説明

ロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法

【課題】マニピュレータを備えたロボット装置の制御装置において、マニピュレータと人との干渉、接触を確実に防止しつつ、装置のダウンタイムを減少させ、稼働効率が低下しないようにする。
【解決手段】マニピュレータ1の可動領域を包括し可動領域よりも広い領域であって侵入物体101の侵入が可能である警戒領域Bに対する侵入物体101の侵入を監視する侵入検知手段6と、マニピュレータ1の動作状態を特定するとともにマニピュレータ1の動作を制御する制御手段3,7とを備える。制御手段3,7は、検知手段6により、警戒領域B内への侵入物体101の侵入が検知された場合には、マニピュレータ1の動作を減速させ、マニピュレータ1の可動領域A内への侵入物体101の侵入が検知されるとともにマニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータ1の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法に関し、ロボット装置のマニピュレータの可動領域に人などが侵入した場合の保安、安全の向上を図ったロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マニピュレータを備えたロボット装置が提案されている。このようなロボット装置においては、マニピュレータの可動領域に人などが侵入する可能性がある。このような場合の保安、安全を図るため、従来のロボット装置においては、マニピュレータの可動領域の外側に、入退扉を有する安全柵等を設置することが行われている。そして、この安全柵の入退扉に開閉状態を検出するスイッチを設けておき、あるいは、ライトカーテン等により、いわば出入口管理により、安全柵内への人の侵入を検知するようにしている。ロボット装置の制御装置は、安全柵内への人等の侵入が検知された場合には、ロボット装置への駆動電源の供給を遮断し、ロボット装置を非常停止させるようになっている。
【0003】
また、特許文献1には、人とマニピュレータとの接触可能性のあるエリアを限定し、このエリアを重点的にカメラにより監視しておき、状況に応じて、マニピュレータの動作を減速させ、あるいは、非常停止させるようにしたロボット装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、カメラ等による監視を行い、侵入者を検出した場合には、警告を発するようにしたロボット装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、カメラ等による監視を行い、侵入者を検出した場合には、侵入者の位置及び速度等の状況を分析し、マニピュレータとの接触可能性のある領域との位置及び速度等の関係から、マニピュレータの動作を減速させ、あるいは、非常停止させるようにしたロボット装置が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献4には、マニピュレータを近似立体を使ってモデル化し、人等との干渉や接触を確認するようにしたロボット装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−283450号公報
【特許文献2】特許第3704706号公報
【特許文献3】特表2006−501487号公報
【特許文献4】特許第2678005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のロボット装置において、入退扉の開閉状態の検出により侵入者を検知するようにした場合には、作業者の過失により、作業者が安全柵内に残っている状態で入退扉を閉めてしまった場合には、マニピュレータの非常停止状態が解除されてしまい、作業者とマニピュレータとが接触する可能性が生ずる。
【0009】
また、このようなロボット装置においては、安全柵の内側の全ての領域がマニピュレータの可動領域というわけではないため、安全柵の設置により、ロボット装置そのものが占有する面積よりも大きな面積が占有されることになってしまい、スペース効率の低下を招くこととなる。
【0010】
さらに、このロボット装置においては、入退扉が解放された場合には、マニピュレータと人との接触可能性がない状態や、または、接触の可能性がすぐには生じない状態であっても、ロボット装置は非常停止され、稼働効率の低下を招くこととなる。例えば、マニピュレータが安全柵の入退扉とは反対側で作業をしている状況において、マニピュレータが次に把持すべきワークの位置がずれていることが分かったとする。このままの状態で把持を行おうとすれば、マニピュレータは、把持に失敗し、停止することになる。このような状況では、マニピュレータが入退扉の付近に移動してくるには十分な時間があり、その間に作業者がワークの位置を修正することができる状況ではあるが、入退扉を解放すれば、マニピュレータは非常停止してしまうため、無駄な時間が生ずる。
【0011】
そして、このような状況においては、作業者は、無駄な時間が生ずることを嫌って、非常停止の機能を解除してしまうことが考えられる。すなわち、入退扉を解放してもマニピュレータが非常停止しない状態として、安全柵内に侵入することが考えられる。この場合において、作業者の思い違い、見込み違いや、ロボット装置に対する理解不足などから、予想に反してマニピュレータが戻ってしまい、マニピュレータと作業者とが接触する虞が生ずる。
【0012】
また一般的に、ロボット装置は、一旦、非常停止により駆動電源の遮断やプログラムリセット等が生じてしてしまうと、非常停止状態を確認し、解除した後に、マニピュレータを初期状態(原点位置等)に戻し、また、仕掛かり中のワークを元の位置に戻すなどしたうえで、プログラムを再始動するといった復旧作業が必要となる。そのため、多くの装置のダウンタイムが発生し、これらの作業を行うための作業員も必要となり、生産効率が大きく低下してしまう。
【0013】
したがって、ロボット装置においては、安全の確保を前提としつつも、装置のダウンタイムを減少させ、稼働効率を低下させないことが期待される。
【0014】
特許文献1に記載されたロボット装置においては、マニピュレータと人との接触可能性のある領域を限定できる場合には有効である。しかし、マニピュレータの可動領域を大きくした場合には、この可動領域内において人が侵入できる場所及び侵入する必要のある場所が多くなり、マニピュレータの可動領域のほぼ全体を監視しなければならなくなる。したがって、安全を確保するためには、侵入による非常停止が頻繁に発生することとなり、稼働効率の低下が招来される。
【0015】
そのため、このロボット装置においては、人が侵入できる領域を集約しておく必要があるため、セルの設計自由度が低く、ロボットが比較的大きく動かない特定の小型セルや分割された作業エリアなどにしか適用することができない。
【0016】
そして、特許文献2に記載されたロボット装置においては、マニピュレータの可動領域への人の侵入のみを監視しており、マニピュレータの動作については監視していない。また、特許文献3に記載されたロボット装置においても、人の挙動のみを監視対象としており、マニピュレータの動作及び挙動は監視していない。このように、これら特許文献2及び特許文献3に記載されたロボット装置においては、人の挙動のみを監視装置により監視するため、作業者の安全は確保されるが、人の侵入可能領域がマニピュレータの動作によって変化することはない。例えば、マニピュレータと作業者との間に十分な安全距離が確保されていたとしても、マニピュレータの可動領域に人が侵入するなり、マニピュレータは非常停止するので、稼働効率の低下は避けられない。
【0017】
特許文献4に記載されたロボット装置においては、複数のマニピュレータ同士や、マニピュレータの可動領域と物品との干渉や接触を確認する方法であり、人とマニピュレータとの干渉や接触を対象としていない。
【0018】
そこで、本発明は、前記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マニピュレータと人との干渉、接触が防止され、安全性が高まり、装置のダウンタイムが減少され、稼働効率が低下しないようになされたロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るロボット装置の制御装置は、以下の構成を有するものである。
【0020】
〔構成1〕
マニピュレータを備えたロボット装置の動作を制御するためのロボット装置の制御装置であって、マニピュレータの可動領域を包括し該可動領域よりも広い領域であって侵入物体の侵入が可能である警戒領域に対する侵入物体の侵入を監視する侵入検知手段と、マニピュレータの動作状態を特定するとともに該マニピュレータの動作を制御する制御手段とを備え、制御手段は、検知手段により、警戒領域内への侵入物体の侵入が検知された場合には、マニピュレータの動作を減速させ、マニピュレータの可動領域内への侵入物体の侵入が検知されるとともにマニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータの動作を停止させることを特徴とするものである。
