説明

ロボットの関節構造、ロボットフィンガー及びロボットハンド

【課題】リンク部の回転角度を大きくすることなく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができるロボットの関節構造、その関節構造を備えたロボットフィンガー、及びそのロボットフィンガーを備えたロボットハンドを提供する。
【解決手段】相対的に移動可能に連結された第1リンク部1及び第2リンク部2と、第2リンク部2を第1リンク部1に対して回転させると共に第1リンク部1の長手方向(X方向)に沿って移動させる駆動手段4と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの関節構造、ロボットフィンガー及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロボットの関節構造として、人間の指関節や腕関節の動作を元に構成されたものがある。このようなロボットの関節構造として、複数のリンク部材を互いに回転可能に連結したものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のロボットの関節構造では、各々のリンク部材をそれぞれ所定の角度回転させることで、人間の指と同様に屈曲し、物体を把持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−166181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のロボットの関節構造では、小さい物を把持するためには、各リンク部材の回転角度を大きくする必要があるという課題がある。また、把持可能な物体の大きさの範囲がリンク部材の寸法によって限定されやすく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、リンク部の回転角度を大きくすることなく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができるロボットの関節構造、その関節構造を備えたロボットフィンガー、及びそのロボットフィンガーを備えたロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のロボットの関節構造は、相対的に移動可能に連結された第1リンク部及び第2リンク部と、前記第2リンク部を前記第1リンク部に対して回転させると共に前記第1リンク部の長手方向に沿って移動させる駆動手段と、を備えることを特徴とする。また、この関節構造を適用してロボットフィンガーを構成してもよい。さらに、このロボットフィンガーを用いてロボットハンドを構成してもよい。
【0007】
このように構成することで、第2リンク部を第1リンク部に対して回転(移動)させ、第1リンク部と第2リンク部とのなす角の角度を変化させることで、連結された第1リンク部と第2リンク部とを伸長させたり屈曲させたりすることができる。さらに、第2リンク部を第1リンク部の長手方向に移動させることで、第2リンク部の回転軸との関係における第1リンク部の長手方向の実質的な長さを変化させることができる。これにより、第2リンク部の第1リンク部に対する回転角度を大きくすることなく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロボットの関節構造、その関節構造を備えたロボットフィンガー、及びそのロボットフィンガーを備えたロボットハンドによれば、リンク部の回転角度を大きくすることなく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るロボットハンドの斜視図である。
【図2】図1に示すロボットハンドが備える第1ロボットフィンガーの斜視図である。
【図3】図2のA−A’線に沿う矢視断面図である。
【図4】図2に示す第1ロボットフィンガーを屈曲させた状態を示す斜視図である。
【図5】図4に示す第1ロボットフィンガーを引き込んだ状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を用いて本実施形態に係るロボットハンドについて説明する。本実施形態のロボットハンドは、複数のロボットフィンガーを屈曲、伸長、回動させることで、物体を把持するものである。
図1は、本実施形態のロボットハンドの斜視図である。図1に示すように、ロボットハンドRHは、筐体状の本体部Bと、本体部Bに取り付けられた第1ロボットフィンガー100、第2ロボットフィンガー200及び第3ロボットフィンガー300を備えている。
【0011】
第1ロボットフィンガー100は、本体部Bに固定され、本体部B側に設けられたリニアアクチュエータ41の作動により、先端側の第1関節J11と本体部B側の第2関節J12とが屈曲したり伸長したりするようになっている。第1ロボットフィンガー100は、第1関節J11及び第2関節J12が本体部B側に屈曲することで、本体部Bの保持面(保持部)B1との間に物体を把持可能に設けられている。
