ロウ付け流路板
【課題】対をなすブレージングシートを用いて形成するロウ付け流路板において、溶けたロウ材が流路を塞ぐ可能性が少ないロウ付け流路板を得る。
【解決手段】金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートの接着対向面に、上記流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したロウ付け流路板。
【解決手段】金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートの接着対向面に、上記流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したロウ付け流路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通過する液体を冷却するラジエータに用いるロウ付け流路板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発熱するCPU(熱源)の冷却システムは、CPUに当接して熱を奪うヒートシンクと、ラジエータと、このヒートシンクとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを基本構成要素としており、各要素について、ノートPCのような小型な機器に搭載可能なように、小型化と高信頼性が図られている。
【0003】
このうち、ラジエータには一般に、金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着したロウ付け流路板が用いられている。ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方には、流路を形成する凹部が形成されており、一対のブレージングシートを重ねた状態で加熱することで、ロウ材を溶かして接着する。このようなブレージングシートを用いたロウ付け流路板の接着構造及び接着方法はよく知られている。
【0004】
このようなロウ付け流路板では、溶けた余分なロウ材が流路を塞ぐことがあるという問題があった。このため、既に、一対のブレージングシートの外周部に、「くちばし」と呼ばれる外方曲折部を設け、この外方曲折部内に溶けた余分なロウ材を毛細管現象により吸収し収納することが提案されている。
【特許文献1】特開平6-97338号公報
【特許文献2】特開2003-8273号公報
【特許文献3】特開2003-324174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本出願人が開発を進めているラジエータは、極限までの薄型化、小型化を要求されており、外周部に「くちばし」を有するロウ付け流路板は、複数を重ねたとき、相互の間の空気流通空間が犠牲になり、効率的な放熱ができない。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づき、対をなすブレージングシートを用いて形成するロウ付け流路板において、外周部に「くちばし」を設ける構成をとることなく、溶けたロウ材が流路を塞ぐ可能性が少ないロウ付け流路板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、その第一の態様では、一対のブレージングシートの接着対向面に、流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したことを特徴としている。
【0008】
この楔状流路は、ロウ材が奥部に容易に進入して流路面積を確保することができるように、接着対向面に対するなす角度が小さい緩角度楔部と、同角度が大きい急角度楔部とから構成することが好ましい。
【0009】
一対のブレージングシートは、その流路回りの形状を接着対向面に関して対称形状とすることができる。あるいは、緩角度楔部は、一対のブレージングシートの一方のみに形成し、非対称とすることが可能である。
【0010】
本発明は、第二の態様では、対をなすブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、流路の一部を、他の部分の流路幅より幅広に形成し、この幅広部分をロウ材収納空間としたことを特徴としている。
【0011】
流路が曲折部を有する場合には、その曲折部に、ロウ材収納空間を形成することができる。この曲折部は具体的にはU字状の折り返し部である。
【0012】
このロウ材収納空間における一対のブレージングシートの対向面の間隔は、他の流路部分の間隔より狭く設定すると、毛細管現象によるロウ材の進入をより促進することができる。
【0013】
一対のブレージングシートによって形成される流路は、少なくとも1回U字状に曲折された折り返し流路とし、このU字状流路の両端部に、流体の入口孔と出口孔を形成することができる。
【0014】
そして、この入口孔と出口孔に連通させて、該入口孔と出口孔を結ぶ流路とは反対方向に向くロウ材収納空間を形成すると、流路に影響を与えることなく、ロウ材収納空間を形成することができる。