【0021】
〔構成2〕
構成1を有するロボット装置の制御装置において、侵入検知手段は、3次元認識センサであって、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0022】
これら近似立体としては、球、円筒、多面体等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人と、マニピュレータとを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似立体同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似立体は、複数の立体が組合わさったものであってもよい。
【0023】
〔構成3〕
構成1を有するロボット装置の制御装置において、侵入検知手段は、2次元認識センサ、または、3次元認識センサであって、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0024】
これら近似図形としては、円、多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人の投影図形と、マニピュレータの投影図形とを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似図形同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似図形は、複数の図形が組合わさったものであってもよい。
【0025】
〔構成4〕
構成1を有するロボット装置の制御装置において、侵入検知手段は、3次元認識センサであって、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の中心点を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0026】
〔構成5〕
構成1を有するロボット装置の制御装置において、侵入検知手段は、2次元認識センサ、または、3次元認識センサであって、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、侵入検知手段によりマニピュレータの動作状態を特定しマニピュレータの水平面への投影図形を設定しこれら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0027】
近似図形としては、円、多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人の投影図形を、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似図形同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似図形は、複数の図形が組合わさったものであってもよい。
【0028】
〔構成6〕
構成1、構成2、構成3、または、構成5を有するロボット装置の制御装置において、マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、警戒領域、近似立体、または、近似図形を拡大することを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明に係るロボット装置の制御方法は、以下の構成を有するものである。
【0030】
〔構成7〕
構成1、構成2、構成3、または、構成5を有するロボット装置の制御装置において、侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及びマニピュレータの可動領域を包括する警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い一、または、二以上に多重化された危険領域を設定して多重化し、侵入物体領域とマニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、侵入物体領域とマニピュレータとの接近に応じて順次多段的に減速することを特徴とするものである。
【0031】
〔構成8〕
マニピュレータを備えたロボット装置の動作を制御するためのロボット装置の制御方法であって、マニピュレータの可動領域を包括し該可動領域よりも広い領域であって侵入物体の侵入が可能である警戒領域に対する侵入物体の侵入を監視し、警戒領域内への侵入物体の侵入が検知された場合には、マニピュレータの動作を減速させ、マニピュレータの可動領域内への侵入物体の侵入が検知されるとともにマニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータの動作を停止させることを特徴とするものである。
【0032】
〔構成9〕
構成8を有するロボット装置の制御方法において、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0033】
これら近似立体としては、球、円筒、立方体を含む正多面体等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人と、マニピュレータとを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似立体同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似立体は、複数の立体が組合わさったものであってもよい。
【0034】
〔構成10〕
構成8を有するロボット装置の制御方法において、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0035】
これら近似図形としては、円、正方形を含む正多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人の投影図形と、マニピュレータの投影図形とを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似図形同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似図形は、複数の図形が組合わさったものであってもよい。
【0036】
〔構成11〕
構成8を有するロボット装置の制御方法において、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の中心点を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0037】
〔構成12〕
構成8を有するロボット装置の制御方法において、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、マニピュレータを監視することによりマニピュレータの動作状態を特定しマニピュレータの水平面への投影図形を設定し、これら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別することを特徴とするものである。
【0038】
近似図形としては、円、多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人の投影図形を、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似図形同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似図形は、複数の図形が組合わさったものであってもよい。
【0039】
〔構成13〕
構成8、構成9、構成10、または、構成12を有するロボット装置の制御方法において、マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、警戒領域、近似立体、または、近似図形を拡大することを特徴とするものである。
【0040】
〔構成14〕
構成8、構成9、構成10、または、構成12を有するロボット装置の制御方法において、侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及びマニピュレータの可動領域を包括する警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い一、または、二以上に多重化された危険領域を設定して多重化し、侵入物体領域とマニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、侵入物体領域とマニピュレータとの接近に応じて順次多段的に減速することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0041】
