説明

レーザ溶接による金網接合方法

【課題】 本発明は、金網裏面を薄板等の平面板の表面にレーザ溶接により接着する接合方法に係り、金網体の交差部分と平板表面とに僅かな隙間があっても金網の形状を維持したままの姿で確実に溶接できる金網接合方法を提供する。
【解決手段】 溶接母体となる平板1の表面1Aに金属箔3を被せ、上記金属箔の表面に金網体5を載せ、上記金網体の表面にレーザ光Lを照射することで金網体5の交差部分5Aと金属箔3と平板表面1Aとを溶融接合するレーザ溶接による金網接合方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金網裏面を薄板等の平面板の表面にレーザ溶接により接着する接合方法に係り、特に、金網の形状を維持したままの姿で溶接する金網接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ溶接により薄板同士の溶接や薄板と金網との溶接等に見るように、薄物の溶接を行う要求が増加しており、この要求に応えるべく溶接の技術開発も盛んに行われている。その代表的な溶接技術に、金属箔の溶接方法が提供されている。この金属箔の溶接方法は、繊細な構造のヒータあるいは温度センサの回路パターン等を形成すべく、金属箔テープの重合部分を効率的に溶接するものである。まず、複数枚の金属箔テープからなる配設体の両面に合成樹脂シートを配置してラミネート加工して回路素材の金属箔テープの交差部分を押圧密着させ、合成樹脂シートを貫通して重合部分にレーザ光を照射して溶融接合させる。そして、上記レーザ光を1枚目のテープを通過させ、2枚目のテープの20%以上を溶融して溶接ビードを形成するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかして、上記金属箔の溶接方法によると、ラミネート加工から光レーザ溶接加工等、各種の工程を連続して行うことができるから生産性が高められる。
【0004】
しかしながら、金属箔テープにバリの発生等の問題がない時であっても、2枚の合成樹脂シートのラミネート加工が不十分で、2枚の金属箔テープに十分な押圧力が作用しないと隙間が生じてしまい、溶接不良を起してしまう。このために、回路素材の表面シートを形成している2枚の合成樹脂シートの間が気密的にしっかりと密着させてテープの交差部分に十分な押圧力が発生するようにラミネート加工することが重要であり、この対策が不十分なことを理由に溶接不良率を高めている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−126979号公報
【0006】
上記金属箔の溶接方法は、複数枚の金属箔テープを網目状に交差した交差部分をスポット溶接のように自動溶接する技術であるが、この金属箔に替えて金網体を同質の平板表面にその交差部分を溶接するものへの応用技術がある。その実施例は、図4〜図6に示す。例えば、同質材(チタン材)からなる金網体Aにおいて、同質の平板Bの表面Cにその金網体Aの交差部分(接合部)Dをスポット溶接のようにレーザ光Lの照射により溶接される。しかしながら、レーザ光の出力の大小により、溶接状態が大幅に変動する。レーザ光の出力が少しでも過大となると、図5や図6の写真図(S1)に見るように、金網体Aの交差部分(接合部)Dが溶け落ちて金網形状が無くなり、溶接強度が全く得られなくなる。また、レーザ光の出力値を慎重に調節した最適値とすれば、写真図(S2)に見るように、金網体Aの交差部分(接合部)Dが平板表面に接合される。しかし、交差部分(接合部)Dと平板Bの表面Cとの間に僅かでも隙間があると、接合不良を起しやすく、網目の孔の空間ではレーザ光が平板表面を照射するから、平板表面の無用な溶け込み現象が起きてしまう。特に、薄板の場合は板裏面にまで熱歪みが大きく現われる。そこで、レーザ光の出力を絞ると、写真図(S3)に見るように、金網体Aの交差部分(接合部)Dが十分に溶融されず平板表面との間に接合不良を起すことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、本発明が解決しようとする課題は、上記金属箔の溶接方法や金網体の溶接技術に見られる交差部分の隙間によって生じる溶接不良の問題点を解消しょうとするものである。そして、その目的は、金網体の交差部分と平板表面とに僅かな隙間があっても金網の形状を維持したままの姿で確実に溶接できる金網接合方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1記載のレーザ溶接による金網接合方法は、溶接母体となる平板の表面に金属箔を被せ、上記金属箔の表面に金網体を載せ、上記金網体の表面にレーザ光を照射することで金網体の交差部分と金属箔と平板表面とを溶融接合することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項2記載のレーザ溶接による金網接合方法は、請求項1記載のレーザ溶接による金網接合方法において、上記平板と金属箔と金網体とは、同質金属であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明は上記構成要件からなり、以下のように作用する。まず、溶接母体となる平板の表面に金属箔を被せ、上記金属箔の表面に金網体を載せ、上記金網体の表面、特に交差部分にレーザ光が照射されると、金網体の交差部分の溶融が始まる。この溶融熱が熱容量の少ない金属箔を直ちに溶融して混ざり合うとともに、この溶融熱は平板の表面をも溶融させる。しかして、金網体は交差部分が金属箔と平板の表面との3部材間を強固に溶融接合される。この3部材の溶融結合時に、交差部分と金属箔と平板の表面との間に僅かな隙間が存在しても、金網体の孔の部分の金属箔が溶融してロウ付けの補充材の如く作用して隙間に吸引されるように充填される。これにより、金網体の交差部分が金属箔の溶融液で満たされるから、金網体の形状を維持したままの姿で強固に溶接される。
【0011】