【0015】
一対のブレージングシートには、入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を形成し、重ね合わされたロウ付け流路板のスペーサ部を互いに当接させて、重ね合わされたロウ付け流路板の残部に空気通過空間を構成することができる。
【0016】
一対のブレージングシートには、以上のスペーサ部とは別に、複数のロウ付け流路板を重ね合わせたときに互いに当接し各ロウ付け流路板の間に空間を確保するスペーサ突起を一体に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対をなすブレージングシートを用いて形成するロウ付け流路板において、外周部に「くちばし」を設ける構成をとることなく、溶けたロウ材が流路を塞ぐ可能性が少ないロウ付け流路板を得ることができ、かつ複数のロウ付け流路板間の空気通過を妨げることのない高い冷却効率を有するラジエータを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図13は、本発明によるロウ付け流路板30を複数組み合わせて構成するラジエータ20を有するCPU(発熱源)10の水冷システムの概念図である。CPU10は、伝熱性ヒートシンク11に接触しており、液体ポンプ12から伝熱性ヒートシンク11に供給される冷却液は、伝熱性ヒートシンク11内の流路を流れてCPU10から熱を奪う。伝熱性ヒートシンク11で昇温した冷却液は、ラジエータ20の液流路21を流れる間に冷却ファン22からの冷却風を受けて冷却され、再び液体ポンプ12に戻り、以下この循環を繰り返す。
【0019】
図12は、複数のロウ付け流路板30を用いたラジエータ20の一例を示す斜視図である。複数段(図示例では5段)に重ねられたロウ付け流路板30は、流路ブロック40により接続結合されている。流路ブロック40は、入口ライン23と出口ライン24を有するアッパボディ41と、このアッパボディ41との間に5段のロウ付け流路板30を挟着保持するロワボディ42とを有している。アッパボディ41とロアボディ42の締付距離はスペーサ脚41Sが規制する。各ロウ付け流路板30は、最上段及び最下段のロウ付け流路板30を除き同一構造である。
【0020】
図1ないし図6は、ロウ付け流路板30の具体的な実施形態を示している。各ロウ付け流路板30は、重ね合わせて結合される一対のブレージングプレート34Uと34Lによって構成されている。ブレージングプレート34Uと34Lは、図11に模式的に示すように、金属材料(一般的にアルミニウム合金)からなるシート芯材3aと、このシート芯材3aの表裏に付着形成したロウ材3bとを備えた周知のもので、プレス加工によって流路凹部を形成可能であり、かつ一対を当接させて加圧下で加熱することにより、ロウ材3bが溶融して互いに接着される。一般的にブレージングプレート34U(34L)は、0.2mm程度の厚さを有するもので、必要に応じて厚さを変更することができ、本発明は、ブレージングシートの構成は問わない。
【0021】
各ブレージングプレート34U(34L)は細長形状をなしており、平坦な接着対向面35に、平面U字状の流路凹部36を有している。U字状流路凹部36の両端部(U字状折返部の反対側の端部)には、入口孔31と出口孔32が穿設されている。この入口孔31と出口孔32は、U字状流路凹部36部分より外方に突出させてブレージングプレート34U(34L)に形成したスペーサ部37とスペーサ38部に形成されている。また、ブレージングプレート34U(34L)には、スペーサ部37(38)の反対側に位置させて、該スペーサ部37(38)と同一高さの別のスペーサ突起39が穿設されている。
【0022】
ブレージングプレート34U(34L)には、U字状流路凹部36の延長方向の両側に位置させて、接着対向面35の平面に対して楔状をなす楔状凹部5が形成されている。この楔状凹部5は、図4に拡大して示すように、U字状流路凹部36の中心部側から順に、接着対向面35に対するなす角度が大きい急角度楔部5aと、同角度が小さい緩角度楔部5bとを有しており、両楔部は滑らかな曲面で接続されている。
【0023】
また、一対のブレージングシート34U(34L)には、入口孔31と出口孔32に連通させて、U字状流路凹部36(液流路33)とは反対方向に向く、流路とは無関係の(流路を構成することのない)ロウ材収納凹部2a(図7、図8参照)が形成されている。
【0024】
以上のブレージングプレート34Uと34Lは、U字状流路凹部36が外側に向くように向きを反対にして重ね合わされ、接着対向面35どうしを当接させて加熱することにより接合される。すると、上下の互いに反対方向に突出するU字状流路凹部36により冷却液流路33が形成される。この冷却液流路33は、図8に明らかなように、偏平な形状をなしており、その冷却液流路33の延長方向の両側には、表裏の楔状凹部5(急角度楔部5aと緩角度楔部5b)によって楔状空間6が形成される。この楔状空間6には、図4、図6にハッチングを付して示すように、ブレージングプレート34Uと34Lを加熱接着するときに溶けるロウ材3bが入り込み、同時に、対向する一対のロウ材収納凹部2aにより、ロウ材収納空間2が形成されてこのロウ材収納空間2にもロウ材3bが入り込むため、冷却液流路33を塞ぐことが少ない。
