ロータリバルブ
【課題】シール部材の摩耗を抑制できるとともに回転弁体の駆動に要する力を低減でき、同時にシール機能も確保可能なロータリバルブを提供する。
【解決手段】ロータリバルブ10AはハウジングHと、ハウジングHに設けられた回転弁体13と、ハウジングHおよび回転弁体13間に設けられ、突起部を両端部に有するシール部材と、シール部材をハウジングHに向かって付勢する弾性部材と、回転弁体13の回転動作に応じて突起部を案内する溝部とを備える。溝部は径方向内側に向かって後退した後退部を有し、後退部は回転弁体13の回転動作時にシール部材をハウジングHから離間させるように突起部を案内する。
【解決手段】ロータリバルブ10AはハウジングHと、ハウジングHに設けられた回転弁体13と、ハウジングHおよび回転弁体13間に設けられ、突起部を両端部に有するシール部材と、シール部材をハウジングHに向かって付勢する弾性部材と、回転弁体13の回転動作に応じて突起部を案内する溝部とを備える。溝部は径方向内側に向かって後退した後退部を有し、後退部は回転弁体13の回転動作時にシール部材をハウジングHから離間させるように突起部を案内する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリバルブに関し、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1、2で開示されている。特許文献1、2では流体入口と、少なくとも2つの流体出口とを備える本体を含み、流体出口を通る流体の分配を制御するために種々の角度位置を取ることができる調節部材が一体に回転するようになっているシールリングによって囲まれている制御弁が開示されている。調節部材はシールリングとの間に小さな隙間をおいて囲まれており、この隙間に巻き込まれる流体の圧力によって保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−21753号公報
【特許文献2】特表2006−512547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリバルブでは回転弁体の周囲から流体漏れが発生し得る。これに対し、流体漏れを防止するには例えば回転弁体が設けられるハウジングと回転弁体との間に回転弁体と一体となって回転可能なシール部材を設けることができる。ところが、シール部材とハウジングとが接触している状態で回転弁体の回転動作が行われる場合、ハウジングに設けられた通路部の開口エッジでシール部材の摩耗が促進される虞がある。
【0005】
また、シール部材で回転弁体周りのシールを行うには例えば特許文献1、2が開示する制御弁のようにハウジングに向かってシール部材を押圧する流体の圧力をシール部材に作用させることが考えられる。ところがこの場合、流体の圧力が高まるとともに回転弁体の駆動に要する駆動力も高まることから、回転弁体を駆動するにあたって相応の出力を発生させることが可能なアクチュエータが必要になる虞がある。結果、ロータリバルブの小型化や省電力化が妨げられる虞がある。またこの場合、流体の圧力が低下するとシール機能も低下する虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、シール部材の摩耗を抑制できるとともに回転弁体の駆動に要する力を低減でき、同時にシール機能も確保可能なロータリバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は流体を流通させる通路部を有するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記通路部を流通する流体の流通を回転動作で制御する回転弁体と、前記ハウジングおよび前記回転弁体間に前記回転弁体と一体となって回転可能に設けられ、第1および第2の突起部を両端部に有するシール部材と、前記回転弁体および前記シール部材間に設けられ、前記シール部材を前記ハウジングに向かって付勢する弾性部材と、前記回転弁体の回転動作に応じて前記第1の突起部を案内する第1の溝部、および前記第2の突起部を案内する第2の溝部と、を備え、前記第1および第2の溝部が径方向内側に向かって後退した後退部を有し、前記後退部が前記回転弁体の回転動作時に前記シール部材を前記ハウジングから離間させるように前記第1および第2の突起部を案内するロータリバルブである。
【0008】
本発明は前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分における流体の圧力が所定値よりも高い場合に前記シール部材が前記ハウジングから離間するように、前記第1および第2の溝部において、少なくとも前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シール部材の摩耗を抑制できるとともに回転弁体の駆動に要する力を低減でき、同時にシール機能も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ロータリバルブの概略構成図である。
【図2】回転弁体ユニットの側面図である。
【図3】回転弁体ユニットの上面図である。
【図4】シール部材の外観図である。
【図5】実施例1のハウジングの要部を示す図である。
【図6】実施例1のギヤボックス部の要部を示す図である。
【図7】ロータリバルブの冷却液の流通制御を示す図である。
【図8】実施例1のシール部材の動作説明図である。
【図9】実施例2のハウジングの要部を示す図である。
【図10】実施例2のギヤボックス部の要部を示す図である。
【図11】実施例2のシール部材の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はロータリバルブ10Aの概略構成図である。図1ではロータリバルブ10Aとともにウォータポンプ(以下、W/Pと称す)1も示している。ロータリバルブ10Aは第1の通路部11と第2の通路部12と回転弁体13と駆動部14とサーモスタット15とを備えている。また、入口部In1、In2と出口部Out1、Out2とを備えている。出口部Out1はエンジンのシリンダヘッドに、出口部Out2はエンジンのシリンダブロックにそれぞれ接続される。
【0013】
第1の通路部11はW/P1の冷却液出口部とエンジンとの間に設けられ、流体であるエンジンの冷却液を流通させる。第2の通路部12はW/P1の冷却液入口部とラジエータとの間に設けられ、冷却液を流通させる。通路部11、12は並べて配置されている。通路部11、12は並べて配置された状態でW/P1に端部で接続されている。そして、第1の通路部11はW/P1の冷却液出口部に、第2の通路部12はW/P1の冷却液入口部にそれぞれ接続されている。第1の通路部11ではW/P1側が上流側、第2の通路部12ではW/P1側が下流側となっている。通路部11、12はハウジングHを構成している。
