説明

ロボットを用いた人物判定

【課題】小規模の構成で十分に高精度な人物判定を行うことのできる技術を提供する。
【解決手段】人物判定システムの監視ロボットは、判定対象者の画像を取得し、この判定画像を用いて人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定し、判定対象者が既登録人物のいずれとも一致しないと判定した場合に、判定対象者の画像を特定の第1の送り先に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像を用いて人物を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像を用いて人物判定を行うシステムとしては、例えば特許文献1に記載された防犯監視システムが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−166090号公報
【0004】
しかし、従来の人物判定システムでは、監視のために大規模なシステム構成が必要であり、一般家庭などの小領域の監視に適用するのは困難な場合があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小規模の構成で十分に高精度な人物判定を行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のシステムは、監視ロボットを用いた人物判定システムであって、
前記監視ロボットは、
判定対象者の画像を取得するための撮像部と、
複数の人物の画像が予め登録されている第1の人物画像データベースと、
前記判定対象者の画像を用いて、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定する第1の人物判定処理部と、
前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者の画像を特定の第1の送り先に送信する第1の送信部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
このシステムによれば、判定対象者が既登録人物と一致しないと判定された場合に、判定対象者の画像を所定の第1の送り先に送信するので、この第1の送り先において画像を用いて判定対象者の確認を行うことが可能である。従って、小規模の構成で十分に高精度な人物判定を行うことが可能である。
【0008】
前記監視ロボットは、移動機構を用いて前記判定対象者を追跡して前記判定対象者の顔正面の画像を撮像し、前記顔正面の画像を用いて前記第1の人物判定処理部による判定を実行するものとしてもよい。
【0009】
この構成によれば、顔正面の画像を用いて人物判定処理を行うので、横顔の画像を用いる場合に比べて高精度の判定を実行することができる。また、判定対象者が移動して顔正面の画像をなかなか取得できない場合にも、監視ロボットが判定対象者を追跡するので、顔正面画像をより確実に取得することが可能である。
【0010】
前記監視ロボットは、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、移動機構を用いて前記判定対象者を追跡して撮像した前記判定対象者の顔正面の画像を前記第1の送り先に送信するようにしてもよい。
【0011】
この場合にも、第1の送り先において、顔正面画像を用いて判定対象者の確認を高精度に行うことが可能である。
【0012】
上記人物判定システムは、さらに、
前記監視ロボットとネットワークを介して接続された大規模人物判定処理装置を備えており、
前記監視ロボットの前記第1の送信部は、前記判定対象者が前記人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に前記判定対象者の画像を前記大規模人物判定処理装置に送信するものとしてもよい。
このとき、前記大規模人物判定処理装置は、
前記第1の人物画像データベースよりも大規模な第2の人物画像データベースと、
前記判定対象者の画像を用いて、前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定する第2の人物判定処理部と、
を備えるものとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、監視ロボットにおける小規模な人物判定処理で判定対象者が未登録であると判定された場合に、大規模人物判定処理装置において大規模な人物判定処理を行うので、判定精度を高めて、既登録人物を未登録人物であると誤判定する確率を低減することができる。
【0014】
前記大規模人物判定処理装置又は前記監視ロボットは、
前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者が不特定人物であることを示す警告を特定の第2の送り先に送信する第2の送信部を備えるようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、第2の送り先において警告を受信できるので、適切な措置を講じることが可能である。
【0016】
前記第2の送り先は、前記監視ロボットによる監視を依頼した依頼者が使用する端末であるものとしてもよい。
