説明

ロックミシン用針降下装置、ロックミシン用針板、および、それらを組み込んだロックミシンによる縫製品

【課題】 1本針で針振り機構を有するロックミシンであっても縁かがり縫い目のかがり巾を簡単に調節可能とする上、目跳びを確実に防止して美感に秀れ、多彩なシェルロック縫い目を実現化できる新たなロックミシンおよびそれを用いた縫製品技術を提供する。
【解決手段】 ミシン本体1適所に降下レバー4を軸着し、該枢軸40に針棒移動アーム5基端、降下レバー4下端に補助アーム50基端を夫々枢着し、針棒移動アーム5先端、補助アーム50先端の夫々を針棒降下土台6の適所に枢着した上、該針棒降下土台6に枢着した連結プレート60を針棒3に枢着し、針振り機構が当該降下レバー4上端を傾動すると、それに応じて針棒3の降下量を自動的に調整可能としてなるロックミシン用針降下装置2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロックミシンに関連するものであり、特に、針振り可能としたロックミシン、および、それによって縫製した縫製品などを製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
衣類の裾を縫製する工程は、通常、ロックミシンを用いて縁かがり縫いを行った後、すくい縫いミシンを用いてすくい縫いして仕上げるという手順で行われており、また、図12の2枚を縫合した布地の斜視図に示してあるように、縁かがり縫いX,Xした2枚の布地W,W同士を縫合する場合には、各布地W,Wの縁かがり縫いX,Xよりも僅かに布地W,W各中央寄りとなる縫合箇所同士を本縫いミシンで直線縫合Yした上、各縁かがり縫いX,Xと直線縫合Y箇所との間をすくい縫いミシンでまつり縫いZ,Zして仕上げるが、本縫いミシン、ロックミシン、すくい縫いミシンの各種ミシンを準備し、且つそれらの操作に熟練した従業員が、夫々の工程を順を追って作業しなければならず、製造工数ならびに生産コストの増大を招く要因となっていた。
【0003】
(従来の技術)
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、オーバーロックミシンの針棒に、縁かがり用の針と本縫い用の針とを並設し、縁かがり縫いと本縫いとからなる安全縫いが1工程で出来るようにしたものや、同特許文献1(2)に見られるような、複数の針を保持した針棒、2本または3本のル−パ−を装備し、被縫製物に縁かがり縫い目および二重環縫い目を形成するオーバーロックミシンにおいて、前記被縫製物の布送り方向および前記針棒の上下往復動方向と略直交する方向に前記針棒を移動させる針棒移動機構を設け、縁かがり縫い機能と千鳥縫いの機能を併せ持ち多様な模様縫いができるようにしてなるもの、また、同特許文献1(3)のように、所定の縫製機構を具備した縫製ユニットを着脱自在に接続し、単機能のミシンを製作する場合は、その組立が容易になり、また複合ミシンを製作する場合には、所定の単機能を具備した縫製ユニットをミシン本体に接続するだけで所望の縫製ができるようになり、その構造が単純で使い易く、故障や誤操作を少なくできるようにしたものなどが散見される。
【0004】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているような縁かがり縫い目と本縫い目とを同一縫製工程中に形成可能としてなるものは、オーバーロックミシンの針棒に、縁ががり縫い用の針と本縫い用の針とを併設したものとなっており、それらに伴い上ルーパーおよび下ルーパーを配設するなど、自ずと構造が複雑化してしまい、価格の高騰や故障、誤操作を招き易く、メンテナンス作業が困難なものとなってしまうという欠点があり、また、特許文献1(2)に代表するように、縁かがり縫い機能と千鳥縫いの機能とを併せ持ったオーバーロックミシンもまた同様に、複数の針を併設したものとなって構造が複雑化し、高コスト化してしまうという難点を有するものであり、他方、特許文献1(3)の縫製ユニットを着脱自在に接続するようにしてなるものでは、複数種の縫い目による縫製を可能とする場合に、各種の縫製ユニットを組み替えながら縫製作業を段階的に進める必要があり、縫製ユニット個数分のコストが嵩む上、各縫製ユニット組み替え毎に作業工数が増加してしまうという欠点があった。