【0012】
第2ロボットフィンガー200は、本体部Bや第1関節J21の近傍に設けられたモータM1,M2の作動により、先端側の第1関節J21と本体部B側の第2関節J22とが屈曲するように設けられている。
第3ロボットフィンガー300は、本体部Bに設けられた不図示のモータの作動により、本体部Bに設けられたY軸方向と平行な不図示の回動軸を中心として、本体部Bに対して回動するようになっている。
ロボットハンドRHは、複数のモータを作動させ、第2ロボットフィンガー200を屈曲させたり、第3ロボットフィンガー300を回動させたりすることで、第2ロボットフィンガー200と第3ロボットフィンガー300との間に物体を把持可能の設けられている。
【0013】
次に、本実施形態の第1ロボットフィンガー100について、図2〜図5を用いて詳細に説明する。
図2は、第1ロボットフィンガー100の第1関節J11と第2関節J12を伸長させた状態を示す斜視図である。図3は、図2のA−A’線に沿う矢視断面図である。図4は、図2に示す第1ロボットフィンガー100の第1関節J11と第2関節J12を屈曲させた状態を示す斜視図である。図5は、第1ロボットフィンガー100の第1関節J11と第2関節J12とを本体部B側に引き込んだ状態を示す斜視図である。
なお、以下では、図1に示す本体部Bの保持面B1及び側面B2に平行な方向をZ方向、保持面B1に垂直な方向をX方向、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向とするXYZ直交座標系を用いて説明する。
【0014】
図2に示すように、第1ロボットフィンガー100は、直列に配置されて連結された、第1リンク部1と、第2リンク部2と、第3リンク部3とを備えている。また、第1ロボットフィンガー100は、第2リンク部2と第3リンク部3とを、第1リンク部1に対して回転を含む移動をさせる駆動部(駆動手段)4を備えている。
【0015】
図2及び図3に示すように、第1リンク部1は、主に、一対の側板11と、一対の側板11を連結する底板12及び連結軸13と、により構成されている。第1リンク部1の側板11は、Y方向に所定の厚みを有し、Z方向に所定の幅を有し、X方向を長手方向とする板状の部材である。第1リンク部1の底板12は、側板11の−Z側に、側板11に対して略垂直に配置され、一対の側板11間に掛け渡された板状の部材である。
【0016】
側板11は、−Z側の端部における−X側の約半分の部分が、底板12のY方向の両端縁に固定され、Y方向に所定の間隔で対向して配置されている。連結軸13は、一対の側板11の長手方向(X方向)の中央部に配置され、Y方向と略平行な方向に延びる棒状の部材である。連結軸13は両端部がそれぞれ一対の側板11の各々に固定されることで一対の側板11を連結している。
【0017】
側板11の中央部よりも第2リンク部2側(+X側)の位置には、略L字型に形成されたL型溝110が形成されている。L型溝110は、側板11を貫通して設けられ、側板11の長手方向(X方向)と略平行に延びる第1溝111と、第1溝111の第2リンク部2側(+X側)の端部から−Z方向に延びる第2溝112とを有している。
【0018】
第2リンク部2は、主に、一対の側板21と、一対の側板21を連結する底板22(図3参照)と、カム軸23と、第2関節回転軸24と、側板21と共に第1関節回転軸32を支持する支持部25と、を有している。
【0019】
第2リンク部2の側板21は、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、Y方向に所定の厚みを有し、Z方向に所定の幅を有し、X方向を長手方向とする一対の板状の部材である。一対の側板21は、幅方向(図3におけるZ方向)の一方の端部が、底板22のY方向の端縁にそれぞれ固定されている。これにより、一対の側板21は、図2に示すように、Y方向に所定の間隔で対向した状態で、第1リンク部1の側板11の内側に、第1リンク部1の側板11と略平行に配置されている。
【0020】
また、第2リンク部2の一対の側板21は、第1リンク部1の一対の側板11と端部同士がY方向に重なるように、第1リンク部1の一対の側板11の内側に配置されている。また、第2リンク部2の側板21には、図1に示すように、第1ロボットフィンガー100が伸長した状態における第3リンク部3側(+X側)の端部の−Z側に、切欠き部21aが設けられている。また、この状態における第2リンク部2の側板21の第3リンク部3側(+X側)の端部の+Z側には、第1関節回転軸32が挿通されて支持されている。
【0021】
