説明

ロジック変換装置、ロジック変換方法及びプログラム

【課題】ハードウェアロジック図をソフトフェアロジック図に変換する際に、定形外の動作の情報をソフトフェアロジック図に反映することにより、作業効率を上げる。
【解決手段】ロジック変換装置10は、ハードウェアロジックデータベース1から読み出したハードウェアロジック図1aよりハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報、素子データベース6から抽出する素子に関する情報及び定形外の動作の情報に基づいて、ハードウェアの論理を解析する解析部11を備える。また、ハードウェアの論理を、素子に関する情報及び定形外の動作の情報が反映されるソフトフェアロジック図9aに変換して、ソフトフェアロジック図9aをソフトフェアロジックデータベース9に書き込む変換部12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実機プラントに用いられるハードウェアロジック図を、プラントシミュレータに用いられるソフトウェアロジック図へ変換する場合に適用されるロジック変換装置、ロジック変換方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電プラント等の作業に従事する運転員の技能訓練を行うために実機プラントの動作をプログラムの動作で模擬するプラントシミュレータが用いられている。通常、実機プラントの規模は巨大であり、実機プラントの動作を制御するためには、中央制御室に設けられた大型表示盤及び各種の操作パネルを運転員が確認する必要がある。しかし、運転員が技能訓練を行うために実機プラントを動作させることは現実的でない。このため、プラントシミュレータを用いた訓練が行われる。運転員はプラントシミュレータによって構築された仮想プラントに対して動作を指示すると、運転員が実機プラントに直接触れることなく実機プラントと同様の動作を確認することが可能となる。このように、プラントシミュレータの内部で動作する仮想プラントを用いて技能訓練を行うことが一般的であった。
【0003】
従来のプラントシミュレータでは、実機プラントに指示を与えた際において、時間要素を含む実機プラントの特性を示す「プラント動特性」と、実機プラントに対する制御を示す「プラント制御」をソフトウェアで模擬することにより、実機プラントの挙動を模擬する仮想プラントとして実現していた。ここで、プラントシミュレータがプラント動特性を模擬するためには、物理演算モデルを実装したプラントモデルを作成し、蒸気の流量、温度、圧力等のプロセス値を演算して求めていた。
【0004】
プラントシミュレータがプラント制御を模擬するためには、対象となる実機プラントのソフトウェアロジックとハードウェアロジックをプラントシミュレータに実装する必要がある。ソフトウェアロジックに関しては、元々実機プラントにソフトウェアでロジックが実装されている。このため、シミュレーション技術、エミュレーション技術、スティミュレーション技術等を用いることにより、プラントシミュレータに実機プラントの動作を模擬するソフトウェアを実装することが可能であった。ハードウェアロジックに関しては、ハードウェアで組んだロジックをプラントシミュレータ用のソフトウェアロジックに変換してプラントシミュレータに実装する必要がある。このため、ハードウェアロジック図をソフトウェアロジック図に変換することにより、プラントシミュレータに実機プラントの動作を模擬するソフトウェアを実装することが可能であった。
【0005】
特許文献1には、図形データを図形データベースに変換した上で、図形データベースをコーディングフォームへ変換する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−86204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ハードウェアロジックには、リレーシーケンス等で組まれる標準ロジック処理の他に、スイッチやバルブ等といった、複雑な処理を行うものがある。これらのハードウェアロジックをソフトウェアロジックに変換する際は、障害時又は故障時の動作等を再現するような独自の動作をする回路図をシミュレータ設計者が手動で作成し、プログラム言語の変換等を行いながらソフトフェアロジックに実装する必要があった。
【0008】
これまではシミュレータ設計者がCAD(Computer Aided Design)ソフトウェア等によって作成されたハードウェアロジック図を読み込んで内容を解析した後、ハードウェアの動きを理解した上で、ソフトウェアロジックに変換して書き起こしていたため、非常に手間がかかっていた。また、ハードウェアロジック図をソフトウェアロジック図に変換する際には、人手を介さなければソフトフェアロジックに表れないものの実機プラントでは起こりうる独自の障害が発生するようなマルファンクションと呼ばれる回路や現象をソフトフェアロジックに組み込めなかった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、ハードウェアロジック図をソフトフェアロジック図に変換する際に、ハードウェアロジック図から人手を介して読み取っていた情報をソフトフェアロジック図に自動的に反映することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、始めに、実機プラントに搭載されるハードウェアのハードウェアロジック図を格納するハードウェアロジックデータベースからハードウェアロジック図を読み出し、ハードウェアロジック図よりハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報を抽出する。