【特許文献1】(1)特開平8−24451号公報 (2)特開2001−340675号公報 (3)特開平9−84975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある縁ががり縫い目の形成と同一の工程中に、本縫い目や千鳥縫い目などを平行して形成可能とする各種オーバーロックミシンなどは、何れも針棒に複数本の針を必ず併設しなければならず、構造の複雑化による価格の高騰や縫製コストの増加を招くという課題を残すものであり、これまで永年に亘り、様々な利用者に対して柔軟に対応すべく高品質の衣料、雑貨などの縫製商品の開発、生産に携わり、提供し続けてきている中、ロックミシンを用いてニット商品やインナーなどの解れ防止および縫い合わせを行う場合に、かがり巾を簡単に変更、調節可能とし、縁かがり縫い目のデザイン性を高めると共に、縁かがり縫い目の形成と同一工程中に、まつり縫い目をも形成可能とし、且つ、ロックミシンそれ自体の構造も簡素化して低コストで提供可能とするようにした構成につき、更なる改善の可能性を痛感するに至ったものである。
【0006】
(発明の目的)
そこで、この発明は、1本針で針振り機構を有するロックミシンであっても、縁かがり縫い目のかがり巾を簡単に調節可能とする上、目跳びを確実に防止して美感に秀れ、多彩なシェルロック縫い目を実現化できる新たなロックミシン技術およびそれを用いた縫製品の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造のロックミシン用針降下装置、新規な構造のロックミシン用針板、および、それらを組み込んだロックミシンを用いて製造した新規な構造の縫製品を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明のロックミシン用針降下装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、ミシン本体ガイド部に添って上下動自在な針棒を設け、該針棒の左右何れか一方に所定距離隔てたミシン本体適所に、降下レバーの上下端間中途適所を枢軸で左右揺動自在に軸着すると共に、該枢軸に針棒移動アームの基端を揺動自在に枢着し、同降下レバーの下端に補助アームの基端を揺動自在に枢着する一方、当該針棒移動アームの先端を針棒降下土台の背上部に、当該補助アームの先端を同針棒降下土台の背下部に夫々左右揺動自在に枢着した上、該針棒降下土台の背部とは反対がわとなる表部に、連結プレートの基端を枢着し、且つ同連結プレートの先端を当該針棒の中途適所に枢着し、針振り機構が当該降下レバー上端を針棒がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を増加し、針振り機構が当該降下レバー上端を針棒とは反対がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を減少する如く降下量調整可能としてなるものとした構成を要旨とするロックミシン用針降下装置である。
【0008】
(関連する発明1)
上記したロックミシン用針降下装置に関連し、この発明には、針振り機構を有するロックミシンに、当該ロックミシン用針降下装置と共に組み込み可能なロックミシン用針板も包含している。
即ち、左右巾寸法でかがり巾を決定し、前後長寸法で糸締まりを決定する爪部に隣接して形成した針落溝を左右反転L字形とし、同針落溝の底辺左右長寸法を針振り巾寸法に設定してなるものとした構成を要旨とするロックミシン用針板である。
【0009】
(関連する発明2)
この発明のロックミシン用針降下装置、および、ロックミシン用針降下装置に関連して、この発明には、それらロックミシン用針降下装置、および、ロックミシン用針降下装置を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンにより製造した縫製品も包含しており、その構成は、次のとおりのものである。
即ち、この発明のロックミシン用針降下装置、および、ロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンを用い、かがり縫いをなすシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1または複数目のかがり巾を拡大してなるものとするよう連続縫製してなるものとした構成を要旨とする、ロックミシン用針降下装置、および、ロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンによる縫製品である。
【0010】
