説明

ロウパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドリジェクトフィルタ、フィルタおよび無線通信装置

【課題】集積回路上で大きな面積を必要とせず、優れた周波数特性を有する各種フィルタ、及び無線通信装置の提供。
【解決手段】入力端子からの入力信号を、予め定めたカットオフ周波数以上の信号成分の減衰量が所定量以上となる様に通過させて出力端子から出力するロウパスフィルタは、前記入力端子と前記出力端子間に接続された半導体素子と、前記出力端子と接地端子間に接続された容量と、を備え、前記半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロウパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドリジェクトフィルタ、フィルタおよび無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置等のアナログ信号処理においては、種々のフィルタが用いられる。例えば、ロウパスフィルタは抵抗と容量とを直列接続して構成される。しかしながら、抵抗および容量のみで構成されたロウパスフィルタは周波数特性がよくない、という問題がある。また、周波数特性を改善するために集積回路上にスパイラルインダクタを形成すると非常に大きな面積を占有する、という問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】G. Weinreich, Physical Review, 104 (1956), pp. 321 - 324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集積回路上で大きな面積を必要とせず、優れた周波数特性を有するロウパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、バンドリジェクトフィルタ、フィルタ、および、無線通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、入力端子に入力される信号を、予め定めたカットオフ周波数以上の信号成分の減衰量が所定量以上となるように通過させて出力端子から出力するロウパスフィルタは、 前記入力端子と前記出力端子との間に接続された半導体素子と、前記出力端子と接地端子との間に接続された容量と、を備える。前記半導体素子は、半導体基板と、前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】半導体素子100の上面図。
【図2】半導体素子100の斜視図。
【図3】半導体素子100の断面図。
【図4】半導体素子100の変形例の斜視図。
【図5】半導体素子100の等価回路。
【図6】第1の実施形態に係るLPF10の回路図。
【図7】LPF15の回路図。
【図8】LPF10,15の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図9】第2の実施形態に係るHPF20の回路図。
【図10】HPF25の回路図。
【図11】HPF20,25の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図12】第3の実施形態に係るBPF30の回路図。
【図13】BPF30の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図14】第4の実施形態に係るBRF40の回路図。
【図15】BRF40の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフ。
【図16】無線通信装置200の構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。まず、各実施形態のフィルタで使用される半導体素子100について説明する。
【0008】
図1〜図3はそれぞれ、半導体素子100の上面図、斜視図および断面図である。半導体素子100は、シリコン基板(半導体基板)1と、nウェル2と、p型拡散層(音響波伝播層)3と、SiO膜(音響波反射層)4と、コンタクト5a,5bと、配線6a,6bとを有する。
【0009】
シリコン基板1の表面には、例えば不純物としてリンあるいはヒ素がドーピングされたnウェル2が形成される。nウェル2の内側に、例えば不純物としてホウ素がドーピングされたp型拡散層3が形成される。p型拡散層3を上面から見た形状は、短辺および長辺を有する略長方形である。短辺および長辺の長さはそれぞれ、例えば、3μmおよび40μmであり、集積回路上に形成されるスパイラルインダクタに比べて非常に小さい。
【0010】
後述するように、本実施形態の特徴の1つは、長辺の長さに応じて、フィルタの周波数特性を調整できる点にある。
【0011】
