説明

レーザ加工装置

【課題】レーザ光が出射される前に可視光にて印字領域を投影してレーザ光の出射を事前に認識させることができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】制御装置40は、印字開始信号に応答して、照明用光源31〜34を駆動させて印字領域を投影光にて投影するとともに、印字開始信号から予め定めた時間経過した後、レーザ発振器21からのレーザ光を加工対象物の加工面に出射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光により印字を行うレーザ加工装置が知られている。レーザ加工装置は、レーザ光を集光レンズで集光しその集光したレーザ光を印字対象物の加工面に出射する。レーザ加工装置は集光したレーザ光を加工面上でX方向及びY方向に走査することによって、その加工面上に文字、記号、図形等を印字する。この時、レーザ加工装置は、レーザ加工装置の筐体の外壁に設けた警報ランプを点灯させ、レーザ光による印字加工中であることを周囲に報知していた。
【0003】
また、レーザ加工装置とは異なる除電装置では、加工表面を除電するために軟X線を出射する際、軟X線とともに可視光を加工面に投影して、その可視光にて軟X線の出射領域に入り込まないようにした除電装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−87088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記レーザ加工装置はレーザ出射中(印字中)に警報ランプを点灯し、除電装置は軟X線出射中(除電中)に可視光を除電面に投影していた。従って、出射中は、作業者は、レーザ光又は軟X線が出射されていることを認識することができる。
【0006】
しかしながら、レーザ光又は軟X線が出射される前を予知することはできない。従って、レーザ加工装置や除電装置の近くにいる作業者は、レーザ光又は軟X線が出射されるまで、気付かないことから身体の一部がレーザ光又は軟X線に当たる虞があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、レーザ光が出射される前に、可視光にてレーザ光が出射される印字領域を投影して、そのレーザ光の出射を事前に認識させることができるレーザ加工機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、レーザ光にて加工対象物の加工面に印字加工をするレーザ加工装置であって、前記レーザ光を出射するレーザ発振手段と、印字加工のために前記レーザ光を走査する光走査手段と、可視光を出射し、その可視光を投影光として、前記光走査手段が前記レーザ光を走査する印字領域に投影する投影手段と、印字開始信号に応答して、前記投影手段と前記レーザ発振手段を動作させ、前記投影手段の可視光出射し投影するタイミングと、前記投影するタイミングから所定時間後に前記レーザ発振手段のレーザ出射するタイミングとをそれぞれ制御する制御手段とを備えた。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、レーザ加工装置からレーザ光の出射前の予め定めた時間中、可視光(投影光)にてレーザ光が出射される加工面が可視化されて投影されることから、レーザ光の出射を事前に認識させることができ、レーザ光の出射前に安全に退避することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のレーザ加工装置において、前記投影手段の投影光は、前記印字領域の範囲全体を投影する投影光である。
請求項2に記載の発明によれば、投影光は、印字領域の範囲全体を投影するため、レーザ光が出射される領域全体が可視化される。そのため、作業者は、レーザ光が出射される領域を事前により明確に視認することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、前記投影手段の投影光は、前記印字領域より広い範囲を投影する投影光である。