この縫製品を、表現を変えて示すと、この発明のロックミシン用針降下装置、およびロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンを用い、かがり縫いに相当するシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目の針糸縫い目がまつり縫いを兼ねるものとし、実質的にかがり縫いとまつり縫いとを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなるものとした、ロックミシン用針降下装置、および、ロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンによる縫製品と云うことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明のロックミシン用針降下装置によれば、従前までの構成のものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成を有していることから、ロックミシンに針振り機構を組み込み、縁かがり巾を変えながら縫製する場合に目跳びの原因となる針棒降下量の不足分を自動的且つ適切に調整可能となり、従前までであれば、目跳びによって縫製品の不良率が高まっていたが、こうした弊害を解消し、格段に秀れた良品率を達成可能とし、且つ、針振り機構に連動する機械式のものとしてあるから、電子制御によるものに比較して格段に廉価にて製造可能で、誤動作が無く、耐久性にも秀れ、メンテナンス性が高く経済的であるという秀れた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、この発明のロックミシン用針板によれば、爪部が、その左右巾寸法でかがり巾を決定し、前後長寸法で糸締まりを決定し、左右反転L字形の針落溝が、その底辺左右長寸法を針振り巾寸法に設定したものとしてあり、縁かがり巾を変えながら円滑且つ安定的に縫製可能なものとし、この発明のロックミシン用針降下装置の動作を安定させ、縫製品の良品率を格段に向上できるものとなる。
【0013】
そして、この発明の縫製品は、かがり縫いをなすシェルロック縫い目の形状を、従来には見られない全く新規で美感に秀れたものとし、他の商品とは明確に差別化できるものとなり、さらに、シェルロック縫い目の形状も、かがり巾を変える縫い目数の変更などによって多彩な模様を形成することができ、多種多様且つ個性的な商品展開を実現化するものとなり、しかも、従来製品に比較して大巾に製造工数および生産コストを削減できるという大きな特徴を有している。
【0014】
また、この発明が包含している縫製品は、シェルロック縫い目の1目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目の針糸縫い目がまつり縫いを兼ねるものとし、実質的にかがり縫いとまつり縫いとを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなるものとすることができ、かがり縫いに相当するシェルロック縫い目の美感を格段に高めることができる上、まつり縫いの工程が不要となり、縫製工数を大幅に削減し、生産コストを格段に低減できるという大きな効果を奏することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
ロックミシン用針降下装置は、ロックミシンの針振り機構の動作に応じて針棒の降下量を自動的に調節し、縫い目を安定させ、目跳びの発生を確実に防止可能とする機能を担い、針振り機構、またはその連動機構が当該降下レバー上端を針棒がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を増加し、針振り機構、またはその連動機構が当該降下レバー上端を針棒とは反対がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を減少する如く降下量調整可能としてなるものとしなければならない。
【0016】
ロックミシン用針降下装置の針棒は、1本または複数本の針を着脱自在に装着可能としており、ロックミシン用針降下装置の動作に応じ、装着した針の降下量を自動的に調整可能とする機能を果たし、ミシン本体ガイド部に添って上下動自在に設けたものとしなければならず、降下レバーは、針振り機構、またはその連動機構からの入力を受け、針棒移動アームおよび補助アームに所望の操作力を所定の向きに伝達可能とする機能を担い、針棒の左右何れか一方に所定距離隔てたミシン本体適所に、該降下レバーの上下端間中途適所を枢軸で左右揺動自在に軸着すると共に、同枢軸に針棒移動アームの基端を揺動自在に枢着し、同降下レバーの下端に補助アームの基端を揺動自在に枢着してなるものとしなければならない。