構成1を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、制御手段は、検知手段により、警戒領域内への侵入物体の侵入が検知された場合には、マニピュレータの動作を減速させ、マニピュレータの可動領域内への侵入物体の侵入が検知されるとともにマニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータの動作を停止させる。
【0042】
したがって、このロボット装置の制御装置においては、侵入物体がマニピュレータに接近して警戒領域内へ侵入しても、いきなりマニピュレータが停止することなく、まず、マニピュレータが減速される。このときに、侵入物体をマニピュレータから遠ざけることができれば、マニピュレータを停止させることがないので、ダウンタイムを最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。
【0043】
そして、侵入物体がマニピュレータの可動領域内に侵入するとともに、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときに、マニピュレータの動作が停止されるので、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。また、このときには、マニピュレータが減速されているので、マニピュレータの動作状態を正確に特定することが容易となる。
【0044】
構成2を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を確実に判別することができる。
【0045】
構成3を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0046】
構成4を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の中心点を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0047】
構成5を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、制御手段は、侵入検知手段による検知結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、侵入検知手段によりマニピュレータの動作状態を特定しマニピュレータの水平面への投影図形を設定しこれら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0048】
構成6を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、警戒領域、近似立体、または、近似図形を拡大するので、マニピュレータがワークを把持している場合においても、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができ、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。
【0049】
構成7を有する本発明に係るロボット装置の制御装置においては、侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及びマニピュレータの可動領域を包括する警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い危険領域を設定して多重化し、侵入物体領域とマニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、さらに減速して第2段階の減速を行うので、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避することができ、このとき、マニピュレータが減速されているので、マニピュレータの動作状態を正確に特定することが容易となる。
【0050】
構成8を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、マニピュレータの可動領域を包括し可動領域よりも広い領域であって侵入物体の侵入が可能である警戒領域に対する侵入物体の侵入を監視し、警戒領域内への侵入物体の侵入が検知された場合には、マニピュレータの動作を減速させ、マニピュレータの可動領域内への侵入物体の侵入が検知されるとともにマニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータの動作を停止させる。
【0051】
したがって、このロボット装置の制御方法においては、侵入物体がマニピュレータに接近して警戒領域内へ侵入しても、いきなりマニピュレータが停止することなく、まず、マニピュレータが減速される。このときに、侵入物体をマニピュレータから遠ざけることができれば、マニピュレータを停止させることがないので、ダウンタイムを最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。
【0052】
そして、侵入物体がマニピュレータの可動領域内に侵入するとともに、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったときに、マニピュレータの動作が停止されるので、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。また、このときには、マニピュレータが減速されているので、マニピュレータの動作状態を正確に特定することが容易となる。
【0053】
構成9を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を確実に判別することができる。
【0054】
構成10を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0055】
構成11を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の中心点を設定するとともに、マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいてマニピュレータの動作状態を特定しこのマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0056】
構成12を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、侵入物体の監視結果に基づいて侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、マニピュレータを監視することによりマニピュレータの動作状態を特定しマニピュレータの水平面への投影図形を設定し、これら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータと侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別するので、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができる。
【0057】
構成13を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、警戒領域、近似立体、または、近似図形を拡大するので、マニピュレータがワークを把持している場合においても、マニピュレータと侵入物体との接近を容易に判別することができ、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避し、安全を確保することができる。
【0058】
すなわち、本発明は、マニピュレータと人との干渉、接触が確実に防止され、安全が確保されつつ、装置のダウンタイムが減少され、稼働効率が低下しないようになされたロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法を提供することができるものである。
【0059】
構成14を有する本発明に係るロボット装置の制御方法においては、侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及びマニピュレータの可動領域を包括する警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い危険領域を設定して多重化し、侵入物体領域とマニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、さらに減速して第2段階の減速を行うので、マニピュレータの停止を必要最小限に抑えつつ、侵入物体とマニピュレータとの接触を回避することができ、このとき、マニピュレータが減速されているので、マニピュレータの動作状態を正確に特定することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るロボット装置の制御装置の構成を示す模式的な側面図である。