次に、ハードウェアを構成する素子の定型動作を含む素子に関する情報、及び素子がハードウェアの動作に影響を与える定形外の動作の情報を格納する素子データベースから素子に関する情報及び定形外の動作の情報を抽出し、素子に関する情報及び定形外の動作の情報に基づいて、ハードウェアの論理を解析する。
次に、ハードウェアの論理を、実機プラントの動作を模擬する仮想プラントに搭載され、仮想プラントの動作を制御するソフトウェアプログラムの論理が記述されるソフトウェアロジック図に素子に関する情報及び定形外の動作の情報を反映して変換する。
そして、ソフトウェアロジック図をソフトフェアロジックデータベースに書き込むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハードウェアロジック図からソフトフェアロジック図への変換処理を自動化することにより、素子に関する情報及び定形外の動作の情報を反映したソフトフェアロジック図をシミュレータ設計者が作成する手間を減らして、変換時の作業効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるロジック変換装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるロジック変換装置の処理例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施の形態におけるハードウェアロジック図の例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるロジック結線情報ファイルの例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態における論理情報ファイルの例を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態におけるソフトフェアロジック図の例を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態におけるハードウェアロジック図の例を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態における対応表の例を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態における素子データベースにおける切替えスイッチの属性データ表を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態における切替えスイッチの論理情報の例を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態における切替えスイッチを変換したソフトウェアロジック図の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「本例」という。)について、図1〜図11を参照して説明する。本実施の形態では、例えば、原子力発電プラント等の実機プラントに用いられるハードウェアロジック図を、仮想プラントを制御するプラントシミュレータに用いられるソフトフェアロジック図に変換するロジック変換装置10に適用した例について説明する。
このロジック変換装置10は、コンピュータプログラムを実行することにより、内部ブロックが連携して行うロジック変換方法を実現する。始めに、ロジック変換装置10の概念的な構成例を説明する。
【0014】
図1は、ロジック変換装置10の内部構成例を示す。
ロジック変換装置10は、実機プラントに搭載されるハードウェアのハードウェアロジック図1a(後述する図3を参照)を格納するハードウェアロジックデータベース1と、ハードウェアロジックデータベース1から読み出したハードウェアロジック図1aのハードウェアロジック情報を抽出して、ハードウェアロジックの論理情報を解析する解析部11を備える。また、ロジック変換装置10は、解析部11が解析した論理情報に基づいてハードウェアロジック図1aをソフトフェアロジック図9a(後述する図6を参照)に変換する変換部12と、ソフトフェアロジック図9aを格納するソフトフェアロジックデータベース9を備える。ソフトフェアロジック図9aは、実機プラントの動作を模擬する仮想プラントに搭載され、仮想プラントの動作を制御するソフトウェアプログラムの論理が記述されるものである。
【0015】
また、ロジック変換装置10は、ハードウェアロジック図1aに書かれる素子に関する情報、及び素子がハードウェアの動作に影響を与える定形外の動作の情報を格納する素子データベース6を備える。ここで、「定形の動作」には、ハードウェアロジック図1aに元々書かれているような素子毎のハードウェアロジックによる動作が含まれる。「定形外の動作」には、ハードウェアロジックの論理とは異なる動作として、素子の物理動作が表現される。本例では、このような物理動作を、例えばハードウェアの電源を遮断する動作としている。