請求項3に記載の発明によれば、投影光は、印字領域より広い範囲を投影することで、投影光の端から印字領域に到達するのに幅を持たせた。そのため、万が一、投影光の端に浸入しても、作業者は出射されるレーザ光から安全に回避する行動をとることが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1に記載のレーザ加工装置において、前記レーザ加工装置は、前記印字領域に出射するレーザ光を集光する集光レンズが交換可能なレーザ加工装置であり、前記投影手段は、前記レーザ加工装置の筐体内に設けられ、前記可視光は集光レンズを介して投影光として前記印字領域に投影される。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、筐体内に投影手段を設けたことにより、集光レンズが交換されるごとに、投影手段の投影領域を再調整する必要がない。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記印字開始信号から予め定めた時間経過後の前記レーザ光の出射中においても、前記投影手段を駆動して前記印字領域を前記投影光にて投影する。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、レーザ光の出射中においても、投影光にてレーザ光が出射されている印字領域の範囲が可視化されて投影されることから、その可視化された投影光を見て出射中のレーザ光が走査されていることが認識でき、その場に近づくことを未然に回避することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、前記レーザ光の出射前と前記レーザ光の出射中とで、前記印字領域を投影する投影光の態様を相違させるように前記投影手段を制御した。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、レーザ光の出射前とレーザ光の出射中とで、加工面を投影する投影光の態様を変えたことで、レーザ光が出射前か出射中かを視認できる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、制御手段が有する前記所定時間は、操作手段により変更することがでる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、作業者はレーザ出射前の投影光による投影を任意の時間に設定できる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、前記投影手段は、複数種類の色の可視光を出射するものであり、前記制御手段は、操作手段の操作により、前記投影手段に対して各色の可視光を選択可能である。
【0018】
請求項8に記載の発明によれば、その時々で投影光の色を変えることで作業者はレーザ出射前と出射中をより確実に認識できる。
請求項9に記載の発明は、
請求項1〜8のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、前記制御手段は、レーザ出射前であって、前記投影手段の可視光の出射開始後にレーザ出射を報知する報知手段を駆動させる。
【0019】
請求項9に記載の発明によれば、レーザ出射前を視覚の他に聴覚で知らせることができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、印字位置をカイドする可視光を出射するガイド光出射手段を有し、前記投影手段は、前記ガイド光出射手段からなる。
【0020】
請求項10に記載の発明によれば、レーザ加工装置の元々装備されている表示装置で、同じ効果を得ることができるとともに、追加部品もいらなくて済む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レーザ光が出射される前に、可視光にてレーザ光が出射される加工面を投影して、そのレーザ光の出射を事前に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】レーザ加工装置の全体斜視図。
【図2】レーザ加工装置の概略構成図。
【図3】照明用光源の配置示す全体斜視図。
【図4】各照明用光源の配置を示す図。
【図5】各照明用光源の配置を示す図。
【図6】各投影光と拡大投影光を示す図。
【図7】レーザ加工装置の電気ブロック回路図。
【図8】レーザ加工装置の作用を説明するためのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化したレーザ加工装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置10は略直方体形状の筺体11を有し、筺体11は基端側を本体部11aと、本体部11aの先端部をヘッド部11bとから構成されている。筺体11のヘッド部11bの下方には、加工対象物Wが配置されている。加工対象物Wは、筺体11の底面12に設けた集光レンズ24から出射するX方向及びY方向に2次元的に走査されたレーザ光Lが加工対象物Wの加工面Wsの印字領域Zに出射される。