【図2】本発明に係るロボット装置の制御装置において実施される本発明に係るロボット装置の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】マニピュレータがワークを把持した状態における本発明に係るロボット装置の制御装置の構成を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明に係るロボット装置の制御装置の第2の実施の形態における構成を示す模式的な側面図である。
【図5】本発明に係るロボット装置の制御装置の第3の実施の形態における構成を示す模式的な側面図である。
【図6】侵入物体領域を多重化した第5の実施の形態を示す側面図である。
【図7】本発明に係るロボット装置の制御装置の第6の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【図8】本発明に係るロボット装置の制御装置の第6の実施の形態における他の構成を示す模式的な平面図である。
【図9】本発明に係るロボット装置の制御装置の第7の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【図10】本発明に係るロボット装置の制御装置の第8の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0062】
〔ロボット装置の制御装置の構成(第1の実施の形態)〕
図1は、本発明に係るロボット装置の制御装置の構成を示す模式的な側面図である。
【0063】
本発明に係るロボット装置の制御装置が制御するロボット装置は、加工、組立、ワークハンドリング、溶接、塗装等を行うものである。このロボット装置は、図1に示すように、ロボット基台部4と、このロボット基台部4上に設置されたマニピュレータ1とを有し、このマニピュレータ1により、作業対象(ワーク)の把持、運搬、加工及び他の部材への組立などの操作が可能となされている。また、このロボット装置においては、マニピュレータ1の可動領域内には、作業のために人が侵入することが前提とされている。
【0064】
マニピュレータ1は、複数のアクチュエータ(駆動装置)とリンク(剛体の構造物)とによって構成されている。すなわち、各リンク間は、回動(屈曲)、または、旋回可能な関節2a,2b,2c,2d,2e,2fを介して接続されており、それぞれアクチュエータによって相対駆動されるようになっている。各アクチュエータは、制御手段を構成するロボット制御装置3によって制御される。
【0065】
このマニピュレータ1において、第1のリンク(基端部のリンク)1aは、ロボット基台部4に対し、第1の関節2aを介して接続されて設置されている。第1の関節2aは、鉛直軸(z軸)回りに旋回可能な関節である。この第1のリンク1aの先端側には、第2の関節2bを介して、第2のリンク1bの基端側が接続されている。第2の関節2bは、水平な軸回りに第2のリンク1bを回動可能とする関節である。第2のリンク1bの先端側には、第3の関節2cを介して、第3のリンク1cの基端側が接続されている。第3の関節2cは、水平な軸回りに第3のリンク1cを回動可能とする関節である。
【0066】
そして、第3のリンク1cの先端側には、第4の関節2dを介して、第4のリンク1dの基端側が接続されている。第4の関節2dは、第3のリンク1cの軸回りに第4のリンク1dを回動可能とする関節である。第4のリンク1dの先端側には、第5の関節2eを介して、第5のリンク1eの基端側が接続されている。第5の関節2eは、水平な軸回りに第5のリンク1eを回動可能とする関節である。第5のリンク1eの先端側(手先)には、第6の関節2fを介して、作業対象を把持したり加工したりする先端ツール機構5が設けられている。この先端ツール機構5は、ロボット制御装置3によって制御される。
【0067】
ロボット制御装置3は、マニピュレータ1の動作状態、すなわち、マニピュレータ1の各アクチュエータの移動速度及び移動方向を制御し、また、マニピュレータ1の減速、一時停止、非常停止等の動作モードを制御する。また、ロボット制御装置3は、マニピュレータ1に対する制御情報、すなわち、各関節2a,2b,2c,2d,2eのアクチュエータに対する動作指令情報やツール機構5に対する動作指令情報に基づいて、各関節2a,2b,2c,2d,2eの角度やツール機構5の把持情報などを取得し、マニピュレータ1やツール機構5の動作状態を特定することができる。なお、マニピュレータ1は垂直多関節型に限らず、円筒座標型,極座標型,直交座標型,水平多関節型などさまざなまな形態が考えられる。
【0068】
また、ロボット装置を制御するロボット制御装置3の上位制御装置として、ロボット制御装置やツール機構に指令やシーケンスを与えるために統括制御装置としてPLCなどが用いられることも多く、これらを介して、マニピュレータ1やツール機構5の動作状態を取得することも可能である。
【0069】
そして、本発明に係るロボット装置の制御装置においては、マニピュレータ1の可動領域Aを包括し可動領域Aよりも広い領域であって侵入物体(例えば、作業者)101の侵入が可能である警戒領域Bが設定されている。
【0070】
このロボット装置の制御装置は、警戒領域Bに対する侵入物体101の侵入を監視する侵入検知手段となる3次元センサ6を備えている。この3次元センサ6としては、例えば、レーザレーダやステレオカメラ等を使用することができる。この3次元センサ6は、マニピュレータ1の上方に設置することが好ましい。この3次元センサ6は、警戒領域Bよりも広い計測領域C内の物体までの距離を測定することができ、この測定結果に基づいて、警戒領域B内の物体を3次元計測することができる。
【0071】
3次元センサ6による計測結果を示す計測データは、制御手段を構成する安全監視装置7に送られる。この安全監視装置は、3次元センサ6から送られた計測データと、ロボット制御装置3から送られるマニピュレータ1に対する制御情報(関節角情報や把持情報等)とに基づいて、侵入物体101とマニピュレータ1との間の距離を算出する。そして、安全監視装置は、侵入物体101とマニピュレータ1との間が所定の距離以下となっている場合には、ロボット制御装置3に対して、減速や非常停止を指示する動作指令を送る。ロボット制御装置3は、安全監視装置7から動作指令が送られると、この動作指令に従って、マニピュレータ1の動作を減速させたり、または、停止させる。
【0072】
〔ロボット装置の制御方法(第1の実施の形態)〕
本発明に係るロボット装置の制御方法は、本発明に係るロボット装置の制御装置を動作させることによって実施される。このロボット装置の制御方法は、ロボット装置の通常の運転中だけではなく、調整、試験、メンテナンス、教示、検査等を含む種々の作業中にも実施することができる。
【0073】
ロボット装置の制御装置において、安全監視装置7及びロボット制御装置3は、3次元センサ6により、警戒領域B内への侵入物体101の侵入が検知された場合には、マニピュレータ1の動作を減速させ、マニピュレータ1の可動領域A内への侵入物体101の侵入が検知されるとともに、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったときには、マニピュレータ1の動作を停止させる。
【0074】
図2は、本発明に係るロボット装置の制御装置において実施される本発明に係るロボット装置の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【0075】
すなわち、このロボット装置の制御装置において、安全監視装置7及びロボット制御装置3は、図2に示すように、所定の処理を、サイクル毎、もしくは、逐次処理にて実行する。なお、この処理の開始時には、警戒領域B及び可動領域A内には、図1に示すように、周辺機器等の固定物体102の他には、侵入物体101が侵入していないものとする。
【0076】
図2のステップst1において、処理をスタートすると、ステップst2に進み、3次元センサ6からの計測データから、計測領域C内における固定物体102及びマニピュレータ1のデータを削除する。ここで、3次元センサ6とマニピュレータ1との位置関係が予めキャリブレーションされているものとし、安全監視装置7は、3次元センサ6からの計測データと同期したタイミング(同時刻)で、ロボット制御装置3から、マニピュレータ1の関節角情報などの制御情報を取得する。なお、これら計測データと制御情報とは、実際に同時刻に取得されなくとも、それぞれにタイムスタンプ情報が付加されていれば、このタイムスタンプ情報により、同期したデータとして処理することができる。また、それぞれが同期しないタイミングでデータを取得する場合には、最大となる同期ズレ時間分で考えられる互いの移動量を考慮して、後に設定する安全距離などに反映することが考えられる。
