レーザ溶接装置
【課題】曲がりをもった二重管を円滑に通過することを可能とし、溶接ヘッドの位置決めや回転機能を容易に付加して、二重管の内管の突き合わせ溶接を効率よく実施できるようにする。
【解決手段】本発明の実施形態によるレーザ溶接装置は、レーザ光を管1の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部21とを有するレーザ溶接ヘッド12と、管1の管外に設置され、レーザ溶接ヘッド12を回転駆動する回転駆動装置14と、回転駆動装置14で発生したトルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達する可撓性のフレキシブルシャフト30と、レーザ発振器からのレーザ光をレーザ溶接ヘッド12に導く光ファイバー32と、を有する可撓性の多重溶接ケーブル13と、レーザ溶接ヘッド12の先端部が着脱自在に嵌合しレーザ溶接ヘッド12の管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパ62と、レーザ溶接ヘッド12の嵌合した位置決めストッパ62を管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置16と、を備えている。
【解決手段】本発明の実施形態によるレーザ溶接装置は、レーザ光を管1の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部21とを有するレーザ溶接ヘッド12と、管1の管外に設置され、レーザ溶接ヘッド12を回転駆動する回転駆動装置14と、回転駆動装置14で発生したトルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達する可撓性のフレキシブルシャフト30と、レーザ発振器からのレーザ光をレーザ溶接ヘッド12に導く光ファイバー32と、を有する可撓性の多重溶接ケーブル13と、レーザ溶接ヘッド12の先端部が着脱自在に嵌合しレーザ溶接ヘッド12の管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパ62と、レーザ溶接ヘッド12の嵌合した位置決めストッパ62を管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置16と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される二重伝熱管の管内側からの管内面突き合わせ溶接を実施するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速増殖炉の蒸気発生器では、伝熱管として二重伝熱管が用いられている。この種の二重伝熱管は、内管と外管とから構成されており、内管と外管の間にある隙間には網状の組網線が挟み込まれている。この内管と外管の隙間(組網線部)には、内管または外管の破損を検知するためのヘリウムガスが流されており、破損をヘリウムガス濃度の上昇により検出することができる。
【0003】
このような二重伝熱管の単位となる1本の管は、10mから20mの長さをもつ管である。蒸気発生器に用いるには、複数本の管を溶接により継ぎ足している。
【0004】
二重伝熱管には、上記したように内管と外管の隙間に組網線が挟み込まれているので、ヘリウムガスの通気性を確保するためには、組網線部を塞がないように溶接する必要があり、きわめて高度な溶接技術が要求される。溶接で隙間が埋まらないようにするためには、内側の突き合わせ溶接と外側の管の突き合わせ溶接とは別々に溶接を行うことが必要であり、例えば、特許文献1では、レーザを用いた溶接方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二重伝熱管が用いられる原子炉によっては、例えば、小型高速増殖炉のように、蒸気発生器を小型化するために、二重伝熱管を螺旋状に曲げたヘリカル管を用いることがある。この種の二重伝熱管では、蒸気発生器の出入口の連結管からヘリカル管に至る管路中に90°曲がり管が複数箇所存在する。連結管部とヘリカル管部との最終接合となる溶接箇所は90°曲がり管の先になるため、レーザ溶接装置のレーザヘッドは、この90°曲がり管を通過できることが必須の条件になる。しかも、通過させた上で、レーザ溶接ヘッドに溶接を施工する位置に正確に位置決めする機能や、固定する機能、レーザ溶接ヘッドを回転させる機能などが必要である。
【0007】
ところが、この種の二重伝熱管には、内径が20mm前後の小口径の管があり、しかも、90°曲がり管の曲がり半径は150mm前後と小さく、このような小口径の曲がり管を通過できるような小型のレーザ溶接装置に、位置決め機構や回転機構を組み込むことは困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、二重管、とりわけ小口径の曲がりをもった二重管を円滑に通過することが可能であるレーザヘッドを有し、溶接ヘッドの位置決めや回転機能を容易に付加することが可能であり、二重管の内管の突き合わせ溶接を効率よく、高品質に実施できるようにしたレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、管と管の端部を突き合わせ、前記管の内部からその内周面にレーザ光を照射して突き合わせ溶接を行うレーザ溶接装置において、レーザ光を前記管の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部とを有するレーザ溶接ヘッドと、前記管の管外に設置され、前記レーザ溶接ヘッドを回転駆動する回転駆動装置と、前記回転駆動装置で発生したトルクを前記レーザ溶接ヘッドに伝達する可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ発振器からのレーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、を有する可撓性の多重溶接ケーブルと、前記レーザ溶接ヘッドの先端部が着脱自在に嵌合し前記レーザ溶接ヘッドの管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパと、前記レーザ溶接ヘッドの嵌合した前記位置決めストッパを管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置と、を具備することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザ溶接装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】同レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッドと多重溶接ケーブルを示す縦断面図である。
【図3】同レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッド回転駆動装置の縦断面図である。
【図4】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置の縦断面図である。
【図5】図4の位置決め固定機構を回収する回収装置の縦断面図である。
【図6】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置の他の実施形態の縦断面図である。
【図7】図6の位置決め固定機構の回収操作を示す縦断面図である。
【図8】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置のさらに他の実施形態の縦断面図である。
【図9】図8の位置決め固定機構の回収操作を示す縦断面図である。
【図10】レーザ溶接ヘッドの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】レーザ出力を制御する制御装置のブロック構成図である。
【図12】レーザ溶接ヘッドの回転速度の時間変化を示すグラフである。
【図13】レーザ溶接ヘッドが1回する間のレーザ出力を示すグラフである。
【図14】レーザ出力の時間変化のパターンを示すグラフである。
【図15】レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッドと多重溶接ケーブルの他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるレーザ溶接装置の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態によるレーザ溶接装置の全体構成を示す。図1において、参照番号1は、レーザ溶接が実施される二重管を示し、参照番号10は、レーザ溶接装置の全体を示している。
【0012】
二重管1は、外管2と内管3が同軸になっている二重管であり、外管2と内管3の間の隙間には組網線4が挟み込まれている。
【0013】
この実施形態のレーザ溶接装置10は、管内側からの突き合わせ溶接を実施し、二重管1を1本1本継ぎ足しながら延長していく。この二重伝熱管は、例えば高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される。
【0014】
図1において、レーザ溶接装置10は、大きく分けると、内管3の内面からの周溶接を行うレーザ溶接ヘッド12と、多重溶接ケーブル13と、溶接ヘッド12を回転させるためのヘッド回転駆動装置14と、レーザ溶接ヘッド12を二重管1の管内の溶接位置に位置決めしかつ固定するための位置決め固定機構16と、溶接終了後、位置決め固定機構16を二重管1の管内から回収するための回収装置18(図5参照)と、から構成されている。
【0015】
まず、レーザ溶接ヘッド12の構成について、図1および図2を参照して説明する。
図2は、レーザ溶接ヘッド12および多重溶接ケーブル13の縦断面を示す図である。このレーザ溶接ヘッド12は、ヘッド本体20と、このヘッド本体20に固定されたヘッド先端部21と、を有している。このヘッド先端部21は、その先端に向かって縮径していくテーパ形状を有している。このヘッド先端部21は、レーザヘッド位置決め固定機構16に着脱可能に嵌合するようになっている。
【0016】
ヘッド本体20の後部には、継手部22が連結されており、この継手部22には、金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ホース連結部24を介して可撓性を有する多重溶接ケーブル13が接続されている。ホース連結部24は、第1ジョイント26、中間ジョイント27、第2ジョイント28とから構成されている。
【0017】
多重溶接ケーブル13を構成する可撓性のホース25の内部には、可撓性のある材料から構成されるフレキシブルシャフト30が同軸に収容されている。この場合、ホース25の内周面とフレキシブルシャフト30の外周面との間には不活性ガスが流れるガス通路31が形成されている。さらに、フレキシブルシャフト30は中空になっており、その内部には同軸に光ファイバー32が組み込まれている。この光ファイバー32は、中間ジョイント27、第1ジョイント26に挿通され、さらに蛇腹管23の内部を通り、光ファイバー32の先端32aは継手部22に接続されている。
【0018】
第2ジョイント28は、外周部に突起28aを有する竹の子形のジョイントであり、ホース25の先端が圧入されることにより接続されている。第2ジョイント28の内周面はすべり面になっており、フレキシブルシャフト30の接続されている中間ジョイント27が回転自在に嵌合するようになっている。また、第2ジョイント28の先端側の端面は、中間ジョイント27のフランジ部27aが摺動するすべり面になっており、この滑り面にはホース25内部のガスを漏洩しないようにOリング33が設けられている。
【0019】
なお、中間ジョイント27と第1ジョイント26を貫通するようにガス通路となる複数の貫通孔34が形成されている。
【0020】
レーザ溶接ヘッド12のヘッド本体20の内部には、光ファイバー32により伝達されたレーザ光が先端32aから照射される空間35が形成されている。ヘッド先端部21の背面には、非球面反射ミラー36が配置されており、この非球面反射ミラー36で反射したレーザ光Lは、直角に方向を変えてヘッド本体20の側面に開口するノズル口37から内管3の内面の被溶接部に向けて照射される。
【0021】
なお、ヘッド本体20の内部には、ガス通路38が形成されており、不活性のガスは、ガス出口39から被溶接部に向けて噴き出るようになっている。
【0022】
次に、図3は、ホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32からなる多重溶接ケーブル13の末端が接続され、フレキシブルシャフト30を介してレーザ溶接ヘッド12を回転駆動するヘッド回転駆動機構14の構成を示す。
【0023】
このヘッド回転駆動機構14は、ベース部41を含み、このベース部41にはフレキシブルシャフト30を回転させるフレキシブルシャフト回転機構部40と、レーザ光中継器42とが設けられている。
【0024】
ホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32からなる多重溶接ケーブル13のうち、まずホース25の末端は、ホースコネクタ43に接続されている。このホースコネクタ43は、T字継手44に接続されている。このT字継手44の分岐管44aには、ガス供給ホース45が接続されており、アルゴンガスなどの不活性ガスがガス供給ホース45を通して送られてくる。
【0025】
他方、フレキシブルシャフト30の端末は、T字継手44を通って中空回転軸46にロウ付けにより接合されている。光ファイバー32は、中空回転軸46に挿通されてさらにレーザ光中継器42まで延びている。
【0026】
中空回転軸46は、ベアリング47を介して駆動部本体48に水平に支持されている。駆動部本体48の上には、ブラケット49を介して駆動源であるサーボモータ50が設置されている。このサーボモータ50の回転軸51にはタイミングプーリ52が取り付けられている。中空回転軸46にもタイミングプーリ53が取り付けられており、タイミングプーリ52とタイミングプーリ53には、タイミングベルト54が巻き掛けられている。サーボモータ50の回転は、タイミングベルト54を介して中空回転軸46に伝達され、この中空回転軸46がフレキシブルシャフト30を回転させることになる。
