説明

レーザ加工装置

【課題】レーザ出射ユニットに対するレーザ照射ユニットの着脱を繰り返しても、レーザ光の光軸の位置精度が低下することを抑制することが可能なレーザ加工装置を提供する
【解決手段】レーザマーキング装置は、レーザ光を出射するレーザ出射ユニット13と、該レーザ出射ユニット13に対して着脱可能に接続されるとともに、レーザ出射ユニット13から出射されるレーザ光を加工対象物に照射するレーザ照射ユニット14とを備える。レーザ照射ユニット14におけるレーザ出射ユニット13との接続部には後方に向かって突出する凸部44が設けられるとともに、レーザ出射ユニット13におけるレーザ照射ユニット14との接続部には凸部44を嵌合可能とする凹部28が設けられている。そして、凹部28は前後方向の両側と下側とが開放されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を加工対象物に照射して加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ加工装置としては、レーザ光を発振するレーザ発振器を収容したレーザ出射ユニットと、該レーザ出射ユニットからのレーザ光を加工対象物に照射するための照射光学系(ガルバノミラーや収束レンズ等)を有したレーザ照射ユニットとが光ファイバケーブルで接続されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなレーザ加工装置では、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとをそれぞれ独立した筐体を有した構成にすることで、例えば、レーザ出射ユニット及び光ファイバケーブルに対し、加工対象物の大きさなどに応じて、レーザ照射ユニットのみの交換を容易に行うことができるようになっている。
【0004】
ところで、こうしたレーザ加工装置では、レーザ光の光軸のずれが加工品質に大きく影響するため、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとを接続する際には、高い精度で位置決めを行う必要がある。このため、レーザ出射ユニット側に位置決めピンを設けるとともに、レーザ照射ユニット側に位置決めピンが挿嵌される位置決め孔を設けることで、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとの位置決めを行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように構成した場合、位置決めピンは位置決め孔に対して手探りで挿嵌されるため、位置決めピンが一回の位置合わせで位置決め孔に挿嵌されないと、位置決めピンによって位置決め孔の周辺が何度もこすられることになる。このため、レーザ出射ユニットに対するレーザ照射ユニットの着脱を何度も繰り返すと、位置決めピンが削れてしまう。この結果、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとの位置決め精度が低下するため、レーザ光の光軸の位置精度が低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、レーザ出射ユニットに対するレーザ照射ユニットの着脱を繰り返しても、レーザ光の光軸の位置精度が低下することを抑制することが可能なレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、レーザ加工装置に係る請求項1に記載の発明は、レーザ発振部から発振されるレーザ光を出射する出射光学系を有したレーザ出射ユニットと、該レーザ出射ユニットに対して着脱可能に接続されるとともに、前記レーザ出射ユニットから出射される前記レーザ光を加工対象物に照射するための照射光学系を有したレーザ照射ユニットとを備えたレーザ加工装置であって、前記レーザ出射ユニットにおける前記レーザ照射ユニットとの接続部である第1接続部及び前記レーザ照射ユニットにおける前記レーザ出射ユニットとの接続部である第2接続部のうち、その一方側には前記レーザ光の光軸方向に沿って突出する凸部が設けられるとともに、その他方側には前記凸部を嵌合可能とするとともに前記光軸方向に沿って摺動可能とする凹部が設けられ、前記凹部は、前記光軸方向において少なくとも前記凸部側となる方向と、前記光軸方向と交差する方向において当該凹部が設けられた前記ユニットの外方側となる方向とに開放していることを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、各ユニットを接続する際に、凹部に対して光軸方向と交差する方向において凸部を嵌合させてから光軸方向に沿って各ユニットを互いに近づくように移動させることで、各ユニットが凸部と凹部との凹凸嵌合によってガイドされながら接近する。