説明

レーダ装置

【課題】電磁波の送信を停止することなく、全てのビーム方向において送信信号と受信信号の差分により得られる周波数解析結果から干渉信号を検知するレーダ装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載され、目標物体を検出するためのレーダ装置であって、電磁波を送信信号として送信する送信手段と、目標物体により反射された反射信号を受信信号として受信する受信手段と、送信信号と受信信号により得られるビート信号から、車両と目標物体間の距離および相対速度を測定する信号処理手段と、信号処理手段での周波数解析により得られる周波数を目標物体の距離および相対速度の測定に使用する周波数範囲と、目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲に分け、目標物体間の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度に基づいて、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する干渉検知手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載して、自車両周囲に存在する先行車両等の目標物体(ターゲット)を検出し、自車両との距離や相対速度を測定するためのレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車両に設置されたレーダ装置は、電磁波を送信信号として送信し、先行車両等のターゲットにより反射された反射信号を受信信号として受信し、送信信号と受信信号の差分に対する周波数解析結果から自車両とターゲットとの間の距離や相対速度を算出するものであり、障害物接近警報システム、車間距離制御システム、渋滞追従システム等に利用されている。
【0003】
このレーダ装置において、ターゲットで反射された受信信号と他の車載用レーダや通信機器から送信された電磁波(干渉信号)とを同時に受信すると、周波数解析結果における信号強度が大きく上昇し、ターゲットの距離や相対速度を測定するための信号強度が埋もれてしまう、いわゆる干渉が発生する。このとき、ターゲットが存在しているにも拘わらず、ターゲットの距離や相対速度の測定ができなくなり、車両を制御する上で問題となる。
【0004】
そこで、干渉が発生した場合は、確実に干渉を検知し、車両システム側にレーダ装置の性能低下を通知したり、警告する必要がある。このような干渉検知方法として、電磁波の送信を一時的に停止し、他の車載用レーダや通信機器から送信される電磁波(干渉信号)のみを受信し、受信信号の周波数解析結果から干渉信号の有無を検知する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−163340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているレーダ装置では、干渉検知動作を行っている間は、電磁波の送信を停止するため、ターゲットの距離および相対速度の測定を中断しなければならず、効率的ではない。また、干渉検知の感度を上げるために、干渉検知動作を高頻度で行うと、ターゲットの距離および相対速度の測定できる時間が少なくなってしまう問題点がある。
【0007】
また、アンテナを走査している場合は、ある特定のビーム方向、例えばアンテナ走査したときの端のビームなどでのみ干渉検知動作を行う方法がある。
【0008】
しかしながら、干渉信号の到来方向によっては、それぞれのビームが受ける干渉の影響は異なる。そのため、ある特定の方向でのみ干渉検知動作を行うと、干渉信号を検知できない場合がある。
【0009】
また、他のレーダ装置や通信機器から送信される電磁波(干渉信号)を受信すると、送信信号と受信信号との差分により得られる周波数解析結果における信号強度が上昇するので、信号強度が上昇するか否かで干渉信号を検知する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、ターゲットの反射による受信信号によって信号強度が上昇した場合と、干渉信号によって信号強度が上昇した場合との区別がつかないため、干渉信号を検知する適切な方法ではない。
【0011】
この発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、電磁波の送信を停止することなく、全てのビーム方向において、送信信号と受信信号との差分により得られる周波数解析結果から干渉信号を検知することができるレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係るレーダ装置は、車両に搭載され、目標物体を検出するためのレーダ装置であって、電磁波を送信信号として送信する送信手段と、前記目標物体により反射された反射信号を受信信号として受信する受信手段と、前記送信信号と前記受信信号により得られるビート信号から、前記車両と前記目標物体間の距離および相対速度を測定する信号処理手段と、前記信号処理手段での周波数解析により得られる周波数を、前記目標物体の距離および相対速度の測定に使用する周波数範囲と、前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲とに分け、前記目標物体間の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度に基づいて、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する干渉検知手段と備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、電磁波の送信を停止することなく、全てのビーム方向において、送信信号と受信信号の差分により得られる周波数解析結果から干渉信号を検知することができる。