に示すように、高調波スポット61の照射と基本波スポット62の照射とを繰り返して施工を行う。また、図10(a)や図10(b)では基本スポット62と高調波スポット61のスポット径を変えているが、図10(c)に示すように、同じ大きさでも効果は得られる。また、被加工物12の材料や表面に形成したい応力によってスポット径の大きさ、エネルギーの比率又は照射密度をそれぞれ変えても可能である。また、被加工物12の表面の応力場を変えたいときには、図10(d)に示すように、照射するスポットを同じ位置にしなくてもよく、またスポット径を変えてもよい。パルスエネルギーは10mJ/パルス〜5.0J/パルス、スポット径としてはφ0.1〜2.0mmの範囲であれば同様の効果が得られる。
【0070】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、それぞれのレーザ光を用いて、例えば、パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後に20mJでレーザピーニングし、すなわち、エネルギーの異なるレーザのタイミングをずらして同じ位置に照射することにより、施工対象物の表面直下でもある程度深い位置でも好適な圧縮残留応力を付与することができる。
【0071】
ただし、場合によっては基本波2と高調波4でレーザ光が集光する位置が変わってしまうときもあるので、このときには、集光レンズ11の手前に図示しない色消しレンズ(タブレットレンズ)を配置することにより焦点位置を同じ位置に制御することが可能となる。また、図10(d)に示すように、照射エネルギーを変えて施工すれば、従来と同等の施工速度で被加工物12の表面の応力分布を任意に制御することも可能である。
【0072】
図11は、本発明の第3の実施の形態の基本波と高調波を用いた焦点裕度拡大方法を示す概念図であり、図12はガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図、図13はガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図、図14はガスタービン動翼植込み部の冷却口表面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図、図15はガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図、図16はガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図である。
【0073】
図12に示すように、図示しないガスタービン動翼は、ロータ内面に設けられた冷却口103から冷却用ガスをガスタービン動翼内部の冷却口に導出することにより、運転中のガスタービン動翼内部を冷却している。ガスタービン動翼植込み部101は、クリスマスツリー部102と呼ばれる形状を呈しており、その付け根の部分に冷却口103が存在する。
【0074】
実機プラントにおいては、ガスタービンはその出力により異なるものの運転中に約1300℃まで温度が上昇し、冷却口103においても1000℃近くまで温度が上昇する。冷却口103には図13に示すような位置に結晶粒界の応力腐食酸化現象に起因するクラック(Hold Time Cracking)といわれるき裂が発生している事例が確認されている。き裂の発生を防止するためには、表面に圧縮残留応力を形成するのが効果的である。
【0075】
ところが、図12に示すように、冷却口103は複雑な形状を呈しているため、一般には、レーザピーニングを行うために必要な焦点位置の制御が困難である。
【0076】
そこで、冷却口103近傍に本実施の形態によるレーザピーニングを施工することにより、き裂の発生を防止することとする。
【0077】
すなわち、図11に示すように、基本波91と高調波92を同時に照射し、集光レンズ93により集光されるときに、基本波施工可能範囲94と高調波施工可能範囲95を併用することにより、基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を広くとることが可能となる。この結果、冷却口103内面で照射ヘッドを回転させるだけでレーザピーニングの施工が可能となる。
【0078】
なお、例えば集光レンズ93に波長によって屈折率が変わるレンズを採用することにより、図11に示すように基本波と高調波の焦点位置をずらして基本波+高調波施工可能範囲96を得ることができる。
【0079】
本実施の形態によれば、図14に示すように、冷却口103の表面をレーザピーニングするときには、レーザ光106を集光レンズ104を介して集光しながらミラー105で反射させて冷却口103表面に照射させる。このとき、図14に示すようにこのままミラー105を軸中心に回転させただけではミラー105から冷却口103までの距離が変動してしまうが、本実施の形態においては、図11に示す基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を用いることにより焦点裕度が広くなるために、回転方向の移動だけでレーザピーニングが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、図15、図16に示すように、冷却口103の内面を施工するときには、ミラー105を回転させることによりレーザ光駆動軌跡107に沿ってレーザ光106が冷却口103の内側面に照射される。すなわち、一般には、レーザピーニングの焦点裕度内に入らないため施工ができなかったが、基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を用いることにより焦点裕度が拡大するために、冷却口103の内側面のレーザピーニングに係る施工が可能となる。
【0081】
図17は、本発明の第4の実施の形態の2台のレーザ発振器151、152を用いた基本波と高調波の合成方法を示す概念図である。
【0082】
2台のレーザ発振器151、152を用いて施工するレーザピーニングに代表される高調波を用いたレーザ加工を行う一例について説明する。一般的には、1台のレーザ発振器から1系統の高調波を照射してレーザ加工を行っている。
【0083】
図17に示すように、第1のレーザ発振器151から照射されたレーザ光を第1の波長変換部153を用いて第1の基本波164と第1の高調波161を作り出す。このレーザ光は、第1のダイクロイックミラー155によりそれぞれ第1の基本波164と第1の高調波161の光路に分けられる。
【0084】
第2のレーザ発振器152から照射されたレーザ光についても同様に、第2のレーザ発振器152から照射されたレーザ光を第2の波長変換部154を用いて第2の基本波165と第2の高調波162を作り出す。このレーザ光は、第2のダイクロイックミラー156によりそれぞれ第2の基本波165と第2の高調波162の光路に分けられる。
【0085】
それぞれの基本波164、165と高調波161、162の出力はほぼ同じとなるが、もともとレーザ発振器151、152から照射されたエネルギーの約1/2となる。
【0086】
ここで、第1の基本波164と、基本波用ミラー157を介した第2の基本波165を基本波合成部158に伝送し合成することにより、合成された第3の基本波166のエネルギーは、元の第1のレーザ発振器151及び第2のレーザ発振器152のエネルギーとほとんど同じになる。
【0087】
そこで、この合成された第3の基本波166をさらに設けた第3の波長変換部159に入射して、新たな第4の基本波167と第3の高調波163を作りだす。第3のダイクロイックミラー160を用いて分離することで、第1、第2の高調波161、162と同じエネルギーを有する第3の高調波163を作り出すことが可能となる。第4の基本波167は、基本波用ミラー168を介して伝送される。
