説明

レーザ溶接方法

【課題】異常要素の判別を精度よく行うことができるレーザ溶接方法を提供する。
【解決手段】ワークに溶接部を形成する際、光強度検出センサにより加工点の光強度を検出し、光強度検出センサから検出値を取得する。取得した検出値にて所定のデータ区間で平均値を算出する。算出した平均値を中心に検出値を正規化する。正規化された検出値を、予め設定された判別照合テーブルの第1正規化値を中心にさらに正規化する。そして、第1正規化値を中心に正規化された検出値に基づいて、ガス流量異常の判別を行う。これにより、検出値の傾向を精度よく把握することができる。検出値は異常要素に応じて異なった傾向を示すことから、検出値の傾向を精度よく把握することで、異常要素の判別を精度よく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを照射することにより被加工物に溶接部を形成するレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ溶接方法としては、被加工物に溶接部を形成する際、被加工物のレーザビーム照射位置での光強度を検出し、この検出値に基づいて溶接異常の有無を判別するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−253220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したようなレーザ溶接方法では、前述のように溶接異常の有無を判別することはできるものの、この溶接異常が、レーザ溶接を構成する要素(例えば、レーザ発信器、ガスノズルの設置姿勢、ガス成分及びガス流量等)の何れで生じているのかを精度よく判別することは困難である。
【0004】
そこで、本発明は、異常要素の判別を精度よく行うことができるレーザ溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討を重ね、溶接異常の際に検出された光強度の検出値を一層注視したところ、この検出値は、異常要素に応じて異なった傾向(振る舞い)を示すことを見出した。そこで、検出値の傾向を精度よく把握できれば、溶接異常の有無の判別だけでなく、異常要素の判別をも精度よく行うことができることを着想し、本発明に想到するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に係るレーザ溶接方法は、レーザビームを照射することにより被加工物に溶接部を形成する溶接部形成工程を備え、溶接部形成工程は、溶接部を形成する際、被加工物のレーザビーム照射位置での光強度を検出する光強度検出工程と、光強度検出工程で検出された検出値の平均値を算出し、検出値を平均値を中心に正規化する第1正規化工程と、第1正規化工程で正規化された検出値を、溶接異常の判別の基準値として予め設定された第1正規化値を中心にさらに正規化する第2正規化工程と、第2正規化工程で正規化された検出値に基づいて、異常要素の判別を行う判別工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このレーザ溶接方法では、被加工物に溶接部を形成する際に光強度が検出され、この検出値が平均値を中心に正規化される。そして、正規化された検出値が第1正規化値を中心にさらに正規化され、この検出値に基づいて異常要素の判別が行われる。従って、検出値の傾向を精度よく把握することができ、よって、異常要素の判別を精度よく行うことが可能となる。
【0008】
また、判別工程では、予め設定された第2正規化値と中心値との間に存在する検出値の数が、レーザ溶接を構成する要素に関連付けて設定された閾値以上の場合、この要素を異常要素として判別することが好ましい。また、判別工程では、予め設定された第2正規化値と交差する検出値の数が、レーザ溶接を構成する要素に関連付けて設定された閾値以上の場合、この要素を異常要素として判別することが好ましい。これらの場合、検出値の傾向を一層精度よく把握でき、異常要素の判別を一層精度よく行うことが可能となる。
【0009】
このとき、溶接部形成工程の前に第2正規化値及び閾値を設定する溶接前工程を備え、溶接前工程は、複数の基準用被加工物に溶接部を形成する基準用溶接部形成工程と、基準用溶接部形成工程で溶接部を形成する際、複数の基準用被加工物のそれぞれにてレーザビーム照射位置での光強度を検出する基準用光強度検出工程と、基準用光強度検出工程で検出された複数の基準用検出値のそれぞれにおいて、平均値を算出し該平均値を中心に正規化する基準用第1正規化工程と、基準用第1正規化工程で正規化された複数の基準用検出値のそれぞれにおいて、第1正規化値を中心にさらに正規化する基準用第2正規化工程と、基準用第2正規化工程で正規化された複数の基準用検出値に基づいて、第2正規化値及び閾値を設定する設定工程と、を含む場合がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異常要素の判別を精度よく行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態において、「上」、「下」等の語は、図面に示される状態に基づいており、便宜的なものである。