【0014】
第1の通路部11は回転弁体13の下流側で出口部Out1、Out2に連通している。第2の通路部12は回転弁体13の下流側で入口部In1に連通している。また、回転弁体13の上流側および下流側で入口部In2に連通している。第2の通路部12は回転弁体13よりも下流側の部分と入口部In2とを連通する第1の連通部B1と、回転弁体13よりも上流側の部分と入口部In2とを連通する第2の連通部B2とを備えている。なお、図示の都合上、図1では第1の通路部11のうち、回転弁体13の下流側で出口部Out1、Out2に連通する部分それぞれを同位相に設けているように示しているが、これらは実際には互いに異なる位相に設けられている。これは通路部11、12の上流側の部分および下流側の部分についても同様である。
【0015】
回転弁体13は第1の通路部11と第2の通路部12とに介在するように設けられている。そしてこれにより、ハウジングHに設けられている。回転弁体13は第1の通路部11を流通する冷却液の流通と、第2の通路部12を流通する冷却液の流通とを回転動作で制御する。回転弁体13は第1の通路部11に介在する第1の弁体部R1と、第2の通路部12に介在する第2の弁体部R2とを備えている。弁体部R1、R2の内部は個別に空洞になっており、周壁部に設けられた開口部が弁体部R1、R2を介した冷却液の流通を可能にする。回転弁体13は第1の通路部11を流通する冷却液の流通と第2の通路部12を流通する冷却液の流通とを禁止、許可することを含め、これら流通の制限、制限の解除を行うことができる。
【0016】
駆動部14はアクチュエータ14aとギヤボックス部14bとを備えており、回転弁体13を駆動する。アクチュエータ14aは具体的には例えば電動モータである。アクチュエータ14aは例えば油圧制御弁によって電子制御可能な油圧アクチュエータであってもよい。サーモスタット15は第1の連通部B1に設けられている。サーモスタット15は冷却液の温度が所定値よりも高い場合に開弁するとともに、所定値以下である場合に閉弁する。
【0017】
図2は回転弁体13とシール部材19と弾性部材20との組み合わせ品である回転弁体ユニットの側面図である。図3は回転弁体ユニットの上面図である。図4はシール部材19の外観図である。図2、図3ではシール部材19を断面で示している。図3では説明の都合上、回転弁体13およびシール部材19間の隙間を誇張して示している。
【0018】
ロータリバルブ10Aはさらにシール部材19と弾性部材20を備えている。シール部材19の材質は例えばPTFEなどの樹脂やゴム或いはこれらの組み合わせである。シール部材19は円筒状の形状を有しており、回転弁体13の周囲に組み付けられる。シール部材19は連結部Cで回転弁体13と機械的に連結されることで、回転弁体13と一体となって回転可能に設けられている。弾性部材20は回転弁体13およびシール部材19間に設けられ、シール部材19をハウジングHに向かって付勢する。弾性部材20は例えばスプリングである。
【0019】
シール部材19はロータリバルブ10Aにおいて、第1の通路部11および回転弁体13(具体的には第1の弁体部R1)の間に設けられるとともに、第2の通路部12および回転弁体13(具体的には第2の弁体部R2)の間に設けられる。そしてこれにより、ハウジングHおよび回転弁体13間に設けられる。シール部材19は両端部に第1および第2の突起部P1、P2を有している。突起部P1、P2は円柱状の形状を有し、周方向の位置が互いに等しくなるように設けられている。シール部材19には、回転弁体13の周壁部に設けられた開口部に対応させて開口部が設けられている。
【0020】
図5はハウジングHの要部を示す図である。図6はギヤボックス部14bの要部を示す図である。ハウジングHのうち、回転弁体13を収容する部分の下面には第1の溝部D1が設けられている。ギヤボックス部14bの下面のうち、回転弁体13に対向する部分には第2の溝部D2が設けられている。回転弁体13の回転動作に応じ、第1の溝部D1は第1の突起部P1を案内し、第2の溝部D2は第2の突起部P2を案内する。溝部D1、D2は回転弁体13の回転軸に沿って見た場合に互いに重なり合うように設けられている。
【0021】
溝部D1、D2は回転弁体13に対して同心状に設けられている円弧部分を有するとともに、径方向内側に向かって後退した後退部を有している。後退部は具体的には径方向内側に向かって窪んだ窪み部分となっている。円弧部分はシール部材19をハウジングHに接触させた状態で突起部P1、P2を案内する。窪み部分は回転弁体13の回転動作時にシール部材19をハウジングHから離間させるように突起部P1、P2を案内する。なお、図5、図6では説明の都合上、円弧部分に対して窪み部分を誇張して示している。
【0022】
溝部D1、D2は具体的には窪み部分を90°毎に有している。また、隣り合う窪み部分同士それぞれの間の部分に円弧部分を有している。円弧部分は隣り合う窪み部分それぞれと滑らかに接続されている。ロータリバルブ10Aは第1の溝部D1が設けられたギヤボックス部14bと第2の溝部D2が設けられたハウジングHとを備えることで、溝部D1、D2を備えている。
【0023】
図7はロータリバルブ10Aの冷却液の流通制御を示す図である。ポート1は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分が形成するポート、ポート2は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも下流側の部分、且つ出口部Out1に連通する部分が形成するポート、ポート3は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも下流側の部分、且つ出口部Out2に連通する部分が形成するポート、ポート4は第2の通路部12のうち、回転弁体13の上流側の部分が形成するポート、ポート5は第2の通路部12のうち、回転弁体13の下流側の部分が形成するポートである。ポート6は第1の連通部B1が第2の通路部12のうち、回転弁体13よりも下流側の部分に形成するポートである。
【0024】