【0088】
このように構成された本実施の形態において、2台のレーザ発振器151、152から高調波161、162、163の3経路を作り出すことが可能となる。ここで、第4の基本波167に対しては、上記と同様に新たに設けた図示しないレーザ発振器から照射された同じエネルギーの基本波を合成して、さらに図示しない波長変換部を用いることで新たな高調波の光路を作り出すことができる。
【0089】
本実施の形態によれば、従来1台のレーザ発振器から1系統の高調波を得ていたが、2台のレーザ発振器から3系統の同じエネルギーを有する高調波を得ることが可能となり、レーザピーニングに係る施工速度の大幅な改善を図ることができる。
【0090】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…レーザ発振器、2…基本波、3…波長変換部、4…高調波、5…ダイクロイックミラー、6…基本波用光学系、7…高調波用光学系、8…基本波出力調整部、9…高調波出力調整部、10…レーザ光合成部、11,11a,11b…集光レンズ、12…被加工物、13…ダンパー、21…色消機能付集光レンズ、41…パルスエネルギー200mJ/パルスでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、42…パルスエネルギー20mJ/パルスでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、43…パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後、20mJでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、51…レーザ光、52…レーザ光駆動軌跡、53…施工範囲、61…高調波スポット、62…基本波スポット、71…BMIノズル、72…PWR炉底部、73…レーザ光伝送手段、74…照射ヘッド、75…非球面ミラー、76…レーザ光、81…動翼、82…ディスク、83…ピン孔、84…レーザ光伝送手段、85…レーザ光集光手段、86…レーザ光、87…出射口、88…レーザ光出射手段、91…基本波、92…高調波、93…集光レンズ、94…基本波施工可能範囲、95…高調波施工可能範囲、96…基本波+高調波施工可能範囲、101…ガスタービン動翼植込み部、102…クリスマスツリー部、103…冷却口、104…集光レンズ、105…ミラー、106…レーザ光、107…レーザ光移動軌跡、121…基本波の周波数、122…高調波の周波数、131…レーザ光調整部、132…基本波+高調波、151…第1のレーザ発振器、152…第2のレーザ発振器、153…第1の波長変換部、154…第2の波長変換部、155…第1のダイクロイックミラー、156…第2のダイクロイックミラー、157…基本波用ミラー、158…基本波合成部、159…第3の波長変換部、160…第3のダイクロイックミラー、161…第1の高調波、162…第2の高調波、163…第3の高調波、164…第1の基本波、165…第2の基本波、166…第3の基本波、167…第4の基本波、168…基本波用ミラー、170…レーザ加工装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、被加工物のレーザピーニングや焼入れ等の表面改質を行うレーザ加工装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のレーザ加工は、レーザ発振器から照射されたレーザ光をレンズやミラー等の光学系を介して被加工物の表面に集光し、被加工物の溶接、切断又はレーザピーニングや焼入れ等の表面改質を行う方法である。使用するレーザ発振器の種類と被加工物の材質によってレーザ光の吸収率が異なり、またレーザ出力の違い等によっても様々な加工を行うことができる。例えば、レーザ溶接や切断等では、数kWクラスの高出力のYAGレーザ、CO2レーザ又はファイバレーザ等が用いられ、レーザ波形を連続波やパルスを使い分けることでレーザ加工部の品質を変えることもできる。
【0003】
従来の高調波を用いたレーザ加工装置によるレーザピーニングや焼入れ等の表面改質について、図18を用いて説明する。
【0004】
レーザピーニングは、被加工物12表面にパルスレーザを照射し、アブレション(後述)により被加工物12表面に圧縮残留応力を付与する技術である。このとき、例えば、特許文献1に示されるように、アブレションにより発生する金属プラズマを閉じ込めるために、被加工物12表面に黒色ペンキのようなコーティング膜を施すのが一般的である。また、特許文献2に示されるように、表面に透明な液体が設けられた被加工物12表面に対してレーザ照射を行うことにより圧縮応力を付与することもできる。
【0005】
レーザピーニングに用いられる光源としては、波長1064nmのYAGレーザ基本波や波長532nmのYAGレーザを基本波長の1/2にした高調波が用いられている。
【0006】
図18に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、波長変換部3を通過し、ダイクロイックミラー5により、基本波2と高調波4に分離される。すなわち、高調波4は、基本波2となるレーザ光を、非線型結晶を通して1/2の出力の基本波2と1/2波長の高調波4を発生し、ダイクロイックミラー5により波長分離して元々の1/2の出力を有する高調波4だけを取り出すことにより得られる。
【0007】
波長変換部3で作り出された基本波2と高調波4は、それぞれ別々の光学系により伝送される。波長変換部3を通過した高調波4は、高調波用光学系7を経由し、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。ここで、使用する非線型結晶を変えることにより、例えば基本波の1/2〜1/5の波長を有する高調波を得ることができる。そして、図18に示すように波長変換部3で作り出された基本波2は、ダンパー13でパワーを吸収して廃棄されている。
【0008】
一方、レーザ微細加工に用いられる光源は、パルス幅がns以上の紫外線レーザが一般的である。しかし、被加工物12の材料によっては、加工部周辺に熱変層が形成され、また加工面の化学組成も変化するときがある。そこで最近、加工部周辺のパルス幅がピコ秒あるいはフェムト秒の超短パルスレーザ光が利用されようとしている。この超短パルスレーザ光の波長を近赤外とすると、一部の被加工材料において、加工面の化学組成も変化しないことが報告されている。
【0009】
上述のように、一般にレーザ加工では1種類のレーザ光を用いて1つの加工を行うが、場合によっては2つのレーザ光を用いてレーザ加工を行うこともあり、例えば1つの被加工物に対して2つの異なる波長のレーザ光を用いて加工することにより、従来よりも加工速度を向上させたり、高品質の加工部が得られる技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
この2つの異なる波長を用いたレーザ加工方法については、YAGレーザや半導体レーザ等の比較的高出力が得られる近赤外領域の波長を有するレーザ光を非線型結晶とダイクロイックミラー等から構成される高調波発生器に入射させ、基本波長の1/3から1/5の紫外領域の高調波を発生させ基本波長と高調波の2波長を分離して取り出し、個々の波長のレーザ光を独立した光学系により個別の加工テーブルに誘導し、別々の用途でレーザ加工を行う手法がある。
【0011】