【0024】
図2は、筺体11にケーシングされたレーザ加工装置10の概略構成図を示す。図2において、レーザ発振器21は、励起光を出射する半導体レーザを備え、半導体レーザから出射された励起光を入射し該励起光に基づいて共振してレーザ光Lを出射する。レーザ発振器21は、この励起光のパワーを調整することによってレーザ発振器21から出射するレーザ光Lのパワーが制御される。
【0025】
レーザ発振器21から出射されたレーザ光Lは、ビームエキスパンダ22に出射される。ビームエキスパンダ22は、レーザ光Lを入射する入射レンズ22aと、入射レンズ22aを通過したレーザ光Lをガルバノスキャナ23に出射する出射レンズ22bを備えている。ビームエキスパンダ22は、入射レンズ22aと出射レンズ22bとの相対距離を変化させることができるようになっている。
【0026】
ビームエキスパンダ22は、入射レンズ22aと出射レンズ22bとの相対距離を変化させることで、ガルバノスキャナ23及び集光レンズ24を介して加工対象物Wへ集光されるレーザ光Lの焦点位置を、光軸方向に移動させるようになっている。そして、ビームエキスパンダ22を通過したレーザ光Lはガルバノスキャナ23に出射される。
【0027】
ガルバノスキャナ23は、X軸ガルバノミラー23a及びY軸ガルバノミラー23bを備えている。
X軸ガルバノミラー23aは、回動して、加工対象物Wに向けて出射するレーザ光Lを、加工対象物Wに対して、X方向に走査させるミラーである。X軸ガルバノミラー23aは、図3に示すように、X軸ガルバノモータMXの回転軸MXaに固着され、X軸ガルバノモータMXの駆動により回動されて、加工対象物Wに向けて出射するレーザ光Lを、加工面Wsの印字領域Zに対してX方向に走査させる。
【0028】
Y軸ガルバノミラー23bは、回動して、加工対象物Wに向けて出射するレーザ光Lを、加工対象物Wに対して、X方向と直交するY方向に走査させるミラーである。Y軸ガルバノミラー23bは、図3に示すように、Y軸ガルバノモータMYの回転軸MYaに固着され、Y軸ガルバノモータMYの駆動により回動されて、加工対象物Wに向けて出射するレーザ光Lを、加工面Wsの印字領域Zに対してY方向に走査させる。
【0029】
従って、加工対象物Wに向けて出射するレーザ光Lは、X軸及びY軸ガルバノミラー23a,23bにより、加工対象物Wの加工面Wsの印字領域Zに対して、X方向及びY方向に走査される。ここで、印字領域Zとは、本実施形態では、X軸ガルバノミラー23a及びY軸ガルバノミラー23bを駆動制御して、レーザ光Lが加工対象物Wの加工面Wsを出射する際の最大の出射可能範囲をいう。
【0030】
ガルバノスキャナ23のX軸及びY軸ガルバノミラー23a,23bにてX及びY方向に走査されたレーザ光Lは、集光レンズ24を介して集光されて加工対象物Wの加工面Wsに出射される。そして、レーザ光Lが、集光レンズ24を介して集光されて加工対象物Wの加工面Wsにレーザ光Lが出射されることによって、該加工面Wsに多種多様な文字、記号、図形等が印字される。
【0031】
また、図3に示すように、Y軸ガルバノミラー23bと集光レンズ24の間であって同じ高さ位置に、4個のLED(Light Emitting Diode)からなる照明用光源31〜34が配置されている。4個の照明用光源31〜34は、図4に示すように、集光レンズ24の外周縁の内側であってY軸ガルバノミラー23bからのレーザ光Lがかからない位置に、配置されている。従って、Y軸ガルバノミラー23bからのレーザ光Lの一部が、4個の照明用光源31〜34にて遮られることはない。
【0032】
また、4個の照明用光源31〜34は、図5に示すように、集光レンズ24の中心軸を中として等角度(90度)の間隔に対称配置されている。4個の照明用光源31〜34は、本実施形態では赤色の可視光を出射する拡散光であって、図4に示すように、各照明用光源31〜34の拡散光L1〜L4を集光レンズ24に向けて出射している。
【0033】
集光レンズ24に向けて出射された各照明用光源31〜34の拡散光L1〜L4は、それぞれ加工対象物Wの加工面Wsの一部を包含する投影光PL1〜PL4として出射される。そして、各照明用光源31〜34の拡散光L1〜L4に基づいて投影された投影光PL1〜PL4によって、図6に示すように、加工対象物Wの加工面Wsの全体が包含される。ここで、各投影光PL1〜PL4によって、加工対象物Wの加工面Wsの全体を包含する投影光を拡大投影光PL0という。