【0017】
前記大規模人物判定処理装置は、さらに、
前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者の画像を印刷する印刷機構を備えるようにしてもよい。
【0018】
この構成では、判定対象者が未登録の場合にその画像を観察することによって、その後、適切な措置を講ずることが可能である。
【0019】
前記監視ロボットの前記第1の送信部は、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物であると判定された場合に、前記既登録人物の画像と前記既登録人物の識別子とのうちの少なくとも一方を、前記監視ロボットによる監視を依頼した依頼者が使用する端末に送信するものとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、依頼者が既登録人物の訪問を知ることが可能である。
【0021】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、人物判定方法および人物判定システム、人物判定システムに使用される監視ロボット、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
D.第4実施例:
E.変形例
【0023】
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての監視システムの構成を示す説明図である。この監視システムは、監視領域MSに置かれた監視ロボット100と、中央監視システム300とを備えており、これらはネットワークNETを介して互いに接続されている。なお、監視ロボット100とネットワークNETとの間の接続経路の一部には、無線通信が使用されていることが好ましい。具体的には、例えば、監視ロボット100が無線通信によって監視領域MS内の無線LAN(図示省略)に接続されており、この無線LANがゲートウェイ(又はルータ)を介して外部のネットワークNETに接続されている構成を採用することができる。
【0024】
中央監視システム300は、後述する人物判定サーバ200を備えている。ネットワークNETには、さらに、携帯端末410と無線通信を行う基地局400が接続されている。この携帯端末410は、監視領域MSの監視を依頼した契約者CT(「依頼者」とも呼ぶ)の端末として使用されるものであり、携帯電話機能を有している。なお、この例では、監視領域MSは家庭であり、ネットワークNETとしてインターネットが使用されている。但し、監視領域MSは、家庭以外の任意の領域とすることができる。また、ネットワークとしてはインターネット以外の任意のネットワーク構成を採用することが可能である。
【0025】
図2は、監視ロボット100と人物判定サーバ200の機能を示すブロック図である。監視ロボット100は、目の位置に設けられた撮像部110と、人物認識処理モジュール120と、小規模人物画像データベース130と、ネットワーク通信処理部140とを備えている。人物認識処理モジュール120は、動体認識処理モジュール122と、顔認識処理モジュール124と、追跡制御処理モジュール126と、簡易人物判定処理モジュール128とを備えている。小規模人物画像データベース130には、複数の登録者の画像と、各登録者の識別子(ID)とが登録されている。登録者のIDとしては、予め個々の登録者に割り当てられたID番号や、登録者の氏名を使用することができる。簡易人物判定処理モジュール128は、このデータベースを参照して人物判定を行うことが可能である。なお、各モジュールの機能の詳細については後述する。これらのモジュールは、ハードウェアで実現してもよく、あるいは、ソフトウェアで実現してもよい。監視ロボット100には、さらに、ロボット100を監視領域MS内で移動させたり、ロボット100の各部を動かしたりするための駆動機構150が設けられている。
【0026】
人物判定サーバ200は、詳細人物判定処理モジュール210と、大規模人物画像データベース220と、ネットワーク通信処理部230とを備えている。大規模人物画像データベース220は、監視ロボット100内の小規模人物画像データベース130よりも多数の画像を格納している。詳細人物判定処理モジュール210は、この大規模人物画像データベース220を参照して人物判定を判定するので、監視ロボット100の簡易人物判定処理モジュール128よりも高精度に人物判定を行うことが可能である。
【0027】
人物判定処理は、例えば、任意の判定対象者の画像における顔の輪郭や、顔の部品(目、鼻、口など)の配置、顔領域内における画素値分布などの複数のパラメータが、既登録者に関するこれらのパラメータと一致するか否かに応じて実行することが可能である。但し、人物判定処理の方法としては、他の種々の方法を利用可能である。
【0028】
図3は、第1実施例における処理の全体を示すフローチャートである。ステップS10では、監視ロボット100の動体認識処理モジュール122が、撮像部110からの映像に基づいて、動体が検出されたか否かを判定する。動体が検出された場合には、動体認識処理モジュール122は、ステップS20において、動体が人であるか否かを判定する。この判定は、例えば、動体の輪郭の形状や、動体に人の顔が存在するか否かに基づいて行うことができる。動体に人の顔が存在するか否かは、顔認識処理モジュール124によって判定するようにしてもよい。動体が人でない場合には全体の処理を終了して待機状態に戻り、一方、動体が人(以下、「判定対象者」と呼ぶ)の場合にはステップS30以降の処理が実行される。