このとき、近赤外領域の波長を有する高出力が得られるレーザ光(基本波)を利用して孔加工や溝加工などの主加工を施工し、高調波発生器を通して得られた紫外領域の波長を有するレーザ光を用いてスミア除去や加工穴の整形などの従加工を施工する。
【0012】
この方法では、1台のレーザ発振器を用いて2つの異なる波長のレーザ光を作り出し、それぞれ別々の加工を施工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3156530号公報
【特許文献2】特許第3373638号公報
【特許文献3】特許第3491545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の特許文献3に示すように、2つの異なる波長を用いたレーザ加工方法については、YAGレーザや半導体レーザ等の比較的高出力が得られる近赤外領域の波長を有するレーザ光を非線型結晶とダイクロイックミラー等から構成される高調波発生器に入射させている。
【0015】
しかしながら、従来の1台のレーザ発振器から照射されるレーザ光を2つの異なる波長に変換して行うレーザ加工においては、それぞれ波長の異なるレーザ光を主加工と従加工に分離して用いることは可能であるが、波長の異なるレーザ光を同じ目的の加工に使用することはできない点に課題があった。
【0016】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波と高調波に分割し、それぞれのレーザ光を用いて同一目的の加工を行うことのできるレーザ加工装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工方法においては、レーザ出力手段によりパルスレーザ光を出力するレーザ光出力ステップと、このレーザ光出力ステップにおいて出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する高調波発生ステップと、この高調波発生ステップにおいて発生した前記基本波が伝送される基本波伝送ステップと、前記高調波発生ステップにおいて発生した前記高調波が伝送される高調波伝送ステップと、前記基本波伝送ステップより伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを、同一の集光光学系によって集光し、水を介して被加工物に照射してアブレーション加工により前記被加工物に圧縮応力を付与するレーザ照射ステップと、を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明のレーザ加工装置においては、レーザ光を出力するレーザ出力手段と、このレーザ出力手段から出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する第1の高調波発生手段と、この第1の高調波発生手段により発生した前記基本波を伝送する基本波伝送光学系と、前記第1の高調波発生手段により発生した前記高調波を伝送する高調波伝送光学系と、前記基本波伝送光学系より伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを集光し、水を介して被加工物に照射させる集光光学系と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレーザ加工装置及びその方法によれば、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を波長が異なる基本波と高調波に分割し、それぞれのレーザ光を用いて同一目的の加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態の基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図。
【図2】レーザ光の水に対する減衰率を示す説明図で、(a)はレーザ光の水に対する減衰率を示すグラフ、(b)はレーザ光の水に対する減衰率を示す計算式。
【図3】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例のPWR炉内計装筒のレーザピーニング施工手段を示す説明図で、(a)はPWR炉内計装筒を示す概念図、(b)は配管内面レーザピーニング施工手段を示す概念図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例のフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す説明図で、(a)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼を示す概念図、(b)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す概念図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の基本波と高調波を伝送する光学系を示す説明図で、(a)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図、(b)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置の光軸補正機能を示す概念図。
【図6】本発明の第1の実施の形態のレーザ加工装置の第4の変形例を示す概念図。
【図7】(a)は本発明の第2の実施の形態の基本波と高調波の周波数(パルス)を示す概念図、(b)は第2の実施形態のレーザピーニング照射スポットを示す図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の第1の変形例のレーザピーニングの照射密度を示す概念図。
【図9】レーザピーニングしたステンレス鋼SUS304の試験結果を示す説明図で、(a)はその第1の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ、(b)はその第2の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ。
【図10】本発明の第2の実施の形態の第2の変形例のレーザピーニング照射スポットを示す説明図で、(a)はレーザピーニング照射スポットを示す概念図、(b)はその第1の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(c)はその第2の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(d)はその第3の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図。
【図11】本発明の第3の実施の形態の基本波と高調波を用いた焦点裕度拡大方法を示す概念図。
【図12】ガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図。
【図13】ガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図。
【図14】ガスタービン動翼植込み部の冷却口表面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図15】ガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図16】ガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図。
【図17】本発明の第4の実施の形態の2台のレーザ発振器を用いた基本波と高調波の合成方法を示す概念図。