【0034】
詳述すると、各投影光PL1〜PL4は、図6に示すように、加工対象物Wの外形(図6では正四角形)に対して、各投影光PL1〜PL4の直径が加工対象物Wの一辺と同じとなるように生成されている。そして、各投影光PL1〜PL4は、直径部分が加工対象物Wの一辺と一致するように設定されている。
【0035】
従って、各投影光PL1〜PL4からなる拡大投影光PL0は、加工対象物Wの各辺を内包する投影光となる。
つまり、各照明用光源31〜34を作動させると、筺体11のヘッド部11bの下方の加工対象物Wを配置する位置に、加工対象物Wの加工面Wsの全体を包含するサイズの拡大投影光PL0が投影されることになる。そして、筺体11のヘッド部11bの下方に加工対象物Wを配置して各照明用光源31〜34を作動させた時、その加工対象物Wには、この拡大投影光PL0にて加工対象物Wの加工面Wsの全体を含む領域が赤色の光で投影されることになる。従って、本実施形態は、加工面Wsの印字領域Zは、拡大投影光PL0の外周縁に内側であってその外周縁から一定の距離をおいた位置に内包される。
【0036】
次に、上記した各照明用光源31〜34を駆動制御するレーザ加工装置10の電気的構成を図7に従って説明する。
制御装置40は、中央処理装置(CPU)及び記憶装置(ROM及びRAM)を備え、記憶装置に記憶した制御プログラム及びアプリケーションプログラムに従って、レーザ発振器21、ガルバノスキャナ23及び各照明用光源31〜34をそれぞれ駆動制御する。制御装置40は、図示しない、電源スイッチと印字開始スイッチと接続され、電源スイッチと印字開始スイッチからの操作に基づいてレーザ発振器21、ガルバノスキャナ23及び各照明用光源31〜34をそれぞれ駆動制御する。
【0037】
次に、レーザ加工装置10の作用を、図8に示す制御装置40の処理動作を説明するフローチャートに従って説明する。
電源スイッチが操作されると、制御装置40は、立ち上がり起動信号をレーザ発振器21に出力する。レーザ発振器21は、制御装置40からの起動信号に応答して、半導体レーザを駆動し励起させ、印字開始スイッチの操作を待つ。
【0038】
そして、印字開始スイッチが操作されて印字開始信号が制御装置40に出力されると、制御装置40は、印字開始信号に応答して予め定めたTk秒間、各照明用光源31〜34に対して、点滅駆動制御信号を出力する。各照明用光源31〜34は、制御装置40からの点滅駆動制御信号に応答して点滅発光する(ステップS1,S2)。これによって、点滅する拡大投影光PL0が、加工対象物Wの加工面Wsの全体に投影(点滅投影)される。
【0039】
従って、作業者は、加工対象物Wの加工面Wsの全体を点滅して投影する赤色の拡大投影光PL0を視認して、加工面Wsの印字領域Z内にレーザ光Lが出射されることを事前に認識することができる。
【0040】
予め定めたTk秒が経過して点滅動作が完了すると(ステップS2でYES)、制御装置40は、各照明用光源31〜34に対して、連続点灯駆動制御信号を出力する。各照明用光源31〜34は、制御装置40からの連続点灯駆動制御信号に応答して連続発光を開始する(ステップS3)。これによって、連続点灯する赤色の拡大投影光PL0が加工対象物Wの加工面Wsの全体に投影される。
【0041】
加工対象物Wの加工面Wsの全体が拡大投影光PL0にて連続点灯されると同時に、その点灯状態を維持しながら制御装置40は、レーザ発振器21及びガルバノスキャナ23を駆動制御して、レーザ光Lを加工対象物Wに出射して印字加工を開始する(ステップS4)。
【0042】
従って、作業者は、連続点灯する赤色の拡大投影光PL0を視認して、加工面Wsの印字領域Z内においてレーザ光Lによる印字加工が実際に行われていることを認識することができる。
【0043】
やがて、印字加工が終了すると(ステップS5でYES)、制御装置40は、各照明用光源31〜34に対して消灯駆動制御信号を出力して、各照明用光源31〜34を消灯させる(ステップS6)。
【0044】
次に、上記のように構成した実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、印字開始スイッチが操作されて印字開始信号が出力されると、レーザ光Lが出射される前の予め定めたTk秒間、各照明用光源31〜34に対して点滅駆動させた。そして、加工面Wsの印字領域Zを赤色の拡大投影光PL0で点滅投影させた。
【0045】
従って、作業者は、赤色の拡大投影光PL0の点滅投影を見てレーザ光Lの出射開始が直前あること認識し、身体の一部がレーザ光Lに当たることなくその場から安全に退避することができる。