【0029】
ステップS30では、監視ロボット100が判定対象者の顔正面の画像を撮像する。この際には、撮像部110で撮像された画像が顔認識処理モジュール124に転送され、顔認識処理モジュール124によって顔正面の画像であると判定されるまで、この撮像と顔認識処理とが繰り返される。なお、顔正面画像を取得できるように、追跡制御処理モジュール126と顔認識処理モジュール124とが協働してロボット100を制御することによって、判定対象者を追跡しつつ撮像を行うようにしてもよい。このように、ロボット100は駆動機構150(「移動機構」とも呼ぶ)を有しているので、人物判定の精度を向上させるために、判定対象者を追跡してその顔正面画像を取得することができるという利点がある。
【0030】
ステップS40では、監視ロボット100と中央監視システム300内の人物判定サーバ200とを用いて以下に説明する人物判定が行われる。
【0031】
図4は、第1実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートである。ステップS100〜S170の処理は監視ロボット100によって行われ、ステップS200〜S230の処理は人物判定サーバ200によって行われる。
【0032】
ステップS100,S110では、簡易人物判定処理モジュール128が、判定対象者の画像を用いて小規模人物画像データベース130を参照し、判定対象者がデータベース130の既登録者か否かが判定される。判定対象者が既登録者(既知)の場合には、ステップS120において、監視ロボット100が、判定対象者に対して挨拶メッセージを発行する。この挨拶メッセージの発行は、スピーカやディスプレイなどの図示しない出力装置を用いて行われる。なお、挨拶メッセージとしては、予め登録された複数のメッセージの中から、判定対象者のIDと現在時刻とに応じて選択された適切なメッセージを使用することが好ましい。
【0033】
一方、ステップS110において判定対象者が未知であると判定された場合には、ステップS130に移行し、ネットワーク通信処理部140がネットワーク接続を起動する。なお、ネットワーク通信処理部140は、通常はネットワークNET(図1)に接続しておらず、必要に応じてネットワーク接続を起動することが好ましい。こうすれば、監視ロボット100の電力を不要に消耗することを防止できるという利点がある。なお、前述したように、ネットワーク通信処理部140は、無線通信を介して監視領域MS内の小規模ネットワークに接続し、この小規模ネットワークを介して外部の大規模ネットワークNET(図1)に接続されるように構成されていることが好ましい。
【0034】
こうしてネットワーク接続を確立すると、ステップS140において、ネットワーク通信処理部140が、リモートプロセスとして人物判定サーバ200内の人物判定処理を起動する。具体的には、人物判定サーバ200内の詳細人物判定処理モジュール210が、監視ロボット100から判定対象者の画像を受け取ってステップS200〜S230の人物判定処理を実行する。まず、ステップS200、S210では、画像検索プロセスを起動し、判定対象者の画像を用いて大規模人物画像データベース220を参照して人物判定を実行する。大規模人物画像データベース220は、監視ロボット100内の小規模データベース130よりも多数の画像を格納しているので、より高精度な人物判定処理を行うことが可能である。
【0035】
なお、大規模人物画像データベース220は、小規模人物画像データベース130と比較して、以下の特徴のうちの1つ以上を備えていることが好ましい。
(1)個々の登録者の画像の数が多い。
(2)個々の登録者の画像の解像度が高い。
(3)登録者の数が多い。
【0036】
また、人物判定サーバ200は、監視ロボット100よりも高速なマクロプロセッサを用いて人物判定処理を行うものであることが好ましい。さらに、中央監視システム300内に複数の人物判定サーバ200を設けておき、分散処理を実行することによって、より高速に人物判定を行うようにすることも可能である。なお、本明細書において、人物判定処理が「より詳細」とは、人物判定処理で参照する人物画像データベースが上記(1)〜(3)のうちの1つ以上の特徴を有している場合と、参照するデータベース自体は同じであるが、その処理がより高精度(例えば、特徴部の抽出処理や、特徴部のマッチング処理がより高精度)である場合の両方の場合を含んでいる。
【0037】
図4のステップS220では、人物判定サーバ200のネットワーク通信処理部230が、詳細人物判定処理モジュール210による判定結果をロボット100に報告し、ステップS230では人物判定サーバ200が待機状態に戻る。ロボット100は、ステップS150においてこの報告を受領し、ステップS160において判定対象者が既登録であったか否かを調べる。
【0038】