【0012】
図1は、本発明に係るレーザ溶接方法を実現するレーザ溶接システムの一実施形態を示す概略構成図である。図1に示すように、レーザ溶接システム1は、レーザビームを照射することによりワーク(被加工物)10A,10Bに溶接部Wを形成するためのものである。ここでのレーザ溶接システム1は、ワーク10A,10Bの略中央部分に直線状の溶接部Wを形成し、ワーク10A,10Bを重ね溶接する。ワーク10A,10Bとしては、鉄道車両構体に用いられる板状の外板パネル及び骨部材が用いられている。このレーザ溶接システム1は、レーザビームを照射して溶接部Wを形成するレーザ溶接装置2と、レーザ溶接が正常に実行されたか否かを評価する評価装置3とを備えている。
【0013】
レーザ溶接装置2は、送り装置21と、ワーク固定装置22と、レーザ照射装置23と、ガス供給装置24とを備えている。これらの各装置21〜24は、上位の制御装置(不図示)に接続され、この制御装置から出力される動作指示情報に従って、各動作を自動で実行するようになっている。
【0014】
送り装置21は、ワーク10A,10Bへのレーザビームの照射位置を走査する。具体的には、送り装置21は、可動ステージ25に載置されたワーク10A,10Bを、レーザ照射装置23によるレーザビームに対し溶接予定領域Rに沿って相対的に移動させる。
【0015】
ワーク固定装置22は、ワーク10A,10Bを可動ステージ25に固定する。このワーク固定装置22では、長尺の押さえ板26aによって、溶接予定領域Rを挟んだワーク10A,10Bの両端部分を可動ステージ25に押し付ける。これにより、溶接予定領域R近傍のワーク10A,10Bの密着性が向上される。
【0016】
レーザ照射装置23は、ワーク10A,10Bの溶接予定領域Rに向けてレーザビームを照射する。具体的には、レーザ照射装置23は、ワーク10A,10Bの上方のレーザヘッド27における先端から、例えばYAGレーザやCOレーザ等のレーザビームを所定時間出射する。なお、レーザ照射装置23は、内部に出力切替機構(不図示)を備えており、レーザビームを連続的に照射する場合と、レーザビームをパルス状に照射する場合とで切り替え可能とされている。
【0017】
ガス供給装置24は、ワーク10A,10Bの溶接予定領域Rに対してアシストガスを供給する。ここでのガス供給装置24では、供給ノズル28がワーク10A,10Bの厚さ方向に対し約30度傾斜するように配置されている。このガス供給装置24は、所定の供給量でワーク10A,10Bのレーザビーム照射位置(以下、「加工点」という)にアシストガスを供給する。アシストガスとしては、ワーク10A,10Bの酸化防止及びスパッタ防止等を目的として、アルゴンガス等が用いられている。
【0018】
一方、評価装置3は、物理的には、CPU、メモリ、通信インタフェイス、ハードディスクといった格納部、ディスプレイといった表示部等を備えたコンピュータシステムである。この評価装置3には、光強度検出センサ4が接続されている。
【0019】
光強度検出センサ4は、加工点の光強度を検出するためのフォトセンサであり、レーザビームの照射位置の近傍に配置されている。ここでの光強度検出センサ4は、ワーク10A,10Bに溶接部Wを形成する際、例えば波長1100nm以下の光強度を選択的に検出することで、加工点で発生するプラズマの光強度を検出する。そして、光強度検出センサ4は、これらの検出値を出力信号として評価装置3に出力する。
【0020】
また、評価装置3は、機能的な構成要素として、判別部31と、格納部32とを有している。判別部31は、光強度検出センサ4からの検出値を受け取り、この検出値に基づいて異常要素を判別する(詳しくは、後述)。格納部32は、判別部31から出力される判別結果情報を受け取り格納する。また、この格納部32は、異常要素の判別を行うための判別照合テーブル(図8参照)を格納する。
【0021】
次に、上述した構成を有するレーザ溶接システム1の動作について、図2〜図4を参照しつつ説明する。
【0022】
レーザ溶接システム1では、基準用のワーク10A,10B(以下、「基準用ワーク10A,10B」と称す)にレーザ溶接を実施し、判別照合テーブルを予め設定する(溶接前工程:S1)。そして、加工用のワーク(以下、「加工用ワーク10A,10B」という)にレーザ溶接を実施してこれらを互いに溶接すると共に、判別照合テーブルに基づいて異常要素の判別を行ってレーザ溶接を評価(検査)する(溶接本工程:S2)。そこで、まず、溶接前工程について説明する。
【0023】
[溶接前工程]