【0046】
(2)上記実施形態によれば、予め定めたTk秒間経過後であってレーザL出射中、すなわち、印字加工中にも、照明用光源31〜34を連続点灯させた。そして、加工面Wsの印字領域Zを赤色の拡大投影光PL0で連続投影した。
【0047】
従って、作業者は、拡大投影光PL0の連続投影を見て、レーザ光Lが照射される位置に近づくことを未然に回避することができる。
(3)上記実施形態によれば、印字開始スイッチが操作されると、予め定めたTk秒間、拡大投影光PL0にて加工対象物Wの加工面Wsを点滅投影させ、その後、拡大投影光PL0にて加工対象物Wの加工面Wsを連続投影させた。すなわち、レーザ光Lの出射前と、レーザ光Lの出射中とで拡大投影光PL0の表示態様(投影態様)を変えた。
【0048】
従って、作業者は、レーザ光Lの出射前と出射中とを容易に視認できる。
つまり、作業者は、拡大投影光PL0による加工対象物Wの加工面Wsの点滅投影を見てレーザ光Lの出射による印字加工が開始直前あること認識し、その場から退避することができる。
【0049】
また、作業者は、拡大投影光PL0による加工対象物Wの加工面Wsの連続投影を見てレーザ光Lの出射による印字加工が行われている最中であること認識し、その場に近づくことを未然に回避することができる。
【0050】
(4)上記実施形態によれば、赤色の拡大投影光PL0は、印字領域Zより広い範囲を投影するようにした。従って、拡大投影光PL0の外周縁から印字領域Zまで距離があるため、万が一、身体の一部が拡大投影光PL0の端に浸入しても、直ちに、レーザ光Lに当たることはなく、作業者は出射されるレーザ光Lからの回避行動をとることが可能となる。
【0051】
(5)上記実施形態によれば、4個の照明用光源31〜34をレーザ光Lの光軸の周囲径方向に90度の等角度間隔で、かつ、光軸に対して対称となるように配置した。そして、各照明用光源31〜34からの拡散光L1〜L4を集光レンズ24に向けて出射し、各拡散光L1〜L4を印字領域Zの範囲全体を可視化する投影光PL1〜PL4(拡大投影光PL0)とした。
【0052】
従って、投影光PL1〜PL4(拡大投影光PL0)が正方形の場合には、図6に示すように、投影光PL1〜PL4(拡大投影光PL0)が互いに重なり合った明るくなった4箇所部分が形成され正方形の印字領域Zがより明確に視認できる。
【0053】
(6)上記実施形態によれば、各照明用光源31〜34は、集光レンズ24の外周縁の内側であってY軸ガルバノミラー23bからのレーザ光Lがかからない位置に配置して、Y軸ガルバノミラー23bからのレーザ光Lが、同照明用光源31〜34にて遮られないようにした。従って、レーザ光Lのパワーが低減されず、印字加工を効率よく行える。
【0054】
(7)上記実施形態によれば、各照明用光源31〜34を、筐体11のヘッド部11b内に設けたので、照明用光源31〜34ら出射される拡散光L1〜L4は、作業者に身体の一部に遮られることがないことから、加工面Wsを投影する拡大投影光PL0は欠けることはない。従って、確実に加工面Wsの印字領域Z全体を投影する。
【0055】
(8)上記実施形態よれば、各照明用光源31〜34は、集光レンズ24とY軸ガルバノミラー23bとの間、すなわち、筐体11内に配置した。
これによって、集光レンズを交換して印字領域Zを変えることができるレーザ加工装置に10おいて、集光レンズ24が交換されるごとに、各照明用光源31〜34による拡大投影光PL0の投影領域を再調整する手間を必要としない。
【0056】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、印字領域Zを、X軸ガルバノミラー23a及びY軸ガルバノミラー23bを駆動制御して、レーザ光Lが加工対象物Wの加工面Wsを出射する際の最大の出射可能範囲とした。従って、この場合、その印字領域Z内において、印字される文字、記号、図形等の数は、1つでも複数個であってもよい。
【0057】
・上記実施形態では、印字領域Zを、X軸ガルバノミラー23a及びY軸ガルバノミラー23bを駆動制御して、レーザ光Lが加工対象物Wの加工面Wsを出射する際の最大の出射可能範囲とした。これを、レーザ加工装置10が加工対象物Wの加工面Wsに印字を文字、記号、図形等を実際に印字する際の、レーザ光LのX方向及びY方向の振り幅を印字領域Zとして実施してもよい。
【0058】
・上記実施形態では、投影手段を構成する照明用光源31〜34を4個で実施したがこれに限定されるものではない。要は、印字領域の範囲全体を投影できれば、その数は1個〜3個又は5個以上であってもよい。