【図18】従来の高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るレーザ加工装置及びその方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施の形態の基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図である。また、図2は、レーザ光の水に対する減衰率を示す説明図であり、(a)はレーザ光の水に対する減衰率を示すグラフ、(b)はレーザ光の水に対する減衰率を示す計算式である。
【0023】
まず、基本波と高調波を用いたレーザ加工装置170の構成について、図1を用いて説明する。
【0024】
本図に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、第1の高調波発生手段である波長変換部3に入力されて基本波2と高調波4が作り出される。ここで、レーザ発振器1は、レーザピーニングを行うときは、ジャイアントパルスYAGレーザ発振器を用いるのが好ましいが、ジャイアントパルスが形成されるレーザ発振器であればこの限りではない。また、波長変換部3は高調波の種類によって1/2から1/5までの範囲で用いることができる。例えば、波長変換部3に第2高調波用のSHG(Second Harmonic Generation)を用いたときは、YAGレーザ発振器から照射された波長1064nmの基本波2は、波長変換部3を通ると波長1064nmの基本波2と波長532nmの高調波4が発生する。このとき、レーザ出力は入力値の1/2程度となるため、例えば出力200mJ/パルスの基本波2を入射したときには、出力100mJの基本波2と出力100mJの高調波4が出射されることになる。
【0025】
波長変換部3で発生した基本波2と高調波4は、ダイクロイックミラー5を介して、
それぞれ別々の光学系により伝送される。波長変換部3で発生した高調波4は、高調波用光学系7を経由し、高調波出力調整部9で出力調整され、レーザ光合成部10に伝達される。
【0026】
そして、波長変換部3で発生した基本波2は、ダイクロイックミラー5を介して、基本波出力調整部8で出力調整され、基本波用光学系6を介し、レーザ光合成部10に伝達される。このレーザ光合成部10に伝達された高調波4及び基本波2は、合成され、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。なお、使用する非線型結晶を変えることにより、例えば基本波の1/2から1/5の波長を有する高調波を得ることができる。
【0027】
なお、上記レーザピーニングは、被加工物12表面にパルスレーザを照射し、アブレーションにより被加工物12の表面に圧縮残留応力を付与している。このアブレーションとは、材料の表面にパルスレーザを照射することにより材料の表面が蒸発、侵食によって分解する現象である。
【0028】
このように構成された本実施の形態のレーザピーニングにおいては、レーザ光合成部10により合成された高調波4及び基本波2が水を介して被加工物12に照射されている。
【0029】
この高調波4及び基本波2の水に対する減衰率について説明する。
【0030】
レーザピーニングにおいて、被加工物12の表面に水がある状態でジャイアントパルスレーザを照射した場合、レーザ光を水中で伝送するときには、波長によっては水に吸収されて出力が減少することが知られている。
【0031】
例えば、図2(a)、(b)に示すように、波長532nmの高調波は水300mmで約1%とほとんど水で出力が減衰しないのに対し、波長1064nmの基本波は水5mmで約90%の出力が減衰してしまう。
【0032】
このために、1台のレーザ発振器から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4に分割し、被加工物12に圧縮応力を形成する等の同一目的の加工を行うときには、高調波4及び基本波2の水に対する減衰率を考慮しないで、それぞれのレーザ光を被加工物12に照射して施工することができる。
【0033】
一方、被加工物12に同一エネルギーのレーザ光を照射して加工を行うときには、高調波4は水300mmで約1%とほとんど出力が減衰しないのに対して、波長1064nmの基本波2は水5mmで約90%の出力が減衰してしまうことを考慮して、高調波4の照射前のエネルギーは若干増加させておく必要があるのに対して、基本波2の照射前のエネルギーは大幅に増加させておく必要がある。
【0034】
本実施の形態によれば、波長変換部3で発生した基本波2と高調波4はそれぞれ別々の光学系により伝送され、レーザ光合成部10で合成され、集光レンズ11からレーザ光を被加工物12の表面に水が存在する状態で照射して同一目的の加工を行うことができる。
【0035】
また、光ファイバにレーザ光を入射して所定の位置までレーザ光を伝送し、光ファイバ先端から出射されたレーザ光を再度光学系で集光して被加工物12表面に所定のスポット径で集光して同一目的の加工を行うことも可能である。
【0036】
図3は、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例のPWR炉内計装筒のレーザピーニング施工手段を示す説明図で、(a)はPWR炉内計装筒を示す概念図、(b)は配管内面レーザピーニング施工手段を示す概念図である。
【0037】
例えば、図3(a)に示すような配管形状を呈するPWR(Pressurized Water Reactor)型プラントの炉内計装筒(BMI:Bottom Mounted Instruments)の内面にレーザピーニングを施工する場合について説明する。このBMIノズル71は、PWR原子炉のPWR炉底部72に設けられている。
【0038】
図3(b)に示すように、光ファイバに代表されるレーザ光伝送手段73の先端に照射ヘッド74が設置されている。この照射ヘッド74は、非球面ミラー75を用いて反射させつつ集光するようにしてレーザ光76を施工部に集光させる。また他の変形例として非球面ミラーの代わりに集光レンズを介してミラーで集光してもよい。
【0039】
仮に、レーザ光伝送手段73から加工対象物であるBMIノズル71の先端までの距離が25mmであったときには、図2(b)に示す減衰率を表す計算式から算出すると、基本波2を照射したときの減衰率が約75%となる。レーザピーニングを施工する際に、基本波2と高調波4を同じエネルギーにするときには、波長変換部3で発生したレーザ光をダイクロイックミラー5で分離した後に、基本波出力調整部8と高調波出力調整部9を用いて伝送するエネルギーの比率を変え、その後の光学系における伝送ロスも加味することにより達成される。
【0040】
例えば、レーザ発振器1の出力が200mJ/パルスのレーザ光を用いたときに、波長変換部3で基本波2と高調波4それぞれのエネルギーを100mJとした後で、基本波の水中での減衰率75%と同じ値になるように、高調波のエネルギーを25%減衰させればよい。
【0041】
本実施の形態においては、この減衰させる方法として、基本波出力調整部8と高調波出力調整部9において高調波レーザ光の偏光特性を利用し、直線偏光で出てくる高調波が偏光フィルタ(図示せず)を通過する際の偏光方向を調整すれば容易にエネルギーを調整することができ、加工点において同じエネルギーを用いたレーザピーニングが達成される。
【0042】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光伝送手段73を介してそれぞれのレーザ光を用いてBMIノズル71の表面において同じエネルギーを用いたレーザピーニングを施工することができる。