【0017】
針棒移動アームおよび補助アームは、降下レバーからの入力を受け、針棒降下土台に所望の操作力を所定の向きに伝達可能とする機能を担い、降下レバーの上下端間中途適所の枢軸に該針棒移動アームの基端を揺動自在に枢着し、降下レバーの下端に補助アームの基端を揺動自在に枢着する一方、当該針棒移動アームの先端を針棒降下土台の背上部に、当該補助アームの先端を同針棒降下土台の背下部に夫々左右揺動自在に枢着したものとしなければならず、針棒降下土台は、針棒移動アームおよび補助アームからの操作力を連結プレートに伝達可能とする機能を担い、連結プレートは、針棒降下土台からの入力に応じて、針棒の降下量に所望の規制を与える機能を担うものとなり、連結プレートの基端に、針棒降下土台の表部を枢着し、且つ同連結プレートの先端を当該針棒の中途適所に枢着したものとしなければならない。
【0018】
ロックミシン用針板は、かがり巾と糸締まりとを規制可能にすると共に、針振り機能の針落ちを案内可能とし、縁かがり巾を変えた場合にも安定した縫製を可能とする機能を担い、ロックミシン用針板の爪部が、かがり巾と糸締まりとを規制する機能を果たすもので、同爪部の左右巾寸法でかがり巾、前後長寸法で糸締まりを夫々決定するものとしなければならず、該爪部に隣接して形成した針落溝が、針振り機能の針落ちを案内可能とする機能を担い、左右反転L字形としなければならず、同針落溝の底辺左右長寸法を針振り巾寸法に設定してなるものとすべきである。
【0019】
前記ロックミシン用針降下装置、および、前記ロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンによる縫製品は、デザイン性に秀れた縁かがり縫い目を形成し、確実に解れ防止されたもので、従来技術による縫製では得ることのできない機能性と外的美感とを達成可能とする機能を果たし、後述する実施例に示すように、かがり縫いをなすシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1または複数目のかがり巾を拡大してなるものとすることが可能であり、また、かがり縫いに相当するシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1目または複数目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目の針糸縫い目がまつり縫いを兼ねるものとし、実質的にかがり縫いとまつり縫いとを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなるものとすることができる外、縁かがり縫い目のかがり巾条件を様々に変えて、それら以外の多彩な縫製、縫合などを施したものとすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面は、この発明のロックミシン用針降下装置、ロックミシン用針板、および、それらを組み込んだロックミシンによる縫製品の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【図1】針棒を上昇したロックミシン用針降下装置を示す正面図である。
【図2】針棒を降下したロックミシン用針降下装置を示す正面図である。
【図3】ロックミシン用針板を従来型のものと比較して示す平面図である。
【図4】補助爪を従来型のものと比較して示す平面図である。
【図5】縫製品のシェルロック縫い目の一例を示す斜視図である。
【図6】縫製品のシェルロック縫い目の他の例を示す斜視図である。
【図7】縫製品のかがり巾の変化を示す平面図である。
【図8】縫製品のかがり巾の他の変化を示す平面図である。
【図9】まつり縫いを兼ねたかがり縫いの縫製工程を示す斜視図である。
【図10】縫製を終えた縫製品を示す斜視図である。
【図11】2枚を縫合した縫製品を示す斜視図である。
【図12】従来の縫製製品を示す斜視図である。
【実施例1】
【0021】
図1の針棒を上昇した状態で示すロックミシン用針降下装置の正面図、図2の針棒を降下した状態で示すロックミシン用針降下装置の正面図として取り上げている事例は、ミシン本体1適所に降下レバー4を軸着し、該枢軸40に針棒移動アーム5基端を、また降下レバー4下端に補助アーム50基端を夫々枢着し、針棒移動アーム5先端、補助アーム50先端の夫々を針棒降下土台6の適所に枢着した上、該針棒降下土台6に枢着した連結プレート60を針棒3に枢着し、針振り機構が当該降下レバー4上端を傾動すると、それに応じて針棒3の降下量を自動的に調整可能としてなるようにした、この発明のロックミシン用針降下装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0022】
それら図1(a),(c)、および図2(b),(c)の各図からも明確に把握できるとおり、この発明のロックミシン用針降下装置2は、ミシン本体1の針振り機構(図示せず)と共に、針振り運動可能としたガイド部10に添って上下動自在であり、棒状体の下端に、図示しない針装着部および針止めネジを設けた針棒3を組み込み、該針棒3の左右何れか一方に所定距離隔てたミシン本体1の針振り機構適所に、降下レバー4の上下端間中途適所を枢軸40で左右揺動自在に軸着すると共に、該枢軸40に針棒移動アーム5の基端を揺動自在に枢着し、同降下レバー4の下端に補助アーム50の基端を揺動自在に枢着する一方、当該針棒移動アーム5の先端を針棒降下土台6の背上部に、当該補助アーム50の先端を同針棒降下土台6の背下部に夫々左右揺動自在に枢着した上、当該針棒降下土台6の背部とは反対がわとなる表部に、連結プレート60の基端を枢着し、且つ同連結プレート60の先端を当該針棒3の中途適所に枢着し、図1(a)の状態から、同図1(c)に示すように、当該降下レバー4上端が針振り機構(図示せず)に連動し、針棒3がわに傾斜すると、図2(d)に示すように、当該針棒3の降下量を増加し、また、図1(c)の状態から、同図1(a)に示すように、針振り機構が当該降下レバー上端4を針棒3とは反対がわに傾斜すると、図2(b)に示すように、当該針棒3の降下量を減少する如く降下量自動調整可能なものとしてある。
【0023】
また、図3(a)に示す、この発明のロックミシン用針板7は、同図3(b)に示す従来型のものに比較すれば明確に判別されるように、左右巾寸法でかがり巾を決定し、前後長寸法で糸締まりを決定する爪部70に隣接して形成した針落溝71を左右反転L字形とし、同針落溝71の底辺左右長寸法を針振り巾寸法に設定してなるものとしてある。
そして、図4(a)に示す補助爪8は、同図4(b)の1本針用の溝を形成した従来型の補助爪8、および、図4(c)の2本針用の溝を形成した従来型の補助爪8とは異なり、針用の溝81,81を無くし、上糸の安定した糸調子を出す為の爪部80は形成したものとしてある。
【実施例2】
【0024】
図5や図6に示す、この発明の縫製品9は、実施例1のロックミシン用針降下装置2およびロックミシン用針板7を組み込んだ1本針のロックミシン1を用いて縫製したものであり、同図5中の針糸A、上ルーパー糸B、下ルーパー糸Cで示すように、縁かがり縫いをなすシェルロック縫い目X,X,……の1または複数目置きの一定割合数毎に、シェルロック縫い目の1または複数目のかがり巾を拡大してなるものとするよう連続縫製してなるものの具体例の一つである。
【0025】
また、図7に示してある、この発明の縫製品9は、かがり巾小寸法Dとかがり巾大寸法Eとの寸法差F間で3種以上のかがり巾寸法を組み合わせ、ウェーブ状の輪郭形状を呈するシェルロック縫い目X,X,……を連続縫製してなるものであり、そして、次の図8に示す、この発明の縫製品9は、かがり巾小寸法Dとかがり巾大寸法Eとの間で、3つの縫い目毎に交互に配置し、凹凸状の輪郭形状を呈するシェルロック縫い目X,X,……を連続縫製してなるものである。
【0026】
さらに、図9に示してあるように、布地Wの出来上がり線Gを山折りにし、表面W1をまつり縫い位置で谷折りにし、縁かがり縫いに相当するシェルロック縫い目X,X,……の複数目置き毎に、シェルロック縫い目X,X,……の2目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目X1,X1の針糸縫い目Hが、表面W1の谷折りとしてあるまつり縫い位置をすくい縫いし、まつり縫い目を兼ねるようにしたものであり、図9中の実線矢印、および、図10に示すように、布地Wを展開すれば、実質的に縁かがり縫い目X,X,……と、まつり縫いH,H,……とを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなる縫製品9とするものである。
【0027】
さらにまた、図11に示すように、2枚の布地W,Wの縁がわから所定寸法巾の位置同士を直線状に縫合Yした上、図9および図10に示すように、実質的に縁かがり縫い目X,X,……と、まつり縫いH,H,……とを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなる縫製品9とすることも可能である。