【0016】
解析部11は、ハードウェアロジックデータベース1から読み出したハードウェアロジック図1aのハードウェアロジック情報を抽出するロジック情報抽出部2と、ハードウェアロジック情報から各素子の論理を解析する論理解析部4を備える。
変換部12は、素子データベース6から読み出した素子情報と、論理解析部4から受け取った論理情報に基づいて不図示の中間ファイルを生成する中間ファイル生成部7と、この中間ファイルから読み出したハードウェアロジックの論理情報をソフトウェアロジック図9aに変換するロジック変換部8を備える。
【0017】
次に、各部の動作を説明する。
始めに、解析部11は、ハードウェアロジックデータベース1から読み出したハードウェアロジック図1aよりハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報、素子データベース6から抽出する素子に関する情報及び定形外の動作の情報に基づいて、ハードウェアの論理を解析する。
そして、変換部12は、ハードウェアの論理を、素子に関する情報及び定形外の動作の情報が反映されるソフトフェアロジック図に変換して、ソフトフェアロジック図をソフトフェアロジックデータベースに書き込む。
【0018】
次に、解析部11及び変換部12の詳細な動作を説明する。
ロジック情報抽出部2は、ハードウェアロジック図1aからハードウェアロジック情報を抽出して、互いに結線される複数の素子の結線情報をロジック結線情報ファイル3に書き出す。このロジック結線情報ファイル3は、論理解析部4に読み込まれる。
そして、論理解析部4は、ロジック情報抽出部2から受け取るハードウェアロジック情報、及びハードウェアロジック図に記載される素子の情報を格納する素子データベース6より読み出した素子の情報に基づいて、ロジック結線情報ファイル3から読み込んでハードウェアロジックを解析した論理情報を論理情報ファイル5に書き出す。
【0019】
論理情報ファイル5は、中間ファイル生成部7に読み込まれる。中間ファイル生成部7は、論理解析部4の処理に合わせて、論理情報ファイル5から論理情報を読み出してソフトフェアロジック図のフォーマットに合わせた中間ファイルを生成する。ロジック変換部8は、この中間ファイルから読み出した論理情報をソフトフェアロジック図9aに変換し、このソフトフェアロジック図9aをソフトフェアロジックデータベース9に書き込む。
【0020】
次に、ロジック変換装置10の処理例を示しつつ、各種のファイル、ロジック図の内容について、図2〜図6を参照して説明する。
【0021】
図2は、ロジック変換装置10の処理例を示す。
始めに、ロジック情報抽出部2は、ハードウェアロジックデータベース1からハードウェアロジック図1aを読み出し(ステップS1)、ハードウェアロジック図1aからハードウェアロジック情報を抽出する(ステップS2)。
【0022】
図3は、ハードウェアロジック図1aの例を示す。
ハードウェアロジック図1aには、直列接続されたスイッチSW1,SW2及びコイルC1と、並列接続されたスイッチSW3,SW4と、スイッチSW3,SW4に直列接続されたコイルC2とが記載されている。スイッチSW1,SW3,SW4は、24Vの直流である正電源線に接続され、コイルC1,C2は、負電源線に接続されている。なお、スイッチSW1〜SW4は常時開接点(A接点)であり、コイルC1,C2は出力リレーに用いられるリレーコイルである。ハードウェアロジック図1aに記載された各素子の近くには素子の位置を示す属性情報A〜Eが記されている。
【0023】
図2の説明に戻ると、ロジック情報抽出部2は、ハードウェアロジック図1aからハードウェアロジックの素子毎の結線情報を抽出する(ステップS3)。そして、素子毎の結線情報をロジック結線情報ファイル3に書き出す。
【0024】
図4は、ロジック結線情報ファイル3の例を示す。
論理解析部4が読み出すロジック結線情報ファイル3には、シリアルナンバーと、番号毎にハードウェアロジックの発着点の名称が記載されている。ここで、図3を参照すると、例えば、スイッチSW1,SW2の結線は、発点を”A”、着点を”B”とすることが示され、スイッチSW2とコイルC1の結線は、発点を”B”、着点を”D”とすることが示される。このように、ロジック結線情報ファイル3には、各素子の間を結ぶ結線の情報が記載されており、この情報には素子の論理が記載されていない。
【0025】
図2の説明に戻ると、論理解析部4は、素子データベース6から素子の情報及び定形外動作の情報を抽出する。そして、素子の情報及び定形外動作の情報、並びにロジック結線情報ファイル3から読み出したロジック結線情報に基づいてハードウェアロジックの論理情報を解析し、この解析結果を論理情報ファイル5に書き出す(ステップS4)。
【0026】
図5は、論理情報ファイル5の例を示す。
ハードウェアロジック図1aから作られ、中間ファイル生成部7が読み出す論理情報ファイル5には、シリアルナンバーと、番号毎にロジックの入出力の名称、及び属性が記載されている。図5中に記載した、「素子」とは、図3におけるスイッチ等の各素子の並びと素子間の論理を表現したものである。ロジックの「取り合い」とは、ハードウェアロジック図1aに示される各素子の入力又は出力に対応する属性を表す。論理情報ファイル5の内容は、図4に示したロジック結線情報ファイル3の内容とほぼ同じであるが、各素子における論理情報(AND条件、OR条件)等が記入されている点が異なる。また、図中に示される「WO(ワイプアウト:Wipe Out)」とは、24V電源が強制的に切断されるポイントを表す。