このため、常に他の車載用レーダや通信機器から送信される電磁波による干渉信号を監視することができるので、高速に干渉信号を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すレーダ装置は、FM−パルスドップラー方式のレーダ装置を示し、送信回路として、印加された電圧波形により信号を発生させる電圧制御発振器1と、電圧制御発振器1から出力された信号を送受信回路に供給するための方向性結合器2と、方向性結合器2の出力信号を増幅する増幅器3と、レーダの送受信を切り替える送受信切替スイッチ4と、送受信共用の送受信アンテナ5を備えている。
【0015】
また、図1に示すレーダ装置は、受信回路として、受信信号を増幅するための低雑音増幅器6と、低雑音増幅器6の出力信号である受信信号と方向性結合器2から送られてくる送信信号とを混合し、その周波数の差分であるビート信号を取り出すためのミキサ7と、そのビート信号から不要な高周波成分を取り除くローパスフィルタ8と、ローパスフィルタ8の出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器9とを備えている。
【0016】
また、図1に示すレーダ装置は、電圧制御発振器1と、送受信切替スイッチ4と、反射鏡14の駆動モータ10とを制御するための制御部11と、A/D変換器9によりデジタル変換された信号を周波数解析し、周波数解析結果の周波数スペクトルからターゲットの位置や相対速度を測定する信号処理部(信号処理手段)12と、信号処理部12の処理結果から他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知するための干渉検知部(干渉検知手段)13とを備えている。なお、15と16は送信信号と受信信号を示す。
【0017】
まず、図1に示すレーダ装置の送信動作について図2を参照しながら説明する。制御部11は、電圧制御発振器1に対し、図2のような三角波信号を印加する。電圧制御発振器1は、制御部11から印加された電圧に基づき三角波状に周波数変調した連続波(FM−CW:Frequency-Modulated Continuous Wave)を出力する。電圧制御発振器1から出力された信号は、方向性結合器2に入力され、その出力信号の一方は増幅器3により増幅され、他方はローカル信号としてミキサ7に入力される。増幅器3により増幅された信号は、制御部11により切替タイミングが制御された送受信切替スイッチ4によってパルス変調され、送信信号15として送受信アンテナ5から空間に放射される。
【0018】
次に、図1に示すレーダ装置の受信動作について説明する。送受信切替スイッチ4では、送信信号15の送信開始から例えばパルス幅Tg経過した時点で受信側に切り替わり、送受信アンテナ5と低雑音増幅器6とを接続する。送受信切替スイッチ4によりパルス変調され、送受信アンテナ5から空間に放射された送信信号15は、レーダ前方に存在しているターゲットにより反射されて、受信信号16として、送受信アンテナ5により受信される。送受信アンテナ5により受信された受信信号16は、低雑音増幅器6により増幅され、ミキサ7により方向性結合器2から供給されるローカル信号(送信信号)と混合される。ミキサ7から出力される信号は、受信信号と送信信号との周波数の差分であるビート周波数を持った信号(ビート信号)となる。このミキサ7から出力されたビート信号は、ローパスフィルタ8により不要な周波数成分が除去される。ローパスフィルタ8の出力信号は、A/D変換器9によりデジタル信号に変換され、信号処理部(信号処理手段)12に入力される。
【0019】
次に、図3及び図4を用いて、信号処理部12でのターゲット距離および相対速度の算出方法について説明する。図3及び図4は、横軸を時間、縦軸を周波数とし、送信信号15を実線、ターゲットにより反射された受信信号16を点線で示している。送信信号15は、周波数掃引幅B[Hz]、変調周期Tm[sec]で三角波状に周波数変調されている。
【0020】
送受信アンテナ5から送信された送信信号15が、距離Rに存在する相対速度0のターゲットにより反射されると、下記式で示される遅延時間τ[sec]後に、送受信アンテナ5によって受信される。
【0021】
【数1】

【0022】
ただし、c[m/s]は光速である。
【0023】
このとき、受信信号は、図3に示すように、送信信号15に対して、周波数上昇変調時はfbu[Hz]、周波数下降変調時はfbd[Hz]の周波数差を持って受信される。この送信信号15と受信信号16との周波数の差分をビート周波数と呼ぶ。ここで、ターゲットの相対速度が0[m/s]のときは、周波数上昇変調時のビート周波数fbu[Hz]と周波数下降変調時のビート周波数fbd[Hz]とは等しくなる。
【0024】