【0077】
次に、ステップst3に進み、計測領域C内における侵入物体101の有無を判別する。侵入物体101が検出された場合には、ステップst4に進み、侵入物体101が検出されない場合には、ステップst2に戻る。
【0078】
ここで、マニピュレータ1は動作するため、マニピュレータ1と侵入物体101とは、計測データにおいては同様の動体となってしまうため、これらを判別する必要がある。そこで、マニピュレータ1の構造は予め分かっているので、関節などの配置を考慮して、マニピュレータ1を複数の球などの第2の近似立体で包絡した領域(以下、「マニピュレータ領域」という。)を設定する。この領域の情報に関節角度などの制御情報を与えることにより、計測データ取得時におけるマニピュレータ領域を求めることができる。計測データとマニピュレータ1の制御情報とは同期したデータとして処理できるため、計測データとマニピュレータ領域とを付き合わせて処理をすることにより、計測データから、マニピュレータ1の動作を分離し削除することができる。
【0079】
同様に、事前に取得、または、設定された計測領域C内に存在する固定物体102の包絡領域データを利用し、もしくは、前回の計測から変化がない部分を固定物体102とみなして、これを計測データから削除することにより、計測データから、固定物体102を分離し削除することができる。
【0080】
このようにして、計測領域C内に存在する侵入物体101を抽出することができる。このとき、例えば、ロボット制御装置3から得られたデータに異常があり、現実のマニピュレータ1の動作と合致しない場合には、データの付き合せにより、マニピュレータ1の動作を分離することができないので、マニピュレータ1の近傍の領域内に、侵入物物体101が突然現れたように判別されることになる。このような場合には、ロボット制御装置3からのデータが異常であると判別して、マニピュレータ1を非常停止させるようにしてもよい。
【0081】
ステップst4では、侵入物体101が警戒領域B内に侵入しているかを判別し、警戒領域B内に侵入していればステップst5に進み、警戒領域B内に侵入していなければステップst2に戻る。
【0082】
計測領域C内には、前述したように、警戒領域Bが設定されている。警戒領域Bは、マニピュレータ1の可動領域Aを包括し可動領域Aよりも広い領域であり、侵入物体101の侵入が可能な領域である。なお、可動領域A内であっても、侵入物体101の侵入があり得ない領域は、警戒領域Bに含める必要はなく、計測領域Cに含める必要もない。図1においては、警戒領域Bは、3次元センサ6から放射状に設定されており、可動領域Aより大きく包絡される床付近の部分をカットしている。
【0083】
ステップst5では、安全監視装置7は、抽出された侵入物体101のデータから、侵入物体101を含む領域(以下、「侵入物体領域」という。)を設定する。すなわち、侵入物体101から安全距離を隔てた位置までの領域を、球、円筒、立方体を含む正多面体等の第1の近似立体で包絡して、侵入物体領域を設定する。または、侵入物体101を人と想定し、侵入物体101の中央と考えられる位置から、人が手足を伸ばした場合に届く範囲に安全距離分を加えた領域を近似立体で包絡して、侵入物体領域を設定する。なお、具体的な侵入物体領域の設定としては、侵入物体101のデータのうち、最上点(頂点)から床面まで垂線を降ろし、この垂線の中点を侵入物体101の中心とし、この中心から人が飛び出さないであろう半径を設定した球を設定することなどが考えられる。
【0084】
これら近似立体としては、球、円筒、多面体等、どのような形状であってもよいが、侵入物体として想定される人と、マニピュレータとを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似立体同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。なお、近似立体は、複数の立体が組合わさったものであってもよい。
【0085】
次のステップst6では、前述したように、マニピュレータ領域を設定し、ステップst7に進む。
【0086】
ステップst7では、マニピュレータ領域と侵入物体領域との干渉の有無を判別する。各領域の干渉がある場合には、ステップst9に進み、各領域の干渉がない場合には、ステップst8に進む。
【0087】
ステップst8では、安全監視装置7は、マニピュレータ1の動作速度を安全な速度に落とすような減速指令をロボット制御装置3に送り、マニピュレータ1を減速させ、ステップst2に戻る。このとき、マニピュレータ1は停止せず、マニピュレータ1による作業も停止しない。安全な速度とは、例えば、ISO10218−1に規定されているように、産業用ロボットと人とが共存可能な速度の上限である250mm/sec以内の速度で、事前のリスクアセスメントなどによって決定される。
【0088】
そして、ステップst9では、安全監視装置7は、ロボット制御装置3に対して、非常停止指令を送り、マニピュレータ1を非常停止させ、ステップst10に進んで処理を終了する。
【0089】
このようなロボット装置の制御方法において、最大サイクル時間、マニピュレータの移動最大速度や、警戒領域B、マニピュレータ領域及び侵入物体領域等の各領域間の余裕等は、侵入物体101とマニピュレータ1との接触状況を十分に想定、勘案して、決定される。例えば、マニピュレータ1の移動速度を早く設定したい場合には、サイクル時間を短くし、各領域間の余裕を大きくとることが望ましい。また、非常停止指令が発信されてから、実際にマニピュレータ1が停止するまでの移動距離(安全距離)等も考慮するとよい。
【0090】
図3は、マニピュレータがワークを把持した状態における本発明に係るロボット装置の制御装置の構成を示す模式的な側面図である。
【0091】
図3に示すように、マニピュレータ1がワーク103を把持した場合には、ワーク103が大きいと、ワーク103を把持したマニピュレータ1の可動領域A´は、把持していないマニピュレータ1のみの可動領域Aに比べて、大きくなる。この場合、安全監視装置7は、ロボット制御装置3から、マニピュレータ1がワーク103を把持しているか否かの情報を取得し、この情報により、警戒領域Bを拡大して新たな警戒領域B´とし、マニピュレータ領域も拡大することにより、マニピュレータ1及びワーク103と侵入物体101との接触を防止し、ダウンタイムを低減させることができる。
【0092】
このように、本発明に係るロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法においては、マニピュレータ1の可動領域Aの内部への侵入物体101の侵入を常時監視しているので、従来のような入退扉の開閉により制御するロボット装置に比較して、フールプルーフな対策となっており、さらに、マニピュレータ1と侵入物体101との位置関係から、これらの接触、干渉の虞があるときには、マニピュレータ1を安全速度に減速し、さらに、必要な場合のみに非常停止させる。
【0093】
本発明においては、侵入物体101のマニピュレータ1に対する接近により、いきなり非常停止するのではなく、まず、マニピュレータ1の減速がなされ、このときには、作業そのものは続行される。そのため、作業者(侵入物体101)がマニピュレータ1との接触を避けるための時間が確保できるとともに、接触を避ければ非常停止を回避することができるので、装置のダウンタイムを削減することができる。
【0094】
すなわち、本発明においては、ロボット制御装置3からマニピュレータ1に対する制御情報を取得し、または、3次元センサ6による計測結果から、マニピュレータ1の位置、挙動と侵入物体101の位置、挙動を分離して判別し、これらの接触可能性を監視するため、例えば、マニピュレータ1と作業者との間に十分な安全距離があるような場合に、うっかり可動領域Aに踏み込むケースや、ワークの位置ずれなどを直す等の短時間の作業のかめに可動領域Aに侵入するなどしても、非常停止にならず、マニピュレータ1は稼動を続けるので、ダウンタイムの発生を極力少なくすることができる。また、このような状況で、作業者の思い違いや、作業時間の見込み違い、作業者のロボット装置に対する理解不足などにより、マニピュレータ1との接触の危険性が発生しても、マニピュレータ1は、作業者と接触する前に非常停止する。
【0095】
このように、本発明においては、マニピュレータ1の可動領域Aに侵入物体101が侵入したという理由だけでは非常停止しないので、非常停止によるダウンタイムなど、稼働効率の低下要因を極力排除し、ロボット装置を高効率に運用することができる。