【0027】
また、「パス」とは、2つの素子間における経路を発着点の記号とともに表したパラメータである。例えば、1番目のレコードに記された、発点「A1」、着点「AND1」とは、ハードウェアロジック図1aにおけるスイッチSW1,SW2の間の配線を表している。また、上述した素子と「WO(ワイプアウト)」への結線情報は、図5中の「素子」と「パス」に記載される。このように、論理情報ファイル5には、「素子」と「パス」の情報が記載されることにより、定形外の動作が表現される。
【0028】
図2の説明に戻ると、中間ファイル生成部7は中間ファイルを生成し(ステップS5)、ロジック変換部8は、中間ファイルに基づいてハードウェアロジック情報をソフトフェアロジック図9aに変換する(ステップS6)。その後、ロジック変換部8は、ソフトフェアロジックデータベース9にソフトフェアロジック図9aを書き込んで処理を終了する(ステップS7)。
【0029】
図6は、ソフトフェアロジック図9aの例を示す。
ハードウェアロジック図1aを変換したソフトフェアロジック図9aでは、図3〜図5に示した素子毎の属性が論理的に表される。例えば、図3においてスイッチSW1,SW2は直列接続されるため、スイッチSW1,SW2に対応する属性A,Bは、AND条件を表す四角形のAND記号に入力し、このAND記号の出力がコイルC1に対応する属性Dに入力することが示される。ここで、直流電源が断たれるような事態は「Wipe Out」として表現されるため、AND記号と属性Dの間に設けられた「WO」の箇所に影響することが分かる。
【0030】
ところで、図3に示すハードウェアロジック図1aから抽出されるハードウェアロジックは、リレーシーケンスからなる標準ロジックによって構成される。従来のプラントシミュレータでは、定形外の動作をソフトフェアロジックに反映するためには、シミュレータ設計者の入力作業を求める独自の機能を必要としていた。しかし、ロジック変換装置10は、従来のプラントシミュレータが必要としていた独自の機能を有することなく、素子データベース6から素子の情報及び定形外の動作の情報を取得している。このため、ハードウェアロジック図1aから抽出したハードウェアロジック情報に素子の情報及び定形外の動作の情報を自動的に反映した上で、ハードウェアロジック図1aをソフトフェアロジック図9aに変換することが可能である。
【0031】
このように図1〜図6を参照して、ハードウェアロジック図1aをソフトフェアロジック図9aに変換するための概念的な説明を行った。
次に、具体的にハードウェアの構成が記載されたハードウェアロジック図1bをソフトフェアロジック図9bに変換するまでの例を、図7〜図11を参照して説明する。
【0032】
図7は、ハードウェアロジック図1bの例を示す。なお、説明の都合により、図7は、図3のハードウェアロジック図1aとは異なる形式でロジック図を記載している。
ハードウェアロジック図1bは、CAD等により書き込まれており、図中には、切替えスイッチSW5が表されている。切替えスイッチSW5の近くには、切替えスイッチSW5の製品番号が示される。そして、スイッチSW5には、24Vの直流電源線が接続される。
【0033】
図8は、対応表6aの例を示す。図8Aは、対応表6aの構成例を示し、図8Bは、切替えスイッチSW5の動作例を示す。
【0034】
図8Aに示す対応表6aは、切替えスイッチSW5に付随して設けられており、素子データベース6に格納される。プラントシミュレータでは、切替えスイッチSW5のように特殊な動作を有する素子に対してそれぞれの動作(対応表6aに即する動き)を模擬する特殊な素子をソフトウェアロジック上で再現する。素子データベース6は、このような特殊な素子に関する情報、及び特殊な素子による定形外の動作の情報を各種のテーブルで定義している。そして、論理解析部4は、素子データベース6から対応表6aを読み出して、切替えスイッチSW5の各種の情報を取得する。
【0035】
図8Bに示す切替えスイッチSW5の動作例より、切替えスイッチSW5の動作を指示する不図示のキーが通常状態の位置で差し込まれた後、運転員がキーを左に回転させると片系バイパス許可と呼ばれる特殊な操作が行われ、キーを右に回転させると片系バイパス許可と呼ばれる特殊な操作が行われることが示される。また、運転員がキーを通常状態に戻すと、スイッチSW5からキーを引き抜いて、キーを持たない運転員による意図しない動作を防ぐことができる。なお、図中の「AA-BBB-1」とは、スイッチSW5に一意に割り振られる器具ナンバーであり、「DD-1」とは、スイッチSW5の形式を表す。これらの情報は、後述する図9に示す属性データ表6bによって特殊な操作の操作名称と共に定義されている。
【0036】
図9は、素子データベース6における切替えスイッチSW5の属性データ表6bである。
