説明

ロボット

【課題】手先の回転角度を変更する機構の構成を小型化する。
【解決手段】本発明のロボットは、回転する手先6を上下左右に移動できるものにおいて、手先6の回転と連動して回転するピニオンギア14を備え、ピニオンギア14に押し付けられてピニオンギア14を制動するブレーキディスク15を備え、設備の1つとしてラック18を備え、ラック18の一辺部に設けられたブレード17を備え、そして、ブレード17のうちのラック18の歯が形成されている方向と直交する方向の長さは、ピニオンギア14の歯の先端がラック18の歯の先端に重なり始めた位置にてブレーキディスク15をピニオンギア14から離す方向に移動させ始め、ピニオンギア14の歯とラック18の歯が可能な限り最大の状態で深く重なったときに完全にブレーキディスク15をピニオンギア14から離すような長さとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する手先例えばワークを把持するクランプを上下左右に移動させることが可能なように構成されたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持するクランプ(手先)をロボットのアームの先端部に設けるに際して、ワークの姿勢を変更するために、クランプを回転させると共に、旋回させる必要がある。このため、アームの先端部とクランプとの間に、クランプを回転・旋回させるための姿勢変更機構を配設する必要がある。このような姿勢変更機構の一例として、特許文献1に記載された装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−57648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の装置においては、姿勢変更機構はクランパを回転させる機構とクランパを旋回させる機構とを備える構成となるので、姿勢変更機構の構成が大型化してしまう。しかも、特許文献1に記載の装置では、姿勢変更機構の各機構の駆動源としてエアを用いているので、エア配管を姿勢変更機構に接続しなければならず、姿勢変更機構の構成がかなり大型化するという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、手先の姿勢を変更する機構の構成を小型化することができるロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、手先の回転と連動して回転するように設けられ、前記手先の回転軸と同じ方向で平行な位置関係にある軸を有するピニオンギアと、前記ピニオンギアに対して前記ピニオンギアの軸方向に押し付けられて前記ピニオンギアを制動するものであって、円板状に形成され、中心部分が前記ピニオンギアに接触し、周縁部が前記ピニオンギアに接触しない構成を有し、前記周縁部は中心から遠い部分ほど前記ピニオンギアから離れるように構成されたブレーキディスクと、設備の1つとして設けられ、前記ピニオンギアと噛み合うラックと、前記ラックの一辺部に設けられ、前記ラックの歯が形成されている区間部分と重なるような長さを有するブレードとを備え、前記ブレードのうちの前記ラックの歯が形成されている方向と直交する方向の長さは、前記ピニオンギアの歯の先端がラックの歯の先端に重なり始めた位置にて前記ブレーキディスクを前記ピニオンギアから離す方向に移動させ始めるように、前記ブレーキディスクと前記ピニオンギアとの間に差し込まれると共に、前記ピニオンギアの歯と前記ラックの歯が可能な限り最大の状態で深く深く重なったときに完全に前記ブレーキディスクを前記ピニオンギアから離すような長さになるように構成され、そして、前記手先の回転角度を変更する際には、前記ピニオンギアを前記ラックの歯が形成されている方向と直交する方向に移動させて前記ラックに接近させ、この後、前記ピニオンギアを前記ラックの任意の歯の位置に前記直交する方向から挿入して前記ピニオンギアの歯が前記ラックの歯に完全に噛み合うようにした状態で、現在の前記ピニオンギアの回転位置から希望する前記ピニオンギアの回転位置までの回転量を、前記ラックの歯が形成されている方向の直線移動に変換した直線移動量だけ、前記手先を前記ラックの歯が形成されている方向に移動させ、この移動が完了したら、前記ピニオンギアを前記直交する方向に移動させて前記ラックから離脱させるように制御したので、前記手先を回転駆動する駆動源を姿勢変更するための機構に内蔵しなくても済むから、手先姿勢変更のための機構の構成を小型化することができる。