一方、距離R[m]に存在するターゲットが相対速度V[m/s]を持っていた場合は、受信信号16はドップラシフトfd[Hz]を持つことになり、図4のように受信信号16の周波数は相対速度0[m/s]の時に比べfd[Hz]だけ変動する。したがって、このとき、ミキサ7から出力されるビート周波数は、図5のようになる。また、ミキサ7から出力される受信信号の周波数fb[Hz]は以下の式で表される。
【0025】
【数2】

【0026】
ただし、λ[m]は送信信号の波長である。
【0027】
ここで、実際にターゲットの距離R[m]および相対速度V[m/s]を求めるには、周波数上昇変調時のビート周波数fbu[Hz]と周波数下降変調時のビート周波数fbd[Hz]とを用いて、以下の式によって求めることができる。
【0028】
【数3】

【0029】
FM−パルスドップラーレーダでは、周波数変調した送信信号をパルス変調しており、図6のようにパルス信号15の送信からサンプリング間隔Ts[m]でn回のサンプリングを行う。このn個のサンプリング点をレンジゲートと呼び、A/D変換器9によるA/D変換後のデジタル信号の周波数解析はレンジゲート毎に行う。そのため、各レンジゲートで測定できる距離範囲Rg(n)[m]は、パルス幅Tg[sec]とサンプリング間隔Ts[sec]により決定され、以下の式で表される。
【0030】
【数4】

【0031】
ただし、nはレンジゲート番号である。
【0032】
図6において、例えば、パルス幅Tg[sec]が200[nsec]、サンプリング間隔Ts[sec]が200[nsec]のとき、4レンジゲートに現れるターゲットからの反射信号は、パルス送信から(200×4)[nsec]〜(200×4+200)[nsec]の間に受信した信号である。したがって、4レンジゲートにおける測定距離範囲Rg(4)は、以下のようになる。
【0033】
【数5】

【0034】
つまり、4レンジゲートでは、120[m]から150[m]に存在するターゲットからの信号のみが観測されることになり、上記範囲外にあるターゲットからの反射信号を4レンジゲートで受信することはない。
【0035】
また、ターゲットの測定可能な最大相対速度Vmax[m/s]を設定すると、その値に対応した最大ドップラシフトfd_max[Hz]が決定されるので、式(2)と(4)より各レンジゲートで観測される最大周波数fb_max(n)[Hz]は、以下の式により表される。
【0036】
【数6】

【0037】
また、パルス送信周期をTp[sec]としたとき、周波数解析により得られる周波数スペクトルの周波数範囲は、サンプリング定理より、0から1/2Tp[sec]である。
【0038】
よって、1/2Tp[sec]がfb_max(n)[Hz]より大きくなるようにパルス送信周期Tp[sec]を決定すれば、各レンジゲートのビートスペクトルには、図7に示すように、ターゲットからの反射信号が現れない領域すなわちターゲットの距離および相対速度の測定には使用しない領域(測定範囲外:fb_max〜1/2Tp)が存在することになる。
【0039】
ここで、例えば、パルス幅Tgを200[nsec]、サンプリング間隔Tsを200[nsec]、送信信号λの波長を4[mm]、変調周期Tmを10[msec]、周波数変調幅Bを50[MHz]、測定可能な最大相対速度を±180[km/h]としたときについて考える。
【0040】
このとき、例えば最も近距離を測定する0レンジゲート内で観測される最大ビート周波数fb_max(0)[Hz]は、式(6)より、2・50・10[Hz]( 200・10-9[sec]・0+200・10-9[sec])/10・10-3[sec]+2・50[m/sec]/4・10-3[sec]=2[kHz]+25[kHz]=27[kHz]である。
【0041】
また、パルス送信周期Tpを5[μsec]とした場合、周波数解析により得られるスペクトルの最大周波数は1/2Tp[Hz]、つまり100[kHz]になる。したがって、上記条件のもとで、0レンジゲートでは、27[kHz](含まず)〜100[kHz]の周波数範囲は、ターゲットの距離および相対速度の測定には使用しないことになる。
【0042】
すなわち、送信信号と受信信号との差分により得られる周波数解析結果において、ターゲットの距離および相対速度の測定には、使用しない周波数範囲における信号強度は、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を受信しない限り、上昇することはない。
【0043】
よって、送信信号と受信信号との差分により得られる周波数解析結果において、ターゲットの距離や相対速度の測定には、干渉検知部13により、使用しない周波数範囲における信号強度が予め設定した閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知することができる。
【0044】
図8のように、干渉検知部13にあらかじめ干渉検知用の閾値Ithを設定しておき、干渉検知部13により、全てのレンジゲートにおいて、ターゲットの距離や相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値Ithを超えるか否かを監視し、監視したレンジゲートの全てで閾値を超えた場合に干渉が発生したと判断すれば、高精度に干渉検知を行うことができる。
【0045】
実施の形態2.