【0043】
図4は、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例のフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す説明図で、(a)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼を示す概念図、(b)はフォーク型植込み部を有する蒸気タービン動翼のピン孔内面のレーザピーニング方法を示す概念図である。
【0044】
配管形状の加工対象物の内径に光ファイバから出射されたレーザ光を照射するレーザピーニングについて説明する。配管形状の加工対象物の内径がφ5mm以上であれば、光ファイバから出射されたレーザ光を非球面ミラーを介して被加工物表面に集光することができる。この適用例としては、図3(a)、(b)に示すようなBMIノズルや、図4(a)(b)に示すようなガスタービン部品である蒸気タービン翼ピン孔に係る円筒状形状において、本実施形態によるレーザピーニングの施工が可能である。
【0045】
図4(a)に示すように、蒸気タービンの動翼81は、ピン孔83にピンを挿入することによりディスク82に固定されている。レーザピーニングに係る施工は、フォーク型植込み部を有する蒸気タービンの動翼81をディスク82に固定するためのピンを挿入するためのピン孔83の内面に適用される。
【0046】
図4(b)に示すように、蒸気タービンの動翼81のピン孔83は、内径が7〜20mm程度であり、形状も円筒状であるので本実施の形態によるレーザピーニング施工が可能である。
【0047】
本実施の形態において、照射ヘッドの機能を有するレーザ光出射手段88がレーザ光伝送手段84によりピン孔83内に挿入される。このレーザ光伝送手段84先端のレーザ光出射手段88からレーザ光86が照射される。レーザ光集光手段85により所定のスポット径に成形されて図示しない水が被加工物の表面に存在する状態で出射口87よりレーザ光86が照射される。このレーザ光出射手段88を回転させながらピン孔83の軸方向に移動させることにより、ピン孔83の内面にレーザ光86が照射され、ピン孔83の内面に圧縮残留応力を形成することが可能となる。
【0048】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光伝送手段84を介してそれぞれのレーザ光を用いて蒸気タービン動翼のピン孔83の内面において同じエネルギーを用いたレーザピーニングを施工することができる。
【0049】
図5は、本発明の第1の実施の形態の第3の変形例の基本波と高調波を伝送する光学系を示す説明図で、(a)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置を示す概念図、(b)は基本波と高調波を用いたレーザ加工装置の光軸補正機能を示す概念図である。 図5に示すように、レーザ発振器1から出力された基本波2は、第1の高調波発生手段である波長変換部3に入力されて基本波+高調波132が作り出される。この波長変換部3で発生した基本波+高調波132は、レーザ光調整部131を介して伝送される。そして、この基本波+高調波132は、集光レンズ11からなる集光光学系により所定のスポット径に集光されて被加工物12の表面に照射される。
【0050】
一般に、図18に示すように、波長変換部3において基本波2と高調波4に分離した後に、この基本波2をダイクロイックミラー5を介してダンパー13に廃棄している。
【0051】
本実施の形態において、ダイクロイックミラー5を使用しないで、このままレーザ光調整部131と集光レンズ11を介して被加工物12に照射することができる。
【0052】
なお、図5(a)に示すように、波長変換部3において作り出された基本波+高調波132からなるレーザ光はそれぞれ同軸に照射される。一方、図5(b)に示すように、基本波2と高調波4が照射される角度が同軸にならないときもある。
【0053】
本実施の形態においては、波長変換部3から照射された基本波2と高調波4はレーザ光調整部131に入射される。そして、図5(b)に示すように、同軸方向に修正する必要があるときには、色消機能付集光レンズ21を用いて、集光される基本波2と高調波4の焦点位置が同じになるように修正される。
【0054】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、レーザ光調整部131を介してそれぞれのレーザ光を用いて被加工物12の表面においてレーザピーニングを施工することができる。
【0055】
図6は、本発明の第1の実施の形態のレーザ加工装置の第4の変形例を示す概念図である。
【0056】
波長変換部3において基本波2と高調波4を発生させた後に、ダイクロイックミラー5を介して基本波2と高調波4に分離している。このダイクロイックミラー5で基本波2と高調波4をそれぞれ別々の光路に分けて伝送しているので、図6に示すように、このまま別々の集光レンズ11a、11bを用いて異なる2つの被加工物12の表面又は同じ被加工物12でも異なる2箇所の部位について基本波2と高調波4を照射することができる。
【0057】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、別々の集光レンズ11a、11bを用いて異なる2つの被加工物12の表面又は同じ被加工物12でも異なる2箇所の部位にレーザピーニングを施工することができる。かくして、一つの被加工物12に対して同時に2箇所の加工が行えるために加工時間の短縮が可能となる。
【0058】
次に、図7を用いて本発明の第2の実施形態について説明する。図7(a)は、本発明の第2の実施の形態の基本波と高調波の周波数(パルス)を示す概念図、図7(b)は本実施の形態によるレーザピーニングの照射スポットを示す図である。
【0059】
図1において、レーザ発振器1から照射された基本波2のレーザ光は、波長変換部3において基本波2と高調波4が作り出され、一旦はそれぞれ別の光学系を用いて伝送され、同じ集光レンズ11を介して集光することによりレーザピーニングを行っている。
【0060】
このレーザピーニングを水中で行うときには、基本波2と高調波4で水中でのレーザ光減衰率が異なるために、集光レンズ11から被加工物12の表面までの距離に応じて基本波2と高調波4のレーザ出力を基本波出力調整部8と高調波出力調整部9で調整することにより、被加工物12表面の加工点において同じ出力でレーザピーニングを行うことができる。
【0061】
さらに、単位時間当たりのパルス数を変化させたいときには、上記集光レンズ11により照射される基本波2と高調波4の照射間隔を制御することにより実現できる。例えば、100Hzのレーザ発振器1においては、基本波2と高調波4の照射のタイミングについて図示しないタイミング調整部を用いて所定の時間に変動することが可能となる。
【0062】
すなわち、基本波2と高調波4に分離した後で、図7(a)に示すように、基本波の周波数121で照射するタイミングを高調波の周波数122の中間とし、図7(b)に示すように高調波スポット61と基本波スポット62を交互に照射することにより、基本波2と高調波4のタイミングを調整することにより、200Hzのレーザ発振器と同等にすることが可能となる。
【0063】
本実施の形態において、このタイミングをずらす手段としては、パルス周波数に関わる時間分を光が移動するような光学系や、図示しないシャッタを用いてシャッタ開閉のタイミングを周波数に合わせてもよい。このようにすれば照射のタイミングをずらすことが可能なので、3次元加工機等を用いてレーザ光の照射位置を制御することが可能となる。
