説明

レーザ穴あけ加工方法

【課題】狭ピッチの貫通加工を品質良く実施する。
【解決手段】穴の外周に沿ってレーザビーム20を旋回させることにより、レーザビームより大きな穴16をあけるレーザ穴あけ加工に際して、レーザビーム20を所定回数旋回したら、当該穴の加工を所定時間休止し、再び所定回数旋回する工程を、少なくとも1回行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴の外周に沿ってレーザビームを旋回させることにより、レーザビーム径より大きな穴をあけるレーザ穴あけ加工方法に係る。
【背景技術】
【0002】
図1に示す如く、ガラス繊維13入りの絶縁樹脂12の表裏両面に、導電体である銅箔14が被覆された、厚み0.1〜0.4mm程度のプリント配線基板(PCB)10に、直径200〜300μm程度の貫通穴をあける際、従来は、数値制御により機械的なドリル(メカドリルと称する)を制御する機械式工法が一般的に用いられている。
【0003】
一方、近年、プリント配線基板の高密度化及び小型化に伴い、直径100μm以下の小径の貫通穴の要求が高まっている。しかしながら、このような小径の貫通穴をメカドリルで開けると、ドリルビットが2000穴程度で破損し、短寿命でランニングコストが高くなるため、直径100μm程度が量産用途の限界であり、より小径加工の工法が望まれている。又、小径化に伴い位置精度が要求されるが、ドリルビットの場合、±50μm程度で、±10μm以下という要求精度を満足できない。
【0004】
これは、特に、図2(A)に示すように、リードを持たないフリップチップ(FC)6が、図2(B)に示すように、半田ボール8を介してPCB10に直付けされるFC用PCBの場合に問題となる。即ち、FC用PCBにおいては、図3に拡大して示す如く、貫通穴16の直径D=75μm程度、貫通穴16の間隔P=150μm程度が要求される。
【0005】
一方、レーザビームを用いて貫通穴をあける方法も開発されており、例えばUVレーザで貫通加工する場合は、(1)貫通穴16の穴径Dに相当するビーム径(スポット径)のレーザビームを、例えば10kHzの固定周波数で連続照射する、いわゆるバースト工法と、(2)図4に示す如く、貫通穴16の穴径より小さいビーム径(スポット径)のレーザビーム20で旋回軌跡を描きながら所望の穴径Dの加工を行なう、いわゆるトレパニング工法(特許文献1、2参照)がある。図において、22は、例えばfθレンズでなる加工レンズ、24は加工ヘッド、26は、PCB10を固定するチャックプレートである。
【0006】
【特許文献1】特開2000−263263号公報
【特許文献2】特開2004−87879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、両工法共、小径貫通孔16のピッチPが狭まると、図5に示す如く、熱影響により、穴16間の絶縁樹脂12Aが破損して、崩れや欠けが発生するという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、狭ピッチの貫通加工を品質良く実施することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、穴の外周に沿ってレーザビームを旋回させることにより、レーザビーム径より大きな穴をあけるレーザ穴あけ加工方法において、レーザビームを所定回数旋回したら、当該穴の加工を所定時間休止し、再び所定回数旋回する工程を、少なくとも1回行なうことにより、前記課題を解決したものである。
【0010】
本発明は、又、前記レーザビームを所定回数旋回したら、当該穴の加工を所定時間休止する工程を、複数回繰り返すようにしたものである。
【0011】
本発明は、又、前記レーザビームとして、波長が400nm以下のパルスレーザを用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁樹脂に対する熱影響を緩和させ、狭ピッチの貫通加工を品質良く実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
貫通穴を形成するためには、銅箔層(導電層)の穴あけが必要となる。銅箔14をレーザビーム20により直接加工するためには、吸収率の高い400nm以下の波長(例えば355nm)を持つ高調波固体レーザ(UVレーザ)が適する。第3高調波固体レーザが望ましいが、第4高調波や第5高調波でも構わない。貫通穴16の品質を守るためには、表面銅箔の盛り上がりや飛散物を少なくし、開口率を高くする必要がある。実験の結果、表層銅箔14の厚みが9μm、絶縁樹脂12の厚みが0.3mm、裏面銅箔14の厚みが9μmのPCB10に対して、穴径D=75μmの貫通穴16を穴ピッチP=150μmで形成する場合、ビーム径(スポット径)は、熱影響を避けるため直径50μm以下、パルスエネルギは、銅箔及びガラス材の加工性を良くするため、加工面におけるエネルギ密度を30J/cm2以上とすることが望ましいことが分かった。エネルギが低いと、図6に例示する如く、絶縁樹脂12内のガラス繊維13の先端が、貫通穴16内に突出してしまう。
【0015】
上記エネルギ密度を実現するため、レーザビーム20のスポット径を例えば直径30μmに絞り、例えば外径75μmの貫通穴16を形成する場合は、外周が75μmとなるよう、旋回軌跡でトレパニング加工する。
【0016】
具体的には、図7に示す如く、ある穴Aに対してレーザビームを1旋回(2旋回でも可)したら、別の穴Bの加工を行ない、一定時間(例えば0.2〜1秒)を空けた後、再び当該穴Aを1旋回(2旋回でも可)して加工する。図8に示す如く、この方法を所定回数繰り返すことで、絶縁樹脂12に対する熱影響を緩和させ、狭ピッチの貫通加工を品質良く実施できる。0.3mm厚のPCBの場合、1穴貫通するのに、10回程度の繰り返しを行なうと良い。
【0017】
ここで、紫外線(UV)領域の波長を有するレーザビームとしては、Nd:YAGレーザの第3高調波の他、Nd:YAGレーザの第4若しくは第5高調波を用いることができる。又、Nd:YAGレーザの代わりにYLFレーザやYVO4レーザを用いても良い。又、KrFエキシマレーザやXeClエキシマレーザの基本波を用いても良い。
【0018】
なお、前記実施形態においては、銅箔が加工されていたが、加工対象はこれに限定されず、アルミニウム箔や金箔等、他の金属箔も同様に加工できる。加工対象のPCBもFC用に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】加工対象であるプリント配線基板の構成を示す断面図
【図2】同じく(A)フリップチップの底面図及び(B)基板に取付けた状態を示す断面図
【図3】同じくフリップチップ用基板の要部拡大平面図
【図4】トレパニング工法を示す(A)断面図及び(B)平面図
【図5】本発明が解決すべき課題を示すプリント配線基板の断面図
【図6】同じく他の問題を示すプリント配線基板の断面図
【図7】本発明の実施形態の加工方法を示すタイムチャート
【図8】同じく加工状態を示すプリント配線基板の断面図
【符号の説明】
【0020】
10…プリント配線基板(PCB)
12…絶縁樹脂
14…銅箔
16…貫通穴
20…レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴の外周に沿ってレーザビームを旋回させることにより、レーザビーム径より大きな穴をあけるレーザ穴あけ加工方法において、
レーザビームを所定回数旋回したら、当該穴の加工を所定時間休止し、再び所定回数旋回する工程を、少なくとも1回行なうことを特徴とするレーザ穴あけ加工方法。
【請求項2】
前記レーザビームを所定回数旋回したら、当該穴の加工を所定時間休止する工程を、複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のレーザ穴あけ加工方法。
【請求項3】
前記レーザビームとして、波長が400nm以下のパルスレーザを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ穴あけ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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