ロボットの回転規制装置
【課題】狭いスペースに配設することができ、しかも、回転リンクの回転動作範囲を360度を超える角度に規制することも可能なロボットの回転規制装置を提供する。
【解決手段】手首アームのフレームの先端開口部を塞ぐ蓋部材に環状の収納空間30を形成し、この収納空間30内に両端を径小側内面壁30aと径大側内面壁30bに連結したフレキシブルバンド29を収容すると共に、フランジ(回転リンク)と一体に回転する掛合ピン41を挿入する。フランジが許容角度範囲を超えて回転しようとすると、掛合ピン41に引っ掛けられて径小側内面壁30aに巻き付けられるフレキシブルバンド29が伸び切ってフランジの回転を強制的に停止させる。
【解決手段】手首アームのフレームの先端開口部を塞ぐ蓋部材に環状の収納空間30を形成し、この収納空間30内に両端を径小側内面壁30aと径大側内面壁30bに連結したフレキシブルバンド29を収容すると共に、フランジ(回転リンク)と一体に回転する掛合ピン41を挿入する。フランジが許容角度範囲を超えて回転しようとすると、掛合ピン41に引っ掛けられて径小側内面壁30aに巻き付けられるフレキシブルバンド29が伸び切ってフランジの回転を強制的に停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転リンクの許容された範囲を超える回転を強制的に停止させるロボットの回転規制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多関節型ロボットでは、回転関節によって連結された複数のアーム(リンク)を備えており、各アームは、回転関節を中心にして回転(旋回)するようになっている。各アームには予め可動範囲が設定されており、通常は、駆動源であるモータの回転数制御によって可動範囲内での回転動作に規制されるのであるが、何らかの原因、例えば作業者がアームを強制的に可動範囲を超えて回転させようとしたような場合、その回転を機械的に阻止するために回転規制装置が設けられている。
【0003】
特許文献1には、ロボットのものではないが、回転軸の回転動作範囲を360度を超えた角度に規制するために、回転軸の近傍に正逆回転可能に棒状部材を設け、回転軸に当該回転軸が基準位置から時計方向へ所定角度回転したとき棒状部材を反時計方向に回転させると共に、回転軸が基準位置から反時計方向へ所定角度回転したとき棒状部材を時計方向に回転させるピンを設け、棒状部材が基準位置から反時計方向へ所定角度以上回転するのを阻止するストッパピンと、棒状部材が基準位置から時計方向へ所定角度以上回転するのを阻止するストッパピンと、棒状部材を基準位置に復帰させる巻きばねを設けてなる回転規制装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−287621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のロボットは自己の内蔵する各種の部品などにより不必要に肥大化することを避ける傾向にあり、スリム化、コンパクト化が図られている。このため、ロボットの内部空間に余裕がない。
【0006】
一方、別の要請としてアームの回転動作範囲の拡大も求められている。現在の回転規制装置は、回転軸に設けたピンが回転軸を支持するハウジング側に固定された突起に当たることによってアームの回転動作範囲を規制する構造が採用されているため、アームの回転動作範囲は360度未満の角度に制約されてしまう。
【0007】
前述の特許文献1の回転規制装置をロボットの回転規制装置に採用すれば、アームの回転動作範囲を360度超えの角度に広げることができる。しかしながら、特許文献1の回転規制装置では、回転軸の近傍に棒状部材、2個のストッパピンおよび巻きばねを設けねばならないので、広いスペースを必要とするが、前述のようにロボットの内部空間には余裕がないことから、採用は難しい。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、狭いスペースに配設することができ、しかも、回転リンクの回転動作範囲を360度を超える角度に規制することが可能なロボットの回転規制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、可撓性条部材が回転する掛合部材に引っ掛けられてぴんと張った状態になる、つまり伸び切ると、可撓性条部材が掛合部材を引き止めてその回転を停止させる。これにより、回転リンクの回転が停止される。当初、可撓性条部材は弛んだ状態で掛け渡されているので、掛合部材(回転リンク)が一方向の回転動作の限界位置で停止されたときには、可撓性条部材は掛合部材に引っ掛けられ、そして一方向に撓んで伸び切った状態になっている。この一方向回転の限界位置から掛合部材が他方向に回転する、可撓性条部材は弛む。掛合部材が1回転して上記一方向回転の限界位置に来ても、可撓性条部材は未だ弛んだ状態を保っているので、当該一方向回転の限界位置を超えて更に回転し、他方向の回転の限界位置まで来ると、それまでに掛合部材に引っ掛けられた可撓性条部材が、前記一方向回転の限界位置における撓み方向とは逆方向に撓み、そしてぴんと張るようになるので、掛合部材が他方向回転の限界位置で止められる。従って、可撓性条部材を収納空間の径小側内面壁と径小側内面壁との間に弛んだ状態に掛け渡す構成とすることにより、可撓性条部材が一方向に回転する掛合部材を停止させる位置と他方向に回転する掛合部材を停止させる位置との間を360度(1回転)を超える角度とすることができるので、掛合部材ひいては回転リンクの回転動作範囲を360度を超えた角度にすることが可能になる。
【0010】
また、可撓性条部材は長い薄板状であり、厚さ方向両面を収納空間の径小側内面壁と径大側内面壁とに対向させた状態で配置されている。このため、可撓性条部材がその幅方向の全体で掛合部材のほぼ半周を包囲するようにして両側から引っ張って停止させるので、掛合部材を確実に停止させることができる。
【0011】
しかも、可撓性条部材は薄板状であるから、掛合部材の回転を許容できる程度の大きさの収納空間内で可撓性条部材の可撓性を十分に発揮させることができる。このため、収納空間をそれ程大きなものとする必要がなくなる。ここで、掛合部材を許容する収納空間は、本来、回転するピンが固定された突起に当接することによって回転リンクの回転動作許容範囲を360度未満の角度に規制する従来装置においても必要な空間であって、本発明において新たに追加するような性質のものではないから、現状の余剰スペースの余りないロボットにも利用可能である。
【0012】
請求項2の発明によれば、回転リンクの回転動作範囲を720度(2回転)以上にすることができる。この場合、可撓性条部材は径小側内面壁に1周近く或いはそれ以上巻かれるが、可撓性条部材は、掛合部材の回転時に当該掛合部材に接触されると、収納空間の径大側内面壁の方向に押されて撓んだり、径小側内面壁の方向に押されて撓んだりして掛合部材の回転を妨げないようにするので、可撓性条部材を径小側内面壁に巻き付けるように配置しても掛合部材の進路を十分に確保できる。これは、収納空間は掛合部材が移動できる程度のもので良く、上記した回転動作範囲が360度未満の従来装置においてピンの回転に必要な空間と同程度のもので良いことを意味し、ロボットの肥大化を回避できる。
【0013】
また、回転動作範囲を大きくするために、可撓性条部材を径小側内面壁に何回も巻き重ねることを必要とする場合には、収納空間の幅を可撓性条部材の巻き付け回数に応じた程度の寸法分だけ拡大しなければならないが、可撓性条部材が薄板状であることを考慮すれば、その拡大程度は小さい。また、回転関節には電源線や信号線などが通されていて回転リンクの回転により捻じられることを考慮すれば、回転リンクの回転動作範囲をむやみに多くすることはなく、せいぜい数回転の範囲内であるから、このことからも、収納空間の拡大程度は小さい。
【0014】
よって、請求項2の発明によれば、回転リンクの回転動作範囲を2回転以上に設定可能で、2回転以上とした場合でも、可撓性条部材のために収納空間を拡大しなくとも、或は拡大したとしてもそれ程の拡大を必要とせず、ロボットの肥大化を極力防止できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、掛合部材が可撓性条部材に引っ張られて回転限界位置で停止した場合、可撓性条部材の掛合部材に引っ掛けられた途中部分がほぼU字状に曲げられる。掛合部材が一方の回転限界位置から他方の回転限界位置に向かって回転する場合、上記のU字状に曲げられた部分の湾曲が残っていると、掛合部材が途中でU字状部分に遭遇し、これを超えようとする。このとき、掛合部材が径大側内面壁に偏って位置しているので、当該U字状部分に対し、径大側内面壁に近い部分から接してゆく。その結果、可撓性条部材が掛合部材によりU字状の曲がりを伸ばされるように押される。従って、掛合部材がU字状部分を収納空間の径大側内面壁との間に挟んで鋭角状の折れ癖を作ってしまうという不具合を防止できる。このような鋭角状の折れ癖は、可撓性条部材の耐久性を低くする要因になることから、それができ難いということは、可撓性条部材を当初設定されていた耐久力通りに利用できる、つまり比較的長持ちさせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す要部の縦断面図