このため、第1接続部19及び第2接続部29が磨り減ることを抑制しつつ、第1接続部と第2接続部とを容易に精度よく位置決め状態で接触させて接続することができる。したがって、レーザ出射ユニットに対するレーザ照射ユニットの着脱を繰り返しても、レーザ光の光軸の位置精度が低下することを抑制することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記レーザ発振部を有するメインユニットを備え、前記レーザ出射ユニットは、前記メインユニットと光ファイバケーブルを介して接続されるとともに、前記レーザ発振部から前記光ファイバケーブルを介して伝送される前記レーザ光を出射することを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、レーザ出射ユニットの小型化に寄与することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記レーザ出射ユニット内には、前記光ファイバケーブルにおける前記レーザ光の出射側の端部と、該光ファイバケーブルから出射される前記レーザ光のビーム径を拡大する拡散レンズと、該拡散レンズによってビーム径が拡大された前記レーザ光を平行光にするコリメートレンズとが配置されていることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、レーザ出射ユニットに対してレーザ照射ユニットを付け替えた場合に、レーザ光の光軸の調整を不要とすることが可能となる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記出射光学系の一部及び前記照射光学系の一部のうち、その一方は対応する前記接続部から前記光軸方向に沿って他方側へ突出するように配置されるとともに、その他方は対応する前記接続部から前記光軸方向に沿って前記一方の突出方向へ窪むように配置されていることを要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、レーザ照射ユニットとレーザ出射ユニットとを接続した際に、出射光学系の一部及び照射光学系の一部のうちの一方の突出部分が他方の窪み部分に入り込むため、接続状態にあるレーザ照射ユニット及びレーザ出射ユニットの光軸方向における合計の長さを短くすることが可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記凸部及び前記凹部は、それらが設けられる前記ユニットにおける下端部に配置され、前記凹部は、当該凹部が設けられた前記ユニットの下側となる方向に開放していることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、レーザ照射ユニット及びレーザ出射ユニットのうち凹部が設けられた方のユニットの当該凹部を、レーザ照射ユニット及びレーザ出射ユニットのうち凸部が設けられた方のユニットの当該凸部に対して上側から嵌合させることができる。このため、レーザ照射ユニット及びレーザ出射ユニットが重い場合でもレーザ照射ユニットとレーザ出射ユニットとを容易に接続することが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載の発明において、前記凸部には、少なくともその先端部に前記レーザ光の光軸方向と直交する方向における幅が先端側ほど小さくなるテーパ部が設けられていることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、凹部に凸部を容易に嵌合させることが可能となる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の発明において、前記レーザ照射ユニットの前記第2接続部には、前記レーザ出射ユニットの前記第1接続部との接続状態を検出する接続状態検出手段が設けられていることを要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、第1接続部と第2接続部との接続状態に異常事態が発生した場合に、該異常事態を直ちに把握することが可能となる。