説明

ロータリキルン

【課題】
炉体として内筒、外筒を有するロータリキルンに於ける、内筒、外筒間の回転力を伝達する内外筒連結機構についての保守作業を容易とし、保守コストの低減を図る。
【解決手段】
回転駆動され、入口18から投入された被処理物を出口側へ移動しつつ加熱し、出口から排出する炉本体3を具備したロータリキルンに於いて、前記炉本体は、回転駆動される外筒8と、該外筒内部に配設された内筒部と、前記外筒からの回転力を前記内筒部に伝達する内外筒連結機構21とを有し、該内外筒連結機構は前記外筒に支持されたピン保持筒と該ピン保持筒に着脱可能なスリーブを介して嵌合された連結ピンと、前記内筒部に設けられ、前記連結ピンの先端部が嵌合する受座とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等一般廃棄物や産業廃棄物等を熱分解ガス化処理する為に用いられる、或は炭化燃料を製造する場合に用いられるロータリキルンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、ロータリキルンの一例について図2、図3により説明する。尚、図2中で、左を上流側、右を下流側とする。
【0003】
ロータリキルン1は、概略、上流側炉端ケーシング2、炉本体3、下流側炉端ケーシング4によって構成され、前記上流側炉端ケーシング2、前記下流側炉端ケーシング4は炉ベース5に固定的に支持され、前記炉本体3は前記炉ベース5に回転可能に支持され、前記上流側炉端ケーシング2と前記炉本体3間、該炉本体3と前記下流側炉端ケーシング4間には、シール装置6,7が設けられている。
【0004】
前記炉本体3について説明する。
【0005】
該炉本体3は外筒8、該外筒8内部に設けられた内筒部9を有し、前記外筒8はローラ等の回転体11を介して回転支持機構12に回転自在に支持され、又前記外筒8はモータ等の駆動源を有する回転駆動機構13によって回転される様になっている。
【0006】
前記内筒部9は複数、例えば図3に示される様に3本の内筒14を有し、これら内筒14は軸心方向に所要間隔で設けられた支持円板15によって円周等間隔で固定支持されている。又、前記外筒8の上流部は前記内筒14が全ての内筒14が合流する空間16を形成する管寄せ部17となっており、該管寄せ部17から前記外筒8と同心の被処理物投入口18が上流に向って延出している。又、前記内筒14の下端には分解ガス導出管19が前記外筒8と同心に設けられ、前記分解ガス導出管19は前記内筒14に部分的に連通している。
【0007】
前記支持円板15と前記外筒8間には、内外筒連結機構21が円周所要等分(例えば12等分)の位置に設けられ、該内外筒連結機構21によって前記外筒8と前記支持円板15とが連結され、前記外筒8から前記内外筒連結機構21を介して前記内筒部9に回転力が伝達される様になっている。
【0008】
前記上流側炉端ケーシング2と前記被処理物投入口18間は、シール装置22が設けられ、前記上流側炉端ケーシング2には熱風ガス出口(図示せず)が設けられている。
【0009】
前記下流側炉端ケーシング4と前記分解ガス導出管19間にはシール装置23が設けられ、又前記下流側炉端ケーシング4には熱風ガス入口(図示せず)が設けられている。更に、前記分解ガス導出管19の下流端部を収納する様に熱分解ガス出口ケーシング24が設けられ、該熱分解ガス出口ケーシング24と前記分解ガス導出管19内部とは、前記シール装置23によって分離されている。
【0010】
前記被処理物投入口18より被処理物が投入され、前記下流側炉端ケーシング4より熱風ガスが導入され、熱風は前記内筒14と前記外筒8との空間を流れ、前記上流側炉端ケーシング2から流出する。
【0011】
前記被処理物投入口18より被処理物が投入され、前記外筒8、前記内筒14が一体に前記回転駆動機構13によって回転され、被処理物は前記内筒14を介して加熱されつつ下流側に移動し、熱分解される。熱分解ガスは前記分解ガス導出管19を経て前記熱分解ガス出口ケーシング24より排出され、又分解後の残渣物も前記熱分解ガス出口ケーシング24より排出される。
【0012】
次に、従来の前記内外筒連結機構21について、図4により説明する。
【0013】
前記支持円板15の外周部に嵌合凹部25を有する受座26が溶接等所要の手段で固着されている。
【0014】