【図2】回転規制装置のフレキシブルバンドの取り付け構成を示す斜視図
【図3】回転規制装置の掛合ピンの取り付け構成を示す斜視図
【図4】フレキシブルバンドによる回転規制の状態を示すもので、(a)は一方の規制位置での規制状態を示す正面図、(b)および(c)は規制位置間の途中の状態を示す正面図、(d)は他方の規制位置での規制状態を示す正面図
【図5】本発明の効果の一つを説明するための図で、(a−1)および(a−2)は本発明におけるフレキシブルバンドのU字状部分への掛合部材の接近状態を示す正面図、(b−1)および(b−2)は掛合ピンの位置が異なる場合の(a−1)および(a−2)相当図
【図6】ロボットの斜視図
【図7】本発明の第2の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図8】本発明の第3の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図10】本発明の第5の実施形態を示す要部の断面図
【図11】本発明の第6の実施形態を示す要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6を参照しながら説明する。図6には、産業用ロボット1が示されている。この産業用ロボット1は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットからなるもので、ベース2と、このベース2に回転関節によって水平方向に回転可能に連結されたショルダ3と、このショルダ3に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された下アーム4と、この下アーム4に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された第1の上アーム5と、この第1の上アーム5の先端部に回転関節によって捻り回転可能に連結された第2の上アーム6と、この第2の上アーム6に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された手首アーム7と、この手首アーム7に回転関節によって捻り回転可能に連結されたフランジ8とから構成されている。
【0018】
上記ベース2、ショルダ3、下アーム4、第1の上アーム5、第2の上アーム6、手首アーム7、フランジ8は、特許請求の範囲におけるリンクに相当する。また、回転関節によって連結された2つのリンクの関係において、ベース2側のリンクは特許請求の範囲における一のリンクに相当し、フランジ8側のリンクは特許請求の範囲における他のリンクに相当し且つ一のリンクに対して回転する回転リンクに相当する。つまり、ベース2とショルダ3との関係において、ベース2は一のリンクに相当し、ショルダ3は他のリンクに相当し、且つベース2に対して回転する回転リンクに相当する。以下、同様に、ショルダ3と下アーム4とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、下アーム4と第1の上アーム5とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、第1の上アーム5と第2の上アーム6とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、第2の上アーム6と手首アーム7とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、手首アーム7とフランジ8とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当するものである。
【0019】
図1には、フランジ8を手首アーム7に回転可能に連結する回転関節の構成が示されている。なお、他の回転関節も図1の回転関節と同様の構成となっている。図1に示すように、手首アーム7の主体を構成するフレーム9は筒形をなしている。このフレーム9には、内部に後述する波動歯車減速装置(減速装置)10およびサーボモータ(駆動モータ)11などを組み込むための開口部が形成されており、この開口部はカバーによって塞がれている。そして、これらフレーム9とカバーとによって手首アーム7の外殻が構成されている。
【0020】
手首アーム7のフレーム9の先端部分の内側には、クロスローラベアリング12が配設されている。このクロスローラベアリング12は、内輪13と、外輪14と、この内輪13および外輪14間に回転自在に保持された複数のころ15とから構成されている。外輪14は、前記ころ15の組み込みのために軸方向に第1の外輪部14aと第2の外輪部14bとに分割されており、これら第1の外輪部14aと第2の外輪部14bとはねじ16により相互に連結されている。そして、この外輪14はねじ17により手首アーム7のフレーム9に固定されている。
【0021】
このようなクロスローラベアリング12の内輪13は、回転関節の回転軸として機能し、外輪14が手首アーム7のフレーム9に固定されることにより、当該手首アーム7に対して回転可能となっている。そして、この内輪13に、継ぎ手軸18が宛がわれ、更に継ぎ手軸18にフランジ8のフレーム19が宛がわれて、これら継ぎ手軸18およびフレーム19がねじ20によって内輪13に固定されている。これにより、フランジ8が回転関節によって手首アーム7に回転可能に連結された状態となる。
【0022】
手首アーム7のフレーム9の先端部には、当該先端の開口部9aを閉鎖してフレーム9内への塵埃などの侵入を防止するための蓋部材21が取り付けられている。このフレーム9に取り付けられて当該フレーム9に一体化された蓋部材21には、継ぎ手軸18を通す円形孔21aが形成され、円形孔21aの内周部に継ぎ手軸18との間を封止するシール22が装着されている。なお、蓋部材21はフレーム(外殻)9に一体化された部材に相当する。
【0023】
前記サーボモータ11は内輪13ひいてはフランジ8を回転駆動するもので、このサーボモータ11の回転は前記波動歯車減速装置10により減速されて内輪13に伝達される。波動歯車減速装置10はハーモニックドライブ(登録商標)と呼ばれる周知構成のもので、主要構成品として、内歯23aを有する環状のサーキュラスプライン23と、外歯24aを有する弾性変形可能な有底円筒状のフレクスプライン24と、弾性変形可能なウェーブジェネレータ25と、楕円状カム26とを有して構成されている。そして、フレクスプライン24は、サーキュラスプライン23の内側に配設されて、外歯24aを内歯23aに噛合させている。なお、外歯24aの数は内歯23aの数より例えば2つ少ない。
【0024】
ウェーブジェネレータ25は、フレクスプライン24の内側に嵌合されている。このウェーブジェネレータ25の内側に弾性変形可能に構成されたボールベアリング27が装着され、このボールベアリング27の内側に前記楕円状カム26が嵌着されている。楕円状カム26は、その中心部にボス部26aを有している。
【0025】
以上の波動歯車減速装置10において、楕円状カム26が入力部で、フレクスプライン24が出力部となっており、楕円状カム26のボス部26aにサーボモータ11の回転軸11aが連結され、フレクスプライン24がクロスローラベアリング12の内輪13に連結されている。そして、サーボモータ11が回転すると、その回転が波動歯車減速装置10により減速されて内輪13に伝達され、フランジ8が回転する。
【0026】
フランジ8は、手首アーム7に対し、基準位置から時計回り方向にα度回転した第1の規制位置と、基準位置から反時計回り方向にα度回転した第2の規制位置との間で回転可能になっている。本実施形態では、上記αは360度(1回転)を若干超えた所望角度に定められている。そして、フランジ8は、通常は第1の規制位置と第2の規制位置との間の所定の回転動作範囲(720度(2回転)を超える)において回転されるが、何らかの原因で第1の規制位置或いは第2の規制位置を超えて回転しようとすると、その回転は回転規制装置28によって強制的に停止されるようになっている。
【0027】
