説明

レール面整正用隙間測定器

【課題】レール面整正に際して行われるレール下の隙間測定を、さしたる熟練を要することなく高精度に且つ迅速に行うことが可能な、レール面整正用隙間測定器を提供することを課題とする。
【解決手段】一半部が位置決め固定部2であり他半部がユニット設置部3である支持板1と、ユニット設置部3に設置されるデジタル計測ユニット4とから成り、位置決め固定部2は、レール30のベース部、腹部、あご下部のいずれかに接触する接触部6、7、7aを少なくとも2個所に有し、接触部のうちの少なくとも1個所にレール30に対する固定手段9、10を備え、少なくとも2個所の接触部がレール30のベース部、腹部、あご下部のうちの少なくとも2つの部分に当接することによってデジタル計測ユニット4の位置決めがなされ、デジタル計測ユニット4は、上下方向に可動なスライド尺12を有し、そのスライド量に基づいてレールの下側の隙間測定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレール面整正用隙間測定器、より詳細には、車両走行の安全と乗り心地改善のために行われるスラブ軌道及び枕木等のレール面整正において、レール頭頂面の長手方向の高低変位や左右レールの高低変位等を測定する際に用いるレール面整正用隙間測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両走行の安全と乗り心地改善のために、定期的にスラブ軌道及び枕木等のレール面整正が行われる。このレール面整正は一般に、先ず、高低検測機能を有する軌道検測車によって軌道の高低検測を行い、おおよその高低変位個所を検出し、その後、測定者が当該検出現場に出向き、曲尺や直尺等を用いてレール下部の調整パッキンや可変パットの厚さの測定(隙間測定)を行う。そして、その測定データを整理して寸法上変位のある個所のこう上量を検討し、それに対応する厚さの調整板を用意し、それを高低変位のある個所のレールの下に差し込むことにより、高さ調整を行う。
【0003】
なお、高低測定には、測定器を搭載している軌道検測車、トランシット測量、レベル測量、糸張りによる測定等がある。また、同時に水準器を用いて反対側の変位を測定する場合がある。
【0004】
通例、レール面の高低変位はミリメートル単位のものであるので、隙間測定にはそれなりの精度が要求され、特に電車の往来が頻繁な昼間作業時には、電車の往来の合間を縫って行うことになるので、作業は迅速に行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−62105号公報
【特許文献2】特開平7−82701号公報
【特許文献3】特開昭61−35324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、レール面整正に際して行われるレール下の隙間測定には、高精度の測定と作業の迅速性が要求されるが、従来の曲尺や直尺等を用いて行う測定方法の場合は、測定者の目視によるため、目盛りを読む際の覗き角度によって誤差が生じたり、測定者によって測定誤差が生じたりしやすく、測定精度にも限界があり、また、作業の迅速化にも限界がある。そこで、この隙間測定をより高精度に且つ迅速に行い得る測定器の出現が求められていた。
【0007】
本発明はかかる要請に応えるためになされたもので、レール面整正に際して行われるレール下の隙間測定を、さしたる熟練を要することなく高精度に且つ迅速に行うことが可能な、レール面整正用隙間測定器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、一半部が位置決め固定部であり他半部がユニット設置部である支持板と、前記ユニット設置部に設置されるデジタル計測ユニットとから成り、前記位置決め固定部は、レールのベース部、腹部、あご下部のいずれかに接触する接触部を少なくとも2個所に有すると共に、前記接触部のうちの少なくとも1個所に前記レールに対する固定手段を備え、前記少なくとも2個所の接触部が前記レールのベース部、腹部、あご下部のうちの少なくとも2つの部分に当接することによって前記デジタル計測ユニットの位置決めがなされ、前記デジタル計測ユニットは、上下方向に可動なスライド尺を有していて、前記スライド尺のスライド量に基づいて前記レールの下側の隙間測定を行うことを特徴とする、レール面整正用隙間測定器である。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記固定手段は永久磁石とされ、前記支持板の位置決め固定部が前記ユニット設置部よりも下方に延長され、前記支持板の位置決め固定部の底面が前記レールのベースの上面に対応する傾斜状態にされ、その傾斜底面の内方側端部に下方に突出するストッパーが形成され、また、前記支持板は、そのレール固定時において、その上面高さと前記レールの頭頂面高さとが一致するように形成される。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記デジタル計測ユニットは、計測データをデジタル表示する機能を有し、また、計測データを外部出力する機能を有するものとされ、更に前記デジタル計測ユニットは、前記ユニット設置部に横方向に移動可能に取り付けられる。更に好ましい実施形態においては、前記ユニット設置部の上方部分に、ハンドリング用開口が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述したとおりであって、本発明に係るレール面整正用隙間測定器においては、支持板の位置決め固定部が、レールのベース部、腹部、あご下部のいずれかに接触する接触部を少なくとも2個所に有しているので、その少なくとも2個所の接触部をレールのベース部、腹部、あご下部のうちの少なくとも2つの部分に当接させてレールに固定することにより、デジタル計測ユニットの位置決めを容易且つ確実に行うことができ、その状態でデジタル計測ユニットのスライド尺を下降動作させるだけで、レールの下側の隙間測定を容易、迅速且つ高精度に行うことができ、以てレール面整正を迅速に効率よく行うことが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るレール面整正用隙間測定器の構成例を示す正面側斜視図である。
【図2】本発明に係るレール面整正用隙間測定器の構成例を示す裏面側斜視図である。
【図3】本発明に係るレール面整正用隙間測定器の使用方法を示す正面図である。
【図4】本発明に係るレール面整正用隙間測定器の使用方法を示す正面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。本発明に係る隙間測定器は、一半部が位置決め固定部2とされ、他半部がユニット設置部3とされた支持板1と、ユニット設置部3に設置されるデジタル計測ユニット4とから成る。通例、ユニット設置部3の上方部分に、ハンドリングを容易にするためのハンドリング用開口5が形成される。
【0014】
位置決め固定部2はユニット設置部3よりも下方に延長され、その外周部が、レール30の側面に点接触又は線接触することでデジタル計測ユニット4の位置決めを可能にする接触部とされる。その接触部は、レール30のベース部31、腹部32、あご下部33のいずれかに接触する部分で、ベース部31、腹部32、あご下部33に対応する少なくとも2個所に設定され、その接触部のうちの少なくとも1個所に、本測定器をレール30の側面に固定するための手段が配置される。
【0015】
図示した実施形態の位置決め固定部2における接触部は、レール30のベース部31、腹部32、あご下部33のそれぞれに対応する3個所とされている。即ち、ベース部31に点接触又は線接触する底辺6と、腹部32に点接触又は線接触する側辺7とを有し、また、あご下部33に点接触する角部7aが側面7の上部に設けられる。
【0016】
位置決め固定部2の底辺6はレール30のベース部31上面の傾斜に対応する傾斜状態にされ、全体的に又は部分的にベース部31上面に当接するようにされる。また、位置決め固定部2の側辺7は、腹部32の緩やかな凹曲面に対応し、該凹曲面に点接触又は線接触する凸曲面とされる。
【0017】
かくして、例えば底辺6をベース部31の上面に確実に当接させると共に、側辺7を腹部32に確実に当接させることにより、ユニット設置部3に設置されているデジタル計測ユニット4を、測定位置に迅速に且つ正しく配置することが可能となる。
【0018】
また、好ましい実施形態においては、底辺6の内方側端部に、下方に突出するストッパー8が形成される。ストッパー8は、本測定器をレール30の側面に固定する際にベース部31の側面31aに当接させるもので、そのようにすることにより、当該固定作業の容易化、迅速化を図るものである。
【0019】
即ち、本測定器をレール30に取り付ける際、支持板1を少し傾けた状態で先ずストッパー8をベース部31の側面31aに当接させ、その後支持板1を正立させて底辺6をベース部31上面に当接(磁着)させると共に、側辺7を腹部32に当接(磁着)させるようにする。このようにすれば、支持板1を容易かつ正確に正位置に配置することが可能となる。なお、本測定器の固定時、換言すれば、支持板1が正位置に配置された時点において、ストッパー8と側面31aとの間に隙間が生ずるように設計される。
【0020】
好ましい実施形態においては、支持板1がレール30の側面に正しく配置固定された時点において、支持板1の上面高さが、レール30の頭頂面高さと合致するようにされる。そのようにした場合は、レール30の頭部の摩耗等の確認が容易となる。
【0021】
支持板1には、それをレール30に固定するための手段として、その底辺6及び側辺7のそれぞれ中間部に磁石ホルダー9、10が配備される。図示した実施形態における磁石ホルダー9、10は、それぞれ2つの永久磁石を埋設した一対のケースから成り、その一対のケースで支持板1を挟むようにして取り付けられる。
【0022】
ゲージ設置部3に設置されるデジタル計測ユニット4は、デジタル表示部を有する本体11と、下端に接触子13を有していて本体11にスライド可能に保持されるスライド尺12とから成り、本体11に対するスライド尺12の移動量が、例えば、100分の1ミリメートル単位で表示部にデジタル表示されるもので、市販品を用いることができる。また、デジタル計測ユニット4には、パソコンに接続されるインプットツールの接続を可能にし、また、マイクロSDカードやUSBの接続を可能にすることにより、その計測データを外部のパソコン上で処理して活用できるようにすることができる。
【0023】
本体11は可動台16上に固定され、可動台16は、支持板1の表面上に横方向に延びるように設置される図示せぬレールに係止されて、当該レールに沿って移動可能にされる。かくしてデジタル計測ユニット4は、可動台16と共に、支持板1上をレールに沿って横方向に移動可能となる。
【0024】
この可動台16の動きは、支持板1の裏面からねじ込まれる固定ボルト17によって規制される。即ち、固定ボルト17は、その先端が可動台16の内面に強く当接するまでねじ込み可能で、その先端が可動台16の内面に強く当接するまでねじ込むことによって、可動台16の動き、換言すれば、デジタル計測ユニット4の動きを任意の位置で停止させることができる。また、逆にそれを緩めることによって、可動台16の動き、換言すれば、デジタル計測ユニット4の横方向への移動を許容することができる。
【0025】
上記構成の本発明に係る測定器は、従来行われている方法と同様に、軌道検測車によって軌道の高低検測を行っておおよその変位個所を検出した後、測定者がその変位検出現場に赴いてレール下の調整パッキン34の厚さ測定(レール下の隙間測定)を行うために用いるものである。
【0026】
