説明

レーダ画像処理装置

【課題】本発明の課題は、目標物の大きさや形状の表示を理想の画像に近づけて、違和感無くオペレータに提供出来るレーダ画像処理装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置において、受信レーダ画像信号をデジタル信号に変換し、短パルスの受信信号のノイズレベルを超える信号を検出し、長パルスの受信信号と短パルスの受信信号の強度差に準じた定数を加える第1の加算器22と、前記第1の加算器22の出力信号に、該出力信号の一つ前の出力信号に定数を掛けた信号を加える第2の加算器26と、長パルスの受信信号を圧縮処理した長パルス処理信号と、前記第2の加算器26から得られた短パルス処理信号とを合成処理する合成処理器16とを具備することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機等の飛翔体に搭載された2重パルス式航法気象レーダ装置からの受信画像信号を実時間において処理するのに用いるレーダ画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空機等の飛翔体に搭載された気象レーダ装置は、パイロットに対し飛行前方の気象状態を表示器上で知らせる装置であり、安全飛行を行うためのものである。
【0003】
従来の固体化送信器を使用した2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置においては、探知距離(長距離)を得るために必要とする長パルス(パルス幅の広いパルス)チャープ波からの受信エコー信号と、長パルスチャープ波により発生するブラインド距離(短距離)を補う短パルス(パルス幅の狭いパルス)波からの受信エコー信号とを、距離情報により合成し、表示器に表示していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−536627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置は、短パルス波からの受信エコー信号と長パルスチャープ波からの受信エコー信号の強度差が、合成される距離において表示差となって現れ、表示されたレーダ画像に違和感を生じる他、飛翔体の航法にも悪影響を与えることが危惧される。
【0006】
図3(a)は従来のレーダ画像処理装置の受信レーダ画像を示す説明図であり、図3(b)は従来のレーダ画像処理装置の受信信号強度(A−A区間)を示す特性図である。すなわち、従来の受信信号強度は、図3(b)に示すように短パルスと長パルス間でパルス幅に応じた強度差が発生する。このため、楕円で頂点に向かうほど強い強度を返すモデルを考えると図3(a)に示すように短パルス区間では強度差に応じて弱く、且つ狭く映し出される。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、目標物の大きさや形状の表示を理想の画像に近づけて、違和感無くオペレータに提供出来るレーダ画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置において、受信レーダ画像信号をデジタル信号に変換するA(アナログ)/D(デジタル)変換器と、前記A/D変換器から出力されたデジタル信号を長パルスの受信信号と短パルスの受信信号に分配する分配器と、前記分配器で分配された短パルスの受信信号のノイズレベルを超える信号を検出し、長パルスの受信信号と短パルスの受信信号の強度差に準じた定数を加える第1の加算器と、前記第1の加算器の出力信号に、該出力信号の一つ前の出力信号に定数を掛けた信号を加える第2の加算器と、前記分配器で分配された長パルスの受信信号を圧縮処理した長パルス処理信号と、前記第2の加算器から得られた短パルス処理信号とを合成処理する合成処理器とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置は、目標物の大きさや形状の表示を理想の画像に近づけて、違和感無くオペレータに提供出来ることから、実用に際し得られる効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置を示す構成説明図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置の受信レーダ画像を示す説明図であり、(b)は本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置の受信信号強度を示す特性図である。
【図3】(a)は従来のレーダ画像処理装置の受信レーダ画像を示す説明図であり、(b)は従来のレーダ画像処理装置の受信信号強度を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置を示す。図1において、11はパラボラアンテナ、12はレーダ装置、13はA(アナログ)/D(デジタル)変換器、14は分配器、15はパルス圧縮回路、16は合成処理器、17は表示器、18は比較器、19は定数、20はスイッチ、21は定数、22は第1の加算器、23はビデオメモリ(方位メモリ)、24は定数、25は掛算器、26は第2の加算器、27は短距離補正発生部、28は短距離方位積分部であり、これらは例えば航空機等の飛翔体に2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置として搭載される。
【0013】