ロータリバルブ10Aはポート1から5の開閉によって、例えば冷却液の流通を停止させる流通停止、シリンダブロックで冷却液の淀みを発生させるブロック淀み、適温範囲内で相対的に高温の冷却液を全開で流通させる高温全開、適温範囲内で相対的に低温の冷却液を全開で流通させる低温全開の4つの流通制御を行うことができる。この点、ポート1から5の開閉は回転弁体13によって行われ、ポート6の開閉はサーモスタット15により行われる。このため、図6ではポート6についてはサーモスタット15による冷却液の流通制御が回転弁体13の回転動作に関わらず有効であることを示している。
【0025】
流通停止では、回転弁体13がポート1を遮断することで、冷却液の流通を停止させるようにしている。このとき、回転弁体13は同時にポート2、4、5を遮断するとともにポート3を開放するようにしている。ブロック淀みでは、回転弁体13がポート1、2を開放するとともにポート3、4、5を遮断することで、シリンダヘッドに冷却液を流通させつつ、シリンダブロックへの冷却液の流通を停止するようにしている。
【0026】
高温全開では、回転弁体13がポート1、3を開放するとともにポート2、4、5を遮断することで、シリンダブロックに相対的に高温の冷却液を流通させつつ、シリンダヘッドへの冷却液の流通を停止するようにしている。低温全開では、回転弁体13がポート1、3、4、5を開放するとともにポート2を遮断することで、シリンダブロックに相対的に低温の冷却液を流通させつつ、シリンダヘッドへの冷却液の流通を停止するようにしている。高温全開はエンジンの低負荷時に、低温全開はエンジンの高負荷時にそれぞれ行うことができる。
【0027】
次にロータリバルブ10Aの作用効果について説明する。図8はロータリバルブ10Aにおけるシール部材19の動作説明図である。突起部P1、P2は具体的には溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置する場合に、ポート1を閉じて水止めするように設けられている。このため水止め時には、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置するとともに、シール部材19とハウジングHとが互いに接触した状態になっている。
【0028】
突起部P1、P2は溝部D1、D2のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する場合に、ポート1を開くとともにポート3を閉じてブロック淀みを行うように設けられている。そして、ポート3は具体的にはポート1から回転弁体13の回転方向前方側に90°ずれた位置に設けられている。このため、水止めからブロック淀みへの移行中には、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1、3間に設けられた窪み部分に位置する。そしてこれにより、シール部材19が径方向内側に向かって押し込まれる結果、ポート1、3の開口エッジのうち、回転方向前方側に位置する部分それぞれとの間に隙間を生じさせる。このとき、連結部Cはポート1の手前に位置している。
【0029】
ブロック淀みでは、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する結果、シール部材19とハウジングHとが再び接触した状態となる。このとき、冷却液は回転弁体ユニットを介してポート1から図示しないポート2へと流通する。
【0030】
このようにロータリバルブ10Aは溝部D1、D2を備えることで、回転弁体13の回転動作時に例えばシール部材19とポート1、3の開口エッジとの間に隙間を生じさせることができる。結果、シール部材19の摩耗を抑制できる。また、ロータリバルブ10Aは溝部D1、D2を備えることで、シール部材19をハウジングHに押し付けようとする弾性部材20の力や流体の圧力が存在していても、回転弁体13の回転動作時にシール部材19をハウジングHから離間させるように突起部P1、P2を案内することで、シール部材19のフリクションを低減できる。結果、回転弁体13の駆動に要する力も低減できる。
【0031】
さらにロータリバルブ10Aは弾性部材20を備えることで、シール部材19をハウジングHに押し付けようとする流体の圧力が低下した場合であってもシール性能を確保できる。この点、弾性部材20は具体的には突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置する場合にポート1に対向する位置に設けられている。
【0032】
ロータリバルブ10Aは複数(具体的にはここでは90°毎に計4つ)の後退部である窪み部分を有するとともに、隣り合う窪み部分同士それぞれの間の部分にシール部材19とハウジングHとを接触させた状態で突起部P1、P2を案内する円弧部分を有する溝部D1、D2を備え、各円弧部分に対応させて複数のポートを設けることで、周方向において隣り合うポート間それぞれに窪み部分を設けている。そしてこれにより、回転弁体13の回転動作時に各ポートとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0033】
この点、ロータリバルブ10Aは少なくとも3つの後退部である窪み部分を有する溝部D1、D2を備えることで、複数の供給先に冷却液を分配することを可能にしつつ、回転弁体13の回転動作時に各ポートとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0034】
また、ロータリバルブ10Aは90°毎に計4つの後退部である窪み部分を有する溝部D1、D2を備えることで、第1の通路部11における冷却液の流通と第2の通路部12における冷却液の流通とを回転動作で同時に制御する回転弁体13を備える場合に、例えば前述したような所定の冷却液の流通制御を窪み部分の数を抑えた上で成立させつつ、回転弁体13の回転動作時に通路部11、12それぞれとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0035】
第1の通路部11における冷却液の流通と第2の通路部12における冷却液の流通とを回転動作で同時に制御する回転弁体13を備えるロータリバルブ10Aでは、通路部11、12それぞれの冷却液の流通を1軸の回転弁体13で同時に制御する構成上、回転弁体13の駆動に要する力が大きくなり易くなっている。このため、ロータリバルブ10Aはかかる回転弁体13を回転弁体として備える場合に特に好適である。
【実施例2】
【0036】
図9はハウジングH´の要部を示す図である。図10はギヤボックス部14b´の要部を示す図である。本実施例にかかるロータリバルブ10BはハウジングHの代わりにハウジングH´を備える点と、ギヤボックス部14bの代わりにギヤボックス部14b´を備える点以外、ロータリバルブ10Aと実質的に同一である。このため、ロータリバルブ10Bについては図示省略する。