しかも、上記構成の場合、前記手先の回転角度を変更開始するときには、即ち、前記ピニオンギアの歯の先端が前記ラックの歯の先端に重なり始めた位置にて前記ブレーキディスクを前記ピニオンギアから離す方向に移動させ始めるように、前記ブレードが前記ブレーキディスクと前記ピニオンギアとの間に差し込まれるだけであるから、前記ブレーキディスクが前記ピニオンギアを制動したままであるので、前記手先の回転角度変更開始時に現在の手先の回転角度を保持することができる。そして、前記手先の回転角度の変更を終了したときには、前記ピニオンギアの歯と前記ラックの歯が完全に噛み合っているから、前記ピニオンギア、即ち、前記手先の回転角度を維持できる。この後、前記ピニオンギアを前記直交する方向に移動させて前記ラックから離脱させたときには、前記ブレードも前記ブレーキディスクと前記ピニオンギアとの間から退避されるから、前記ブレーキディスクが前記ピニオンギアを制動する状態となるので、前記ピニオンギア、即ち、前記手先の回転角度を維持できる。従って、前記手先の回転角度を正確に変更制御することができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、前記ピニオンギアを前記直交する方向に移動させて前記ラック離脱させるときに、前記ラックの歯の傾斜面の傾斜角度に沿う方向に前記ピニオンギアを平行移動させるように制御したので、前記ピニオンギアの歯の斜面部が前記ラックの歯の傾斜面に常時接触しながら、前記ラックと前記ピニオンギアの噛み合いの解除することができる。このため、前記ピニオンギアの回転角度を正確に保持しながら、即ち、ピニオンギアがガタツクことなく、前記ラックと前記ピニオンギアの噛み合いを解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態を示す姿勢変更機構の斜視図
【図2】(a)は姿勢変更機構の制動状態の上面図、(b)は姿勢変更機構の制動解除状態の上面図
【図3】ピニオンギアおよびラックの噛み合いとブレーキディスクの動作との関係を説明する図
【図4】ピニオンギアおよびラックの噛み合い状態から解除状態へ移行するときの動作を説明する図
【図5】スカラ型ロボットの側面図
【図6】本発明の第2実施形態を示すXRロボットの斜視図
【図7】本発明の第3実施形態を示すXYC型ロボットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を例えばスカラ型ロボット(水平4軸ロボット)に適用した第1実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。まず、図5は、スカラ型ロボットの本体1の外観構成を示す側面図である。スカラ型ロボットの本体1は、設置面に固定されるベース2と、このベース2の上部に垂直軸J1を中心に旋回可能に連結された第1アーム3と、この第1アーム3の先端部に垂直軸J2を中心に旋回可能に連結された第2アーム4と、第2アーム4の先端部に上下動可能で且つ回転可能に設けられた直動軸5とから構成されている。
【0010】
上記直動軸5の下端部には、図1に示すように、ワーク(図示しない)を把持するクランプ(手先)6の姿勢を変更する姿勢変更機構7が着脱可能に取付けられる構成となっている。この姿勢変更機構7は、直動軸5の下端部に着脱可能に取り付けられた機構本体部8と、機構本体部8に軸9を中心に旋回可能に設けられたアーム部10と、アーム部10の先端部に回転可能に設けられたクランプ6とから構成されている。
【0011】
機構本体部8は、フレーム11と、このフレーム11の図1中の左側面に配設されたモータ12と、フレーム11の図1中の右側面に配設された減速機13とを備えている。モータ12は、減速機13を介して軸9を中心にアーム部10を旋回駆動する。そして、機構本体部8のフレーム11を、スカラ型ロボットの直動軸5の下端部に図示しない取付部材を介して着脱可能に装着することにより、直動軸5の下端部に姿勢変更機構7を取り付けている。
【0012】
アーム部10は、基端部が機構本体部8に連結された基板部10aと、この基板部10aの先端部に直角に折曲形成された折曲板部10bと、基板部10aの図2中の上面に折曲板部10bと平行に突設された支持板部10cと、支持板部10cの図2中の左面に左方へ向けて突設された支持軸10dとを備えて構成されている。支持軸10dは、折曲板部10bを貫通して左方へ突出している。
【0013】
クランプ6の図1および図2中の右端部には、ピニオンギア14が固着されている。ピニオンギア14およびクランプ6は、アーム部10の支持軸10dの先端部に一体に回転可能に、且つ、左右方向に移動できないように支持されている。
【0014】