【0027】
光ファイバー32の端末部は、レーザ出力側の光ファイバーコネクタ55によりレーザ光中継器42と接続されている。このレーザ光中継器42は、中空の本体部56を含む。このレーザ光中継器42の本体部56の内部には、組レンズ57、57が組み込まれている。レーザ出力側の光ファイバーコネクタ55は、ベアリング58によって回転自在に支持されており、光ファイバー32とともに回転することができるようになっている。他方、レーザ光中継器42の本体部56のレーザ入力側には、光ファイバーコネクタ59を介して光ファイバー60が接続されている。この光ファイバー60は、数10メートル先のレーザ発振ユニット140に接続され、レーザ溶接用レーザ光の供給を受けるようになっている。
【0028】
次に、図4は、レーザ溶接ヘッド12を二重管1の管内で位置決めする溶接ヘッド位置決め固定機構16の構成を示す。
この溶接ヘッド位置決め固定機構16は、位置決めストッパ62と、二重管1の管内で伸縮し位置決めストッパ62を固定するパッド付きリンク機構64と、このパッド付きリンク機構64の伸縮動作を実現するねじ機構とから構成されている。
【0029】
位置決めストッパ62は、レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21が着脱自在に嵌合するように、すり鉢状の穴部65を有している。位置決めストッパ62は、回転軸66を介してねじ軸67と同一軸線上に連結されている。このねじ軸67には雄ねじが切られており、この雄ねじにはナット部材68が螺合するようになっている。ナット部材68には、ねじ軸67を軸中心にして等ピッチに複数のパッド付きリンク機構64が放射状に配設されている。この実施形態では、パッド付きリンク機構64は、第1リンク部材69、第2リンク部材70、固定パッド71とから構成されている。第1リンク部材69の一端部は、ナット部材68にピンを介して連結され、他端部は第2リンク部材69の中間位置にピンを介して連結されている。第2リンク部材69の一端部は、位置決めストッパ62にピンを介して連結され、他端部は固定パッド71にピンを介して連結されている。
【0030】
位置決めストッパ62とねじ軸67を連結している回転軸66の端部には、逆ねじの雌ねじ72が形成されており、また、雌ねじ72の奥には、図示しない六角レンチなどの工具が嵌合する6角穴が形成されている。
【0031】
このような溶接ヘッド位置決め固定機構16は、リンク機構64が畳まれた状態で二重管1の管内に搬入される。レーザヘッド位置決め固定機構16を所定の位置に置いてから、図示しない六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、雌ねじ72奥の六角穴に嵌合させる。そして、六角レンチをつかって回転軸66を正回転の方向に回していくと、ねじ軸67もいっしょに回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68は図4において矢印方向へ徐々に移動する。そうすると、ナット部材68は第1リンク部材69と第2リンク部材70を二重管1の半径方向に押し出すので、固定パット71が二重管1の内管3の内周面に押し付けられる。回転軸66を強く締めていくことで、位置決めストッパ62の位置を二重管1の管軸上に固定することができる。
【0032】
本実施形態によるレーザ溶接装置は、以上のように構成されるものであり、次に、二重管の内管を突き合わせ溶接するレーザ溶接の工程との関連において、その作用並びに効果について説明する。
まず、図2において、上述したように、一方の二重管1Aの管内の端部には、他方の二重管1Bをレーザ溶接する前に、あらかじめレーザヘッド位置決め固定機構16が所定の位置に固定されている。
【0033】
そこで、一方の二重管1Aの端部には、これから溶接する他方の二重管1Bの端部を突き当てた状態にしておく。他方の二重管1Bには溶接する端部とは反対側の端部から、レーザ溶接ヘッド12を入れ、接続されているホース25を押し込みながらレーザ溶接ヘッド12を前進させる。
【0034】
レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21を、レーザヘッド位置決め固定機構16の位置決めストッパ62まで到達させ、ヘッド先端部21を位置決めストッパ62の穴部65に嵌合させる。この穴部65は、ヘッド先端部21と同じテーパをもっているので、ヘッド先端部21が穴部65に完全に嵌合すると、管軸中心に回転可能な状態でのレーザ溶接ヘッド12の位置決めが完了する。このとき、レーザ溶接ヘッド12の管軸方向の位置についても同時に位置決めが完了し、レーザ溶接ヘッド12は、内管3の溶接部にちょうどレーザ光Lが照射される位置にある。また、レーザ光Lのピント調整についても、位置決めストッパ62にヘッド先端21を嵌合させた状態にあるレーザ溶接ヘッド12から照射されるレーザ光は内管3の内周面でピントを結ぶように事前に調整されている。
【0035】
次に、図2において、光ファイバー32を通してレーザ溶接ヘッド12に導かれたレーザ光は、非球面反射ミラー36で反射して、直角に方向を変えてレーザ溶接ヘッド本体20の側面に開口するノズル口37から二重管1の内管3内面の被溶接部に向けて照射される。
【0036】
二重管1の内管3を突き合わせ溶接するためには、レーザ溶接ヘッド12を回転させる必要がある。
図3において、ヘッド回転駆動機構14のサーボモータ50によって、中空回転軸46を回転駆動することにより、フレキシブルシャフト30を回転させる。このフレキシブルシャフト30は、回転トルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達し、レーザ溶接ヘッド12を回転させる。このとき、ヘッド先端部21は、同じテーパ形状をもつ位置決めストッパ62に嵌合して支持された状態で回転するので、振れを確実に防止することができ、レーザ光はピントの合った状態で内管3の溶接部を一周するように照射される。
【0037】
ところで、レーザ溶接ヘッド12を通す二重管1は、真っ直ぐな管である以外に、曲がっている二重管1である場合がある。このような曲がった二重管1の場合にも次のようにして、レーザ溶接ヘッド12を円滑に通過させることができる。
【0038】
レーザ溶接ヘッド12は、ヘッド本体20とヘッド先端部21だけからなり、ヘッド回転駆動用のモータや、ヘッド固定機構は付属していないため、短くかつ小型のヘッド構成とすることができる。しかも、レーザ溶接ヘッド12は、蛇腹管23を介して柔軟性に富み曲がり易いホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32の束体と接続されているので、二重管1の曲がった部分を容易に通過させることができる。
【0039】
また、回転トルクをヘッド回転駆動機構14からレーザ溶接ヘッド12に伝達するフレキシブルシャフト30は、曲がったままでも捻られながら数m先のレーザ溶接ヘッド12に蛇腹管23を介して回転トルクを伝達させることが可能である。そして、フレキシブルシャフト30の中を通っている出力側の光ファイバー32もいっしょに捻られるが、図3に示すように、光ファイバーコネクタ55をベアリング58で回転自在としてレーザ光中継部42に接続しているので、光ファイバー32は捻られてもフリーに回転できるので問題は生じないようになっている。
【0040】
また、フレキシブルシャフト30とホース25の接続部では、第2ジョイント28の内周面はすべり面になっており、フレキシブルシャフト30の接続されている中間ジョイント27が回転自在に嵌合するようになっている。また、第2ジョイント28の先端側の端面は、中間ジョイント27のフランジ部27aが摺動するすべり面になっているので、フレキシブルシャフト30が回転してもホース25の方は捻られることがない。
【0041】
こうして、二重管1の内側管3に対するレーザ溶接が終わったら、フレキシブルシャフト30を収容しているホース25を引っ張ってレーザ溶接ヘッド12を二重管1の管外に回収することになる。レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21は、位置決めストッパ62のテーパ付きの穴部65に嵌合しているだけなので、ヘッド先端部21を位置決めストッパ62から簡単に離脱させることができる。
【0042】
レーザ溶接ヘッド12をホース25ごと回収する過程では、二重管1が曲がった管である場合でも、上述したように、曲がり部分を円滑に通過させることができるので、容易に回収することができる。
【0043】
次に、レーザ溶接ヘッド12の回収が終了した後は、レーザヘッド位置決め固定機構16を管外に回収することになる。図5は、レーザヘッド位置決め固定機構16を管外に回収するための回収機構18を示す。この実施形態では、フレキシブルシャフト78が内部に同軸に収容されたガイド管80を二重管1内に通して、レーザヘッド位置決め固定機構16を回収する。
【0044】
ガイド管80の先端には、端末金具82が取り付けられている。フレキシブルシャフト78の先端には、テーパ形状の先端部83が取り付けられ、この先端部83は端末金具82に回転自在に支持されている。先端部83は、図2に示したレーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21と同様に、位置決めストッパ62の穴部65に着脱自在に嵌合するようになっている。そして、先端部83の先には、逆ねじにねじを切ってある雄ねじ84が同軸に固着されており、この雄ねじ84は、レーザヘッド位置決め機構18の回転軸66にある逆ねじの雌ねじ72に螺合するようになっている。なお、参照番号81は、先端部83を案内する球体を示す。
【0045】
フレキシブルシャフト78の末端は、図3に示した回転駆動機構14に連結される。レーザヘッド位置決め固定機構16を回収するときには、図5において、フレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入する。先端部83の雄ねじ84は回転軸66の雌ねじ72と同様に逆ねじになっているため、雄ねじ84は、雌ねじ72に締め込まれていき、回転軸66とフレキシブルシャフト78との連結が確立する。さらにフレキシブルシャフト78を逆回転方向に回していくと、回転軸66とともにねじ軸67が逆回転方向に回転し、ナット部材68は、図5において矢印方向に徐々に移動する。ナット部材68は、第1リンク部材69と第2リンク部材70を介して固定パッド71を引き寄せるので、それまで二重管の内周面に押し付けられて固定パッド71が離れて、レーザヘッド位置決め固定機構16はアンクランプされる。
【0046】
レーザヘッド位置決め固定機構16のアンクランプの後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め固定機構16を円滑に回収することができる。
【0047】
また、光ファイバー32の交換を行う際は、光ファイバー32の取り付け調整作業が発生する。本実施形態では、レーザ溶接ヘッド12と多重溶接ケーブルを蛇腹管23で接続しているので、調整作業の際は蛇腹管23の接続を解除して蛇腹管23を折り畳むことで光ファイバー32を露出させることができるため、作業性が向上する。
【0048】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態によるレーザ溶接装置について、図6並びに図7を参照しながら説明する。
【0049】
この第2実施形態によるレーザ溶接装置では、図6に示すレーザヘッド位置決め固定機構90が用いられている。これ以外のレーザ溶接ヘッド12、回転駆動機構14等の構成は第1実施形態と同様である。
【0050】
このレーザヘッド位置決め固定機構90では、回転軸66とともにねじ軸67を正回転の方向に回転させてナット部材68を図6で矢印方向に移動させて固定し、回転軸66を逆方向に回してナット部材68を矢印方向と逆方向に移動させて固定状態を解除する点は、図4に示したレーザヘッド位置決め固定機構16と同様であるが、リンク機構64と固定パッド71の替わりに、対をなす細長い板ばね92、93を用いて固定力を発生させている点が相違している。
【0051】
図6に示すように、一方の板バネ92の一端はナット部材68に固定されており、この板ばね92の中間部位は位置決めストッパ62の角部分に当たって湾曲し先端部92aが二重管1の内管3の内周面に当接するようになっている。これに対して、他方の板ばね93の一端は、位置決めストッパ62の切欠部62aに固定されている。この板ばね93の中間部位は、ナット部材68に当たって湾曲し先端部93aは二重管1の内管の内周面に当接するようになっている。このような板ばね92、93は対をなし、この実施形態では、図示されていないが周方向に等ピッチで3対が配置されている。
【0052】
以上のようなレーザヘッド位置決め固定機構90によれば、次のようにしてレーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0053】
レーザヘッド位置決め固定機構90を二重管1管内の所定の位置に置いてから、六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、図示しない六角レンチをつかって回転軸66を正回転の方向に回していくと、ねじ軸67もいっしょに回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68が図6において矢印方向へ徐々に移動すると、一方の板ばね92ではその途中が位置決めストッパ62に当たって、先端部92aは二重管1の内管の内周面に押し付けられ、板ばね92の撓みによって固定力を発生する。同じようにして、他方の板ばね93の固定端側にナット部材68がせり込んでいくので、先端部93aは二重管1の内管1内周面に押し付けられ、板ばね93の撓みによって固定力を発生する。このような板ばね92、93を対にして3対が等ピッチで配設されているので、位置決めストッパ62を二重管1の管軸上に固定することができる。