実施の形態2では、干渉検知部13により、所定割合以上の複数のレンジゲートにおいて、ターゲットの距離や相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値Ithを超えるか否かを監視し、監視したレンジゲートで閾値を超えた場合に干渉が発生したと判断する点を除いて、実施の形態1と同じ構成である。
【0046】
この実施の形態2によれば、全レンジゲートではなく、所定割合以上の複数のレンジゲートを用いて干渉が発生しているかを判断するので、高精度であると共に、実施の形態1より高速に干渉が発生したと判断することができる。
【0047】
実施の形態3.
実施の形態3では、干渉検知部13により、ある所定のレンジゲートにおいて、ターゲットの距離や相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値Ithを超えるか否かを監視し、監視したレンジゲートで閾値を超えた場合に干渉が発生したと判断する点を除いて、実施の形態1と同じ構成である。
【0048】
所定のレンジゲートとして最も遠距離レンジゲートを用いた場合、ターゲットの距離や相対速度の測定に使用するビート信号の最大周波数fb_max(n)[Hz]は、最も大きくなる。したがって、ターゲットの距離や相対速度の測定に使用しない周波数範囲が狭くなる、つまり、干渉を監視する範囲が狭くなるため、演算量が少なくなり、実施の形態2より高速に干渉検知を行うことができる。
【0049】
この実施の形態3によれば、干渉検知部13により、複数のレンジゲートではなく、単一の距離レンジゲートを用いて干渉が発生しているかを判断するので、実施の形態2より高速に干渉が発生したと判断することができる。さらに、所定のレンジゲートとして、最も遠距離レンジゲートを用いると、演算量が少なくなり、より高速に干渉検知を行うことができる。
【0050】
実施の形態4.
実施の形態4では、干渉検知部13により、所定のレンジゲートとして最も近距離レンジゲートとした点を除いて、実施の形態3と同じ構成である。
【0051】
所定のレンジゲートとして最も遠距離レンジゲートを用いた場合、ターゲットの距離や相対速度の測定に使用するビート信号の最大周波数fb_max(n)[Hz]は、最も小さくなる。したがって、ターゲットの距離や相対速度の測定には使用しない周波数範囲が広くなる、つまり、干渉を監視する範囲が広くなるため、ノイズ等による干渉発生の誤判定を防ぎ、より高い信頼性を持った干渉検知を行うことができる。
【0052】
この実施の形態4によれば、所定のレンジゲートとして、最も近距離レンジゲートを用いて干渉が発生したと判断しているので、実施の形態3より高い信頼性を持った干渉検知を行うことができる。
【0053】
実施の形態5.
実施の形態5では、実施の形態1と同じ構成であるが、図9のようにアンテナ走査を行う構成で、干渉検知部13により、それぞれのビームB1〜B7で独立して干渉発生の有無判断を行うものである。
【0054】
干渉検知部13は、例えば、ビーム1のみ干渉を検知した場合は、ビーム1における周波数解析結果から距離および相対速度の測定を行わず、干渉の発生の通知を行う。また、その他のビームは、周波数解析結果から距離および相対速度の測定を行う。
【0055】
すなわち、干渉検知部13は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値Ithを超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値Ithを超える干渉信号を検知した場合には、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定を行わない。
【0056】
この実施の形態5によれば、ビーム毎に干渉発生の有無判断を行うので、あるビームで干渉が発生しても、その他の干渉が検知されなかったビームの周波数解析結果は、ターゲットの距離および相対速度の測定に用いることができるため、干渉が発生しても、測定に与える影響を最小限に抑えることができる。
【0057】
実施の形態6.
実施の形態6は、干渉検知部13により、各ビームの過去の距離および相対速度の測定値を記録しておき、干渉が発生したビームにおいて、今回の測定値として、記録しておいた過去の距離および相対速度の測定値を代わりに用いる点を除いて、実施の形態5と同じ構成である。
【0058】
すなわち、干渉検知部13は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値Ithを超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値Ithを超える干渉信号を検知した場合に、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定は、過去の距離および相対速度の測定値を用いる。
【0059】
この実施の形態6によれば、干渉検知部13は、干渉が発生したビームの距離および相対速度の測定値として、過去の距離および相対速度の測定値を用いるため、干渉が発生しても、欠損無く、全てのビームにおいて、ターゲットの距離および相対速度の測定を行うことができる。
【0060】
実施の形態7.