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載の発明において、前記第1接続部及び前記第2接続部における前記凸部及び前記凹部が設けられた位置とは異なる位置には、前記レーザ出射ユニットと前記レーザ照射ユニットとを接続する際に、前記光軸方向と直交する方向において前記レーザ出射ユニットと前記レーザ照射ユニットとの位置決めを行う位置決め手段が設けられていることを要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、位置決め手段により、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとをより一層精度よく接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザ出射ユニットに対するレーザ照射ユニットの着脱を繰り返しても、レーザ光の光軸の位置精度が低下することを抑制することが可能なレーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態のレーザ加工装置の全体構成を示す模式図。
【図2】同レーザ加工装置のレーザ出射ユニットの斜視図。
【図3】同レーザ加工装置のレーザ照射ユニットの斜視図。
【図4】同レーザ加工装置において、レーザ出射ユニットからレーザ照射ユニットを取り外したときの状態を示す模式図。
【図5】同レーザ加工装置において、レーザ出射ユニットとレーザ照射ユニットとの接続状態を示す要部拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のレーザ加工装置をレーザマーキング装置に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。この場合、左右方向は紙面と直交する方向と一致するものとし、紙面から手前に向かう方向を右方向とする。
【0023】
図1に示すように、レーザ加工装置としてのレーザマーキング装置11は、それぞれ独立した筐体を有するメインユニット12、レーザ出射ユニット13、及びレーザ照射ユニット14を備えている。メインユニット12内には、装置全体の稼働状態を制御する制御部15とレーザ光Lを発振するレーザ発振部(レーザ発振器)16とが収容されている。制御部15は、レーザ発振部16と電気的に接続されるとともに、該レーザ発振部16の駆動を制御する。
【0024】
メインユニット12は、レーザ出射ユニット13に対して後側から光ファイバケーブル17を介して接続されている。一方、レーザ照射ユニット14は、レーザ出射ユニット13に対してメインユニット12側とは反対側となる前側から着脱可能に直接接続されている。
【0025】
光ファイバケーブル17はレーザ発振部16から延びるとともに、該光ファイバケーブル17の先端部は後側からレーザ出射ユニット13内に真っ直ぐ前方側に向かって挿入されている。そして、レーザ発振部16から発振されるレーザ光Lは、レーザ出射ユニット13内において光ファイバケーブル17の先端から前方に向かって真っ直ぐに出射されるようになっている。レーザ出射ユニット13内には、光ファイバケーブル17の先端から出射されるレーザ光Lを拡散させるための拡散レンズ18と、該拡散レンズ18によって拡散されたレーザ光Lを所定の出射径(ビーム径)を持つ平行光にするためのコリメートレンズ23とが配置されている。すなわち、拡散レンズ18とコリメートレンズ23とによりビームエキスパンダが構成されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、レーザ出射ユニット13におけるレーザ照射ユニット14との接続部である第1接続部19の中央部には、レーザ光Lの光軸方向(前後方向)に沿って前方側(レーザ照射ユニット14側)に突出する円筒状の突出部20が設けられている。突出部20の先端(前端)の開口部21は円板状の保護ガラス22によって閉塞されている。一方、突出部20の後端部はレーザ出射ユニット13内に開口している。そして、突出部20内には、コリメートレンズ23が配置されている。
【0027】
本実施形態では、拡散レンズ18、コリメートレンズ23及び保護ガラス22によって、レーザ発振部16から発振されるレーザ光Lをレーザ照射ユニット14へ出射する出射光学系が構成されている。そして、コリメートレンズ23及び保護ガラス22は突出部20に設けられているため、出射光学系の一部は第1接続部19からレーザ光Lの光軸方向に沿ってレーザ照射ユニット14側へ突出していると言える。
【0028】