【0054】
こうして、位置決めストッパ62を固定した後は、一方の二重管1の端部に、これから溶接する他方の二重管1の端部を突き当てた状態にしておく。そして、他方の二重管1には溶接する端部とは反対側の端部から、レーザ溶接ヘッド12を入れ、接続されているホース11を押し込みながらレーザ溶接ヘッド12を前進させると、ヘッド先端部21が位置決めストッパ62の穴部65に嵌合し、レーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0055】
レーザ溶接による二重管1の接合が終了した後、レーザヘッド位置決め固定機構90を回収する場合、次のようにして、位置決めストッパ62の固定状態を解除する。
【0056】
図7において、回収用のフレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入する。先端部83の雄ねじ84は回転軸66の雌ねじ72と同様に逆ねじになっているため、雄ねじ84は、雌ねじ72に締め込まれていき、回転軸66とフレキシブルシャフト78との連結が確立する。さらにフレキシブルシャフト78を逆回転方向に回していくと、回転軸66とともにねじ軸67が逆回転方向に回転し、ナット部材68は、図7において矢印方向に徐々に移動する。このナット部材68の移動によって、板ばね92、93の撓み量が少なくなるので、位置決めストッパ62の固定状態が解除される。以後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め機構90を円滑に回収することができる。特に、本実施形態では、固定力の発生と解除を板ばね92、93の撓みを利用しているので、第1実施形態のようにリンク機構を使わずに済むので、レーザヘッド位置決め固定機構90をより小径の二重管に適したものにすることができる。
【0057】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態によるレーザ溶接装置について、図8並びに図9を参照しながら説明する。
【0058】
この第3実施形態によるレーザ溶接装置では、図8に示すレーザヘッド位置決め固定機構100が用いられる。これ以外のレーザ溶接ヘッド12、回転駆動機構14等の構成は第1実施形態と同様である。
【0059】
このレーザヘッド位置決め固定機構100では、ねじ軸67を正回転の方向に回転させてナット部材68を矢印方向に移動させてリンク機構64を伸ばして固定する点は、図4に示したレーザヘッド位置決め固定機構18と同様である。異なる点は、次のような高圧ガス発生装置を利用して固定状態を解除する点にある。
【0060】
図8において、参照番号102は、燃焼反応によって高圧のガスを発生する化学物質と、この化学物質を燃焼反応させるための着火用火薬と、を内蔵するインフレータを示す。このインフレータ102は、例えば、自動車のエアバックシステムでガス発生源として用いられるガス発生装置と同種のものである。
【0061】
本実施形態では、ねじ軸67はシリンダ構造を有しており、このねじ軸67の内部にはプランジャー104が移動自在に同軸に内蔵されている。ねじ軸67の端部には、プランジャー104を作動させるシリンダ室106が形成されている。この場合、インフレータ102は、耐圧ホース107によってねじ軸67の端部と接続されており、インフレータ102で発生した高圧ガスは、耐圧ホース107を通ってシリンダ室106に導入されるようになっている。
【0062】
シリンダ室106側のプランジャー104の端部は、シャーピン108によって固定されている。シリンダ室106に導入された高圧ガスによりプランジャー104が加圧されたときにはシャーピン108が破断するので、プランジャー104は前進して、固定状態が解除されるようになっている。
【0063】
本実施形態では、二重管1の管外からの操作によってインフレータ102の内蔵する着火用火薬に着火するための電気回路が次のように構成されている。
図9において、回収機構18を構成するフレキシブルシャフト78の先端部83やガイド管80、球体81、端末金具82など、これら二重管1の内管3の内周面に接触する可能性のある構成部材の表面は、絶縁体で被覆されており、二重管1の内管3とは電気的に絶縁されている。
【0064】
フレキシブルシャフト78は導電性材料からなるシャフトである。このフレキシブルシャフト78の先端部83の先に設けられた逆ねじの雄ねじ84には図示しない電極が設けられており、この電極とフレキシブルシャフト78とは端末金具82の内部にある図示ない電線により電気的に接続されている。
【0065】
さらに、レーザヘッド位置決め固定機構100では、固定パッド71は絶縁体で被覆されるか、若しくは絶縁体からなり、二重管1の内管3とは電気的に絶縁されている。その替わりに、ねじ軸67およびプランジャー104は、フレキシブルシャフト78と電気的に接続される回路の一部を構成し、電線110を介してインフレータ102の着火用電極であってインフレータ102の本体側面に取り付けられている陽極111と電気的に接続されている。
【0066】
他方、インフレータ102の着火用の他方の電極である陰極112は、陽極111と対をなすようにインフレータ102の本体側面に取り付けられており、この陰極112には、先端が二重管1の内管3の内周面に接触するように、弾性力によって常に押し付けられている板ばね114と接続されており、陰極112、板ばね114、二重管1が着火回路の一部を構成するようになっている。
【0067】
以上のようなレーザヘッド位置決め固定機構100によれば、次のようにしてレーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0068】
まず、図8において、レーザヘッド位置決め固定機構100を二重管1管内の所定の位置に置いてから、図示しない六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、この六角レンチをつかってプランジャー104を正回転の方向に回していく。この場合、プランジャー104はシャーピン108によりねじ軸67に固定されているので、プランジャー104といっしょにねじ軸67が回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68が図8において矢印方向へ徐々に移動すると、リンク機構64は固定パット71を二重管の内管3の内周面に押し付けていくので、位置決めストッパ62を管軸上に固定することができる。なお、このとき、ねじ軸67の回転とともに、板ばね114が二重管1の内管3の内周面を摺動しながらインフレータ102もいっしょに回ることになる。
【0069】
レーザ溶接による二重管1の接合が終了した後、レーザヘッド位置決め固定機構100を回収する場合、次のようにして、位置決めストッパ62の固定状態を解除する。
【0070】
図9において、レーザヘッド位置決め固定機構100を回収するときには、回収用のフレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入し、先端部83の雄ねじ84を雌ねじ72に締め込むことで、プランジャー104とフレキシブルシャフト78との連結を確立することができる。
【0071】
その後、図9において、二重管1の管外からインフレータ102の図示しない着火スイッチを入れると、インフレータ102の着火用電極である陽極111、陰極112間に電流が流れ、内蔵されている火薬に着火することができる。インフレータ102では、ガス発生用の化学物質が燃焼し、発生した高圧ガスは耐圧ホース107を通ってシリンダ室106に噴出し、プランジャー104を前進させる。このプランジャー104は、シャーピン108を破断して前進し、位置決めストッパ62を矢印方向に移動させる結果、ナット部材68と位置決めストッパ62との間を連結しているリンク機構64を強制的に畳ませるので、固定パッド71は二重管1の内管3の内周面から離れることになる。これにより、位置決めストッパ62の固定状態が解除される。
【0072】
以後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め機構100を円滑に回収することができる。特に、本実施形態では、インフレータ102で発生させる高圧ガスを利用して、固定状態を強制的に開放しているので、レーザヘッド位置決め機構100の回収をより容易に確実にすることができる。
【0073】
なお、第2実施形態と同様に、さらにフレキシブルシャフト30を逆回転方向に回していくと、位置決めストッパ62の固定状態を開放することも可能である。
【0074】
第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態によるレーザ溶接装置について、図10乃至図14を参照しながら説明する。
【0075】
この第4実施形態は、図10に示すレーザ溶接ヘッド120を用いて、その回転速度や回転数を検出し、レーザ出力の制御を実行しながら二重管1のレーザ溶接を行うようにした実施の形態である。そこで、まず、図10を参照しながら、レーザ溶接ヘッド120について説明する。
【0076】
この第4実施形態によるレーザ溶接ヘッド120は、ヘッド本体20と、このヘッド本体20に連結されたヘッド先端部122と、を有している。この実施形態では、ヘッド本体20は、図2に示した第1実施形態のレーザ溶接ヘッドと同じ構成のものである。ヘッド本体20の後部には、継手部22が連結されており、この継手部22には、金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ホース連結部24を介してホース25が接続されている。ホース25の内部にあるフレキシブルシャフト30、光ファイバー32はレーザ溶接ヘッド本体20と接続されている。
【0077】
ヘッド先端部122は、先端に向かって縮径していくテーパ形状を有している。このヘッド先端部122は、図4に示すレーザヘッド位置決め固定機構16の位置決めストッパ62に着脱可能に嵌合するようになっている。
【0078】
この第4実施形態では、ヘッド先端部122は、次のようにして、ヘッド本体20に回転自在に連結されている。ヘッド本体20の端面からは、同軸に支持軸123が突き出ている。ヘッド先端部122にはその後側端面に開口するように軸穴124が形成されている。支持軸123は軸穴124に挿入され、支持軸123は軸受125によって回転自在に支持されている。
ヘッド本体20の端面とヘッド先端部122の後側端面との間には、所定の間隔の隙間が確保されている。そして、ヘッド先端部120の後側端面には、磁気パターンが形成されている磁気シール126が貼り付けられている。この磁気シール126には、磁気パターンが所定のピッチで周方向に並ぶように形成されている。他方、レーザ溶接ヘッド本体20の端面には、磁気センサ128が埋め込まれており、この磁気センサ128で磁気パターンを検出するようになっている。
【0079】
磁気センサ128には、センサに電気を供給する給電ライン上に検出信号を載せることが可能なセンサが用いられており、給電ラインは、次のようなラインによって確立される構成となっている。すなわち、フレキシブルシャフト30からレーザ溶接ヘッド本体20に至る経路が陽極側の経路となっており、一方陰極側は、ヘッド先端部122からレーザヘッド位置決め機構16の位置決めストッパ62、固定パッド71を経て二重管1に至る経路である。
【0080】
以上のように構成されるレーザ溶接ヘッド120では、ヘッド先端部122が位置決めストッパ62の穴部65に完全に嵌合すると、レーザ溶接ヘッド120は管軸を中心に回転可能な状態で位置決めされる。フレキシブルシャフト30によって回転トルクが伝達されることで、ヘッド先端部122に組み込まれた軸受125に支持されながら、レーザ溶接ヘッド本体20は回転することができる。
【0081】
レーザ溶接ヘッド本体20に回転トルクを伝える過程で、フレキシブルシャフト30は捻れるので、レーザ溶接を実施している間、レーザ溶接ヘッド本体20を一定の回転速度で回転させることは困難であり、フレキシブルシャフト30のねじれ特性により、レーザ溶接ヘッド本体20の回転速度は増減することになる。
【0082】
本実施形態のレーザ溶接ヘッド120では、図2の第1実施形態によるレーザ溶接ヘッド12と異なり、ヘッド先端部122は位置決めストッパ62に対して固定されており、ヘッド本体20は、軸受125で支持されて回転する。このため、回転時にはヘッド先端部122の位置決めストッパ62に対する滑りが発生しないので、レーザ溶接ヘッド本体20の回転速度と回転数を磁気センサ128で正確に検出することができる。そこで、検出した回転速度や回転数などの回転状態ついての情報を利用して、以下のように、レーザ光の出力を制御している。
【0083】
ここで、図11は、二重管1の溶接部に照射するレーザ光の出力を制御する制御装置のブロック構成図である。
【0084】
図11において、ヘッド先端部122に配置されている磁気パターン126を検出する度に、磁気センサ128はON/OFF信号を交互に出力する。この磁気センサ128には、信号を増幅するアンプ回路130が内蔵されており、ON/OFF信号は、DCパワーライン132に合流して、二重管1の管外に設置されている制御装置134に送信される。
【0085】
この制御装置134には、DCパワーライン132から磁気センサ128の出力信号をON/OFFデジタル信号135に変換して分離するA/D変換器136と、デジタル/インプット回路137を介して取り込んだON/OFFデジタル信号を処理し、レーザ溶接ヘッド120の回転速度、回転数をリアルタイムに演算し、その結果に基づいてレーザレーザ発振器140にレーザ出力の指令値を指令するコンピュータ138を備えている。コンピュータ138には、ヘッド回転駆動機構14のサーボモータ50を制御するサーボモータ制御部142が接続され、回転速度、回転数を指令する。また、コンピュータ138には、レーザ発振器140、レーザ出力状態を表示するとともに、照射操作するための操作・表示器143が接続されている。
【0086】
次に、図12乃至図14を参照しながら、二重管1を溶接するときに行うレーザ出力制御の内容について説明する。