第2リンク部2の底板22は、図3に示すように、第1ロボットフィンガー100が伸長した状態において、側板21の−Z側に、側板21に対して略垂直に配置され、一対の側板21間に掛け渡された板状の部材である。また、底板22の−Z側には、例えばゴムやウレタン等の樹脂材料により形成された緩衝材26が固定されている。
【0022】
カム軸23は、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、第2リンク部2の側板21の長手方向の第1リンク部1側(−X側)の端部の−Z側の位置に挿通され、支持されている。カム軸23は、第1リンク部1の一対の側板11のL型溝110にもそれぞれ挿通され、第1リンク部1の側板11の外側の両端部にストッパー23aが設けられている。カム軸23は、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、L型溝110の第2溝112の−Z側の端部に位置している。
【0023】
第2関節回転軸24は、図2及び図3に示すように、第1ロボットフィンガー100が伸長した状態において、側板21の第1リンク部1側(−X側)の端部の−Z側に配置され、カム軸23の第3リンク部3側(+X側)に隣接して配置されている。第2関節回転軸24の両端部は第2リンク部2の側板21に挿通され、側板21の外側にはストッパー24aが設けられている。
【0024】
支持部25は、X方向からみて+Z側が開口された略U字型の形状に形成され、図3に示すように、−Y側から見て略台形状の形状に形成された部材であり、底部25bが底板22に固定されている。また、図3に示すように、支持部25の側部25aは中央部の−Z側に略三角形の切欠き部25cを有している。切欠き部25cの+X側の部分の+Z側には、第1関節回転軸32の一端が挿通されている。
【0025】
第3リンク部3は、第2リンク部2の第1リンク部1と反対側の端部に一対が並列に配置されている。各々の第3リンク部3は、主に、本体部31と、第1関節回転軸32とにより構成されている。
【0026】
本体部31は、X方向から見て+Z側が開口された略U字型の形状に形成され、図3に示すように、Y方向から見て、第2リンク部2と反対の先端側(図3における+X側)ほどZ方向の寸法が小さくなる先細状の形状に形成されている。本体部31の底部31bには、図3に示す第2リンク部2の緩衝材26と同様の緩衝材33が固定されている。また、本体部31の開口部31cは、カバー部材34によって塞がれている。
【0027】
図2に示すように、本体部31の側部31aの第2リンク部2側の端部は、第2リンク部2の側板21及び支持部25の側部25aの第3リンク部3側の端部とY方向に重なるように、第2リンク部2の側板21及び支持部25の側部25aの外側にこれらと略平行に対向して配置されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、本体部31の側部31aの第2リンク部2側(−X側)の端部の+Z側の位置には、第1関節回転軸32が挿通されている。また、本体部31の側部31aの第2リンク部2側(−X側)の端部の−Z側の位置には、駆動部4の第2駆動リンク軸44cが挿通されている。
【0029】
第1関節回転軸32は、第3リンク部3の本体部31の両方の側部31aと、第2リンク部2の一方の側板21及び支持部25の一方の側部25aに挿通されている。図2に示すように、本体部31の一方の側部31aに支持された第1関節回転軸32の一端側には、ストッパー32aが設けられている。また、図3に示すように、本体部31の他方の側部31aに支持された第1関節回転軸32の他端側は、ボルト32bによって固定されている。また、第1関節回転軸32は、本体部31と第2リンク部2の側板21との間に配置されたスペーサー32cに挿通されている。これにより、第3リンク部3は、第2リンク部2に対して相対的に回転可能に連結されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、駆動部4は、主に、リニアアクチュエータ41と、リニアアクチュエータ41に固定された一対の側板42と、側板42を連結する底板43と、第3リンク部3を駆動させる駆動リンク部44と、を有している。
リニアアクチュエータ41は、モータ41aとボールねじ41bとを備えている。リニアアクチュエータ41は、モータ41aの作動により、ボールねじ41bのねじ軸41cをX方向に進退させるようになっている。ねじ軸41cは、第1リンク部1の連結軸13に設けられたねじ孔13aに螺合され、連結軸13に固定されている。
【0031】
駆動部4の側板42は、第1リンク部1の一対の側板11とY方向に重なるように、第1リンク部1の一対の側板11の内側に、第1リンク部1の一対の側板11と略平行に配置されている。駆動部4の側板42は、側板42の−Z側に、側板42と略垂直に配置された底板43のY方向の端縁に固定され、Y方向に所定の間隔で対向して配置されている。また、底板43の−Z側には、図3に示すように、第2リンク部2に設けられた緩衝材26及び第3リンク部3に設けられた緩衝材33と同様の緩衝材45が固定されている。