この回転規制装置28は図2〜図4に示されている。回転規制装置28は、可撓性条部材としてのフレキシブルバンド29を主体とするもので、このフレキシブルバンド29は、前記蓋部材21に形成された収納空間30内に収容されている。
即ち、蓋部材21の内表面(フレーム9内に臨む面)には、内輪13の回転中心軸線Cから離れた位置に当該回転中心軸線Cを中心に一周するようにして円環状の凹部が形成され、この凹部が前記収納空間30とされている。収納空間30の径小側周縁部および径大側周縁部は、同心円状の径小側円環状凸部31,径大側円環状凸部32となっている。これら両凸部31,32にはそれぞれ円形穴33が形成され、各円形穴33は溝34によって収納空間30に連通されている。
【0028】
フレキシブルバンド29は、所定の長さを有し、その両先端部は円形状に曲げられて接着されることにより小さなほぼ円筒の取り付け部29a,29bとして形成されている。このフレキシブルバンド29は前記収納空間30内に収納されるが、その収納形態は、厚さ方向の両面が収納空間30の径小側内面壁30a(径小側円環状凸部31の円筒状外周面)および径大側内面壁30b(径大側円環状凸部32の円筒状内周面)に対向するように、径小側内面壁30aに弛んだ状態でほぼ一周分だけ巻き付けるようにして収納空間30内に配置するというものである。
【0029】
このフレキシブルバンド29の収納空間30への収納時に、両端部の取り付け部29a,29bの近くの部分を溝34に差し込むことにより、取り付け部29a,29bが円形穴33内に収容されるようにしている。そして、取り付け部29a,29bにはそれぞれ段付きねじ35が通され、段付けねじ35のねじ部35aを径小側円環状凸部31および径大側円環状凸部32の円形穴33の底部に形成されたねじ穴36に螺着することにより、取り付け部29a,29bをそれぞれ径小側円環状凸部31および径大側円環状凸部32に連結している。以上により、フレキシブルバンド29が収納空間30の径小側内面壁30aと径大側内面壁30bの間に掛け渡された状態となる。
【0030】
ここで、フレキシブルバンド29は、プラスチック、例えばポリイミド製の厚さが例えば18μm程度の長い薄板状のもので、厚さ方向には撓むが、幅方向にはほとんど撓まない。このため、手首アーム7がフランジ8を上向きとする姿勢をとり、収納空間30が下向きに開放する状態になっても、フレキシブルバンド29が自重で収納空間30から垂れ下がるようになる事態は生じない。
【0031】
一方、内輪13に取り付けられて当該内輪13に一体化された継ぎ手軸18には、図3に示すように腕板39がねじ40によって取り付けられている。この腕板39は継ぎ手軸18から径方向外側に突出しており、先端部は収納空間30内に臨んでいる。そして、この腕板39の先端部には掛合部材としての掛合ピン41が取り付けられており、この掛合ピン41先端部が収納空間30内に挿入されている。
【0032】
このとき、掛合ピン41は、図5(a)に示すように、収納空間30の径小側内面壁30aと径大側内面壁30bとの間の径方向中央(線Dで示す)よりも径大側内面壁30bに偏って位置されている。この掛合ピン41は、内輪13(フランジ8)の回転に伴って収納空間30内のフレキシブルバンド29を引っ掛け、径小側円環状凸部31の外周面、換言すれば収納空間30の径小側内面壁30aに強く巻き付けるように作用する。そして、フレキシブルバンド29は、径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切る(弛みがなくなって緊張する)と、掛合ピン41を引き止めてそれ以上移動しないように停止させる。これにより、フランジ8が第1の規制位置或いは第2の規制位置で強制的に停止される。
【0033】
以下にフレキシブルバンド29によるフランジ8の強制停止過程を図4により説明する。今、フランジ8が一方の規制位置(時計回り方向(一方向)への回転動作の限界位置である第1の規制位置)にあるとする。このとき、フレキシブルバンド29は、図4(a)に示すように径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切った状態にあり、これにより掛合ピン41を引き止めてそれ以上時計回り方向に回転しないようにしている。また、掛合ピン41は、フレキシブルバンド29の径大側内面壁30bから収納空間30への引き出し箇所を時計回り方向に超えた位置にある。そして、フレキシブルバンド29の掛合ピン41に引っ掛けられた途中部分は、掛合ピン41に対し、幅方向の全体で180度以下の角度で包むように巻き付いてほぼU字状に折り返されたようになっている。
【0034】
第1の規制位置からフランジ8が反時計回り方向に回転すると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29のU字状に折り返された部分(U字状部分29c)の内側から抜け出し、これに伴ってフレキシブルバンド29は弛む。U字状部分29cも弛んで膨らみがやや大きくなるが、U字の形状はそのまま残される。その後、掛合ピン41は径小側内面壁30aをほぼ1周する間、フレキシブルバンド29の外側を移動してゆくが、この間にフレキシブルバンド29が弛んで膨らんだりすると、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接することがある。すると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29を径小側内面壁30aの側に押すように作用し、これに伴いフレキシブルバンド29は径小側内面壁30aの側に撓んで掛合ピン41の移動を妨げることのないようにする。
【0035】
フランジ8の反時計回り方向の回転に伴って掛合ピン41がほぼ1回転すると、図4(b)に示すように、掛合ピン41がフレキシブルバンド29のU字状部分29cに遭遇し、これを超えるようになる。このとき、掛合ピン41は、収納空間30の径大側内面壁30bに偏って位置しているので、当該U字状部分29cに対して図5(a−1)に示すように、U字状部分29cのうち径大側内面壁30bに近い部分から接触してゆくようになるため、U字状部分29cを径小側内面壁30a側に押すようになって、当該U字状部分29cを図5(a−2)に示すように伸ばしてゆくようになる。
【0036】
その後、掛合ピン41は、図4(c)に示すように、フレキシブルバンド29と径小側内面壁30aとの間に入り込み、径小側内面壁30aをほぼ1周する。この間、掛合ピン41はフレキシブルバンド29の内側を移動してゆくが、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接触したりすると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29を径大側内面壁30bの側に押すように作用し、これに伴いフレキシブルバンド29は径大側内面壁30bの側に撓んで掛合ピン41の移動を妨げることのないようにする。
【0037】
そして、掛合ピン41が第1の規制位置からほぼ2回転すると、フレキシブルバンド29が径小側内面壁30aから収納空間30へ引き出されている箇所を反時計回り方向に通過してフレキシブルバンド29を引っ掛けるようになる。そして、掛合ピン41は、図4(d)に示すように、フレキシブルバンド29を径小側内面壁30aに強く巻き付けるため、フレキシブルバンド29は伸び切って掛合ピン41をそれ以上反時計回り方向に移動しないように引き止める。これにより、フランジ8が他方の規制位置(反時計回り方向(他方向)への回転限界位置である第2の規制位置)で強制停止される。
【0038】
フランジ8が第2の規制位置から時計回り方向に回転して第1の規制位置に至る場合も、上記したと同様にして第1の規制位置においてフレキシブルバンド29が径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切った状態になるので、フランジ8が第1の規制位置で強制停止される。この第2の規制位置から第1の規制位置に向かって掛合ピン41が時計回り方向に回転してゆく際に、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接触した場合、上述したと同様にしてフレキシブルバンド29は径大側内面壁30b或いは径小側内面壁30aの方へ撓んで掛合ピン41の移動を妨げないようにする。
【0039】