レーザ出射ユニット13の第1接続部19におけるレーザ照射ユニット14との接触面であって鉛直面と平行な第1接触面24は、矩形枠状をなすとともに突出部20を囲んでいる。第1接触面24における四隅の部分には、レーザ出射ユニット13をレーザ照射ユニット14に固定するための固定ねじ25が挿通されるねじ挿通孔26がそれぞれ形成されている。また、第1接触面24の上部において左右2つのねじ挿通孔26間には、左右一対の位置決めピン27が前方に向かって真っ直ぐに突設されている。
【0029】
また、レーザ出射ユニット13の第1接続部19における下端部には凹部28が設けられている。そして、凹部28は、前後方向の両側と下側(レーザ出射ユニット13の外方側)とに開放されている。なお、第1接触面24を基準とした前方への突出部20の突出長さはAとされている。
【0030】
図1及び図3に示すように、レーザ照射ユニット14におけるレーザ出射ユニット13との接続部である第2接続部29におけるレーザ出射ユニット13の突出部20と対応する位置には、該突出部20が収容される円筒状の収容部30が設けられている。収容部30の前端の開口部31は円板状の保護ガラス32によって閉塞されている。一方、収容部30の後端は、レーザ出射ユニット13の突出部20を挿入するべく開放されている。そして、各保護ガラス22,32は、前後方向において近接した状態で対向している。
【0031】
図1〜図3に示すように、レーザ照射ユニット14の第2接続部29におけるレーザ出射ユニット13との接触面は鉛直面と平行な第2接触面33とされている。すなわち、第2接触面33は、第1接触面24と対応している。第2接触面33における各ねじ挿通孔26と対応する位置には、固定ねじ25が螺入可能なねじ孔34がそれぞれ形成されている。第2接触面33における各位置決めピン27と対応する位置には、該各位置決めピン27がそれぞれ嵌入可能な位置決め孔35が形成されている。
【0032】
この場合、各位置決め孔35のうち左側の位置決め孔35は、左右方向に長い長孔によって構成されているため、嵌入された位置決めピン27の左右方向における若干の移動を許容するようになっている。なお、本実施形態では、各位置決めピン27及び各位置決め孔35によって、レーザ光Lの光軸方向と直交する方向におけるレーザ出射ユニット13とレーザ照射ユニット14との位置決め行う位置決め手段が構成されている。
【0033】
第2接触面33における各位置決め孔35のうちの右側の位置決め孔35と各ねじ孔34のうち右上に位置するねじ孔34との間の位置には、接続状態検出手段としての近接センサ36が該第2接触面33と面一で露出するように設けられている。近接センサ36は、レーザ照射ユニット14に対するレーザ出射ユニット13の接続状態を検出する。レーザ照射ユニット14における第2接触面33の上側には、制御部15から延びる電気ケーブル37が着脱自在に接続される接続端子部38が設けられている。
【0034】
接続端子部38は、近接センサ36及びレーザ照射ユニット14内に配置されたガルバノモータ39と電気的に接続されている。したがって、制御部15は、電気ケーブル37及び接続端子部38を介して近接センサ36及びガルバノモータ39と電気的に接続されている。そして、制御部15は、近接センサ36から送信される検出信号に基づいてレーザ照射ユニット14に対するレーザ出射ユニット13の接続状態に異常があると判断した場合にレーザ発振部16の駆動を停止するとともに、ガルバノモータ39の駆動を制御する。
【0035】
レーザ照射ユニット14内における保護ガラス32の前側には、該保護ガラス32を透過してレーザ照射ユニット14内に入射するレーザ光Lを下側へ反射させる一対のガルバノミラー40が配置されている。すなわち、レーザ光Lは、各ガルバノミラー40のうちの一方で反射された後に他方で下側に反射される。各ガルバノミラー40は、ガルバノモータ39によってそれぞれ回動されるようになっている。そして、ガルバノモータ39の駆動により各ガルバノミラー40のレーザ光Lに対する角度が変更されることで、該各ガルバノミラー40によるレーザ光Lの反射方向が変更される。
【0036】
各ガルバノミラー40の下側には、該各ガルバノミラー40によって反射されたレーザ光Lを加工対象物Wの表面において所定のスポット径となるまで収束させてマーキング加工に適したエネルギー密度まで高めるためのfθレンズ(収束レンズ)41が設けられている。レーザ照射ユニット14における下端部におけるfθレンズ41と対応する位置には開口部42が形成されるとともに、該開口部42は円板状の保護ガラス43によって閉塞されている。したがって、制御部15によりガルバノモータ39の駆動が制御されることで、各ガルバノミラー40のレーザ光Lに対する角度が変更されて、加工対象物Wに照射されるレーザ光Lが該加工対象物Wの表面に沿って2次元走査される。これにより、加工対象物Wの表面に文字や図形などがマーキング(印字)される。