詳細人物判定処理の結果、判定対象者が既登録であると判定された場合には、ステップS120に移行して前述した挨拶メッセージ処理が実行される。一方、判定対象者が未登録であると判定された場合には、ステップS170において、人物認識処理モジュール120によって所定の送り先に警告を発行するアラート処理が実行される。例えば、このアラート処理では、ロボット100のネットワーク通信処理部140が、契約者CTの携帯端末410に対して未登録者の訪問があった旨のメッセージ(例えば電子メール)を、画像を添付して送信する。従って、契約者CTは、このメッセージを確認して、必要な措置を講じることができる(図3のステップS50)。例えば、契約者CTは、中央監視システム300の運用会社に連絡して監視領域MSを訪問してもらうことが可能である。
【0039】
なお、ステップS170の処理は、ロボット100の代わりに人物判定サーバ200が実行するようにしてもよい。また、ステップS170又はステップS220では、さらに、未登録の判定対象者の画像とその取得時刻とを、監視ロボット100内の格納部又は中央監視システム300内の格納部に保存するようにしておいてもよい。こうすれば、後の時点で、必要に応じてその画像をいつでも利用することが可能となる。
【0040】
以上のように、第1実施例では、監視領域MSに配置された監視ロボット100において最初に簡易人物判定処理を行い、判定対象者が未登録(未知)と判定された場合に、人物判定サーバ200による詳細人物判定処理を実行している。従って、監視ロボット100のような小規模なシステムを監視領域MSに配置するだけで、高精度の人物判定を実現することが可能である。
【0041】
また、監視ロボット100は、必要な時にのみネットワーク接続の起動処理や追跡処理を実行するようにしたので、監視ロボット100の電池の電力を無駄に消費してしまうことを防止できる。また、監視ロボット100の電力消費量を低減しつつ、人物判定サーバ200を利用した詳細人物判定処理を実現することが可能である。また、監視ロボット100を監視領域MSに配置しておくだけで、夜間の監視や、旅行など長期間に渡って監視領域MSを留守にする場合にも、監視を継続して行うことが可能である。
【0042】
B.第2実施例:
図5は、第2実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートであり、第1実施例の図4に対応する図である。第2実施例は、装置構成と処理の全体は第1実施例と同じであるが、人物判定処理(図3のステップS40)の詳細が第1実施例と異なるだけである。より具体的には、図5の手順は、第1実施例の図4のステップS120の後に、ステップS125が追加されたものであり、他の点は第1実施例と同じである。
【0043】
ステップS125では、ロボット100のネットワーク通信処理部140が、契約者CT(図1)の携帯端末410に対して既登録者の訪問があった旨のメッセージ(例えば電子メール)を送信する。このメッセージには、訪問者の画像と訪問者のID(識別子)の少なくとも一方を添付することが好ましい。このメッセージの送信は、ロボット100から中央監視システム300経由で契約者CT(図1)の携帯端末410に送信することができる。この代わりに、中央監視システム300を経由せずに、ロボット100からネットワークNET及び基地局400を介して契約者CT(図1)の携帯端末410にメッセージを直接送信してもよい。なお、ロボット100から携帯端末410までに至る通信経路のいずれかにおいて、狭帯域の通信路(例えば携帯電話網)が利用される場合には、画像添付を省略して、訪問者のID(識別子)のみをメッセージとして送信するようにしてもよい。
【0044】
このように、第2実施例では、判定対象者が既登録者である場合にも契約者CTにその旨のメッセージを送信するので、既登録者か否かに拘わらず、監視領域MSへのすべての訪問者に関する情報を契約者CTが受信することが可能である。
【0045】
C.第3実施例:
図6は、第3実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートであり、第1,第2実施例で使用した図3に対応する図である。第3実施例は、装置構成や人物判定処理の手順(図5)は第2実施例と同じであるが、ステップS40とステップS50の間にステップS42,S44が追加されている点が第2実施例と異なっている。
【0046】
第2実施例において図5に即して説明したように、判定対象者が既登録(既知)である場合には、ステップS125において、既登録者の訪問があった旨のメッセージが、ロボット100から中央監視システム300経由で契約者CTの携帯端末410に送信される。但し、第3実施例では、ロボット100から中央監視システム300へのメッセージには訪問者の画像が送信されるが、中央監視システム300から携帯端末410へのメッセージには訪問者の画像は添付されておらず、訪問者のIDのみがメッセージとして伝えられる。なお、訪問者の画像は、人物判定サーバ200内の画像格納部(図示省略)に保存される。
【0047】
図6のステップS42では、契約者CTが、このメッセージに応じて、人物判定サーバ200の画像格納部にアクセスして、その訪問者の画像を携帯端末410上で閲覧する。そして、契約者CTは、必要に応じて中央監視システム300に対応を依頼することができる(ステップS50)。