まず、図12(a)は、レーザ溶接ヘッド120のヘッド本体20が回転しているときに、磁気センサ128の出力信号から得られるヘッド回転速度の時間的変化を示すグラフで、図12(b)はヘッド本体20が1回転する時間間隔を表すグラフである。
上述したように、サーボモータ50の回転トルクはフレキシブルシャフト30によってヘッド本体20に伝達されるので、フレキシブルシャフト30のねじれや伸びの影響を受けて、サーボモータ50を一定の回転数で回転させた場合でも、実際のヘッド回転速度には変動が生じることになる。このようなヘッド回転速度の変動は、一定時間連続回転を行い十分に回転が安定した状態になると、フレキシブルシャフト30固有のねじれ特性を反映したパターンでの増減を繰り返す。
【0087】
本実施形態のレーザ溶接ヘッド120では、ヘッド本体20が軸受125で支持されながら回転する。通常、位置決めストッパ62に対するヘッド先端部122の滑りは発生しないので、ヘッド回転速度を正確に計測できると考えられる。この実施形態では、正確な計測を期すために、次のようにしてヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間で実際に滑りが生じていないことを確認する。
【0088】
まず、サーボモータ50を所定の回転速度で回転させ、フレキシブルシャフト30により回転トルクが伝達されたヘッド本体20は連続回転している状態とする。このときのサーボモータ50の回転速度は、二重管2にレーザ溶接を実際に実施するときの最適な周速度に設定される。
【0089】
次に、ヘッド本体20を一定時間連続回転させ、フレキシブルシャフト30のねじれを伴う回転状態が十分に安定するのを待つ。
【0090】
フレキシブルシャフト30が安定して回転するようになったら、磁気センサ128で磁気パターン126を検出して得られたON/OFFデジタル信号135に基づいて、コンピュータ138によりヘッド回転速度を検出する。この場合、磁気パターン126の濃淡バターン間のピッチ間隔は、ON/OFFデジタル信号135では、ONとOFFの時間間隔に対応しているので、ONとOFFの時間間隔を計測し、またON信号をカウントすることでレーザ溶接ヘッドの回転数を計測することができる。このヘッド回転数がサーボモータ50の回転数とがずれなく一致した場合は、ヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間ですべりが生じていないことを確認できたことになる。
【0091】
一方、サーボモータ50の回転数が計測したヘッド回転数を上回っている場合は、ヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間にすべりが生じている場合である。この場合は、ヘッド先端部122が位置決めストッパ62に完全に嵌合していないなどが原因であると考えられるので、サーボモータ50の回転数とヘッド回転数が一致するまで、ヘッド先端部122の押し込み状態を調整することになる。
【0092】
以上のような確認を経て、回転が十分に安定した状態においては、図12(a)に示されるように、ヘッド回転速度が変化するパターンは、レーザ溶接ヘッド本体20の1回転と同期して、ほぼ同じ増減パターンの繰り返しとなっている。
【0093】
このようにヘッド回転速度は一定のパターンで変化するので、レーザ溶接ヘッド本体20が一回転する間に照射されるレーザ光の出力が一定であると、ヘッド回転速度の変動に応じてレーザエネルギーにはむらが生じ、高品質の溶接を行えないことになる。
【0094】
そこで、本実施形態では、次のようにして、磁気センサ128で検出したヘッド回転速度と回転数に基づいて、コンピュータ138によってレーザ出力を補正する処理を行っている。
まず、磁気センサ128で磁気パターン126を検出して得られたON/OFFデジタル信号135では、ONとOFFの時間間隔が磁気パターン126のピッチ間隔に相当している。ONとOFFの時間間隔を計測し、また、ON信号をカウントすることで、ピッチ間の回転速度をv(t)、回転角度をθとして、回転角度位置θ(t)が演算される。
【0095】
ここで、レーザ出力の時間的変化をp(t)とすると、一定距離L間に照射するレーザ照射エネルギー(p(t)/L)が一定となるように、すなわち、図13において、
v(θ)×p(θ)を0°から360°まで積分したものが一定(定数K)となるようなレーザ出力のパターンp(t)が演算される。以上のようにして求めたp(t)は、図14に示すようになる。
【0096】
ヘッド回転速度の変化を示す図12と、レーザ出力の時間的変化を示す図14とを対照させると諒解されるように、ヘッド回転速度が増加する区間ではレーザ出力が増加し、ヘッド回転速度が減少する区間では、レーザ出力は減少するようになっている。
【0097】
そして、このレーザ出力パターンをベースに、実際のリアルタイムで計測したピッチ間の実回転速度でレーザ出力値を補正してレーザ照射を実施する。
【0098】
このようにレーザ出力の制御が行われるので、どのタイミングでレーザ光の照射を行うかも重要になってくる。
そこで、レーザ出力の制御と同時に、レーザ発振器140でのレーザシャッタ開のタイミングとレーザシャッタ閉のタイミングが次のように制御される。
【0099】
レーザ発振器140のレーザシャッタを開とするポイント、すなわち、レーザ溶接開始のポイントは、図14において、ヘッド回転速度が最も安定している区間の中から、例えばt1の時点が選定される。レーザシャッタを閉とするタイミングは、レーザ溶接ヘッド120が360°回転し1パスのレーザ周溶接をするのに必要なON/OFFデジタル信号135のカウント数とする。
【0100】
以上のようなレーザ出力の制御とレーザ光照射のタイミング調整を行いながら、二重管1の内管内周の溶接部に一周だけレーザ溶接が実施される。レーザエネルギー量は、ヘッド回転速度の変動に関わらず一定に保つことができるので、高品位のレーザ溶接を実施することが可能になる。
【0101】
第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態によるレーザ溶接装置について、図15を参照しながら説明する。
これまで説明した第1乃至第4形態によるレーザ溶接装置は、レーザ溶接ヘッド12にフレキシブルシャフト30を用いて回転トルクを伝動する構成である。これに対して、第5実施形態によるレーザ溶接装置は、フレキシブルシャフト30の替わりに、中空の自在継手を利用してレーザ溶接ヘッド12に回転トルクを伝動する構成にした実施形態である。なお、この第5実施形態では、図2と同一の構成要素には、同一の参照符合を付して詳細な説明は省略する。
【0102】
図15において、レーザ溶接ヘッド12のヘッド本体20の後部に継手部22を介して金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ジョイント144を介して次のような自在継手が接続されている。
【0103】
この実施形態による自在継手は、円筒形状の節部材145を一単位の関節として、複数の節部材145を連続的に繋ぎあわせて二重管1の管外まで延びる自在継手が構成されている。節部材145の両端部には、2つ一組の方形片が軸方向に突き出た継手部146a、146bが形成されている。隣り合う節部材145にあっては、継手部146aと継手部146bはピンジョイント148によって連結されている。そして、ピンジョイント148による継手部146aと継手部146bの連結軸は、交互に90°ずつ偏位するようになっているので、自在継手全体としては任意の方向に曲がることが可能になっている。
【0104】
このような節部材145をつなぎ合わせてなる自在継手の内部には、不活性ガスをレーザ溶接ヘッド本体20に送るガス供給パイプ150が収容されている。ジョイント144は、外周部に突起を有する竹の子形のジョイント151を有し、ガス供給パイプ150の先端は圧入により接続されている。さらに、ガス供給パイプ150の内部にはレーザ光をヘッド本体20に導く光ファイバー32が組み込まれている。
【0105】
以上のように構成される第5実施形態によれば、曲がった二重管1の場合にもレーザ溶接ヘッド12を円滑に通過させ、レーザ溶接を実施することができる。
【0106】
また、レーザ溶接ヘッド12は、ヘッド筐体20とヘッド先端部12からなり、ヘッド回転駆動用のモータや、ヘッド固定機構が付属していないため、短く小型のヘッド構成とすることができる上に、節部材145を連続してつなげた自在継手は、二重管の曲がった部分を通過できるとともに回転トルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達することができる。しかも、フレキシブルシャフト30と異なり、ねじれが生じないので、ヘッド回転速度の変動を小さくすることができる。
【0107】
以上、本発明によるレーザ溶接装置について、好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される二重伝熱管だけでなく、二重管あるいは管をつなげていく溶接一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…二重管、2…外管、3…内管、10…レーザ溶接装置、12…レーザ溶接ヘッド、13…多重ケーブル、16…レーザヘッド位置決め固定機構、18…回収装置、20…ヘッド本体、21…ヘッド先端部、23…蛇腹管、25…ホース、30…フレキシブルシャフト、32…光ファイバー、42…レーザ光中継器、46…中空回転軸、50…サーボモータ、62…位置決めストッパ、64…リンク機構、65…穴部、67…ねじ軸、71…固定パッド、78…フレキシブルシャフト、80…ガイド管、82…端末金具、83…先端部
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される二重伝熱管の管内側からの管内面突き合わせ溶接を実施するレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速増殖炉の蒸気発生器では、伝熱管として二重伝熱管が用いられている。この種の二重伝熱管は、内管と外管とから構成されており、内管と外管の間にある隙間には網状の組網線が挟み込まれている。この内管と外管の隙間(組網線部)には、内管または外管の破損を検知するためのヘリウムガスが流されており、破損をヘリウムガス濃度の上昇により検出することができる。
【0003】
このような二重伝熱管の単位となる1本の管は、10mから20mの長さをもつ管である。蒸気発生器に用いるには、複数本の管を溶接により継ぎ足している。
【0004】
二重伝熱管には、上記したように内管と外管の隙間に組網線が挟み込まれているので、ヘリウムガスの通気性を確保するためには、組網線部を塞がないように溶接する必要があり、きわめて高度な溶接技術が要求される。溶接で隙間が埋まらないようにするためには、内側の突き合わせ溶接と外側の管の突き合わせ溶接とは別々に溶接を行うことが必要であり、例えば、特許文献1では、レーザを用いた溶接方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二重伝熱管が用いられる原子炉によっては、例えば、小型高速増殖炉のように、蒸気発生器を小型化するために、二重伝熱管を螺旋状に曲げたヘリカル管を用いることがある。この種の二重伝熱管では、蒸気発生器の出入口の連結管からヘリカル管に至る管路中に90°曲がり管が複数箇所存在する。連結管部とヘリカル管部との最終接合となる溶接箇所は90°曲がり管の先になるため、レーザ溶接装置のレーザヘッドは、この90°曲がり管を通過できることが必須の条件になる。しかも、通過させた上で、レーザ溶接ヘッドに溶接を施工する位置に正確に位置決めする機能や、固定する機能、レーザ溶接ヘッドを回転させる機能などが必要である。
【0007】
ところが、この種の二重伝熱管には、内径が20mm前後の小口径の管があり、しかも、90°曲がり管の曲がり半径は150mm前後と小さく、このような小口径の曲がり管を通過できるような小型のレーザ溶接装置に、位置決め機構や回転機構を組み込むことは困難である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、二重管、とりわけ小口径の曲がりをもった二重管を円滑に通過することが可能であるレーザヘッドを有し、溶接ヘッドの位置決めや回転機能を容易に付加することが可能であり、二重管の内管の突き合わせ溶接を効率よく、高品質に実施できるようにしたレーザ溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、管と管の端部を突き合わせ、前記管の内部からその内周面にレーザ光を照射して突き合わせ溶接を行うレーザ溶接装置において、レーザ光を前記管の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部とを有するレーザ溶接ヘッドと、前記管の管外に設置され、前記レーザ溶接ヘッドを回転駆動する回転駆動装置と、前記回転駆動装置で発生したトルクを前記レーザ溶接ヘッドに伝達する可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ発振器からのレーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、を有する可撓性の多重溶接ケーブルと、前記レーザ溶接ヘッドの先端部が着脱自在に嵌合し前記レーザ溶接ヘッドの管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパと、前記レーザ溶接ヘッドの嵌合した前記位置決めストッパを管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置と、を具備することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザ溶接装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】同レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッドと多重溶接ケーブルを示す縦断面図である。