更に、上記平板と金属箔と金網体とを、同質金属(例えば、チタン合金等)とすれば、3部材間は同質の溶融金属で強固に溶融接合されることとなる。従って、金網体は交差部分だけの狭い面積で平板と溶接されていても、その溶接部の結合強度は大きな数値となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明レーザ溶接による金網接合方法によると、金網体の交差部分が金属箔の溶融液で満たされるから、金網体の形状を維持したままの姿で強固に溶接できるとともに、平板と金属箔と金網体とを、同質金属(例えば、チタン合金等)とすれば、3部材間は同質の溶融金属で更に一層強固に溶融接合できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明レーザ溶接による金網接合方法を、図面に示す第1の実施の形態を参照して説明する。図1は金網接合体の斜視図と要部断面図、図2は溶接方法と要部の断面図、図3は溶接部の外観写真である。
【0014】
図1と図2において、金網接合体100は、溶接母体となる平板1の表面1Aにロウ付け用の補充材となる金属箔3が被せられている。上記金属箔3の厚さは、0.05mm前後であって、その表面には、金網体5が載せられている。上記平板1と金属箔3と金網体5とは、同質金属(例えば、チタン合金が採用されるが他の同質金属でも良い)が採用されている。上記三つの素材は、溶接用の冶具上(図示なし)にセットされる。そして、図2に示すように、上記金網体5の表面にレーザ光Lを照射しながら溶接線上を移動することで、金網体5の交差部分5Aと金属箔3と平板表面1Aとを溶融接合するように構成されている。
【0015】
本発明レーザ溶接による金網接合方法を実施するための構成要件は、上記のようになり、以下のように作用する。まず、図1において、レーザ溶接機の冶具上に平板1を載せて固定する。続いて、上記平板1の表面1Aに金属箔3を被せ、上記金属箔の表面に金網体5を載せて溶接前の準備をする。この後、半導体レーザ発振器から出力されるレーザ光L(尚、YAGレーザ光等でも良い)を照射しながら溶接線上を移動することで、金網体5の交差部分5Aと金属箔3と平板表面1Aとが溶融接合されて行く。その詳細な作用は、以下図1と図2に示すようにして行われる。上記金網体5の表面、特に交差部分5Aにレーザ光Lが照射されると、金網体の交差部分の溶融が始まる。この溶融熱が熱容量の少ない直下の金属箔3を直ちに溶融して混ざり合うとともに、この溶融熱は平板1の表面1Aをも溶融させる。しかして、金網体5は交差部分5Aが金属箔3と平板の表面1Aとの同質材からなる3部材間を完全に溶融混合させた溶融接合部7が生成される。上記3部材の溶融結合時に、交差部分5Aと金属箔3と平板の表面1Aとの間に僅かな隙間が存在していても、レーザ光Lが金網体の孔5Bの部分を照射時には、金網体の孔の部分の金属箔3が直接レーザ光Lに照射されて溶融し、ロウ付けの補充材の如く作用して隙間Gに吸引されるように充填される。これにより、金網体5の交差部分5Aが金属箔3の溶融液3Aで満たされるから、図3に示す溶接部の外観写真の如く、金網体5は交差部分5Aの形状を大きく痩せ細らせて崩すことなく現状維持の姿で強固に平板1の表面1Aに溶接される。しかして、平板と金属箔と金網体とを、同質金属(例えば、チタン合金)とすることで、3部材間が完全に溶融混合し合った溶融接合部7により一層強固に溶融接合されるから、従来の金網体の溶接に見られた交差部分の隙間によって生じる溶接不良の問題点が解消されている。
【0016】
本発明のレーザ溶接による金網接合方法の実施の形態によると、下記の如く効果が奏せられる。まず、金網体5の交差部分5Aが自己及び金属箔3更に平板表面層1Aの溶融液で満たされるから、金網体5の形状を痩せ細らせることを抑えて現状形状のままの姿で強固に溶接できる。更に、平板1と金属箔3と金網体5とは、同質金属(例えば、チタン合金)であるから、3部材間が完全に溶融混合し合った溶融接合部7により一層強固に溶融接合でき、従来の金網体の溶接に見られた交差部分の隙間によって生じる溶接不良の問題点が解消できる。
【0017】
本発明のレーザ溶接による金網接合方法は、上記第1の実施の形態に限定されない。半導体レーザ光の他、各種レーザ光を使用しての金網体の溶接においても、更に、上記平板1と金属箔3と金網体5とは、必ずしも同質金属(チタン合金)でなくても良く、異質な金属の組合わせにおいても、上記第1の実施の形態と同じ作用効果が得られるものである。
【0018】
また、金属箔の厚さについては、実験により0.025mmから0.1mmの範囲において、その接合力や外観に顕著な効果が確認できているが、照射するレーザ光の強度等の条件変更によっては、より広範囲な厚さの薄板に適用可能と予想される。
このように、本発明のレーザ溶接による金網接合方法は、同様の物理現象に基づいた広範囲な運用の可能性があり、例えば、レーザ光の強度、薄板の厚さ、材質等の各種条件の組み合わせにおいて効果を発揮できると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のレーザ溶接による金網接合方法は、網目状の金網体と平板との溶接分野に限定されない。例えば、格子状体と平板との溶接を必要とする産業分野でも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示し、金網接合体の斜視図と要部断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示し、溶接方法を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示し、溶接部の外観写真である。
【図4】従来例を示し、金網接合体の溶接方法を示す側面図である。
【図5】従来例を示し、溶接の要部断面図である。
【図6】従来例を示し、溶接部の外観写真である。
【符号の説明】
【0021】
1 平板
1A 表面
3 金属箔
3A 溶融液
5 金網体
5A 交差部分
7 溶融接合部
100 金網接合体
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接母体となる平板の表面に金属箔を被せ、上記金属箔の表面に金網体を載せ、上記金網体の表面にレーザ光を照射することで金網体の交差部分と金属箔と平板表面とを溶融接合することを特徴とするレーザ溶接による金網接合方法。
【請求項2】
上記平板と金属箔と金網体とは、同質金属であることを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接による金網接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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