基準用ワーク10A,10Bを可動ステージ25に載置し、上方から加圧治具26を下降させて基準用ワーク10A,10Bを可動ステージ25に固定する。続いて、レーザヘッド27からレーザビームを照射すると共に、可動ステージ25を速度約10m/sで移動させて基準用ワーク10A,10Bを矢印A方向(図1参照)に走査する。これに併せて、ガス供給装置24によってアシストガスを流量15L/minで供給する。これにより、基準用ワーク10A,10Bの溶接予定領域Rに沿って、溶接部Wを形成する(S11)。
【0024】
ここで、溶接部Wを形成する際、光強度検出センサ4により加工点の光強度を検出し、波形パターンである基準用の検出値(以下、「基準用検出値」という)を取得する(S12)。そして、複数の基準用ワーク10A,10Bに対して上記S11,S12を行い、基準用検出値を複数取得する
【0025】
続いて、取得された複数の基準用検出値に基づいて、レーザ溶接を構成する要素ごとに判別照合テーブルを設定する。ここでは、ガス流量と、ガス成分と、ガスノズル角度とを要素として設定している。まず、ガス流量の場合について説明する。
【0026】
取得した複数の基準用検出値のそれぞれにおいて、所定のデータ区間(例えば、300データ)で平均値を算出する(S13)。続いて、算出した平均値を中心に各基準用検出値を正規化する(基準用第1正規化工程:S14)。そして、この正規化した各基準用検出値に基づいて、溶接異常の有無を判別するための標本線(基準)となる第1正規化値を設定する(S15)。なお、標本線とは、データ波形上に適当に設定された横線をいう。
【0027】
図5は、基準用第1正規化工程で正規化された基準用検出値を示す線図である。図中の縦軸の「μ」は、中心値を示し、ここでは基準用検出値の平均値に相当する。「σ」は、μを中心に正規化したときの標準偏差を示している。実線の検出値D1は正常時のデータを示し、破線の検出値D2はガス流量異常時のデータを示している。また、図中においては、±3.0σ、±1.5σに標本線が形成されている。
【0028】
図5に示すように、検出値D1,D2は、−1.5σの標本線L1によって、正常時の検出値D1と溶接異常時の検出値D2とを判別できることがわかる。具体的には、例えば、標本線L1と中心値μとの間の領域A1において検出値D1,D2の存在する数(以下、「存在量」という)を互いに比較することにより、検出値D1,D2を分離することが可能となっている。また、例えば、標本線L1と交差する検出値D1,D2の数(以下、「変化量」という)を互いに比較することにより、検出値D1,D2を分離することが可能となっている。従って、ここでは、標本線L1の値である−1.5σが第1正規化値として設定されることになる。
【0029】
続いて、上記S14で正規化された複数の基準用検出値のそれぞれにおいて、第1正規化値を中心にさらに正規化する(S16:基準用第2正規化工程)。そして、S16で正規化された複数の基準用検出値に基づいて、第2正規化値及び閾値を導出する(S17)。
【0030】
図6は、基準用第2正規化工程で正規化された基準用検出値を示す線図である。図中の縦軸の「μ´」は、新たに設定された中心値を示し、第1正規化値に相当する。「σ´」は、μ´を中心にさらに正規化した際の標準偏差を示している。
【0031】
図6に示す線図では、第1正規化値(−1.5σ)を中心値μ´して再び正規化され、+0.5σ´(−1.0σに相当)及び−0.5σ´(−2.0σに相当)に新たに標本線が形成されている。ここで、+0.5σ´の標本線L2と中心値μ´との間の領域A2にて検出値D1,D2の存在量を検出し比較することで、領域A1(図5参照)にて存在量を検出し比較する場合に比して、検出値D1,D2の傾向(振る舞い)をきめ細かく充分に捉えることが可能となっている。つまり、この場合、検出値D1,D2における第1正規化値の近傍をクローズアップして把握することができる。
【0032】
また、検出値D1には、その値が低い部分Pが存在しているのがわかる。検出値D1の部分Pは異常要素の判別に影響するおそれがあるが、このように第1正規化値を中心値μ´として±0.5σ´に標本線を再設定することで、部分Pを除外して検出値D1,D2の存在量を検出することができ、異常要素の判別精度を向上させることが可能となる。以上により、ここでは、標本線L2の値である+0.5σ´が第2正規化値として設定され、この第2正規化値と中心値μ´との間の領域A2における存在量が閾値として設定されることになる。
【0033】
図7は、図6の線図における第2正規化値と中心値μ´との間の領域A2での検出値D3,D4の存在量を示す線図である。縦軸は存在量の数を示し、横軸は時間を示している。また、実線の検出値D3は正常時のデータを示し、破線の検出値D4はガス流量異常時のデータを示している。図7に示すように、正常時では、存在量が0で一定であるのに対し、ガス流量異常時では存在量が250以上となっている。従って、ここでは、存在量が250以上とする閾値αが設定されることになる。
【0034】