【0025】
また、上下のロウ付け流路板30のスペーサ部37(38)どうしが当接して上下のロウ付け流路板30の入口孔31どうし、出口孔32どうしがそれぞれ連通し、入口ライン23の一部及び出口ライン24の一部が構成される。最下段のロウ付け流路板30の下方のブレージングプレート34Lのスペーサ部37(38)には、入口孔31(出口孔32)が穿設されていない。両孔31、32を穿設しないことで、最下方のブレージングプレート34Lを得ることができる。上下のロウ付け流路板30のスペーサ突起39は、上下のロウ付け流路板30のスペーサ部37(38)どうしが当接するとき、同時に当接して上下のロウ付け流路板30のU字状流路凹部36(冷却液流路33)の間に冷却空気通過空間Sを構成する。
【0026】
図4では、ブレージングプレート34Uと34Lを同一(対称)形状としたが、図5のように、一方のブレージングプレート34Uのみに緩角度楔部5bを形成してもよい。この実施形態によると、楔状空間6を一層狭くすることができ、毛細管現象によるロウ材の進入を促進させることができる。
【0027】
図7及び図8は、本発明によるロウ付け流路板30の別の実施形態を示している。この実施形態では、冷却液流路33(U字状流路凹部36)の一部、すなわち図示実施形態では、U字状曲折部を、図7においてハッチングを付して示すように、他の部分より幅広に形成し、その幅広部分をロウ材収納空間7としている。ブレージングプレート34Uと34Lを加熱接着するときに溶けるロウ材3bはこのロウ材収納空間7に入り込み、冷却液流路33を塞ぐことが少ない。
【0028】
図9及び図10は、このロウ材収納空間7における一対のブレージングシート34Uと34Lの対向面の間隔tを、他の流路部分の間隔Tより狭く設定した実施形態である。この実施形態によれば、毛細管現象によるロウ材の進入をより促進することができる。
【0029】
以上の実施形態では、ロウ付け流路板30(ブレージングプレート34U(34L))に、U字状流路凹部36の延長方向の両側に位置させて楔状凹部5(楔状空間)を形成したが、いずれか一方のみでも一定のロウ材収納効果が期待できる。また各ロウ付け流路板30(ブレージングプレート34U(34L))に、一つのU字状流路を形成したが、S字状、あるいは複数回の折返状の流路を形成することもできる。さらに、スペーサ突起39は、ブレージングプレート34U(34L)の長さ方向に関し、スペーサ部37(38)の反対側に設けているため、ロウ付け流路板30の間隔をバランスよく保つことができるという利点があるが、別の部分にスペーサ突起を設けてもよいし、ロウ付け流路板30の間隔を保つことができれば、スペーサ突起39は無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のロウ付け流路板の一実施形態を示す平面図である。
【図2】同ロウ付け流路板を5段重ねた実施形態を示す側面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図3のIV部拡大断面図である。
【図5】本発明のロウ付け流路板の別の実施形態を示す、図3に対応する断面図である。
【図6】図1の一部拡大図である。
【図7】本発明によるロウ付け流路板の別の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】本発明によるロウ付け流路板のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図10】図9のX-X線に沿う断面図である。
【図11】ブレージングプレートの概念断面図である。
【図12】ロウ付け流路板を5段重ねたラジエータの斜視図である。
【図13】ロウ付け流路板を含む冷却システムの概念図である。
【符号の説明】
【0031】
30 ロウ付け流路板
31 入口孔
32 出口孔
33 冷却液流路(流路)
34U 34L ブレージングプレート
35 接着対向面
36 U字状流路凹部
37 38 スペーサ部
39 スペーサ突起
3a 芯材
3b ロウ材
5 楔状凹部
5a 急角度楔部
5b 緩角度楔部
6 楔状空間
7 ロウ材収納空間
S 冷却空気通過空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば通過する液体を冷却するラジエータに用いるロウ付け流路板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発熱するCPU(熱源)の冷却システムは、CPUに当接して熱を奪うヒートシンクと、ラジエータと、このヒートシンクとラジエータの間で冷却液を循環させる液体ポンプとを基本構成要素としており、各要素について、ノートPCのような小型な機器に搭載可能なように、小型化と高信頼性が図られている。
【0003】
