説明

ロボットハンド

【課題】把持部で把持した把持対象の回転精度を向上させることができるとともに、その回転量も大きくすることが可能なロボットハンドを得ること。
【解決手段】本発明のロボットハンド1は、把持対象を把持して回転させるロボットハンドであって、把持対象を挟み込んで把持すべく平行に開閉動作する一対の把持部11,12と、把持対象を把持した状態において、把持部同士の相対的な位置をずらすように、把持対象の回転軸Oと垂直な方向に少なくとも一方の把持部を移動させる移動手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、特にワーク等の把持対象を回転させるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワーク等の把持対象を把持するロボットハンドが利用されている。例えばロボットのアームの先端にロボットハンドを設けることで、ロボットが把持対象を把持して移動させることができるようになる。このようなロボットハンドでは、把持対象を把持することに加えて、把持対象を回転させる動作が要求される場合がある。
【0003】
そこで、把持対象を挟み込んで把持する一対の把持部を、把持部の挟み込む方向と垂直に互いに逆方向に回転させることで、把持対象を回転させる技術が、例えば特許文献1に開示されている。また、把持対象を把持する3本のフィンガーの位置関係を調節することで把持対象を回転させる技術が、例えば特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−27874号公報
【特許文献2】特開平6−155358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、把持部が回転動作を行うため、把持部の根元と先端とで、把持部の移動量が異なる。したがって、把持部と把持対象との間で滑りが生じやすく、精度よく回転量を制御することが難しいという問題がある。また、特許文献2に開示の技術では、フィンガーの移動だけでは、把持対象の回転量を大きくしにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、把持部で把持した把持対象の回転精度を向上させることができるとともに、その回転量も大きくすることが可能なロボットハンドを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、把持対象を把持して回転させるロボットハンドであって、把持対象を挟み込んで把持すべく平行に開閉動作する一対の把持部と、把持対象を把持した状態において、把持部同士の相対的な位置をずらすように、把持対象の回転軸と垂直な方向に少なくとも一方の把持部を移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、把持部が把持対象の回転軸と垂直な方向に移動するので、把持対象を回転させる過程で、把持部と把持対象との間で滑りを生じにくくすることができ、把持対象の回転精度を向上させることができるという効果を奏する。また、把持対象の回転軸と垂直な方向への把持部の移動により把持対象を回転させるので、その回転量を大きくすることができるという効果を奏する。例えば、把持部の移動方向における長さが、把持対象の回転方向における外周長さ以上であれば、把持部の移動により把持対象を360度以上回転させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットハンドの概略構成を示す外観正面図である。
【図2】図2は、筐体内部に設けられた移動機構の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、把持部で把持対象を把持した状態を示す図であって、(a)把持部の進退位置が略等しい状態を示す図、(b)把持部を退避方向に、把持部を進出方向に移動させて把持対象を回転させた状態を示す図、(c)把持部を進出方向に、把持部を退避方向に移動させて把持対象を回転させた状態を示す図である。
【図4】図4は、ロボットハンドの外観正面図であって、(a)四角形断面の把持対象を把持した状態を示す図、(b)四角形断面の把持対象を回転させた状態を示す図である。
【図5】図5は、ロボットのアームに本実施の形態1に係るロボットハンドを取り付けた状態を例示する図である。