その使用に際しては先ず、デジタル計測ユニット4のゼロ点設定を行う。例えばゼロ点設定は、短寸に切断したレールを載置した定盤を用意し、当該レールに本測定器を正しく固定した状態でスライド尺12を下降させ、その接触子13が定盤面に当たった時点で設定ボタン15を押して、ゼロ点を設定する方法で行う。この場合は、実測時においてスライド尺12がこのゼロ点より下降した分が、求めるレール下隙間の寸法ということになる。
【0027】
ゼロ点設定方法は他にも種々考えられる。例えば、上記と同様にしてスライド尺12の接触子13を定盤面に当てた状態で設定ボタン15を押して絶対原点を設定し、次いで、スライド尺12を最大限に引き上げた状態で表示値を確認し、その表示値を校正値とする。この校正値はレール種別等によって異なるもので、その値を記録しておく。そして、現場において実測する前に、スライド尺12を最大限に引き上げた状態で表示値を見て、それが上記校正値と一致していることを確認し、その状態で設定ボタン15を押して絶対原点を設定する。この場合は、実測時においてスライド尺12がこの絶対原点より下降した分より上記校正値を引いた値が、求めるレール下隙間の寸法ということになる。
【0028】
上記ゼロ点設定を行った後、ハンドリング用開口5部分を把持して本測定器を、スライド尺12を引き上げた状態でレール30の側面に当て、上述したように、位置決め固定部2を介して適正状態に固定する。その状態でスライド尺12を指押しし(図4参照)、その先端の接触子13を枕木35又はスラブ軌道の上面に当てる。それにより、上記絶対原点との差が計測されて表示される。この表示値を基に、レール下に追加挿入すべき調整板の厚さが算定されることになる。
【0029】
このように本発明に係る測定器においては、支持板1の位置決め固定部2が、デジタル計測ユニット4の位置決め機能を有していて、本測定器を単に位置決め固定部2を介してレール30の側面に固定することにより、デジタル計測ユニット4の位置決めを容易且つ確実に行うことができ、その状態でデジタル計測ユニット4のスライド尺12を単に指押しするだけで、レール30の下側の調整パッキン34等の厚さ、即ち、隙間測定を容易、迅速且つ高精度に行うことができるものであり、本測定器を用いることで、結果的にレール面整正を迅速に効率よく行うことが可能となる。
【0030】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 支持板
2 位置決め固定部
3 ユニット固定部
4 デジタル計測ユニット
5 ハンドリング用開口
6 底辺
7 側辺
8 ストッパー
9 磁石ホルダー
10 磁石ホルダー
12 スライド尺
13 接触子
15 設定ボタン
16 可動台
17 固定ボルト
30 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一半部が位置決め固定部であり他半部がユニット設置部である支持板と、前記ユニット設置部に設置されるデジタル計測ユニットとから成り、前記位置決め固定部は、レールのベース部、腹部、あご下部のいずれかに接触する接触部を少なくとも2個所に有すると共に、前記接触部のうちの少なくとも1個所に前記レールに対する固定手段を備え、前記少なくとも2個所の接触部が前記レールのベース部、腹部、あご下部のうちの少なくとも2つの部分に当接することによって前記デジタル計測ユニットの位置決めがなされ、前記デジタル計測ユニットは、上下方向に可動なスライド尺を有していて、前記スライド尺のスライド量に基づいて前記レールの下側の隙間測定を行うことを特徴とする、レール面整正用隙間測定器。
【請求項2】
前記固定手段は永久磁石である、請求項1に記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項3】
前記支持板の位置決め固定部が、前記ユニット設置部よりも下方に延長されている、請求項1又は2に記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項4】
前記支持板の位置決め固定部の底辺は前記レールのベースの上面に対応する傾斜状態にされ、その傾斜底辺の内方側端部に下方に突出するストッパーが形成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項5】
前記支持板は、そのレール固定時において、その上面高さと前記レールの頭頂面高さとが一致するように形成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項6】
前記デジタル計測ユニットは、計測データをデジタル表示する機能を有する、請求項1乃至5のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項7】
前記デジタル計測ユニットは、計測データを外部出力する機能を有する、請求項1乃至6のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項8】
前記デジタル計測ユニットは、前記ユニット設置部に横方向に移動可能に取り付けられる、請求項1乃至7のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。
【請求項9】
前記ユニット設置部の上方部分に、ハンドリング用開口が形成されている、請求項1乃至8のいずれかに記載のレール面整正用隙間測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−281766(P2010−281766A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136938(P2009−136938)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(591153145)ユニオン建設株式会社 (6)
【出願人】(594183831)伊岳商事株式会社 (15)
【Fターム(参考)】