このうち、ラジエータには一般に、金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着したロウ付け流路板が用いられている。ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方には、流路を形成する凹部が形成されており、一対のブレージングシートを重ねた状態で加熱することで、ロウ材を溶かして接着する。このようなブレージングシートを用いたロウ付け流路板の接着構造及び接着方法はよく知られている。
【0004】
このようなロウ付け流路板では、溶けた余分なロウ材が流路を塞ぐことがあるという問題があった。このため、既に、一対のブレージングシートの外周部に、「くちばし」と呼ばれる外方曲折部を設け、この外方曲折部内に溶けた余分なロウ材を毛細管現象により吸収し収納することが提案されている。
【特許文献1】特開平6-97338号公報
【特許文献2】特開2003-8273号公報
【特許文献3】特開2003-324174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本出願人が開発を進めているラジエータは、極限までの薄型化、小型化を要求されており、外周部に「くちばし」を有するロウ付け流路板は、複数を重ねたとき、相互の間の空気流通空間が犠牲になり、効率的な放熱ができない。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づき、対をなすブレージングシートを用いて形成するロウ付け流路板において、外周部に「くちばし」を設ける構成をとることなく、溶けたロウ材が流路を塞ぐ可能性が少ないロウ付け流路板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、その第一の態様では、一対のブレージングシートの接着対向面に、流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したことを特徴としている。
【0008】
この楔状流路は、ロウ材が奥部に容易に進入して流路面積を確保することができるように、接着対向面に対するなす角度が小さい緩角度楔部と、同角度が大きい急角度楔部とから構成することが好ましい。
【0009】
一対のブレージングシートは、その流路回りの形状を接着対向面に関して対称形状とすることができる。あるいは、緩角度楔部は、一対のブレージングシートの一方のみに形成し、非対称とすることが可能である。
【0010】
本発明は、第二の態様では、対をなすブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、流路の一部を、他の部分の流路幅より幅広に形成し、この幅広部分をロウ材収納空間としたことを特徴としている。
【0011】
流路が曲折部を有する場合には、その曲折部に、ロウ材収納空間を形成することができる。この曲折部は具体的にはU字状の折り返し部である。
【0012】
このロウ材収納空間における一対のブレージングシートの対向面の間隔は、他の流路部分の間隔より狭く設定すると、毛細管現象によるロウ材の進入をより促進することができる。
【0013】
一対のブレージングシートによって形成される流路は、少なくとも1回U字状に曲折された折り返し流路とし、このU字状流路の両端部に、流体の入口孔と出口孔を形成することができる。
【0014】
そして、この入口孔と出口孔に連通させて、該入口孔と出口孔を結ぶ流路とは反対方向に向くロウ材収納空間を形成すると、流路に影響を与えることなく、ロウ材収納空間を形成することができる。
【0015】
一対のブレージングシートには、入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を形成し、重ね合わされたロウ付け流路板のスペーサ部を互いに当接させて、重ね合わされたロウ付け流路板の残部に空気通過空間を構成することができる。
【0016】
一対のブレージングシートには、以上のスペーサ部とは別に、複数のロウ付け流路板を重ね合わせたときに互いに当接し各ロウ付け流路板の間に空間を確保するスペーサ突起を一体に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対をなすブレージングシートを用いて形成するロウ付け流路板において、外周部に「くちばし」を設ける構成をとることなく、溶けたロウ材が流路を塞ぐ可能性が少ないロウ付け流路板を得ることができ、かつ複数のロウ付け流路板間の空気通過を妨げることのない高い冷却効率を有するラジエータを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図13は、本発明によるロウ付け流路板30を複数組み合わせて構成するラジエータ20を有するCPU(発熱源)10の水冷システムの概念図である。CPU10は、伝熱性ヒートシンク11に接触しており、液体ポンプ12から伝熱性ヒートシンク11に供給される冷却液は、伝熱性ヒートシンク11内の流路を流れてCPU10から熱を奪う。伝熱性ヒートシンク11で昇温した冷却液は、ラジエータ20の液流路21を流れる間に冷却ファン22からの冷却風を受けて冷却され、再び液体ポンプ12に戻り、以下この循環を繰り返す。