【0037】
ハウジングH´は第1の溝部D1の代わりに第1の溝部D1´を備える点以外、ハウジングHと実質的に同一である。ギヤボックス部14b´は第2の溝部D2の代わりに第2の溝部D2´を備える点以外、ギヤボックス部14bと実質的に同一である。溝部D1´、D2´は以下に示す点以外、溝部D1、D2と実質的に同一である。
【0038】
すなわち、溝部D1´、D2´では少なくとも第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている。そしてこれにより、第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分における冷却液の圧力が所定値よりも高い場合にシール部材19がハウジングH´から離間するようにしている。
【0039】
溝部D1´、D2´では上述の溝幅が具体的には次のように形成されている。すなわち、突起部P1、P2が溝部D1´、D2´において第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)に位置する場合に、溝部D1´、D2´の内側の縁部に当接した状態で第1の通路部11のうち、回転弁体13の上流側の部分と下流側の部分(具体的にはここでは出口部Out2に連通する部分)とを連通する隙間(ポート1とポート3とを連通する隙間)をシール部材19およびハウジングH´間に形成するように径方向内側に向かって広く形成されている。
【0040】
溝部D1´、D2´ではさらに具体的には第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)から、回転弁体13の回転方向前方側で隣接する窪み部分(ポート1、3間に設けられた窪み部分)を介して、当該窪み部分に回転弁体13の回転方向前方側で連なる部分(ポート3に対応する円弧部分)に至る範囲まで、溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている。溝部D1´、D2´のうち、溝幅が広く形成されている部分の内側の縁部は、第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分(ポート1)からの冷却液の圧力に応じて回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力を突起部P1、P2で発生させることが可能な形状に形成されている。
【0041】
次にロータリバルブ10Bの作用効果について説明する。図11はロータリバルブ10Bにおけるシール部材19の動作説明図である。水止め時には、突起部P1、P2は溝部D1´、D2´のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置している。そして、ポート1における冷却液の圧力が低圧である場合には、シール部材19とハウジングH´とは互いに接触した状態となっている。冷却液の圧力が低圧である場合は、具体的にはここでは冷却液の圧力に応じた作用力と弾性部材20の力とが釣り合っている場合となっている。
【0042】
冷却液の圧力が高まった場合(中圧の場合)、冷却液の圧力に応じて突起部P1、P2が内側に向かって押し込まれることで、シール部材19とハウジングH´との間に隙間が生じる。そして、この隙間によってポート1、3が連通する。この状態で、冷却液の圧力に応じた作用力は突起部P1、P2が溝部D1´、D2´の内側の縁部から受ける反力(壁反力)と弾性部材20の力との和と等しくなっている。冷却液の圧力はこの状態で所定値よりも高くなっている。
【0043】
冷却液の圧力がさらに高まった場合(高圧の場合)、冷却液の圧力に応じた作用力が溝部D1´、D2´の内側の縁部に当接した突起部P1、P2で分力される結果、回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力が発生する。結果、回転弁体13が回転方向に沿って回転動作する。ブロック淀みでは、突起部P1、P2が溝部D1´、D2´のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する結果、シール部材19とハウジングH´とが再び接触した状態となる。
【0044】
このようにロータリバルブ10Bは少なくとも第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている溝部D1´、D2´を備えることで、ロータリバルブ10Aと比較してさらに冷却液の圧力が所定値よりも高まった場合に冷却液を自動的に流通させるフェールセーフ機能を実現することもできる。
【0045】
ロータリバルブ10Bは上述したように冷却液の圧力に応じて回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力を突起部P1、P2で発生させることが可能な形状に形成されている溝部D1´、D2´を備えることで、エンジン高回転時など冷却液の圧力が所定値よりもさらに高まった場合に水止めを自動的に解除するフェールセーフ機能を実現することもできる。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
ロータリバルブ 10A、10B
第1の通路部 11
第2の通路部 12
回転弁体 13
シール部材 19
弾性部材 20
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリバルブに関し、本発明と関連性があると考えられる技術が例えば特許文献1、2で開示されている。特許文献1、2では流体入口と、少なくとも2つの流体出口とを備える本体を含み、流体出口を通る流体の分配を制御するために種々の角度位置を取ることができる調節部材が一体に回転するようになっているシールリングによって囲まれている制御弁が開示されている。調節部材はシールリングとの間に小さな隙間をおいて囲まれており、この隙間に巻き込まれる流体の圧力によって保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−21753号公報
【特許文献2】特表2006−512547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロータリバルブでは回転弁体の周囲から流体漏れが発生し得る。これに対し、流体漏れを防止するには例えば回転弁体が設けられるハウジングと回転弁体との間に回転弁体と一体となって回転可能なシール部材を設けることができる。ところが、シール部材とハウジングとが接触している状態で回転弁体の回転動作が行われる場合、ハウジングに設けられた通路部の開口エッジでシール部材の摩耗が促進される虞がある。
【0005】
また、シール部材で回転弁体周りのシールを行うには例えば特許文献1、2が開示する制御弁のようにハウジングに向かってシール部材を押圧する流体の圧力をシール部材に作用させることが考えられる。ところがこの場合、流体の圧力が高まるとともに回転弁体の駆動に要する駆動力も高まることから、回転弁体を駆動するにあたって相応の出力を発生させることが可能なアクチュエータが必要になる虞がある。結果、ロータリバルブの小型化や省電力化が妨げられる虞がある。またこの場合、流体の圧力が低下するとシール機能も低下する虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、シール部材の摩耗を抑制できるとともに回転弁体の駆動に要する力を低減でき、同時にシール機能も確保可能なロータリバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は流体を流通させる通路部を有するハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記通路部を流通する流体の流通を回転動作で制御する回転弁体と、前記ハウジングおよび前記回転弁体間に前記回転弁体と一体となって回転可能に設けられ、第1および第2の突起部を両端部に有するシール部材と、前記回転弁体および前記シール部材間に設けられ、前記シール部材を前記ハウジングに向かって付勢する弾性部材と、前記回転弁体の回転動作に応じて前記第1の突起部を案内する第1の溝部、および前記第2の突起部を案内する第2の溝部と、を備え、前記第1および第2の溝部が径方向内側に向かって後退した後退部を有し、前記後退部が前記回転弁体の回転動作時に前記シール部材を前記ハウジングから離間させるように前記第1および第2の突起部を案内するロータリバルブである。
【0008】
本発明は前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分における流体の圧力が所定値よりも高い場合に前記シール部材が前記ハウジングから離間するように、前記第1および第2の溝部において、少なくとも前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シール部材の摩耗を抑制できるとともに回転弁体の駆動に要する力を低減でき、同時にシール機能も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ロータリバルブの概略構成図である。
【図2】回転弁体ユニットの側面図である。
【図3】回転弁体ユニットの上面図である。
【図4】シール部材の外観図である。
【図5】実施例1のハウジングの要部を示す図である。
【図6】実施例1のギヤボックス部の要部を示す図である。
【図7】ロータリバルブの冷却液の流通制御を示す図である。
【図8】実施例1のシール部材の動作説明図である。
【図9】実施例2のハウジングの要部を示す図である。
【図10】実施例2のギヤボックス部の要部を示す図である。
【図11】実施例2のシール部材の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はロータリバルブ10Aの概略構成図である。図1ではロータリバルブ10Aとともにウォータポンプ(以下、W/Pと称す)1も示している。ロータリバルブ10Aは第1の通路部11と第2の通路部12と回転弁体13と駆動部14とサーモスタット15とを備えている。また、入口部In1、In2と出口部Out1、Out2とを備えている。出口部Out1はエンジンのシリンダヘッドに、出口部Out2はエンジンのシリンダブロックにそれぞれ接続される。
【0013】
第1の通路部11はW/P1の冷却液出口部とエンジンとの間に設けられ、流体であるエンジンの冷却液を流通させる。第2の通路部12はW/P1の冷却液入口部とラジエータとの間に設けられ、冷却液を流通させる。通路部11、12は並べて配置されている。通路部11、12は並べて配置された状態でW/P1に端部で接続されている。そして、第1の通路部11はW/P1の冷却液出口部に、第2の通路部12はW/P1の冷却液入口部にそれぞれ接続されている。第1の通路部11ではW/P1側が上流側、第2の通路部12ではW/P1側が下流側となっている。通路部11、12はハウジングHを構成している。
【0014】
第1の通路部11は回転弁体13の下流側で出口部Out1、Out2に連通している。第2の通路部12は回転弁体13の下流側で入口部In1に連通している。また、回転弁体13の上流側および下流側で入口部In2に連通している。第2の通路部12は回転弁体13よりも下流側の部分と入口部In2とを連通する第1の連通部B1と、回転弁体13よりも上流側の部分と入口部In2とを連通する第2の連通部B2とを備えている。なお、図示の都合上、図1では第1の通路部11のうち、回転弁体13の下流側で出口部Out1、Out2に連通する部分それぞれを同位相に設けているように示しているが、これらは実際には互いに異なる位相に設けられている。これは通路部11、12の上流側の部分および下流側の部分についても同様である。
【0015】
回転弁体13は第1の通路部11と第2の通路部12とに介在するように設けられている。そしてこれにより、ハウジングHに設けられている。回転弁体13は第1の通路部11を流通する冷却液の流通と、第2の通路部12を流通する冷却液の流通とを回転動作で制御する。回転弁体13は第1の通路部11に介在する第1の弁体部R1と、第2の通路部12に介在する第2の弁体部R2とを備えている。弁体部R1、R2の内部は個別に空洞になっており、周壁部に設けられた開口部が弁体部R1、R2を介した冷却液の流通を可能にする。回転弁体13は第1の通路部11を流通する冷却液の流通と第2の通路部12を流通する冷却液の流通とを禁止、許可することを含め、これら流通の制限、制限の解除を行うことができる。
【0016】
駆動部14はアクチュエータ14aとギヤボックス部14bとを備えており、回転弁体13を駆動する。アクチュエータ14aは具体的には例えば電動モータである。アクチュエータ14aは例えば油圧制御弁によって電子制御可能な油圧アクチュエータであってもよい。サーモスタット15は第1の連通部B1に設けられている。サーモスタット15は冷却液の温度が所定値よりも高い場合に開弁するとともに、所定値以下である場合に閉弁する。
【0017】
図2は回転弁体13とシール部材19と弾性部材20との組み合わせ品である回転弁体ユニットの側面図である。図3は回転弁体ユニットの上面図である。図4はシール部材19の外観図である。図2、図3ではシール部材19を断面で示している。図3では説明の都合上、回転弁体13およびシール部材19間の隙間を誇張して示している。
【0018】
ロータリバルブ10Aはさらにシール部材19と弾性部材20を備えている。シール部材19の材質は例えばPTFEなどの樹脂やゴム或いはこれらの組み合わせである。シール部材19は円筒状の形状を有しており、回転弁体13の周囲に組み付けられる。シール部材19は連結部Cで回転弁体13と機械的に連結されることで、回転弁体13と一体となって回転可能に設けられている。弾性部材20は回転弁体13およびシール部材19間に設けられ、シール部材19をハウジングHに向かって付勢する。弾性部材20は例えばスプリングである。
【0019】
シール部材19はロータリバルブ10Aにおいて、第1の通路部11および回転弁体13(具体的には第1の弁体部R1)の間に設けられるとともに、第2の通路部12および回転弁体13(具体的には第2の弁体部R2)の間に設けられる。そしてこれにより、ハウジングHおよび回転弁体13間に設けられる。シール部材19は両端部に第1および第2の突起部P1、P2を有している。突起部P1、P2は円柱状の形状を有し、周方向の位置が互いに等しくなるように設けられている。シール部材19には、回転弁体13の周壁部に設けられた開口部に対応させて開口部が設けられている。
【0020】
図5はハウジングHの要部を示す図である。図6はギヤボックス部14bの要部を示す図である。ハウジングHのうち、回転弁体13を収容する部分の下面には第1の溝部D1が設けられている。ギヤボックス部14bの下面のうち、回転弁体13に対向する部分には第2の溝部D2が設けられている。回転弁体13の回転動作に応じ、第1の溝部D1は第1の突起部P1を案内し、第2の溝部D2は第2の突起部P2を案内する。溝部D1、D2は回転弁体13の回転軸に沿って見た場合に互いに重なり合うように設けられている。
【0021】
溝部D1、D2は回転弁体13に対して同心状に設けられている円弧部分を有するとともに、径方向内側に向かって後退した後退部を有している。後退部は具体的には径方向内側に向かって窪んだ窪み部分となっている。円弧部分はシール部材19をハウジングHに接触させた状態で突起部P1、P2を案内する。窪み部分は回転弁体13の回転動作時にシール部材19をハウジングHから離間させるように突起部P1、P2を案内する。なお、図5、図6では説明の都合上、円弧部分に対して窪み部分を誇張して示している。
【0022】
溝部D1、D2は具体的には窪み部分を90°毎に有している。また、隣り合う窪み部分同士それぞれの間の部分に円弧部分を有している。円弧部分は隣り合う窪み部分それぞれと滑らかに接続されている。ロータリバルブ10Aは第1の溝部D1が設けられたギヤボックス部14bと第2の溝部D2が設けられたハウジングHとを備えることで、溝部D1、D2を備えている。
【0023】
図7はロータリバルブ10Aの冷却液の流通制御を示す図である。ポート1は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分が形成するポート、ポート2は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも下流側の部分、且つ出口部Out1に連通する部分が形成するポート、ポート3は第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも下流側の部分、且つ出口部Out2に連通する部分が形成するポート、ポート4は第2の通路部12のうち、回転弁体13の上流側の部分が形成するポート、ポート5は第2の通路部12のうち、回転弁体13の下流側の部分が形成するポートである。ポート6は第1の連通部B1が第2の通路部12のうち、回転弁体13よりも下流側の部分に形成するポートである。
【0024】
ロータリバルブ10Aはポート1から5の開閉によって、例えば冷却液の流通を停止させる流通停止、シリンダブロックで冷却液の淀みを発生させるブロック淀み、適温範囲内で相対的に高温の冷却液を全開で流通させる高温全開、適温範囲内で相対的に低温の冷却液を全開で流通させる低温全開の4つの流通制御を行うことができる。この点、ポート1から5の開閉は回転弁体13によって行われ、ポート6の開閉はサーモスタット15により行われる。このため、図6ではポート6についてはサーモスタット15による冷却液の流通制御が回転弁体13の回転動作に関わらず有効であることを示している。
【0025】
流通停止では、回転弁体13がポート1を遮断することで、冷却液の流通を停止させるようにしている。このとき、回転弁体13は同時にポート2、4、5を遮断するとともにポート3を開放するようにしている。ブロック淀みでは、回転弁体13がポート1、2を開放するとともにポート3、4、5を遮断することで、シリンダヘッドに冷却液を流通させつつ、シリンダブロックへの冷却液の流通を停止するようにしている。
【0026】
高温全開では、回転弁体13がポート1、3を開放するとともにポート2、4、5を遮断することで、シリンダブロックに相対的に高温の冷却液を流通させつつ、シリンダヘッドへの冷却液の流通を停止するようにしている。低温全開では、回転弁体13がポート1、3、4、5を開放するとともにポート2を遮断することで、シリンダブロックに相対的に低温の冷却液を流通させつつ、シリンダヘッドへの冷却液の流通を停止するようにしている。高温全開はエンジンの低負荷時に、低温全開はエンジンの高負荷時にそれぞれ行うことができる。
【0027】
次にロータリバルブ10Aの作用効果について説明する。図8はロータリバルブ10Aにおけるシール部材19の動作説明図である。突起部P1、P2は具体的には溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置する場合に、ポート1を閉じて水止めするように設けられている。このため水止め時には、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置するとともに、シール部材19とハウジングHとが互いに接触した状態になっている。
【0028】
突起部P1、P2は溝部D1、D2のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する場合に、ポート1を開くとともにポート3を閉じてブロック淀みを行うように設けられている。そして、ポート3は具体的にはポート1から回転弁体13の回転方向前方側に90°ずれた位置に設けられている。このため、水止めからブロック淀みへの移行中には、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1、3間に設けられた窪み部分に位置する。そしてこれにより、シール部材19が径方向内側に向かって押し込まれる結果、ポート1、3の開口エッジのうち、回転方向前方側に位置する部分それぞれとの間に隙間を生じさせる。このとき、連結部Cはポート1の手前に位置している。
【0029】
ブロック淀みでは、突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する結果、シール部材19とハウジングHとが再び接触した状態となる。このとき、冷却液は回転弁体ユニットを介してポート1から図示しないポート2へと流通する。
【0030】
このようにロータリバルブ10Aは溝部D1、D2を備えることで、回転弁体13の回転動作時に例えばシール部材19とポート1、3の開口エッジとの間に隙間を生じさせることができる。結果、シール部材19の摩耗を抑制できる。また、ロータリバルブ10Aは溝部D1、D2を備えることで、シール部材19をハウジングHに押し付けようとする弾性部材20の力や流体の圧力が存在していても、回転弁体13の回転動作時にシール部材19をハウジングHから離間させるように突起部P1、P2を案内することで、シール部材19のフリクションを低減できる。結果、回転弁体13の駆動に要する力も低減できる。
【0031】
さらにロータリバルブ10Aは弾性部材20を備えることで、シール部材19をハウジングHに押し付けようとする流体の圧力が低下した場合であってもシール性能を確保できる。この点、弾性部材20は具体的には突起部P1、P2が溝部D1、D2のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置する場合にポート1に対向する位置に設けられている。
【0032】
ロータリバルブ10Aは複数(具体的にはここでは90°毎に計4つ)の後退部である窪み部分を有するとともに、隣り合う窪み部分同士それぞれの間の部分にシール部材19とハウジングHとを接触させた状態で突起部P1、P2を案内する円弧部分を有する溝部D1、D2を備え、各円弧部分に対応させて複数のポートを設けることで、周方向において隣り合うポート間それぞれに窪み部分を設けている。そしてこれにより、回転弁体13の回転動作時に各ポートとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0033】
この点、ロータリバルブ10Aは少なくとも3つの後退部である窪み部分を有する溝部D1、D2を備えることで、複数の供給先に冷却液を分配することを可能にしつつ、回転弁体13の回転動作時に各ポートとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0034】
また、ロータリバルブ10Aは90°毎に計4つの後退部である窪み部分を有する溝部D1、D2を備えることで、第1の通路部11における冷却液の流通と第2の通路部12における冷却液の流通とを回転動作で同時に制御する回転弁体13を備える場合に、例えば前述したような所定の冷却液の流通制御を窪み部分の数を抑えた上で成立させつつ、回転弁体13の回転動作時に通路部11、12それぞれとの間で発生するシール部材19の摩耗抑制を駆動力の低減とともに図ることができる。
【0035】
第1の通路部11における冷却液の流通と第2の通路部12における冷却液の流通とを回転動作で同時に制御する回転弁体13を備えるロータリバルブ10Aでは、通路部11、12それぞれの冷却液の流通を1軸の回転弁体13で同時に制御する構成上、回転弁体13の駆動に要する力が大きくなり易くなっている。このため、ロータリバルブ10Aはかかる回転弁体13を回転弁体として備える場合に特に好適である。
【実施例2】
【0036】
図9はハウジングH´の要部を示す図である。図10はギヤボックス部14b´の要部を示す図である。本実施例にかかるロータリバルブ10BはハウジングHの代わりにハウジングH´を備える点と、ギヤボックス部14bの代わりにギヤボックス部14b´を備える点以外、ロータリバルブ10Aと実質的に同一である。このため、ロータリバルブ10Bについては図示省略する。
【0037】
ハウジングH´は第1の溝部D1の代わりに第1の溝部D1´を備える点以外、ハウジングHと実質的に同一である。ギヤボックス部14b´は第2の溝部D2の代わりに第2の溝部D2´を備える点以外、ギヤボックス部14bと実質的に同一である。溝部D1´、D2´は以下に示す点以外、溝部D1、D2と実質的に同一である。
【0038】
すなわち、溝部D1´、D2´では少なくとも第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている。そしてこれにより、第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分における冷却液の圧力が所定値よりも高い場合にシール部材19がハウジングH´から離間するようにしている。
【0039】
溝部D1´、D2´では上述の溝幅が具体的には次のように形成されている。すなわち、突起部P1、P2が溝部D1´、D2´において第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)に位置する場合に、溝部D1´、D2´の内側の縁部に当接した状態で第1の通路部11のうち、回転弁体13の上流側の部分と下流側の部分(具体的にはここでは出口部Out2に連通する部分)とを連通する隙間(ポート1とポート3とを連通する隙間)をシール部材19およびハウジングH´間に形成するように径方向内側に向かって広く形成されている。
【0040】
溝部D1´、D2´ではさらに具体的には第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分(ポート1に対応する円弧部分)から、回転弁体13の回転方向前方側で隣接する窪み部分(ポート1、3間に設けられた窪み部分)を介して、当該窪み部分に回転弁体13の回転方向前方側で連なる部分(ポート3に対応する円弧部分)に至る範囲まで、溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている。溝部D1´、D2´のうち、溝幅が広く形成されている部分の内側の縁部は、第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分(ポート1)からの冷却液の圧力に応じて回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力を突起部P1、P2で発生させることが可能な形状に形成されている。
【0041】
次にロータリバルブ10Bの作用効果について説明する。図11はロータリバルブ10Bにおけるシール部材19の動作説明図である。水止め時には、突起部P1、P2は溝部D1´、D2´のうち、ポート1に対応する円弧部分に位置している。そして、ポート1における冷却液の圧力が低圧である場合には、シール部材19とハウジングH´とは互いに接触した状態となっている。冷却液の圧力が低圧である場合は、具体的にはここでは冷却液の圧力に応じた作用力と弾性部材20の力とが釣り合っている場合となっている。
【0042】
冷却液の圧力が高まった場合(中圧の場合)、冷却液の圧力に応じて突起部P1、P2が内側に向かって押し込まれることで、シール部材19とハウジングH´との間に隙間が生じる。そして、この隙間によってポート1、3が連通する。この状態で、冷却液の圧力に応じた作用力は突起部P1、P2が溝部D1´、D2´の内側の縁部から受ける反力(壁反力)と弾性部材20の力との和と等しくなっている。冷却液の圧力はこの状態で所定値よりも高くなっている。
【0043】
冷却液の圧力がさらに高まった場合(高圧の場合)、冷却液の圧力に応じた作用力が溝部D1´、D2´の内側の縁部に当接した突起部P1、P2で分力される結果、回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力が発生する。結果、回転弁体13が回転方向に沿って回転動作する。ブロック淀みでは、突起部P1、P2が溝部D1´、D2´のうち、ポート3に対応する円弧部分に位置する結果、シール部材19とハウジングH´とが再び接触した状態となる。
【0044】
このようにロータリバルブ10Bは少なくとも第1の通路部11のうち、回転弁体13よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されている溝部D1´、D2´を備えることで、ロータリバルブ10Aと比較してさらに冷却液の圧力が所定値よりも高まった場合に冷却液を自動的に流通させるフェールセーフ機能を実現することもできる。
【0045】
ロータリバルブ10Bは上述したように冷却液の圧力に応じて回転弁体13を回転方向に沿って回転動作させる力を突起部P1、P2で発生させることが可能な形状に形成されている溝部D1´、D2´を備えることで、エンジン高回転時など冷却液の圧力が所定値よりもさらに高まった場合に水止めを自動的に解除するフェールセーフ機能を実現することもできる。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
ロータリバルブ 10A、10B
第1の通路部 11
第2の通路部 12
回転弁体 13
シール部材 19
弾性部材 20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流通させる通路部を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記通路部を流通する流体の流通を回転動作で制御する回転弁体と、
前記ハウジングおよび前記回転弁体間に前記回転弁体と一体となって回転可能に設けられ、第1および第2の突起部を両端部に有するシール部材と、
前記回転弁体および前記シール部材間に設けられ、前記シール部材を前記ハウジングに向かって付勢する弾性部材と、
前記回転弁体の回転動作に応じて前記第1の突起部を案内する第1の溝部、および前記第2の突起部を案内する第2の溝部と、を備え、
前記第1および第2の溝部が径方向内側に向かって後退した後退部を有し、前記後退部が前記回転弁体の回転動作時に前記シール部材を前記ハウジングから離間させるように前記第1および第2の突起部を案内するロータリバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のロータリバルブであって、
前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分における流体の圧力が所定値よりも高い場合に前記シール部材が前記ハウジングから離間するように、前記第1および第2の溝部において、少なくとも前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されているロータリバルブ。
【請求項1】
流体を流通させる通路部を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記通路部を流通する流体の流通を回転動作で制御する回転弁体と、
前記ハウジングおよび前記回転弁体間に前記回転弁体と一体となって回転可能に設けられ、第1および第2の突起部を両端部に有するシール部材と、
前記回転弁体および前記シール部材間に設けられ、前記シール部材を前記ハウジングに向かって付勢する弾性部材と、
前記回転弁体の回転動作に応じて前記第1の突起部を案内する第1の溝部、および前記第2の突起部を案内する第2の溝部と、を備え、
前記第1および第2の溝部が径方向内側に向かって後退した後退部を有し、前記後退部が前記回転弁体の回転動作時に前記シール部材を前記ハウジングから離間させるように前記第1および第2の突起部を案内するロータリバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のロータリバルブであって、
前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分における流体の圧力が所定値よりも高い場合に前記シール部材が前記ハウジングから離間するように、前記第1および第2の溝部において、少なくとも前記通路部のうち、前記回転弁体よりも上流側の部分に対応する部分の溝幅が径方向内側に向かって広く形成されているロータリバルブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−60987(P2013−60987A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198535(P2011−198535)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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