【0096】
また、マニピュレータ1が減速されたときには、マニピュレータ1の動作と侵入物体101の分離処理などの情報処理が容易となり、その後に行われるマニピュレータ1の可動領域A内における侵入物体101の認識処理も容易となる。例えば、3次元センサ6としてレーザレンジファインダなどを利用した場合には、走査して計測をおこなうため、計測対象が高速で動く場合には、移動を伴うデータとして記録される。そのため、計測対象が高速移動すると、侵入物体101の位置を正確に同定し、マニピュレータ1と侵入物体101とを精密に分離する処理が困難になる。マニピュレータ1が減速されることにより、侵入物体101の位置を正確に同定できるようになり、マニピュレータ1と侵入物体101とを精密に分離する処理が可能となる。
【0097】
さらに、本発明においては、マニピュレータ1が物品を弾き飛ばしたりするような作業を行う場合でなければ、マニピュレータ1の周囲に安全柵を設置しなくとも、十分に安全性を確保することができる。安全柵を設置せずに済めば、敷地の有効活用ができ、ロボット装置を使用するうえでの制約条件が低減され、コスト低減も期待できる。
【0098】
〔第2の実施の形態〕
図4は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第2の実施の形態における構成を示す模式的な側面図である。
【0099】
前述の実施の形態においては、侵入検知手段として、1台の3次元センサ6を使用しているが、図4中の(a)に示すように、周辺装置などの固定物体102の位置によっては、3次元センサ6に死角が生ずる場合もある。このような死角をなくし、また、計測領域Cをより広範囲とするため、図4中の(b)に示すように、複数の3次元センサ6を統合して使用するようにしてもよい。
【0100】
すなわち、このロボット装置の制御装置においては、侵入検知手段として、2台の3次元センサ6a,6bを使用している。この制御装置においては、第1及び第2の3次元センサ6a,6bのそれぞれについて、計測領域C1,C2が設定されており、これら各計測領域C1,C2のいずれかに侵入した侵入物体101が計測される。また、各計測領域C1,C2について、それぞれ警戒領域B1,B2が設定される。これら各警戒領域B1,B2のいずれかに属する領域が、警戒領域Bとなる。
【0101】
このロボット装置の制御装置においては、3次元センサ6が1台の場合には固定物体102の死角に入ってしまっていた侵入物体101bが、一方の3次元センサ6bによっては計測されており、警戒領域Bに接近していることが検知される。
【0102】
〔第3の実施の形態〕
図5は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第3の実施の形態における構成を示す模式的な側面図である。
【0103】
前述の実施の形態においては、マニピュレータ1を1台有するロボット装置を制御対象としているが、図5に示すように、複数のマニピュレータ1,1を有するロボット装置、または、複数のロボット装置を制御対象としてもよい。
【0104】
すなわち、ロボット装置は、同一のセル(同一領域)において、複数台が同時に稼働する場合がある。このような場合には、安全監視装置7が複数台のロボット制御装置3,3、もしくは、これらを統括管理する制御装置からデータを取得して、前述の実施の形態と同様にして、複数のマニピュレータ1,1に対する減速指令や非常停止指令を発するようにしてもよい。
【0105】
また、可動領域A内に存在する周辺装置などに、人に危害を与え得るような可動部が設けられている場合には、これを第2、第3のロボットと考えて、ロボット装置と同様の制御を行うことができる。この場合には、安全監視装置7は、その周辺装置の制御装置、または、複数の制御装置を統括管理する制御装置からデータを取得して、前述の実施の形態と同様にして、マニピュレータ1及び周辺装置に対する減速指令や非常停止指令を発する。
【0106】
さらに、ロボット装置が同一のセル内に存在しない他の機器と連動して動作する場合には、安全監視装置7は、それら他の機器に対しても、減速指令や非常停止指令を発するようにするとよい。この場合には、ロボット装置と他の機器との連動した作業を円滑に継続させることができる。
【0107】
同様に、溶接や塗装などの自動作業を行う工程では、ロボットの動作のみが減速され一時停止されると、溶接や塗装などの品質に対して致命的なダメージを与えることが考えられるため、溶接装置の制御装置や塗装ガンの制御装置などに対しても、速度調整、一時停止指令を行うように構成することが好ましい。この場合には、安全監視装置7は、溶接装置の制御装置や塗装ガンの制御装置、または、これら制御装置を統括管理する制御装置からデータを取得して、前述の実施の形態と同様にして、マニピュレータ1及び溶接装置、または、塗装ガンに対する減速指令や非常停止指令を発する。
【0108】
なお、実際の運用を考えると、本発明において使用される3次元センサ6や安全監視装置7には、必要な安全対策、例えば、2重化や自己診断などの措置が取られていることが必要である。また、マニピュレータ1についても、減速や非常停止に関する部分については、同様の対策がなされていることが望ましい。例えば、ロボット装置の内部位置センサ周辺部や、減速及び非常停止指令の受付部などである。また、安全監視装置7及び3次元センサ6は、電源が切れている場合等、正常に起動していない状態においては、フェールセーフのため、ロボット制御装置3に対して、非常停止指令を出し続けている状態とする必要がある。
【0109】
〔第4の実施の形態〕
前述の実施の形態においては、侵入検知手段となる3次元センサ6して、レーザレーダ(レーザレンジファインダ)を例示しているが、3次元センサ6としては、ステレオカメラ等を用いることもできる。
【0110】
また、警戒領域Bを精密に設定するには、3次元センサは有効であるが、侵入物体領域とマニピュレータ領域との干渉を監視することについては、他のセンサの使用も考えられる。例えば、2次元センサの組み合わせにより3次元情報を取得する構成や、2次元センサと既知の情報との組み合わせにより、3次元情報として扱う手法などが考えられる。侵入物体101を作業者であると想定した場合には、通常のカメラを用いて作業者の頭部を画像処理により認識し、この情報に既知の人体のサイズを組み合わせることにより、侵入物体101(作業者)の中心位置を特定することができる。
【0111】
さらに、侵入検知手段となるセンサとしては、赤外線飛行時間計測方式の3次元距離測定装置や、マイクロ波センサ、超音波センサなどを使用することができる。また、複数台のカメラを作業環境の周囲に配置することによる立体映像取得方法(視体積交差法)も使用することができる。さらに、これら種々のセンサ及び手法を組み合わせて使用することもできる。
【0112】
〔第5の実施の形態〕
図6は、侵入物体領域を多重化した第5の実施の形態を示す側面図である。
【0113】
また、本発明においては、図6に示すように、侵入物体101を包括する侵入物体領域を、警戒領域と一、または、二以上に多重化された危険領域とに多重化してもよい。同様に、マニピュレータ領域についても、多重化してもよい。この場合には、侵入物体101とマニピュレータ1との接近状況を多段的に認識することができ、これらの接近に応じて、マニピュレータ1の速度を順次多段的にに減速させることができる。すなわち、侵入物体領域とマニピュレータ領域との警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の領域の危険領域と他方の領域の警戒領域とが重なった場合には、さらに減速して第2段階の減速を行い、各領域の危険領域同士が重なった場合以降は、第3段階以降の原則を順次行い、最後は非常停止を行うなどの制御が可能となる。この場合には、適宜の設定を行うことにより、ダウンタイムの発生を最小限とすることができる。
【0114】
〔第6の実施の形態〕
図7は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第6の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【0115】
本発明に係るロボット装置の制御装置においては、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったときに、マニピュレータ1と侵入物体101との位置関係の判定は、図7中の(b)に示すように、マニピュレータ1及び侵入物体101の水平面への投影図形を包絡する近似図形を設定することによって行ってもよい。
【0116】