アーム部10の支持軸10dにおけるアーム部10の折曲板部10bとピニオンギア14との間の部位には、図2(a)、(b)に示すように、ほぼ円板状のブレーキディスク15が左右方向に移動可能に、且つ、回転できないように支持されている。更に、アーム部10の支持軸10dにおけるブレーキディスク15とアーム部10の支持板部10cとの間の部位には、コイルばね16が配設されている。このコイルばね16の付勢力によりブレーキディスク15は、図2(a)に示すように、左方へ移動されてピニオンギア14の右側面に押し付けられるように構成されている。この状態では、ブレーキディスク15がピニオンギア14を制動することにより、ピニオンギア14ひいてはクランプ6が回転できない制動状態となって(即ち、回り止めされて)いる。
【0015】
上記ブレーキディスク15の左側面、即ち、ピニオンギア14と接触する側の側面、および、ピニオンギア14の右側面、即ち、ブレーキディスク15と接触する側の側面には、摩擦抵抗を大きくする加工が施されている。また、ブレーキディスク15の左側面の外周縁部には、傾斜面部15aが形成されている。この場合、ブレーキディスク15の左側面の中心部分がピニオンギア14に接触し、ブレーキディスク15の外周縁部はピニオンギア14に接触しない構成となっている。更に、ブレーキディスク15の外周縁部は、中心から遠い部分ほど前記ピニオンギア14から離れる構成となっている。
【0016】
そして、ブレーキディスク15の傾斜面部15aに、詳しくは後述する制動解除用のブレード17の先端部を当接させて該傾斜面部15aを押すことにより、図2(b)に示すように、ブレーキディスク15を右方へ移動させること、即ち、ブレーキディスク15によるピニオンギア14の制動を解除することが可能な構成となっている。尚、ブレード17の先端部にも、ブレーキディスク15の傾斜面部15aと当接する傾斜面部17aが形成されている。これら傾斜面部15a、17aの表面は、すべり易い面、即ち、低摩擦係数の面となるように加工されている。
【0017】
また、図1に示すように、設備の1つとして、上記ピニオンギア14と噛み合うラック18が例えば垂直方向に延びるように立設されている。ラック18の立設位置は、スカラ型ロボットの第1アーム3、第2アーム4および直動軸5を動作させて、姿勢変更機構7のピニオンギア14を左右上下方向に移動させることが可能な範囲内であって、スカラ型ロボットの作業の邪魔にならない位置であれば任意の位置で良い。
【0018】
ラック18の一方例えば図1中の右方の側辺部には、前記ブレード17が配設されている。ブレード17の上下方向の長さ寸法は、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上下方向の長さ寸法と同じ長さに設定されている。更に、ラック18の歯19が形成されている区間部分と、ブレード17とが重なるように構成されている。尚、ブレード17の上下方向の長さ寸法は、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上下方向の長さ寸法よりも長くなるように構成しても良い。換言すると、ブレード17の上下方向の長さ寸法が、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上下方向の長さ寸法と同じ長さの場合には、ラック18の歯19が形成されている区間部分と、ブレード17とが重なって一致する。また、ブレード17の上下方向の長さ寸法が、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上下方向の長さ寸法よりも長い場合には、ラック18の歯19が形成されている区間部分と、ブレード17とが重なると共に、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上端部からブレード17が上方へ延びる、または、ラック18の歯19が形成されている区間部分の下端部からブレード17が下方へ延びる、または、ラック18の歯19が形成されている区間部分の上下端部からブレード17が上方および下方へ延びる構成となっている。尚、ラック18の上下方向の全体に、歯19を形成しているが、歯19を部分的に形成しても良く、この場合、ラック18の上端部または下端部に歯19を形成しない部分が存在することになる。
【0019】
また、ブレード17のうちのラック18の歯19が突出する方向A(即ち、ラック18の歯19が形成されている区間部分に沿う方向Bに直交する方向)の長さ寸法d1(図2参照)は、ラック18のうちの歯19が突出する方向Aの長さ寸法d2よりも長く形成されており、ブレード17の上記方向Aの先端部17bはラック18の歯19の先端部よりも突出している。そして、ブレード17の先端部17bの図2中の右側面には、傾斜面部17aが形成されており、ブレード17は先端へいくほど薄くなるように(先細状に)構成されている。