【0032】
また、側板42の下端部には、第1リンク部1の側板11と当接するガイド部42d(図4及び図5参照)が設けられている。ガイド部42dは、第1リンク部1の側板11が駆動部4の側板42に対して相対的に移動する際に、第1リンク部1の側板11と摺接し、X方向にガイドするようになっている。
図2に示すように、側板42の−X側の端部にはフランジ部42aが設けられ、側板42はフランジ部42aを介してリニアアクチュエータ41の本体部410に固定されている。側板42のX方向の中央部には、側板42を貫通し、X方向に延びる長孔状の進退溝42bが形成されている。進退溝42bには、第1リンク部1の連結軸13が挿通されて係合されている。
【0033】
図3に示すように、駆動部4の側板42の第2リンク部2側(+X側)の端部の−Z側には、第2リンク部2に設けられた第2関節回転軸24が挿通されている。また、駆動部4の側板42の第3リンク部3側(+X側)の端部のZ方向の略中央部には、駆動リンク部44の第1駆動リンク軸44bが挿通されている。また、駆動部4の側板42の進退溝42bの第3リンク部3側(+X側)には、側板42を貫通し、第2関節回転軸24を中心とする円周に沿って形成された4半円分の長孔状の回転溝42cが形成されている。回転溝42cには、第2リンク部2に設けられたカム軸23が挿通されて係合されている。カム軸23は、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、回転溝42cの−Z側の端部に位置している。
【0034】
駆動部4の駆動リンク部44は、駆動リンク板44aと、駆動リンク板44aを回転可能に支持する第1駆動リンク軸44b及び第2駆動リンク軸44cとを有している。
第1駆動リンク軸44bは、駆動リンク板44aの一方の端部に挿通されると共に、端部が駆動部4の側板42に挿通されて支持されている。これにより、駆動リンク板44aは、第1駆動リンク軸44bを中心として回転可能に設けられている。
【0035】
また、駆動リンク板44aの他方の端部には、駆動リンク板44aの長手方向に延びる不図示の長孔状の溝部が設けられ、この溝部に第2駆動リンク軸44cが挿通されている。
第2駆動リンク軸44cは、図2に示すように一方の端部が第3リンク部3の本体部31の側部31aに挿通されてストッパー44c1が設けられ、図3に示すように他方の端部がボルト44c2によって第3リンク部3の本体部31の側部31aに固定されている。この第2駆動リンク軸44cと、図1に示す駆動リンク板44aと第2リンク部2とに支持されたスプリング軸44dとの間には、これらの間に引っ張り方向の力を作用させるスプリング44eが掛け渡されている。
【0036】
図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、第1リンク部1の側板11の長手方向と、第2リンク部2の側板21の長手方向とは、略一直線になり、それぞれがX方向と略平行になっている。すなわち、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態においては、第1リンク部1の長手方向と、第2リンク部2の長手方向とのなす角度は、略180°になっている。
【0037】
また、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態において、第2リンク部2の側板21の長手方向と、第3リンク部3の本体部31の長手方向とは、略一直線になり、それぞれがX方向と略平行になっている。すなわち、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100が一直線に伸長した状態においては、第2リンク部2の長手方向と平行な中心軸と、第3リンク部3の長手方向と平行な中心軸とのなす角度は、略180°になっている。
【0038】
次に、第1ロボットフィンガー100の動作について説明する。
まず、図2に示すように、第1ロボットフィンガー100の第1関節J11と第2関節J12が伸長し、第1リンク部1、第2リンク部2、及び第3リンク部3がX方向に沿って一直線に配置された状態で、駆動部4のリニアアクチュエータ41を作動させる。すると、モータ41aが回転し、ボールねじ41bのねじ軸41cを回転させ、ねじ軸41cが+X方向に伸長する。すると、ねじ軸41cの先端に固定された連結軸13が進退溝42bに沿って+X方向に移動する。
【0039】