【0019】
図12は、複数のロウ付け流路板30を用いたラジエータ20の一例を示す斜視図である。複数段(図示例では5段)に重ねられたロウ付け流路板30は、流路ブロック40により接続結合されている。流路ブロック40は、入口ライン23と出口ライン24を有するアッパボディ41と、このアッパボディ41との間に5段のロウ付け流路板30を挟着保持するロワボディ42とを有している。アッパボディ41とロアボディ42の締付距離はスペーサ脚41Sが規制する。各ロウ付け流路板30は、最上段及び最下段のロウ付け流路板30を除き同一構造である。
【0020】
図1ないし図6は、ロウ付け流路板30の具体的な実施形態を示している。各ロウ付け流路板30は、重ね合わせて結合される一対のブレージングプレート34Uと34Lによって構成されている。ブレージングプレート34Uと34Lは、図11に模式的に示すように、金属材料(一般的にアルミニウム合金)からなるシート芯材3aと、このシート芯材3aの表裏に付着形成したロウ材3bとを備えた周知のもので、プレス加工によって流路凹部を形成可能であり、かつ一対を当接させて加圧下で加熱することにより、ロウ材3bが溶融して互いに接着される。一般的にブレージングプレート34U(34L)は、0.2mm程度の厚さを有するもので、必要に応じて厚さを変更することができ、本発明は、ブレージングシートの構成は問わない。
【0021】
各ブレージングプレート34U(34L)は細長形状をなしており、平坦な接着対向面35に、平面U字状の流路凹部36を有している。U字状流路凹部36の両端部(U字状折返部の反対側の端部)には、入口孔31と出口孔32が穿設されている。この入口孔31と出口孔32は、U字状流路凹部36部分より外方に突出させてブレージングプレート34U(34L)に形成したスペーサ部37とスペーサ38部に形成されている。また、ブレージングプレート34U(34L)には、スペーサ部37(38)の反対側に位置させて、該スペーサ部37(38)と同一高さの別のスペーサ突起39が穿設されている。
【0022】
ブレージングプレート34U(34L)には、U字状流路凹部36の延長方向の両側に位置させて、接着対向面35の平面に対して楔状をなす楔状凹部5が形成されている。この楔状凹部5は、図4に拡大して示すように、U字状流路凹部36の中心部側から順に、接着対向面35に対するなす角度が大きい急角度楔部5aと、同角度が小さい緩角度楔部5bとを有しており、両楔部は滑らかな曲面で接続されている。
【0023】
また、一対のブレージングシート34U(34L)には、入口孔31と出口孔32に連通させて、U字状流路凹部36(液流路33)とは反対方向に向く、流路とは無関係の(流路を構成することのない)ロウ材収納凹部2a(図7、図8参照)が形成されている。
【0024】
以上のブレージングプレート34Uと34Lは、U字状流路凹部36が外側に向くように向きを反対にして重ね合わされ、接着対向面35どうしを当接させて加熱することにより接合される。すると、上下の互いに反対方向に突出するU字状流路凹部36により冷却液流路33が形成される。この冷却液流路33は、図8に明らかなように、偏平な形状をなしており、その冷却液流路33の延長方向の両側には、表裏の楔状凹部5(急角度楔部5aと緩角度楔部5b)によって楔状空間6が形成される。この楔状空間6には、図4、図6にハッチングを付して示すように、ブレージングプレート34Uと34Lを加熱接着するときに溶けるロウ材3bが入り込み、同時に、対向する一対のロウ材収納凹部2aにより、ロウ材収納空間2が形成されてこのロウ材収納空間2にもロウ材3bが入り込むため、冷却液流路33を塞ぐことが少ない。
【0025】
また、上下のロウ付け流路板30のスペーサ部37(38)どうしが当接して上下のロウ付け流路板30の入口孔31どうし、出口孔32どうしがそれぞれ連通し、入口ライン23の一部及び出口ライン24の一部が構成される。最下段のロウ付け流路板30の下方のブレージングプレート34Lのスペーサ部37(38)には、入口孔31(出口孔32)が穿設されていない。両孔31、32を穿設しないことで、最下方のブレージングプレート34Lを得ることができる。上下のロウ付け流路板30のスペーサ突起39は、上下のロウ付け流路板30のスペーサ部37(38)どうしが当接するとき、同時に当接して上下のロウ付け流路板30のU字状流路凹部36(冷却液流路33)の間に冷却空気通過空間Sを構成する。
【0026】
図4では、ブレージングプレート34Uと34Lを同一(対称)形状としたが、図5のように、一方のブレージングプレート34Uのみに緩角度楔部5bを形成してもよい。この実施形態によると、楔状空間6を一層狭くすることができ、毛細管現象によるロウ材の進入を促進させることができる。
【0027】