【0037】
本実施形態では、保護ガラス32、各ガルバノミラー40、fθレンズ41及び保護ガラス43によって、レーザ出射ユニット13から出射されるレーザ光Lを加工対象物Wに照射する照射光学系が構成されている。そして、保護ガラス32は収容部30の前端に位置しているため、照射光学系の一部は第2接続部29からレーザ光Lの光軸方向に沿って突出部20の突出方向(前方向)へ窪むように配置されていると言える。
【0038】
また、レーザ照射ユニット14の第2接続部29における下端部(第2接触面33よりも下側)におけるレーザ出射ユニット13の凹部28と対応する位置には、後方に向かって真っ直ぐに延びる直方体状の凸部44が設けられている。凸部44は、凹部28に対して前側及び下側から嵌合可能になっているとともに、前後方向に沿って摺動可能になっている。凸部44の下面は、平面(平坦面)になっている。そして、凸部44の第2接触面33を基準とした後方への突出長さBは、レーザ出射ユニット13の第1接触面24を基準とした前方への突出部20の突出長さAよりも長くなるように設定されている。なお、凹部28の前後方向の長さは、凸部44の突出長さBよりも若干長くなるように設定されている。
【0039】
次に、レーザ出射ユニット13とレーザ照射ユニット14とを接続する際の作用について説明する。
さて、レーザ出射ユニット13とレーザ照射ユニット14とを接続する場合には、図4に示すように、まず、前後方向において第1接続部19と第2接続部29とが対向するように、レーザ出射ユニット13とレーザ照射ユニット14とを配置する。続いて、凹部28の前端部を凸部44の後端部(先端部)に上から載せるようにして嵌合させる。これにより、レーザ出射ユニット13の第1接続部19に対してレーザ照射ユニット14の第2接続部29が精度よく対向する。
【0040】
このとき、凸部44の突出長さBは突出部20の突出長さAよりも長いため、突出部20は第2接続部29に衝突することなく収容部30と対向する。続いて、レーザ出射ユニット13とレーザ照射ユニット14とを前後方向において互いに近づくように移動させる。このとき、レーザ出射ユニット13及びレーザ照射ユニット14は、凸部44と凹部28との凹凸嵌合を維持しながら移動する。
【0041】
そして、各ユニット13,14同士が接触するまでこれらを移動させると、各接触面24,33同士が接触するとともに、前後方向において凸部44の全てが凹部28内に収められる(図5参照)。このとき、凸部44と凹部28とが各ユニット13,14の移動時のガイドとして機能するため、突出部20が収容部30内に精度よく挿入されるとともに、各位置決めピン27が各位置決め孔35に精度よく嵌入される。そして、各位置決めピン27と各位置決め孔35との嵌合により、各ユニット13,14同士がレーザ光Lの光軸方向(前後方向)と直交する方向において精度よく位置決めされる。このため、各ねじ挿通孔26と各ねじ孔34とがそれぞれ前後方向において精度よく重なり合う。
【0042】
続いて、各固定ねじ25を各ねじ挿通孔26にそれぞれ挿通した状態で、該各固定ねじ25を各ねじ孔34に螺入する。すると、各固定ねじ25により、各ユニット13,14が固定状態で接続される。その後、制御部15から延びる電気ケーブル37を接続端子部38に接続する。
【0043】
このように、各ユニット13,14を接続する際に、凸部44と凹部28とを嵌合させてから第1接触面24と第2接触面33とを接触させることで、前後方向を中心とした各ユニット13,14の揺動方向のずれが抑えられるので、各位置決めピン27を各位置決め孔35に容易に嵌入することができる。すなわち、各位置決めピン27を、第2接触面33上を摺動させながら各位置決め孔35に手探りで嵌入することがほとんどなくなる。このため、各位置決めピン27と第2接触面33とを無駄に擦り合わせることが抑制されるので、各位置決めピン27が磨り減ることが抑制される。したがって、レーザ出射ユニット13に対するレーザ照射ユニット14の着脱を繰り返しても、該各ユニット13,14の接続時の位置精度が低下することが抑制されるので、レーザ光Lの光軸の位置精度が低下することを抑制することができる。
【0044】