実施の形態7は、干渉検知部13により、干渉が発生したビームにおいて、距離や相対速度の測定には使用しない周波数範囲の信号強度を基に新規に閾値を設定し、その閾値以上のスペクトルに対してターゲットの距離および相対速度の測定を行う点を除いて、実施の形態5と同じ構成である。
【0061】
すなわち、干渉検知部13は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値を超える干渉信号を検知した場合に、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定は、前記閾値を超えたスペクトルに対してのみ行う。
【0062】
この実施の形態7によれば、干渉が発生したビームでは、距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲の信号強度を基に、新規に設定した閾値を用いてターゲットの検知を行うので、受信強度が比較的高い近距離ターゲットは、干渉発生の有無に係わらず、距離および相対速度の測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】この発明におけるレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明における電圧制御発振器に印加される電圧波形を示した説明図である。
【図3】FM方式における、相対速度0のターゲットを検知した場合の、送信信号と受信信号の関係を示した説明図である。
【図4】FM方式における、相対速度Vのターゲットを検知した場合の、送信信号と受信信号の関係を示した説明図である。
【図5】図4における送信信号と受信信号との差分であるビート信号を示した説明図である。
【図6】送信パルスと受信パルスの時間的関係を示す説明図である。
【図7】ビート信号を周波数解析することで得られるスペクトル図である。
【図8】干渉が生じたときのスペクトル図である。
【図9】アンテナ走査時のビーム方向を示した説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 電圧制御発振器、2 方向性結合器、3 増幅器、4 送受信切替スイッチ、5 送受信アンテナ、6 低雑音増幅器、7 ミキサ、8 ローパスフィルタ、9 A/D変換器、10 アンテナ駆動モータ、11 制御部、12 信号処理部(信号処理手段)、13 干渉検知部(干渉検知手段)、14 反射鏡、15 送信信号、16 受信信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、目標物体を検出するためのレーダ装置であって、
電磁波を送信信号として送信する送信手段と、
前記目標物体により反射された反射信号を受信信号として受信する受信手段と、
前記送信信号と前記受信信号とにより得られるビート信号に基づいて前記車両と前記目標物体との間の距離および相対速度を測定する信号処理手段と、
前記信号処理手段での周波数解析により得られる周波数を、前記目標物体の距離および相対速度の測定に使用する周波数範囲と、前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲とに分け、前記目標物体間の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度に基づいて他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する干渉検知手段と
を備えたレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置において、
レーダ方式をFM−パルスドップラー方式とし、
前記干渉検知手段は、全てのレンジゲートの前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダ装置において、
レーダ方式をFM−パルスドップラー方式とし、
前記干渉検知手段は、所定割合以上の複数のレンジゲートの前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知することを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダ装置において、
レーダ方式をFM−パルスドップラー方式とし、
前記干渉検知手段は、所定のレンジゲートの前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダ装置において、
レーダ方式をFM−パルスドップラー方式とし、
前記干渉検知手段は、最も遠距離を測定するレンジゲートの前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項6】
請求項1に記載のレーダ装置において、
レーダ方式をFM−パルスドップラー方式とし、
前記干渉検知手段は、最も近距離を測定する0レンジゲートの前記目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視することにより、他のレーダ装置や通信機器からの干渉信号を検知する
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のレーダ装置において、
前記干渉検知手段は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値を超える干渉信号を検知した場合に、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定を行わない
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のレーダ装置において、
前記干渉検知手段は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値を超える干渉信号を検知した場合に、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定は、過去の距離および相対速度の測定値を用いる
ことを特徴とするレーダ装置。
【請求項9】
請求項1から6までのいずれか1項に記載のレーダ装置において、
前記干渉検知手段は、アンテナ走査時に全ビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定には使用しない周波数範囲における信号強度が閾値を超えるか否かを監視し、あるビーム方向で他のレーダ装置や通信機器から前記閾値を超える干渉信号を検知した場合には、そのビーム方向の目標物体の距離および相対速度の測定は、前記閾値を超えたスペクトルに対してのみ行う
ことを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−107280(P2008−107280A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292396(P2006−292396)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】