論理解析部4は、ハードウェアロジック図1bに記された器具ナンバーに基づいて属性データ表6bを検索し、形式に該当する切替えスイッチSW5の属性データを属性データ表6bから取得する。上述したように素子データベース6は、それぞれの素子の形式毎に同一又は異なる論理情報を持つ。このため、論理解析部4は、切替えスイッチSW5の形式に対応する論理情報を取得することができる。
【0037】
本例では、上述したスイッチSW5の属性が属性データ表6bに記されている。属性データ表6bには、スイッチSW5の器具ナンバー「AA-BBB-1」、形式「DD-1」に加えて、図8Bに示した「片系バイパス許可」、「通常」、「両系バイパス許可」に対して、それぞれ操作名称2,4,6する操作を特定するための番号が割り振られている。
【0038】
図10は、切替えスイッチSW5の論理情報6cである。
論理解析部4は、切替えスイッチSW5の論理情報6cから必要な論理情報を取得する。これにより、ロジック変換部8は、後述するソフトウェアロジック図9bに記載するソフトフェアロジックを作成するために必要となる全ての論理情報を取得することが可能となる。
【0039】
図11は、切替えスイッチSW5を変換したソフトウェアロジック図である。
オペレータが切替えスイッチSW5に差し込まれたキーを片系バイパス許可に回すと、途中の「COS」として表される切替え部の第1入力を経て第1出力より、片系バイパス許可の信号が出力される。一方、オペレータがキーを両系バイパス許可に回すと、切替え部の第2入力を経て第2出力より、両系バイパス許可の信号が出力される。そして、通常時には、キーが回されることがないため、切替部には入力がなく、また、切替部の第3出力からは常に通常状態の信号が出力される。
【0040】
素子データベース6は、切替えスイッチSW5の他にも、各種のプラントシミュレータで必要となる機器や素子の論理情報を有している。このため、ロジック変換の際には、ハードウェアロジック図1bに記された素子や機器の動きに対応した回路をソフトフェアロジック図9bに組み込むことができる。
【0041】
以上説明した一実施の形態に係るロジック変換装置10によれば、ロジック変換装置10で動作するソフトウェアプログラムを用いて、実機プラントに用いられるハードウェアロジック図1a,1bを、プラントシミュレータに用いられるソフトウェアロジック図1b,9bに自動的に変換することができる。このとき、ハードウェアの動作に対応した論理情報を有する素子データベース6から抽出した素子に関する情報及び定形外の動作の情報を、ソフトフェアロジック図に自動的に反映することができる。プラントシミュレータ用のソフトウェアロジック独自の回路情報を取得し、ソフトウェアロジックに組み込むことが可能である。
【0042】
また、ハードウェアロジック図からソフトフェアロジック図への変換が自動化される。このため、シミュレータ設計者がソフトフェアロジック図を作成する手間を減らして、ロジック変換時におけるシミュレータ設計者の作業負荷と作業時間を大幅に減らし、作業効率を上げることができる。また、シミュレータ設計者に起因するヒューマンエラーを減少することができる。
【0043】
また、素子データベース6に素子に関する各種の情報を書き込むだけで、様々なハードウェアロジック図に記載される素子の情報を一括してソフトフェアロジック図に反映することができる。このため、素子の情報のメンテナンス性が高まり、論理が正しいソフトフェアロジック図を作成することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態に係るロジック変換装置10は、原子力発電プラント等の実機プラントに用いられるハードウェアロジック図をソフトフェアロジック図に変換する例を説明したが、その他の発電プラント、産業プラントに適用してもよい。
【0045】
また、定形外の動作には、例えば積分処理等が含まれる。
【0046】
また、上述した実施の形態例における一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0047】
また、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0048】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0049】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0050】
また、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1…ハードウェアロジックデータベース、1a,1b…ハードウェアロジック図、2…ロジック情報抽出部、3…ロジック結線情報ファイル、4…論理解析部、5…論理情報ファイル、6…素子データベース、6a…対応表、6b…属性データ表、6c…論理情報、7…中間ファイル生成部、8…ロジック変換部、9…ソフトフェアロジックデータベース、9a,9b…ソフトウェアロジック図、10…ロジック変換装置、11…解析部、12…変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実機プラントに搭載されるハードウェアのハードウェアロジック図を格納するハードウェアロジックデータベースと、
前記ハードウェアを構成する素子の定型動作を含む前記素子に関する情報、及び前記素子が前記ハードウェアの動作に影響を与える定形外の動作の情報を格納する素子データベースと、