【図3】同レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッド回転駆動装置の縦断面図である。
【図4】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置の縦断面図である。
【図5】図4の位置決め固定機構を回収する回収装置の縦断面図である。
【図6】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置の他の実施形態の縦断面図である。
【図7】図6の位置決め固定機構の回収操作を示す縦断面図である。
【図8】レーザ溶接装ヘッドを位置決めする位置決め固定装置のさらに他の実施形態の縦断面図である。
【図9】図8の位置決め固定機構の回収操作を示す縦断面図である。
【図10】レーザ溶接ヘッドの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】レーザ出力を制御する制御装置のブロック構成図である。
【図12】レーザ溶接ヘッドの回転速度の時間変化を示すグラフである。
【図13】レーザ溶接ヘッドが1回する間のレーザ出力を示すグラフである。
【図14】レーザ出力の時間変化のパターンを示すグラフである。
【図15】レーザ溶接装置のレーザ溶接ヘッドと多重溶接ケーブルの他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるレーザ溶接装置の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態によるレーザ溶接装置の全体構成を示す。図1において、参照番号1は、レーザ溶接が実施される二重管を示し、参照番号10は、レーザ溶接装置の全体を示している。
【0012】
二重管1は、外管2と内管3が同軸になっている二重管であり、外管2と内管3の間の隙間には組網線4が挟み込まれている。
【0013】
この実施形態のレーザ溶接装置10は、管内側からの突き合わせ溶接を実施し、二重管1を1本1本継ぎ足しながら延長していく。この二重伝熱管は、例えば高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される。
【0014】
図1において、レーザ溶接装置10は、大きく分けると、内管3の内面からの周溶接を行うレーザ溶接ヘッド12と、多重溶接ケーブル13と、溶接ヘッド12を回転させるためのヘッド回転駆動装置14と、レーザ溶接ヘッド12を二重管1の管内の溶接位置に位置決めしかつ固定するための位置決め固定機構16と、溶接終了後、位置決め固定機構16を二重管1の管内から回収するための回収装置18(図5参照)と、から構成されている。
【0015】
まず、レーザ溶接ヘッド12の構成について、図1および図2を参照して説明する。
図2は、レーザ溶接ヘッド12および多重溶接ケーブル13の縦断面を示す図である。このレーザ溶接ヘッド12は、ヘッド本体20と、このヘッド本体20に固定されたヘッド先端部21と、を有している。このヘッド先端部21は、その先端に向かって縮径していくテーパ形状を有している。このヘッド先端部21は、レーザヘッド位置決め固定機構16に着脱可能に嵌合するようになっている。
【0016】
ヘッド本体20の後部には、継手部22が連結されており、この継手部22には、金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ホース連結部24を介して可撓性を有する多重溶接ケーブル13が接続されている。ホース連結部24は、第1ジョイント26、中間ジョイント27、第2ジョイント28とから構成されている。
【0017】
多重溶接ケーブル13を構成する可撓性のホース25の内部には、可撓性のある材料から構成されるフレキシブルシャフト30が同軸に収容されている。この場合、ホース25の内周面とフレキシブルシャフト30の外周面との間には不活性ガスが流れるガス通路31が形成されている。さらに、フレキシブルシャフト30は中空になっており、その内部には同軸に光ファイバー32が組み込まれている。この光ファイバー32は、中間ジョイント27、第1ジョイント26に挿通され、さらに蛇腹管23の内部を通り、光ファイバー32の先端32aは継手部22に接続されている。
【0018】
第2ジョイント28は、外周部に突起28aを有する竹の子形のジョイントであり、ホース25の先端が圧入されることにより接続されている。第2ジョイント28の内周面はすべり面になっており、フレキシブルシャフト30の接続されている中間ジョイント27が回転自在に嵌合するようになっている。また、第2ジョイント28の先端側の端面は、中間ジョイント27のフランジ部27aが摺動するすべり面になっており、この滑り面にはホース25内部のガスを漏洩しないようにOリング33が設けられている。
【0019】
なお、中間ジョイント27と第1ジョイント26を貫通するようにガス通路となる複数の貫通孔34が形成されている。
【0020】
レーザ溶接ヘッド12のヘッド本体20の内部には、光ファイバー32により伝達されたレーザ光が先端32aから照射される空間35が形成されている。ヘッド先端部21の背面には、非球面反射ミラー36が配置されており、この非球面反射ミラー36で反射したレーザ光Lは、直角に方向を変えてヘッド本体20の側面に開口するノズル口37から内管3の内面の被溶接部に向けて照射される。
【0021】
なお、ヘッド本体20の内部には、ガス通路38が形成されており、不活性のガスは、ガス出口39から被溶接部に向けて噴き出るようになっている。
【0022】
次に、図3は、ホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32からなる多重溶接ケーブル13の末端が接続され、フレキシブルシャフト30を介してレーザ溶接ヘッド12を回転駆動するヘッド回転駆動機構14の構成を示す。
【0023】
このヘッド回転駆動機構14は、ベース部41を含み、このベース部41にはフレキシブルシャフト30を回転させるフレキシブルシャフト回転機構部40と、レーザ光中継器42とが設けられている。
【0024】
ホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32からなる多重溶接ケーブル13のうち、まずホース25の末端は、ホースコネクタ43に接続されている。このホースコネクタ43は、T字継手44に接続されている。このT字継手44の分岐管44aには、ガス供給ホース45が接続されており、アルゴンガスなどの不活性ガスがガス供給ホース45を通して送られてくる。
【0025】
他方、フレキシブルシャフト30の端末は、T字継手44を通って中空回転軸46にロウ付けにより接合されている。光ファイバー32は、中空回転軸46に挿通されてさらにレーザ光中継器42まで延びている。
【0026】
中空回転軸46は、ベアリング47を介して駆動部本体48に水平に支持されている。駆動部本体48の上には、ブラケット49を介して駆動源であるサーボモータ50が設置されている。このサーボモータ50の回転軸51にはタイミングプーリ52が取り付けられている。中空回転軸46にもタイミングプーリ53が取り付けられており、タイミングプーリ52とタイミングプーリ53には、タイミングベルト54が巻き掛けられている。サーボモータ50の回転は、タイミングベルト54を介して中空回転軸46に伝達され、この中空回転軸46がフレキシブルシャフト30を回転させることになる。
【0027】
光ファイバー32の端末部は、レーザ出力側の光ファイバーコネクタ55によりレーザ光中継器42と接続されている。このレーザ光中継器42は、中空の本体部56を含む。このレーザ光中継器42の本体部56の内部には、組レンズ57、57が組み込まれている。レーザ出力側の光ファイバーコネクタ55は、ベアリング58によって回転自在に支持されており、光ファイバー32とともに回転することができるようになっている。他方、レーザ光中継器42の本体部56のレーザ入力側には、光ファイバーコネクタ59を介して光ファイバー60が接続されている。この光ファイバー60は、数10メートル先のレーザ発振ユニット140に接続され、レーザ溶接用レーザ光の供給を受けるようになっている。
【0028】
次に、図4は、レーザ溶接ヘッド12を二重管1の管内で位置決めする溶接ヘッド位置決め固定機構16の構成を示す。
この溶接ヘッド位置決め固定機構16は、位置決めストッパ62と、二重管1の管内で伸縮し位置決めストッパ62を固定するパッド付きリンク機構64と、このパッド付きリンク機構64の伸縮動作を実現するねじ機構とから構成されている。
【0029】
位置決めストッパ62は、レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21が着脱自在に嵌合するように、すり鉢状の穴部65を有している。位置決めストッパ62は、回転軸66を介してねじ軸67と同一軸線上に連結されている。このねじ軸67には雄ねじが切られており、この雄ねじにはナット部材68が螺合するようになっている。ナット部材68には、ねじ軸67を軸中心にして等ピッチに複数のパッド付きリンク機構64が放射状に配設されている。この実施形態では、パッド付きリンク機構64は、第1リンク部材69、第2リンク部材70、固定パッド71とから構成されている。第1リンク部材69の一端部は、ナット部材68にピンを介して連結され、他端部は第2リンク部材69の中間位置にピンを介して連結されている。第2リンク部材69の一端部は、位置決めストッパ62にピンを介して連結され、他端部は固定パッド71にピンを介して連結されている。
【0030】
位置決めストッパ62とねじ軸67を連結している回転軸66の端部には、逆ねじの雌ねじ72が形成されており、また、雌ねじ72の奥には、図示しない六角レンチなどの工具が嵌合する6角穴が形成されている。
【0031】
このような溶接ヘッド位置決め固定機構16は、リンク機構64が畳まれた状態で二重管1の管内に搬入される。レーザヘッド位置決め固定機構16を所定の位置に置いてから、図示しない六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、雌ねじ72奥の六角穴に嵌合させる。そして、六角レンチをつかって回転軸66を正回転の方向に回していくと、ねじ軸67もいっしょに回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68は図4において矢印方向へ徐々に移動する。そうすると、ナット部材68は第1リンク部材69と第2リンク部材70を二重管1の半径方向に押し出すので、固定パット71が二重管1の内管3の内周面に押し付けられる。回転軸66を強く締めていくことで、位置決めストッパ62の位置を二重管1の管軸上に固定することができる。
【0032】
本実施形態によるレーザ溶接装置は、以上のように構成されるものであり、次に、二重管の内管を突き合わせ溶接するレーザ溶接の工程との関連において、その作用並びに効果について説明する。
まず、図2において、上述したように、一方の二重管1Aの管内の端部には、他方の二重管1Bをレーザ溶接する前に、あらかじめレーザヘッド位置決め固定機構16が所定の位置に固定されている。
【0033】
そこで、一方の二重管1Aの端部には、これから溶接する他方の二重管1Bの端部を突き当てた状態にしておく。他方の二重管1Bには溶接する端部とは反対側の端部から、レーザ溶接ヘッド12を入れ、接続されているホース25を押し込みながらレーザ溶接ヘッド12を前進させる。
【0034】
レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21を、レーザヘッド位置決め固定機構16の位置決めストッパ62まで到達させ、ヘッド先端部21を位置決めストッパ62の穴部65に嵌合させる。この穴部65は、ヘッド先端部21と同じテーパをもっているので、ヘッド先端部21が穴部65に完全に嵌合すると、管軸中心に回転可能な状態でのレーザ溶接ヘッド12の位置決めが完了する。このとき、レーザ溶接ヘッド12の管軸方向の位置についても同時に位置決めが完了し、レーザ溶接ヘッド12は、内管3の溶接部にちょうどレーザ光Lが照射される位置にある。また、レーザ光Lのピント調整についても、位置決めストッパ62にヘッド先端21を嵌合させた状態にあるレーザ溶接ヘッド12から照射されるレーザ光は内管3の内周面でピントを結ぶように事前に調整されている。
【0035】
次に、図2において、光ファイバー32を通してレーザ溶接ヘッド12に導かれたレーザ光は、非球面反射ミラー36で反射して、直角に方向を変えてレーザ溶接ヘッド本体20の側面に開口するノズル口37から二重管1の内管3内面の被溶接部に向けて照射される。
【0036】
二重管1の内管3を突き合わせ溶接するためには、レーザ溶接ヘッド12を回転させる必要がある。
図3において、ヘッド回転駆動機構14のサーボモータ50によって、中空回転軸46を回転駆動することにより、フレキシブルシャフト30を回転させる。このフレキシブルシャフト30は、回転トルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達し、レーザ溶接ヘッド12を回転させる。このとき、ヘッド先端部21は、同じテーパ形状をもつ位置決めストッパ62に嵌合して支持された状態で回転するので、振れを確実に防止することができ、レーザ光はピントの合った状態で内管3の溶接部を一周するように照射される。
【0037】
ところで、レーザ溶接ヘッド12を通す二重管1は、真っ直ぐな管である以外に、曲がっている二重管1である場合がある。このような曲がった二重管1の場合にも次のようにして、レーザ溶接ヘッド12を円滑に通過させることができる。
【0038】
レーザ溶接ヘッド12は、ヘッド本体20とヘッド先端部21だけからなり、ヘッド回転駆動用のモータや、ヘッド固定機構は付属していないため、短くかつ小型のヘッド構成とすることができる。しかも、レーザ溶接ヘッド12は、蛇腹管23を介して柔軟性に富み曲がり易いホース25、フレキシブルシャフト30、光ファイバー32の束体と接続されているので、二重管1の曲がった部分を容易に通過させることができる。