【0064】
図8は、本発明の第2の実施の形態の第1の変形例のレーザピーニングの照射密度を示す概念図であり、図9は、レーザピーニングしたステンレス鋼SUS304の試験結果を示す説明図で、(a)はその第1の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフ、(b)はその第2の例のレーザピーニングしたSUS304鋼の残留応力測定結果を示すグラフである。
【0065】
レーザピーニングにおいては、照射するレーザ光のエネルギーや単位面積当りの照射密度を変えることにより被加工物12の表面に形成される残留応力が変わる。この単位面積あたりの照射密度とは、図8に示すように、施工範囲53内をレーザ光51により照射して施工するときに、レーザ光駆動軌跡52に沿って図示しない駆動装置によりレーザ光51を照射するパルス数密度を示している。この照射密度は、駆動装置により、スポット径の中心間距離を変更したり、スポットの照射状態を歯抜け状態にする等の対応をして変更している。
【0066】
本実施の形態において、図9(a)に示すように、ステンレス鋼SUS304の試験結果において、照射エネルギーが200mJで同じ照射密度の場合(この例では50パルス/mm2)には、太線41のように表層数μmの表面は残留応力が−200MPa程度で、その直下は−500MPaと高い圧縮応力になり、その後なだらかに応力が0に向かって小さくなり、深さ1mmまで圧縮応力が形成されていた。一方、照射エネルギーが20mJのときには、細線42のように表面残留応力は−600MPaと高く、その後徐々に値は0に向かっていく。応力改善深さについては0.5mmまでとエネルギーが200mJの場合に比べると浅くなる傾向が認められた。このように、パルスエネルギーが高い場合には形成される圧縮応力の絶対値としては低くなる傾向があるものの、深さ方向の改善効果は高くなる。一方、パルスエネルギーが低い場合には、表面に付与される圧縮応力の値は高くなるものの、深さ方向の改善効果は低くなる傾向が認められる。
【0067】
一方、図9(b)に示すように、細線43のように、パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後に20mJでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、すなわち、エネルギーの異なるレーザのタイミングをずらして同じ位置に照射することにより、表面残留応力も高い状態に維持することができる。
【0068】
図10は、本変形例のレーザピーニング照射スポットを示す説明図で、(a)はレーザピーニング照射スポットを示す概念図、(b)はその第1の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(c)はその第2の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図、(d)はその第3の例のレーザピーニング施工パターンを示す概念図である。
【0069】
図10(a)に示すように、エネルギーの高いレーザ光である高調波スポット61を先に照射し、少なくともレーザ光のパルス幅以上遅いタイミングで次のエネルギーの低いレーザ光である基本波スポット62を照射する。そして、図10(b)に示すように、高調波スポット61の照射と基本波スポット62の照射とを繰り返して施工を行う。また、図10(a)や図10(b)では基本スポット62と高調波スポット61のスポット径を変えているが、図10(c)に示すように、同じ大きさでも効果は得られる。また、被加工物12の材料や表面に形成したい応力によってスポット径の大きさ、エネルギーの比率又は照射密度をそれぞれ変えても可能である。また、被加工物12の表面の応力場を変えたいときには、図10(d)に示すように、照射するスポットを同じ位置にしなくてもよく、またスポット径を変えてもよい。パルスエネルギーは10mJ/パルス〜5.0J/パルス、スポット径としてはφ0.1〜2.0mmの範囲であれば同様の効果が得られる。
【0070】
本実施の形態によれば、1台のレーザ発振器1から出力されるレーザ光を2つの異なる波長の基本波2と高調波4を作り出し、それぞれのレーザ光を用いて、例えば、パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後に20mJでレーザピーニングし、すなわち、エネルギーの異なるレーザのタイミングをずらして同じ位置に照射することにより、施工対象物の表面直下でもある程度深い位置でも好適な圧縮残留応力を付与することができる。
【0071】
ただし、場合によっては基本波2と高調波4でレーザ光が集光する位置が変わってしまうときもあるので、このときには、集光レンズ11の手前に図示しない色消しレンズ(タブレットレンズ)を配置することにより焦点位置を同じ位置に制御することが可能となる。また、図10(d)に示すように、照射エネルギーを変えて施工すれば、従来と同等の施工速度で被加工物12の表面の応力分布を任意に制御することも可能である。
【0072】
図11は、本発明の第3の実施の形態の基本波と高調波を用いた焦点裕度拡大方法を示す概念図であり、図12はガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図、図13はガスタービン動翼植込み部の冷却口を示す概念図、図14はガスタービン動翼植込み部の冷却口表面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図、図15はガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図、図16はガスタービン動翼植込み部の冷却口内側面にレーザピーニングを行う方法を示す概念図である。
【0073】
図12に示すように、図示しないガスタービン動翼は、ロータ内面に設けられた冷却口103から冷却用ガスをガスタービン動翼内部の冷却口に導出することにより、運転中のガスタービン動翼内部を冷却している。ガスタービン動翼植込み部101は、クリスマスツリー部102と呼ばれる形状を呈しており、その付け根の部分に冷却口103が存在する。
【0074】
実機プラントにおいては、ガスタービンはその出力により異なるものの運転中に約1300℃まで温度が上昇し、冷却口103においても1000℃近くまで温度が上昇する。冷却口103には図13に示すような位置に結晶粒界の応力腐食酸化現象に起因するクラック(Hold Time Cracking)といわれるき裂が発生している事例が確認されている。き裂の発生を防止するためには、表面に圧縮残留応力を形成するのが効果的である。
【0075】
ところが、図12に示すように、冷却口103は複雑な形状を呈しているため、一般には、レーザピーニングを行うために必要な焦点位置の制御が困難である。
【0076】
そこで、冷却口103近傍に本実施の形態によるレーザピーニングを施工することにより、き裂の発生を防止することとする。
【0077】
すなわち、図11に示すように、基本波91と高調波92を同時に照射し、集光レンズ93により集光されるときに、基本波施工可能範囲94と高調波施工可能範囲95を併用することにより、基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を広くとることが可能となる。この結果、冷却口103内面で照射ヘッドを回転させるだけでレーザピーニングの施工が可能となる。
【0078】