前記実機プラントの動作を模擬する仮想プラントに搭載され、前記仮想プラントの動作を制御するソフトウェアプログラムの論理が記述されるソフトウェアロジック図を格納するソフトフェアロジックデータベースと、
前記ハードウェアロジックデータベースから読み出した前記ハードウェアロジック図より前記ハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報、前記素子データベースから抽出する前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報に基づいて、前記ハードウェアの論理を解析する解析部と、
前記ハードウェアの論理を、前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報が反映されるソフトフェアロジック図に変換して、前記ソフトフェアロジック図を前記ソフトフェアロジックデータベースに書き込む変換部と、を備えた
ロジック変換装置。
【請求項2】
前記解析部は、
前記ハードウェアロジック図からハードウェアロジック情報を抽出して、互いに結線される複数の前記素子の結線情報をロジック結線情報ファイルに書き出すロジック情報抽出部と、
前記ロジック情報抽出部から受け取る前記ハードウェアロジック情報、及び前記素子データベースより読み出した前記素子に関する情報に基づいて、前記ロジック結線情報ファイルから読み込んでハードウェアロジックを解析した論理情報を論理情報ファイルに書き出す論理解析部と、を備え、
前記変換部は、
前記論理解析部の処理に合わせて、前記論理情報ファイルから前記論理情報を読み出して前記ソフトフェアロジック図のフォーマットに合わせた中間ファイルを生成する中間ファイル生成部と、
前記中間ファイルから読み出した前記論理情報を前記ソフトフェアロジック図に変換するロジック変換部と、を備える
請求項1記載のロジック変換装置。
【請求項3】
前記論理情報ファイルには、前記定型外の動作として前記素子の物理動作が前記素子毎のパスにより表される
請求項2記載のロジック変換装置。
【請求項4】
前記定形外の動作の情報には、前記ハードウェアに対して供給される電源が断たれることを示す情報が含まれる
請求項3記載のロジック変換装置。
【請求項5】
実機プラントに搭載されるハードウェアのハードウェアロジック図を格納するハードウェアロジックデータベースから前記ハードウェアロジック図を読み出すステップと、
前記ハードウェアロジック図より前記ハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報を抽出するステップと、
前記ハードウェアを構成する素子の定型動作を含む前記素子に関する情報、及び前記素子が前記ハードウェアの動作に影響を与える定形外の動作の情報を格納する素子データベースから前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報を抽出するステップと、
前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報に基づいて、前記ハードウェアの論理を解析するステップと、
前記ハードウェアの論理を、前記実機プラントの動作を模擬する仮想プラントに搭載され、前記仮想プラントの動作を制御するソフトウェアプログラムの論理が記述されるソフトウェアロジック図に前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報を反映して変換するステップと、
前記ソフトウェアロジック図をソフトフェアロジックデータベースに書き込むステップと、を含む
ロジック変換方法。
【請求項6】
実機プラントに搭載されるハードウェアのハードウェアロジック図を格納するハードウェアロジックデータベースから前記ハードウェアロジック図を読み出す手順、
前記ハードウェアロジック図より前記ハードウェアの論理を抽出したハードウェアロジック情報を抽出する手順、
前記ハードウェアを構成する素子の定型動作を含む前記素子に関する情報、及び前記素子が前記ハードウェアの動作に影響を与える定形外の動作の情報を格納する素子データベースから前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報を抽出する手順、
前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報に基づいて、前記ハードウェアの論理を解析する手順、
前記ハードウェアの論理を、前記実機プラントの動作を模擬する仮想プラントに搭載され、前記仮想プラントの動作を制御するソフトウェアプログラムの論理が記述されるソフトウェアロジック図に前記素子に関する情報及び前記定形外の動作の情報を反映して変換する手順、
前記ソフトウェアロジック図をソフトフェアロジックデータベースに書き込む手順を、
コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−77104(P2013−77104A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215946(P2011−215946)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】