そして、上記S13〜S17を要素ごとに行い、第1正規化値、第2正規化値及び閾値を要素ごとに設定する。これにより、図8に示すように、判別照合テーブルの設定が完了する。なお、ガス成分異常を判別する場合には、S16で正規化された基準用検出値においての第2正規化値に対する変化量を閾値としている。また、ガスノズル角度異常を判別する場合には、上述したガス流量異常を判別する場合と同様に、S16で正規化された基準用検出値においての存在量を閾値としている。
【0035】
[溶接本工程]
次に、溶接本工程について説明する。まず、上記S11と同様に、加工用ワーク10A,10Bを可動ステージ25に載置し、上方から加圧治具26を下降させて加工用ワーク10A,10Bを可動ステージ25に固定する。続いて、レーザヘッド27からレーザビームを照射すると共に、可動ステージ25を速度約10m/sで移動させて加工用ワーク10A,10Bを矢印A方向(図1参照)に走査する。これに併せて、ガス供給装置24によってアシストガスを流量15L/minで供給する。これにより、加工用ワーク10A,10Bの溶接予定領域Rに沿って、溶接部Wを形成する(S21)。
【0036】
ここで、溶接部Wを形成する際、光強度検出センサ4により加工点の光強度を検出し、波形パターンである加工用の検出値(以下、「加工用検出値」という)を取得する(S22)。そして、上記S1で設定された判別照合テーブルに基づいて、各異常要素の判別を行う。まず、異常要素がガス流量異常の場合の判別について説明する。
【0037】
取得した加工用検出値にて所定のデータ区間(例えば、300データ)で平均値を算出する(S23)。続いて、算出した平均値を中心値μとして、加工用検出値を正規化する(第1正規化工程:S24)。そして、このS24で正規化された加工用検出値を、判別照合テーブルの第1正規化値を中心値μ´としてさらに正規化する(第2正規化工程:S25)。
【0038】
続いて、上記S25で正規化された加工用検出値に基づいて、ガス流量異常の判別を行う(S26)。具体的には、判別照合テーブルの第2正規化値と中心値μ´との間の領域での加工用検出値の存在量を検出する。検出した存在量と判別照合テーブルの閾値とを照合し、存在量が閾値以上のときにガス流量異常が生じたとして判別する。そして、異常要素の判別結果を格納部32に格納する(S27)。
【0039】
続いて、上記S23〜S27を、異常要素ごとに実施する。具体的には、ガス成分異常を判別する場合、上記S25にて正規化された加工用検出値においての第2正規化値に対する変化量を検出し、この変化量と判別照合テーブルの閾値とを照合し、検出した変化量が閾値以上のときにガス成分異常が生じたとして判別する。ガスノズル角度異常を判別する場合、上記S25で正規化された加工用検出値においての第2正規化値と中心値μ´との間の領域の存在量を検出し、検出した存在量が閾値以上の場合、ガス流量異常が生じたとして判別する。そして、レーザ溶接が完了するまで、上記S21〜S27の処理を繰り返し続行する(S28)。
【0040】
以上、本実施形態では、加工用ワーク10A,10Bに溶接部Wを形成する際、光強度が光強度検出センサ4で検出され、光強度検出センサ4からの加工用検出値がその平均値を中心に正規化される。そして、この正規化された加工用検出値にあっては、溶接異常を判別する基準として予め設定された第1正規化値を中心にさらに正規化される。よって、加工用検出値の第1正規化値の近傍を特に把握することができ、加工用検出値の傾向を精度よく把握することが可能となる。従って、第1正規化値を中心に正規化された検出値に基づき異常要素の判別を行うことで、異常要素の判別を精度よく行うことが可能となる。これは、検出値が異常要素に応じて異なった傾向を示すことから、検出値の傾向を精度よく把握することが可能であれば、異常要素の判別を精度よく行うことができるためである。
【0041】
また、本実施形態では、上述したように、ガス流量異常/ガスノズル角度異常を判別する場合、第2正規化値と中心値μ´との間の領域における存在量を検出し、この存在量と判別照合テーブルでの閾値とを照合し、存在量が閾値以上のときにガス流量異常/ガスノズル角度異常が生じたとして判別する。また、上述したように、ガス成分異常を判別する場合、加工用検出値の第2正規化値に対する変化量を算出し、この変化量と判別照合テーブルの閾値とを照合し、変化量が閾値以上のときにガス成分異常が生じたとして判別する。このように、異常要素の判別に際して存在量や変化量を用いることで、加工用検出値の傾向を一層精度よく把握でき、異常要素の判別を一層精度よく行うことが可能となる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上述した実施形態では、光強度検出センサ4で加工点におけるプラズマの光強度を検出したが、赤外線領域の光の光強度を選択的に検出することで加工点温度に相当する光強度を検出してもよい。また、レーザビーム及びレーザビームの反射光の光強度を検出してもよい。検出する光については、判別する異常要素(異常部位)、レーザビームの種類及び被加工物の材質等によって適宜選択されるものである。