【0039】
また、回転トルクをヘッド回転駆動機構14からレーザ溶接ヘッド12に伝達するフレキシブルシャフト30は、曲がったままでも捻られながら数m先のレーザ溶接ヘッド12に蛇腹管23を介して回転トルクを伝達させることが可能である。そして、フレキシブルシャフト30の中を通っている出力側の光ファイバー32もいっしょに捻られるが、図3に示すように、光ファイバーコネクタ55をベアリング58で回転自在としてレーザ光中継部42に接続しているので、光ファイバー32は捻られてもフリーに回転できるので問題は生じないようになっている。
【0040】
また、フレキシブルシャフト30とホース25の接続部では、第2ジョイント28の内周面はすべり面になっており、フレキシブルシャフト30の接続されている中間ジョイント27が回転自在に嵌合するようになっている。また、第2ジョイント28の先端側の端面は、中間ジョイント27のフランジ部27aが摺動するすべり面になっているので、フレキシブルシャフト30が回転してもホース25の方は捻られることがない。
【0041】
こうして、二重管1の内側管3に対するレーザ溶接が終わったら、フレキシブルシャフト30を収容しているホース25を引っ張ってレーザ溶接ヘッド12を二重管1の管外に回収することになる。レーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21は、位置決めストッパ62のテーパ付きの穴部65に嵌合しているだけなので、ヘッド先端部21を位置決めストッパ62から簡単に離脱させることができる。
【0042】
レーザ溶接ヘッド12をホース25ごと回収する過程では、二重管1が曲がった管である場合でも、上述したように、曲がり部分を円滑に通過させることができるので、容易に回収することができる。
【0043】
次に、レーザ溶接ヘッド12の回収が終了した後は、レーザヘッド位置決め固定機構16を管外に回収することになる。図5は、レーザヘッド位置決め固定機構16を管外に回収するための回収機構18を示す。この実施形態では、フレキシブルシャフト78が内部に同軸に収容されたガイド管80を二重管1内に通して、レーザヘッド位置決め固定機構16を回収する。
【0044】
ガイド管80の先端には、端末金具82が取り付けられている。フレキシブルシャフト78の先端には、テーパ形状の先端部83が取り付けられ、この先端部83は端末金具82に回転自在に支持されている。先端部83は、図2に示したレーザ溶接ヘッド12のヘッド先端部21と同様に、位置決めストッパ62の穴部65に着脱自在に嵌合するようになっている。そして、先端部83の先には、逆ねじにねじを切ってある雄ねじ84が同軸に固着されており、この雄ねじ84は、レーザヘッド位置決め機構18の回転軸66にある逆ねじの雌ねじ72に螺合するようになっている。なお、参照番号81は、先端部83を案内する球体を示す。
【0045】
フレキシブルシャフト78の末端は、図3に示した回転駆動機構14に連結される。レーザヘッド位置決め固定機構16を回収するときには、図5において、フレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入する。先端部83の雄ねじ84は回転軸66の雌ねじ72と同様に逆ねじになっているため、雄ねじ84は、雌ねじ72に締め込まれていき、回転軸66とフレキシブルシャフト78との連結が確立する。さらにフレキシブルシャフト78を逆回転方向に回していくと、回転軸66とともにねじ軸67が逆回転方向に回転し、ナット部材68は、図5において矢印方向に徐々に移動する。ナット部材68は、第1リンク部材69と第2リンク部材70を介して固定パッド71を引き寄せるので、それまで二重管の内周面に押し付けられて固定パッド71が離れて、レーザヘッド位置決め固定機構16はアンクランプされる。
【0046】
レーザヘッド位置決め固定機構16のアンクランプの後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め固定機構16を円滑に回収することができる。
【0047】
また、光ファイバー32の交換を行う際は、光ファイバー32の取り付け調整作業が発生する。本実施形態では、レーザ溶接ヘッド12と多重溶接ケーブルを蛇腹管23で接続しているので、調整作業の際は蛇腹管23の接続を解除して蛇腹管23を折り畳むことで光ファイバー32を露出させることができるため、作業性が向上する。
【0048】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態によるレーザ溶接装置について、図6並びに図7を参照しながら説明する。
【0049】
この第2実施形態によるレーザ溶接装置では、図6に示すレーザヘッド位置決め固定機構90が用いられている。これ以外のレーザ溶接ヘッド12、回転駆動機構14等の構成は第1実施形態と同様である。
【0050】
このレーザヘッド位置決め固定機構90では、回転軸66とともにねじ軸67を正回転の方向に回転させてナット部材68を図6で矢印方向に移動させて固定し、回転軸66を逆方向に回してナット部材68を矢印方向と逆方向に移動させて固定状態を解除する点は、図4に示したレーザヘッド位置決め固定機構16と同様であるが、リンク機構64と固定パッド71の替わりに、対をなす細長い板ばね92、93を用いて固定力を発生させている点が相違している。
【0051】
図6に示すように、一方の板バネ92の一端はナット部材68に固定されており、この板ばね92の中間部位は位置決めストッパ62の角部分に当たって湾曲し先端部92aが二重管1の内管3の内周面に当接するようになっている。これに対して、他方の板ばね93の一端は、位置決めストッパ62の切欠部62aに固定されている。この板ばね93の中間部位は、ナット部材68に当たって湾曲し先端部93aは二重管1の内管の内周面に当接するようになっている。このような板ばね92、93は対をなし、この実施形態では、図示されていないが周方向に等ピッチで3対が配置されている。
【0052】
以上のようなレーザヘッド位置決め固定機構90によれば、次のようにしてレーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0053】
レーザヘッド位置決め固定機構90を二重管1管内の所定の位置に置いてから、六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、図示しない六角レンチをつかって回転軸66を正回転の方向に回していくと、ねじ軸67もいっしょに回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68が図6において矢印方向へ徐々に移動すると、一方の板ばね92ではその途中が位置決めストッパ62に当たって、先端部92aは二重管1の内管の内周面に押し付けられ、板ばね92の撓みによって固定力を発生する。同じようにして、他方の板ばね93の固定端側にナット部材68がせり込んでいくので、先端部93aは二重管1の内管1内周面に押し付けられ、板ばね93の撓みによって固定力を発生する。このような板ばね92、93を対にして3対が等ピッチで配設されているので、位置決めストッパ62を二重管1の管軸上に固定することができる。
【0054】
こうして、位置決めストッパ62を固定した後は、一方の二重管1の端部に、これから溶接する他方の二重管1の端部を突き当てた状態にしておく。そして、他方の二重管1には溶接する端部とは反対側の端部から、レーザ溶接ヘッド12を入れ、接続されているホース11を押し込みながらレーザ溶接ヘッド12を前進させると、ヘッド先端部21が位置決めストッパ62の穴部65に嵌合し、レーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0055】
レーザ溶接による二重管1の接合が終了した後、レーザヘッド位置決め固定機構90を回収する場合、次のようにして、位置決めストッパ62の固定状態を解除する。
【0056】
図7において、回収用のフレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入する。先端部83の雄ねじ84は回転軸66の雌ねじ72と同様に逆ねじになっているため、雄ねじ84は、雌ねじ72に締め込まれていき、回転軸66とフレキシブルシャフト78との連結が確立する。さらにフレキシブルシャフト78を逆回転方向に回していくと、回転軸66とともにねじ軸67が逆回転方向に回転し、ナット部材68は、図7において矢印方向に徐々に移動する。このナット部材68の移動によって、板ばね92、93の撓み量が少なくなるので、位置決めストッパ62の固定状態が解除される。以後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め機構90を円滑に回収することができる。特に、本実施形態では、固定力の発生と解除を板ばね92、93の撓みを利用しているので、第1実施形態のようにリンク機構を使わずに済むので、レーザヘッド位置決め固定機構90をより小径の二重管に適したものにすることができる。
【0057】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態によるレーザ溶接装置について、図8並びに図9を参照しながら説明する。
【0058】
この第3実施形態によるレーザ溶接装置では、図8に示すレーザヘッド位置決め固定機構100が用いられる。これ以外のレーザ溶接ヘッド12、回転駆動機構14等の構成は第1実施形態と同様である。
【0059】
このレーザヘッド位置決め固定機構100では、ねじ軸67を正回転の方向に回転させてナット部材68を矢印方向に移動させてリンク機構64を伸ばして固定する点は、図4に示したレーザヘッド位置決め固定機構18と同様である。異なる点は、次のような高圧ガス発生装置を利用して固定状態を解除する点にある。
【0060】
図8において、参照番号102は、燃焼反応によって高圧のガスを発生する化学物質と、この化学物質を燃焼反応させるための着火用火薬と、を内蔵するインフレータを示す。このインフレータ102は、例えば、自動車のエアバックシステムでガス発生源として用いられるガス発生装置と同種のものである。
【0061】
本実施形態では、ねじ軸67はシリンダ構造を有しており、このねじ軸67の内部にはプランジャー104が移動自在に同軸に内蔵されている。ねじ軸67の端部には、プランジャー104を作動させるシリンダ室106が形成されている。この場合、インフレータ102は、耐圧ホース107によってねじ軸67の端部と接続されており、インフレータ102で発生した高圧ガスは、耐圧ホース107を通ってシリンダ室106に導入されるようになっている。
【0062】
シリンダ室106側のプランジャー104の端部は、シャーピン108によって固定されている。シリンダ室106に導入された高圧ガスによりプランジャー104が加圧されたときにはシャーピン108が破断するので、プランジャー104は前進して、固定状態が解除されるようになっている。
【0063】
本実施形態では、二重管1の管外からの操作によってインフレータ102の内蔵する着火用火薬に着火するための電気回路が次のように構成されている。
図9において、回収機構18を構成するフレキシブルシャフト78の先端部83やガイド管80、球体81、端末金具82など、これら二重管1の内管3の内周面に接触する可能性のある構成部材の表面は、絶縁体で被覆されており、二重管1の内管3とは電気的に絶縁されている。
【0064】
フレキシブルシャフト78は導電性材料からなるシャフトである。このフレキシブルシャフト78の先端部83の先に設けられた逆ねじの雄ねじ84には図示しない電極が設けられており、この電極とフレキシブルシャフト78とは端末金具82の内部にある図示ない電線により電気的に接続されている。
【0065】
さらに、レーザヘッド位置決め固定機構100では、固定パッド71は絶縁体で被覆されるか、若しくは絶縁体からなり、二重管1の内管3とは電気的に絶縁されている。その替わりに、ねじ軸67およびプランジャー104は、フレキシブルシャフト78と電気的に接続される回路の一部を構成し、電線110を介してインフレータ102の着火用電極であってインフレータ102の本体側面に取り付けられている陽極111と電気的に接続されている。
【0066】
他方、インフレータ102の着火用の他方の電極である陰極112は、陽極111と対をなすようにインフレータ102の本体側面に取り付けられており、この陰極112には、先端が二重管1の内管3の内周面に接触するように、弾性力によって常に押し付けられている板ばね114と接続されており、陰極112、板ばね114、二重管1が着火回路の一部を構成するようになっている。
【0067】
以上のようなレーザヘッド位置決め固定機構100によれば、次のようにしてレーザ溶接ヘッド12を位置決めすることができる。
【0068】
まず、図8において、レーザヘッド位置決め固定機構100を二重管1管内の所定の位置に置いてから、図示しない六角レンチを位置決めストッパ62の穴部65から差し込んで、この六角レンチをつかってプランジャー104を正回転の方向に回していく。この場合、プランジャー104はシャーピン108によりねじ軸67に固定されているので、プランジャー104といっしょにねじ軸67が回転していく。このねじ軸67の回転によって、ナット部材68が図8において矢印方向へ徐々に移動すると、リンク機構64は固定パット71を二重管の内管3の内周面に押し付けていくので、位置決めストッパ62を管軸上に固定することができる。なお、このとき、ねじ軸67の回転とともに、板ばね114が二重管1の内管3の内周面を摺動しながらインフレータ102もいっしょに回ることになる。
【0069】
レーザ溶接による二重管1の接合が終了した後、レーザヘッド位置決め固定機構100を回収する場合、次のようにして、位置決めストッパ62の固定状態を解除する。
【0070】
図9において、レーザヘッド位置決め固定機構100を回収するときには、回収用のフレキシブルシャフト78をゆっくりと逆回転方向に回しながら、その先端部83を位置決めストッパ62の穴部65に挿入し、先端部83の雄ねじ84を雌ねじ72に締め込むことで、プランジャー104とフレキシブルシャフト78との連結を確立することができる。