【図6】図6は、本実施の形態1の変形例1に係るロボットハンドの外観正面図であって、(a)把持対象を把持した状態を示す図、(b)(c)把持対象を回転させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるロボットハンドの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットハンドの概略構成を示す外観正面図である。ロボットハンド1は、ワーク等の把持対象を把持するための装置である。ロボットハンド1は、一対の把持部11,12を有する。把持部11,12は、矢印Xに示す方向に平行に移動可能であり、開閉動作が可能となっている。把持部11,12を閉じることで把持対象を挟み込んで把持することができる。把持部11,12同士の対向面11a,12aには、把持対象を確実に把持できるように滑り止め処理が施されている。例えば、対向面11a,12aをゴム部材で構成してもよい。また、対向面11a,12aの表面を粗面にして摩擦抵抗を増すように構成してもよい。また、把持部11,12は、開閉方向と垂直な方向(矢印Yに示す方向)に直線移動可能になっている。以下、矢印Xに示す方向への把持部11,12の移動を開閉方向への移動といい、矢印Yに示す方向への把持部11,12の移動を進退方向への移動という。また、把持部11,12の移動を進退方向への移動について、筐体2から離れる方向を進出方向への移動といい、筐体2に近づく方向を退避方向への移動という。
【0012】
把持部11,12は筐体2の内部に設けられた移動機構(移動手段)4によって移動される。図2は、筐体内部に設けられた移動機構4の概略構成を示す図である。まず、把持部11,12を開閉移動させる機構について説明する。
【0013】
把持部11,12には、その根元側に筐体2内部に向けて延びる進退用ガイドレール133,134が取り付けられている。進退用ガイドレール133,134は、その途中で進退用ガイドブロック131,132に形成された開口131a,132aを貫通する。進退用ガイドブロック131,132と一体に形成された開閉用ガイドブロック31,32は、開閉用ガイドレール30上をスライド移動可能になっている。これにより、開閉用ガイドブロック31,32の開閉方向の移動に合わせて、進退用ガイドレール133,134、および把持部11,12が開閉方向に移動する。
【0014】
開閉用ガイドブロック31,32は、ベルト43と連結されている。ベルト43は、開閉用ガイドブロック31,32よりも開閉方向に対して外側に配置されたプーリ41,42との間に掛けられており、プーリ41,42の回転に合わせてベルト43も回転する。なお、開閉用ガイドブロック31,32のうち、一方の開閉用ガイドブロック31は、プーリ41,42を挟んだ一方側を通るベルト43部分に連結され、他方の開閉用ガイドブロック32は、プーリ41,42を挟んだ他方側を通るベルト43部分に連結される。プーリ41には、開閉用モータ21の回転軸部21aが接続されており、回転軸部21aの回転に合わせてプーリ41も回転する。
【0015】
上記構成により、開閉用モータ21の回転軸部21aを回転させてプーリ41を回転させると、ベルト43の回転に合わせて把持部11,12が開閉移動する。具体的には、矢印Pに示す方向にプーリ41を回転させると把持部11,12が開くように移動し、矢印Qに示す方向にプーリ41を回転させると把持部11,12が閉じるように移動する。
【0016】
なお、開閉用モータ21には、定圧制御部24が接続されている。定圧制御部24は、把持部11,12が把持対象を把持する把持圧力が略一定となるように、開閉用モータ21を制御する定圧化手段として機能する。定圧制御部24は、図示しない圧力検出部で検出した把持圧力に基づいて、開閉用モータ21に対する電流制御を行い、把持圧力の一定化を図る。
【0017】
次に、把持部11,12を進退移動させる機構について説明する。進退用ガイドレール133,134の把持部11,12が設けられた他端側には、ラック51,52が設けられている。ラック51,52には、それぞれピニオンギア61,62が噛み合わされている。これにより、ピニオンギア61,62の回転に合わせて進退用ガイドレール133,134および把持部11,12が進退方向に直線移動することができる。なお、進退用ガイドレール133,134および把持部11,12の進退方向への直線移動は、進退用ガイドブロック131,132によって規定されている。
【0018】
ピニオンギア61,62は、それぞれプーリ45,46と連動して回転するようになっている。進退用モータ22の回転軸部22aに連結されたプーリ44と、プーリ45との間にはベルト47が掛けられており、プーリ44の回転に合わせてプーリ45が回転する。プーリ46も同様に、進退用モータ22の回転軸部22aに連結されたプーリ44との間にベルト48が掛けられており、プーリ44の回転に合わせてプーリ46が回転する。
なお、プーリ44は、プーリを二段に重ねた形状となっており、ベルト47とベルト48の両方を掛けることができるようになっている。
【0019】