この場合、安全監視装置7は、侵入検知手段による検知結果に基づいて、侵入物体101の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、マニピュレータ1の構造及びマニピュレータ1に対する制御情報に基づいて、マニピュレータ1の動作状態を特定し、このマニピュレータ1の水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定する。そして、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったことを判別する。ここで、侵入検知手段は、図7中の(a)に示すように、3次元センサであってもよいし、2次元センサであってもよい。
【0117】
すなわち、安全監視装置7は、まず、侵入物体101と判断される領域を水平面(床面)に投影した形状を特定し、この形状の中央の点(図心等)を代表点をし、この代表点を中心として、侵入物体101と判断される領域の投影図形を包絡する領域として、例えば、人のリーチが届く範囲に安全距離分などを加えた領域を第1の近似図形を設定し、侵入物体領域とする。この第1の近似図形は、例えば、円や長方形等とするとよい。
【0118】
次に、安全監視装置7は、マニピュレータ1の構造及び関節などの配置に基づいて予め設定された代表点と、ロボット制御装置3より取得した制御情報とから、空間に位置付けられる各代表点を水平面(床面)に投影した点を中心として、マニピュレータ1と判断される領域の投影図形を包絡する領域として、第2の近似図形を設定し、マニピュレータ領域とする。この第2の近似図形は、例えば、複数の円からなるものとするとよい。
【0119】
そして、安全監視装置7は、データ取得時において、これらマニピュレータ領域及び侵入物体領域の干渉の有無を判別し、干渉があった場合には、ロボット制御装置3に対して、非常停止指令を発信し、マニピュレータ1を非常停止させる。
【0120】
なお、近似図形としては、円、正方形を含む多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体101として想定される人の投影図形と、マニピュレータ1の投影図形とを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似立体同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することが好ましい。マニピュレータ1の投影図形を包絡する第2の近似図形は、複数の図形が組合わさったものであってもよい。近似図形を円とすると、中心から等距離の点の集合であるという円の性質から、干渉の有無の判別を容易に行うことができる。
【0121】
図8は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第6の実施の形態における他の構成を示す模式的な平面図である。
【0122】
このロボット装置の制御装置おいて、侵入検知手段を2次元センサとする場合には、図8中の(a)及び(b)に示すように、2次元センサ6cは、マニピュレータ1の上方に設置する必要はなく、ロボット基台部4の周囲部に設置し、このロボット基台部4の周囲における物体の有無を検出するセンサとしてもよい。これら2次元センサ6cにより、図8中の(c)に示すように、侵入物体101の下部、すなわち、侵入物体101が人であれば、足首部分が検知される。このようにして侵入物体101の下部が検知された場合には、安全監視装置7は、これを人であると想定して、検知された位置を中心として、予め設定した高さ(例えば、人の平均身長)の侵入物体101が存在するものと判別する。侵入物体101の存在が判別されれば、この侵入物体101に基づいて、近似立体や近似図形を設定することにより、前述の実施の形態と同様にして、この侵入物体101とマニピュレータ1との接近、干渉を判別することができる。
【0123】
〔第7の実施の形態〕
図9は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第7の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【0124】
本発明に係るロボット装置の制御装置においては、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったとき、マニピュレータ1と侵入物体101との位置関係の判定は、図9中の(a)及び(b)に示すように、3次元センサ6による検知結果に基づいて侵入物体101の中心点を設定し、マニピュレータ1の構造及びマニピュレータ1に対する制御情報に基づいてマニピュレータ1の動作状態を特定し、このマニピュレータ1の複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより行ってもよい。
【0125】
すなわち、安全監視装置7は、まず、侵入物体101と判断される領域の中心点を設定する。中心点の設定は、侵入物体101を人と想定した場合には、侵入物体101の最頂点、すなわち、人の頭部中央から床面に垂線を降ろし、この垂線の中点を中心点と設定することができる。
【0126】
次に、安全監視装置7は、マニピュレータ1の構造及び関節などの配置に基づいて予め設定された代表点と、ロボット制御装置3より取得した制御情報とから、空間に位置付けられる各代表点を設定する。
【0127】
そして、安全監視装置7は、データ取得時において、これら侵入物体101の中心点及びマニピュレータ1の各代表点の間の距離を判別し、この距離が所定の距離、例えば、安全距離以下となった場合には、ロボット制御装置3に対して、非常停止指令を発信し、マニピュレータ1を非常停止させる。ここで、安全距離は、マニピュレータ1の移動速度をパラメータとする変数として設定してもよい。例えば、マニピュレータ1の移動速度が速い場合には、安全距離を長くし、マニピュレータ1の移動速度が遅い場合には、安全距離を短くするように設定することにより、装置のダウンタイムの発生及び作業効率の低下を防止することができる。
【0128】
なお、侵入物体101の中心点及びマニピュレータ1の各代表点の間の距離の判別は、これら中心点及び各代表点を水平面(床面)に投影した投影点を設定し、これら各投影点の水平面上における距離を判別するようにしてもよい。
【0129】
また、侵入物体101の中心点及びマニピュレータ1の各代表点の間の距離の判別においては、マニピュレータ1の各代表点について、先端側ほど高い重み付けを設定し、先端部の影響を高めたうえで、判別するようにしてもよい。これは、マニピュレータ1は、形態にもよるが、一般的に先端ほど高速、かつ、予想し得ない多方向に動き、人との接触は、マニピュレータ1の先端部分において発生しやすいからである。
【0130】
〔第8の実施の形態〕
図10は、本発明に係るロボット装置の制御装置の第8の実施の形態における構成を示す模式的な側面図及び平面図である。
【0131】
本発明に係るロボット装置の制御装置においては、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったときに、マニピュレータ1と侵入物体101との位置関係を判定する方法としては、図10中の(b)に示すように、侵入物体101の水平面への投影図形を包絡する近似図形と、マニピュレータ1の水平面への投影図形を設定することによって行ってもよい。
【0132】
この場合、安全監視装置7は、侵入検知手段による検知結果に基づいて、侵入物体101の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定する。また、安全監視装置7は、侵入検知手段による検知結果に基づいて、マニピュレータ1の水平面への投影図形を設定する。そして、これら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、マニピュレータ1と侵入物体101との距離が所定の距離以下となったことを判別する。ここで、侵入検知手段は、図10中の(a)に示すように、3次元センサであってもよいし、2次元センサであってもよい。
【0133】
すなわち、安全監視装置7は、まず、侵入物体101と判断される領域を水平面(床面)に投影した形状を特定し、この形状の中央の点(図心等)を代表点とし、この代表点を中心として、侵入物体101と判断される領域の投影図形を包絡する領域として、例えば、人のリーチが届く範囲に安全距離分などを加えた領域を近似図形を設定し、侵入物体領域とする。
【0134】
この近似図形としては、円、正方形を含む多角形等、どのような形状であってもよいが、侵入物体101として想定される人の投影図形と、マニピュレータ1の投影図形とを、無駄なく包絡できる形状で、かつ、近似立体同士が干渉したときに、実際の物体同士の間に、例えば、ISO13855に規定されているような十分な安全距離が確保されるような大きさを有することがが好ましい。マニピュレータ1の投影図形を包絡する第2の近似図形は、複数の図形組合わさったものであってもよい。近似図形を円とすると、中心から等距離の点の集合であるという円の性質から、干渉の有無の判別を容易に行うことができる。