【0071】
その後、図9において、二重管1の管外からインフレータ102の図示しない着火スイッチを入れると、インフレータ102の着火用電極である陽極111、陰極112間に電流が流れ、内蔵されている火薬に着火することができる。インフレータ102では、ガス発生用の化学物質が燃焼し、発生した高圧ガスは耐圧ホース107を通ってシリンダ室106に噴出し、プランジャー104を前進させる。このプランジャー104は、シャーピン108を破断して前進し、位置決めストッパ62を矢印方向に移動させる結果、ナット部材68と位置決めストッパ62との間を連結しているリンク機構64を強制的に畳ませるので、固定パッド71は二重管1の内管3の内周面から離れることになる。これにより、位置決めストッパ62の固定状態が解除される。
【0072】
以後、フレキシブルシャフト78を引く抜くことで、レーザヘッド位置決め機構100を円滑に回収することができる。特に、本実施形態では、インフレータ102で発生させる高圧ガスを利用して、固定状態を強制的に開放しているので、レーザヘッド位置決め機構100の回収をより容易に確実にすることができる。
【0073】
なお、第2実施形態と同様に、さらにフレキシブルシャフト30を逆回転方向に回していくと、位置決めストッパ62の固定状態を開放することも可能である。
【0074】
第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態によるレーザ溶接装置について、図10乃至図14を参照しながら説明する。
【0075】
この第4実施形態は、図10に示すレーザ溶接ヘッド120を用いて、その回転速度や回転数を検出し、レーザ出力の制御を実行しながら二重管1のレーザ溶接を行うようにした実施の形態である。そこで、まず、図10を参照しながら、レーザ溶接ヘッド120について説明する。
【0076】
この第4実施形態によるレーザ溶接ヘッド120は、ヘッド本体20と、このヘッド本体20に連結されたヘッド先端部122と、を有している。この実施形態では、ヘッド本体20は、図2に示した第1実施形態のレーザ溶接ヘッドと同じ構成のものである。ヘッド本体20の後部には、継手部22が連結されており、この継手部22には、金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ホース連結部24を介してホース25が接続されている。ホース25の内部にあるフレキシブルシャフト30、光ファイバー32はレーザ溶接ヘッド本体20と接続されている。
【0077】
ヘッド先端部122は、先端に向かって縮径していくテーパ形状を有している。このヘッド先端部122は、図4に示すレーザヘッド位置決め固定機構16の位置決めストッパ62に着脱可能に嵌合するようになっている。
【0078】
この第4実施形態では、ヘッド先端部122は、次のようにして、ヘッド本体20に回転自在に連結されている。ヘッド本体20の端面からは、同軸に支持軸123が突き出ている。ヘッド先端部122にはその後側端面に開口するように軸穴124が形成されている。支持軸123は軸穴124に挿入され、支持軸123は軸受125によって回転自在に支持されている。
ヘッド本体20の端面とヘッド先端部122の後側端面との間には、所定の間隔の隙間が確保されている。そして、ヘッド先端部120の後側端面には、磁気パターンが形成されている磁気シール126が貼り付けられている。この磁気シール126には、磁気パターンが所定のピッチで周方向に並ぶように形成されている。他方、レーザ溶接ヘッド本体20の端面には、磁気センサ128が埋め込まれており、この磁気センサ128で磁気パターンを検出するようになっている。
【0079】
磁気センサ128には、センサに電気を供給する給電ライン上に検出信号を載せることが可能なセンサが用いられており、給電ラインは、次のようなラインによって確立される構成となっている。すなわち、フレキシブルシャフト30からレーザ溶接ヘッド本体20に至る経路が陽極側の経路となっており、一方陰極側は、ヘッド先端部122からレーザヘッド位置決め機構16の位置決めストッパ62、固定パッド71を経て二重管1に至る経路である。
【0080】
以上のように構成されるレーザ溶接ヘッド120では、ヘッド先端部122が位置決めストッパ62の穴部65に完全に嵌合すると、レーザ溶接ヘッド120は管軸を中心に回転可能な状態で位置決めされる。フレキシブルシャフト30によって回転トルクが伝達されることで、ヘッド先端部122に組み込まれた軸受125に支持されながら、レーザ溶接ヘッド本体20は回転することができる。
【0081】
レーザ溶接ヘッド本体20に回転トルクを伝える過程で、フレキシブルシャフト30は捻れるので、レーザ溶接を実施している間、レーザ溶接ヘッド本体20を一定の回転速度で回転させることは困難であり、フレキシブルシャフト30のねじれ特性により、レーザ溶接ヘッド本体20の回転速度は増減することになる。
【0082】
本実施形態のレーザ溶接ヘッド120では、図2の第1実施形態によるレーザ溶接ヘッド12と異なり、ヘッド先端部122は位置決めストッパ62に対して固定されており、ヘッド本体20は、軸受125で支持されて回転する。このため、回転時にはヘッド先端部122の位置決めストッパ62に対する滑りが発生しないので、レーザ溶接ヘッド本体20の回転速度と回転数を磁気センサ128で正確に検出することができる。そこで、検出した回転速度や回転数などの回転状態ついての情報を利用して、以下のように、レーザ光の出力を制御している。
【0083】
ここで、図11は、二重管1の溶接部に照射するレーザ光の出力を制御する制御装置のブロック構成図である。
【0084】
図11において、ヘッド先端部122に配置されている磁気パターン126を検出する度に、磁気センサ128はON/OFF信号を交互に出力する。この磁気センサ128には、信号を増幅するアンプ回路130が内蔵されており、ON/OFF信号は、DCパワーライン132に合流して、二重管1の管外に設置されている制御装置134に送信される。
【0085】
この制御装置134には、DCパワーライン132から磁気センサ128の出力信号をON/OFFデジタル信号135に変換して分離するA/D変換器136と、デジタル/インプット回路137を介して取り込んだON/OFFデジタル信号を処理し、レーザ溶接ヘッド120の回転速度、回転数をリアルタイムに演算し、その結果に基づいてレーザレーザ発振器140にレーザ出力の指令値を指令するコンピュータ138を備えている。コンピュータ138には、ヘッド回転駆動機構14のサーボモータ50を制御するサーボモータ制御部142が接続され、回転速度、回転数を指令する。また、コンピュータ138には、レーザ発振器140、レーザ出力状態を表示するとともに、照射操作するための操作・表示器143が接続されている。
【0086】
次に、図12乃至図14を参照しながら、二重管1を溶接するときに行うレーザ出力制御の内容について説明する。
まず、図12(a)は、レーザ溶接ヘッド120のヘッド本体20が回転しているときに、磁気センサ128の出力信号から得られるヘッド回転速度の時間的変化を示すグラフで、図12(b)はヘッド本体20が1回転する時間間隔を表すグラフである。
上述したように、サーボモータ50の回転トルクはフレキシブルシャフト30によってヘッド本体20に伝達されるので、フレキシブルシャフト30のねじれや伸びの影響を受けて、サーボモータ50を一定の回転数で回転させた場合でも、実際のヘッド回転速度には変動が生じることになる。このようなヘッド回転速度の変動は、一定時間連続回転を行い十分に回転が安定した状態になると、フレキシブルシャフト30固有のねじれ特性を反映したパターンでの増減を繰り返す。
【0087】
本実施形態のレーザ溶接ヘッド120では、ヘッド本体20が軸受125で支持されながら回転する。通常、位置決めストッパ62に対するヘッド先端部122の滑りは発生しないので、ヘッド回転速度を正確に計測できると考えられる。この実施形態では、正確な計測を期すために、次のようにしてヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間で実際に滑りが生じていないことを確認する。
【0088】
まず、サーボモータ50を所定の回転速度で回転させ、フレキシブルシャフト30により回転トルクが伝達されたヘッド本体20は連続回転している状態とする。このときのサーボモータ50の回転速度は、二重管2にレーザ溶接を実際に実施するときの最適な周速度に設定される。
【0089】
次に、ヘッド本体20を一定時間連続回転させ、フレキシブルシャフト30のねじれを伴う回転状態が十分に安定するのを待つ。
【0090】
フレキシブルシャフト30が安定して回転するようになったら、磁気センサ128で磁気パターン126を検出して得られたON/OFFデジタル信号135に基づいて、コンピュータ138によりヘッド回転速度を検出する。この場合、磁気パターン126の濃淡バターン間のピッチ間隔は、ON/OFFデジタル信号135では、ONとOFFの時間間隔に対応しているので、ONとOFFの時間間隔を計測し、またON信号をカウントすることでレーザ溶接ヘッドの回転数を計測することができる。このヘッド回転数がサーボモータ50の回転数とがずれなく一致した場合は、ヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間ですべりが生じていないことを確認できたことになる。
【0091】
一方、サーボモータ50の回転数が計測したヘッド回転数を上回っている場合は、ヘッド先端部122と位置決めストッパ62の間にすべりが生じている場合である。この場合は、ヘッド先端部122が位置決めストッパ62に完全に嵌合していないなどが原因であると考えられるので、サーボモータ50の回転数とヘッド回転数が一致するまで、ヘッド先端部122の押し込み状態を調整することになる。
【0092】
以上のような確認を経て、回転が十分に安定した状態においては、図12(a)に示されるように、ヘッド回転速度が変化するパターンは、レーザ溶接ヘッド本体20の1回転と同期して、ほぼ同じ増減パターンの繰り返しとなっている。
【0093】
このようにヘッド回転速度は一定のパターンで変化するので、レーザ溶接ヘッド本体20が一回転する間に照射されるレーザ光の出力が一定であると、ヘッド回転速度の変動に応じてレーザエネルギーにはむらが生じ、高品質の溶接を行えないことになる。
【0094】
そこで、本実施形態では、次のようにして、磁気センサ128で検出したヘッド回転速度と回転数に基づいて、コンピュータ138によってレーザ出力を補正する処理を行っている。
まず、磁気センサ128で磁気パターン126を検出して得られたON/OFFデジタル信号135では、ONとOFFの時間間隔が磁気パターン126のピッチ間隔に相当している。ONとOFFの時間間隔を計測し、また、ON信号をカウントすることで、ピッチ間の回転速度をv(t)、回転角度をθとして、回転角度位置θ(t)が演算される。
【0095】
ここで、レーザ出力の時間的変化をp(t)とすると、一定距離L間に照射するレーザ照射エネルギー(p(t)/L)が一定となるように、すなわち、図13において、
v(θ)×p(θ)を0°から360°まで積分したものが一定(定数K)となるようなレーザ出力のパターンp(t)が演算される。以上のようにして求めたp(t)は、図14に示すようになる。
【0096】
ヘッド回転速度の変化を示す図12と、レーザ出力の時間的変化を示す図14とを対照させると諒解されるように、ヘッド回転速度が増加する区間ではレーザ出力が増加し、ヘッド回転速度が減少する区間では、レーザ出力は減少するようになっている。
【0097】
そして、このレーザ出力パターンをベースに、実際のリアルタイムで計測したピッチ間の実回転速度でレーザ出力値を補正してレーザ照射を実施する。
【0098】
このようにレーザ出力の制御が行われるので、どのタイミングでレーザ光の照射を行うかも重要になってくる。
そこで、レーザ出力の制御と同時に、レーザ発振器140でのレーザシャッタ開のタイミングとレーザシャッタ閉のタイミングが次のように制御される。
【0099】
レーザ発振器140のレーザシャッタを開とするポイント、すなわち、レーザ溶接開始のポイントは、図14において、ヘッド回転速度が最も安定している区間の中から、例えばt1の時点が選定される。レーザシャッタを閉とするタイミングは、レーザ溶接ヘッド120が360°回転し1パスのレーザ周溶接をするのに必要なON/OFFデジタル信号135のカウント数とする。
【0100】
以上のようなレーザ出力の制御とレーザ光照射のタイミング調整を行いながら、二重管1の内管内周の溶接部に一周だけレーザ溶接が実施される。レーザエネルギー量は、ヘッド回転速度の変動に関わらず一定に保つことができるので、高品位のレーザ溶接を実施することが可能になる。
【0101】
第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態によるレーザ溶接装置について、図15を参照しながら説明する。
これまで説明した第1乃至第4形態によるレーザ溶接装置は、レーザ溶接ヘッド12にフレキシブルシャフト30を用いて回転トルクを伝動する構成である。これに対して、第5実施形態によるレーザ溶接装置は、フレキシブルシャフト30の替わりに、中空の自在継手を利用してレーザ溶接ヘッド12に回転トルクを伝動する構成にした実施形態である。なお、この第5実施形態では、図2と同一の構成要素には、同一の参照符合を付して詳細な説明は省略する。
【0102】
図15において、レーザ溶接ヘッド12のヘッド本体20の後部に継手部22を介して金属製の蛇腹管23の先端部が接続されている。この蛇腹管23の後端部には、ジョイント144を介して次のような自在継手が接続されている。
【0103】
この実施形態による自在継手は、円筒形状の節部材145を一単位の関節として、複数の節部材145を連続的に繋ぎあわせて二重管1の管外まで延びる自在継手が構成されている。節部材145の両端部には、2つ一組の方形片が軸方向に突き出た継手部146a、146bが形成されている。隣り合う節部材145にあっては、継手部146aと継手部146bはピンジョイント148によって連結されている。そして、ピンジョイント148による継手部146aと継手部146bの連結軸は、交互に90°ずつ偏位するようになっているので、自在継手全体としては任意の方向に曲がることが可能になっている。