上記構成により、進退用モータ22の回転軸部22aを回転させてプーリ44を回転させると、プーリ45,46の回転に合わせて把持部11,12が進退移動する。具体的には、矢印Rに示す方向にプーリ44を回転させると、把持部11が退避方向に移動し、把持部12が進出方向に移動する。また、プーリ44を矢印Sに示す方向に回転させると、把持部11が進出方向に移動し、把持部12が退避方向に移動する。すなわち、プーリ44を回転させることで、把持部11,12をそれぞれ反対方向に平行移動させて、お互いの相対位置をずらすことができる。
【0020】
また、把持部11と把持部12の進退方向への移動量が略等しくなるようになっている。具体的には、ラック51,52やピニオンギア61,62のギア比を、把持部11側と把持部12側とで等しくしたり、プーリ45,46のサイズを把持部11側と把持部12側とで等しくしたりすることで、把持部11と把持部12の進退方向への移動量を略等しくしている。
【0021】
なお、移動機構4は、プーリ44に対して矢印Uに示す方向に付勢力を加える付勢手段6を有する。付勢手段6は、例えばコイルバネである。付勢手段6によりプーリ44に対して付勢力を加えることで、把持部11,12の開閉動作によりプーリ45,46が移動した場合でも、プーリ44とプーリ45との距離と、プーリ44とプーリ46との距離を一定に保つようにプーリ44を移動させることができ、プーリ44の回転を確実にプーリ45,46に伝えることができる。もちろん、プーリ44の移動に合わせて進退用モータ22も移動可能に設けてある。
【0022】
次に、ロボットハンド1による把持対象の回転について説明する。図3は、把持部11,12で把持対象を把持した状態を示す図であって、(a)把持部11,12の進退位置が略等しい状態を示す図、(b)把持部11を退避方向に、把持部12を進出方向に移動させて把持対象を回転させた状態を示す図、(c)把持部11を進出方向に、把持部12を退避方向に移動させて把持対象を回転させた状態を示す図である。
【0023】
図3に示すように、把持部11,12が等しい移動量で反対方向に平行移動するので、把持対象の回転軸Oをほとんど移動させずに、把持対象を回転させることができる。また、把持部11,12が把持対象の回転軸Oと垂直な方向に移動するので、把持対象を回転させる過程で、把持部11,12と把持対象との間で滑りを生じにくくすることができる。これにより、把持対象の回転精度を向上させることができる。
【0024】
また、把持対象の回転軸Oと垂直な方向への把持部11,12の移動により把持対象を回転させるので、その回転量を大きくすることができる。例えば、対向面11a,12aの進退方向における長さが、把持対象の外周長さ以上であれば、把持部11,12の進退移動により把持対象を360度以上回転させることも可能となる。
【0025】
図4は、ロボットハンド1の外観正面図であって、(a)四角形断面の把持対象を把持した状態を示す図、(b)四角形断面の把持対象を回転させた状態を示す図である。図4に示すように、四角形断面の把持対象を回転させると、その回転の過程で把持部11,12の開閉間隔が変化する。ロボットハンド1の移動機構4は、把持圧力を略一定にする定圧制御部24を備えているので、回転により把持部11,12の開閉幅が変化する場合であっても、略一定の把持圧で把持対象を安定して把持することができる。なお、四角形断面の断面形状は、回転により把持部11,12の開閉幅が変化する断面形状の例示であり、把持対象の断面形状はこれに限られない。
【0026】
図5は、ロボット10のアームに本実施の形態1に係るロボットハンド1を取り付けた状態を例示する図である。ロボット10のアームは、1または複数の可動軸を有して、ワーク等の把持対象を所定の姿勢で所定の位置に移動させる。従来、把持対象を回転させる際に、回転軸の移動を抑えたいという要求がある場合には、ロボットのアームに多くの可動軸を備える必要があり、ロボットのコストの増大を招いてしまう場合があった。一方、ロボット10のアームにロボットハンド1を取り付けることで、アームの可動軸を回転させずに把持対象を回転させることができるようになる。すなわち、ロボットハンド1をロボット10のアームに取り付けることで、アームの可動軸に頼らずに、回転軸の移動を抑えて把持対象を回転させることができる。これにより、ロボット10のアームが備えるべき可動軸の数を抑えて、ロボット10のコストの増大を抑えることができる。
【0027】
なお、図2に示す移動機構4から、「プーリ45、ベルト47、ピニオンギア61」または、「プーリ46、ベルト48、ピニオンギア62」のいずれか一方を省略して移動機構4を構成してもよい。この場合、把持対象を回転させる際に、一方の把持部だけが進退移動するので、把持対象の回転軸の移動を抑えにくくなるものの、把持部と把持対象との滑りを抑えて回転精度の向上を図ることができる。また、把持対象の回転量を大きくすることもできる。
