説明

ロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法

【課題】第1に、ロジウム触媒が確実に被毒解除されると共に、第2に、これは簡単容易に実現され、第3に、更に亜酸化窒素の還元,分解への参画も考えられる、ロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法を提案する。
【解決手段】この被毒解除システムおよび被毒解除方法において、ロジウム触媒1は、排気ガス2中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で、窒素と酸素に還元,分解する。被毒物質は、ロジウム触媒1表面に吸着した硫黄化合物、代表的には硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオンよりなる。そして、被毒物質にて被毒したロジウム触媒1の被毒解除は、水素を供給することにより実施される。すなわち水素供給により、硫黄化合物より還元性の強い発生期の原子状水素が生成され、もって硫黄化合物に代わってロジウム触媒1表面に吸着することにより、被毒解除が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法に関する。すなわち、亜酸化窒素の還元,分解に用いられるロジウム触媒について、その被毒を解除して再生させる、システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
亜酸化窒素は、麻酔用,食品用,その他に使用されているが、最近は、地球温暖化ガス,温室効果ガスの原因物質として、二酸化炭素等と並んでその削減がクローズアップされている。すなわち亜酸化窒素は、大気中に放出されると、地球温暖化の原因物質となり、二酸化炭素の約310倍程度の温暖化効果があるとされており、今後その削減要請が一層高まると予想される。
【0003】
《従来技術》
この亜酸化窒素の発生源としては、化学工場等の排気ガスが代表的である。例えば、アンモニアの酸化工程を経由した排気ガス中には、副生物として亜酸化窒素が含有されている。
このような排気ガス中の亜酸化窒素の分解,除去については、現在検討,開発段階にある。代表的には、この排気ガスを亜酸化窒素の熱分解温度にて高温加熱し、もって亜酸化窒素を、窒素と酸素に還元,熱分解する技術(熱分解法)がある。他方、この排気ガスについて、アルミナ,ゼオライト,酸化亜鉛等を触媒付で適用し、もって亜酸化窒素を、窒素と酸素に還元,分解する技術(触媒分解法)も開発されている。
しかしながら、このような熱分解法や触媒分解法は、高濃度の亜酸化窒素を含有した排気ガスの還元,分解には適しているが、低濃度の亜酸化窒素の還元,分解に適用すると、種々の問題が指摘されていた。すなわち、設備コスト,燃料コスト等が嵩むと共に、SV値を低くすることを要し、実用化,工業化が困難な状況にあった。
このような状況に鑑み、本特許出願の発明者や出願人は、研究,開発を進めた結果、ロジウムを採用した「亜酸化窒素の分解触媒および分解,除去方法」を発明し、特願2008−012234として特許出願した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《課題について》
ところで、この発明については、次のような指摘があった。すなわち、ロジウム触媒を採用すると共に特許出願した「亜酸化窒素の分解触媒および分解,除去方法」は、前述した熱分解法や触媒分解法の問題点を解決し、諸コスト面に優れ、高いSV値のもとで、確実に亜酸化窒素の還元,分解,除去が実現でき、極めて優れた発明である。
唯、使用による分解率低下が、課題として指摘されていた。例えば、テストデータによると、使用当初は99%以上の亜酸化窒素分解率であったものが、経時使用により40%〜60%程度に低下することがあった(SV値10,000/h,温度500℃)。
このような分解率低下の原因としては、ロジウム触媒表面への被毒物質の吸着が推測されるに至った。すなわち、還元,分解対象の亜酸化窒素は、排気ガス中に含有されて供給されるが、この種の排気ガス中には、硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオン等の硫黄化合物が、混入されているケースが多々ある。
そして、この排気ガス中の硫黄化合物が、ロジウム触媒表面に吸着されて被毒物質となり、ロジウム触媒が被毒され、もって亜酸化窒素の還元,分解に支障が生じ、分解率の低下が指摘されていた。
【0005】
《本発明について》
本発明のロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、ロジウム触媒が確実に被毒解除されると共に、第2に、これは簡単容易に実現され、第3に、更に亜酸化窒素の還元,分解への参画も考えられる、ロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法を、提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の特許請求の範囲記載の技術的手段は、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。請求項1のロジウム触媒の被毒解除システムにおいて、該ロジウム触媒は、排気ガス中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で、窒素と酸素に還元,分解する。被毒物質は、該ロジウム触媒表面に吸着した硫黄化合物よりなる。