【0020】
ここで、ブレード17の先端部17bの突出量は、次のように設定されている。図3(a)に示すように、クランプ6のピニオンギア14の歯がラック18の歯19に噛み合う前の状態では、ブレード17の先端部17bはブレーキディスク15に接触しないように構成されており、ブレーキディスク15の制動力がピニオンギア14に対して作用した状態である。
【0021】
そして、図3(b)に示すように、ピニオンギア14がラック18に近付くように、クランプ6を横方向(即ち、ラック18の上下方向と直交する方向)に移動させて、クランプ6のピニオンギア14の歯がラック18の歯19に噛み合い始めると、ブレード17の先端部17aはブレーキディスク15とピニオンギア14との間に差し込まれ始め、ブレード17の先端部17aの斜面部17bがブレーキディスク15の斜面部15aに当接し始める。この状態は、ブレーキディスク15の制動力がピニオンギア14に対してまだ作用している状態である。
【0022】
この後、図3(c)に示すように、クランプ6のピニオンギア14の歯がラック18の歯19に完全に噛み合う状態になると、ブレーキディスク15とピニオンギア14との間に差し込まれたブレード17の斜面部17bが、ブレーキディスク15を図3(c)中の右方へ押して移動させた制動解除状態となり、この状態では、ブレーキディスク15の制動力がピニオンギア14に作用していない。ただし、この図3(c)の状態では、ピニオンギア14の歯がラック18の歯19に完全に噛み合う状態であるから、ピニオンギア14(およびクランプ6)は回転することはなく、ピニオンギア14の回転位置、即ち、クランプ6の回転角度は保持されている。
【0023】
さて、上記したピニオンギア14の歯がラック18の歯19に完全に噛み合う状態で、クランプ6をラック18に沿って上方向または下方向へ移動させると、ピニオンギア14が回転し、クランプ6の回転角度を変更することができる。この場合、現在のピニオンギア14の回転位置から希望するピニオンギア14の回転位置までの回転量を、ラック18の歯が形成されている方向の直線移動に変換した直線移動量だけ、クランプ6をラック18の歯19が形成されている方向に移動させるようにする。
【0024】
また、上記構成においては、クランプ6の回転角度の誤差(即ち、実際の回転角度と制御上の回転角度の差)は、常にラック18&ピニオンギア14のバックラッシュの1/2以下に維持することができる。これにより、バックラッシュ値が固定されるから、予めその値を含んでクランプ6の回転角度が推測できるようになるので、クランプ6の回転角度を所望の回転角度になるように正確に制御することが可能である。
【0025】
次に、ピニオンギア14がラック18から遠ざかるように、クランプ6を横方向(即ち、ラック18の上下方向と直交する方向)に退避移動させて、ラック18とピニオンギア14との噛み合いを解除する。この場合、ブレーキディスク15の制動が解除されている間は、ラック18とピニオンギア14とが噛み合うことで、クランプ6の角度を保持する。そして、その後、ラック18とピニオンギア14の噛み合いが解除される前に、ブレーキディスク15がピニオンギア14に押し付けられることで、ブレーキディスク15がピニオンギア14を制動して、クランプ6の回転角度を保持するようになっている。これにより、クランプ6の回転角度を任意の角度に変更することができる。
【0026】
ここで、ラック18とピニオンギア14の噛み合いを解除させるときの動作について、図4を参照して詳しく説明する。まず、図4(a)に示すように、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aが完全に噛み合った状態では、ピニオンギア14の回転位置が固定されることから、クランプ6の回転角度が保持される。
【0027】
次に、クランプ6を横方向に退避移動させると、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aの噛み合いの解除(即ち、離脱)が進み始め、ピニオンギア14が若干回転可能に、即ち、ガタツキ程度に回転位置が変わる可能性がある。そこで、本実施形態においては、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aとの噛み合いを解除させるときに、図4(b)に示すように、ラック18の歯19の傾斜面19aの傾斜角度に沿う方向Cにクランプ6(およびピニオンギア14)を平行移動させるように制御している。