【0028】
なお、把持部11,12に開閉移動および進退移動をさせるための移動機構は、図2に示す構成に限られない。すなわち、移動機構4の構成は、把持対象を把持するための把持部11,12の開閉移動と、把持対象を回転させるために把持部11,12の相対的な位置関係をずらす進退移動とを実現できる構成であればよい。例えば、本実施の形態1では、1つの開閉用モータ21で把持部11,12の両方を開閉移動させているが、把持部11,12それぞれを開閉移動させるモータ等の駆動手段を設けて、把持部11,12の開閉移動を別々に制御するように構成してもよい。また、1つの進退用モータ22で把持部11,12の両方を進退移動させているが、把持部11,12それぞれを進退移動させるモータ等の駆動手段を設けて、把持部11,12の進退移動を別々に制御するように構成してもよい。
【0029】
図6は、本実施の形態1の変形例1に係るロボットハンド1の外観正面図であって、(a)把持対象を把持した状態を示す図、(b)(c)把持対象を回転させた状態を示す図である。本変形例1では、把持部11,12の対向面11a,12aに凹み部11b,12bが形成されている。対向面11a,12aに凹み部11b,12bを形成することで、安定して把持対象を把持することができるようになる。また、対向面11a,12aに凹み部11b,12bを形成すると把持対象を回転させた際に把持部11,12の開閉幅が変化する。上述したように、定圧制御部24を備えることで、把持部11,12の開閉幅が変化する場合であっても、略一定の把持圧で把持対象を安定して把持することができる。また、凹み部11b,12bのうち、把持対象を回転させた場合に把持対象に接触している接触面同士を平行とすることで、把持対象の回転軸の移動を抑えることができる。なお、凹み部11b,12bは、把持対象の形状に合わせて様々な形状で形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかるロボットハンドは、ロボットのアームに有用であり、特に、ワーク等の把持対象を回転させるロボットのアームに適している。
【符号の説明】
【0031】
1 ロボットハンド
2 筐体
4 移動機構(移動手段)
6 付勢手段
10 ロボット
11,12 把持部
11a,12a 対向面
11b,12b 凹み部
21 開閉用モータ
21a 回転軸部
22 進退用モータ
22a 回転軸部
24 定圧制御部(定圧化手段)
30 開閉用ガイドレール
31,32 開閉用ガイドブロック
41,42 プーリ
43 ベルト
44,45,46 プーリ
47,48 ベルト
51,52 ラック
61,62 ピニオンギア
131,132 進退用ガイドブロック
131a,132a 開口
133,134 進退用ガイドレール
O 回転軸
P,Q,R,S,U,X,Y 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象を把持して回転させるロボットハンドであって、
前記把持対象を挟み込んで把持すべく平行に開閉動作する一対の把持部と、
前記把持対象を把持した状態において、前記把持部同士の相対的な位置をずらすように、前記把持対象の回転軸と垂直な方向に少なくとも一方の把持部を移動させる移動手段と、を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記移動手段は、前記一対の把持部の両方をそれぞれ反対方向に略等しい移動量で移動させることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記一対の把持部が前記把持対象を挟み込む圧力を略一定に保持する定圧化手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記把持部同士の対向面には、凹み部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記把持部同士の対向面には、滑り止め処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のロボットハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115914(P2011−115914A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276839(P2009−276839)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】