説明

レーザ成形装置及びこの装置を使用するヘッドサスペンションの製造方法

【課題】微細な修正分解能で捻れ変形の発生しないレーザフォーミング技術によるサスペンションのばね圧修正が可能なレーザ成形装置を提供する。
【解決手段】レーザ成形装置40には、ばね圧修正を行うヘッドサスペンション1の中心線Cに垂直な面に対して面対称に第1の光学系50と第2の光学系60を設け、これら2つの光学系には1つのレーザ発振器41からのレーザ光Lをハーフミラー42によって2分岐して供給する。第1の光学系50と第2の光学系60で集光されたレーザ光の光スポット4が、ヘッドサスペンション1の中心線Cから等距離に位置するように構成し、第1の光学系と第2の光学系の集光レンズ51,61を面対称状態で左右にずらすことにより光スポット4の走査を行って、ヘッドサスペンションシ1のばね圧を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願はレーザ成形装置及びこの装置を使用するヘッドサスペンションの製造方法に関し、特に、薄板金属を素材としたばね部品のばね圧をレーザ光により修正することができるレーザ成形装置、およびこの装置を使用するヘッドサスペンションの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドサスペンション(以後単にヘッドサスペンションと言う)は、磁気ディスク装置を構成する精密ばね部品である。磁気ヘッドサスペンションの先端部には、磁気データの書き込み/読み出し行うための磁気ヘッドが形成されたヘッドスライダと呼ばれる部品が搭載され、後端部はVCM(ボイスコイルモータ)によって揺動する揺動アームの先端部に取り付けられる。ヘッドサスペンションは板厚が20〜30μm程度のステンレス鋼板薄板を素材とし、一般にプレス成形法を用いて製造されている。
【0003】
このヘッドサスペンションにはばね機能があり、ヘッドスライダの磁気記録媒体に対向する面に形成されたエアベアリングサスペンション(ABS)形状による浮上力と釣り合って、ヘッドスライダを磁気記録媒体上で所定高さだけ浮上させている。この浮上量は、磁気ディスク装置の小型/高記録容量化の要求に従い、10nm以下が要求されるようになってきている。更に、このヘッドスライダの浮上量の要求に伴って、ヘッドサスペンションのばね圧精度も非常に高いものが要求されるようになってきている。
【0004】
これに対して、ヘッドサスペンションのばね圧修正方法が種々提案されており、その1つにレーザフォーミンング技術を活用した方法がある。レーザフォーミング技術は、非特許文献1に記載のように、レーザ光を集光させて金属薄板に当て、走査してレーザ光の持つ熱エネルギにより材料の板厚方向における温度勾配を形成し、この温度勾配によって金属薄板を塑性変形させる加工技術である。また、レーザフォーミング技術は、非接触で成形加工が行えるという特徴に加えて、スプリングバックの無い高精度な成形が可能、レーザ走査条件のみで微細な曲げ角度制御が可能であるといった特徴を有している。このためレーザフォーミング技術は、特許文献1に記載のように、ヘッドサスペンションのばね圧修正技術として活用が拡大している。
【0005】
ヘッドスライダの磁気記録媒体からの浮上量を安定的に維持するためには、ヘッドサスペンションの捻れ変形を回避することが重要である。ヘッドサスペンションの捩れ変形防止を実現する方法としては、ヘッドサスペンションの形状を左右対称とし、軽量化のために中央部に孔を設け、ヘッドサスペンションの両側にばね機能を持たせるという構造が採用されている。
【0006】
ところで、前述のように、ヘッドサスペンションにはその先端部にヘッドスライダが搭載されており、磁気ヘッドの書き込み/読み出し信号を処理する処理回路は揺動アームの外部にある。このため、ヘッドサスペンションには磁気ヘッドと処理回路との間で電気信号を伝送するための電気回路をサスペンションの表面に設ける必要がある。
【0007】
そして、ヘッドサスペンションの捻れ変形を回避するために、この電気回路はヘッドサスペンションの中央部に配置するという構造が採用されている。このため、ヘッドサスペンションの回転軸に近い根元部の近傍に設けられた孔が、電気回路によって二分されたような構造となっているのが最近の磁気ヘッドサスペンション形状の傾向である。なお、ばね機能としての両側の梁の幅や電気回路の両側に位置する孔の幅、および電気回路部の幅は、それぞれ0.5mm程度以下と非常に微細な構造となっている。
【0008】
このような構造のヘッドサスペンションに対してばね圧を修整する場合、特許文献1及び非特許文献1に開示のレーザフォーミング技術を使用すると、ばね成形部に1本のレーザ光を、ヘッドサスペンションに対して水平方向に1本の直線上に走査させる、あるいは水平方向に複数本の直線上にレーザ光を走査させることにより、ばね圧を修正することになる。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−303237号公報(図 )
【0010】
【非特許文献1】松下電工技報(Aug.2002)特集「生産技術」の第40頁−第45頁「レーザフォーミングによるリレー特性調整」北田耕作・朝日信行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらの方法を前述のような構造を有するヘッドサスペンションのばね圧修正に適用した場合には、下記に示すような問題点が発生する。
【0012】
(1)サスペンション中央部に形成された電気回路部分にレーザ光が照射されて破損しないために、(a)電気回路にレーザ光が照射されないように遮光マスクを設置して電気回路部にレーザが照射されることを防止する方法、或いは(b)レーザ光のオン/オフ制御(レーザ発振器の電気的なオン/オフ制御やメカニカルシャッターによるオン/オフ制御)により電気回路部にレーザが照射されることを防止する方法をとる必要がある。
【0013】
ところが、(a)の方法ではレーザのオン/オフ制御が不要というメリットがあるものの、対象部材形状に合わせた遮光マスクを準備しておく必要や、遮光マスクをセットする作業工程が増えるといった欠点がある。また、(b)の方法では高速なレーザ光のオン/オフ制御が肝要であり、レーザ光の走査速度に対して電気回路部の幅が狭い場合には制御不可能な場合も発生する。
【0014】
(2)レーザフォーミング技術は、板厚方向の温度勾配の発生による塑性変形加工であるため、レーザ照射の持続によって生じる材料自体の温度上昇が曲げ変形量の低下をもたらすことになる。この現象はレーザ走査の開始点と終了点での曲げ変形の大きさが異なることを示しており、一方向でのレーザ走査では部材に捻れ変形をもたらすことになる。この傾向は被加工材料の部材が小さいほど顕著となるため、ヘッドサスペンションのような捻れ変形が嫌われる部材のばね圧の修正には不適切である。