これにより、図4(b)、図4(c)に示すように、ピニオンギア14の歯14aの斜面部14bがラック18の歯19の傾斜面19aに常時接触しながら、換言すると、ピニオンギア14の回転位置が常時保持されながら(即ち、ピニオンギア14がガタツクことなく)、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aとの噛み合いの解除が進む。そして、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aとの噛み合いがほとんど解除されるときには、ブレーキディスク15による制動力がピニオンギア14に対して十分に作用するようになるので、ピニオンギア14の回転位置(即ち、位相)が保持され続ける構成となっている。
【0028】
このような構成の本実施形態においては、クランプ6と一体に回転するように設けたピニオンギア14と、設備のラック18とを噛み合わせて、ピニオンギア14を回転させてクランプ6の回転角度を変更すると共に、クランプ6の回転角度をブレーキディスク15のピニオンギア14に対する制動力で保持するように構成した。このため、クランプ6を回転駆動する駆動源を姿勢変更機構に内蔵しなくても、クランプ6の回転角度を変更することができ、姿勢変更機構7の構成を小型化することができる。しかも、上記実施形態によれば、クランプ6の回転角度変更開始時に現在のクランプ6の回転角度を保持することができると共に、クランプ6の回転角度の変更終了時に変更したクランプ6の回転角度を維持できるので、クランプ6の回転角度を正確に変更制御することができる。
【0029】
また、上記実施形態によれば、ラック18の歯19とピニオンギア14の歯14aとの噛み合いの解除するときに、図4(b)に示すように、ラック18の歯19の傾斜面19aの傾斜角度に沿う方向Cにクランプ6(およびピニオンギア14)を平行移動させるように制御したので、図4(b)、図4(c)に示すように、ピニオンギア14の歯14aの斜面部14bがラック18の歯19の傾斜面19aに常時接触しながら、ラック18とピニオンギア14の噛み合いを解除することができる。このため、ピニオンギア14の回転位置を正確に保持しながら、即ち、ピニオンギア14がガタツクことなく、ラック18とピニオンギア14の噛み合いを解除することができる。そして、ラック18とピニオンギア14の噛み合いの解除後は、ブレーキディスク15の制動力によりピニオンギア14の回転位置(即ち、位相)を保持することができる。このような制御を実行するので、クランプ6の回転角度のズレ(誤差)を、常にラック18とピニオンギア14のバックラッシュの1/2以下に維持することができる。そして、本実施形態では、制御によってクランプ6の回転角度のズレの上記した精度を実現していることから、ズレ方向を含めてズレ量を正確に把握できる。換言すると、ズレ方向が特定されたバックラッシュの1/2を位置補正に加味して制御できるようになるので、その他の自動動作時におけるズレ計算を正確に実行することができる。
【0030】
尚、上記実施形態において、クランプ6の回転角度を変更する場合、ピニオンギア14がラック18に噛み合う状態で、クランプ6をラック18に沿って上方向または下方向へ任意量だけ移動させて、ピニオンギア14を回転させるのであるが、このとき、クランプ6の移動方向を1回毎に逆の方向に切り換える制御を行うことが好ましい。例えば、今回のクランプ6の移動方向が下向きの場合には、次回はクランプ6の移動方向を上向きにし、次次回はクランプ6の移動方向を下向きにする制御を行う。
【0031】
また、上記実施形態において、クランプ6を横方向、即ち、ラック18の上下方向と直交する方向に移動させて、ピニオンギア14をラック18に近付けて両者を噛み合わせる場合に、クランプ6の移動方向は、ラック18の上下方向と厳密に直交する方向である必要はなく、少し角度がずれた直交方向であっても良い。というのは、ピニオンギア14の歯がラック18の歯19に噛み合い始めるときに、ピニオンギア14の角度が多少ずれていても、ピニオンギア14の歯がラック18の歯19に完全に噛み合うと、ピニオンギア14の回転角度が正確な角度に保持されるためである。
【0032】
また、上記実施形態においては、スカラ型ロボットの直動軸5の下端部に姿勢変更機構7を取り付けることにより、スカラ型ロボットを疑似6軸ロボット(6軸のロボットとほぼ同じ制御を実行可能なロボット)として使用することができる。
【0033】