このように、本実施形態の回転規制装置26は、フレキシブルバンド29と掛合ピン41を主たる部材とし、それらフレキシブルバンド29と掛合ピン41の収納スペースとしては、掛合ピン41がフレキシブルバンド29の途中を引っ掛けて円運動できる程度の狭いスペース、即ち、蓋部材21に形成された幅狭の環状の収納空間30で済む。その上、蓋部材21は防塵のために本来的に設けられるものであるから、部品点数の増加を招来しない。また、掛合ピン41を継ぎ手軸18に連結するための腕板39も、外輪14と蓋部材21との間に本来的に存在する隙間を利用して収納できるので、当該隙間の増加を招来せず、また、腕板39の厚さによっては当該隙間の幅の多少の拡大が必要であってもその拡大は最小限のものに抑制できる。このように、本実施形態の回転規制装置28は、狭いスペースに配設でき、手首アーム7、フランジ8の肥大化を招来せず、スリム化の要請に対応できるものである。
【0040】
しかも、本実施形態の回転規制装置28では、フレキシブルバンド29が幅方向全体で掛合ピン41を包むようにして引き止めるので、掛合ピン41ひいてはフランジ8の回転を確実に停止させることができる。
その上、本実施形態では、フレキシブルバンド29を径小側内面壁30aにほぼ1周分巻き付けるように配置したので、掛合ピン41の回転動作範囲を720度を超える角度とすることができる。この場合、回転する掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接すると、当該フレキシブルバンド29は撓んで掛合ピン41の進路を妨げることのないようにする。このため、収納空間30を掛合ピン41が回転に最小限必要な程度の大きさに定めても、フレキシブルバンド29の厚さが薄いことと相俟って、掛合ピン41の移動を妨げることなくフレキシブルバンド29が自在に撓むことができる。従って、収納空間30が掛合ピン41の移動を許容する程度の大きさで済み、ロボットの肥大化を防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、掛合ピン41が収納空間30の径大側内面壁30bに偏って位置されているので、フレキシブルバンド29にU字状部分29cが生じていた場合に、当該U字状部分29cを掛合ピン41によって伸ばすことができる。仮に、掛合ピン41が図5(b−1)および(b−2)のように収納空間30の幅方向中央に位置されていたとすると、フレキシブルバンド29のU字状部分29cに掛合ピン41が当たった場合、図5(b−1)に示すように、掛合ピン41がU字状部分29cに対してやや径小側内面壁30a側に当たり、そのためにU字状部分29cが伸ばされずに図5(b−2)に示すように径大側内面壁30bとの間に挟まれて折れ癖を付けてしまい勝ちとなる。しかし、本実施形態では、そのような不具合を生ぜず、フレキシブルバンド29に鋭角状の折れ癖を付けてしまうような事態の発生を回避できるようになる。このような鋭角状の折れ癖は、可撓性条部材の耐久性を低くする要因になることから、それができ難いということは、フレキシブルバンド29を当初設定されていた耐久力通りに利用できる、つまり比較的長持ちさせることができるようになる。
【0042】
図7〜図11は本発明の第2〜第6の各実施形態を示す。そのうち、図7〜図9はフランジ8の回転動作範囲を変更した実施形態であり、図10および図11は収納空間30の形成構成を変更した実施形態である。以下、前述の第1実施例と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0043】
まず、図7の第2の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aにほぼ2周するように渦巻状に巻き付けるようにしたものである。これによれば、フランジ8の回転動作許容範囲を1080度(3回転)を超える角度に規制できる。この場合、フレキシブルバンド29の径小側内面壁30aへの巻き付け回数が2回となってフレキシブルバンド29の巻き重ね厚さが厚くなるが、フレキシブルバンド9が薄板状であるので、それ程厚くならない。このため、収納空間30の径方向の幅を広くしなくとも、仮に広くする必要があってもその程度はごく小さく、ロボットの肥大化を防止できる。
【0044】
図8の第3の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aをほぼ半周するように配設したものである。これによれば、フランジ8の回転動作範囲をほぼ540度の角度に規制できる。
【0045】
図9の第4の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aと径大側内面壁30bとの間に弛みを持ってU字状に掛け渡したものである。これによれば、フランジ8の回転動作許容範囲を360度をやや超える程度の角度に規制できる。
【0046】
図10の第5の実施形態は、第2の外輪部14bの先端部と手首アーム7のフレーム9との間に存する空間を収納空間30とし、当該収納空間30の径小側内面壁30aを構成する第2の外輪部14bの外周面と径大側内面壁30bを構成するフレーム9の内周面との間にフレキシブルバンド29を掛け渡すと共に、掛合ピン41を収納空間30内に挿入配置させたものである。ここで、第2の外輪部14bは、外殻であるフレーム9に一体化された部材であり、従って、本実施形態は、外殻と当該外殻に一体化された部材との間に収納空間を形成した例である。
【0047】
図11の第6の実施形態は、蓋部材21のフレーム9との嵌合部21bを第2の外輪部14bの先端部と対向するように若干延長し、嵌合部21bを第2の外輪部14bの先端部との間に存する空間を収納空間30とし、当該収納空間30の径小側内面壁30aを構成する第2の外輪部14bの外周面と径大側内面壁30bを構成する嵌合部21bの内周面との間にフレキシブルバンド29を掛け渡すと共に、掛合ピン41を収納空間30内に挿入配置させたものである。ここで、第2の外輪部14bおよび蓋部材21は、共に外殻であるフレーム9に一体化された部材で、従って、本実施形態は、外殻に一体化された2つの部材の間に収納空間を形成した例である。
【0048】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
フレーム9、つまり外殻に凹部を形成し、これを収納空間とするようにしても良い。
回転規制装置は、フランジ8に限らず、他の回転リンクに設けても良い。
収納空間30の形成位置によっては、掛合ピン41は継ぎ手軸18に直接取り付けるようにしても良い。
掛合ピン41は収納空間30の位置によっては、内輪13やフランジ8に取り付けるようにしても良い。
本発明は水平多関節型ロボットに適用しても良い。
【符号の説明】
【0049】
図面中、2はベース(リンク)、3はショルダ(リンク)、4は下アーム(リンク)、5は第1の上アーム(リンク)、6は第2の上アーム(リンク)、7は手首アーム(リンク、一のリンク)、8はフランジ(リンク、他のリンク、回転リンク)、9はフレーム(外殻)、12はクロスローラベアリング、13は内輪(回転軸)、14は外輪、18は継ぎ手軸(回転軸に一体化された部材)、21は蓋部材(外殻に一体化された部材)、28は回転規制装置、29はフレキシブルバンド(可撓性条部材)、30は収納空間、41は掛合ピン(掛合部材)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転リンクの許容された範囲を超える回転を強制的に停止させるロボットの回転規制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、多関節型ロボットでは、回転関節によって連結された複数のアーム(リンク)を備えており、各アームは、回転関節を中心にして回転(旋回)するようになっている。各アームには予め可動範囲が設定されており、通常は、駆動源であるモータの回転数制御によって可動範囲内での回転動作に規制されるのであるが、何らかの原因、例えば作業者がアームを強制的に可動範囲を超えて回転させようとしたような場合、その回転を機械的に阻止するために回転規制装置が設けられている。
【0003】
特許文献1には、ロボットのものではないが、回転軸の回転動作範囲を360度を超えた角度に規制するために、回転軸の近傍に正逆回転可能に棒状部材を設け、回転軸に当該回転軸が基準位置から時計方向へ所定角度回転したとき棒状部材を反時計方向に回転させると共に、回転軸が基準位置から反時計方向へ所定角度回転したとき棒状部材を時計方向に回転させるピンを設け、棒状部材が基準位置から反時計方向へ所定角度以上回転するのを阻止するストッパピンと、棒状部材が基準位置から時計方向へ所定角度以上回転するのを阻止するストッパピンと、棒状部材を基準位置に復帰させる巻きばねを設けてなる回転規制装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−287621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のロボットは自己の内蔵する各種の部品などにより不必要に肥大化することを避ける傾向にあり、スリム化、コンパクト化が図られている。このため、ロボットの内部空間に余裕がない。
【0006】
一方、別の要請としてアームの回転動作範囲の拡大も求められている。現在の回転規制装置は、回転軸に設けたピンが回転軸を支持するハウジング側に固定された突起に当たることによってアームの回転動作範囲を規制する構造が採用されているため、アームの回転動作範囲は360度未満の角度に制約されてしまう。
【0007】
前述の特許文献1の回転規制装置をロボットの回転規制装置に採用すれば、アームの回転動作範囲を360度超えの角度に広げることができる。しかしながら、特許文献1の回転規制装置では、回転軸の近傍に棒状部材、2個のストッパピンおよび巻きばねを設けねばならないので、広いスペースを必要とするが、前述のようにロボットの内部空間には余裕がないことから、採用は難しい。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、狭いスペースに配設することができ、しかも、回転リンクの回転動作範囲を360度を超える角度に規制することが可能なロボットの回転規制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、可撓性条部材が回転する掛合部材に引っ掛けられてぴんと張った状態になる、つまり伸び切ると、可撓性条部材が掛合部材を引き止めてその回転を停止させる。これにより、回転リンクの回転が停止される。当初、可撓性条部材は弛んだ状態で掛け渡されているので、掛合部材(回転リンク)が一方向の回転動作の限界位置で停止されたときには、可撓性条部材は掛合部材に引っ掛けられ、そして一方向に撓んで伸び切った状態になっている。この一方向回転の限界位置から掛合部材が他方向に回転する、可撓性条部材は弛む。掛合部材が1回転して上記一方向回転の限界位置に来ても、可撓性条部材は未だ弛んだ状態を保っているので、当該一方向回転の限界位置を超えて更に回転し、他方向の回転の限界位置まで来ると、それまでに掛合部材に引っ掛けられた可撓性条部材が、前記一方向回転の限界位置における撓み方向とは逆方向に撓み、そしてぴんと張るようになるので、掛合部材が他方向回転の限界位置で止められる。従って、可撓性条部材を収納空間の径小側内面壁と径小側内面壁との間に弛んだ状態に掛け渡す構成とすることにより、可撓性条部材が一方向に回転する掛合部材を停止させる位置と他方向に回転する掛合部材を停止させる位置との間を360度(1回転)を超える角度とすることができるので、掛合部材ひいては回転リンクの回転動作範囲を360度を超えた角度にすることが可能になる。
【0010】
また、可撓性条部材は長い薄板状であり、厚さ方向両面を収納空間の径小側内面壁と径大側内面壁とに対向させた状態で配置されている。このため、可撓性条部材がその幅方向の全体で掛合部材のほぼ半周を包囲するようにして両側から引っ張って停止させるので、掛合部材を確実に停止させることができる。
【0011】
しかも、可撓性条部材は薄板状であるから、掛合部材の回転を許容できる程度の大きさの収納空間内で可撓性条部材の可撓性を十分に発揮させることができる。このため、収納空間をそれ程大きなものとする必要がなくなる。ここで、掛合部材を許容する収納空間は、本来、回転するピンが固定された突起に当接することによって回転リンクの回転動作許容範囲を360度未満の角度に規制する従来装置においても必要な空間であって、本発明において新たに追加するような性質のものではないから、現状の余剰スペースの余りないロボットにも利用可能である。
【0012】
請求項2の発明によれば、回転リンクの回転動作範囲を720度(2回転)以上にすることができる。この場合、可撓性条部材は径小側内面壁に1周近く或いはそれ以上巻かれるが、可撓性条部材は、掛合部材の回転時に当該掛合部材に接触されると、収納空間の径大側内面壁の方向に押されて撓んだり、径小側内面壁の方向に押されて撓んだりして掛合部材の回転を妨げないようにするので、可撓性条部材を径小側内面壁に巻き付けるように配置しても掛合部材の進路を十分に確保できる。これは、収納空間は掛合部材が移動できる程度のもので良く、上記した回転動作範囲が360度未満の従来装置においてピンの回転に必要な空間と同程度のもので良いことを意味し、ロボットの肥大化を回避できる。
【0013】
また、回転動作範囲を大きくするために、可撓性条部材を径小側内面壁に何回も巻き重ねることを必要とする場合には、収納空間の幅を可撓性条部材の巻き付け回数に応じた程度の寸法分だけ拡大しなければならないが、可撓性条部材が薄板状であることを考慮すれば、その拡大程度は小さい。また、回転関節には電源線や信号線などが通されていて回転リンクの回転により捻じられることを考慮すれば、回転リンクの回転動作範囲をむやみに多くすることはなく、せいぜい数回転の範囲内であるから、このことからも、収納空間の拡大程度は小さい。
【0014】
よって、請求項2の発明によれば、回転リンクの回転動作範囲を2回転以上に設定可能で、2回転以上とした場合でも、可撓性条部材のために収納空間を拡大しなくとも、或は拡大したとしてもそれ程の拡大を必要とせず、ロボットの肥大化を極力防止できる。
【0015】
請求項3の発明によれば、掛合部材が可撓性条部材に引っ張られて回転限界位置で停止した場合、可撓性条部材の掛合部材に引っ掛けられた途中部分がほぼU字状に曲げられる。掛合部材が一方の回転限界位置から他方の回転限界位置に向かって回転する場合、上記のU字状に曲げられた部分の湾曲が残っていると、掛合部材が途中でU字状部分に遭遇し、これを超えようとする。このとき、掛合部材が径大側内面壁に偏って位置しているので、当該U字状部分に対し、径大側内面壁に近い部分から接してゆく。その結果、可撓性条部材が掛合部材によりU字状の曲がりを伸ばされるように押される。従って、掛合部材がU字状部分を収納空間の径大側内面壁との間に挟んで鋭角状の折れ癖を作ってしまうという不具合を防止できる。このような鋭角状の折れ癖は、可撓性条部材の耐久性を低くする要因になることから、それができ難いということは、可撓性条部材を当初設定されていた耐久力通りに利用できる、つまり比較的長持ちさせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す要部の縦断面図
【図2】回転規制装置のフレキシブルバンドの取り付け構成を示す斜視図
【図3】回転規制装置の掛合ピンの取り付け構成を示す斜視図
【図4】フレキシブルバンドによる回転規制の状態を示すもので、(a)は一方の規制位置での規制状態を示す正面図、(b)および(c)は規制位置間の途中の状態を示す正面図、(d)は他方の規制位置での規制状態を示す正面図
【図5】本発明の効果の一つを説明するための図で、(a−1)および(a−2)は本発明におけるフレキシブルバンドのU字状部分への掛合部材の接近状態を示す正面図、(b−1)および(b−2)は掛合ピンの位置が異なる場合の(a−1)および(a−2)相当図
【図6】ロボットの斜視図
【図7】本発明の第2の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図8】本発明の第3の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図9】本発明の第4の実施形態を示す回転規制装置の概略的な正面図
【図10】本発明の第5の実施形態を示す要部の断面図
【図11】本発明の第6の実施形態を示す要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6を参照しながら説明する。図6には、産業用ロボット1が示されている。この産業用ロボット1は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットからなるもので、ベース2と、このベース2に回転関節によって水平方向に回転可能に連結されたショルダ3と、このショルダ3に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された下アーム4と、この下アーム4に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された第1の上アーム5と、この第1の上アーム5の先端部に回転関節によって捻り回転可能に連結された第2の上アーム6と、この第2の上アーム6に回転関節によって上下方向に回転可能に連結された手首アーム7と、この手首アーム7に回転関節によって捻り回転可能に連結されたフランジ8とから構成されている。
【0018】
上記ベース2、ショルダ3、下アーム4、第1の上アーム5、第2の上アーム6、手首アーム7、フランジ8は、特許請求の範囲におけるリンクに相当する。また、回転関節によって連結された2つのリンクの関係において、ベース2側のリンクは特許請求の範囲における一のリンクに相当し、フランジ8側のリンクは特許請求の範囲における他のリンクに相当し且つ一のリンクに対して回転する回転リンクに相当する。つまり、ベース2とショルダ3との関係において、ベース2は一のリンクに相当し、ショルダ3は他のリンクに相当し、且つベース2に対して回転する回転リンクに相当する。以下、同様に、ショルダ3と下アーム4とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、下アーム4と第1の上アーム5とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、第1の上アーム5と第2の上アーム6とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、第2の上アーム6と手首アーム7とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当し、手首アーム7とフランジ8とにおいて、前者は一のリンク、後者は他のリンクで且つ回転リンクに相当するものである。
【0019】
図1には、フランジ8を手首アーム7に回転可能に連結する回転関節の構成が示されている。なお、他の回転関節も図1の回転関節と同様の構成となっている。図1に示すように、手首アーム7の主体を構成するフレーム9は筒形をなしている。このフレーム9には、内部に後述する波動歯車減速装置(減速装置)10およびサーボモータ(駆動モータ)11などを組み込むための開口部が形成されており、この開口部はカバーによって塞がれている。そして、これらフレーム9とカバーとによって手首アーム7の外殻が構成されている。
【0020】
手首アーム7のフレーム9の先端部分の内側には、クロスローラベアリング12が配設されている。このクロスローラベアリング12は、内輪13と、外輪14と、この内輪13および外輪14間に回転自在に保持された複数のころ15とから構成されている。外輪14は、前記ころ15の組み込みのために軸方向に第1の外輪部14aと第2の外輪部14bとに分割されており、これら第1の外輪部14aと第2の外輪部14bとはねじ16により相互に連結されている。そして、この外輪14はねじ17により手首アーム7のフレーム9に固定されている。
【0021】
このようなクロスローラベアリング12の内輪13は、回転関節の回転軸として機能し、外輪14が手首アーム7のフレーム9に固定されることにより、当該手首アーム7に対して回転可能となっている。そして、この内輪13に、継ぎ手軸18が宛がわれ、更に継ぎ手軸18にフランジ8のフレーム19が宛がわれて、これら継ぎ手軸18およびフレーム19がねじ20によって内輪13に固定されている。これにより、フランジ8が回転関節によって手首アーム7に回転可能に連結された状態となる。
【0022】
手首アーム7のフレーム9の先端部には、当該先端の開口部9aを閉鎖してフレーム9内への塵埃などの侵入を防止するための蓋部材21が取り付けられている。このフレーム9に取り付けられて当該フレーム9に一体化された蓋部材21には、継ぎ手軸18を通す円形孔21aが形成され、円形孔21aの内周部に継ぎ手軸18との間を封止するシール22が装着されている。なお、蓋部材21はフレーム(外殻)9に一体化された部材に相当する。
【0023】
前記サーボモータ11は内輪13ひいてはフランジ8を回転駆動するもので、このサーボモータ11の回転は前記波動歯車減速装置10により減速されて内輪13に伝達される。波動歯車減速装置10はハーモニックドライブ(登録商標)と呼ばれる周知構成のもので、主要構成品として、内歯23aを有する環状のサーキュラスプライン23と、外歯24aを有する弾性変形可能な有底円筒状のフレクスプライン24と、弾性変形可能なウェーブジェネレータ25と、楕円状カム26とを有して構成されている。そして、フレクスプライン24は、サーキュラスプライン23の内側に配設されて、外歯24aを内歯23aに噛合させている。なお、外歯24aの数は内歯23aの数より例えば2つ少ない。
【0024】
ウェーブジェネレータ25は、フレクスプライン24の内側に嵌合されている。このウェーブジェネレータ25の内側に弾性変形可能に構成されたボールベアリング27が装着され、このボールベアリング27の内側に前記楕円状カム26が嵌着されている。楕円状カム26は、その中心部にボス部26aを有している。
【0025】
以上の波動歯車減速装置10において、楕円状カム26が入力部で、フレクスプライン24が出力部となっており、楕円状カム26のボス部26aにサーボモータ11の回転軸11aが連結され、フレクスプライン24がクロスローラベアリング12の内輪13に連結されている。そして、サーボモータ11が回転すると、その回転が波動歯車減速装置10により減速されて内輪13に伝達され、フランジ8が回転する。
【0026】
フランジ8は、手首アーム7に対し、基準位置から時計回り方向にα度回転した第1の規制位置と、基準位置から反時計回り方向にα度回転した第2の規制位置との間で回転可能になっている。本実施形態では、上記αは360度(1回転)を若干超えた所望角度に定められている。そして、フランジ8は、通常は第1の規制位置と第2の規制位置との間の所定の回転動作範囲(720度(2回転)を超える)において回転されるが、何らかの原因で第1の規制位置或いは第2の規制位置を超えて回転しようとすると、その回転は回転規制装置28によって強制的に停止されるようになっている。
【0027】
この回転規制装置28は図2〜図4に示されている。回転規制装置28は、可撓性条部材としてのフレキシブルバンド29を主体とするもので、このフレキシブルバンド29は、前記蓋部材21に形成された収納空間30内に収容されている。
即ち、蓋部材21の内表面(フレーム9内に臨む面)には、内輪13の回転中心軸線Cから離れた位置に当該回転中心軸線Cを中心に一周するようにして円環状の凹部が形成され、この凹部が前記収納空間30とされている。収納空間30の径小側周縁部および径大側周縁部は、同心円状の径小側円環状凸部31,径大側円環状凸部32となっている。これら両凸部31,32にはそれぞれ円形穴33が形成され、各円形穴33は溝34によって収納空間30に連通されている。
【0028】
フレキシブルバンド29は、所定の長さを有し、その両先端部は円形状に曲げられて接着されることにより小さなほぼ円筒の取り付け部29a,29bとして形成されている。このフレキシブルバンド29は前記収納空間30内に収納されるが、その収納形態は、厚さ方向の両面が収納空間30の径小側内面壁30a(径小側円環状凸部31の円筒状外周面)および径大側内面壁30b(径大側円環状凸部32の円筒状内周面)に対向するように、径小側内面壁30aに弛んだ状態でほぼ一周分だけ巻き付けるようにして収納空間30内に配置するというものである。
【0029】
このフレキシブルバンド29の収納空間30への収納時に、両端部の取り付け部29a,29bの近くの部分を溝34に差し込むことにより、取り付け部29a,29bが円形穴33内に収容されるようにしている。そして、取り付け部29a,29bにはそれぞれ段付きねじ35が通され、段付けねじ35のねじ部35aを径小側円環状凸部31および径大側円環状凸部32の円形穴33の底部に形成されたねじ穴36に螺着することにより、取り付け部29a,29bをそれぞれ径小側円環状凸部31および径大側円環状凸部32に連結している。以上により、フレキシブルバンド29が収納空間30の径小側内面壁30aと径大側内面壁30bの間に掛け渡された状態となる。
【0030】
ここで、フレキシブルバンド29は、プラスチック、例えばポリイミド製の厚さが例えば18μm程度の長い薄板状のもので、厚さ方向には撓むが、幅方向にはほとんど撓まない。このため、手首アーム7がフランジ8を上向きとする姿勢をとり、収納空間30が下向きに開放する状態になっても、フレキシブルバンド29が自重で収納空間30から垂れ下がるようになる事態は生じない。
【0031】
一方、内輪13に取り付けられて当該内輪13に一体化された継ぎ手軸18には、図3に示すように腕板39がねじ40によって取り付けられている。この腕板39は継ぎ手軸18から径方向外側に突出しており、先端部は収納空間30内に臨んでいる。そして、この腕板39の先端部には掛合部材としての掛合ピン41が取り付けられており、この掛合ピン41先端部が収納空間30内に挿入されている。
【0032】
