説明

ロースト食品の製造方法、この製造方法により得られるロースト食品、これを含有する食品

【課題】糖類と、植物性素材、動物性素材、又は醸造物等の食品素材を加熱することで得られるロースト香味を有するロースト食品を提供する。
【解決手段】糖類を糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃になるように加熱し、次いで水を添加することにより当該品温を10〜40℃低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮することを特徴とするロースト食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロースト食品の製造方法に関するものであり、糖類と食品素材のローストされた良好な香味を有するロースト食品の製造方法、この製造方法により得られるロースト香味を有するロースト食品及びこれを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を加熱してその香味風味が利用されるものには、コーヒーの焙煎が代表的である。また、煎りゴマ、麦の焙煎、ガーリックを加熱して得られるローストガーリック、カカオを加熱して得られるもの等のロースト品がある。これらの製造方法には、被加熱食品を直火の鍋や釜中でローストすることにより得る方法や、被加熱食品に熱風を接触させローストすることにより得る方法等がある。これら従来の方法では、対象となる食品や食品素材は限られている。さらに、ローストすることにより良好なロースト香味が得られるロースト食品は限られている。
【0003】
糖類を利用したロースト食品に関しては、ロースト時に香味が生じやすいカカオニブに糖類を含浸させた後、ロースト処理して得られるカカオニブより製造されるココアパウダー(特許文献1)、醤油や蛋白加水分解調味液物等に加熱処理して得た粉末穀類の食品素材、賦形剤、及び糖類を混和した後、これらの混和物をドラム乾燥してなるロースト粉末調味料(特許文献2)、砂糖類を乾熱下140〜150℃に到達するまで加熱・焙煎した特定の物性を有する焙煎糖(特許文献3)が報告されている。
【特許文献1】特開2004−41010号公報
【特許文献2】特開2006−204119号公報
【特許文献3】特開平10−33126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のロースト食品を得る方法では、対象となる食品や食品素材は限られている。さらに、ローストすることにより良好なロースト香味が得られるロースト食品も限られている。
また、従来のロースト食品は、食品素材そのものを加熱することにより得られているが、豊かなロースト香味を有する食品とするためには、加熱条件の厳密な制御下で、加熱過剰や加熱不足を防止する必要がある。
前記従来のロースト食品を得る方法では、ロースト時の過加熱によりロースト食品に臭みが生じたり、ロースト食品から食品素材の香味が消失してしまう等の問題があり、また香味豊かなロースト食品を再現性よく安定的に得ることは困難であった。
【0005】
本発明は、糖類と食品素材を共に加熱することで得られるローストした食品素材の香味と糖類をローストした香味を併せ持つ香味豊かなロースト食品を得るための製造方法、これによって得られたロースト食品及びそれを含有する食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成するために種々の実験を行った結果、糖類の品温を熔融温度±20℃に達するまで加熱し、この品温範囲において水を添加することによって当該品温を特定の温度範囲まで低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮して煮詰めることによって、食品素材に臭みを生じさせず、広範囲な種類の食品に関して、香味豊かなロースト食品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を提供するものである。
(1)糖類を、糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃になるように加熱し、次いで水を添加することにより当該品温を10〜40℃低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮することを特徴とするロースト食品の製造方法。
(2)上記記載の製造方法により得られるロースト食品。
(3)上記記載のロースト食品を含有する食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来、得られなかったローストした食品素材の香味と糖類をローストした香味を併せ持つ香味豊かな新規なロースト食品を提供することができ、また、斯様な香味を併せ持つ香味豊かなロースト食品を再現性よく安定的に提供することができる。また、広範囲な種類の食品に関して、ローストした糖類及び食品素材双方の香味を相乗的に付与したロースト食品を提供することができる。