なお、例えば集光レンズ93に波長によって屈折率が変わるレンズを採用することにより、図11に示すように基本波と高調波の焦点位置をずらして基本波+高調波施工可能範囲96を得ることができる。
【0079】
本実施の形態によれば、図14に示すように、冷却口103の表面をレーザピーニングするときには、レーザ光106を集光レンズ104を介して集光しながらミラー105で反射させて冷却口103表面に照射させる。このとき、図14に示すようにこのままミラー105を軸中心に回転させただけではミラー105から冷却口103までの距離が変動してしまうが、本実施の形態においては、図11に示す基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を用いることにより焦点裕度が広くなるために、回転方向の移動だけでレーザピーニングが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、図15、図16に示すように、冷却口103の内面を施工するときには、ミラー105を回転させることによりレーザ光駆動軌跡107に沿ってレーザ光106が冷却口103の内側面に照射される。すなわち、一般には、レーザピーニングの焦点裕度内に入らないため施工ができなかったが、基本波+高調波施工可能範囲96に示されるように焦点裕度を用いることにより焦点裕度が拡大するために、冷却口103の内側面のレーザピーニングに係る施工が可能となる。
【0081】
図17は、本発明の第4の実施の形態の2台のレーザ発振器151、152を用いた基本波と高調波の合成方法を示す概念図である。
【0082】
2台のレーザ発振器151、152を用いて施工するレーザピーニングに代表される高調波を用いたレーザ加工を行う一例について説明する。一般的には、1台のレーザ発振器から1系統の高調波を照射してレーザ加工を行っている。
【0083】
図17に示すように、第1のレーザ発振器151から照射されたレーザ光を第1の波長変換部153を用いて第1の基本波164と第1の高調波161を作り出す。このレーザ光は、第1のダイクロイックミラー155によりそれぞれ第1の基本波164と第1の高調波161の光路に分けられる。
【0084】
第2のレーザ発振器152から照射されたレーザ光についても同様に、第2のレーザ発振器152から照射されたレーザ光を第2の波長変換部154を用いて第2の基本波165と第2の高調波162を作り出す。このレーザ光は、第2のダイクロイックミラー156によりそれぞれ第2の基本波165と第2の高調波162の光路に分けられる。
【0085】
それぞれの基本波164、165と高調波161、162の出力はほぼ同じとなるが、もともとレーザ発振器151、152から照射されたエネルギーの約1/2となる。
【0086】
ここで、第1の基本波164と、基本波用ミラー157を介した第2の基本波165を基本波合成部158に伝送し合成することにより、合成された第3の基本波166のエネルギーは、元の第1のレーザ発振器151及び第2のレーザ発振器152のエネルギーとほとんど同じになる。
【0087】
そこで、この合成された第3の基本波166をさらに設けた第3の波長変換部159に入射して、新たな第4の基本波167と第3の高調波163を作りだす。第3のダイクロイックミラー160を用いて分離することで、第1、第2の高調波161、162と同じエネルギーを有する第3の高調波163を作り出すことが可能となる。第4の基本波167は、基本波用ミラー168を介して伝送される。
【0088】
このように構成された本実施の形態において、2台のレーザ発振器151、152から高調波161、162、163の3経路を作り出すことが可能となる。ここで、第4の基本波167に対しては、上記と同様に新たに設けた図示しないレーザ発振器から照射された同じエネルギーの基本波を合成して、さらに図示しない波長変換部を用いることで新たな高調波の光路を作り出すことができる。
【0089】
本実施の形態によれば、従来1台のレーザ発振器から1系統の高調波を得ていたが、2台のレーザ発振器から3系統の同じエネルギーを有する高調波を得ることが可能となり、レーザピーニングに係る施工速度の大幅な改善を図ることができる。
【0090】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
1…レーザ発振器、2…基本波、3…波長変換部、4…高調波、5…ダイクロイックミラー、6…基本波用光学系、7…高調波用光学系、8…基本波出力調整部、9…高調波出力調整部、10…レーザ光合成部、11,11a,11b…集光レンズ、12…被加工物、13…ダンパー、21…色消機能付集光レンズ、41…パルスエネルギー200mJ/パルスでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、42…パルスエネルギー20mJ/パルスでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、43…パルスエネルギー200mJでレーザピーニングした後、20mJでレーザピーニングしたSUS304鋼の応力測定結果、51…レーザ光、52…レーザ光駆動軌跡、53…施工範囲、61…高調波スポット、62…基本波スポット、71…BMIノズル、72…PWR炉底部、73…レーザ光伝送手段、74…照射ヘッド、75…非球面ミラー、76…レーザ光、81…動翼、82…ディスク、83…ピン孔、84…レーザ光伝送手段、85…レーザ光集光手段、86…レーザ光、87…出射口、88…レーザ光出射手段、91…基本波、92…高調波、93…集光レンズ、94…基本波施工可能範囲、95…高調波施工可能範囲、96…基本波+高調波施工可能範囲、101…ガスタービン動翼植込み部、102…クリスマスツリー部、103…冷却口、104…集光レンズ、105…ミラー、106…レーザ光、107…レーザ光移動軌跡、121…基本波の周波数、122…高調波の周波数、131…レーザ光調整部、132…基本波+高調波、151…第1のレーザ発振器、152…第2のレーザ発振器、153…第1の波長変換部、154…第2の波長変換部、155…第1のダイクロイックミラー、156…第2のダイクロイックミラー、157…基本波用ミラー、158…基本波合成部、159…第3の波長変換部、160…第3のダイクロイックミラー、161…第1の高調波、162…第2の高調波、163…第3の高調波、164…第1の基本波、165…第2の基本波、166…第3の基本波、167…第4の基本波、168…基本波用ミラー、170…レーザ加工装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ出力手段によりパルスレーザ光を出力するレーザ光出力ステップと、
このレーザ光出力ステップにおいて出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する高調波発生ステップと、
この高調波発生ステップにおいて発生した前記基本波が伝送される基本波伝送ステップと、
前記高調波発生ステップにおいて発生した前記高調波が伝送される高調波伝送ステップと、
前記基本波伝送ステップより伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを、同一の集光光学系によって集光し、水を介して被加工物に照射してアブレーション加工により前記被加工物に圧縮応力を付与するレーザ照射ステップと、