このとき、掛合ピン41は、図5(a)に示すように、収納空間30の径小側内面壁30aと径大側内面壁30bとの間の径方向中央(線Dで示す)よりも径大側内面壁30bに偏って位置されている。この掛合ピン41は、内輪13(フランジ8)の回転に伴って収納空間30内のフレキシブルバンド29を引っ掛け、径小側円環状凸部31の外周面、換言すれば収納空間30の径小側内面壁30aに強く巻き付けるように作用する。そして、フレキシブルバンド29は、径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切る(弛みがなくなって緊張する)と、掛合ピン41を引き止めてそれ以上移動しないように停止させる。これにより、フランジ8が第1の規制位置或いは第2の規制位置で強制的に停止される。
【0033】
以下にフレキシブルバンド29によるフランジ8の強制停止過程を図4により説明する。今、フランジ8が一方の規制位置(時計回り方向(一方向)への回転動作の限界位置である第1の規制位置)にあるとする。このとき、フレキシブルバンド29は、図4(a)に示すように径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切った状態にあり、これにより掛合ピン41を引き止めてそれ以上時計回り方向に回転しないようにしている。また、掛合ピン41は、フレキシブルバンド29の径大側内面壁30bから収納空間30への引き出し箇所を時計回り方向に超えた位置にある。そして、フレキシブルバンド29の掛合ピン41に引っ掛けられた途中部分は、掛合ピン41に対し、幅方向の全体で180度以下の角度で包むように巻き付いてほぼU字状に折り返されたようになっている。
【0034】
第1の規制位置からフランジ8が反時計回り方向に回転すると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29のU字状に折り返された部分(U字状部分29c)の内側から抜け出し、これに伴ってフレキシブルバンド29は弛む。U字状部分29cも弛んで膨らみがやや大きくなるが、U字の形状はそのまま残される。その後、掛合ピン41は径小側内面壁30aをほぼ1周する間、フレキシブルバンド29の外側を移動してゆくが、この間にフレキシブルバンド29が弛んで膨らんだりすると、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接することがある。すると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29を径小側内面壁30aの側に押すように作用し、これに伴いフレキシブルバンド29は径小側内面壁30aの側に撓んで掛合ピン41の移動を妨げることのないようにする。
【0035】
フランジ8の反時計回り方向の回転に伴って掛合ピン41がほぼ1回転すると、図4(b)に示すように、掛合ピン41がフレキシブルバンド29のU字状部分29cに遭遇し、これを超えるようになる。このとき、掛合ピン41は、収納空間30の径大側内面壁30bに偏って位置しているので、当該U字状部分29cに対して図5(a−1)に示すように、U字状部分29cのうち径大側内面壁30bに近い部分から接触してゆくようになるため、U字状部分29cを径小側内面壁30a側に押すようになって、当該U字状部分29cを図5(a−2)に示すように伸ばしてゆくようになる。
【0036】
その後、掛合ピン41は、図4(c)に示すように、フレキシブルバンド29と径小側内面壁30aとの間に入り込み、径小側内面壁30aをほぼ1周する。この間、掛合ピン41はフレキシブルバンド29の内側を移動してゆくが、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接触したりすると、掛合ピン41はフレキシブルバンド29を径大側内面壁30bの側に押すように作用し、これに伴いフレキシブルバンド29は径大側内面壁30bの側に撓んで掛合ピン41の移動を妨げることのないようにする。
【0037】
そして、掛合ピン41が第1の規制位置からほぼ2回転すると、フレキシブルバンド29が径小側内面壁30aから収納空間30へ引き出されている箇所を反時計回り方向に通過してフレキシブルバンド29を引っ掛けるようになる。そして、掛合ピン41は、図4(d)に示すように、フレキシブルバンド29を径小側内面壁30aに強く巻き付けるため、フレキシブルバンド29は伸び切って掛合ピン41をそれ以上反時計回り方向に移動しないように引き止める。これにより、フランジ8が他方の規制位置(反時計回り方向(他方向)への回転限界位置である第2の規制位置)で強制停止される。
【0038】
フランジ8が第2の規制位置から時計回り方向に回転して第1の規制位置に至る場合も、上記したと同様にして第1の規制位置においてフレキシブルバンド29が径小側内面壁30aに強く巻き付けられて伸び切った状態になるので、フランジ8が第1の規制位置で強制停止される。この第2の規制位置から第1の規制位置に向かって掛合ピン41が時計回り方向に回転してゆく際に、掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接触した場合、上述したと同様にしてフレキシブルバンド29は径大側内面壁30b或いは径小側内面壁30aの方へ撓んで掛合ピン41の移動を妨げないようにする。
【0039】
このように、本実施形態の回転規制装置26は、フレキシブルバンド29と掛合ピン41を主たる部材とし、それらフレキシブルバンド29と掛合ピン41の収納スペースとしては、掛合ピン41がフレキシブルバンド29の途中を引っ掛けて円運動できる程度の狭いスペース、即ち、蓋部材21に形成された幅狭の環状の収納空間30で済む。その上、蓋部材21は防塵のために本来的に設けられるものであるから、部品点数の増加を招来しない。また、掛合ピン41を継ぎ手軸18に連結するための腕板39も、外輪14と蓋部材21との間に本来的に存在する隙間を利用して収納できるので、当該隙間の増加を招来せず、また、腕板39の厚さによっては当該隙間の幅の多少の拡大が必要であってもその拡大は最小限のものに抑制できる。このように、本実施形態の回転規制装置28は、狭いスペースに配設でき、手首アーム7、フランジ8の肥大化を招来せず、スリム化の要請に対応できるものである。
【0040】
しかも、本実施形態の回転規制装置28では、フレキシブルバンド29が幅方向全体で掛合ピン41を包むようにして引き止めるので、掛合ピン41ひいてはフランジ8の回転を確実に停止させることができる。
その上、本実施形態では、フレキシブルバンド29を径小側内面壁30aにほぼ1周分巻き付けるように配置したので、掛合ピン41の回転動作範囲を720度を超える角度とすることができる。この場合、回転する掛合ピン41がフレキシブルバンド29に接すると、当該フレキシブルバンド29は撓んで掛合ピン41の進路を妨げることのないようにする。このため、収納空間30を掛合ピン41が回転に最小限必要な程度の大きさに定めても、フレキシブルバンド29の厚さが薄いことと相俟って、掛合ピン41の移動を妨げることなくフレキシブルバンド29が自在に撓むことができる。従って、収納空間30が掛合ピン41の移動を許容する程度の大きさで済み、ロボットの肥大化を防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、掛合ピン41が収納空間30の径大側内面壁30bに偏って位置されているので、フレキシブルバンド29にU字状部分29cが生じていた場合に、当該U字状部分29cを掛合ピン41によって伸ばすことができる。仮に、掛合ピン41が図5(b−1)および(b−2)のように収納空間30の幅方向中央に位置されていたとすると、フレキシブルバンド29のU字状部分29cに掛合ピン41が当たった場合、図5(b−1)に示すように、掛合ピン41がU字状部分29cに対してやや径小側内面壁30a側に当たり、そのためにU字状部分29cが伸ばされずに図5(b−2)に示すように径大側内面壁30bとの間に挟まれて折れ癖を付けてしまい勝ちとなる。しかし、本実施形態では、そのような不具合を生ぜず、フレキシブルバンド29に鋭角状の折れ癖を付けてしまうような事態の発生を回避できるようになる。このような鋭角状の折れ癖は、可撓性条部材の耐久性を低くする要因になることから、それができ難いということは、フレキシブルバンド29を当初設定されていた耐久力通りに利用できる、つまり比較的長持ちさせることができるようになる。
【0042】
図7〜図11は本発明の第2〜第6の各実施形態を示す。そのうち、図7〜図9はフランジ8の回転動作範囲を変更した実施形態であり、図10および図11は収納空間30の形成構成を変更した実施形態である。以下、前述の第1実施例と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なる部分のみを説明する。