前記外筒8の前記嵌合凹部25の同心上に、ピン取付け孔27が穿設され、該ピン取付け孔27を閉塞する様に座板28が溶接等所要の手段で前記外筒8に固着され、前記座板28を貫通する様にピン保持筒29が溶接等により固着されている。該ピン保持筒29の外端にはフランジ31が固着され、前記座板28と前記フランジ31間には補強用のリブ32が周方向に設けられている。
【0015】
前記ピン保持筒29に連結ピン33が摺動可能に嵌入され、該連結ピン33の先端部は前記嵌合凹部25に嵌合する。
【0016】
前記フランジ31にはフランジプレート34が皿螺子35により固着され、前記フランジプレート34を螺通した調整ボルト36の先端にはバネ受け37が設けられ、該バネ受け37と前記連結ピン33間には圧縮バネ38が挾設され、該圧縮バネ38は前記連結ピン33を前記嵌合凹部25に所要の嵌合力で押付ける。尚、前記調整ボルト36の螺通部からのガス漏れを防止するカバー39が前記フランジプレート34に取付けられる。
【0017】
又、前記支持円板15と前記外筒8間で熱膨張差が生じた場合も、前記圧縮バネ38が撓んで前記連結ピン33が半径方向に移動し、熱膨張差が吸収され、又所定の嵌合力が維持される。
【0018】
前記外筒8が回転されることで、回転力は前記連結ピン33を介して前記支持円板15、即ち前記内筒部9に伝達される。
【0019】
前記外筒8と前記内筒部9とは完全な同心とすることは製作上できない為、前記炉本体3の回転と共に前記外筒8と前記内筒部9の芯ずれが生じ、芯ずれに対応して前記連結ピン33が前記ピン保持筒29に対して摺動する。
【0020】
前記連結ピン33は大きな力が作用した状態で摺動し、更に前記ロータリキルン1は高温下で稼働するので、グリス等の潤滑剤は使用することができない。この為、摩耗は避けられず、摩耗状況に応じて、前記連結ピン33は交換されなければならない。
【0021】
従来、前記連結ピン33の交換は、前記カバー39、前記フランジプレート34を取外し、摩耗した前記連結ピン33を引抜き、新しい連結ピン33を前記ピン保持筒29に嵌入することで処理されていた。
【0022】
然し乍ら、摩耗は前記連結ピン33に限らず、前記ピン保持筒29も摩耗していることが多い。更に、該ピン保持筒29の支持構造は、該ピン保持筒29を局部的に補強する等柔構造であり、前記連結ピン33に前記外筒8からの回転力が作用すると、前記ピン保持筒29が振られ、該ピン保持筒29の支持部に過大な応力が発生し、前記リブ32、或は前記座板28に疲労によるクラックが発生する場合もあった。
【0023】
又、前記ピン保持筒29が振られることで、前記連結ピン33が前記受座26に対して傾き、前記嵌合凹部25の孔縁(エッジ)が前記連結ピン33に当り、孔縁当接部に応力が集中し、局部的な摩耗を招く傾向もあった。
【0024】
この為交換は、前記連結ピン33に限らず、前記内外筒連結機構21全体となる場合もあり、該内外筒連結機構21を交換する場合は、前記座板28を前記外筒8から切除する等作業は面倒であり、而も前記ロータリキルン1が大型であり、作業足場を設置しなければならない等、大がかりで長期の作業となっていた。
【0025】
尚、内外筒連結機構を具備するロータリキルンとしては特許文献1に示されるものがある。
【0026】
【特許文献1】特開平9−217988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は斯かる実情に鑑み、炉体として内筒、外筒を有するロータリキルンに於ける、内筒、外筒間の回転力を伝達する内外筒連結機構についての保守作業を容易とし、保守コストの低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、回転駆動され、入口から投入された被処理物を出口側へ移動しつつ加熱し、出口から排出する炉本体を具備したロータリキルンに於いて、前記炉本体は、回転駆動される外筒と、該外筒内部に配設された内筒部と、前記外筒からの回転力を前記内筒部に伝達する内外筒連結機構とを有し、該内外筒連結機構は前記外筒に支持されたピン保持筒と該ピン保持筒に着脱可能なスリーブを介して嵌合された連結ピンと、前記内筒部に設けられ、前記連結ピンの先端部が嵌合する受座とを具備するロータリキルンに係るものである。
【0029】
又本発明は、前記スリーブの外端はフランジプレートに固着され、該フランジプレートは前記ピン保持筒に着脱可能としたロータリキルンに係り、又前記連結ピンの先端部は先細りテーパ形状となっているロータリキルンに係るものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、回転駆動され、入口から投入された被処理物を出口側へ移動しつつ加熱し、出口から排出する炉本体を具備したロータリキルンに於いて、前記炉本体は、回転駆動される外筒と、該外筒内部に配設された内筒部と、前記外筒からの回転力を前記内筒部に伝達する内外筒連結機構とを有し、該内外筒連結機構は前記外筒に支持されたピン保持筒と該ピン保持筒に着脱可能なスリーブを介して嵌合された連結ピンと、前記内筒部に設けられ、前記連結ピンの先端部が嵌合する受座とを具備するので、前記ピン保持筒が摩耗することが防止され、摩耗が及ぶのは前記連結ピンと前記スリーブとなり、両者を交換することで前記内外筒連結機構の保守作業が完了し、作業量の低減、作業性の向上が図れる。
【0031】
又本発明によれば、前記スリーブの外端はフランジプレートに固着され、該フランジプレートは前記ピン保持筒に着脱可能としたので、前記スリーブは前記フランジプレートを介して着脱でき、作業性が向上する。
【0032】
又本発明によれば、前記連結ピンの先端部は先細りテーパ形状となっているので、前記連結ピンが傾斜した場合も、前記受座の嵌合孔の縁に局部的に接触することが防止され、応力の集中が避けられ、局部的な摩耗が防止できる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0034】
図1は本発明に係るロータリキルンに実施された内外筒連結機構21を示しており、ロータリキルン本体の構成等は、図2で示したものと同様であるので、説明を省略する。又、図1中、図4中で示したものと同等のものには同符号を付してある。
【0035】
前記内外筒連結機構21は外筒8に所要等間隔、例えば円周12等分した位置に設けられる。
【0036】
ピン取付け孔27の中心を貫通する様にピン保持筒29を補強リブ41によって支持する。該補強リブ41は前記外筒8に溶接等所要の手段で固着され、所要間隔で設けられた前記ピン保持筒29間に掛渡って設けられ、好ましくは全周連続した状態となっている。
【0037】
前記補強リブ41の形状としては、例えばウェブ部材42の上下にフランジ43,43が固着された断面I字状となっており、又全周で連続しているので、剛性が高くなっている。
【0038】
前記ピン保持筒29は外端に固着されたフランジ31を有し、前記ピン保持筒29にはスリーブ44が内嵌されている。該スリーブ44の外端にはフランジプレート34が溶接等により固着され、前記スリーブ44と前記フランジプレート34とは一体化され、該フランジプレート34は皿螺子35により前記フランジ31に着脱可能に固定される様になっている。尚、前記補強リブ41の前記フランジ43を前記フランジ31として機能させ、前記フランジプレート34を前記フランジ43に着脱可能に取付けても良い。
【0039】
前記フランジプレート34には調整ボルト36が螺通し、該調整ボルト36の先端にはバネ受け37が回転自在に設けられ、該バネ受け37と連結ピン33間に圧縮バネ38が挾設され、該圧縮バネ38により前記連結ピン33と受座26とが所要の押圧力で嵌合している。又、前記フランジプレート34にはカバー39がボルト45によって着脱可能に取付けられている。
【0040】
前記連結ピン33の嵌合凹部25との嵌合部は先端に向って先細るテーパ形状、例えば1.5°の傾斜のテーパ形状となっており、更に先端面は凸曲面、或は凸円錐面等、中心部が盛上がった形状となっている。
【0041】
又、前記受座26の前記嵌合凹部25には、受けスリーブ46が嵌設され、前記連結ピン33は前記受けスリーブ46を介して前記嵌合凹部25に嵌合する様になっている。又、前記受けスリーブ46は取外し可能となっていることが好ましい。
【0042】
以下、前記内外筒連結機構21の作用について説明する。
【0043】
前記外筒8から前記支持円板15、即ち内筒部9への動力の伝達は、前記ピン保持筒29、前記スリーブ44、前記連結ピン33、前記受けスリーブ46を経て前記支持円板15即ち前記内筒部9に伝達される。
【0044】
前記外筒8と前記内筒部9間の偏心、或は熱膨張差は、前記圧縮バネ38が撓み前記連結ピン33が半径方向に変位して、所定の嵌合力を維持しつつ、吸収される。
【0045】
次に、前記連結ピン33の交換について説明する。
【0046】
前記ボルト45を取り、前記カバー39を取外す。前記皿螺子35を除去し、前記調整ボルト36を半径方向(図1中上方)に引抜く。前記調整ボルト36と前記フランジプレート34とは螺合し、該フランジプレート34と前記スリーブ44とは一体であるので、該スリーブ44が引抜かれる。この時、前記連結ピン33と前記スリーブ44間の摩擦力が大きければ、前記連結ピン33が前記嵌合凹部25より外れ、前記スリーブ44と共に前記連結ピン33が引抜かれる。尚、該連結ピン33が残れば、従来と同様に別途連結ピン33を引抜けばよい。
【0047】
本実施の形態では、摩耗の可能性がある前記スリーブ44も交換でき、而も、前記連結ピン33と前記ピン保持筒29間に前記スリーブ44が介在するので、前記ピン保持筒29自体は摩耗の虞れがなく、交換をする必要がない。従って、前記連結ピン33の交換は、極めて簡単で、短時間に行える。
【0048】
新しい連結ピン33を嵌める場合は、予め前記スリーブ44に前記連結ピン33を嵌合させたものを前記ピン保持筒29に嵌入して前記フランジ31に固定した後、前記カバー39を取付ける。
【0049】
本実施の形態では、前記ピン保持筒29の支持を剛性の高い前記補強リブ41によって補強している。従って、前記ピン保持筒29は剛構造の支持となっており、該ピン保持筒29が振られることがなく、又前記補強リブ41は高強度であるので、前記ピン保持筒29の支持部にクラック等が発生することが避けられる。
【0050】
又、前記連結ピン33は各部品間のギャップ等の要因から、前記嵌合凹部25に対して傾くことが考えられる。一方、前記連結ピン33はテーパ形状となっているので、該連結ピン33が傾斜しても、面接触、若しくは面接触に近い状態となり、前記嵌合凹部25の孔縁部で応力の集中が避けられ、局部的な摩耗が防止される。
【0051】
又、前記連結ピン33の先端面が凸形状であるので、該連結ピン33は無理なく傾斜する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の要部を示す断面図である。
【図2】ロータリキルンの概略を示す断面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】ロータリキルンに用いられる従来の内外筒連結機構の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ロータリキルン
2 上流側炉端ケーシング
3 炉本体
4 下流側炉端ケーシング
8 外筒
9 内筒部
13 回転駆動機構
14 内筒
15 支持円板
18 被処理物投入口
24 熱分解ガス出口ケーシング
25 嵌合凹部
26 受座
29 ピン保持筒
31 フランジ
33 連結ピン
34 フランジプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動され、入口から投入された被処理物を出口側へ移動しつつ加熱し、出口から排出する炉本体を具備したロータリキルンに於いて、前記炉本体は、回転駆動される外筒と、該外筒内部に配設された内筒部と、前記外筒からの回転力を前記内筒部に伝達する内外筒連結機構とを有し、該内外筒連結機構は前記外筒に支持されたピン保持筒と該ピン保持筒に着脱可能なスリーブを介して嵌合された連結ピンと、前記内筒部に設けられ、前記連結ピンの先端部が嵌合する受座とを具備することを特徴とするロータリキルン。
【請求項2】
前記スリーブの外端はフランジプレートに固着され、該フランジプレートは前記ピン保持筒に着脱可能とした請求項1のロータリキルン。
【請求項3】
前記連結ピンの先端部は先細りテーパ形状となっている請求項1のロータリキルン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128522(P2008−128522A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311730(P2006−311730)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】