連結軸13が進退溝42bに沿って+X方向に移動すると、図4に示すように、側板11を含む第1リンク部1が、駆動部4の側板42に設けられたガイド部42dに対して摺動し、駆動部4の側板42に対して相対的に+X方向に移動する。これにより、図2に示すように、第1リンク部1のL型溝110の第2溝112に係合したカム軸23に+X方向の力が作用し、カム軸23が駆動部4の側板42に設けられた回転溝42cに沿って移動する。すると、カム軸23の移動により、第2リンク部2に、図3に示す第2関節回転軸24まわりのトルクが発生する。これにより、側板21を含む第2リンク部2が、側板11を含む第1リンク部1及び駆動部4の側板42に対して、第2関節回転軸24を中心として、−Y側から見て右回りに回転する。
【0040】
第2リンク部2の第1リンク部1に対する回転角度が増加し、第1リンク部1の側板11の長手方向と第2リンク部2の側板21の長手方向とのなす角の角度が略180°の状態から減少するに従って、カム軸23は、回転溝42c及びL型溝110(図2参照)の第2溝112に沿って+Z方向に移動していく。そして、図4に示すように、第2リンク部2の第1リンク部1に対する回転角度が約90°になり、第1リンク部1の側板11の長手方向と第2リンク部2の側板21の長手方向とのなす角の角度が略90°の状態になると、カム軸23は回転溝42c及びL型溝110の第2溝112の+Z側の端部に位置した状態になる。
【0041】
また、図2及び図3に示すように、第1駆動リンク軸44bは駆動部4の側板42に支持され、第1関節回転軸32は第2リンク部2の側板21、支持部25及び第3リンク部3の本体部31に支持されている。そのため、図3に示すように、第1関節J11と第2関節J12とが伸長した状態から、側板21を含む第2リンク部2が、側板11を含む第1リンク部1及び駆動部4の側板42に対して、第2関節回転軸24を中心として、−Y側から見て右回りに回転すると、第1駆動リンク軸44bと第1関節回転軸32との距離が離れていく。
【0042】
このとき、駆動リンク板44aに挿通された第1駆動リンク軸44bと、第2駆動リンク軸44cとの距離は変わらない。そのため、第3リンク部3の本体部31には、第1関節回転軸32まわりのトルクが発生する。これにより、第3リンク部3が側板11を含む第2リンク部2に対して、第1関節回転軸32を中心として、−Y側から見て右回りに回転する。そして、図4に示すように、第2リンク部2の第1リンク部1に対する回転角度が約90°になると、第3リンク部3の第2リンク部2に対する回転角度が約90°になり、第2リンク部2の側板21の長手方向と第3リンク部3の本体部31の長手方向とのなす角の角度が略90度になる。
【0043】
このように、第1ロボットフィンガー100の第1関節J11と第2関節J12とを略90°屈曲させることで、第2リンク部2の側板21及び底板22と、図1に示す本体部Bの保持面B1とが対向した状態になる。そのため、本体部Bの保持面B1、第1リンク部1及び第2リンク部2との間に形成される空間に物体を保持することができる。また、第3リンク部3と第2リンク部2とのなす角の角度が略90°になっているので、第3リンク部3によって物体を引っ掛けるように保持し、本体部Bの保持面B1、第1リンク部1及び第2リンク部2の間に形成される空間から物体が脱落することを防止できる。
【0044】
また、図1に示すように、第2駆動リンク軸44cとスプリング軸44dとの間には、これらの間に引っ張り方向の力を作用させるスプリング44eが掛け渡され、駆動リンク板44aには第2駆動リンク軸44cを挿通させる長孔状の溝部(図示略)が設けられている。したがって、第3リンク部3は、図4に示すように、第2リンク部2に対して略90°回転した状態から、第1関節回転軸32を中心として、−Y側から見て左回りに、所定の角度、回転させることができる。
【0045】
また、第3リンク部3をこのように−Y側から見て左回りに回転させると、第3リンク部3にはスプリング44eによって元の位置に戻ろうとする付勢力が作用する。したがって、図4に示す状態において、第3リンク部3と第1リンク部1との間の間隔D3よりもやや大きい物体であっても、第3リンク部3を、第2リンク部2に対して−Y側から見て左回りに回転させ、第3リンク部3により物体に付勢力を作用させた状態で、物体を保持することができる。
【0046】
また、図1に示すロボットハンドRHにより、比較的小さな物体を把持する場合には、図4に示すように、ロボットフィンガーの第1関節J11と第2関節J12とを屈曲させた後、さらにリニアアクチュエータ41を作動させ、ねじ軸41cを+X方向に伸長させる。すると、図4に示す第1リンク部1は、図5に示すように、駆動部4のガイド部42dに沿って、駆動部4の側板42に対して相対的に+X方向に移動する。
【0047】
ここで、図4に示す状態において、カム軸23は、第1リンク部1のL型溝110の第1溝111と連続する第2溝112の+Z側の端部に位置し、かつ、駆動部4の回転溝42cの+Z側の端部に位置しており、駆動部4の側板42に対して+X方向へは移動できない状態になっている。そのため、第1リンク部1が、駆動部4の側板42に対して相対的に+X方向へ移動すると、カム軸23は、図5に示すように、第1リンク部1のL型溝110の第1溝111に沿って、第1リンク部1に対して相対的に−X方向へ移動する。