【0015】
この捻れ変形を防ぐ方法として、レーザ光を往復走査する方法が提案されているが、この方法でも、1回のレーザ走査で修正出来るばね圧変化量の2倍の変形を発生させることになり、修正分解能が一方向走査に比較して2倍となってしまう欠点がある。
【0016】
(3)更に、前述の問題点を解決する別の方法として、ヘッドサスペンションの左右のばね部に対して、例えば、左側のばね部には左側の孔部分を開始点として左方向にレーザを走査した後、右側の孔部分を開始点として右側のばね部に右方向にレーザを走査するといったシーケンシャルに各ばね構造部に対して反対方向にレーザを走査する方法が考えられる。この方法では、左右のばね部でそれぞれ反対方向への捻れが発生することから、ヘッドサスペンション全体から見ると捻れの無い修正が可能である。
【0017】
ところが、この方法でも、1つのヘッドサスペンションに対して最低2回に分割しての複数回のレーザ走査が必要となることから、ヘッドサスペンションの加工時間が2倍近くになってしまうという欠点がある。
【0018】
そこでこの出願は、これらの問題点を解決し、短時間に微細な修正分解能を有しながら捻れ変形の発生しないレーザフォーミング技術によるサスペンションのばね圧修正を行うことができるレーザ成形装置及びこの装置を使用するばね圧調整方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するレーザ成形装置は、レーザ光を出射するレーザ発振器と、レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射及び透過するハーフミラーと、ハーフミラーで反射された第1のレーザ光を第1の集光レンズで集光し、その照射点を治具上に載置されたばね成形体の所定位置に導く第1の光学系と、ハーフミラーを透過し、ミラーで反射されて第1のレーザ光に平行にされた第2のレーザ光を第2の集光レンズで集光し、その照射点をばね成形体の中心線に対して所定位置に対称な位置に導く第2の光学系と、2つの照射点をばね成形体の中心線に垂直な方向に走査するために第1と第2の集光レンズを移動する集光レンズの移動機構とを備えることを特徴としている。
【0020】
また、前記目的を達成するレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法の第1の形態は、ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度、或いは照射時間を決定する段階と、照射点が孔の中に位置するように、第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、レーザ発振器からレーザ光を照射し、レーザ光の照射時間に応じて集光レンズの移動機構によって第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、照射点がヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、レーザ発振器の動作を停止させるようにした段階とを有するレーザ成形装置を使用するヘッドサスペンションの製造方法である。
【0021】
更に、前記目的を達成するレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法の第2の形態は、ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度或いは照射時間、及び上部光学装置と下部光学装置の何れを使用するかを選択する段階と、選択した光学装置において、照射点が孔の中に位置するように、第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、レーザ発振器からレーザ光を照射する段階と、レーザ光の照射時間に応じて集光レンズの移動機構によって第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、照射点がヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、ばね圧の調整が過度に実行されたか否かを判定する段階と、ばね圧の調整が過度でなかった場合にはレーザ発振器の動作を停止させ、過度であった場合は選択しなかった方の光学装置を使用して段階を繰り返す段階とを備えることを特徴とするヘッドサスペンションの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
この出願のレーザ成形装置及びレーザ成形装置を使用したにヘッドサスペンションの製造方法よれば、レーザフォーミングを活用したヘッドサスペンションのばね圧修正において、以下の効果が得られる。
【0023】
(1)捻れ変形の無いばね圧修正が可能
(2)1つのレーザ光を往復走査させる場合に比較して、2倍の修正精度(修正分解能では1/2)が得られる。
(3)1つのレーザ光方式に比較して1/2以下の時間でばね圧修正が可能
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を用いてこの出願における実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、その前に従来の技術の問題点について図面を用いて説明する。
【0025】
図1(a)は従来のレーザ光によるばね圧力調整方法に使用するばね圧調整治具32を備えたレーザ成形装置90の構成を示すものである。ばね圧調整治具32の取付ブロック29には、片持ち梁構成のばね形成体1の固定端3が装着され、ばね形成体1のヘッド支持端2に取り付けられた磁気ヘッドを備えたヘッドスライダ5は、歪ゲージ10の上に載置されている。ばね形成体1を挟んで上下両面側に一対の照射ユニット7,8が配置される。照射ユニット7,8はアーム19を介して照射ユニット駆動部11に接続しており、照射ユニット駆動部11によってばね形成体1の長さ方向に直交する方向に走査される。
【0026】
レーザ照射装置は、レーザ光発振器13、光制御部14、及び光ケーブル6を介して接続される集光レンズ内蔵の照射ユニット7,8から構成される。光制御部14には、レーザ光発振器13で発振されたレーザ光を表裏両面に配分するハーフミラー16及びミラー17と、これらミラー16,17の光を開閉するシャッタ機構部9,9’、及びシャッタの開閉制御部18がある。
【0027】
ハーフミラー16で反射したレーザ光は、シャッタ機構部9、光ケーブル6を経て照射ユニット7に達し、集光されて導出され、ばね形成体1の表面側に光スポット4を形成する。他方、ハーフミラー16を通過し、ミラー17で反射したレーザ光は、シャッタ機構部9’、光ケーブル6を経て接続された照射ユニット8に達し、集光されて導出され、ばね形成体1の裏面側に光スポット4’を形成する。
【0028】
このようにして、ばね形成体1の表面または裏面に照射される光スポット4,4’の切り換えは、ばね圧力センサである歪ゲージ10からの検出圧力レベル(出力表示器31に表示される)が、大きいか小さいかを判別するばね圧力検出制御部12によって行われるが、具体的には光制御部14にあるシャッタ開閉駆動部18により行われる。シャッタ開閉駆動部18によるシャッタ9,9’の開閉は、例えば、シャッタ機構部9,9’の一方のシャッタが開の時は、他方のシャッタが閉となるような開閉制御が行われる。
【0029】
ばね圧力検出制御部12は、予めばね形成体1の圧力基準値を記憶しており、この圧力基準値より大きい圧力調整の上部許容限界値と、小さい下部許容限界値とが設定されている。そして、ばね圧力検出制御部12には、前述の上部並びに下部の許容限界値を、歪ゲージ10の検出圧力と比較するためのコンパレータが内蔵されている。歪ゲージ10からの検出圧力が上部、下部の許容限界値の範囲内にあれば、ばね圧力調整は完了したことになる。しかし、歪ゲージ10の検出圧力が上部許容限界値を上回れば、ばね圧力検出制御部12からシャッタ開閉駆動部18に信号が送られ、シャッタ9が開放され、シャッタ9’が閉じられるので、照射ユニット7から光スポット4が照射されることによってばね圧力が軽減される。
【0030】
他方、歪ゲージ10の検出圧力が下部許容限界値を下回れば、ばね圧力検出制御部12からシャッタ開閉駆動部18に信号が送られ、シャッタ9’が開放され、シャッタ9が閉じられるので、照射ユニット8から光スポット4’が照射されることになり、その結果としてばね圧力が強められる。シャッタ開閉駆動の信号は、照射ユニット駆動部11にも送られ、ばね形成体1の幅方向のばね端の間を交互に往復させる光スポット4,4’の走査が行われる。
【0031】
図1(b)は図1(a)に示したばね成形体1がヘッドサスペンションである場合の詳細な構成を示すものである。ヘッドサスペンション1の先端部のヘッド支持端2には磁気ヘッドを備えたヘッドスライダ5が取り付けられている。また、ヘッドサスペンション1の固定端3に近い基部側には孔21が設けられており、ヘッドスライダ5に接続する電気回路20が、この孔21を幅方向に二分してヘッドサスペンション1の上に配置されている。そしてヘッドサスペンション1の固定端3側にはヘッドサスペンション1を揺動アーム(図示せず)に取り付けるための支持部材22がある。電気回路20の幅W1は1mm程度、孔21の幅W2は2mm程度、ヘッドサスペンション1の孔21の両端部の幅W3は0.5mm程度である。
【0032】
図1(b)に示すようなヘッドサスペンション1に、図1(a)に示すようなレーザ成形装置90によってレーザフォーミングを行う場合は、図2(a)に示すように、ヘッドサスペンション1のレーザ走査ラインSに電気回路20が重なる。このため、電気回路20にレーザ光が照射されて破損しないために、電気回路20の上に遮光マスク23を設置して、レーザフォーミング時にレーザ光Lが電気回路20に照射されないようにしていた。ところが、図2(a)に示した方法では、レーザ光Lのオン/オフ制御が不要というメリットがあるものの、電気回路20の形状に合わせた遮光マスク23を準備しておく必要や、遮光マスク23をレーザフォーミング毎にセットする作業工程が増えるといった問題点がある。
【0033】
そこで、図2(b)に示すように、レーザ光Lのオン/オフ制御(図1(a)に示したレーザ発振器13の電気的なオン/オフ制御や、シャッタ機構部9のオン/オフ制御)により、電気回路20にレーザ光Lが照射されることを防止する方法がある。ところが、図2(b)の方法では高速なレーザ光のLオン/オフ制御が肝要であり、レーザ光Lの走査速度に対して電気回路20の幅が狭い場合には制御が不可能な場合も発生するという問題点があった。
【0034】
レーザフォーミング技術は、ヘッドサスペンション1の板厚方向の温度勾配の発生による塑性変形加工であるため、レーザ照射の持続によって生じる材料自体の温度上昇が曲げ変形量の低下をもたらすことになる。この現象はレーザ走査の開始点と終了点での曲げ変形の大きさが異なることを示しており、図2(a)の方法、或いは図2(b)の方法により、図3(a)に示すような一方向にレーザ光Lを走査させた場合は、図3(b)に示すように、ヘッドサスペンション1の部材に捻れ変形をもたらすことになる。この傾向は被加工材料の部材寸法が小さいほど顕著となるため、ヘッドサスペンション1のような捻れ変形が嫌われる部材のばね圧の修正には不適切である。
【0035】
この捻れ変形を防ぐ方法として、図4(a)に示すように、図2(a)で説明した方法において、レーザ光Lを往復走査する方法、或いは図4(b)に示すように、図2(b)で説明した方法において、レーザ光Lを往復走査する方法が提案されている。しかし、これらの方法では、1回のレーザ走査で修正出来るばね圧変化量の2倍の変形を発生させることになり、修正分解能が一方向走査に比較して2倍となってしまう問題点があった。
【0036】
更に、前述の問題点を解決する別の方法として、ヘッドサスペンション1の左右のばね部1L,1Rに対して別々に照射を行う方法がある。この方法では、左側のばね部1Lに対しては、左側の孔21の電気回路20側を開始点として左方向に走査してレーザ光Lを照射し、照射後はレーザ光Lを照射せずに戻る。次いで、右側のばね部1Rに対しては右側の孔21の電気回路20側を開始点として右方向に走査してレーザ光Lを照射し、照射後はレーザ光Lを照射せずに戻る。この方法では、左右のばね部1L,1Rでそれぞれ反対方向への捻れが発生することから、ヘッドサスペンション1の全体から見ると捻れの無い修正が可能である。
【0037】
ところが、この方法でも、1つのヘッドサスペンション1に対して最低2回に分割しての複数回のレーザ光Lを走査させることが必要となることから、ヘッドサスペンション1の加工時間が2倍近くになってしまうという問題点があった。
【0038】
そこで、本発明者らは、図1(b)に示した1つのヘッドサスペンション1において、同一エネルギ条件と同一集光特性を有する2つのレーザ光を1組として使用し、ヘッドサスペンション1の孔21の左右両側にある2箇所のばね部1L,1Rに対して、水平な同一直線上で同時に反対方向にレーザ光による走査を行えば、レーザ光の走査回数も少なく、且つ左右のばね部1L,1Rでそれぞれ反対方向への捻れが発生することから、ヘッドサスペンション1の全体から見ると捻れの無い修正が可能であることを見出した。
【0039】
なお、レーザ成形装置は、図1(a)に示したように、ヘッドサスペンション1の両面にレーザ光を照射できるが、レーザ光はヘッドサスペンション1の両面に同時に照射されることはなく、上側又は下側の何れか一方の面のみに照射される。そこで、以下に説明する第1の実施例では、ヘッドサスペンション1にレーザ光が上側からのみ照射される形態を説明し、第2の実施例でヘッドサスペンション1にレーザ光が上側からまたは下側から照射される形態を説明する。