【0104】
このような節部材145をつなぎ合わせてなる自在継手の内部には、不活性ガスをレーザ溶接ヘッド本体20に送るガス供給パイプ150が収容されている。ジョイント144は、外周部に突起を有する竹の子形のジョイント151を有し、ガス供給パイプ150の先端は圧入により接続されている。さらに、ガス供給パイプ150の内部にはレーザ光をヘッド本体20に導く光ファイバー32が組み込まれている。
【0105】
以上のように構成される第5実施形態によれば、曲がった二重管1の場合にもレーザ溶接ヘッド12を円滑に通過させ、レーザ溶接を実施することができる。
【0106】
また、レーザ溶接ヘッド12は、ヘッド筐体20とヘッド先端部12からなり、ヘッド回転駆動用のモータや、ヘッド固定機構が付属していないため、短く小型のヘッド構成とすることができる上に、節部材145を連続してつなげた自在継手は、二重管の曲がった部分を通過できるとともに回転トルクをレーザ溶接ヘッド12に伝達することができる。しかも、フレキシブルシャフト30と異なり、ねじれが生じないので、ヘッド回転速度の変動を小さくすることができる。
【0107】
以上、本発明によるレーザ溶接装置について、好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、高速増殖炉の蒸気発生器等で使用される二重伝熱管だけでなく、二重管あるいは管をつなげていく溶接一般に適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1…二重管、2…外管、3…内管、10…レーザ溶接装置、12…レーザ溶接ヘッド、13…多重ケーブル、16…レーザヘッド位置決め固定機構、18…回収装置、20…ヘッド本体、21…ヘッド先端部、23…蛇腹管、25…ホース、30…フレキシブルシャフト、32…光ファイバー、42…レーザ光中継器、46…中空回転軸、50…サーボモータ、62…位置決めストッパ、64…リンク機構、65…穴部、67…ねじ軸、71…固定パッド、78…フレキシブルシャフト、80…ガイド管、82…端末金具、83…先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管と管の端部を突き合わせ、前記管の内部からその内周面にレーザ光を照射して突き合わせ溶接を行うレーザ溶接装置において、
レーザ光を前記管の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部とを有するレーザ溶接ヘッドと
前記管の管外に設置され、前記レーザ溶接ヘッドを回転駆動する回転駆動装置と、
前記回転駆動装置で発生したトルクを前記レーザ溶接ヘッドに伝達する可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ発振器からのレーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、を有する可撓性の多重溶接ケーブルと、
前記レーザ溶接ヘッドの先端部が着脱自在に嵌合し前記レーザ溶接ヘッドの管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパと、前記レーザ溶接ヘッドの嵌合した前記位置決めストッパを管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置と、
を具備することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記位置決め固定装置の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、ナット部材が螺合するねじ軸と、
前記ねじ軸の回転による前記ナット部材の直線移動により前記管の半径方向に伸縮し、前記位置決めストッパを固定するリンク機構と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記位置決め固定装置の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、ナット部材が螺合するねじ軸と、
前記ねじ軸の回転によりナットが一の方向に直線移動すると前記管の内面に押し付けられるように撓み前記位置決めストッパを固定する複数のばね板と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記位置決め固定機構の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、内部にプランジャーを内蔵しナット部材が螺合するシリンダ型のねじ軸と、
前記ねじ軸の回転によるナットの直線移動により前記管の半径方向に伸縮し、前記位置決めストッパを固定するリンク機構と、
前記ねじ軸に高圧ガスを供給し、前記プランジャーを前進させて前記リンク機構の固定を解除する高圧ガス発生装置と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記固定機構の前記回転軸に形成された逆ねじの雌ねじに螺合する逆ねじの雄ねじを先端に有し、前記位置決めストッパと着脱自在に嵌合するテーパー形状の先端部と、前記先端部が取りつけられた可撓軸と、を有する、前記位置決め固定機構を回収するための回収装置をさらに備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれに記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記レーザ溶接ヘッドのテーパー形状の先端部は、ヘッド本体に回転自在に支持され、前記先端部の後端面と前記ヘッド本体の前端面との間には隙間が形成され、前記先端部の後端面には所定の磁気パターンが形成され、前記ヘッド本体の前端面には当該ヘッド本体の回転速度を検出するセンサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記レーザ溶接ヘッドのヘッド本体の回転速度の変動に応じて変化するレーザ出力の変化パターンに基づき、前記ヘッド本体が1回転する間に、レーザエネルギ密度の一定のレーザ光が溶接部に照射されるように、レーザ発振器のレーザ出力を補正するレーザ出力制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記レーザ出力制御手段は、前記ヘッド本体の回転速度が安定している区間においてレーザ光が照射されるように、レーザ光照射のタイミングを調整する手段を有することを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記多重溶接ケーブルの一端と前記レーザ溶接ヘッドとは、中空の蛇腹管を介して接続されており、前記多重溶接ケーブルの一端から前記光ファイバーが前記蛇腹管の中を通って前記溶接ヘッドのヘッド本体と接続され、また、前記蛇腹管と前記多重溶接ケーブルのフレキシブルシャフトは共に回転自在に接続されたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記多重溶接ケーブルは、中空で可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導き、前記フレキシブルシャフトに挿通される光ファイバーと、前記フレキシブルシャフトを収容し前記フレキシブルシャフトとの間に不活性ガスの通路を形成する外側可撓管と、からなることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記多重溶接ケーブルは、自在継手の円筒形状の節部材が連続して接続されたフレキシブルシャフトと、レーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、前記光ファイバーを収容し前記光ファイバーとの間に不活性ガスの通路を形成する前記内側可撓管と、からなることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【請求項1】
管と管の端部を突き合わせ、前記管の内部からその内周面にレーザ光を照射して突き合わせ溶接を行うレーザ溶接装置において、
レーザ光を前記管の内周面に照射するレーザ光学系とテーパー形状の先端部とを有するレーザ溶接ヘッドと
前記管の管外に設置され、前記レーザ溶接ヘッドを回転駆動する回転駆動装置と、
前記回転駆動装置で発生したトルクを前記レーザ溶接ヘッドに伝達する可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ発振器からのレーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、を有する可撓性の多重溶接ケーブルと、
前記レーザ溶接ヘッドの先端部が着脱自在に嵌合し前記レーザ溶接ヘッドの管軸方向の位置を位置決めする位置決めストッパと、前記レーザ溶接ヘッドの嵌合した前記位置決めストッパを管軸上に固定する固定機構と、を有する位置決め固定装置と、
を具備することを特徴とするレーザ溶接装置。
【請求項2】
前記位置決め固定装置の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、ナット部材が螺合するねじ軸と、
前記ねじ軸の回転による前記ナット部材の直線移動により前記管の半径方向に伸縮し、前記位置決めストッパを固定するリンク機構と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項3】
前記位置決め固定装置の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、ナット部材が螺合するねじ軸と、
前記ねじ軸の回転によりナットが一の方向に直線移動すると前記管の内面に押し付けられるように撓み前記位置決めストッパを固定する複数のばね板と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項4】
前記位置決め固定機構の固定機構は、
前記位置決めストッパと回転軸を介して連結され、内部にプランジャーを内蔵しナット部材が螺合するシリンダ型のねじ軸と、
前記ねじ軸の回転によるナットの直線移動により前記管の半径方向に伸縮し、前記位置決めストッパを固定するリンク機構と、
前記ねじ軸に高圧ガスを供給し、前記プランジャーを前進させて前記リンク機構の固定を解除する高圧ガス発生装置と、
からなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項5】
前記固定機構の前記回転軸に形成された逆ねじの雌ねじに螺合する逆ねじの雄ねじを先端に有し、前記位置決めストッパと着脱自在に嵌合するテーパー形状の先端部と、前記先端部が取りつけられた可撓軸と、を有する、前記位置決め固定機構を回収するための回収装置をさらに備えたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれに記載のレーザ溶接装置。
【請求項6】
前記レーザ溶接ヘッドのテーパー形状の先端部は、ヘッド本体に回転自在に支持され、前記先端部の後端面と前記ヘッド本体の前端面との間には隙間が形成され、前記先端部の後端面には所定の磁気パターンが形成され、前記ヘッド本体の前端面には当該ヘッド本体の回転速度を検出するセンサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項7】
前記レーザ溶接ヘッドのヘッド本体の回転速度の変動に応じて変化するレーザ出力の変化パターンに基づき、前記ヘッド本体が1回転する間に、レーザエネルギ密度の一定のレーザ光が溶接部に照射されるように、レーザ発振器のレーザ出力を補正するレーザ出力制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項6に記載のレーザ溶接装置。
【請求項8】
前記レーザ出力制御手段は、前記ヘッド本体の回転速度が安定している区間においてレーザ光が照射されるように、レーザ光照射のタイミングを調整する手段を有することを特徴とする請求項7に記載のレーザ溶接装置。
【請求項9】
前記多重溶接ケーブルの一端と前記レーザ溶接ヘッドとは、中空の蛇腹管を介して接続されており、前記多重溶接ケーブルの一端から前記光ファイバーが前記蛇腹管の中を通って前記溶接ヘッドのヘッド本体と接続され、また、前記蛇腹管と前記多重溶接ケーブルのフレキシブルシャフトは共に回転自在に接続されたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接装置。
【請求項10】
前記多重溶接ケーブルは、中空で可撓性のフレキシブルシャフトと、レーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導き、前記フレキシブルシャフトに挿通される光ファイバーと、前記フレキシブルシャフトを収容し前記フレキシブルシャフトとの間に不活性ガスの通路を形成する外側可撓管と、からなることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【請求項11】
前記多重溶接ケーブルは、自在継手の円筒形状の節部材が連続して接続されたフレキシブルシャフトと、レーザ光を前記レーザ溶接ヘッドに導く光ファイバーと、前記光ファイバーを収容し前記光ファイバーとの間に不活性ガスの通路を形成する前記内側可撓管と、からなることを特徴とする請求項9に記載のレーザ溶接装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−22594(P2013−22594A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156718(P2011−156718)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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