因みに、各位置決めピン27が磨り減ると、該各位置決めピン27を各位置決め孔35に嵌入した際の遊びが大きくなるため、各ユニット13,14の接続時の位置精度が低下し、ひいてはレーザ光Lの光軸の位置精度が低下してしまうおそれがある。
【0045】
また、電気ケーブル37が接続端子部38に接続された状態で、万一、レーザ出射ユニット13からレーザ照射ユニット14が脱落するという異常事態が発生してしまった場合には、近接センサ36からの検出信号に基づいて制御部15が該異常事態を把握して該レーザ発振部16の駆動を停止する。このため、レーザ光Lがレーザマーキング装置11外のあらぬ方向へ照射されることはない。
【0046】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)各ユニット13,14を接続する際に、凹部28に対して下側から凸部44を嵌合させてから前後方向に沿って各ユニット13,14を互いに近づくように移動させることで、各ユニット13,14が凸部44と凹部28との凹凸嵌合によってガイドされながら接近する。この場合、凸部44を凹部28に嵌合する際に、凹部28の前面(レーザ照射ユニット14側の面)に凸部44が衝突することを抑制できるので、凹部28の前面が傷ついたり凹んだりすることを抑制することができる。このため、第1接続部19と第2接続部29とが擦れ合うことを抑制しつつ、該各接続部19,29を容易に精度よく位置決め状態で接触させて接続することができる。したがって、レーザ出射ユニット13に対するレーザ照射ユニット14の着脱を繰り返しても、レーザ光Lの光軸の位置精度が低下することを抑制することができる。
【0047】
(2)各ユニット13,14を接続した際に、突出部20が収容部30内に入り込むため、接続状態にあるレーザ出射ユニット13及びレーザ照射ユニット14の前後方向(レーザ光Lの光軸方向)における合計の長さを短くすることができ、ひいてはレーザマーキング装置11の小型化に寄与できる。
【0048】
(3)凸部44の突出長さBは突出部20の突出長さAよりも長いため、各ユニット13,14を接続する際には、突出部20が収容部30に挿入される前に凸部44を凹部28に嵌合させることができる。このため、突出部20が第2接続部29に衝突することを抑制することができる。
【0049】
(4)凹部28はレーザ出射ユニット13の下端部に位置するとともに凸部44はレーザ照射ユニット14の下端部に位置し、且つ下側となる方向に開放している。このため、凹部28を凸部に対して上側から嵌合させることができる。したがって、各ユニット13,14が重い場合でも該各ユニット13,14を容易に接続することができる。
【0050】
(5)レーザ照射ユニット14の下端部に位置する凸部44の下面は平面であるため、レーザ照射ユニット14を安定した状態で置くことができる。
(6)第1接触面24における上端部に各位置決めピン27が設けられるとともに、第2接触面33における上端部に各位置決めピン27が嵌入可能な各位置決め孔35が設けられている。このため、各ユニット13,14を接続する際に、各位置決めピン27を各位置決めピン27を嵌入することで、レーザ光Lの光軸方向と直交する方向における各ユニット13,14の位置決めを行うことができる。したがって、各ユニット13,14をより一層精度よく接続することができる。
【0051】
(7)電気ケーブル37が接続端子部38に接続された状態で、万一、レーザ出射ユニット13からレーザ照射ユニット14が脱落するという異常事態が発生してしまった場合には、近接センサ36からの検出信号に基づいて制御部15が該異常事態を把握してレーザ発振部16の駆動を停止する。このため、レーザ光Lがレーザマーキング装置11外のあらぬ方向へ照射されることを抑制することができる。
【0052】
(8)レーザ出射ユニット13は、メインユニット12に収容されたレーザ発振部16から光ファイバケーブル17を介して伝送されるレーザ光Lを出射するように構成されている。すなわち、レーザ出射ユニット13内にレーザ発振部16が配置されていないため、レーザ出射ユニット13の小型化に寄与することができる。
【0053】
(9)レーザ出射ユニット13内には、光ファイバケーブル17におけるレーザ光Lの出射側の端部と、該光ファイバケーブル17から出射されるレーザ光Lのビーム径を拡大する拡散レンズ18と、該拡散レンズ18によってビーム径が拡大されたレーザ光Lを平行光にするコリメートレンズ23とが配置されている。このため、レーザ出射ユニット13に対してレーザ照射ユニット14を付け替えた場合に、レーザ光Lの光軸の調整を不要とすることができる。