【0135】
次に、安全監視装置7は、侵入検知手段によりマニピュレータ1と判断される領域を水平面(床面)に投影した投影図形を設定する。
【0136】
そして、安全監視装置7は、データ取得時において、これら侵入物体領域及びマニピュレータ1の投影図形の干渉の有無を判別し、干渉があった場合には、ロボット制御装置3に対して、非常停止指令を発信し、マニピュレータ1を非常停止させる。
【0137】
この場合には、安全監視装置7は、ロボット制御装置3から、マニピュレータ1に対する制御情報を取得する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、ロボット装置の制御装置及びロボット装置の制御方法に適用され、ロボット装置のマニピュレータの可動領域に人などが侵入した場合の保安、安全の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 マニピュレータ
3 ロボット制御装置
4 ロボット基台部
5 先端ツール機構
6 3次元センサ
7 安全監視装置
101 侵入物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータを備えたロボット装置の動作を制御するためのロボット装置の制御装置であって、
前記マニピュレータの可動領域を包括し該可動領域よりも広い領域であって、侵入物体の侵入が可能である警戒領域に対する前記侵入物体の侵入を監視する侵入検知手段と、
前記マニピュレータの動作状態を特定するとともに、該マニピュレータの動作を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記検知手段により、前記警戒領域内への前記侵入物体の侵入が検知された場合には、前記マニピュレータの動作を減速させ、前記マニピュレータの可動領域内への前記侵入物体の侵入が検知されるとともに、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、前記マニピュレータの動作を停止させる
ことを特徴とするロボット装置の制御装置。
【請求項2】
前記侵入検知手段は、3次元認識センサであって、
前記制御手段は、前記侵入検知手段による検知結果に基づいて前記侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項1記載のロボット装置の制御装置。
【請求項3】
前記侵入検知手段は、2次元認識センサ、または、3次元認識センサであって、
前記制御手段は、前記侵入検知手段による検知結果に基づいて前記侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項1記載のロボット装置の制御装置。
【請求項4】
前記侵入検知手段は、3次元認識センサであって、
前記制御手段は、前記侵入検知手段による検知結果に基づいて前記侵入物体の中心点を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項1記載のロボット装置の制御装置。
【請求項5】
前記侵入検知手段は、2次元認識センサ、または、3次元認識センサであって、
前記制御手段は、前記侵入検知手段による検知結果に基づいて前記侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において前記中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、前記侵入検知手段により前記マニピュレータの動作状態を特定し前記マニピュレータの水平面への投影図形を設定し、これら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項1記載のロボット装置の制御装置。
【請求項6】
前記マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、前記警戒領域、前記近似立体、または、前記近似図形を拡大する
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、または、請求項5記載のロボット装置の制御装置。
【請求項7】
前記侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及び前記マニピュレータの可動領域を包括する前記警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い一、または、二以上に多重化された危険領域を設定して多重化し、
前記侵入物体領域と前記マニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、前記侵入物体領域と前記マニピュレータとの接近に応じて順次多段的に減速する
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、または、請求項5記載のロボット装置の制御装置。
【請求項8】
マニピュレータを備えたロボット装置の動作を制御するためのロボット装置の制御方法であって、
前記マニピュレータの可動領域を包括し該可動領域よりも広い領域であって、侵入物体の侵入が可能である警戒領域に対する前記侵入物体の侵入を監視し、
前記警戒領域内への前記侵入物体の侵入が検知された場合には、前記マニピュレータの動作を減速させ、前記マニピュレータの可動領域内への前記侵入物体の侵入が検知されるとともに、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったときには、前記マニピュレータの動作を停止させる
ことを特徴とするロボット装置の制御方法。
【請求項9】
前記侵入物体の監視結果に基づいて、前記侵入物体を包絡する第1の近似立体を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータを包絡する第2の近似立体を設定し、これら第1及び第2の近似立体同士の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項8記載のロボット装置の制御方法。
【請求項10】
前記侵入物体の監視結果に基づいて、前記侵入物体の水平面への投影図形を包絡する第1の近似図形を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータの水平面への投影図形を包絡する第2の近似図形を設定し、これら第1及び第2の近似図形同士の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項8記載のロボット装置の制御方法。
【請求項11】
前記侵入物体の監視結果に基づいて、前記侵入物体の中心点を設定するとともに、前記マニピュレータの構造及び該マニピュレータに対する制御情報に基づいて前記マニピュレータの動作状態を特定し、このマニピュレータの複数の代表点を設定し、これら中心点及び各代表点間の距離を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項8記載のロボット装置の制御方法。
【請求項12】
前記侵入物体の監視結果に基づいて、前記侵入物体の水平面への投影図形の中心点及び水平面上において前記中心点から一定の距離の点を包絡した近似図形を設定するとともに、前記マニピュレータを監視することにより前記マニピュレータの動作状態を特定し前記マニピュレータの水平面への投影図形を設定し、これら近似図形及び投影図形の干渉の有無を判定することにより、前記マニピュレータと前記侵入物体との距離が所定の距離以下となったことを判別する
ことを特徴とする請求項8記載のロボット装置の制御方法。
【請求項13】
前記マニピュレータがワークを把持している場合には、把持されているワークの大きさに応じて、前記警戒領域、前記近似立体、または、前記近似図形を拡大する
ことを特徴とする請求項8、請求項9、請求項10、または、請求項12記載のロボット装置の制御方法。
【請求項14】
前記侵入物体を包括する警戒領域を設定し、この警戒領域及び前記マニピュレータの可動領域を包括する前記警戒領域の少なくとも一方について、これら警戒領域よりも狭い一、または、二以上に多重化された危険領域を設定して多重化し、
前記侵入物体領域と前記マニピュレータとの警戒領域同士が重なった場合には、第1段階の減速を行い、一方の危険領域と他方の警戒領域とが重なった場合には、前記侵入物体領域と前記マニピュレータとの接近に応じて順次多段的に減速する
ことを特徴とする請求項8、請求項9、請求項10、または、請求項12記載のロボット装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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