【0028】
(実施例1の作用・効果)
この発明のロックミシン用針降下装置2は、図1(a)の二点鎖線矢印に示してあるように、降下レバー4上端が、ミシン本体1針振り機構(図示せず)の動作に連動し、針棒3とは反対がわに傾斜すると、図2(b)に示すように、針棒3の最低降下位置を、降下量小位置Jに自動的に規制し、図1(c)の二点鎖線矢印に示しているとおり、降下レバー4上端が、ミシン本体1針振り機構(図示せず)の動作に連動し、針棒3がわに傾斜すると、図2(d)に示すように、針棒3の最低降下位置を降下量大位置Kに自動的に規制するものとなり、針振り機構(図示せず)によって針棒3が中央位置にある場合には、図1(a)および図2(b)に示すよう動作し、針振り機構(図示せず)によって針棒3が所定かがり巾分水平方向に移動した場合には、図1(c)および図2(d)に示すとおりに動作し、目跳びによる縫製不良の発生を確実に防止可能なものとすることができる。
【0029】
この発明のロックミシン用針板7は、図3(a)に示すように、爪部70の左右巾寸法でかがり巾を決定し、前後長寸法で糸締まりを決定することができ、さらに、左右反転L字形とした針落溝71が、その底辺左右長寸法で針振り巾寸法を設定してあって、該底辺左右長寸法範囲内で縁かがり巾を変えた場合にも、安定した縫製が可能となり、縫製品の良品率を格段に高めることができるという利点がある。
【0030】
そして、図4(a)に示してある補助爪8は、針振り機構(図示せず)によるかがり巾変化に伴う針棒3の移動で、左右移動・降下する針(図示せず)の障害とならぬよう、図4(b),(c)に示す従来型には有った凹溝81,81を廃止し、さらに、爪部80を残すことによって上糸の糸調子を安定させることができるようにしてあり、縫製品の良品率を大幅に高めることができる。
【0031】
(実施例2の作用・効果)
一方、この発明が包含している縫製品9は、図5ないし図8に示すように、この発明のロックミシン用針降下装置2、および、この発明のロックミシン用針板7を組み込んだ針振り機構(図示せず)を有するロックミシン1を用い、かがり縫いをなすシェルロック縫い目X,X,……の複数目置き毎に、シェルロック縫い目X,X,……の複数目のかがり巾(図7および図8中の寸法E)を拡大してなるものとするよう連続縫製してなり、布地W縁の表裏に、従来には見ることの無かった独特の形状の縫い目模様X,X,……を形成し、低コストでかがり縫い目X,X,……の美感を格段に向上することができるものとなっている。
【0032】
また、この発明に含まれる縫製品9にあっては、図9および図10に示してあるように、この発明のロックミシン用針降下装置2、および、この発明のロックミシン用針板7を組み込んだ針振り機構(図示せず)を有するロックミシン1を用い、かがり縫いに相当するシェルロック縫い目X,X,……の複数目置き毎に、シェルロック縫い目Xの1目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目Xの針糸縫い目Hがまつり縫いを兼ねるものとし、実質的にかがり縫いX,X,……とまつり縫いH,H,……とを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなるものとしてあることから、従前までは、かがり縫いを行った後に、それとは別工程のまつり縫いを行わなければならなかったものが、それらを一つの縫製工程で一挙に行うことができるようになり、製造工数および生産コストを大幅に削減できる上、縁かがりのシェルロック縫い目X,X,……の輪郭形状が独特で美感に秀れ、他商品との差別化を図ることができる。
【0033】
さらに、図11に示すように、2枚の布地W,Wの縁同士を縫合した縫製品9もまた、同様にかがり縫いとまつり縫いとを同一の縫製工程で纏めて行うことができ、製造工数および生産コストを格段に高めたものとすることができる。
【0034】
(結 び)