【0054】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・各位置決めピン27及び各位置決め孔35は省略してもよい。
【0055】
・凸部44の下面は必ずしも平面である必要はない。
・凹部28は、レーザ出射ユニット13の第1接続部19の左右両端部及び上端部のうちのいずれか1箇所に配置してもよい。この場合、凹部28は前後方向の両側とレーザ出射ユニット13の外方側とが開放される。さらにこの場合、レーザ照射ユニット14の第2接続部29における凸部44の位置も凹部28に合わせて変更する必要がある。
【0056】
・凸部44の突出長さBは、突出部20の突出長さA以下であってもよい。
・突出部20及び収容部30は省略してもよい。すなわち、出射光学系の一部を構成するコリメートレンズ23及び保護ガラス22は必ずしも第1接触面24よりも前方側へ突出するように配置する必要はなく、且つ照射光学系の一部を構成する保護ガラス32は必ずしも第2接触面33よりも前方側へ窪むように配置する必要はない。
【0057】
・凹部28の後端側は必ずしも開放する必要はない。
・レーザ出射ユニット13側に凸部44を設けるとともにレーザ照射ユニット14側に凹部28を設けるようにしてもよい。
【0058】
・レーザ出射ユニット13側に収容部30を設けるとともにレーザ照射ユニット14側に突出部20を設けるようにしてもよい。
・レーザ出射ユニット13側に各位置決め孔35を設けるとともにレーザ照射ユニット14側に各位置決めピン27を設けるようにしてもよい。
【0059】
・凸部44の角部は、面取り加工(C面取り加工)を施してもよい。
・凸部44の少なくとも先端部に、先端側(後端側)に向かうほど左右方向(レーザ光Lの光軸方向と直交する方向)の幅が徐々に小さくなるテーパ部を設けるようにしてもよい。このようにすれば、凸部44における少なくともテーパ部が設けられた先端部(後端部)に凹部28の前端部を上側及び前側から容易に嵌合させることができる。
【0060】
・突出部20の開口部21を閉塞する保護ガラス22は省略してもよい。この場合、突出部20の開口部21をコリメートレンズ23で閉塞する必要がある。
・レーザ照射ユニット14の開口部42を閉塞する保護ガラス43は省略してもよい。この場合、開口部42をfθレンズ41で閉塞する必要がある。
【0061】
・レーザ発振部16は、レーザ出射ユニット13内に配置するようにしてもよい。
・レーザ照射ユニット14は、該レーザ照射ユニット14の設置態様によって、上側や横側からレーザ光Lを照射するように構成してもよい。
【0062】
・上記実施形態では、本発明のレーザ加工装置を加工対象物Wの表面に文字や図形などをマーキング(印字)するレーザマーキング装置11に具体化したが、これに限定されず、レーザ光を加工対象物に照射して加工(例えば、切断加工など)を施すものであれば他のレーザ加工装置に具体化してもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記光軸方向において、前記凸部における当該凸部が設けられた前記接続部からの突出長さは、前記出射光学系の一部及び前記照射光学系の一部うちの突出している前記一方における当該一方が対応する前記接続部からの突出長さよりも長くなっていることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工装置。
【0064】
このようにすれば、レーザ照射ユニットとレーザ出射ユニットとを接続する際に、出射光学系の一部及び照射光学系の一部のうちの一方の突出部分を他方の窪み部分に挿入する前に、凸部を凹部に嵌合させることができる。このため、出射光学系の一部及び前記照射光学系の一部うちの突出している方が対向するユニットに衝突することを抑制することができる。
【0065】
(ロ)前記凸部の下面は平面であることを特徴とする請求項5に記載のレーザ加工装置。
このようにすれば、凸部の長さを適宜変更することで、レーザ照射ユニット及びレーザ出射ユニットのうち凸部が設けられた方のユニットを安定した状態で置くことができる。
【符号の説明】
【0066】