【0043】
まず、図7の第2の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aにほぼ2周するように渦巻状に巻き付けるようにしたものである。これによれば、フランジ8の回転動作許容範囲を1080度(3回転)を超える角度に規制できる。この場合、フレキシブルバンド29の径小側内面壁30aへの巻き付け回数が2回となってフレキシブルバンド29の巻き重ね厚さが厚くなるが、フレキシブルバンド9が薄板状であるので、それ程厚くならない。このため、収納空間30の径方向の幅を広くしなくとも、仮に広くする必要があってもその程度はごく小さく、ロボットの肥大化を防止できる。
【0044】
図8の第3の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aをほぼ半周するように配設したものである。これによれば、フランジ8の回転動作範囲をほぼ540度の角度に規制できる。
【0045】
図9の第4の実施形態は、フレキシブルバンド29を、径小側内面壁30aと径大側内面壁30bとの間に弛みを持ってU字状に掛け渡したものである。これによれば、フランジ8の回転動作許容範囲を360度をやや超える程度の角度に規制できる。
【0046】
図10の第5の実施形態は、第2の外輪部14bの先端部と手首アーム7のフレーム9との間に存する空間を収納空間30とし、当該収納空間30の径小側内面壁30aを構成する第2の外輪部14bの外周面と径大側内面壁30bを構成するフレーム9の内周面との間にフレキシブルバンド29を掛け渡すと共に、掛合ピン41を収納空間30内に挿入配置させたものである。ここで、第2の外輪部14bは、外殻であるフレーム9に一体化された部材であり、従って、本実施形態は、外殻と当該外殻に一体化された部材との間に収納空間を形成した例である。
【0047】
図11の第6の実施形態は、蓋部材21のフレーム9との嵌合部21bを第2の外輪部14bの先端部と対向するように若干延長し、嵌合部21bを第2の外輪部14bの先端部との間に存する空間を収納空間30とし、当該収納空間30の径小側内面壁30aを構成する第2の外輪部14bの外周面と径大側内面壁30bを構成する嵌合部21bの内周面との間にフレキシブルバンド29を掛け渡すと共に、掛合ピン41を収納空間30内に挿入配置させたものである。ここで、第2の外輪部14bおよび蓋部材21は、共に外殻であるフレーム9に一体化された部材で、従って、本実施形態は、外殻に一体化された2つの部材の間に収納空間を形成した例である。
【0048】
なお、本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
フレーム9、つまり外殻に凹部を形成し、これを収納空間とするようにしても良い。
回転規制装置は、フランジ8に限らず、他の回転リンクに設けても良い。
収納空間30の形成位置によっては、掛合ピン41は継ぎ手軸18に直接取り付けるようにしても良い。
掛合ピン41は収納空間30の位置によっては、内輪13やフランジ8に取り付けるようにしても良い。
本発明は水平多関節型ロボットに適用しても良い。
【符号の説明】
【0049】
図面中、2はベース(リンク)、3はショルダ(リンク)、4は下アーム(リンク)、5は第1の上アーム(リンク)、6は第2の上アーム(リンク)、7は手首アーム(リンク、一のリンク)、8はフランジ(リンク、他のリンク、回転リンク)、9はフレーム(外殻)、12はクロスローラベアリング、13は内輪(回転軸)、14は外輪、18は継ぎ手軸(回転軸に一体化された部材)、21は蓋部材(外殻に一体化された部材)、28は回転規制装置、29はフレキシブルバンド(可撓性条部材)、30は収納空間、41は掛合ピン(掛合部材)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクを関節により連結して構成されたロボットであって、前記複数のリンクのうち、少なくとも一のリンクに他のリンクを連結する関節を回転関節として当該他のリンクを前記一のリンクに対して回転する回転リンクとしたロボットにおいて、
前記一のリンクの外殻と、
前記一のリンクの前記外殻に回転可能に支持され、前記回転リンクを取り付けた前記回転関節の回転軸と、
前記一のリンクの前記外殻の内側において前記回転軸の回転中心軸線から離れた位置に当該回転中心軸線を中心に一周するように、前記外殻または当該外殻に一体化された部材に形成され、或いは前記外殻と当該外殻に一体化された部材との間または前記外殻に一体化された2つの部材の間に形成された収納空間と、
前記回転軸または当該回転軸に一体化された部材に設けられ、前記収納空間内に挿入されて前記回転軸の回転に伴って前記収納空間内を前記回転軸の回転中心軸線を中心とする円弧上を移動する掛合部材と、
前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間に弛みを持たせて掛け渡されて前記収納空間内に収容された可撓性条部材と
を具備し、
前記可撓性条部材は、長い薄板状で、厚さ方向の両面が前記収納空間の径大側内面壁および径小側内面壁に対向するように配置され、前記回転リンクの回転に伴い前記掛合部材に引っ掛けられて伸び切ることにより前記回転リンクの回転動作範囲を規制することを特徴とするロボットの回転規制装置。
【請求項2】
前記可撓性条部材は、前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間に、前記径小側内面壁に巻き付けるように掛け渡されていることを特徴とする請求項1記載のロボットの回転規制装置。
【請求項3】
前記環状空間の径大側内面壁および径小側内面壁は前記回転軸の回転中心軸線を中心とする同心の円筒面で、
前記掛合部材は前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間の径方向中央よりも前記径大側内面壁に偏って位置することを特徴とする請求項2記載のロボットの回転規制装置。
【請求項1】
複数のリンクを関節により連結して構成されたロボットであって、前記複数のリンクのうち、少なくとも一のリンクに他のリンクを連結する関節を回転関節として当該他のリンクを前記一のリンクに対して回転する回転リンクとしたロボットにおいて、
前記一のリンクの外殻と、
前記一のリンクの前記外殻に回転可能に支持され、前記回転リンクを取り付けた前記回転関節の回転軸と、
前記一のリンクの前記外殻の内側において前記回転軸の回転中心軸線から離れた位置に当該回転中心軸線を中心に一周するように、前記外殻または当該外殻に一体化された部材に形成され、或いは前記外殻と当該外殻に一体化された部材との間または前記外殻に一体化された2つの部材の間に形成された収納空間と、
前記回転軸または当該回転軸に一体化された部材に設けられ、前記収納空間内に挿入されて前記回転軸の回転に伴って前記収納空間内を前記回転軸の回転中心軸線を中心とする円弧上を移動する掛合部材と、
前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間に弛みを持たせて掛け渡されて前記収納空間内に収容された可撓性条部材と
を具備し、
前記可撓性条部材は、長い薄板状で、厚さ方向の両面が前記収納空間の径大側内面壁および径小側内面壁に対向するように配置され、前記回転リンクの回転に伴い前記掛合部材に引っ掛けられて伸び切ることにより前記回転リンクの回転動作範囲を規制することを特徴とするロボットの回転規制装置。
【請求項2】
前記可撓性条部材は、前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間に、前記径小側内面壁に巻き付けるように掛け渡されていることを特徴とする請求項1記載のロボットの回転規制装置。
【請求項3】
前記環状空間の径大側内面壁および径小側内面壁は前記回転軸の回転中心軸線を中心とする同心の円筒面で、
前記掛合部材は前記収納空間の径大側内面壁と径小側内面壁との間の径方向中央よりも前記径大側内面壁に偏って位置することを特徴とする請求項2記載のロボットの回転規制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61579(P2012−61579A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209442(P2010−209442)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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