図7及び図8は、本発明によるロウ付け流路板30の別の実施形態を示している。この実施形態では、冷却液流路33(U字状流路凹部36)の一部、すなわち図示実施形態では、U字状曲折部を、図7においてハッチングを付して示すように、他の部分より幅広に形成し、その幅広部分をロウ材収納空間7としている。ブレージングプレート34Uと34Lを加熱接着するときに溶けるロウ材3bはこのロウ材収納空間7に入り込み、冷却液流路33を塞ぐことが少ない。
【0028】
図9及び図10は、このロウ材収納空間7における一対のブレージングシート34Uと34Lの対向面の間隔tを、他の流路部分の間隔Tより狭く設定した実施形態である。この実施形態によれば、毛細管現象によるロウ材の進入をより促進することができる。
【0029】
以上の実施形態では、ロウ付け流路板30(ブレージングプレート34U(34L))に、U字状流路凹部36の延長方向の両側に位置させて楔状凹部5(楔状空間)を形成したが、いずれか一方のみでも一定のロウ材収納効果が期待できる。また各ロウ付け流路板30(ブレージングプレート34U(34L))に、一つのU字状流路を形成したが、S字状、あるいは複数回の折返状の流路を形成することもできる。さらに、スペーサ突起39は、ブレージングプレート34U(34L)の長さ方向に関し、スペーサ部37(38)の反対側に設けているため、ロウ付け流路板30の間隔をバランスよく保つことができるという利点があるが、別の部分にスペーサ突起を設けてもよいし、ロウ付け流路板30の間隔を保つことができれば、スペーサ突起39は無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のロウ付け流路板の一実施形態を示す平面図である。
【図2】同ロウ付け流路板を5段重ねた実施形態を示す側面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図3のIV部拡大断面図である。
【図5】本発明のロウ付け流路板の別の実施形態を示す、図3に対応する断面図である。
【図6】図1の一部拡大図である。
【図7】本発明によるロウ付け流路板の別の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【図9】本発明によるロウ付け流路板のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図10】図9のX-X線に沿う断面図である。
【図11】ブレージングプレートの概念断面図である。
【図12】ロウ付け流路板を5段重ねたラジエータの斜視図である。
【図13】ロウ付け流路板を含む冷却システムの概念図である。
【符号の説明】
【0031】
30 ロウ付け流路板
31 入口孔
32 出口孔
33 冷却液流路(流路)
34U 34L ブレージングプレート
35 接着対向面
36 U字状流路凹部
37 38 スペーサ部
39 スペーサ突起
3a 芯材
3b ロウ材
5 楔状凹部
5a 急角度楔部
5b 緩角度楔部
6 楔状空間
7 ロウ材収納空間
S 冷却空気通過空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、
上記一対のブレージングシートの接着対向面に、上記流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したことを特徴とするロウ付け流路板。
【請求項2】
請求項1記載のロウ付け流路板において、上記楔状流路は、接着対向面に対するなす角度が小さい緩角度楔部と、同角度が大きい急角度楔部とを有しているロウ付け流路板。
【請求項3】
請求項1または2記載のロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートの流路回りは接着対向面に関して対称形状であるロウ付け流路板。
【請求項4】
請求項1または2記載のロウ付け流路板において、上記緩角度楔部は、一対のブレージングシートの一方のみに形成されているロウ付け流路板。
【請求項5】
金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、
上記流路の一部を、他の部分の流路幅より幅広に形成し、この幅広部分をロウ材収納空間としたことを特徴とするロウ付け流路板。
【請求項6】
請求項5記載のロウ付け流路板において、上記流路は曲折部を有しており、該曲折部に、上記ロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項7】
請求項6記載のロウ付け流路板において、上記流路は曲折部を有しており、該曲折部に、上記ロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項8】
請求項5または6記載のロウ付け流路板において、上記ロウ材収納空間における一対のブレージングシートの対向面の間隔は、他の流路部分の同間隔より狭く設定されているロウ付け流路板。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートによって形成される流路は、少なくとも1回U字状に曲折されており、このU字状流路の両端部に、流体の入口孔と出口孔が形成されているロウ付け流路板。
【請求項10】