11…レーザ加工装置としてのレーザマーキング装置、12…メインユニット、13…レーザ出射ユニット、14…レーザ照射ユニット、16…レーザ発振部、17…光ファイバケーブル、18…出射光学系を構成する拡散レンズ、ビームエキスパンダ、19…第1接続部、22…出射光学系を構成する保護ガラス、23…出射光学系を構成するコリメートレンズ、27…位置決め手段を構成する位置決めピン、28…凹部、29…第2接続部、32,43…照射光学系を構成する保護ガラス、35…位置決め手段を構成する位置決め孔、36…接続状態検出手段としての近接センサ、40…照射光学系を構成するガルバノミラー、41…照射光学系を構成するfθレンズ、44…凸部、A…突出部20の突出長さ、B…凸部44の突出長さ、L…レーザ光、W…加工対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振部から発振されるレーザ光を出射する出射光学系を有したレーザ出射ユニットと、
該レーザ出射ユニットに対して着脱可能に接続されるとともに、前記レーザ出射ユニットから出射される前記レーザ光を加工対象物に照射するための照射光学系を有したレーザ照射ユニットと
を備えたレーザ加工装置であって、
前記レーザ出射ユニットにおける前記レーザ照射ユニットとの接続部である第1接続部及び前記レーザ照射ユニットにおける前記レーザ出射ユニットとの接続部である第2接続部のうち、その一方側には前記レーザ光の光軸方向に沿って突出する凸部が設けられるとともに、その他方側には前記凸部を嵌合可能とするとともに前記光軸方向に沿って摺動可能とする凹部が設けられ、
前記凹部は、前記光軸方向において少なくとも前記凸部側となる方向と、前記光軸方向と交差する方向において当該凹部が設けられた前記ユニットの外方側となる方向とに開放していることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レーザ発振部を有するメインユニットを備え、
前記レーザ出射ユニットは、前記メインユニットと光ファイバケーブルを介して接続されるとともに、前記レーザ発振部から前記光ファイバケーブルを介して伝送される前記レーザ光を出射することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記レーザ出射ユニット内には、前記光ファイバケーブルにおける前記レーザ光の出射側の端部と、該光ファイバケーブルから出射される前記レーザ光のビーム径を拡大する拡散レンズと、該拡散レンズによってビーム径が拡大された前記レーザ光を平行光にするコリメートレンズとが配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記出射光学系の一部及び前記照射光学系の一部のうち、その一方は対応する前記接続部から前記光軸方向に沿って他方側へ突出するように配置されるとともに、その他方は対応する前記接続部から前記光軸方向に沿って前記一方の突出方向へ窪むように配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記凸部及び前記凹部は、それらが設けられる前記ユニットにおける下端部に配置され、
前記凹部は、当該凹部が設けられた前記ユニットの下側となる方向に開放していることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記凸部には、少なくともその先端部に前記レーザ光の光軸方向と直交する方向における幅が先端側ほど小さくなるテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のうちいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ照射ユニットの前記第2接続部には、前記レーザ出射ユニットの前記第1接続部との接続状態を検出する接続状態検出手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記第1接続部及び前記第2接続部における前記凸部及び前記凹部が設けられた位置とは異なる位置には、前記レーザ出射ユニットと前記レーザ照射ユニットとを接続する際に、前記光軸方向と直交する方向において前記レーザ出射ユニットと前記レーザ照射ユニットとの位置決めを行う位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76103(P2012−76103A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223299(P2010−223299)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000106221)パナソニック電工SUNX株式会社 (578)
【Fターム(参考)】