尚、上記実施形態では、本発明の姿勢変更機構7をスカラ型ロボットに適用したが、これに限られるものではなく、図6に示す第2実施形態のXRロボット(4軸ロボット)や図7に示す第3実施形態のXYC型ロボット(4軸ロボット)に適用しても良い。図6に示すXRロボットにおいては、上下方向に移動可能且つ回転可能に設けられたフランジ21に姿勢変更機構7を着脱可能に取り付ける。尚、XRロボットにおいては、図6に示すように、移動体22がX軸方向に延びるガイドレール23に移動可能に設けられ、アーム24が移動体22に鉛直方向に延びるR軸を中心に旋回可能に設けられ、アーム24の先端部には、昇降体25が鉛直方向に延びるZ軸方向に移動可能に設けられ、昇降体25の下端部にフランジ21が鉛直方向に延びるT軸を中心に回転可能に設けられている。
【0034】
また、図7に示すXYC型ロボットにおいては、上下方向に移動可能且つ回転可能に設けられたフランジ26に姿勢変更機構7を着脱可能に取り付ける。尚、XYC型ロボットにおいては、図7に示すように、移動体27がX軸方向に延びる第1のガイドレール28に移動可能に設けられ、移動体27および第1のガイドレール28がY軸方向に延びる第2のガイドレール29に移動可能に設けられ、移動体27には、フランジ26が鉛直方向に延びるZ軸方向に移動可能、且つ、鉛直方向に延びるT軸を中心に回転可能に設けられている。
【0035】
また、上記各実施形態においては、手先としてクランプ6を用いる構成に適用したが、これに限られるものではなく、他のツールを用いる構成に適用しても良い。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1は本体、2はベース、3は第1アーム、4は第2アーム、5は直動軸、6はクランプ(手先)、7は姿勢変更機構、8は機構本体部、9は軸、10はアーム部、14はピニオンギア、15はブレーキディスク、15aは傾斜面部、17はブレード、18はラック、19は歯、21はフランジ、26はフランジを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な手先を有し、前記手先を上下左右に移動可能なように構成されたロボットにおいて、
前記手先の回転と連動して回転するように設けられ、前記手先の回転軸と同じ方向で平行な位置関係にある軸を有するピニオンギアと、
前記ピニオンギアに対して前記ピニオンギアの軸方向に押し付けられて前記ピニオンギアを制動するものであって、円板状に形成され、中心部分が前記ピニオンギアに接触し、外周縁部が前記ピニオンギアに接触しない構成を有し、前記外周縁部は中心から遠い部分ほど前記ピニオンギアから離れるように構成されたブレーキディスクと、
設備の1つとして設けられ、前記ピニオンギアと噛み合うラックと、
前記ラックの一辺部に設けられ、前記ラックの歯が形成されている区間部分と重なるような長さを有するブレードとを備え、
前記ブレードのうちの前記ラックの歯が形成されている方向と直交する方向の長さは、前記ピニオンギアの歯の先端がラックの歯の先端に重なり始めた位置にて前記ブレーキディスクを前記ピニオンギアから離す方向に移動させ始めるように、前記ブレーキディスクと前記ピニオンギアとの間に差し込まれると共に、前記ピニオンギアの歯と前記ラックの歯が可能な限り最大の状態で深く重なったときに完全に前記ブレーキディスクを前記ピニオンギアから離すような長さとなるように構成され、
前記手先の回転角度を変更する際には、前記ピニオンギアを前記ラックの歯が形成されている方向と直交する方向に移動させて前記ラックに接近させ、この後、前記ピニオンギアを前記ラックの任意の歯の位置に前記直交する方向から挿入して前記ピニオンギアの歯が前記ラックの歯に完全に噛み合うようにした状態で、現在の前記ピニオンギアの回転位置から希望する前記ピニオンギアの回転位置までの回転量を、前記ラックの歯が形成されている方向の直線移動に変換した直線移動量だけ、前記手先を前記ラックの歯が形成されている方向に移動させ、この移動が完了したら、前記ピニオンギアを前記直交する方向に移動させて前記ラックから離脱させるように制御することを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記ピニオンギアを前記直交する方向に移動させて前記ラック離脱させるときに、前記ラックの歯の傾斜面の傾斜角度に沿う方向に前記ピニオンギアを平行移動させるように制御したことを特徴とする請求項1記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−194521(P2011−194521A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64301(P2010−64301)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】