そして、該被毒物質による該ロジウム触媒の被毒解除が、水素供給により実施されること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2のロジウム触媒の被毒解除システムでは、請求項1において、該被毒物質は、硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオンよりなること、を特徴とする。
【0007】
請求項3については、次のとおり。請求項3のロジウム触媒の被毒解除方法において、該ロジウム触媒は、その原子構造のN殻4d軌道の2個の電子欠損空孔である正孔の電子収奪作用、およびO殻5s軌道の1個の不対電子の電子供与作用に基づき、供給される排気ガス中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で、窒素と酸素に還元,分解する。
そして、このような亜酸化窒素の還元,分解に際し、該排気ガス中に含有されていた硫黄化合物が、該ロジウム触媒表面に、その電子収奪作用に基づき、被毒物質として吸着する。
そこで事後、水素を供給することにより、該硫黄化合物に比べ還元性の強い発生期の原子状水素が、該ロジウム触媒表面で生成され、もって該硫黄化合物に代わって該ロジウム触媒表面に吸着することにより、該ロジウム触媒が被毒解除されること、を特徴とする。
【0008】
請求項4については、次のとおり。請求項4のロジウム触媒の被毒解除方法では、請求項3において、該被毒物質は、硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオンよりなること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5のロジウム触媒の被毒解除方法では、請求項3において、該水素供給による該ロジウム触媒の被毒解除は、該排気ガスの供給停止後又は該排気ガスの供給中に、実施されること、を特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6のロジウム触媒の被毒解除方法では、請求項3において、該ロジウム触媒表面に吸着した該発生期の原子状水素は、該ロジウム触媒の電子供与作用も相俟って、事後、該ロジウム触媒表面から離反して、水素に分子化すること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。請求項7のロジウム触媒の被毒解除方法では、請求項6において、該発生期の原子状水素の該ロジウム触媒表面からの離反は、該亜酸化窒素の熱分解温度未満の加熱温度下で実施されること、を特徴とする。
請求項8については、次のとおり。請求項8のロジウム触媒の被毒解除方法では、請求項3において、該ロジウム触媒表面に吸着した該発生期の原子状水素は、該ロジウム触媒の電子供与作用も相俟って、事後、該ロジウム触媒表面から離反するが、該排気ガスの供給時においては、該亜酸化窒素を還元,分解すること、を特徴とする。
【0009】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)低濃度の亜酸化窒素を含有した排気ガスは、ロジウム触媒へと供給される。
(2)ロジウム触媒は、N殻4d軌道の2個の正孔が、電子収奪作用を備え、最外殻O殻5s軌道の1個の不対電子が、電子供与作用を備えている。
(3)そこで亜酸化窒素は、ロジウム触媒の電子収奪作用および電子供与作用に基づき、窒素と酸素に還元,分解,除去される。
(4)さて排気ガス中には、硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオン等も、含有されていることが多い。これらは、電子供与性つまり還元性を備えており、ロジウム触媒の正孔が電子収奪作用,酸化力を備えているので、ロジウム触媒表面に吸着される。
(5)もってロジウム触媒表面が、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等にて被毒され、亜酸化窒素の還元,分解,除去が困難化する。
(6)そこで水素供給により、被毒解除が実施される。水素供給により、還元性の強い発生期の原子状水素が、ロジウム触媒表面で生成され、もって、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等を剥ぎ取って、ロジウム触媒表面に吸着する。硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等は、硫酸のミスト,亜硫酸のミスト,亜硫酸ガスのミスト等となって、遊離する。
(7)発生期の原子状水素は、事後、ロジウム触媒表面から離反して水素分子化する。
(8)なお、発生期の原子状水素は、事後離反するものの、排気ガスが供給されると、分子化することなく亜酸化窒素の還元,分解,除去に参画する。
(9)このように、水素を供給するという簡単な構成により、容易にロジウム触媒の被毒解除が実現される。
(10)さてそこで、本発明のロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0010】
《第1の効果》
第1に、ロジウム触媒が、確実に被毒解除される。すなわち、本発明のロジウム触媒の被毒解除システムおよび被毒解除方法では、水素供給により、ロジウム触媒表面で還元性の強い発生期の原子状水素を生成せしめる。
もって、発生期の原子状水素は、ロジウム触媒表面に被毒物質として吸着していた硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオン等の硫黄化合物を、剥ぎ取って代わりに吸着すると共に、事後、ロジウム触媒表面から離反,遊離する。
このようにして、劣化したロジウム触媒は、被毒解除され,クリーン再生され,触媒活性が復活し、もって元の高い分解率へと復帰し、亜酸化窒素を確実に還元,分解,除去するようになる。
【0011】
《第2の効果》
第2に、そしてこれは、簡単容易に実現される。すなわち、本発明のロジウム触媒の被毒解除システムおよび被毒解除方法は、被毒したロジウム触媒に水素を供給するという簡単な構成手段により、上述した第1の効果が容易に達成される等、諸コスト面にも優れている。
【0012】
《第3の効果》
第3に、更に亜酸化窒素の還元,分解への参画も、考えられる。すなわち、本発明のロジウム触媒の被毒解除システムおよび被毒解除方法では、ロジウム触媒表面に吸着した発生期の原子状水素は、排気ガスの供給時においては、亜酸化窒素を還元,分解する。
つまり、ロジウム触媒による亜酸化窒素の還元,分解に参画するという、利点も考えられる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
《図面について》
以下、本発明のロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1および図2は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして、図1の(1)図は、分解処理装置等の側断面説明図であり、(2)図は、分解処理装置の要部を拡大した正断面図である。
図2は、各例の側断面図であり、(1)図は2塔切替タイプを、(2)図は1塔バッチタイプを、(3)図は1塔同時混合タイプを示す。図3は、ロジウム触媒による亜酸化窒素の分解率等のグラフであり、(1)図は、被毒解除前を示し、(2)図は、被毒解除後を水素濃度と共に示す。
【0014】
《ロジウム触媒1等について》
本発明は、ロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法に関する。そこでまず、本発明の前提となるロジウム触媒1について説明する。
このロジウム触媒1は、排気ガス2中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で、窒素と酸素に還元,分解する。
すなわちロジウム触媒1は、供給される排気ガス2中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その原子構造のN殻4d軌道の2個の電子欠損空孔である正孔の電子収奪作用、および、最外殻O殻5s軌道の1個の不対電子の電子供与作用に基づき、その熱分解温度未満の加熱温度下で、窒素と酸素に還元,分解する。
【0015】
このようなロジウム触媒1等について、更に詳述する。
まず、亜酸化窒素(NO)は、地球温暖化の原因物質として削減が要請されており、特に、亜酸化窒素を含有した排気ガス2については、その大気放出前の削減が要請されている。
亜酸化窒素の発生源としては化学的製造工程、代表例としては、アンモニアの酸化工程を経由した排気ガス2が挙げられ、低濃度の亜酸化窒素を含有した排気ガス2が、工業的に大量に排出されている。例えば、ナイロンの原料となるカプロラクタムやアジピン酸の製造工程、硝酸の製造工程等では、亜酸化窒素が副生物として大量に生成,排出されている。
又、窒素酸化物をアンモニアを用いて還元する脱硝装置から排出される排気ガス2中にも、低濃度の亜酸化窒素が大量に含有されているが、上述した各製造工程の排気ガス2も窒素酸化物を含有しており、脱硝装置による脱硝処理を経て排出されることも多い。
このような排気ガス2中の亜酸化窒素の濃度は、体積基準で50ppm〜10,000ppm程度の低濃度よりなるが、亜酸化窒素の分解率を安定維持する観点からは、500ppm〜2,000ppm程度が好ましい。
【0016】
そして、上述したように排気ガス2中に含有された亜酸化窒素(NO)は、ロジウム触媒1により、窒素(N)と酸素(O)に還元,分解,除去される。
ロジウム触媒1のロジウム(Rh)は、まず、原子構造の最外殻O殻の1つ内側のN殻の4d軌道に、8個の対電子が存在しているが、N殻4d軌道には対電子が10個まで入るので、電子が欠損した電子空孔つまり正孔(hole)が、2個存在していることになる。そしてこの2個の正孔は、その電子欠損を埋めるべく過渡的に反応相手から電子を奪い、過渡的に相手の酸化反応を促進する。
又、原子構造の最外殻O殻の5s軌道に、1個の不対電子が存在しており、この不対電子が過渡的に反応相手に電子を供与して、相手の還元反応を促進する。
上述した亜酸化窒素に対するロジウム触媒1の触媒作用,分解作用は、このような正孔の電子収奪作用,酸化促進力と、不対電子の電子供与作用,還元促進力とによる。
【0017】
そしてロジウム触媒1は、図1の例では、触媒コンバータである分解処理装置3の多孔担体4に、付着担持されている。すなわち分解処理装置3は、排気ガス2の排気管5に接続されており、その外筒6内に担持母体である多孔担体4が挿着されている。多孔担体5は、例えば、セル壁7にて区画形成された多数の中空柱状のセル空間8の集合体よりなり、フェライト系ステンレス製,アルミナ製,その他の金属製,又はセラミックス製のハニカムコアが用いられる。
この多孔担体4は、軸を排気ガス2の流れ方向に向けると共に、そのセル壁7にロジウム触媒1が、塗布コーティング等により付着担持されており、排気ガス2が、そのセル空間8に供給されて通過する。
この排気ガス2は、送風部9および加熱部10にて、亜酸化窒素の熱分解温度未満の350℃以上〜550℃未満の温度にて、分解処理装置4に供給される。勿論、排気ガス2がこのような温度よりなる場合は、加熱部10は不要である。排気ガス2とロジウム触媒1間のSV値(空間速度)は、10,000/h〜30,000/hに設定されており、排気ガス2がその流量で分解処理装置3に供給されて通過する。
ロジウム触媒1等は、このようになっている。
【0018】
《被毒について》
次に、被毒について説明する。本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法において、被毒解除対象となる被毒物質は、ロジウム触媒1表面に吸着した硫黄化合物よりなる。
すなわち、前述したロジウム触媒1による亜酸化窒素の還元,分解に際し、排気ガス2中に亜酸化窒素と共に含有されていた硫黄化合物が、ロジウム触媒1表面に対し、その過渡的電子収奪作用に基づき被毒物質として吸着され、もって被毒解除対象の被毒源となる。このような被毒物質としては、硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオンが、代表的である。
【0019】
被毒について、更に詳述する。例えば、亜酸化窒素の発生源である化学的製造工程からの排気ガス2中には、亜酸化窒素や水分と共に、硫酸イオンや(又は/及び、以下同様)亜硫酸の亜硫酸水素イオン等の硫黄化合物が、含有されていることが多い。
そして硫黄化合物(SO×)、代表的には、硫酸(HSO)が排気ガス2中の水分にてミスト化された硫酸イオン(硫酸根,SO2−)や、亜硫酸ガス(SO)が排気ガス2中の水分を吸収してミスト化された亜硫酸(HSO)(H+HSO)の亜硫酸水素イオン(HSO)等は、その電子(e)が奪われている状況下であれば、電子供給性つまり還元性を示す。
これに対しロジウム触媒1は、前述したように、表面のN殻4d軌道に電子空孔である正孔(hole)が2個存在しており、電子収奪作用,酸化促進力を備えている。
そこで、排気ガス2中をミストとして流れ来る硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオンは、ロジウム触媒1表面に吸着され、経時使用により蓄積される。ロジウム触媒1は、その4d軌道の正孔が、奪取,捕捉した硫酸イオンや亜硫酸水素イオンの電子にて埋められてしまい、触媒機能を発揮することが困難となり、被毒状態となる(後述する図3の(1)図を参照)。
このようにして、ロジウム触媒1表面が、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等の硫黄化合物イオンにて被毒される(次の化1,化2の構造式を参照)。
【0020】
【化1】

【化2】

【0021】
《被毒解除について》
次に、被毒解除について説明する。本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法では、上述により被毒したロジウム触媒1を、被毒解除する。
そして被毒解除は、水素を供給することにより実施される。すなわち、水素供給により、硫黄化合物に比し還元力の強い発生期の原子状水素が、ロジウム触媒1表面で生成され、もって、硫黄化合物に代わってロジウム触媒1表面に吸着することにより、ロジウム触媒1は被毒解除される。
【0022】
このような被毒解除について、更に詳述する。被毒したロジウム触媒1表面への被毒解除用の水素の流通は、被毒したロジウム触媒1の表面全体を、強い還元雰囲気とする。
すなわち、供給された水素分子(H)が、ロジウム触媒1表面で原子化反応することにより、水素原子つまり発生期の原子状水素(H+e)が生成される(下記化3の反応式を参照)。
発生期の原子状水素(水素ラジカルとも称される)は、極めて強力な電子供与性つまり還元力を備えている。従って、被毒で痛んだロジウム触媒1表面のN殻4d軌道の電子空孔である正孔(hole)に対しても、強い還元力を示す。
そこで、この原子状水素は、相対的に還元性の弱い硫酸イオンや亜硫酸水素イオンを、それまで吸着していたロジウム触媒1表面から剥ぎ取る。そして、ロジウム触媒1表面に対し、N殻4d軌道の正孔を還元して吸着する(下記化4の構造式を参照)。
剥ぎ取られた硫酸イオンや、そのロジウム触媒1表面での硫酸化反応(下記化5の反応式を参照)による硫酸のミスト等は、下流へと押しやられる。他方、剥ぎ取られた亜硫酸水素イオンは、そのロジウム触媒1表面での亜硫酸化反応(下記化6の式を参照)による亜硫酸のミスト、乃至は亜硫酸ガスのミスト(下記化7の反応式を参照)となって、下流へと押しやられる。
このようにして、ロジウム触媒1表面への硫酸イオンや亜硫酸水素イオンの吸着は、解消される。
このように、ロジウム触媒1は被毒解除される。
【0023】
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0024】
《被毒解除した後の発生期の原子状水素について》
次に、上述したように被毒物質を被毒解除した後の発生期の原子状水素について、説明する。
本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法では、上述によりロジウム触媒1を被毒解除した発生期の原子状水素は、その後、ロジウム触媒1から離反する。
ロジウム触媒1からの離反について、更に詳述する。上述によりロジウム触媒1表面に一旦吸着された原子状水素は、ロジウム触媒1の過渡的電子供与作用も相俟って、事後、ロジウム触媒1表面から離反すると共に、水素原子から水素分子に分子化する。このような原子状水素の離反は、亜酸化窒素の熱分解温度未満の加熱温度下(350℃以上〜550℃未満)で、実施される。
すなわち、ロジウム触媒1の最外殻O殻の5s軌道には、1個の不対電子が存在しているが、反応雰囲気にエネルギーが加わると、N殻4d軌道の正孔が捕らえていた原子状水素つまり水素原子の電子と、混成軌道の場で相互作用する。
もって、捕らえていた原子状水素を放し、水素に分子化して遊離せしめる(下記化8の反応式や、後述する図3の(2)図も参照)。これらにより、ロジウム触媒1表面はクリーン化される(下記化9の反応式を参照)。
【0025】
【化8】

【化9】

【0026】
これに対し、排気ガス2の供給時におけるロジウム触媒1からの離反については、次のとおり。
被毒解除後に排気ガス2の供給が行われた場合においても、まず上述と同様に、ロジウム触媒1表面に一旦吸着されていた発生期の原子状水素は、ロジウム触媒1の過渡的電子供与作用も相俟って、事後、ロジウム触媒1表面から離反し、ロジウム触媒1表面はクリーン化される。
しかしながら、このように離反した原子状水素は、排気ガス2供給時においては、上述したように水素に分子化される(上記化8の反応式を参照)ことなく、つまり水素分子を発生することなく、そのまま、亜酸化窒素の還元,分解に参画する(後述する図3の(2)図も参照)。
原子状水素は、ロジウム触媒1による亜酸化窒素の窒素と酸素への還元,分解反応に対し、窒素と水への還元,分解反応にて、参画する(下記化10の反応式を参照)。
このように還元を助長し、活性化エネルギーを下げ得るこの原子状水素の参画反応は、ロジウム触媒1による亜酸化窒素の熱分熱温度未満の加熱温度下での還元,分解反応を、サポートするものと言える。
被毒解除した後の発生期の原子状水素については、以上のとおり。
【0027】
【化10】

【0028】
《実施パターンについて》
次に、本発明の実施パターンについて、図2を参照して説明する。本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法の実施パターンについては、次の3タイプが代表的である。
まず第1に、図2の(1)図に示したように、2塔切替タイプが考えられる。すなわち、分解処理装置3を予め2塔準備すると共に、切替式とし、もって一方の1塔を、亜酸化窒素の還元,分解に使用すると共に、使用しない他方の1塔について、被毒解除を実施する。そして事後、使用していた一方の1塔を不使用に切替えて、被毒解除すると共に、不使用としていた他方の1塔を、切替えて使用に供するようにする。
次に第2に、図2の(2)図に示したように、1塔バッチタイプが考えられる。すなわち、分解処理装置3を予め2塔準備すると共に、バッチ式とし、もって一方の1塔を、亜酸化窒素の還元,分解に使用すると共に、使用しない他方の1塔について、被毒解除を実施する。そして事後、使用していた一方の1塔を取り外して、被毒解除を実施すると共に、不使用としていた他方の1塔を、代わりに取り付けて使用に供するようにする。
次に第3に、図3の(3)図に示したように、1塔同時混合タイプも考えられる。すなわち、分解処理装置3は1塔のみ準備すると共に、亜酸化窒素を含有した排気ガス2について、被毒解除用の水素も導入,混合して、同時に1つの分解処理装置3に供給するようにする。つまり、被処理ガスの排気ガス2に、水素ガスも混合して供給する。
なお、図3の(1)図,(2)図に示した2塔切替タイプや1塔バッチタイプでは、水素供給によるロジウム触媒1の被毒解除は、対象となる分解処理装置3について、排気ガス2の供給停止後に実施される。
これに対し、図3の(3)図に示した1塔同時混合タイプでは、水素供給によるロジウム触媒1の被毒解除が、排気ガス2の供給中に同時実施される。つまり、亜酸化窒素の還元,分解処理と被毒解除処理とが、連続的かつ同時併行的に実施される、という利点がある。
実施パターンについては、以上のとおり。
【0029】
《作用等》
本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)低濃度の亜酸化窒素を含有した排気ガス2は、分解処理装置3のロジウム触媒1に供給されて、通過する。
この種の排気ガス2としては、アンモニアの酸化工程を経由したガスが代表的であるが、その他副生物として生成された亜酸化窒素を低濃度で含有した排気ガス2が、供給される。ロジウム触媒1は、分解処理装置3の多孔担体4に、付着担持されている(図1を参照)。
【0030】
(2)ロジウム触媒1は、その原子構造のN殻4d軌道の2個の正孔が、過渡的電子収奪作用を備え、その原子構造の最外殻O殻5s軌道の1個の不対電子が、過渡的電子供与作用を備えている。
【0031】
(3)そこで、排気ガス2中の亜酸化窒素は、まず、ロジウム触媒1の正孔の過渡的電子収奪作用に基づき、過渡的に酸化が促進されて、窒素が遊離すると共に、酸素原子がロジウム触媒1に吸着される。
吸着された酸素原子は、ロジウム触媒1の不対電子の過渡的電子供与作用に基づき、過渡的に還元が促進されて吸着が解され、もって酸素分子となってロジウム触媒1から遊離する。
このようにして亜酸化窒素は、ロジウム触媒1の触媒活性により、窒素と酸素に還元,分解,除去される。
【0032】
(4)さて排気ガス2中には、このような亜酸化窒素と共に硫黄化合物、代表的には硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオン等が、含有されていることが多い。
そして、これらは電子供与性つまり還元性を備えているが、これに対しロジウム触媒1は、N殻4d軌道の正孔が過渡的電子収奪作用,酸化力を備えている。そこで、排気ガス2中をミストとして流れ来る硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等は、ロジウム触媒1表面に吸着される(前記化1,化2の構造式を参照)。
正確には、硫酸イオン(2価)の外殻電子の一部(2個)が放電し、硫酸根が2個の不対電子を持つ存在になり、この2個の不対電子を持つ硫酸根が、ロジウム触媒1のN穀d軌道の正孔に取り付いて、被毒する。亜硫酸水素イオン(1価)の場合は、外殻電子の一部(1個)が放電し、亜硫酸水素根が1個の不対電子を持つ存在になり、この1個の不対電子を持つ亜硫酸水素根が、ロジウム触媒1のN殻d軌道の正孔に取り付いて、被毒する。
なお通常は、硫酸イオンと硫酸根は同じものを指すが、ここでは硫酸根は、外殻電子の一部(2個)が取れたものとして把握する。亜硫酸水素イオンと亜硫酸水素根との場合も、同様の関係である。
【0033】
(5)このようにして、ロジウム触媒1表面が、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等の被毒物質にて、被毒される。
すなわち、ロジウム触媒1の正孔は、奪取した電子で埋められ、触媒機能の発揮が困難化し、前記(3)の亜酸化窒素の還元,分解,除去が、困難化する(後述する図3の(2)図も参照)。
【0034】
(6)さてそこで、水素供給により、被毒解除が実施される。すなわち、水素供給により、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等より遥かに還元性の強い発生期の原子状水素が、ロジウム触媒1表面で生成される(前記化3の反応式を参照)。
生成された原子状水素は、硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等を、ロジウム触媒1の正孔から剥ぎ取って代わりに吸着し、ロジウム触媒1を還元するに至る(前記化4の構造式を参照)。
剥ぎ取られた硫酸イオンや亜硫酸水素イオン等は、硫酸のミスト,亜硫酸のミスト,亜硫酸ガスのミスト等となって、遊離し下流へと押し流されて行く(前記化5,化6,化7の反応式等を参照)。
このようにして、ロジウム触媒1は確実に被毒解除される。
【0035】
(7)又、このようにロジウム触媒1表面に吸着した発生期の原子状水素は、事後、加熱等によりロジウム触媒1表面から離反し、もって水素原子から水素分子に分子化する(前記化8の反応式や、後述する図3の(2)図も参照)。
このように、被毒解除されたロジウム触媒1表面は、更にクリーン化される(前記化9の反応式を参照)。
【0036】
(8)なお、ロジウム触媒1表面に付着した発生期の原子状水素については、上述により事後離反するものの、排気ガス2供給が行われた場合は、上述したように分子化することなく、亜酸化窒素の還元,分解,除去に参画する。ロジウム触媒1と共に、排気ガス2中の亜酸化窒素を、還元,分解,除去する(前記化10を参照や、後述する図3の(2)図も参照)。
【0037】
(9)本発明のロジウム触媒1の被毒解除システム、および被毒解除方法は、このように、被毒したロジウム触媒1に水素を供給することにより、つまり簡単な構成により、容易にロジウム触媒1の被毒解除を実現する。
しかも、その実施パターンも、2塔切替タイプ,1塔バッチタイプ,1塔同時混合タイプ等々が考えられ(図2を参照)、この面からも、簡単な構成により容易に被毒解除が実施可能である。
【0038】
(10)ところで、以上説明したように、本発明では、水素がロジウム触媒1の被毒解除に、採用されている。すなわち、水素を供給して、ロジウム触媒1表面で発生期の原子状水素を生成させることにより、つまり、ロジウム触媒1の表面全体を強い還元雰囲気下に置くことにより、被毒解除を実施していた。
これらに鑑み、このような水素と同様に機能する還元物質として、ハイドロカーボンやアンモニアも検討に値する。すなわち、メタン(CH),エタン(C),プロパン(C),ブタン(C10)や、アンモニア(NH)等も、ロジウム触媒1の被毒解除用の還元物質として、採用に向けた研究開発が期待される。
本発明の作用等は、このようになっている。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について、図3を参照して説明する。
実施例のフィールドテスト用の分解処理装置3は、セラミックスのハニカムコア製の多孔担体4のセル壁7に、ロジウム触媒1を付着担持させてなる(図1を参照)。そして、このような分解処理装置3に、亜酸化窒素を低濃度で含有した排気ガス2を供給した。
もって、亜酸化窒素の分解率(還元率,除去率),その他のデータを計測したところ、次の結果が得られた。
【0040】
1)まず、次の各条件下の分解処理装置3のもとで、排気ガス2のモデルガスを、そのロジウム触媒1に対して供給,通過させた。その結果、温度500℃で100%、450℃で99.2%の亜酸化窒素の分解率(重量%)が得られた。
○触媒条件(触媒を付着担持する多孔担体4のサイズ構成等):
・ 構 造 : セラミックス製のハニカムコア
・ 形 状 : 円 柱
・ 直 径 : 25.4mm
・ 長 さ : 50.8mm
・ セル空間数: 200/in(31/cm
・ Rh担持量: 100g/ft(3,531g/m
○モデルガス条件(テストガスの組成):
・ NO : 1,000volppm(0.1vol%)
・ O : 3vol%
・ HO : 2vol%
・ N : Balance
○テスト条件:
・ SV値: 10,000/h(排気ガス2とロジウム触媒1間)
・ 温 度: 500,450℃
【0041】
2)他方、上記1)のテストとは別に、次の各条件下の分解処理装置3のもとで、硫黄化合物SO(代表的には硫酸イオンや亜硫酸の亜硫酸水素イオン)を含有した排気ガス2を、実ガスとしてロジウム触媒1(Rh)に対して、暴露供給,通過させた。その結果、初日で98〜100%、15日目で8〜25%の亜酸化窒素分解率となった。
○触媒条件(触媒を付着担持する多孔担体4のサイズ構成等):
・ 構 造 : セラミックス製のハニカムコア
・ 形 状 : 角 柱 4 段
・ 高 さ : 50mm
・ 縦 横 : 75mm
・ セル空間数: 200/in(31/cm
・ Rh担持量: 100g/ft(3,531g/m
○実ガス条件(実ガスの組成):
・ NO : 650〜850volppm
・ NO : 20〜60ppm
・ O : 3〜5vol%
・ HO : 0.4〜0.7vol%
・ N : 93〜96vol%
・ SO : 1〜2volppm
○テスト条件:
・ SV値: 9,000〜19,000/h
・ 温 度: 480〜530℃
・暴露期間: 15日間
※ここで、実ガスとして暴露供給,通過された排気ガス2は、ナイロンの原料となるカプロラクタムの製造工程中、アンモニアの酸化工程を経由して得られたニトローゼガスを硫酸にて吸収して、ニトロシル硫酸を得る工程からのオフガスであり、脱硝処理されて排出されたものである。なお、含有される硫黄化合物SOは、上記では1〜2volppm程度となっているが、通常は1〜10volppm程度である。
【0042】
3)さて、この上記2)に記載したように、実ガスよりなる排気ガス2を、上記条件下の分解処理装置3に暴露供給し続けたところ、亜酸化窒素の分解率が大幅にダウンした。これは、ロジウム触媒1が硫黄化合物にて被毒し、もって性能低下した結果である。被毒したロジウム触媒1表面を、XRF(蛍光X線)で分析した所、Sが検出,確認された。
そこで、このようなロジウム触媒1を取り出して、前記1)に記載した触媒条件と同一の分解処理装置3とすると共に、前記1)と同一のモデルガス条件(テストガスの組成)の排気ガス2を、再度供給,通過させた。テスト条件については、SV値10,000/h,温度500℃とした。
すると、図3の(1)図に示したように検証され、亜酸化窒素の分解率は40%前後となった。
【0043】
4)そこで、このように被毒したロジウム触媒1を被毒解除させるべく、排気ガス2の供給を一旦中止した。そして、窒素雰囲気中に還元ガスとして水素を5vol%添加し、SV値10,000/h,温度500℃で2時間、この分解処理装置3に供給した。もって、生成された発生期の原子状水素にて、ロジウム触媒1を被毒解除した。その後、分解処理装置3を冷却した後、室温で大気中に数日間にわたり暴露した。
5)それから分解処理装置3を、図3の(2)図に示したように、→まず、温度500℃まで加熱した後(図3の(2)図中の左部分を参照)、→再び、亜酸化窒素を低濃度で含有した排気ガス2を、温度500℃で供給した(図3の(2)図中の中央部分を参照)。排気ガス2のモデルガス条件に関しては、前記1)や3)後半の記載と同一であり、テスト条件についても前記3)後半の記載と同一である。
→それから、亜酸化窒素を含む排気ガス2の供給を停止すると共に、亜酸化窒素を含まずHO,N,その他のみを含むガスを、温度500℃加熱のもとで供給継続した(図3の(2)図中の右部分を参照)。
【0044】
6)これらにより、図3の(2)図に示したように、次の各点が確認された。
a.亜酸化窒素NOを低濃度(1,000volppm)で含有した排気ガス2を、供給する時間帯においては、亜酸化窒素の分解率が90%台まで回復したことが、データ的に確認された(図3の(2)図中の中央部分を参照)。すなわち、水素供給によるロジウム触媒1の被毒解除が、裏付けられた。
b.排気ガス2を供給しない時間帯においては、水素が高濃度で生成され続けたことが、データ的に確認された(図3の(2)図中の左部分、および右部分を参照)。すなわち、ロジウム触媒1に付着していた発生期の原子状水素が、水素分子化してロジウム触媒1から離反することが、裏付けられた。
c.これに対し、排気ガス2の供給中は、ロジウム触媒1に付着していた発生期の原子状水素は、水素分子化することなく、亜酸化窒素の還元に参画していたことが、データ的に裏付けられた(図3の(2)図中の中央部分を参照)。
実施例については、以上のとおり。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係るロジウム触媒の被毒解除システム、および被毒解除方法について、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、分解処理装置等の側断面説明図であり、(2)図は、分解処理装置の要部を拡大した正断面図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、各例の側断面説明図である。そして(1)図は、2塔切替タイプを、(2)図は、1塔バッチタイプを、(3)図は、1塔同時混合タイプを示す。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、ロジウム触媒による亜酸化窒素の分解率等のグラフであり、(1)図は、被毒解除前を示し、(2)図は、被毒解除後を水素濃度と共に示す。
【符号の説明】
【0046】
1 ロジウム触媒
2 排気ガス
3 分解処理装置
4 多孔担体
5 排気管
6 外筒
7 セル壁
8 セル空間
9 送風部
10 加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジウム触媒の被毒解除システムであって、該ロジウム触媒は、排気ガス中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で窒素と酸素に還元,分解し、被毒物質は、該ロジウム触媒表面に吸着した硫黄化合物よりなり、
該被毒物質による該ロジウム触媒の被毒解除が、水素供給により実施されること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除システム。
【請求項2】
請求項1に記載したロジウム触媒の被毒解除システムにおいて、該被毒物質は、硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオンよりなること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除システム。
【請求項3】
ロジウム触媒の被毒解除方法であって、該ロジウム触媒は、その原子構造のN殻4d軌道の2個の電子欠損空孔である正孔の電子収奪作用、およびO殻5s軌道の1個の不対電子の電子供与作用に基づき、供給される排気ガス中に含有された低濃度の亜酸化窒素を、その熱分解温度未満の加熱温度下で窒素と酸素に還元,分解し、
このような亜酸化窒素の還元,分解に際し、該排気ガス中に含有されていた硫黄化合物が、該ロジウム触媒表面に、その電子収奪作用に基づき被毒物質として吸着するが、
事後、水素を供給することにより、該硫黄化合物に比べ還元性の強い発生期の原子状水素が、該ロジウム触媒表面で生成され、もって該硫黄化合物に代わって該ロジウム触媒表面に吸着することにより、該ロジウム触媒が被毒解除されること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。
【請求項4】
請求項3に記載したロジウム触媒の被毒解除方法において、該被毒物質は、硫酸イオンや、亜硫酸の亜硫酸水素イオンよりなること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。
【請求項5】
請求項3に記載したロジウム触媒の被毒解除方法において、該水素供給による該ロジウム触媒の被毒解除は、該排気ガスの供給停止後又は該排気ガスの供給中に、実施されること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。
【請求項6】
請求項3に記載したロジウム触媒の被毒解除方法において、該ロジウム触媒表面に吸着した該発生期の原子状水素は、該ロジウム触媒の電子供与作用も相俟って、事後、該ロジウム触媒表面から離反して水素に分子化すること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。
【請求項7】
請求項6に記載したロジウム触媒の被毒解除方法において、該発生期の原子状水素の該ロジウム触媒表面からの離反は、該亜酸化窒素の熱分解温度未満の加熱温度下で実施されること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。
【請求項8】
請求項3に記載したロジウム触媒の被毒解除方法において、該ロジウム触媒表面に吸着した該発生期の原子状水素は、該ロジウム触媒の電子供与作用も相俟って、事後、該ロジウム触媒表面から離反するが、該排気ガスの供給時においては、該亜酸化窒素を還元,分解すること、を特徴とする、ロジウム触媒の被毒解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−214326(P2010−214326A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66119(P2009−66119)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(500561931)三井造船プラントエンジニアリング株式会社 (41)
【出願人】(505252698)株式会社アイエムイー総合研究所 (14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】