【0048】
すると、カム軸23を支持する第2リンク部2が、カム軸23と共に第1リンク部1に対して相対的に−X方向へ移動し、第2リンク部2と連結された第3リンク部3も第1リンク部1に対して相対的に−X方向へ移動する。これにより、第1関節J11及び第2関節J12が屈曲した状態で、第2リンク部2、第3リンク部3及び駆動部4が、第1リンク部1に対して、第1リンク部1の長手方向の本体部B(図1参照)側(−X側)に相対的に移動する。すると、図5に示すように、互いに対向する本体部Bの保持面B1と第2リンク部2との間隔D2が、図4に示すように、第2リンク部2を第1リンク部1に対して相対的に−X方向に移動させる前の間隔D1よりも狭くなる。
【0049】
したがって、図5のように、本体部Bの保持面B1(図1参照)、第1リンク部1、第2リンク部2及び第3リンク部3によって形成される空間に、図4に示す状態よりも小さい物体を確実に把持することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の第1ロボットフィンガー100の関節構造によれば、第2リンク部2を第1リンク部1に対して回転させると共に、第1リンク部1の長手方向(X方向)に沿って移動させることで、第2リンク部2の第1リンク部1に対する回転角度を大きくすることなく、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができる。したがって、この関節構造を備えた第1ロボットフィンガー100及び第1フィンガーを備えたロボットハンドRHによれば、大きな物体から小さな物体までを確実に把持することができる。
【0051】
また、駆動部4が上記のリニアアクチュエータ41を備えることから、その他のアクチュエータと比較して、動力の節減効果が大きく、起動抵抗が小さく、潤滑油を節約することができる。また、部品の磨耗が少なく、メンテナンス頻度を低下させ、長時間に亘って高い精度を維持することが可能になる。
【0052】
以上、本発明の実施形態であるロボットの関節構造を適用したロボットフィンガー及びロボットハンドについて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第1リンク部の長手方向と第2リンク部の長手方向とがなす角の角度は90°以下であってもよい。また、第2リンク部の長手方向と第3リンク部の長手方向とがなす角の角度は90°以下であってもよい。
また、上記の実施形態では、第1関節と第2関節を屈曲させてから、第2リンク部を第1リンク部の長手方向に沿って移動させたが、第1関節、第2関節の屈曲と、第1リンク部に対する第2リンク部の第1リンク部の長手方向への移動は同時に行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 第1リンク部、2 第2リンク部、3 第3リンク部、4 駆動部(駆動手段)、41 リニアアクチュエータ、100 第1ロボットフィンガー、B1 保持面(保持部)、RH ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に移動可能に連結された第1リンク部及び第2リンク部と、
前記第2リンク部を前記第1リンク部に対して回転させると共に前記第1リンク部の長手方向に沿って移動させる駆動手段と、
を備えることを特徴とするロボットの関節構造。
【請求項2】
前記第2リンク部は、前記第1リンク部に対して回転することで、前記第1リンク部の長手方向と交差する方向に設けられた保持部と対向することを特徴とする請求項1に記載のロボットの関節構造。
【請求項3】
前記第2リンク部に対して相対的に回転可能に連結された第3リンク部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のロボットの関節構造。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記第3リンク部を前記第2リンク部に対して回転させることを特徴とする請求項3に記載のロボットの関節構造。
【請求項5】
前記駆動手段は、リニアアクチュエータを含むことを特徴とする請求項1から請求項4に記載のロボットの関節構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたロボットの関節構造を備えたことを特徴とするロボットフィンガー。
【請求項7】
請求項6に記載されたロボットフィンガーを備えたことを特徴とするロボットハンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate