説明

ローズマリー抽出物およびDHAを含有する化粧品組成物

【課題】DHAを含む組成物の悪臭を低減する方法の提供。
【解決手段】セルフタンニングに有効な量のDHA(ジヒドロキシアセトン)に悪臭低減化に有効な量のローズマリー抽出物またはその活性画分、例えば、カルソール、カルノシン酸、メトキシカルノシン酸、ロスマリン酸、ロスマノールまたはロスマリジフェノールとを合わせて含有する局所剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧品組成物に関する。さらに詳しくは、本発明はセルフタンニング化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽にさらされることが健康にとって重大なリスクと考えられているため、最近では長時間座ってこんがりと日焼けしたいという欲求はかなり低下している。しかし、大半の人々は依然として小麦色に輝く肌を手に入れたいという欲求を持っている。もっとも慎重な消費者にとっての解決案は、セルフタンニング剤の使用である。これらの製品は通常ジヒドロキシアセトン(DHA)という化合物を使用しており、この化合物が皮膚のタンパク質と相互作用し、太陽にこんがり焼けた色に似た小麦色をつくり出すのである。初期のセルフタンニング剤には、多くの欠点があり、このためセルフタンニング剤は広く流行するに至らなかった。最たる欠点は、人により不自然なオレンジ色を生じるということであった。しかし近年セルフタンニング剤は非常に改良されてきており、現在手に入る殆どの製品では、ユーザーは自然でかなり長もちのする色を得ることができる。消費者から嫌われる要因となっている、セルフタンニングに一つ残っている短所は、使用後、多くのユーザーに不快な臭いが生じ、これが最大24時間残るということである。この不快な臭いは明らかにセルフタンニング剤を塗布した皮膚上で生成する化合物から生じている。今日までの唯一の解決法は、香料またはオイルを加え、ある程度までこの臭いを隠すということであった。しかし、香料の添加はどの製品に対しても常に受け入れられる選択肢ではなく、またいずれにせよ根本の問題、すなわち皮膚上で生成される化合物を中和するという点、に迫るものではなかった。今日まで、この問題はセルフタンニング剤に影響を及ぼし続けており、このためセルフタンニング剤のより頻繁な使用が妨げられているのかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は皮膚にセルフタンニング剤を塗布することにより生じる臭いに対する解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明はDHAと共に有効量のローズマリー抽出物またはその活性成分を合わせて含有する化粧品組成物に関する。ここで用いる「化粧品組成物」とは、皮膚に局所適用するための、DHAを含有するいかなる組成物をも含むものであり、これはまた例えばPUVA療法に関連し、治療的用途に用いられる組成物をも含む。
【0005】
本発明はさらにDHAを有効量のローズマリー抽出物と共に含有する組成物を皮膚に塗布することを含む、DHA含有セルフタンニング剤の塗布により皮膚上で生じる悪臭の発生を低減または防止する方法に関する。
詳細な説明
ローズマリー抽出物をDHA含有組成物に添加することによって、DHA組成物を皮膚に塗布することに伴って生じる典型的な悪臭が防止または低減されることは予期せぬ発見であった。ローズマリー抽出物はローズマリー植物から抽出される天然の既知物質であり、酸化防止剤としての性質がよく理解されている。しかし、諸性質は既知であるにも関わらず、今回のように、配合物の分解によるのではなく、皮膚上の反応(この反応についてはまだ殆ど判明していない)により問題が生じているように思われる場合において、ローズマリー抽出物がこのように素晴らしい作用を持つということは全く予期せぬものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
ローズマリー抽出物とは、いくつか異なる活性成分を含んでもよい、多数の異なる化学組成物を表す一般名である。ローズマリー抽出物に見出される共通成分としては、カルノソール、カルノシン酸、メトキシカルノシン酸、ロスマリン酸、ロスマノールおよびロスマリジフェノールがあり、これらは各抽出物ごとに異なる割合いで含有されている。多数のローズマリー抽出物が市販されており、どれも本発明に用いることができる。しかし、とりわけ好ましいのはアース・サプライド・プロダクツ(Earth Supplied Products)製の「ガーディアン(Guardian)」というローズマリー抽出物である。この抽出物はレシチン、アセチル化水添植物性グリセリドおよびプロピレングリコールのベース中に、少なくとも5%のフェノール性ジテルペンを含有する、活性ローズマリー抽出物を約12〜30%含有している。特にこの活性部分はカルノシン酸を少なくとも50%、カルノソールを20〜35%、さらにメトキシカルノシン酸を約5〜15%含有し、さらに少量のロスマノール、ロスマリン酸、およびロスマリジフェノールを含有している。ここで使用する「ローズマリー抽出物」という語は、ローズマリー抽出物そのものだけを指すのではなく、ローズマリーからまたはローズマリー以外の出発原料から合成された、または天然原料から得た、上記にあげたような個々の活性成分を単独で、または個々に組み合わせて、ローズマリー抽出物の使用の項で記載した量に相当する量添加して得た組成物をも含むものである。
【0007】
活性ローズマリー抽出物はDHA配合物中全組成物に対し約0.001〜約50重量%の量で用いることができる。しかし、この抽出物は極めて効能が高く、悪臭を低減するために必要なのはごく少量であるので、抽出物の好ましい使用範囲は組成物の約0.1〜約10重量%である。抽出物はDHAが通常使用されている配合物であればどのような種類のものに加えてもよく、例えば、クリーム、ローション、スプレー、スティックなどがあげられ、さらに水性でも、水/油型、あるいは無水であってもよい。DHAの使用量はこの物質の通常の使用量にそったものであり、通常約1〜10%の範囲である。このローズマリー抽出物を使用することによるもう一つの予期せぬ結果は、DHAの発色に対し、悪影響がないということである。DHAは比較的不安定な物質であり、他に不相溶性の物質が存在すると性能が変化しやすい。しかし、驚くべきことにローズマリー抽出物は発色に何ら悪影響を与えず、場合によっては、発色の向上があるように見える。
【実施例】
【0008】
本発明はさらに下記の非限定実施例を参照することにより理解することができよう。
実施例1
最初にDHAを皮膚に塗布することに伴い生じる悪臭の低減に役立つ化合物を同定する研究を行った。最初の試みは一般に悪臭減少性を有するとされている化合物、すなわちジプロピレングリコール、酢酸亜鉛、コリン、およびアロエベラゲルを試験した。これらの化合物からはいずれも一貫性のある肯定的な結果を得ることができなかった。
【0009】
次の実験は新しい原料、アース・サプライド・プロダクト(Earth Supplied Products)製の「ガーディアン(Gardian)」ローズマリー・エキストラクトに対して行った。このローズマリー・エキストラクト(RME)の14名のパネリストにおける悪臭形成に与える影響をDHAとローズマリー・エキストラクトの水溶液を用いて調査した。発色と臭いをパネリストに対して試験し、ローズマリー・エキストラクトの存在下でDHAの反応に何らかの変化があったかどうかを判断した。
結果と考察
I)臨床試験:DHAのみの水溶液を塗布した場合とDHAとRMEを共に皮膚に塗布した場合
RMEの存在下では、14名中13名に有意の悪臭改善が見られた(RME0.25%)。1名のパネリストにおいてはDHAを塗布した時に全く悪臭が生じなかった。悪臭の改善は皮膚への塗布後24時間でもっとも顕著であった。この条件下で、われわれは悪臭形成が90%以上減少したことを観察した。
【0010】
発色を試験組成物と対照組成物間で比較すると、RMEの存在下で色にはなんら違いが見られないことが観察によりわかった。(場合によっては発色はわずかに向上した。)したがってRMEを用いることによって、悪臭が大きく減少する一方で、他の成分を試験した時にこれまで見られたようなDHAの発色反応の抑制というものは生じなかった。
実施例2
下記に本発明の組成物、水と油のエマルジョンを示す。
物質 重量%
シクロメチコン 11.00
セチルジメチコンコポリオール 1.00

シクロメチコン/PEG/PPG-18/18
ジメチコン 5.00
トコフェリルアセテート 0.20
ポリシリコーン7/シクロメチコン 1.50
香料 0.40

脱イオン水 適量
DHA 4.00
グリセリン 8.00
塩化ナトリウム 0.80
乳酸 0.50
パンテチン 0.02

シクロメチコン 2.00
黒色酸化鉄 0.02

酸化鉄/アルミナ 0.38
マイカ/二酸化チタン/酸化鉄
ジメチコン 0.22
マイカ/酸化鉄 0.14

保存剤 0.50
ローズマリー抽出物 0.25

シクロメチコン 1.00
シクロメチコン/ジメチコン/ビニルジメチコン
クロスポリマー 3.50

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルフタンニングに有効な量のDHAと共に悪臭低減化に有効な量のローズマリー抽出物またはその活性画分を含有する、化粧品用セルフタンニング組成物。
【請求項2】
0.0001〜50%のローズマリー抽出物と1〜10%のDHAを含有する、請求項1の組成物。
【請求項3】
0.1〜10%のローズマリー抽出物を含有する、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記ローズマリー抽出物がカルノソールとカルノシン酸を含有する、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記ローズマリー抽出物が少なくとも50重量%のカルノシン酸を含有する、請求項1の組成物。
【請求項6】
前記ローズマリー抽出物が20〜35重量%のカルノソールを含有する、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記ローズマリー抽出物が5〜15重量%のメトキシカルノシン酸を含有する、請求項1の組成物。
【請求項8】
1〜10重量%のDHAと0.1〜10重量%のローズマリー抽出物とを含有する、化粧品組成物。
【請求項9】
前記ローズマリー抽出物が少なくとも50重量%のカルノシン酸を含有する、請求項8の組成物。
【請求項10】
前記ローズマリー抽出物が20〜35重量%のカルノソールを含有する、請求項9の組成物。
【請求項11】
前記ローズマリー抽出物が5〜15重量%のメトキシカルノシン酸を含有する、請求項10の組成物。
【請求項12】
DHA含有組成物に悪臭低減化に有効な量のローズマリー抽出物を添加することを含む、皮膚に塗布した際に殆どまたは全く悪臭を生じないDHA含有組成物を調合する方法。
【請求項13】
ローズマリー抽出物の量が0.1〜10重量%である、請求項12の方法。
【請求項14】
前記ローズマリー抽出物が少なくとも50重量%のカルノシン酸を含有する、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ローズマリーが20〜35重量%のカルノソールを含有する、請求項14の方法。
【請求項16】
前記ローズマリー抽出物が5〜15重量%のメトキシカルノシン酸を含有する、請求項15の方法。
【請求項17】
請求項1の組成物を皮膚に塗布することを含む、DHA含有組成物に伴う皮膚上での悪臭形成を低減化または防止する方法。
【請求項18】
請求項5の組成物を皮膚に塗布することを含む、DHA含有組成物に伴う皮膚上での悪臭形成を低減化または防止する方法。
【請求項19】
請求項8の組成物を皮膚に塗布することを含む、DHA含有組成物に伴う皮膚上での悪臭形成を低減化または防止する方法。
【請求項20】
請求項11の組成物を皮膚に塗布することを含む、DHA含有組成物に伴う皮膚上での悪臭形成を低減化または防止する方法。
【請求項21】
セルフタンニングに有効な量のDHAと共に、抗酸化活性を有する悪臭低減化に有効な量のローズマリー抽出物を含有する、化粧品用セルフタンニング組成物。
【請求項22】
セルフタンニングに有効な量のDHAと共に、抗酸化活性を有するDHA悪臭低減化に有効な量のローズマリー抽出物を含有する、化粧品用セルフタンニング組成物。

【公開番号】特開2007−16045(P2007−16045A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241725(P2006−241725)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【分割の表示】特願2002−592884(P2002−592884)の分割
【原出願日】平成14年5月29日(2002.5.29)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】