を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物の同一箇所に照射されること、を特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波を異なるタイミングで照射すること、を特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物に照射されるときに、前記基本波と前記高調波のレーザ光が異なる焦点距離で集光されること、を特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物に照射されるときに、異なる波長のレーザ光が同じ焦点距離で集光されること、を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波がエネルギー分布を変えて照射されること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記レーザ照射ステップにおいて、少なくとも2台以上のレーザ発振器から出力された基本波を合成することにより、2つ以上の高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記レーザ照射ステップにおいて、少なくとも2台以上のレーザ発振器から出力されて合成された基本波を、第2の高調波発生手段に入力することにより3つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記レーザ照射ステップにおいて、2以上の前記レーザ光が配管形状を呈する被加工物の内面に照射されること、を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記レーザ照射ステップにおいて、2以上の前記レーザ光がガスタービン部品に照射されること、を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
レーザ光を出力するレーザ出力手段と、
このレーザ出力手段から出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する第1の高調波発生手段と、
この第1の高調波発生手段により発生した前記基本波を伝送する基本波伝送光学系と、
前記第1の高調波発生手段により発生した前記高調波を伝送する高調波伝送光学系と、
前記基本波伝送光学系より伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを集光し、水を介して被加工物に照射させる集光光学系と、
を有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ出力手段は、少なくとも2台のレーザ発振器を具備し、このレーザ発振器から出力された基本波を前記集光光学系によって集光することにより2つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記レーザ出力手段は、少なくとも2台のレーザ発振器を具備し、このレーザ発振器から出力されて合成された基本波を第2の高調波発生手段に入力することにより3つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【請求項1】
レーザ出力手段によりパルスレーザ光を出力するレーザ光出力ステップと、
このレーザ光出力ステップにおいて出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する高調波発生ステップと、
この高調波発生ステップにおいて発生した前記基本波が伝送される基本波伝送ステップと、
前記高調波発生ステップにおいて発生した前記高調波が伝送される高調波伝送ステップと、
前記基本波伝送ステップより伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを、同一の集光光学系によって集光し、水を介して被加工物に照射してアブレーション加工により前記被加工物に圧縮応力を付与するレーザ照射ステップと、
を有することを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物の同一箇所に照射されること、を特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波を異なるタイミングで照射すること、を特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物に照射されるときに、前記基本波と前記高調波のレーザ光が異なる焦点距離で集光されること、を特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波が前記被加工物に照射されるときに、異なる波長のレーザ光が同じ焦点距離で集光されること、を特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記レーザ照射ステップにおいて、前記基本波と前記高調波がエネルギー分布を変えて照射されること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記レーザ照射ステップにおいて、少なくとも2台以上のレーザ発振器から出力された基本波を合成することにより、2つ以上の高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記レーザ照射ステップにおいて、少なくとも2台以上のレーザ発振器から出力されて合成された基本波を、第2の高調波発生手段に入力することにより3つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記レーザ照射ステップにおいて、2以上の前記レーザ光が配管形状を呈する被加工物の内面に照射されること、を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項10】
前記レーザ照射ステップにおいて、2以上の前記レーザ光がガスタービン部品に照射されること、を特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
レーザ光を出力するレーザ出力手段と、
このレーザ出力手段から出力された前記レーザ光が入力され基本波と高調波を発生する第1の高調波発生手段と、
この第1の高調波発生手段により発生した前記基本波を伝送する基本波伝送光学系と、
前記第1の高調波発生手段により発生した前記高調波を伝送する高調波伝送光学系と、
前記基本波伝送光学系より伝送された前記基本波と前記高調波伝送光学系により伝送された前記高調波とを集光し、水を介して被加工物に照射させる集光光学系と、
を有することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ出力手段は、少なくとも2台のレーザ発振器を具備し、このレーザ発振器から出力された基本波を前記集光光学系によって集光することにより2つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記レーザ出力手段は、少なくとも2台のレーザ発振器を具備し、このレーザ発振器から出力されて合成された基本波を第2の高調波発生手段に入力することにより3つの高調波と1つの基本波を照射すること、を特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−115853(P2011−115853A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247602(P2010−247602)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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