また、当該ロースト食品は、製菓・製パン、冷菓、乳製品、加工食品や飲料等の広範囲な食品に利用することができ、これら食品に好ましいロースト香味及びコク味等の香味を付与することができるので、食品の嗜好性を増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、まず、糖類を、糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃の温度範囲になるまで加熱する。加熱温度は、糖類がわずかに分解し、より良好なロースト香味等を得るために糖類の熔融温度の+15℃〜−15℃が好ましく、+10℃〜−15℃がより好ましく、+5℃〜−15℃が特に好ましい。
糖類を熔融温度−20℃より低い温度で加熱すると、糖類の分解が不十分であるため、糖類をローストした香味が弱く、また、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、糖類をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
糖類を熔融温度+20℃を超える温度で加熱すると、糖類の分解が過剰なため、糖のにがみや雑味が生じ、また、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、糖類をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
【0010】
上記加熱する前の糖類の状態は、固形、半固形や液体のいずれでもよく、例えば、固形の糖類、糖類と水、液糖等が挙げられる。
固形状態にある砂糖やブドウ糖等を仕込む場合、加熱開始前又は加熱開始時に、糖類に水を加えて半固形や液体状態とすることが好ましい。具体的には、製品の均一性、加熱時間の短縮の点から、糖類の固形分濃度は、好ましくは40〜85重量%であり、より好ましくは60〜85重量%であり、特に好ましくは75〜85重量%である。
【0011】
本発明に用いる糖類は、ブドウ糖(熔融温度:150℃)、果糖(熔融温度:104℃)等の単糖や、砂糖(熔融温度:185℃)、マルトース(熔融温度:103℃)、ラクトース(熔融温度:201℃)、トレハロース(熔融温度:203℃)等の二糖類や、ラフィノース(熔融温度:118℃)等の三糖類、4〜10糖のオリゴ糖、水飴、糖蜜、蜂蜜及びメープルシラップ等が挙げられるが、通常食品に用いられるものであれば特に限定されない。これらのうち1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、水飴、糖蜜、蜂蜜、メープルシラップ、オリゴ糖シラップ等糖成分が一定でない糖類を用いる場合、原料として単品そのままを用いても良いが、より安定的な熔融温度の範囲を得、ひいてはロースト香味の良好なロースト食品を安定的に得るため、熔融温度が安定な純度の高い糖類と併用することが好ましい。一例として、蜂蜜又はメープルシラップに対して砂糖を所定量加えて仕込んだものが挙げられる。
【0012】
本発明の製造方法で用いられる製造設備は、特に限定されず、使用する糖類の熔融温度±20℃の品温の温度範囲まで糖類を加熱できる一般的な製造設備を用いればよい。例えば、当該製造設備としては、密閉加熱釜や開放加熱釜のいずれでもよいが、開放加熱釜が好ましい。さらに、糖類や食品素材を均一に加熱・ローストが行い易い撹拌機付き釜が好ましい。
【0013】
一例として、撹拌機付き開放加熱釜に、固形状態にある糖類と水の混合物又は液糖にあっては糖類そのもの(糖類固形分濃度65〜85重量%)を、仕込み、攪拌しながら加熱し、糖類がわずかに分解する熔融温度付近迄加熱する。
【0014】
本発明において、糖類がわずかに分解する熔融温度付近迄加熱し、糖類の品温が上記特定の温度範囲に達した後、すぐに又は一定時間当該温度に維持した後、水を添加して糖類の品温を10〜40℃低下させる。
このことによって香味に悪影響を与える過剰な糖分解反応を抑制することができ、かつ後に加える食品素材のローストを適度なものとすることができる。
当該低下させる糖類の品温の温度範囲は品質安定、再加熱時間短縮の点から、好ましくは10〜35℃であり、更に好ましくは、10〜30℃である。
添加する水の温度や量は、糖類の品温を上記温度範囲に低下させることができれば特に限定されないが、常温水を十分な量加えることが好ましい。
具体的には、糖類又は糖類及び水の合計仕込量100重量部に対して、添加する水の量は、好ましくは5〜50重量部であり、より好ましくは10〜30重量部である。また、水を添加した際、品温が当該特定の温度範囲を下回った場合には、再び当該特定の温度範囲になるように再び加熱すればよい。
【0015】
次に、食品素材を加え、加熱濃縮し、所望の含水量迄煮詰め、最終製品であるロースト食品を得る。加熱濃縮の際に、固形分調整を行ってもよい。
このとき、加える食品素材の量は、注水後の糖類と水の合計仕込量100重量部に対して0.1〜200重量部、好ましくは0.1〜100重量部の範囲である。食品素材は加えられた時点でローストされ、ロースト香味が糖類に封じ込められ保持される。
食品素材を加えた後、沸騰状態を維持しながら加熱濃縮することが好ましい。
当該加熱濃縮は、糖類及び食品素材を混合しながらそれらに含まれる水分を加熱することにより蒸発させ、更にロースト香味を付与する。当該加熱濃縮によって、食品素材と糖類のローストが適度に進み、ロースト香味が増強され、香ばしい香味のロースト食品が得られる。
このときの加熱温度は、食品素材によって適宜調整すればよいが、食品素材のロースト時に生じる香味を高める点から、少なくとも80℃以上であることが好ましく、より好ましくは100〜130℃であり、更に好ましくは110〜130℃である。
【0016】
本発明で用いられる食品素材としては、穀類、キノコ類、野菜類、果実類、種実類、海草類、豆乳等の植物性素材;魚介類、肉類、乳製品、卵製品等の動物性素材;味噌、醤油、酒類、酢、ソース類等の醸造物が挙げられる。
【0017】
本発明で用いられる食品素材の形態は、特に限定されないが、予め、乾燥、粉砕、粉末化、ペースト化、ピューレー化、搾汁、抽出や液状化等の前処理を行い、加熱した糖類に混合し易いものが好ましい。また、これらは、常法により予め適切に焙煎又は加熱処理を行ったものでもよい。
【0018】
当該食品素材について、代表的なものを以下に例示するが、これらに限定されるものではない。また、これらのうち、1種を又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明で用いられる植物性素材のうち、穀類としては大麦、小麦等、ゴマ等;キノコ類としては椎茸等;野菜類としては芋類;香辛野菜であるネギ類、タマネギ、ガーリック等;果実類としてはりんご等;種実類としてはナッツ、アーモンド、ピーナッツ等;海草類としては昆布やわかめ等;豆乳としては豆乳、調製豆乳等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いられる動物性素材のうち、魚介類としては煮干類、魚介エキス等;肉類としては乾燥肉、肉エキス類等;乳製品としては牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、練乳、クリーム、チーズ等;卵製品としては全卵、卵黄、卵白等が挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる醸造物のうち、味噌;醤油;ワイン等の酒類;バルサミコ酢等の酢;ソース類等が挙げられる。アルコールを含むものは予め加熱してアルコールを揮発させることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、原料にあっては糖類の種類や食品素材の種類、及びそれらの配合量、製造工程にあっては糖類の熔融温度付近迄の加熱温度、温度保持時間、食品素材投入時の加熱温度、加熱濃縮時間、これらを適宜調整して、種々の風味香味を有する所望のロースト食品が得られる。
【0023】
本発明の製造方法により得られたロースト食品を、製菓・製パン、菓子、乳製品、加工食品、や飲料等の飲食品に使用することにより、ロースト香味あるいはコク味を食品に付与することができる。本発明品の使用量を加減することにより、隠し味として使用することもできる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
【0025】
[実施例1]
砂糖100重量部と水20重量部を撹拌機付き開放加熱釜に仕込み加熱し、表1に示すように、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)±20℃の温度範囲にある170℃又は175℃の温度に達した際に、水を20重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、各種食品素材を加えた。そのときに、必要に応じて水を追加し、さらに100〜130℃にて加熱濃縮し煮詰めた。ついで、各加熱品の固形分濃度を所定濃度に調整し、ロースト食品(本発明品1〜5)を得た。これらの製品は、ローストした食品素材の香味と砂糖をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなペーストであった。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明品1の固形分濃度を70%に調製したローストアーモンドペーストは、ローストしたアーモンド香味と、砂糖をローストした糖の香ばしさを併せ持つ香味豊かなものであった。
本発明品2の固形分濃度を70%に調製したロースト豆乳ペーストは、豆乳のコクを持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持ち、また、豆乳特有の生っぽい臭いが低減された香味豊かなものであった。
本発明品3の固形分濃度を75%に調製したローストカスタードペーストは、淡いロースト香味のカスタードのコク深い香味豊かなものであった。
本発明品4の固形分濃度を75%に調製したローストビーフペーストは、ローストビーフの香味とコク味を有するものであった。
本発明品5の固形分濃度を80%に調製したロースト醤油ペーストは、ローストした醤油の香味とコク味を有するものであった。
【0028】
[比較例1]
砂糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)−20℃よりも低い、155℃に達した際に、水を7重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、豆乳40重量部を150℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱濃縮し煮詰め、ついで、加熱品の固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品1)を得た。このペースト品は、砂糖の甘味が残り、ロースト香味が乏しく、また、豆乳特有の生っぽい臭いが残っていた。
以上のように、砂糖の加熱品温が熔融温度−20℃よりも低い、155℃の加熱では、加熱が弱く、糖類の分解が不十分であるため、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、食品素材のロースト香味が発揮できず弱く、糖類をローストした香味も弱く、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
【0029】
[比較例2]
砂糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の加熱品温が砂糖の熔融温度(185℃)+20℃を超える、210℃に達した際に、水を30重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、豆乳40重量部を150℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱濃縮し煮詰め、ついで、加熱品の固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品2)を得た。このペースト品は、糖由来のにがみや雑味を有し、ローストした豆乳の香味が十分に感じられないものであった。
以上のように、砂糖の加熱品温が熔融温度+20℃を超える、210℃の加熱では、加熱が強く、糖類の分解が過剰なため、食品素材のロースト香味がうまく糖類に封じ込められず、食品素材のロースト香味が発揮できず弱く、さらに糖由来のにがみや雑味を有し、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
【0030】
[比較例3]
砂糖100重量部とクリーム40重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に一緒に仕込んで加熱昇温したところ、粘度が増大してきたが、均一加熱可能で焦げつかない温度迄加熱したところ、その温度は135℃であった。ついで、水を10重量部添加し品温を低下させ、固形分濃度を70%に調整し、ペースト品(比較品3)を得た。得られた加熱品は、砂糖の甘味がそのまま残り、ロースト香味が乏しいものであった。
以上のように、従来のロースト食品を得る方法では、砂糖の加熱品温は熔融温度(185℃)よりはるかに低い温度の135℃であり、加熱が十分でないため、砂糖をローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなロースト食品は得られない。
【0031】
[実施例2]
ブドウ糖100重量部と水20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、ブドウ糖の品温がブドウ糖の熔融温度(150℃)±20℃内にある155℃に達した際、水を20重量部添加し、糖類の品温を低下させた後、食品素材として予め加熱してアルコールを揮発させた赤ワイン30重量部を125℃で加え、さらに100〜120℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、固形分濃度70%に調整し、ローストワインペースト(本発明品6)が得られた。得られた製品は、ワイン特有の芳香を持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持つ香味豊かなものとなった。また、加熱によりアルコール分が揮発し、残存アルコールが1%以下となるため、食品に使用の際にアルコール分による制限がない。
【0032】
[実施例3]
砂糖100重量部と20重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が砂糖の熔融温度(185℃)±20℃内にある175℃に達した際、水20重量部を加え、糖類の品温を低下させた後、クリーム40重量部を150℃で加え、さらに約100〜130℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、乳化機で均質化し、固形分濃度を80%に調整し、ロースト食品(本発明品7)が得られた。得られた製品は、クリームのコク、香味がありながらもローストした糖の香ばしさを有するキャラメル香味のものとなった。乳製品と糖類を一緒に仕込んで混合昇温加熱して作る従来のキャラメルとは異なる、香ばしさとロースト感を持つ香味豊かなキャラメルペーストとなった。
【0033】
本発明品2及び7、比較品1〜3の官能検査を行った。 官能検査は、訓練されたパネル5名による4段階評価(優:4、良:3、可:2、不可:1)により、ロースト香味の強度、コクの強度、異味異臭について評価し、表2にその平均値を示した。
【0034】
【表2】

【0035】
[実施例4]
砂糖90重量部と固形分70%の水飴10重量部と水15重量部を、撹拌機付き開放加熱釜に仕込み、加熱し、砂糖の品温が熔融温度(185℃)±20℃内にある175℃で、水20重量部を添加し、糖類の品温を低下させた後、バルサミコ酢50重量部を150℃で加え、さらに約100〜120℃にて加熱し煮詰めた。得られた加熱品を、固形分濃度70%に調整し、ロースト食品(本発明品8)が得られた。得られた製品は、バルサミコ酢特有の芳香を持ちながらも、ローストした糖の香ばしさを併せ持つコク味があり香味豊かなものとなった。
【0036】
以下に上述の実施例での本発明品を用いた食品の配合例を示すが、一部を示したものであり、以下の例によって限定されるものではない。また、各々の配合例は各食品の製造における常法により製造したものであり、代表的配合例のみを記した。また、単位は%(重量/重量)で記す。
【0037】
[配合例1]アイスクリーム
牛乳 40.0
卵黄 12.0
砂糖 7.0
ローストアーモンドペースト(本発明品1)1.0
クリーム 40.0
クリームを除く原料を配合した後、クリームをホイップして混合し、冷凍することによって、アーモンド風味の手作り風アイスクリームを製造した。このアイスクリームは本来の乳風味に加え、香味に深みが増し、コク味が非常に強い濃厚な風味のアイスクリームとなった。
【0038】
[配合例2]アイスクリーム
牛乳 40.0
卵黄 11.0
砂糖 7.0
ロースト豆乳ペースト(本発明品2) 2.0
クリーム 40.0
クリームを除く原料を配合した後、クリームをホイップして混合し、冷凍することによって、豆乳風味の手作り風アイスクリームを製造した。このアイスクリームは本来の乳風味に加え、香味に深みが増し、コク味が非常に強い濃厚な風味のアイスクリームとなった。
【0039】
[配合例3]飲料
豆乳 85.0
砂糖 8.0
コーヒーエキス(BX.50°) 2.0
ロースト豆乳ペースト(本発明品2) 5.0
上記原料を配合し、調整豆乳飲料を製造した。この豆乳飲料は、豆乳の生臭味がマスキングされ、且つコーヒーの香ばしさが引き立つ、非常に香味豊かな飲みやすい調整豆乳飲料となった。
【0040】
[配合例4]製菓
クッキーミックス 80.0
バター 10.0
砂糖 8.0
ローストワインペースト(本発明品6) 2.0
上記原料を配合し、170℃で10分間、オーブンにて焼く事によりクッキーを製造した。このクッキーは、ワインの香味をほんのりと感じ、コク深いクッキーとなり、高級感のある物に仕上がった。
【0041】
[配合例5]製菓
クッキーミックス 80.0
バター 10.0
砂糖 8.0
ローストアーモンドペースト(本発明品1)2.0
上記原料を配合し、170℃で10分間、オーブンにて焼く事によりクッキーを製造した。このクッキーは、ローストされたアーモンドの香味をほんのりと感じ、コク深いクッキーとなり、高級感のある物に仕上がった。
【0042】
[配合例4]ドレッシング
サラダ油 40.0
醤油 38.0
食酢 20.0
ロースト醤油ペースト(本発明品5) 2.0
上記原料を配合し、サラダ用ドレッシングを製造した。このドレッシングはローストした醤油の香ばしい風味香味を有するものになった。このドレッシングを生野菜にかけて喫食すると、生野菜の風味が引き立ち、美味であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類を、糖類の品温が糖類の熔融温度±20℃になるように加熱し、次いで水を添加することにより当該品温を10〜40℃低下させた後、食品素材を加え、加熱濃縮することを特徴とするロースト食品の製造方法。
【請求項2】
前記加熱が、糖類の熔融温度±15℃の温度である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
糖類が単糖類、二糖類、三糖類、4〜10糖のオリゴ糖、水飴、糖蜜、蜂蜜及びメープルシラップから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載のロースト食品の製造方法。
【請求項4】
食品素材が、植物性素材、動物性素材及び醸造物から選ばれる1種以上である請求項1〜3の何れか1項記載のロースト食品の製造方法。
【請求項5】
植物性素材が、穀類、キノコ類、野菜類、果実類、種実類、海草類及び豆乳から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
【請求項6】
動物性素材が、魚介類、肉類、乳製品及び卵製品から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
【請求項7】
醸造物が、味噌、醤油、酒類、酢及びソース類から選ばれる1種以上である請求項4記載のロースト食品の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の製造方法により得られるロースト食品。
【請求項9】
請求項8記載のロースト食品を含有する食品。

【公開番号】特開2009−60881(P2009−60881A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233902(P2007−233902)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000210067)池田食研株式会社 (35)
【Fターム(参考)】