【0043】
また、上記実施形態では、ガス流量異常、ガス成分異常及びガスノズル角度異常を判別したが、これらに加え、例えば、レーザ発振器であるレーザヘッド27の異常や、レーザ照射装置23周りの種々の部位における異常等を判別してもよい。また、これらの何れか1つ又は複数を判別してもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、存在量でガス流量異常の判別を行ったが、場合によっては、変化量で判別を行ってもよく、存在量及び変化量の双方で判別を行ってもよい。これについては、他の異常要素の判別においても同様である。
【0045】
また、上記S16においては、複数の基準用検出値のそれぞれを第1正規化値を中心に正規化した後、所定値を中心に少なくとも1回以上さらに正規化してもよい。また、上記S26で異常要素の判別した結果、異常が生じた場合、直ちに溶接を中断(中止)してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るレーザ溶接方法を実現するレーザ溶接システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1のレーザ溶接システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】図2の溶接前工程におけるフローチャートである。
【図4】図2の溶接本工程におけるフローチャートである。
【図5】基準用第1正規化工程で正規化された基準用検出値を示す線図である。
【図6】基準用第2正規化工程で正規化された基準用検出値を示す線図である。
【図7】図6の線図における第2正規化値と中心との間の領域での基準用検出値の存在量を示す線図である。
【図8】判別照合テーブルを示す図表である。
【符号の説明】
【0047】
10A,10B…ワーク(被加工物)、W…溶接部、α…閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを照射することにより被加工物に溶接部を形成する溶接部形成工程を備え、
前記溶接部形成工程は、
前記溶接部を形成する際、前記被加工物のレーザビーム照射位置での光強度を検出する光強度検出工程と、
前記光強度検出工程で検出された検出値の平均値を算出し、前記検出値を前記平均値を中心に正規化する第1正規化工程と、
前記第1正規化工程で正規化された前記検出値を、溶接異常の判別の基準値として予め設定された第1正規化値を中心にさらに正規化する第2正規化工程と、
前記第2正規化工程で正規化された前記検出値に基づいて、異常要素の判別を行う判別工程と、を含むことを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項2】
前記判別工程では、予め設定された第2正規化値と中心値との間に存在する前記検出値の数が、レーザ溶接を構成する要素に関連付けて設定された閾値以上の場合、この要素を前記異常要素として判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記判別工程では、予め設定された第2正規化値と交差する前記検出値の数が、レーザ溶接を構成する要素に関連付けて設定された閾値以上の場合、この要素を前記異常要素として判別することを特徴とする請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記溶接部形成工程の前に前記第2正規化値及び前記閾値を設定する溶接前工程を備え、
前記溶接前工程は、
複数の基準用被加工物に前記溶接部を形成する基準用溶接部形成工程と、
前記基準用溶接部形成工程で前記溶接部を形成する際、複数の前記基準用被加工物のそれぞれにおいてレーザビーム照射位置での光強度を検出する基準用光強度検出工程と、
前記基準用光強度検出工程で検出された複数の基準用検出値のそれぞれにおいて、平均値を算出し該平均値を中心に正規化する基準用第1正規化工程と、
前記基準用第1正規化工程で正規化された複数の前記基準用検出値のそれぞれにおいて、前記第1正規化値を中心にさらに正規化する基準用第2正規化工程と、
前記基準用第2正規化工程で正規化された複数の前記基準用検出値に基づいて、前記第2正規化値及び前記閾値を設定する設定工程と、を含むことを特徴とする請求項2又は3記載のレーザ溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−241118(P2009−241118A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91609(P2008−91609)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】