【0040】
図5(a)は、この思想に基づく第1の実施例のレーザ成形装置40の構成を示すものである。レーザ成形装置40は、1つのレーザ発信器41と、レーザ発信器41から出射されたレーザ光Lをニ分岐するハーフミラー42、分岐されたレーザ光LB2を全反射するミラー43、及び第1と第2の2組の光学系50,60とを備えて構成される。ハーフミラー42により反射されたレーザ光L1と、ハーフミラー42で分岐された後にミラー43で全反射されたレーザ光L2とは同一エネルギを有する。また、第1と第2の2つの光学系50,60には、同一の集光特性を有する光学部品を、ヘッドサスペンション1を左右に二分する平面に対して面対称に配置し、1つのヘッドサスペンション1の上に集光される光スポット(レーザ光の照射点)のエネルギを同一にしている。
【0041】
第1の光学系50は、集光レンズ51および2つの全反射ミラー52,53を備えて構成され、第2の光学系60は、集光レンズ61および2つの全反射ミラー62,63を備えて構成される。集光レンズ51と集光レンズ61の集光特性は同じである。
【0042】
第1の光学系50において、集光レンズ51はハーフミラー42で反射されたレーザ光L1を集光し、ミラー52は集光されたレーザ光Lb1を第2の光学系60の方向に反射する。そして、ミラー53は、ミラー52からのレーザ光Lb1を、ハーフミラー42で反射されたレーザ光L1に平行な方向に反射する。
【0043】
同様に、第2の光学系60において、集光レンズ61はミラー43で反射されたレーザ光L2を集光し、ミラー62は集光されたレーザ光Lb2を第1の光学系50の方向に反射する。そして、ミラー63は、ミラー62からのレーザ光Lb2を、ミラー43で反射されたレーザ光L2に平行な方向に反射する。
【0044】
なお、図5(a)では、集光レンズ51,61の形状を円板状に描いてあるが、集光レンズ51,61の形状は、例えば図5(b)に示すように凸レンズを備えた形状である。また、光学系50,60における集光レンズ51,61、ミラー52,62、及びミラー53,63は、治具の上に載置されるヘッドサスペンション1の中心線Cを通る垂直面に対して面対称に配置されている。
【0045】
図5(a)に示した光学系の構成を更に詳しく説明する。まず、治具の上に載置されるヘッドサスペンション1の中心線Cと、この中心線Cに孔21の位置で直交する線Dの交点を通る垂線をZ軸とする。そして、このZ軸を中心軸として、ヘッドサスペンション1の上方の点を基準点として、線Dに平行なX軸のプラス/マイナス両方向にそれぞれ〔集光レンズ51,61の半径〕+〔レーザ走査距離の1/2〕以上の距離Lxにある2点P1、P2を通り、Z軸に平行な2本の軸を入射レーザ光軸LB1、LB2としている。
【0046】
2本の光軸LB1、LB2を中心軸として、直径の最小値が〔レーザ光の直径φd〕+〔レーザ走査距離〕の大きさを有するレーザ集光用の凸レンズ(集光レンズ51,61)を同一高さLz位置に設置している。また、2本の光軸LB1、LB2上に反射面がそれぞれ向き合うように配置したレーザ反射ミラー52,62を同じ角度αだけ傾斜させた状態で同一高さ位置に設置させている。レーザ反射ミラー52,62で反射したレーザ光の光軸をそれぞれLR1−1およびLR2−1とする。
【0047】
更に、2本の光軸LR1−1、LR2−1の上で反射面の裏面がそれぞれ向き合うようにレーザ反射ミラー53、63を、反射ミラー52,62と同じ角度αだけ傾斜させた状態で同一高さ位置に設置している。レーザ反射ミラー53、63で反射したレーザ光の光軸をLR1−2およびLR2−2とする。そして、レーザ光軸LR1−2、LR2−2の上のレーザ集光位置(光スポット位置)に、ばね圧修正対象のヘッドサスペンション1のそれぞれのばね構造部が位置するように配置している。
【0048】
具体的には、ハーフミラー42とミラー43の取付角度、及び反射ミラー52,53、62,63の設置角度αをそれぞれ45°としている。この結果、レーザ発振器41から出射されたレーザ光Lをハーフミラー42でレーザ光L1,L2に2分岐し、ミラー43で反射されたレーザ光L2の光軸がハーフミラー42で反射されたレーザ光L1の光軸に平行になる。また、ミラー52,62で反射されたレーザ光の光軸LR1−1.LR2−1は同一直線上にあり、ミラー53,63で反射されたレーザ光の光軸LR1−2.LR2−2は平行である。
【0049】
これに加えて、この実施例のレーザ成形装置40は、図6に示すように、第1の光学系50と第2の光学系60からなる光学系全体をY軸方向に移動して位置決めするY軸方向移動機構70を備えている。Y軸方向移動機構70には種々の機構が適用できるが、ここではその図示を省略する。Y軸方向移動機構70により、ヘッドサスペンション1の長さ方向に光学系全体を、例えば、レーザフォーミングが必要な各位置D1,D2,D3に移動させることができる。
【0050】
以上のような構成において、この実施例では、図5(c)に示すように、Y軸方向移動機構70により位置決めされた場所において、光スポット4がヘッドサスペンション1の孔21の左右両側にある2箇所のばね部1L,1Rに対して、水平な同一直線上で同時に反対方向に走査を行うようにする。集光されたレーザ光を同時に反対方向に走査するためには、第1と第2の光学系50,60をそれぞれ反対方向に移動するような機構を構成することで実現出来る。
【0051】
しかし、レーザ成形装置40では、レーザ照射部やその周囲は非常に微細な構造となっている。このため、光学系全体をY軸方向に移動して位置決めするY軸方向移動機構70とは異なり、2つのレーザ光を集光・走査するために、第1の光学系50と第2の光学系60をそれぞれ独立に等距離だけX軸方向に精密に移動させる駆動機構系を構成することは困難である。
【0052】
そこでこの実施例では、第1の光学系50と第2の光学系60における集光レンズ51と61のみを、同時に逆方向に移動させることができるX軸方向移動機構80が設けられている。X軸方向移動機構80は、2個の集光レンズ51,61を同一XY平面内でX軸方向にそれぞれ反対方向(一方がプラス方向の場合には、片方はマイナス方向といった状態)に移動させることができる機構である。
【0053】
図7(a)は、X軸方向移動機構80の第1の実施例の構成を示すものである。第1の実施例のX軸方向移動機構80では、第1の光学系50の集光レンズ51と第2の光学系60の集光レンズ61とをそれぞれケース81,82に収容する。ケース81,82は同一直線上を移動可能とし、図示しない付勢機構によって互いに近づく方向に付勢する。そして、ケース81,82の間に、楕円カム83をその両端がケース81,82に当接する状態で挿入する。そして、この楕円カム83の中心軸84をモータ85によって回転させるようにする。この楕円カム83の回転により、ケース81,82に収容された集光レンズ51と集光レンズ61とが、同一XY平面内でX軸方向にそれぞれ反対方向に移動する。
【0054】
図7(b)は、X軸方向移動機構80の第2の実施例の構成を示すものである。第2の実施例のX軸方向移動機構80でも集光レンズ51と集光レンズ61とをそれぞれケース81,82に収容する。ケース81,82は同一直線上を移動可能とし、ケース81,82の対応する位置に、リンクレバー86,87の一端を回動自在に取り付ける。リンクレバー86,87の他端はピン88で結合し、作動板89に回動自在に取り付けてリンク機構を構成する。作動板89は、図示しない往復動作機構に接続し、Y軸方向に往復動作可能とする。この作動板89の往復動作により、リンク機構を介してケース81,82に収容された集光レンズ51と集光レンズ61とが、同一XY平面内でX軸方向にそれぞれ反対方向に移動する。
【0055】
図8(a)は、X軸方向移動機構80の第3の実施例の構成を示すものである。第3の実施例のX軸方向移動機構80でも集光レンズ51と集光レンズ61とをそれぞれケース81,82に収容する。ケース81,82は同一直線上を移動可能とし、ケース81,82の対応する外側の端部に、スライドレバー91,92の一端を固着する。スライドレバー91,92は、それぞれアクチュエータ93,94によってX軸方向に移動可能に構成する。アクチュエータ93,94はケーブル95,96でコントローラ97に接続し、コントローラ97はコンピュータ98で制御できるようにする。このスライドレバー91,92の往復動作により、ケース81,82に収容された集光レンズ51と集光レンズ61とが、同一XY平面内でX軸方向にそれぞれ反対方向に移動する。
【0056】
ここで、図8(b)に示すように、X軸方向移動機構80の第1から第3の実施例において、集光レンズ51と集光レンズ61とが最も内側の位置から最も外側の位置まで移動すると、光スポット4も同じ距離だけ移動する。例えば、集光レンズ51と集光レンズ61とが最も内側の位置から最も外側の位置まで2.5mm移動すると、光スポット4が同様に2.5mmだけ移動する。これを図9(a)、(b)を用いて説明する。
【0057】
図9(a)は、ケース81に収容された集光レンズ51とケース82に収容された集光レンズ61とが最も内側の位置にある状態を示している。このときは、集光レンズ51、61、ミラー52,62、及びミラー53,63の作用により、レーザ光の光スポット4が最も近接した位置にある。この位置は、例えば、光スポット4がヘッドサスペンション1の電気回路20の両側にある孔21の中にある位置であり、ヘッドサスペンション1の中心線から等距離にある。この位置から集光レンズ51、61の間隔を離していくと、集光レンズ51、61は同じ時間に同じ距離だけ移動する。すると、ミラー52,62、及びミラー53,63の作用により、レーザ光の光スポット4の中心線からの距離が同じように大きくなり、光スポット4によりヘッドサスペンション1の左右のばね部1L,1Rが照射される。
【0058】
図9(b)は、ケース81に収容された集光レンズ51とケース82に収容された集光レンズ61とが最も外側の位置にある状態を示している。このときは、集光レンズ51、61、ミラー52,62、及びミラー53,63の作用により、レーザ光の光スポット4が最も離間した位置にある。この位置は、例えば、光スポット4がヘッドサスペンション1の孔21の両側にあるばね部1L,1Rの外側にある位置である。よって、この位置では、光スポット4によるヘッドサスペンション1の左右のばね部1L,1Rの照射が終了している。このように、集光レンズ51、61を最も近接した位置から、最も離間した位置まで移動させると、ヘッドサスペンション1の孔21の両側にあるばね部1L,1Rの光スポット4による走査が終了する。
【0059】
このように、以上説明した実施例のレーザ成形装置40では、レーザ入射光軸と最終の光軸とを平行移動させるために1つの光軸上に2個の反射ミラーを設置した光学系を2つ作り、更にこの2つの光学系を面対称に配置することにより、入射部における2つの光軸間距離を各種光学系や駆動系を組み込むのに十分な長さとして確保した上で、加工対象であるサスペンションの両側に形成されて微小距離だけ離間している左右のばね部に対して同時にレーザ照射が行える。
【0060】
また、2つの反射ミラーは集光レンズの焦点までの光路間に配置し、集光レンズを水平面内で移動させる構造としたことにより、焦点位置の高さが変化することなく被加工対象のばね部上でレーザ光を集光・走査させることができる。このように、以上説明した実施例のレーザ成形装置40では、レーザ集光のための光学系やレーザ走査のための駆動系を設置する十分な空間を確保した上で、微細な加工対象領域内の2箇所に対して同時にレーザ光を集光、走査させることが可能である。
【0061】
図10は、この出願の第2の実施例のレーザ成形装置30の構成を示す斜視図である。レーザ成形装置40は、ヘッドサスペンション1に対して上側からのみしかレーザ光を照射することができない構成であったが、レーザ成形装置30は、図1(a)で説明した従来のレーザ成形装置90と同様に、ヘッドサスペンション1の下側からもレーザ光の照射を行うことができるものである。
【0062】
このため、レーザ成形装置30は、レーザ成形装置40の構成に加えて、ヘッドサスペンション1を載置する平面に対して、レーザ成形装置40を面対称に配置したレーザ成形装置40Lを有する。従って、レーザ成形装置30には、レーザ成形装置40のハーフミラー42、ミラー43、集光レンズ51,61、ミラー52,62、及びミラー53,63に対応する位置に、ハーフミラー42L、ミラー43L、集光レンズ51L,61L、ミラー52L,62L、及びミラー53L,63Lを備えるレーザ成形装置40Lが追加されたものである。
【0063】
レーザ発振器41は1台であり、レーザ発振器41から出射されたレーザ光2Lは、ハーフミラー44で二分岐される。ハーフミラー44で反射されたレーザ光Lはハーフミラー42に導かれ、ハーフミラー44を透過したレーザ光LLはミラー45に導かれて反射し、ハーフミラー42Lに導かれる。
【0064】
一方、ハーフミラー44からハーフミラー42に至るレーザ光Lの光路、及びミラー45からハーフミラー42Lに至るレーザ光LLの光路の途中には、レーザ光Lとレーザ光LLの何れか一方は透過し、他方は遮断するシャッタ46が設けられている。シャッタ46は図示しない駆動機構により上下動し、シャッタ46の上側に設けられた上窓47がレーザ光Lを通過させている時には、シャッタ46の下側に設けられた下窓48がレーザ光LLの光路に位置せず、レーザ光LLはシャッタ46で遮断される。逆に、下窓48がレーザ光LLを通過させている時には、上窓47がレーザ光Lの光路に位置せず、レーザ光Lはシャッタ46で遮断される。
【0065】
レーザ成形装置30は、光路切替機能を有するシャッタ46によって、上側のレーザ成形装置40あるいは下側のレーザ成形装置40Lが切り替えられることで、必要とされるばね圧と測定されたばね圧の差分から判断されるばね圧の増加/低下のそれぞれに対応が可能である。
【0066】
なお、以上説明したレーザ成形装置は、ヘッドサスペンションのばね圧修正ばかりでなく、ヘッドサスペンションのばね成形に活用することができる。
【0067】
ここで、レーザ成形装置40を使用したヘッドサスペンション1のばね圧の修正方法について説明する。
【0068】
まず、ステップ1では、ヘッドサスペンションを治具上に載置する。
次に、ステップ2では、ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する。
そして、ステップ3では、ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度、或いは照射時間を決定する。
【0069】
この後、ステップ4において、光スポットが孔の中に位置するように、第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めを行う。
次に、レーザ発振器からレーザ光を照射し、レーザ光の照射時間に応じて集光レンズの移動機構によって第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる。
そして、光スポットがヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、レーザ発振器の動作を停止させるようにする。
【0070】
次に、レーザ成形装置30を使用したヘッドサスペンション1のばね圧の修正方法について説明する。
【0071】
ステップ1ではヘッドサスペンションを治具上に載置する。
ステップ2ではヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する。
ステップ3ではばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度或いは照射時間、及び上部光学装置と下部光学装置の何れを使用するかを選択する。
【0072】
ステップ4では選択した光学装置において、照射点が孔の中に位置するように、第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする。
ステップ5ではレーザ発振器からレーザ光を照射する。
ステップ6ではレーザ光の照射時間に応じて集光レンズの移動機構によって第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる。
【0073】
ステップ7では照射点がヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、ばね圧の調整が過度に実行されたか否かを判定する。
ステップ8ではばね圧の調整が過度でなかった場合にはレーザ発振器の動作を停止させ、過度であった場合は選択しなかった方の光学装置を使用して、ステップ4からステップ8を繰り返す。
【0074】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態を参照して詳細に説明した。本発明の容易な理解のために、本発明の具体的な形態を以下に付記する。
【0075】
(付記1) レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射及び透過するハーフミラーと、
前記ハーフミラーで反射された第1のレーザ光を第1の集光レンズで集光し、その照射点を治具上に載置されたばね成形体の所定位置に導く第1の光学系と、
前記ハーフミラーを透過し、ミラーで反射されて前記第1のレーザ光に平行にされた第2のレーザ光を第2の集光レンズで集光し、その照射点を前記ばね成形体の中心線に対して前記所定位置に対称な位置に導く第2の光学系と、
前記2つの照射点を、前記ばね成形体の中心線に垂直な方向に走査するために、前記第1と第2の集光レンズを移動する集光レンズの移動機構とを備えることを特徴とするレーザ成形装置。
(付記2) 前記第1の光学系と前記第2の光学系を近接する領域に同時に照射するためのメイン光学系を有したことを特徴とする付記1に記載のレーザ成形装置。
(付記3) ばね成形体の上部側に設けられた上部光学装置と、前記ばね成形体の下部側に設けられた下部光学装置、及び前記上部光学装置と下部光学装置の何れか一方にレーザ光を出射するレーザ発振器とから構成されるレーザ成形装置であって、前記上部光学装置及び前記下部光学装置がそれぞれ、
前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射及び透過するハーフミラーと、
前記ハーフミラーで反射された第1のレーザ光を第1の集光レンズで集光し、その照射点を治具上に載置されたばね成形体の所定位置に導く第1の光学系と、
前記ハーフミラーを透過し、ミラーで反射されて前記第1のレーザ光に平行にされた第2のレーザ光を第2の集光レンズで集光し、その照射点を前記ばね成形体の中心線に対して前記所定位置に対称な位置に導く第2の光学系と、
前記2つの照射点を、前記ばね成形体の中心線に垂直な方向に走査するために、前記第1と第2の集光レンズを移動する集光レンズの移動機構とを備えることを特徴とするレーザ成形装置。
(付記4) 前記第1の光学系に配置された光学部材と、前記第2の光学系に配置された光学部材は、前記ばね成形体の中心線を通る垂直面に対して、面対称に配置されていることを特徴とする付記1から3の何れかに記載のレーザ成形装置。
(付記5) 前記集光レンズの移動機構は、前記第1と第2の集光レンズを、前記垂直面に対して同じ距離だけ離反させる、或いは同じ距離だけ接近させるように移動することを特徴とする付記4に記載のレーザ成形装置。
【0076】
(付記6) 前記ばね成形体が、先端部にヘッド、基部側に孔を備え、前記ヘッドに接続する電気回路が前記孔を左右に二分するように配置されているヘッドサスペンションであり、
前記集光レンズの移動機構は、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた時に、前記照射点が前記孔の中に位置し、前記第1と第2の集光レンズを最も離間させた時に、前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを移動することを特徴とする付記5に記載のレーザ成形装置。
(付記7) 前記第1の光学系と前記第2の光学系及び前記集光レンズの移動機構を一体的に、前記ばね成形体の中心線の方向に所定距離だけ移動させることができる光学系の移動機構を更に備えることを特徴とする付記1から6の何れかに記載のレーザ成形装置。
(付記8) 前記集光レンズの移動機構が、
前記第1と第2の集光レンズをそれぞれ収容する独立したケースと、
前記ケースを近接する方向に付勢する付勢機構と、
前記ケースの間に挿入された楕円形状のカムと、
前記カムの中心点に取り付けられた回転軸と、
前記回転軸を回転させるモータとを備えることを特徴とする付記1から7の何れかに記載のレーザ成形装置。
(付記9) 前記集光レンズの移動機構が、
前記第1と第2の集光レンズをそれぞれ収容する独立したケースと、
前記ケースを近接方向或いは離間方向に移動させる移動ガイドと、
同じ長さを備えた2つのロッドを備え、各ロッドはその一端が前記ケースの対応する位置にそれぞれピンで回転可能に固着され、他端が結合ピンで連結されたリンク機構と、
前記結合ピンを前記移動ガイドに垂直な方向に往復動作させる往復動作機構とを備えることを特徴とする付記1から7の何れかに記載のレーザ成形装置。
(付記10) 前記集光レンズの移動機構が、
前記第1と第2の集光レンズをそれぞれ収容する独立したケースと、
前記ケースを近接方向或いは離間方向に移動させる移動ガイドと、
前記ケースを前記移動ガイド上でそれぞれ独立に移動させることができるアクチュエータと、
前記アクチュエータにより、前記2つのケースが互いに近づく方向に同じ距離だけ移動する、或いは互いに遠ざかる方向に同じ距離だけ移動するように、前記アクチュエータを動作制御する制御回路とを備えることを特徴とする付記1から7の何れかに記載のレーザ成形装置。
【0077】
(付記11) 前記制御回路がマイクロコンピュータであることを特徴とする付記9に記載のレーザ成形装置。
(付記12) 前記第1の光学系と前記第2の光学系には、前記第1と第2の集光レンズで集光されたレーザ光を互いに近づく方向に反射させる第1の反射ミラーと、前記第1の反射ミラーで反射されたレーザ光を更に反射して前記ばね成形体に垂直に入射されるようにする第2の反射ミラーとが設けられていることを特徴とする付記1から11の何れかに記載のレーザ成形装置。
(付記13) 前記第1と第2の反射ミラーの傾斜角度がそれぞれ45度であることを特徴とする付記12に記載のレーザ成形装置。
(付記14) 前記レーザ発信器は、レーザ光を前記上部光学装置と下部光学装置の一方の方向に反射させると共に透過させるハーフミラーと、前記ハーフミラーを透過したレーザ光を前記上部光学装置と下部光学装置の他方方向に反射させるミラー、及び前記ハーフミラーで反射されたレーザ光と前記ミラーで反射されたレーザ光の何れか一方を遮断するシャッタとを備えることを特徴とする付記3に記載のレーザ成形装置。
(付記15) 付記5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧の調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法において、
前記ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、
前記ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、
前記ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度、或いは照射時間を決定する段階と、
前記照射点が前記孔の中に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、
前記レーザ発振器からレーザ光を照射する段階と、
前記レーザ光の照射時間に応じて前記集光レンズの移動機構によって前記第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、
前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、前記レーザ発振器の動作を停止させる段階を備えることを特徴とする、付記5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションの製造方法。
【0078】
(付記16) 付記5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧の調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法において、
前記ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、
前記ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、
前記ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度或いは照射時間、及び前記上部光学装置と下部光学装置の何れを使用するかを選択する段階と、
選択した光学装置において、前記照射点が前記孔の中に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、
前記レーザ発振器からレーザ光を照射する段階と、
前記レーザ光の照射時間に応じて前記集光レンズの移動機構によって前記第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、
前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、ばね圧の調整が過度に実行されたか否かを判定する段階と、
前記ばね圧の調整が過度でなかった場合には前記レーザ発振器の動作を停止させ、過度であった場合は選択しなかった方の光学装置を使用して前記段階を繰り返す段階とを備えることを特徴とする、付記5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】(a)は従来のレーザ光によるばね圧力調整方法に使用するばね圧調整治具32の構成を示す構成図、(b)は(a)に示したばね成形体の詳細な構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1(b)に示したヘッドサスペンションにおける従来のレーザ光の走査方法の第1の例を説明する図、(b)は図1(b)に示したヘッドサスペンションにおける従来のレーザ光の走査方法の第2の例を説明する図である。
【図3】(a)は図2(a)、(b)に示すように、ヘッドサスペンションに対して一方向にレーザ走査が実施される場合を説明する図、(b)は(a)に示したレーザ走査の結果、ヘッドサスペンションに捩れが生じた様子を示す図である。
【図4】(a)は図1(b)に示したヘッドサスペンションにおける従来のレーザ光の走査方法の第3の例を説明する図、(b)は図1(b)に示したヘッドサスペンションにおける従来のレーザ光の走査方法の第4の例を説明する図、(c)は図1(b)に示したヘッドサスペンションにおける従来のレーザ光の走査方法の第5の例を説明する図である。
【図5】(a)はこの出願の第1の実施例のレーザ成形装置の主要部の構成を示す斜視図、(b)は(a)の集光レンズの一実施例の側面図、(c)は(a)に示したレーザ成形装置におけるレーザ光のX方向の走査を説明する図である。
【図6】図5(a)に示したレーザ成形装置におけるレーザ光のY方向への走査を説明する図である。
【図7】(a)は図5(a)に示したレーザ成形装置における集光レンズの移動機構の第1の実施例の構成を示す図、(b)は図5(a)に示したレーザ成形装置における集光レンズの移動機構の第2の実施例の構成を示す図である。
【図8】(a)は図5(a)に示したレーザ成形装置における集光レンズの移動機構の第3の実施例の構成を示す図、(b)は図5(a)、(b)及び図6(a)において集光レンズが移動した時のスポットの移動を説明する図である。
【図9】(a)は図5(a)、(b)及び図6(a)において、集光レンズが近づいた位置にある時のスポットの位置を示す図、(b)は図5(a)、(b)及び図6(a)において、集光レンズが離れた位置にある時のスポットの位置を示す図である。
【図10】この出願の第2の実施例のレーザ成形装置の主要部の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
1 ばね成形体(ヘッドサスペンション)
4 光スポット
20 電気回路
21 孔
30,40 レーザ成形装置
41 レーザ発振器
42,42L,44 ハ−フミラー
43、52,53,62,63 ミラー
45、52L,53L,62L,63L ミラー
46 シャッタ
47,48 窓
70 Y軸方向移動機構
80 X軸方向移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器から出射されたレーザ光を反射及び透過するハーフミラーと、
前記ハーフミラーで反射された第1のレーザ光を第1の集光レンズで集光し、その照射点を治具上に載置されたばね成形体の所定位置に導く第1の光学系と、
前記ハーフミラーを透過し、ミラーで反射されて前記第1のレーザ光に平行にされた第2のレーザ光を第2の集光レンズで集光し、その照射点を前記ばね成形体の中心線に対して前記所定位置に対称な位置に導く第2の光学系と、
前記2つの照射点を、前記ばね成形体の中心線に垂直な方向に走査するために、前記第1と第2の集光レンズを移動する集光レンズの移動機構とを備えることを特徴とするレーザ成形装置。
【請求項2】
前記第1の光学系と前記第2の光学系を近接する領域に同時に照射するためのメイン光学系を有したことを特徴とする請求項1に記載のレーザ成形装置。
【請求項3】
前記第1の光学系に配置された光学部材と、前記第2の光学系に配置された光学部材は、前記ばね成形体の中心線を通る垂直面に対して、面対称に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ成形装置。
【請求項4】
前記集光レンズの移動機構は、前記第1と第2の集光レンズを、前記垂直面に対して同じ距離だけ離反させる、或いは同じ距離だけ接近させるように移動することを特徴とする請求項3に記載のレーザ成形装置。
【請求項5】
前記ばね成形体が、先端部にヘッド、基部側に孔を備え、前記ヘッドに接続する電気回路が前記孔を左右に二分するように配置されているヘッドサスペンションであり、
前記集光レンズの移動機構は、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた時に、前記照射点が前記孔の中に位置し、前記第1と第2の集光レンズを最も離間させた時に、前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを移動することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のレーザ成形装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧の調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法において、
前記ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、
前記ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、
前記ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度、或いは照射時間を決定する段階と、
前記照射点が前記孔の中に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、
前記レーザ発振器からレーザ光を照射する段階と、
前記レーザ光の照射時間に応じて前記集光レンズの移動機構によって前記第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、
前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、前記レーザ発振器の動作を停止させる段階を備えることを特徴とするヘッドサスペンションの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のレーザ成形装置を使用したヘッドサスペンションのばね圧の調整工程を有するヘッドサスペンションの製造方法において、
前記ヘッドサスペンションを治具上に載置する段階と、
前記ヘッドサスペンションのばね圧を測定してばね圧の調整量を算出する段階と、
前記ばね圧の調整量に応じたレーザ光の強度或いは照射時間、及び前記上部光学装置と下部光学装置の何れを使用するかを選択する段階と、
選択した光学装置において、前記照射点が前記孔の中に位置するように、前記第1と第2の集光レンズを最も近接させた位置に位置決めする段階と、
前記レーザ発振器からレーザ光を照射する段階と、
前記レーザ光の照射時間に応じて前記集光レンズの移動機構によって前記第1と第2の集光レンズの離間動作を行わせる段階と、
前記照射点が前記ヘッドサスペンションの外側に位置するようになった時に、ばね圧の調整が過度に実行されたか否かを判定する段階と、
前記ばね圧の調整が過度でなかった場合には前記レーザ発振器の動作を停止させ、過度であった場合は選択しなかった方の光学装置を使用して前記段階を繰り返す段階とを備えることを特徴とするヘッドサスペンションの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−238333(P2009−238333A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84640(P2008−84640)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】