【0048】
このように、第3実施例では、判定対象者が既登録者である場合にも契約者CTがその画像を閲覧できるので、人物判定処理の際に未登録の人を既登録と誤判定した場合にも、契約者CTが適切な措置を講じることが可能である。
【0049】
D.第4実施例:
図7は、本発明の第4実施例における監視システムの構成を示す説明図である。この監視システムでは、図1の構成から、中央監視システム300内の人物判定サーバ200と、基地局400と、携帯端末410とを省略し、これらの代わりに、契約者CTの居所に人物判定サーバ510を有するプリンタ500を設置した点が第1実施例と異なり、他の構成は第1実施例と同じである。この人物判定サーバ510は、図2に示した人物判定サーバ200と同じ構成を有しているので、詳細な説明は省略する。また、第4実施例における処理の全体手順も、図3と同じである。
【0050】
図8は、第4実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートであり、第1実施例の図4に対応する図である。図8の手順は、第1実施例の図4のステップS170が省略されており、また、ステップS220とステップS230との間にステップS222,S224が追加されたものであり、他の点は図4と同じである。なお、第4実施例では、ステップS200〜S230の処理は、契約者CTの居所に設けられたプリンタ500によって実行される。
【0051】
図8の手順では、大規模人物画像データベースを用いた判定処理において判定対象者が未登録(未知)と判定された場合には、ステップS222からステップS224に移行し、プリンタ500がその未登録の判定対象者の画像を印刷し、その後、待機状態に遷移する(ステップS230)。従って、契約者CTは、印刷された画像を観察して、必要な措置を講じることが可能である(図3のステップS50)。
【0052】
なお、上述した第1実施例ないし第4実施例の構成は、必要に応じて任意に組み合わせることが可能である。例えば、第4実施例において、契約者CTの携帯端末410にも各種のメッセージが送信されるようにシステム全体を構成することが可能である。
【0053】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0054】
E1.変形例1:
上記各実施例では、ロボット100を用いた人物判定処理において判定対象者が未登録であると判定された場合に、判定対象者の画像を人物判定サーバに送信するものとしたが、この代わりに、他の所定の送り先(例えば契約者CTの端末)に判定対象者の画像を送信しても良い。この場合にも、その送り先において判定対象者の画像を確認することができる。あるいは、その送り先で画像を一旦格納しておくようにすれば、契約者や中央監視システム300の運用会社が、後にその画像を利用することができる。
【0055】
E2.変形例2:
上記各実施例では、人物判定処理において顔正面画像を使用するものとしたが、正面でない顔画像を用いて人物判定処理を行うようにしてもよい。また、ロボット100が、正面顔画像以外の画像を用いて簡易人物判定処理を行った結果、判定対象者が未登録人物であると判定された場合に、ロボット100によって判定対象者を追跡して顔正面画像を撮像し、その顔正面画像を所定の送り先(例えば人物判定サーバ200)に送信してもよい。この場合に、顔正面画像を人物判定サーバ200に送信すれば、詳細人物判定処理において顔正面画像を使用できるので、高精度な判定処理を実現することが可能である。
【0056】
E3.変形例3:
上記第1ないし第3実施例では、契約者CTが携帯端末410を有していたが、携帯端末410の代わりに固定式の端末を利用することも可能である。
【0057】
E4.変形例4:
上記各実施例では、通常は(すなわち待機状態では)監視ロボット100が移動を停止しているものとしたが、監視ロボット100が定期的に監視領域MS内を巡回するようにしてもよい。また、監視ロボットとしては、任意の形状や機能のロボットを使用することが可能である。例えば、動物の形状を有するペット用ロボットを使用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例としての監視システムの構成を示す説明図である。
【図2】監視ロボットと人物判定サーバの機能を示すブロック図である。
【図3】第1実施例における処理の全体を示すフローチャートである。
【図4】第1実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】第2実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第3実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第4実施例における監視システムの構成を示す説明図である。
【図8】第4実施例における人物判定処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
100…監視ロボット
110…撮像部
120…人物認識処理モジュール
122…動体認識処理モジュール
124…顔認識処理モジュール