請求項9記載のロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートには、上記入口孔と出口孔に連通させて、該入口孔と出口孔を結ぶ流路とは反対方向に向くロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項11】
請求項9または10記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートは、上記入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を有し、重ね合わされたロウ付け流路板のスペーサ部が互いに当接して、重ね合わされたロウ付け流路板の残部に空気通過空間を構成するロウ付け流路板。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか1項記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートには、複数のロウ付け流路板を重ね合わせたときに互いに当接し各ロウ付け流路板の間に空間を確保するスペーサ突起が一体に形成されているロウ付け流路板。
【請求項1】
金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、
上記一対のブレージングシートの接着対向面に、上記流路の延長方向の少なくとも一方の側に位置させて、ロウ材が毛細管現象で進入する楔状空間を形成したことを特徴とするロウ付け流路板。
【請求項2】
請求項1記載のロウ付け流路板において、上記楔状流路は、接着対向面に対するなす角度が小さい緩角度楔部と、同角度が大きい急角度楔部とを有しているロウ付け流路板。
【請求項3】
請求項1または2記載のロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートの流路回りは接着対向面に関して対称形状であるロウ付け流路板。
【請求項4】
請求項1または2記載のロウ付け流路板において、上記緩角度楔部は、一対のブレージングシートの一方のみに形成されているロウ付け流路板。
【請求項5】
金属材料からなるシート芯材と、このシート芯材の表裏に付着形成したロウ材とを有するブレージングシートを表裏の対として接着し、該ブレージングシートの接着対向面の少なくとも一方に形成した凹部によって流路を形成するロウ付け流路板において、
上記流路の一部を、他の部分の流路幅より幅広に形成し、この幅広部分をロウ材収納空間としたことを特徴とするロウ付け流路板。
【請求項6】
請求項5記載のロウ付け流路板において、上記流路は曲折部を有しており、該曲折部に、上記ロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項7】
請求項6記載のロウ付け流路板において、上記流路は曲折部を有しており、該曲折部に、上記ロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項8】
請求項5または6記載のロウ付け流路板において、上記ロウ材収納空間における一対のブレージングシートの対向面の間隔は、他の流路部分の同間隔より狭く設定されているロウ付け流路板。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートによって形成される流路は、少なくとも1回U字状に曲折されており、このU字状流路の両端部に、流体の入口孔と出口孔が形成されているロウ付け流路板。
【請求項10】
請求項9記載のロウ付け流路板において、上記一対のブレージングシートには、上記入口孔と出口孔に連通させて、該入口孔と出口孔を結ぶ流路とは反対方向に向くロウ材収納空間が形成されているロウ付け流路板。
【請求項11】
請求項9または10記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートは、上記入口孔と出口孔部分において外方に突出するスペーサ部を有し、重ね合わされたロウ付け流路板のスペーサ部が互いに当接して、重ね合わされたロウ付け流路板の残部に空気通過空間を構成するロウ付け流路板。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれか1項記載のロウ付け流路板において、一対のブレージングシートには、複数のロウ付け流路板を重ね合わせたときに互いに当接し各ロウ付け流路板の間に空間を確保するスペーサ突起が一体に形成されているロウ付け流路板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−190775(P2008−190775A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25558(P2007−25558)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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