nウェル2の内側で、p型拡散層3を囲うように溝7がシリコン基板1に形成され、その中にSiO膜4が埋め込まれている。SiO膜4は、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)と呼ばれる構造であり、p型拡散層3をシリコン基板1上に形成される他の素子と電気的に分離する。コンタクト5a,5bは、p型拡散層3上に形成され、p型拡散層3と配線6a,6bとをそれぞれ電気的に接続する。コンタクト5a,5bは、互いに接触していなければp型拡散層3上のどこに形成してもよい。配線6a,6bは他の素子(不図示)と接続される。
【0012】
図1〜図3の半導体素子100は簡易な構造であるため、通常のCMOSプロセスにより形成できる。
【0013】
一般に、キャリアを有する半導体中では、電荷密度が変化すると体積が変化し、体積が変化すると電荷密度が変化すること、すなわち、電気と機械振動との相互作用が知られている。より具体的には、ρを電荷密度、Φを体積変化に比例する変数、cを半導体中の音速とすると、下記(1)式の方程式が成立する。
【数1】

【0014】
上記(1)式の左辺は音響波の伝搬を表す方程式であり、電荷密度ρの変化があると(右辺)、音速cの音響波が伝播する(左辺)ことを示している。
【0015】
このことを図1〜図3の半導体素子100に当てはめる。半導体素子100では、p型拡散層3にキャリアとしてホールが存在する。コンタクト5a,5bの一方または両方から電気入力が与えられるとp型拡散層3の電荷密度が変化し、その結果、p型拡散層3が音響波伝播層となって音響波が伝播する。一方、SiO膜4は音響波反射層として機能する。すなわち、音響波はp型拡散層3とSiO膜4との界面で反射し、p型拡散層3に音響定在波が生じる。この音響定在波の周波数はp型拡散層3の長辺の長さとp型拡散層3中の音速cとに応じて定まる。
【0016】
したがって、半導体素子100は特定の周波数のみで共振する共振器となる。p型拡散層3の長辺の長さが短いほど定在波の波長は短くなるため、p型拡散層3の長辺の長さに応じて、共振周波数を調整できる。一例として、長辺の長さが40μmの場合、共振周波数の実測値は94MHzである。また、シリコン基板1、nウェル2あるいはp型拡散層3にバイアスを印加することにより共振周波数を調整することもできる。
【0017】
なお、半導体素子100の構造は図1〜図3に限定されるものではない。音響波をp型拡散層3内に効率よく閉じ込めるためには、図1〜図3に示すように音響波伝播層を取り囲むように音響波反射層が設けられるのが望ましいが、少なくとも、不純物拡散領域の長辺方向の両端に音響波反射層が形成されていればよい。例えば、図4に示すように、SiO膜4をp型拡散層3の長辺方向の両端にのみ形成し、短辺方向の側面にはnウェル2が形成されていてもよい。音響波反射層の材料は、p型拡散層3が形成されるシリコン基板1の材料の音響インピーダンスとの差が大きい方が望ましく、例えばSiN等でもよい。また、図1〜図4の半導体素子100は、nウェル2およびp型拡散層3を形成しているが、導電型を逆にし、pウェル2’およびn型拡散層3’を形成してもよい。
【0018】
図5(a)は、半導体素子100の等価回路である。半導体素子100は、コンタクト5a,5b間に直列に形成される抵抗成分(第1の抵抗成分)Rs、インダクタンス成分Lsおよび容量成分Csと、これらと並列に形成される抵抗成分(第2の抵抗成分)Rpとを有する。
【0019】
抵抗成分Rpはコンタクト5a,5b間にp型拡散層3を介して電流が流れることを示している。抵抗成分Rs、インダクタンス成分Lsおよび容量成分Csは、半導体素子100の共振特性からフィッティングすることができる。
【0020】
通常、半導体集積回路上に形成されるスパイラルインダクタのインダクタンスは10nH程度であるので、これよりはるかに大きなインダクタンスを実現できる。これは、半導体中の音速cは、電気信号に比べると、非常に遅いためである。
【0021】
また、p型拡散層3の長辺方向の長さをより長く、例えば100μm以上とすると共振周波数が低くなり、インダクタンス成分Lsは数μHとなる。すなわち、p型拡散層3の長辺方向の長さを長くすればインダクタンス成分を大きくすることができる。
【0022】
このように、半導体素子100は、大きなインダクタンス成分を有し、かつ、長辺方向の長さに応じて共振周波数を調整可能な共振器として使用できる。しかも、半導体素子100はシンプルな構造であるため、オペアンプ等のアクティブ回路を使用したフィルタよりも低消費電力で動作するフィルタを構成できる。
【0023】
なお、図1〜図4の半導体素子100は、2つのコンタクト5a,5bを有する例を示しているが、1つのコンタクト5aのみ有してもよい。この場合の等価回路は、図5(b)に示すようになり、コンタクト5aと接地端子との間には、抵抗成分Rpに加え容量成分Cpが形成される。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、半導体素子100を用いてロウパスフィルタ(以下、LPF)を構成するものである。
【0025】
図6は、第1の実施形態に係るLPF10の回路図である。LPF10は、入力端子Vinと中間ノードVmとの間に接続された半導体素子100aと、中間ノードVmと出力端子Voutとの間に接続された半導体素子100bと、中間ノードVmと接地端子との間に接続された容量Caと、出力端子Voutと接地端子との間に接続された容量Cbとを備えている。
【0026】
より具体的には、半導体素子100aにおいて、図1〜図3のコンタクト5aが入力端子Vinに接続され、コンタクト5bが中間ノードVmに接続される。また、半導体素子100bにおいて、コンタクト5aが中間ノードVmに接続され、コンタクト5bが出力端子Voutに接続される。
【0027】
一点鎖線で囲まれた部分が2次のLPFを構成し、LPF10はこれを2段縦続接続した4次のLPFである。
【0028】
比較例としてLPF15の回路図を図7に示す。LPF15は、抵抗および容量からなる1次のLPFを縦続接続した2次のLPFである。図6のLPF10は、図7の抵抗を半導体素子100で置き換えることで性能改善を図るものである。
【0029】
図8は、LPF10,15の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数であり、縦軸は利得である。
【0030】
LPF10,15ともにカットオフ周波数を30MHzに設定している。図6のLPF10においては、カットオフ周波数が30MHzとなるようp型拡散層3の長辺方向の長さやバイアスを適宜調整すればよく、一例として、抵抗成分Rs=600Ω、インダクタンス成分Ls=2.4μHおよび容量成分Cs=100pF、抵抗成分Rp=600Ω、ならびに、容量Ca=Cb=8pFとしてシミュレーションしている。また、LPF15においては、抵抗を1kΩ、容量を2pFとしている。
【0031】
なお、LPFのカットオフ周波数は、例えば減衰量が3dBとなる周波数として定義され、これより周波数が高い信号成分は3dB以上減衰する。
【0032】
同図に示すように、LPF10の方が急峻な周波数特性となっている。これは、図7のLPF15が2次のLPFであるのに対し、図6のLPF10が4次のLPFだからである。
【0033】
仮に、LPF10と同様の急峻な周波数特性を実現するために、半導体集積回路上にスパイラルインダクタを形成すると、極めて大きな面積が必要になってしまう。これに対し本実施形態では、図7の抵抗を簡易な構造の半導体素子100で置き換えるため、小さな素子でLPFの次数を高くすることができ、結果として急峻な周波数特性を実現できる。
【0034】
さらに、本実施形態のLPF10は、カットオフ周波数を十〜数百MHzに設定できることも1つの特徴である。スパイラルインダクタを用いた場合、面積の制約からGHzオーダー以下のカットオフ周波数を実現するのは困難である。これに対し本実施形態では、半導体素子100は電気信号より遅い音速cに応じた共振周波数を有するため、大きなインダクタンスを形成でき、カットオフ周波数を低く設定できる。
【0035】
なお、図6では、周波数特性をさらに向上させるために、2次のLPFを縦続接続して4次のLPFを構成しているが、もちろん、同図の一点鎖線で囲まれた部分のみで1段のLPFを構成してもよい。この場合でも、図7の一点鎖線で囲まれた部分と比較すると周波数特性が向上している。
【0036】
このように、第1の実施形態では、半導体素子100を用いてLPF10を構成する。そのため、面積が小さな素子で高次のLPFを構成でき、優れた周波数特性を実現できる。また、カットオフ周波数を十〜数百MHzに設定できる。
【0037】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態は、半導体素子100をLPFに用いるものであったが、以下に説明する第2の実施形態は、半導体素子100を用いてハイパスフィルタ(以下、HPF)を構成するものである。
【0038】
図9は、第2の実施形態に係るHPF20の回路図である。LPF20は、入力端子Vinと中間ノードVmとの間に接続された容量Caと、中間ノードVmと出力端子Voutとの間に接続された容量Cbと、中間ノードVmと接地端子との間に接続された半導体素子100aと、出力端子Voutと接地端子との間に接続された半導体素子100bとを備えている。
【0039】
なお、半導体素子100aは、図1〜図3のコンタクト5a,5bのうちの一方のみを形成し、そのコンタクトを中間ノードVmに接続してもよい。同様に、半導体素子100bは、コンタクト5a,5bのうちの一方のみを形成し、そのコンタクトを出力端子Voutに接続してもよい。この場合、半導体素子100aの等価回路は図5(b)で表される。
【0040】
一点鎖線で囲まれた部分が2次のHPFを構成し、HPF20はこれを2段縦続接続した4次のHPFである。なお、第1の実施形態と同様に、一点鎖線で囲まれた1段のHPFを構成してもよい。
【0041】
比較例としてHPF25の回路図を図10に示す。HPF25は、容量および抵抗からなる1次のHPFを縦続接続した2次のHPFである。図9のHPF20は、図10の抵抗を半導体素子100で置き換えることで性能改善を図るものである。
【0042】
図11は、HPF20,25の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。縦軸および横軸は図8と同様である。
【0043】
HPF20,25ともにカットオフ周波数を30MHzに設定している。図9のHPF20においては、カットオフ周波数が30MHzとなるようp型拡散層3の長辺方向の長さやバイアスを適宜調整すればよく、一例として、抵抗成分Rs=20Ω、インダクタンス成分Ls=2.4μHおよび容量成分Cs=100pF、抵抗成分Rp=600Ω、容量成分Cp=10pF、ならびに、容量Ca=Cb=8pFとしてシミュレーションしている。また、HPF25においては、抵抗を2kΩ、容量を6pFとしている。
【0044】
なお、HPFのカットオフ周波数は、例えば減衰量が3dBとなる周波数として定義され、これより周波数が低い信号成分は3dB以上減衰する。
【0045】
同図に示すように、HPF20の方が急峻な周波数特性となっている。これは、図10のHPF25が2次のHPFであるのに対し、図9のHPF20が4次のHPFだからである。
【0046】
このように、第2の実施形態では、半導体素子100を用いてHPF20を構成する。そのため、面積が小さな素子で高次のHPFを構成でき、優れた周波数特性を実現できる。また、カットオフ周波数を十〜数百MHzに設定できる。
【0047】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、半導体素子100を用いてバンドパスフィルタ(以下、BPF)を構成するものである。
【0048】
図12は、第3の実施形態に係るBPF30の回路図である。BPF30は、入力端子Vinと中間ノードVmとの間に接続された半導体素子100aと、中間ノードVmと出力端子Voutとの間に接続された半導体素子100bと、中間ノードVmと接地端子との間に接続された抵抗Raと、出力端子Voutと接地端子との間に接続された抵抗Rbとを備えている。同図のBPF30は圧電素子を用いずに半導体素子100を用いるものである。
【0049】
一点鎖線で囲まれた部分が2次のBPFを構成し、BPF30はこれを2段縦続接続した4次のBPFである。なお、第1の実施形態と同様に、一点鎖線で囲まれた1段のBPFを構成してもよい。
【0050】
図13は、BPF30の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。中心周波数fを10.47MHzに設定しており、この周波数における信号成分の減衰量が極小あるいは最小となる。図12のBPF30においては、中心周波数が10.47MHzになるようp型拡散層3の長辺方向の長さやバイアスを適宜調整すればよく、一例として、抵抗成分Rs=20Ω、インダクタンス成分Ls=2.4μHおよび容量成分Cs=100pF、抵抗成分Rp=600Ω、ならびに、抵抗Ra=Rb=200Ωとしてシミュレーションしている。
【0051】
このように、第3の実施形態では、半導体素子100を用いてBPF30を構成するため、急峻な周波数特性を実現できる。また、中心周波数を十〜数百MHzに設定できる。
【0052】
(第4の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、半導体素子100をバンドリジェクトフィルタ(以下、BRF)に用いるものである。
【0053】
図14は、第4の実施形態に係るBRF40の回路図である。BRF40は、入力端子Vinと中間ノードVmとの間に接続された抵抗Raと、中間ノードVmと出力端子Voutとの間に接続された抵抗Rbと、中間ノードVmと接地端子との間に接続された半導体素子100aと、出力端子Voutと接地端子との間に接続された半導体素子100bとを備えている。同図のBRF40は圧電素子を用いずに半導体素子100を用いるものである。
【0054】
なお、半導体素子100aは、図1〜図3のコンタクト5a,5bのうちの一方のみを形成し、そのコンタクトを中間ノードVmに接続してもよい。同様に、半導体素子100bは、コンタクト5a,5bのうちの一方のみを形成し、そのコンタクトを出力端子Voutに接続してもよい。この場合、半導体素子100aの等価回路は図5(b)で表される。
【0055】
一点鎖線で囲まれた部分が2次のBRFを構成し、BRF40はこれを2段縦続接続した4次のBRFである。なお、第1の実施形態と同様に、一点鎖線で囲まれた1段のBRFを構成してもよい。
【0056】
図15は、BRF40の周波数特性のシミュレーション結果を示すグラフである。中心周波数fを10.47MHzに設定しており、この周波数における信号成分の減衰量が極大あるいは最大となる。図14の回路においては、中心周波数が10.47MHzになるようp型拡散層3の長辺方向の長さやバイアスを適宜調整すればよく、一例として、抵抗成分Rs=20Ω、インダクタンス成分Ls=2.4μHおよび容量成分Cs=100pF、抵抗成分Rp=600Ω、容量成分Cp=10pF、ならびに、抵抗Ra=Rb=1Ωとしてシミュレーションしている。
【0057】
このように、第3の実施形態では、半導体素子100を用いてBPF30を構成するため、急峻な周波数特性を実現できる。また、中心周波数を十〜数百MHzに設定できる。
【0058】
上述した第1〜第4の実施形態のフィルタにおいて、半導体素子100のp型拡散層3あるいはnウェル2にバイアスを印加することにより共振周波数が変化することを利用して、カットオフ周波数や中心周波数を可変なフィルタとして用いてもよい。
【0059】
(第5の実施形態)
上述したフィルタは種々の装置に用いることができるが、第5の実施形態はフィルタを無線通信装置に用いるものである。
【0060】
図16は、無線通信装置200の構成を示す概略ブロック図である。無線通信装置200は、受信部210と、送信部220と、受信部210および送信部220に基準信号を供給する発振器(LO)230と、アンテナ300から受信する信号を受信部に供給し、アンテナ300から送信する信号を送信部に供給するスイッチ(SWITCH)240とを備えている。
【0061】
受信部210は、BPF211と、ロウノイズアンプ(第1のアンプ、LNA)212と、ミキサ(MIX)213と、LPF214とを有する。BPF211は、アンテナ300で受信してスイッチ240を介して供給される受信信号から、受信したい周波数近傍の信号成分のみを通過させて、LNA212へ供給する。LNA212は受信信号を増幅して、ミキサ213に供給する。ミキサ213は増幅された受信信号を基準信号に基づいて復調し、LPF214に供給する。LPF214は所定周波数以下の信号成分のみを通過させて、出力する。出力された信号は外部のベースバンドLSI等に供給され、アナログ信号からデジタル信号に変換された後、種々の処理が行われる。
【0062】
一方、送信部220は、LPF221と、ミキサ222と、パワーアンプ(第2のアンプ、PA)223と、BPF224とを有する。LPF221は、外部のベースバンドLSI等から供給される送信信号における、所定周波数以下の信号成分のみを通過させて、ミキサ222に供給する。ミキサ222は送信信号を基準信号に基づいて変調し、パワーアンプ223に供給する。パワーアンプ223は送信信号を増幅し、BPF224に供給する。BPF224は所定の周波数近傍の信号成分のみを通過させて、スイッチ240に供給する。
【0063】
図16のLPF214,221として、第1の実施形態で説明したLPF10を用いることができる。また、BPF211,234として、第2の実施形態で説明したBPF30を用いることができる。これにより、無線通信装置200として必要な、カットオフ周波数が十〜数百MHzであり、かつ、急峻な周波数特性を有する小型のフィルタを実現できる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 シリコン基板
2 nウェル
3 p型拡散層
4 SiO
5a,5b コンタクト
6a,6b 配線
7 溝
10,15,214,221 LPF
20,25 HPF
30,211,224 BPF
40 BRF
100,100a,100b 半導体素子
200 無線通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力される信号を、予め定めたカットオフ周波数以上の信号成分の減衰量が所定量以上となるように通過させて出力端子から出力するロウパスフィルタであって、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された半導体素子と、
前記出力端子と接地端子との間に接続された容量と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、
前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有することを特徴とするロウパスフィルタ。
【請求項2】
前記半導体素子は、
前記第1のコンタクトと前記第2のコンタクトとの間に直列に形成される第1の抵抗成分、インダクタンス成分および容量成分と、
前記第1の抵抗成分、前記インダクタンス成分および前記容量成分と並列に形成される第2の抵抗成分と、を有することを特徴とする請求項1に記載のロウパスフィルタ。
【請求項3】
前記音響波反射層は、前記半導体基板に形成された溝に埋め込まれた絶縁体材料であることを特徴とする請求項1または2に記載のロウパスフィルタ。
【請求項4】
前記音響波反射層は、前記音響波伝播層を取り囲むように形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のロウバスフィルタ。
【請求項5】
前記音響波伝播層は、前記半導体基板に形成された不純物拡散層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のロウパスフィルタ。
【請求項6】
前記半導体基板または前記音響波伝播層に所定のバイアスを印加可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のロウパスフィルタ。
【請求項7】
入力端子に入力される信号を、予め定めたカットオフ周波数以下の信号成分の減衰量が所定量以上となるように通過させて出力端子から出力するハイパスフィルタであって、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された容量と、
前記出力端子に接続された半導体素子と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記出力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、を有することを特徴とするハイパスフィルタ。
【請求項8】
入力端子に入力される信号を、予め定めた中心周波数における信号成分の減衰量が極小となるように通過させて出力端子から出力するバンドパスフィルタであって、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された半導体素子と、
前記出力端子と接地端子との間に接続された抵抗と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、
前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有することを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項9】
入力端子に入力される信号を、予め定めた中心周波数における信号成分の減衰量が極大となるように通過させて出力端子から出力するバンドリジェクトフィルタであって、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された抵抗と、
前記出力端子に接続された半導体素子と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記出力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、を有することを特徴とするバンドリジェクトフィルタ。
【請求項10】
アンテナで受信した受信信号から特定の信号成分を通過させる第1のバンドパスフィルタと、前記第1のバンドパスフィルタの出力信号を増幅する第1のアンプと、前記第1のアンプの出力信号を基準信号に基づいて復調する第1のミキサと、前記第1のミキサの出力信号を予め定めたカットオフ周波数以上の信号成分の減衰量が所定量以上となるように通過させて外部に出力する第1のロウパスフィルタと、を有する受信部と、
外部から入力される送信信号を予め定めたカットオフ周波数以上の信号成分の減衰量が所定量以上となるように通過させる第2のロウパルフィルタと、前記第2のロウパスフィルタの出力信号を前記基準信号に基づいて変調する第2のミキサと、前記第2のミキサの出力信号を増幅する第2のアンプと、前記第2のアンプの出力信号から特定の信号成分を通過させる第2のバンドパスフィルタと、を有する送信部と、のうちの少なくとも1つを備え、
前記第1および第2のロウパスフィルタのうちの少なくとも1つは、
入力端子と出力端子との間に接続された半導体素子と、
前記出力端子と接地端子との間に接続された容量と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、
前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項11】
前記第1および第2のバンドパスフィルタのうちの少なくとも1つは、入力端子に入力される信号を、予め定めた中心周波数における信号成分の減衰量が極小となるように通過させて出力端子から出力するバンドパスフィルタであって、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された半導体素子と、
前記出力端子と接地端子との間に接続された抵抗と、を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成され、前記入力端子と電気的に接続される第1のコンタクトと、
前記音響波伝播層上に前記第1のコンタクトとは離れて形成され、前記出力端子と電気的に接続される第2のコンタクトと、を有することを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項12】
入力信号を、予め定めた周波数における信号成分の減衰量が所定量となるように、あるいは、前記予め定めた周波数における信号成分の減衰量が極小または極大となるように通過させて、出力するフィルタであって、
前記入力信号が入力される半導体素子を備え、
前記半導体素子は、
半導体基板と、
前記半導体基板に、前記カットオフ周波数に応じた長さの長辺と、前記長辺より短い短辺と、を有する形状で形成される音響波伝播層と、
少なくとも前記音響波伝播層の長辺方向の両端に形成される音響波反射層と、
前記音響波伝播層上に形成される第1のコンタクトと、を有することを特徴とするフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−9151(P2013−9151A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140425(P2011−140425)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】