【0059】
また、印字領域Zの形状(長方形又は正方形)、又は、大きさにあわせて、照明用光源の配置位置や数を適宜変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、投影手段を構成する照明用光源31〜34をLEDで実施したがこれに限定されるものではない。例えば、ランプ、低パワーのレーザダイオードからなる照明用光源を用いて実施してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、投影手段を構成する照明用光源31〜34が出射する拡散光L1〜L4は、赤色の可視光であったがこれに限定されるものではない。例えば、橙色、緑色、黄色等の可視光で実施してもよい。勿論、各照明用光源31〜34がそれぞれ異なる可視光の拡散光L1〜L4を出射するようにして実施してもよい。
【0061】
さらに、投影手段を構成する照明用光源31〜34は、それぞれ複数種類の色(赤色、青色、黄色、緑色等)の可視光を出射する光源であってもよい。これによって、その時々で投影光の色を変えることで作業者はレーザ出射前と出射中をより確実に認識できる。
【0062】
・上記実施形態では、レーザ光の出射前とレーザ光の出射中とがそれぞれ識別できるように、レーザ光Lの出射前は拡大投影光PL0を点滅動作させ、レーザ光Lの出射中は拡大投影光PL0を連続点灯させて、拡大投影光PL0の投影態様(表示態様)を変えた。
【0063】
これを、レーザ光Lの出射前は拡大投影光PL0を連続点灯で、レーザ光Lの出射中は拡大投影光PL0を点滅動作させて実施してもよい。
また、レーザ光Lの出射前と出射中の拡大投影光PL0の可視光の色を変えて実施してもよい。例えば、出射前の拡大投影光PL0は黄色の可視光で、出射中の拡大投影光PL0は赤色の可視光で実施することが考えられる。
【0064】
また、レーザ光Lの出射前と出射中の拡大投影光PL0の形状を変えて実施してもよい。例えば、出射前の拡大投影光PL0は四角形で、出射中の拡大投影光PL0は円形で実施することが考えられる。また、出射前と出射中とで拡大投影光PL0のサイズを可変するようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、レーザ光の出射前とレーザ光の出射中とがそれぞれ識別できるように、レーザ光Lの出射前と出射中とで、拡大投影光PL0の投影態様(表示態様)を変えたが、拡大投影光PL0の投影態様(表示態様)を終始変更しないようにして実施してもよい。
【0066】
・上記実施形態では、拡大投影光PL0で印字領域Z全体を投影したが、枠状の拡大投影光PL0で実施してもよい。この場合、拡大投影光PL0で投影された枠内においてレーザ光Lが出射されることが認識できる。
【0067】
・上記実施形態では、拡大投影光PL0で印字領域Z全体を投影した。これを、レーザ出射前及び出射中に印字領域Z内の一部に投影光が投影されるように実施してもよい。この場合、印字領域Zの一部が投影光にて投影されるのを見て、レーザ光Lの出射前及び出射中が認識できる。
【0068】
また、上記実施形態における印字領域Zの各コーナ部分を投影光で投影したり、印字領域Zの各辺部分を投影したりして実施してもよい。
・上記実施形態では、投影手段が加工面Wsに投影する拡大投影光PL0の形状は、4個の投影光PL1〜PL4を重ね合わせて4丸葉の形状であったが、四角形状であったり、三角形状であったりしてもよい。
【0069】
・上記実施形態では、各照明用光源31〜34は、集光レンズ24とY軸ガルバノミラー23bとの間、すなわち、筐体11内に配置した。これを、集光レンズ24の外周縁に沿って配置して実施してもよい。
【0070】
さらに、筺体11の底面12外壁に各照明用光源31〜34を加工面Wsに向けて設けて実施してもよい。
・上記実施形態では、印字領域Zの範囲全体を投影する拡大投影光PL0を照明用光源31〜34にて生成した。これを、印字加工する前に確認のために、事前に印字領域Zに印字する文字、記号、図形等を表示することや、印字領域を表示することや、ポインタ表示をすることによって、印字位置をガイドする可視光を出射するガイド光出射手段を投影手段として用いてもよい。これよって、レーザ加工装置の元々装備されている表示装置を使って、印字領域Zの枠や、実際に印字する文字、記号、図形等を表示すれば、同じ効果を得ることができる。また、追加部品がいらなくて済む。
【0071】