叙述の如く、この発明のロックミシン用針降下装置およびロックミシン用針板、ならびに、それらを組み込んだロックミシンによる縫製品は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかもロックミシン用針降下装置およびロックミシン用針板は、製造容易であり、従前からの針振り機構を有するロックミシンに比較して構造が簡素で低廉にて量産可能であり、遥かに経済的なものとすることができる上、縫製作業性を大幅に改善し得るものとなることから、従前までは、複数工程を経なければ生産できなかった縫製品を格段に効率的且つ高品質にて大量生産することが可能となり、人件費の削減や生産効率の向上を模索する縫製業界およびミシン業界は固よりのこと、生産性に秀れ、故障が少なく、高い操作性を有するようにしたミシンの提供を希望する縫製業者や、縁かがり縫い目に新たなデザイン性を求めると共に、取扱い容易で廉価なミシンを希望する一般家庭においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0035】
1 ミシン本体
10 同 ガイド部
2 ロックミシン用針降下装置
3 針棒
4 降下レバー
40 同 枢軸
5 針棒移動アーム
50 同 補助アーム
6 針棒降下土台
60 同 連結プレート
7 ロックミシン用針板
70 同 爪部
71 同 針落溝
8 補助爪
80 同 爪部
81 同 針用の溝
9 縫製品
A 針糸
B 上ルーパー糸
C 下ルーパー糸
D かがり巾小寸法
E かがり巾大寸法
F 寸法差
G 出来上がり線
H 針糸縫い目
J 降下量小位置
K 降下量大位置
W 布地
W1 同 布地表面
X 縁かがり縫い
Y 縫合
Z まつり縫い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン本体ガイド部に添って上下動自在な針棒を設け、該針棒の左右何れか一方に所定距離隔てたミシン本体適所に、降下レバーの上下端間中途適所を枢軸で左右揺動自在に軸着すると共に、該枢軸に針棒移動アームの基端を揺動自在に枢着し、同降下レバーの下端に補助アームの基端を揺動自在に枢着する一方、当該針棒移動アームの先端を針棒降下土台の背上部に、当該補助アームの先端を同針棒降下土台の背下部に夫々左右揺動自在に枢着した上、該針棒降下土台の背部とは反対がわとなる表部に、連結プレートの基端を枢着し、且つ同連結プレートの先端を当該針棒の中途適所に枢着し、針振り機構が当該降下レバー上端を針棒がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を増加し、針振り機構が当該降下レバー上端を針棒とは反対がわに傾斜すると、当該針棒の降下量を減少する如く降下量調整可能としてなるものとしたことを特徴とするロックミシン用針降下装置。
【請求項2】
左右巾寸法でかがり巾を決定し、前後長寸法で糸締まりを決定する爪部に隣接して形成した針落溝を左右反転L字形とし、同針落溝の底辺左右長寸法を針振り巾寸法に設定してなるものとしたことを特徴とするロックミシン用針板。
【請求項3】
請求項1記載のロックミシン用針降下装置、および請求項2記載のロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンを用い、かがり縫いをなすシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1または複数目のかがり巾を拡大してなるものとするよう連続縫製してなるものとした、請求項1記載のロックミシン用針降下装置、および、請求項2記載のロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンによる縫製品。
【請求項4】
請求項1記載のロックミシン用針降下装置、および請求項2記載のロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンを用い、かがり縫いに相当するシェルロック縫い目の1または複数目置き毎に、シェルロック縫い目の1目のかがり巾を拡大すると共に、かがり巾を拡大したシェルロック縫い目の針糸縫い目がまつり縫いを兼ねるものとし、実質的にかがり縫いとまつり縫いとを一度の縫製工程で完了するよう連続縫製してなるものとした、請求項1記載のロックミシン用針降下装置、および、請求項2記載のロックミシン用針板を組み込んだ針振り機構を有するロックミシンによる縫製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−228487(P2012−228487A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100236(P2011−100236)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(511106813)
【Fターム(参考)】