126…追跡制御処理モジュール
128…簡易人物判定処理モジュール
130…小規模人物画像データベース
140…ネットワーク通信処理部
150…駆動機構
200…人物判定サーバ
210…詳細人物判定処理モジュール
220…大規模人物画像データベース
230…ネットワーク通信処理部
300…中央監視システム
400…基地局
410…携帯端末
500…プリンタ
510…人物判定サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視ロボットを用いた人物判定システムであって、
前記監視ロボットは、
判定対象者の画像を取得するための撮像部と、
複数の人物の画像が予め登録されている第1の人物画像データベースと、
前記判定対象者の画像を用いて、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定する第1の人物判定処理部と、
前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者の画像を特定の第1の送り先に送信する第1の送信部と、
を備えることを特徴とする人物判定システム。
【請求項2】
請求項1記載の人物判定システムであって、
前記監視ロボットは、移動機構を用いて前記判定対象者を追跡して前記判定対象者の顔正面の画像を撮像し、前記顔正面の画像を用いて前記第1の人物判定処理部による判定を実行する、人物判定システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の人物判定システムであって、
前記監視ロボットは、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、移動機構を用いて前記判定対象者を追跡して撮像した前記判定対象者の顔正面の画像を前記第1の送り先に送信する、人物判定システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の人物判定システムであって、さらに、
前記監視ロボットとネットワークを介して接続された大規模人物判定処理装置を備えており、
前記監視ロボットの前記第1の送信部は、前記判定対象者が前記人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に前記判定対象者の画像を前記大規模人物判定処理装置に送信し、
前記大規模人物判定処理装置は、
前記第1の人物画像データベースよりも大規模な第2の人物画像データベースと、
前記判定対象者の画像を用いて、前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定する第2の人物判定処理部と、
を備える、人物判定システム。
【請求項5】
請求項4記載の人物判定システムであって、
前記大規模人物判定処理装置又は前記監視ロボットは、
前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者が不特定人物であることを示す警告を特定の第2の送り先に送信する第2の送信部を備える、人物判定システム。
【請求項6】
請求項5記載の人物判定システムであって、
前記第2の送り先は、前記監視ロボットによる監視を依頼した依頼者が使用する端末である、人物判定システム。
【請求項7】
請求項4記載の人物判定システムであって、
前記大規模人物判定処理装置は、さらに、
前記判定対象者が前記第2の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者の画像を印刷する印刷機構を備える、人物判定システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の人物判定システムであって、
前記監視ロボットの前記第1の送信部は、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物であると判定された場合に、前記既登録人物の画像と前記既登録人物の識別子とのうちの少なくとも一方を、前記監視ロボットによる監視を依頼した依頼者が使用する端末に送信する、人物判定システム。
【請求項9】
監視ロボットを用いた人物判定方法であって、
(a)判定対象者の画像を取得する工程と、
(b)前記判定対象者の画像を用いて、複数の人物の画像が予め登録されている第1の人物画像データベースを参照することによって、前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物と一致するか否かを判定する工程と、
(c)前記判定対象者が前記第1の人物画像データベースの既登録人物のいずれとも一致しないと判定された場合に、前記判定対象者の画像を特定の第1の送り先に送信する工程と、
を備えることを特徴とする人物判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−249334(P2007−249334A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68828(P2006−68828)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】