・上記実施形態では、レーザ出射前を拡大投影光PL0で印字領域Z全体を投影した。これを、レーザ出射前であって、拡大投影光PL0が投影された後に、ブザー等の報知手段を鳴ら(駆動)して実施してもよい。作業者はレーザ出射前を視覚の他に聴覚でレーザ出射が迫っていることを知ることができる。
【0072】
・上記実施形態では、レーザ光Lが出射される前の点滅投影時間は予め定めたTk秒間であったが、これを、操作手段にてこのTk秒間を変更できるように実施してもよい。
これによって、作業者はレーザ出射前の投影光による投影を任意の時間に設定できる。
【符号の説明】
【0073】
10…レーザ加工装置、11…筺体、11a…本体部、11b…ヘッド部11b、21…レーザ発振器(レーザ発振手段)、22…ビームエキスパンダ、22a…入射レンズ、22b…出射レンズ、23…ガルバノスキャナ(光走査手段)、23a…X軸ルバノミラー、23b…Y軸ルバノミラー、31〜34…照明用光源(投影手段)、40…制御装置(制御手段)、L…レーザ光、L1〜L4…拡散光(可視光)、MX…X軸ガルバノモータ、MXa…回転軸、MY…Y軸ガルバノモータ、MYa…回転軸、PL0…拡大投影光、PL1〜PL4…投影光、W…加工対象物、Ws…加工面、Z…印字領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光にて加工対象物の加工面に印字加工をするレーザ加工装置であって、
前記レーザ光を出射するレーザ発振手段と、
印字加工のために前記レーザ光を走査する光走査手段と、
可視光を出射し、その可視光を投影光として、前記光走査手段が前記レーザ光を走査する印字領域に投影する投影手段と、
印字開始信号に応答して、前記投影手段と前記レーザ発振手段を動作させ、前記投影手段の可視光出射し投影するタイミングと、前記投影するタイミングから所定時間後に前記レーザ発振手段のレーザ出射するタイミングとをそれぞれ制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記投影手段の投影光は、前記印字領域の範囲全体を投影する投影光であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記投影手段の投影光は、前記印字領域より広い範囲を投影する投影光であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ加工装置は、前記印字領域に出射するレーザ光を集光する集光レンズが交換可能なレーザ加工装置であり、
前記投影手段は、前記レーザ加工装置の筐体内に設けられ、前記可視光は集光レンズを介して投影光として前記印字領域に投影されることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記印字開始信号から予め定めた時間経過後の前記レーザ光の出射中においても、前記投影手段を駆動して前記印字領域を前記投影光にて投影することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1に記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、前記レーザ光の出射前と前記レーザ光の出射中とで、前記印字領域を投影する投影光の態様を相違させるように前記投影手段を制御したことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
制御手段が有する前記所定時間は、操作手段により変更することがでることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
前記投影手段は、複数種類の色の可視光を出射するものであり、
前記制御手段は、操作手段の操作により前記投影手段に対して各色の可視光を選択可能であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
前記制御手段は、レーザ出射前であって、前記投影手段の可視光の出射開始後にレーザ出射を報知する報知手段を駆動させることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載のレーザ加工装置において、
印字位置をカイドする可視光を出射するガイド光出射手段を有し、前記投影手段は、前記ガイド光出射手段からなることを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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