図1に示すように、パラボラアンテナ11を有するレーダ装置12は、探知距離(長距離)を得るために必要とする長パルス(パルス幅の広いパルス)チャープ波からの受信エコー信号と、長パルスチャープ波により発生するブラインド距離(短距離)を補う短パルス(パルス幅の狭いパルス)波からの受信エコー信号とが受信され、受信レーダ画像信号を抽出する。
【0014】
レーダ装置12から出力された受信レーダ画像信号はA/D変換器13によりデジタル信号に変換され、分配器14に出力される。分配器14では長パルスの受信信号と短パルスの受信信号に分配され、長パルスの受信信号はパルス圧縮回路15で圧縮処理されて長パルス処理信号として合成処理器16に出力される。
【0015】
分配器14で分配された短パルスの受信信号は第1の加算器22に出力されると共に比較器18に出力される。比較器18では分配器14からの短パルスの受信信号とノイズレベルの定数19とを比較し、短パルスの受信信号がノイズレベルの定数19を超える信号を検出してスイッチ20をオンする。スイッチ20がオンすると、長パルスの受信信号と短パルスの受信信号の強度差に準じた定数21が第1の加算器22に出力され、第1の加算器22は短パルスの受信信号に定数21を加えて第2の加算器26に出力する。
【0016】
第2の加算器26から出力される短パルスの受信信号は複数の方位メモリを備えたビデオメモリ23に順次記録されると共にビデオメモリ23から順次読み出されて掛算器25に出力される。掛算器25はビデオメモリ23から順次読み出された短パルスの受信信号に定数24を掛けた信号を第2の加算器26に出力する。第2の加算器26では第1の加算器22から出力された短パルスの受信信号に、該短パルスの受信信号の一つ前の短パルスの受信信号に定数24を掛けた掛算器25からの出力信号を加えて短パルス処理信号として合成処理器16に出力する。
【0017】
合成処理器16はパルス圧縮回路15から入力された長パルス処理信号と、第2の加算器26から入力された短パルス処理信号とを合成処理した受信画像信号を表示器17に出力し、表示器17は受信レーダ画像を表示する。
【0018】
比較器18、定数19、スイッチ20、及び定数21は短距離補正発生部27を構成し、ビデオメモリ23、定数24、及び掛算器25は短距離方位積分部28を構成する。
【0019】
図2(a)は本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置の受信レーダ画像を示し、図2(b)は本発明の実施形態に係るレーダ画像処理装置の受信信号強度(B−B区間)を示す。
【0020】
すなわち、短距離補正発生部27でノイズレベルを超える短パルスの受信信号を比較器18で検出し、長パルスの受信信号との強度差に準じた定数21を加えることで強度差の低減を図る。さらに、短距離方位積分部28で一つ前の短パルスの受信信号に定数24を掛けたものを加えることで、図2(b)に示すように、短パルスの受信信号を長パルスの受信信号と同等の強度にする。
【0021】
ここで、第2の加算器26で一つ前の短パルスの受信信号を加えること及びパラボラアンテナ11がセクター走査することから、画面上では方位方向に遅れて表示される。従って、図2(a)に示すように当初の短パルスの受信レーダ画像より方位方向に広がりを持ち、且つ長パルスの受信強度と同等の理想的な画像に近づけられる。
【0022】
以上説明したように本発明の実施形態に係る2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置は、弱い短パルスの受信信号に対してのみ加算式の距離補正処理を行うと共に、レーダ空中線がセクター走査であることを活かした方位積分処理を行うことにより、長パルスの受信信号との強度差を少なくし、更に方位積分処理による方位方向への画像の広がりにより、より実際の画像に近づく処理を行うことができる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0024】
11…パラボラアンテナ、12…レーダ装置、13…A(アナログ)/D(デジタル)変換器、14…分配器、15…パルス圧縮回路、16…合成処理器、17…表示器、18…比較器、19…定数、20…スイッチ、21…定数、22…第1の加算器、23…ビデオメモリ(方位メモリ)、24…定数、25…掛算器、26…第2の加算器、27…短距離補正発生部、28…短距離方位積分部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重パルス式航法気象レーダ装置のレーダ画像処理装置において、
受信レーダ画像信号をデジタル信号に変換するA(アナログ)/D(デジタル)変換器と、
前記A/D変換器から出力されたデジタル信号を長パルスの受信信号と短パルスの受信信号に分配する分配器と、
前記分配器で分配された短パルスの受信信号のノイズレベルを超える信号を検出し、長パルスの受信信号と短パルスの受信信号の強度差に準じた定数を加える第1の加算器と、
前記第1の加算器の出力信号に、該出力信号の一つ前の出力信号に定数を掛けた信号を加える第2の加算器と、
前記分配器で分配された長パルスの受信信号を圧縮処理した長パルス処理信号と、前記第2の加算器から得られた短パルス処理信号とを合成処理する合成処理器と
を具備することを特徴とするレーダ画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261845(P2010−261845A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113647(P2009−113647)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】